NOTHING『THE GREAT DISMAL』(2020)
2020年10月30日にリリースされたNOTHINGの4thアルバム。日本盤は同年11月4日に発売されています。
前々作『TIRED OF TOMORROW』(2016年)のツアー後に脱退した元DEAFHEAVEN、現WHIRRのニック・バセット(B/WHIRRではギタリスト)に代わり、USハードコアバンドJESUS PIECEのフロントマンであるアーロン・ハードが新たに加入。新編成で制作した『DANCE ON THE BLACKTOP』(2018年)ではメランコリックさが過去イチな傑作ぶりを発揮していましたが、2019年初頭にオリジナルメンバーのブランドン・セッタ(G, Vo)が個人的事情でバンドを脱退してしまいます。過去作ではプロデュースワークに参加するのみならず、ソングライティング面でもかなり貢献してきたメンバーだけに、この脱退はバンドにとって大きな痛手だったはずです。
ここ数作、アルバムごとにメンバーチェンジが続き不安定な状態のNOTHING。しかし、バンドは新たにインディアナ州ノースウェストインディアナ出身のシューゲイズ/スラッジ/ハードコアバンドのCLOAKROOMのフロントマン、ドイル・マーティン(G, Vo)を新メンバーに迎え、通算4作目のアルバム制作に臨んだわけです。
今作では前々作『TIRED OF TOMORROW』を手がけたウィル・イップ(CODE ORANGE、PANIC AT THE DISCO、TOUCHÉ AMORÉなど)をプロデューサーに再起用。90年代のシューゲイザーやオルタナティヴロック色濃厚で、ドリーミーなハーモニーを前面に打ち出したキャッチーかつ尖った楽曲群がズラリと並ぶ良作に仕上がっています。オープニング「A Fabricated Life」から掴みは完璧。「Say Less」や「Catch A Fade」あたりでは往年のMY BLOODY VALENTINEや初期RIDEを彷彿とさせるスタイルで、聴き手を90年代前半にタイムスリップさせてくれるのではないでしょうか。
かといって、本作はそこまでソスタルジックな“90年代回帰”な作品集でもなく、2000年代以降の尖りっぷりも随所に散りばめられており、一筋縄ではいかないクセの強さは相変わらず。要所要所に用意されたサウンドエフェクトや楽器の定位のこだわりなど、彼らならではのトリッキーなフックにも(特にヘッドフォンなどで聴いていると)思わずニヤッとしてしまうはずです。
初期はDEAFHEAVENとの関係性などもあり、一部からはブラックゲイズ界隈にカテゴライズされたりもしましたが、このニューウェイヴ以降のバンド直系のサウンドは、むしろDEFTONESあたりに近いんじゃないかという気すらします(別にDEFTONESの影響下にあるという意味ではありませんよ)。そういう意味では、NOTHINGってUSアンダーグラウンドのヘヴィロックシーンにおける突然変異なのかな。そう思わないと、いろいろ説明できないことが多すぎますし。
ドリーミーさは相変わらずなんだけど、今作はどこかダークで物悲しく、ザラついた感が強い。この質感、大好物すぎます。アルバムを重ねるごとに過去を超えていく、現時点での最高傑作です。
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