IGGY & THE STOOGES『RAW POWER』(1973)
1973年5月にリリースされたTHE STOOGES(IGGY & THE STOOGES名義)の3rdアルバム。日本盤は初出時、『淫力魔人』の邦題のもとリリースされています。
前作『FUN HOUSE』(1970年)発表後、デイヴ・アレクサンダー(B)がアルコール中毒でバンドから解雇。イギー・ポップ(Vo)を筆頭に他メンバーもドラッグ問題に陥り、バンドは活動休止状態に陥ります。そんなタイミングに、イギーはデヴィッド・ボウイと出会い、ボウイがイギーをサポートすることに。イギーはTHE STOOGEを再生させようと、ジェーウズ・ウィリアムソン(G)とともに音楽活動を再開させます。新たなリズム隊を探すものの、なかなか良いメンツに恵まれず、結果として旧THE STOOGESからロン(G)&スコット(Dr)のアシュトン兄弟を呼び戻し、ロンがベースにスイッチすることで新生THE STOOGESとしての活動が始まるわけです。
すべての楽曲をイギーとジェームズで制作し、プロデュースをイギーが担当、ボウイがミックスを手がけた『RAW POWER』では、初期のアートロック的なテイストが完全に払拭され、ガレージロック色をさらに強めた初期パンク的な作風を確立。以降に続くイギーのパブリックイメージを定着される上でも、非常に重要な1枚となりました。また、オープニングを飾る「Search And Destroy」やタイトルトラック「Raw Power」などは、現在まで多くのアーティストたちにカバーされる人気ナンバーで、イギーもソロになってからも演奏する機会を多く持ちました。
本作は1997年に国内初CD化されておりますが、実はこのバージョンは1973年のオリジナル盤とはミックスがまったく異なります。というのも、1997年バージョンはミックスをイギーがやり直しているのです。ボウイがミックスしたオリジナルバージョンはリズムトラック音圧が低く、ボーカルとギターのみが前に出過ぎていて、このバンドが本来持つ暴力性や狂気性を表現しきれていない気がします。
このミックスに対する不満の声が多かったことに対し、イギーは「どの曲も音が全部振り切れるくらいボリュームを上げて、すごい激しいミックスになったぜ!」とやりすぎってくらい高音圧で激しいリミックスバージョンを完成させます。のちに「スタッフが怖気づいておとなしいバージョンってのを作ったが、俺は聴くことさえ拒否した」とのことで(笑)、そちらの修正版の仕上がりも気になるところです。
内容に関しては文句なし。生々しいロックンロールをベースに、パンクやブルースを味付けに、時にはハードロックと言わんばかりのヘヴィさも表現された本作は、ボウイ版よりもイギー版のミックスで聴くことをオススメします。なお、ボウイ版ものちにCD化され、現在もストリーミングサービスで聴くことができるので、気になった方は聴き比べてみてはどうでしょう。その際、先にイギー版から聴いてしまうと、ボウイ版がペラペラに感じられること間違いなしなのでご注意を(苦笑)。
▼IGGY & THE STOOGES『RAW POWER』
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