DREAM THEATER『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999)
1999年10月26日にリリースされたDREAM THEATERの5thアルバム。
デレク・シェリニアン(Key)を迎えたフルアルバムとしては唯一の作品となった前作『FALLING INTO INFINITY』(1997年)にて、(ヘヴィネス的な意味でも、ポップネス的な意味でも)モダンさに特化した作品作りに注力するものの、チャート/セールス面で前々作『AWAKE』(1994年)より劣る結果しか残せなかった彼ら。また、デレクも早々にバンドを脱退してしまい、バンドとして新たなターニングポイントを迎えることとなります。
デレクに代わり、現在までバンドに在籍することになるジョーダン・ルーデスが新たに加入。そしてここ数作での迷いを断ち切るかのように、バンドはマイク・ポートノイ(Dr)&ジョン・ペトルーシ(G)のセルフプロデュース体制に移行し、初の本格的コンセプトアルバム制作へと着手します。
ラップメタルやグルーヴメタルといった新世代ヘヴィロックがシーンを席巻する1999年に、このバンドの持ち味がもっとも活かされた大作志向でのアルバム制作は、ある意味では時代と逆行したものと言えるかもしれません。しかし、どんな新しいことに挑戦してもそれが受け入れられないのなら、原点に立ち返り好き放題やるのがもっとも正しい在り方なのではないか。結果としてはこの開き直りが功を奏し、過去2作での“迷い”がまったく感じられない王道プログレッシヴメタルアルバムが完成するわけです。
ご存知のとおり、本作はスマッシュヒットを記録した2ndアルバム『IMAGES AND WORDS』(1992年)に収録された10分におよぶ長編楽曲「Metropolis Pt.1: The Miracle And The Sleepr」の続編で、「悪夢に悩まされるニコラス青年の前世をめぐるストーリー」が9つのシーンから構成された全2幕/計78分にわたり表現されています。第1幕(Act I)はM-1「Scene One: Regression」からM-7「Scene Five: Through Her Eyes」まで、第2幕(Act II)がM-8「Scene Six: Home」からM-12「Scene Nine: Finally Free」まで。シーンによっては複数の楽曲に分割されているケースがあり(例:Scene Two、Scene Three、Scene Sevenはそれぞれ2つの楽曲で構成)、トラックごとにタイトルがつけられています。まあ、アナログだったらこのへん、そこまで気になりませんけどね。
『IMAGES AND WORDS』収録曲の続編ということで、同アルバムの延長線上にある作風をイメージされるかもしれませんが、本作はあくまで『AWAKE』〜『FALLING INTO INFINITY』を経てのアルバムであるという事実が重要になってきます。ですので、サウンドのタッチやテイストは過去2作の延長線上にありますし、派手さを伴う『IMAGES AND WORDS』とは相反する陰鬱さは『AWAKE』以降のそれと共通するものがあります。なので、“『IMAGES AND WORDS』の続き”を意識しすぎると肩透かしを食らうことでしょう。
ですが、本作における楽曲単位の作り込み具合や、それらをつなぐ構成力はデビュー以降もっとも高いものと言えるのではないでしょうか。ジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルも前作で見せた穏やかなトーンが本作でも随所で発揮されており、中でも「Through Her Eyes」のようなポップなバラードは前作での経験がなければここまでの仕上がりにならなかったと思います。
キーボーディストが交代したことで、最初こそシンセの音色に若干の違和感を覚える箇所もありますが、何度か聴き返しているうちに慣れてしまうと思います。逆に、前任2名と比較するとクセの強い(前衛性の高い?)フレーズなども飛び出しますが、この長尺のコンセプトアルバムにおいてはそういったポイントも良いフックに感じられるはずです。
前半の空気感も嫌いじゃないですが、やはり「Scene Six: Home」以降、特に「Scene Seven: I. The Dance Of Eternity」からのスリリングな展開がお気に入り。サブスク全盛、曲単位で音楽を聴く傾向が強い2020年という時代においても流行に逆行するようなアルバムではありますが、やはり今作は78分フルで楽しむことに意味がある作品だと思います。
チャート的には前作をさらに下回る全米73位止まりでしたが、ここ日本ではリリース当時から高く評価され、本作で得た自身は以降の作風に強く反映されることになります。そういった意味でも、“2000年代以降のDT”の基盤となった重要作とも言えるでしょう。彼らが昨年から今年初頭にかけて、本作のリリース20周年を祝して完全再現ライブを行ってきたことからも、そういった強い意思が伝わってきますよね。
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