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2021年2月

2021年2月28日 (日)

2021年1月のアクセスランキング

ここでは2021年1月1日から1月31日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2020年12月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:2020年総括(※2021年1月1日更新/NEW!)

2位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓1位)

3位:CHILDREN OF BODOM『HATE CREW DEATHROLL』(2003)(※2021年1月4日更新/NEW!)

4位:DARK TRANQUILLITY『MOMENT』(2020)(※2020年11月29日更新/↓2位)

5位:THE LOCAL BAND『LOCALS ONLY - DARK EDITION』(2015)(※2021年1月5日更新/NEW!)

6位:祝ご成人(2000年4月〜2001年3月発売の洋楽アルバム20選)(※2021年1月3日更新/NEW!)

7位:PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』(1994)(※2017年5月10日更新/Re)

8位:BRING ME THE HORIZON『Music to listen (中略) to-GO TO』(2019)(※2019年12月31日更新/Re)

9位:GATECREEPER『DESERTED』(2019)(※2019年10月7日更新/Re)

10位:RAMONES『RAMONES』(1976)(※2021年1月15日更新/NEW!)

 

11位:DAVID BOWIE『THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS』(1972)(※2021年1月10日更新/NEW!)

12位:IGGY & THE STOOGES『RAW POWER』(1973)(※2021年1月11日更新/NEW!)

13位:SOILWORK『A WHISP OF THE ATLANTIC』(2020)(※2020年12月9日更新/↓5位)

14位:TMQ-WEB: 2020年の年間アクセスランキングTOP50(※2021年1月2日更新/NEW!)

15位:DAVID BOWIE『LET'S DANCE』(1983)(※2021年1月6日更新/NEW!)

16位:DEFTONES『OHMS』(2020)(※2020年9月28日更新/↓6位)

17位:PRINCE『BATMAN』(1989)(※2019年2月13日更新/Re)

18位:NINE INCH NAILS『THE FRAGILE』(1999)(※2019年1月25日更新/↓11位)

19位:ANDY TAYLOR『THUNDER』(1987)(※2017年9月28日更新/Re)

20位:THE WiLDHEARTS『30 YEAR ITCH』(2020)(※2020年12月7日更新/↓4位)

 

21位:THE SMASHING PUMPKINS『ADORE』(1998)(※2018年9月1日更新/↓15位)

22位:DEFTONES『COVERS』(2011)(※2018年8月29日更新/Re)

23位:IHSAHN『PHAROS』(2020)(※2020年9月14日更新/Re)

24位:HAREM SCAREM『CHANGE THE WORLD』(2020)(※2020年3月12日更新/↓20位)

25位:L.A. GUNS『RENEGADES』(2020)(※2020年12月12日更新/↓8位)

26位:THE DAMNED『MACHINE GUN ETIQUETTE』(1979)(※2021年1月18日更新/NEW!)

27位:WHITESNAKE『LOVE SONGS』(2020)(※2020年11月9日更新/Re)

28位:THE STONE ROSES『SECOND COMING』(1994)(※2019年9月2日更新/Re)

29位:THE CLASH『COMBAT ROCK』(1982)(※2021年1月21日更新/NEW!)

30位:YNGWIE MALMSTEEN『ECLIPSE』(1990)(※2020年4月11日更新/Re)

2021年2月のお仕事

2021年2月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※2月28日更新)

 

[WEB] 2月28日、「BARKS」にてライブレポート和楽器バンド、ファッションイベント<TGC>に初登場が公開されました。このほかにも各媒体にて掲載中です。

[WEB] 2月25日から配布される「ひかりTVガイド」誌2021年3月号にて、ドラマ「ボーダレス」特集内 櫻坂46森田ひかる&日向坂46齊藤京子インタビューを担当・執筆しました。WEBでも無料公開中です。

[WEB] 2月25日、「リアルサウンド」にてインタビューINORANが考える、流れに身を委ねることの大切さ 「気持ちに余裕を持っていないと乗り越えていけない」が公開されました。

[WEB] 2月23日、「リアルサウンド」にてコラム配信でしか味わえない乃木坂46のライブの魅力 『9th YEAR BIRTHDAY LIVE』はオンラインで楽しんでが公開されました。

[WEB] 2月22日、「リアルサウンド」にてコラムTHE YELLOW MONKEY『30th Anniversary LIVE』に至る軌跡 バンドがコロナ禍で直面した葛藤と決断を追うが公開されました。

[WEB] 2月22日、「リアルサウンド」にてコラムLittle Glee Monster、芹奈不在で臨んだ全国ツアー日本武道館公演 オンデマンド配信から感じた4人の決心の重みが公開されました。

[WEB] 2月21日、「ひかりTV」公式サイトにて掲載中の『大好き!櫻坂46~芸能界“櫻”満開計画&ライブ映像蔵出しSP~』特集にて櫻坂46菅井友香&松田里奈インタビューが公開されました。

[WEB] 2月19日、「ポニーキャニオン公式ニュース」にてライブ評BAND-MAID、世界67カ国から視聴され、全米トレンド4 位となった話題のオンラインライブ映像作品が5月26日に発売決定!オフィシャルレポートも到着!ゲリラ配信シングル「about Us」のライブ映像も先行公開!が公開されました。このほかにも各媒体にて掲載中です。

[WEB] 2月18日、「リアルサウンド」にてインタビュー久保ユリカが語る、ソロデビュー5周年でたどり着いた“自分らしさ” 「5年経たからこそ表現できるようになった部分もある」が公開されました。

[紙] 2月17日発売「別冊カドカワScene 05」にて、ヒプノシスマイクBuster Bros!!!各キャラクター解説、最新バトルCDレビュー、気になるエンタメTOPICSなどを執筆しました。(Amazon

[紙] 2月15日発売「BRUTUS」No.933にて、特集「アイドルマスター」内企画「プロデューサーがプロデューサーをやってみた。」もふくちゃん、山田昌治の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 2月15日発売「週刊プレイボーイ」2021年9号にて、櫻坂46守屋麗奈のインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月14日、「週プレNEWS」にてインタビュー櫻坂46、二期生の要注目メンバー・守屋麗奈「坂道グループのセミナーは大学の入学式を抜けてスーツで参加しました」が公開されました。このほかにも各媒体にて掲載中です。

[WEB] 2月13日、「BARKS」にてライブレポート和楽器バンド、<LIVE SDD>で新曲「生命のアリア」を披露が公開されました。このほかにも各媒体にて掲載中です。

[WEB] 2月10日、「リアルサウンド」にてコラムMAN WITH A MISSIONが『ONE WISH e.p.』に込めたバンドとリスナーをつなぐ“願い” 激動のコロナ時代を生きた証を聴いてが公開されました。

[紙] 2月4日発売「日経エンタテインメント!」2021年3月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

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また、2021年1月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2101号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

ROD STEWART『OUT OF ORDER』(1988)

1988年5月23日にリリースされた、ロッド・スチュワートの15thアルバム。日本盤は同年6月25日発売。

80年代のロッドは全米TOP10入りするヒットシングルはいくつか存在していたものの、アルバムとしては(70年代のヒット作と比較して)どこか印象が薄いものばかり。そんな彼が起死回生を狙ってパートナーに選んだのが、当時THE POWER STATIONでの大躍進を経てDURAN DURAN脱退〜ソロ活動を開始したばかりのアンディ・テイラーでした。

アルバム収録曲の多くをアンディと一緒に書き、さらにアンディはギタリスト&プロデューサーとしてもアルバムに参加。そのアンディとの関係もあり、プロデューサーにはCHICのバーナード・エドワーズも名を連ね、レコーディングにはバーナード(B)&トニー・トンプソン(Dr)のCHIC/THE POWER STATION組もプレイに加わっています。

すべての楽曲で彼らがプレイしているわけではありませんが(このほか、ギターではマイケル・ランドゥー、デヴィッド・リンドレー、ジム・クリーガンら、ベースにボブ・グラウブ、ドラムにBABYSのトニー・ブロックなどが参加)、ロッド&アンディが表現したかったことはわかりやすい形で表現された、クオリティの高いポップロック作に仕上がっています。全体的にはTHE POWER STATIONの1作目というよりは、それ以降のアンディのソロや彼がプロデュースするTHUNDERTHE ALMIGHTYの諸作品をもっと落ち着いた作風にまとめた感じといいましょうか。ドラムのパワフルさからは、そういった作品との共通点を見つけられるはずです。

アンディも数曲でギターソロを披露していますが、あくまで主役はかのロッド・スチュワート。ロバート・パーマーと同じやり方では通用しないことがわかってか、ボーカルを立てた若干引き気味のミックスでギターを(それなりに)弾きまくっています。ちょうど自身のソロ作『THUNDER』(1987年)でやりたい放題したあとなだけに、この抑え方には思わずクスっとしてしまうものもあります。

まあとにかく、どの曲もよく練り込まれた“時代を感じさせるもの”ばかりで、「Lost In You」(全英21位/全米12位)、「Forever Young」(全英57位/全米12位)、「My Heart Can't Tell You No」(全英49位/全米4位)、「Crazy About Her」(全米11位)など年またぎでヒットシングルが連発。さらにこのあと、ベストアルバムからの「This Old Heart Of Mine」(全英51位/全米10位)、「Downtown Train」(全英10位/全米3位)のヒットも続き、アルバム自体も全英11位/全米20位の好成績を記録。数字的には中途半端に見えますが、セールス面ではアメリカのみで200万枚を超えるヒット作となっており、10年ぶりのマルチプラチナムを達成しています。

ロッドのソロ作といえば、FACES以降の70年代のソロ作に注目が集まり気味ですが、このへんのAOR的ポップロックも意外と悪くないんですよ。特に本作に関してはTHE POWER STATION界隈のメンバーが勢揃いしていますしね。同時期、かのロバート・パーマーは独自のミクスチャーロック/ポップを追求した『HEAVY NOVA』(1988年)を制作していますし、そのへんを踏まえて聴くとまた違った見え方がするのではないでしょうか。

本サイトでロッドの作品ってほぼ取り上げてこなかったので、これを機に今後も忘れた頃に紹介していこうと思います。

 


▼ROD STEWART『OUT OF ORDER』
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2021年2月27日 (土)

DURAN DURAN『ASTRONAUT』(2004)

2004年9月28日にリリースされたDURAN DURANの11thアルバム。日本盤は同年10月20日発売。

1986年にアンディ・テイラー(G)、ロジャー・テイラー(Dr)が相次いで脱退し、1997年にはジョン・テイラー(B)も脱退し、デビュー時のメンバーはサイモン・ル・ボン(Vo)とニック・ローズ(Key)のみになっていた2000年前後のDURAN DURAN。ところが、2001年のアンディ、ロジャー、ジョンの3人がバンドに復帰し、2003年からは日本をはじめ世界各国でクラシック・ラインナップによるツアーで大成功を収めます。

そのツアーの準備を兼ねて新曲制作にも臨んでいたバンドは、旧知の仲であるナイル・ロジャース(CHIC)のほか、アヴィリル・ラヴィーンLINKIN PARK、GOOD CHARLOTTEなどで成功を収めていたドン・ギルモア、TLCやBOYZ II MEN、メイシー・グレイなどで知られるダラス・オースティン、カバーアルバム『THANK YOU』(1995年)からバンドのレコーディングに携わるマーク・ティンレイをプロデューサーに迎えてアルバムを完成させます。それがEpic Records移籍第1弾作品となる『ASTRONAUT』です。

テイスト的にはロック色濃厚なリードシングル「(Reach Up For The) Sunrise」(全英5位/全米89位)の印象が強いかもしれませんが、全体的にはロックとポップス、ブラックミュージックをミックスしたニューウェイヴ風味の“らしい”スタイルで、非常にバランスの良い1枚に仕上がっています。なんとなくですが、この5人で制作したデビューアルバム『DURAN DURAN』(1981年)から20数年経て、大人になった5人が同じ方向性で新曲を作ったらこうなった、という印象も受けます。同じくシングルカットされた「Nice」のような小気味良いリズムのファンクロック、「Astronaut」で聴けるニューウェイヴの“その先”感は、まさに“あの頃”のDURAN DURAを進化させたようなスタイルですしね。

と同時に、“90年代のDURAN DURAN”をこの5人で実演したような「What Happens Tomorrow」(全英11位)や「Chains」のような楽曲も存在し、ただ単に初期を焼き直しでは終わらず、しっかり90年代の彼らも“なかったことにしない”のはさすがだなと思いました。思えばリユニオンツアーでもしっかり「Ordinary World」などのヒット曲は演奏されていましたものね。

音の質感や味付けはモダンに進化していますが、軸にあるものは“あの頃”と何も変わっていない。アルバム本編を締めくくる「Still Breathing」を聴く頃には誰もがそう実感できる、そんなキャリア総括&原点回帰な1枚ではないでしょうか。

なお、本作はiTunesやAmazonなどでダウンロード購入(単曲購入不可)できるものの、ストリーミング配信では聴くことができません。Apple Musicがスタートした2015年には聴けたはずですが、いつの間にやら国内では消えているし。同じくEpic Recordsからリリースされた次作『RED CARPET MASSACRE』(2007年)は今でもサブスクで聴けるのに。ぜひすぐにでも配信再開していただきたい1枚です。

※追記(2021.5)
2021年3月末より『ASTRONAUT』を含む、未配信だった90年代末〜2000年代前半のアルバムがストリーミング解禁されました。めでたしめでたし。

 


▼DURAN DURAN『ASTRONAUT』
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2021年2月26日 (金)

ROBERT PALMER『HEAVY NOVA』(1988)

1988年6月22日にリリースされたロバート・パーマーの9thアルバム。日本盤は同年6月24日に発売。

DURAN DURANアンディ・テイラー(当時)&ジョン・テイラー、CHICのトニー・トンプソンで結成したTHE POWER STATIONのアルバム『THE POWER STATION』(1985年)を経て発表されたソロ8thアルバム『RIPTIDE』(1985年)の大ヒット(全米8位/全英5位)と、同作からの「Addicted To Love」(全米1位/全英5位)、「I Didn't Mean To Turn You On」(全米2位/全英9位)などのシングルヒットを経て届けられた、2年半ぶりの新作。前作は『THE POWER STATION』からの流れでバーナード・エドワーズ(CHIC)がプロデュースを担当しましたが、今作ではロバートのセルフプロデュース作となっています。

タイトルの『HEAVY NOVA』はヘヴィメタルとボサノヴァをミックスした造語。前作でのシングル曲がハードロック色の強い楽曲だったこともあり、また彼自身が元来持ち合わせているR&Bやソウルなどのテイスト(本作では特にボサノヴァに特化)もそこに織り混ぜることで、彼ならではのミクスチャーロック/ポップスがここで確立されることになります。

アルバムのオープニングを飾る「Simply Irresistible」(全米2位/全英44位)は、「Addicted To Love」をより派手にバージョンアップさせたような豪快ハードロック。MVも完全にその流れにある作風ですしね。曲中に挿入される“シャキーン”という効果音が若干ギャグっぽくも聴こえますが、そこも彼ならではのユーモアといったところでしょうか。続く「More Than Ever」は翌年にデビューする布袋寅泰&吉川晃司のCOMPLEXの楽曲アイデアにもなっているであろう1曲だし、ゲレエとポルカをミックスしたような「Change His Ways」もこの並びだと自然と入っていけるし、「Disturbing Behavior」はまさに“ヘヴィ・ノヴァ”を体現したかのようなハードで朗らかな内容に仕上がっている。

その後もTHE POWER STATION以降のロバートらしい「Early In The Morning」(全米19位)や、異色のジャズナンバー「If Could Happen To You」(ミュージカル映画楽曲のカバー)、キャッチーさの際立つソウルナンバー「She Makes My Day」(全英6位)、まんまボサノヴァな「Between Us」、民族音楽とハードロック、R&Bをミックスという少し早すぎた「Casting A Spell」、ジャーメイン・ジャクソンのカバー「Tell Me I'm Not Dreaming」(全米60位)とバラエティに富んだ楽曲が並びます。とっ散らかりっぷりは前作を遥かに超え、焦点がぼやけているようにも感じられますが、個人的にはロバート・パーマーというエンタテインメント色の強いシンガーらしい、強度が非常に高い1枚という印象すら受けます。

本作までを人気のピークに、次作『DON'T EXPLAIN』(1990年)以降はセールスを少しずつ落とし始め、2003年の『DRIVE』を最後に、彼はこの世を去ります(2006年9月)。前作でのアンディ・テイラー、次作でのスティーヴ・スティーヴンスのようなスタープレイヤーが本作に参加していたら、また話題性も違ったのかなという気もしますが、これはこれで好きなので問題なし。昨日取り上げたTHE POWER STATIONの2ndアルバム『LIVING IN FEAR』(1996年)が気に入った方は、まずは本作からロバートのソロに触れてみてはどうでしょう。

 


▼ROBERT PALMER『HEAVY NOVA』
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2021年2月25日 (木)

THE POWER STATION『LIVING IN FEAR』(1996)

1996年9月30日にリリースされたTHE POWER STATIONの2ndアルバム。日本盤は同年10月9日に発売。

ロバート・パーマー(Vo)、CHICのトニー・トンプソン(Dr)と当時DURAN DURANのメンバーだったジョン・テイラー(B)&アンディ・テイラー(G)により制作された唯一のアルバム『THE POWER STATION』(1985年)を発表するも、ロバートはツアーに参加しないまま脱退。その後、別のシンガーを迎えてツアーを行うも、短命に終わったスーパープロジェクトが1995年、オリジナルメンバー4人で10年ぶりに復活。新作に向けた曲作りを開始するものの、ジョンがドラッグ問題でバンドを離脱し、レコーディングには不参加。結局、プロデューサーのバーナード・エドワーズ(B/CHIC)がレコーディングでプレイして、約11年ぶりの新作を完成させます。

誰もが1stアルバムで聴くことができた、あのゲートリヴァーブかかりまくりのドラムサウンドをイメージして向き合ったであろうこの2ndアルバム。しかし、その整理されまくったクリアな音質/ミックスに、良くも悪くも驚かされたのではないでしょうか。そう、あのド派手はドラムサウンドはここにはありません。

だって、1996年ですよ? あのミックス、当時は完全に時代錯誤だったはず。確かに僕もリリース当時は若干肩透かしを食らいましたが、ちゃんと理性を持って考えればその思想が時代錯誤で、聴き手側の自己満足を勝手にぶつけただけだと気づくはずです。

この10年でアナログ主体から完全にデジタル主体になり、メンバーの技術/表現力も向上した。同じになるわけがないし、あの続きをやるためだけに集まったわけではない。特に、こんなに個性的な4人が集まるんですから、続編なんて最初から考えていなかったはずです。

僕が当時このアルバムを聴いてイメージしたのは、「ロバート・パーマーのアルバム『HEAVY NOVA』(1988年)をバーナード・エドワーズがプロデュースして、アンディ・テイラーが全面的にプレイしたらこうなる」というもの。ファンクやブラックミュージックのテイストは比較的控えめに、全体を包む質感はハードロックやヘヴィメタルを思わせる硬質なもので、そこに適度なデジタル色を加える……ってそれ、完全にロバートのソロアルバムじゃん、となるわけですよ。

シングルカットされた「She Can Rock It」こそ、前作での「Some Like It Hot」や「Get It On (Bang A Gong)」の延長線上にある作風ですが、今回は黒っぽさを排除した豪快なハードロックに昇華。前作にあった黒っぽさは、マーヴィン・ゲイのカバー「Let's Get It On」や穏やかな「Life Forces」、ファンキーな「Fancy That」、ソウルフルなバラード「Love Conquers All」あたりにとどめておいて、「Notoriety」「Scared」「Living In Fear」「Shut Up」などハードさを全面に打ち出す。「Dope」なんて変拍子を用いることで、モダンメタル的なテイストまで見せてくれるんだから、面白いったらありゃしない。ただ、ラストの「Taxman」(ご存知ビートルズのカバー)はちょっと蛇足かな(その選曲のベタさ含め)。これだったら、日本盤ボーナストラックの「Power Trippin'」あたりで終えてもよかったんじゃないかという気もします。

唯一の難点を挙げるとするならば、前作では「Harvest For The World」で歌声を聴かせたアンディが一切歌っていないことと、彼らしいクリーントーンでのコードストロークを耳にできないこと。前作における個人的魅力的要素がこの2つだっただけに、硬派路線に偏った本作はそこだけが残念だったかなと。

とはいえ、アンディのギタープレイをここまで思い切り楽しめたのも、自身のソロアルバム2作目『DANGEROUS』(1990年)以来6年ぶり。しかも、ロバートを含む編成での日本公演まで実現し(このときはサポートギタリストとして、THUNDERのルーク・モーリーが参加しました)、それ自体は非常にいい思い出です。と同時に、本作を完成させた直後の1996年4月、バーナードが日本滞在中に亡くなるという悲劇に見舞われたことも忘れられません(結局ジョンが復帰することなく、ツアーにはガイ・プラットが参加)。

2003年9月にはロバート、同年11月にはトニーも相次いでこの世を去っており、残念ながらTHE POWER STATIONの3作目もライブもこの先お目にかかることはできません。もし本作の直後にジョンが復帰していたら、エドワード抜きで3作目を作ることがあったのかどうかもわかりません。だけど……この先どんな“違ったこと”に挑戦してくれたんだろうと想像してみるのも、悪くないのかな。そんなことを考えつつ、久しぶりにこのアルバムに触れてみました。何周かした今、再評価されてほしい1枚です。

 


▼THE POWER STATION『LIVING IN FEAR』
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2021年2月24日 (水)

ANDY TAYLOR『DANGEROUS』(1990)

海外では1990年夏、日本では同年12月にリリースされたアンディ・テイラーの2ndアルバム。

ソロデビュー作となった『THUNDER』(1987年)から約3年半の歳月を経て届けられた本作は、MCA RecordsからA&M Recordsへと移籍して最初の作品。本来ならここで気合いの入ったオリジナル作品を期待したいところですが、実際に発表されたのは自身のルーツを提示したカバーアルバムでした。

その収録内容はTHIN LIZZY「Don't Believe A Word」、ロッド・スチュワート「Stone Cold Sober」、BAD COMPANY「Feel Like Making Love」、THE KINKS「Lola」、MONTROSE「Space Station No.5」、THE ROLLING STONES「Sympathy For The Devil」、ウィルソン・ピケット「Mustang Sally」、MOTT THE HOOPLE「Violence」、J.J.ケイル/エリック・クラプトン「Cocaine」、AC/DC「Live Wire」と60〜70年代のルーツロック中心の選曲。アンディはギターはもちろん、ボーカリスト、そしてプロデューサーとして本作をハードロック色の強いテイストにまとめ上げています。

この時期のアンディはTHUNDERのデビューアルバム『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)THE ALMIGHTYの2ndアルバム『SOUL DESTRUCTION』(1991年)などでプロデューサーとして活躍し始めた時期。デビューアルバム『THUNDER』はSEX PISTOLSのスティーヴ・ジョーンズとの共同プロデュース作でしたが、そこでの経験がのちのこうしたプロデュース業に大きく役立ったことは否めないでしょう。今作で聴くことができるふくよかなサウンド・プロダクションも先の『BACKSTREET SYMPHONY』や『SOUL DESTRUCTION』との共通点を見つけることができ、“プロデューサー=アンディ・テイラーらしさ”みたいなものが確立されつつあることが伺えます。

アレンジも全体的にかなりハードロック色の強いテイストで、取り上げられた楽曲との相性もあってか、『THUNDER』よりもかなり硬質な印象を受けます。どうせならこの音やアレンジで最新のオリジナル曲を聴きたかったな……という思いも当時はありましたが、これはこれで楽しめたので良しとします。今聴いても楽しいですしね。

あと、「Sympathy For The Devil」や「Mustang Sally」をダンサブルなハードロックに仕上げてしまうセンスに、DURAN DURANのギタリストという肩書きを思い出さずにはいられません。結局、望むと望まざると自身のルーツは“元DURAN DURAN”というところまで含まれるってことなんですよね。

本作は現在廃盤状態。2010年頃にアンディのオフィシャルサイトやiTunes Store、海外の一部配信サイトで当時のシングルに収録されたカップリング曲3曲(FREE「Be Good To Yourself」、デヴィッド・ボウイ「Suffragette City」、THE JESS RODEN BAND「Winner With You (I'm On A Winner With You)」)を加え、曲順を変更した形でデジタルリリースされていますが、現在日本ではiTunesでの購入不可。海外ではさらにボーナストラックを加えた形でSpotifyで聴くことができるようですが、日本ではいまだに入手不可/試聴不可な状態。このアルバム以降、アンディはフルアルバムを一切発表していないので、何かのついでに再発されることもないでしょうから、できることならストリーミングサービスで手軽に聴くことができるようにしてほしいものです。

 


▼ANDY TAYLOR『DANGEROUS』
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2021年2月23日 (火)

THE ALMIGHTY『SOUL DESTRUCTION』(1991)

1991年3月30日にリリースされたTHE ALMIGHTYの2ndアルバム。日本盤は同年5月25日発売。

スコットランド・グラスゴー出身の4人組バンドが1stアルバム『BLOOD, FIRE AND LOVE』(1989年)、ライブアルバム『BLOOD, FIRE AND LIVE』(1990年)に続いて制作した2作目は、プロデューサーに当時THUNDERのデビューアルバム『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)を手がけたばかりのアンディ・テイラーex. DURAN DURAN、ex. THE POWER STATION)を迎えて制作。本作をもってオリジナル・ギタリストのタントラム(G)が脱退し、ピート・フリージン(ex. ALICE COOPER BANDなど)が加入することで本格的な最盛期を迎えます。

「Free 'n' Easy」(全英35位)、「Devil's Toy」(同36位)、「Little Lost Sometimes」(同42位)とスマッシュヒットシングルが続出した本作は、チャートインを逃した『BLOOD, FIRE AND LOVE』と打って変わって全英22位という好記録を残しています。1991年春というと、時期的にグランジ・ムーブメント勃発前。特にイギリスでは1990年前後に粒ぞろいの新人バンドが続々とメジャーデビューしていますが、このTHE ALMIGHTYはその中でもMOTÖRHEADの後継者的存在として評価されたことも、この高成績につながったのかもしれません。

音質的には同じくアンディ・テイラーのプロデュース作『BACKSTREET SYMPHONY』(THUNDER)に近いゴージャスさを感じさせるものですが、そこで鳴らされる楽曲群はパンクロックを通過した荒々しいハードロック。もし“GUNS N' ROSES以降”という表現が存在するとしたら、彼らもその流れを汲むひとつと言えるでしょう。アルバムのオープニングを飾る「Crucify」こそMOTÖRHEAD直系のハードブギーですし、続くシングル曲「Free 'n' Easy」もキャッチーさを伴うストレートなハードロックですが、「Joy Band One Time」や「Love Religion」「What More Do You Want」「Hell To Pay」などダーティさを伴うスリージーロックンロールはまさに“GUNS N' ROSES以降”そのもの。そこに「Little Lost Sometimes」をはじめとするスローナンバーが加わることで、アルバム全体に色彩豊かさを与えています。

全体的にモノトーンな印象の強かった前作から、楽曲のバラエティ面で一気に開花した本作。これもアンディ・テイラーの手腕によるものが大きいのでしょうか。しかし、バンドとしてはこれを良しとしなかったのか、続く3rdアルバム『POWERTRIPPIN'』(1993年)ではさらにヘヴィ&タフな作風へとシフト。そこにモダンヘヴィネス色も追加され、バンドとしてより一段高い場所へと上り詰めることになります。

本作の日本盤(すでに廃盤)にはボーナストラックとしてSEX PISTOLS「Bodies」、そして「Hell To Pay」のアコースティック・バージョンを追加収録。この2曲に当時のシングルC/W曲をまとめたボーナスディスクがついたデラックス・エディションも、2015年に海外でリリースされています。前者は中古盤ショップで、後者はネットショップなどで見つけられると思うのでご参考まで。

なお、本作は日本の各種ストリーミングサービスでは未配信。というか、THE ALMIGHTYのオリジナルアルバムはすべて未配信なので、どうにかしていただきたいなと思う次第です。

 


▼THE ALMIGHTY『SOUL DESTRUCTION』
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2021年2月22日 (月)

RICKY WARWICK『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』(2021)

2021年2月19日にリリースされたリッキー・ウォリックBLACK STAR RIDERSTHIN LIZZY、ex. THE ALMIGHTY)の5thアルバム。

オリジナル・ソロアルバムとしては『WHEN PATSY CLINE WAS CRAZY & GUY MITCHELL SANG THE BLUES』(2014年)から約7年ぶり、カバーアルバム『STAIRSELL TROUBADOUR』(2015年)からも約6年ぶりの新作音源。その間にBLACK STAR RIDERSとして3枚のアルバムを制作しているので、まあ順当なスパンと言えるでしょう。

過去数作はリッキーがひとりで録音したプライベート感の強い作風でしたが、今作では元BUCKCHERRYのキース・ネルソン(G)がプロデュース&楽曲制作で参加。レコーディングにもギタリストとして参加したほか、同じく元BUCKCHERRYのザヴィエル・ムリエル(Dr)や、BLACK STAR RIDERSのロバート・クレイン(B)がバンド形態としてレコーディングに加わっています。また、ゲストプレイヤーとしてジョー・エリオット(Vo/DEF LEPPARD)、ルーク・モーリー(G/THUNDER)、アンディ・テイラー(G/ex. DURAN DURAN、ex. THE POWER STATION)、ディジー・リード(Key/GUNS N' ROSES)といった錚々たる面々が名を連ねており、リッキーの人脈の太さを改めて感じることができます。

が、そういったゲストの名前なしでも、本作はTHE ALMIGHTYからTHIN LIZZY、BLACK STAR RIDERSまでリッキーの活動を追ってきたリスナーに存分にアピールするクラシカルなハードロック作品に仕上がっており、特に近年のリッキー参加作品に心ときめかせてきた者なら誰もが一発で気にいる作品だと断言できます。基本的にはBLACK STAR RIDERSの延長線上にある、THIN LIZZYテイストの王道ブリティッシュハードロックが展開されておりますが、そこにキース・ネルソンのカラーが加わることで、初期THE ALMIGHTYを思わせる破天荒なパンクロックテイストの強い楽曲も存在。これらが良いバランスでミックスされることで、リッキーの約30年にわたる音楽活動の総決算とも言える内容になったのではないでしょうか。

リッキー自身は本作を「トム・ペティのようなシンプルなメロディに、JOHNNY THUDERS & THE HEARTBREAKERSの快楽主義的怒りを掛け合わせたもの」と描写していますが、その例えが本当にぴったりな1枚。モダンメタル期のTHE ALMIGHTYっぽさは皆無ですが、初期&末期の彼らやのちのTHIN LIZZY〜BLACK STAR RIDERSへの流れもしっかり踏まえられており、個人的にもかなりツボな仕上がり。中盤の「Gunslinger」「Never Corner A Rat」あたりはBUCKCHERRY的な側面もしっかり伝わるし、リッキー&キース両者の個性が良い形で反映された、見事なタッグ作ではないでしょうか。

UKらしい湿り気の強い王道ハードロックあり、軽快なパンクロックあり、内省的なアコースティックナンバーありと、聴き応え満点の1枚。かなりの高ポイントです。

なお、日本盤や海外盤デラックス・エディションのみ2015年発売のカバーアルバム『STAIRSELL TROUBADOUR』がボーナスディスクとして付属。こちらは「You Spin Me Round (Like A Record)」(DEAD OR ALIVE)、「Ooops!... I Did It Again」(ブリトニー・スピアーズ)、「Summertime Blues」(エディ・コクラン)、「I Don't Want To Grow Up」(RAMONES)、「I Fought The Law」(THE CLASH)、「Wrathchild」(IRON MAIDEN)などのカバーに加え、THE ALMIGHTY「Jesus Loves You... But I Don't」のセルフカバーという全10曲を収録。カントリータッチにアレンジされた「You Spin Me Round (Like A Record)」や原曲のイメージどおりの「Summertime Blues」、アコースティックアレンジで完全にブルースと化した「Wrathchild」など、1枚通して十分に楽しめる仕上がりです。

ただ、先の『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』本編とは切り離して聴くべき1枚かなと。録音時期も相当ズレていますし、制作過程も参加メンバーもまったくことなるので、本当にオマケ程度で切り分けて考えてもらえればと思います。2枚合わせて考えてしまうと、こっちが足を引っ張る結果になりかねないので……。

 


▼RICKY WARWICK『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』
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2021年2月21日 (日)

JOEL HOEKSTRA'S 13『RUNNING GAMES』(2021)

2021年2月12日にリリースされたJOEL HOEKSTRA'S 13の2ndアルバム。日本盤は同年2月19日に発売。

その名の通り、JOEL HOEKSTRA'S 13は元NIGHT RANGER/現WHITESNAKEのジョエル・ホークストラ(G)によるソロプロジェクト。2015年に1作目『DYING TO LIVE』を発表しており、本作が約5年ぶりの新作となります。

前作ではラッセル・アレン(Vo/SYMPHONY X、ADRENALINE MOB)、ジェフ・スコット・ソート(Vo/SOTO、W.E.T.、SONS OF APOLLOなど)、ヴィニー・アピス(Dr/ex. BLACK SABBATH、ex. DIOなど)、トニー・フランクリン(B/ex. BLUE MURDER、ex. WHITESNAKEなど)が固定メンバーでしたが、今作ではそこに前作でのゲストメンバーだったデレク・シェリニアン(Key/BLACK COUNTRY COMMUNION、SONS OF APOLLO)を加えた編成にバージョンアップ。が、ジェフは今作ではリードボーカルではなくバック・ボーカルとしてクレジットされています(メインでまるまる1曲歌うようなことはありませんが、要所要所でジェフらしい歌声も聴こえてきます)。

実は僕、前作は聴いておりません。なので、ここは本作のみを聴いた率直な感想を書き残しておきたいと思います。

正直、ジョエルというギタリストに対する音楽的印象がほぼなく接したのですが(むしろ、NIGHT RANGERがいい感じに再浮上し始めた時期にWHITESNAKEに鞍替えしたことを根に持っており、ネガティブな印象が強かった)、オープニング「Finish Line」を聴いたときは「ああ、最近のWHITESNAKEにありそうな曲だな……『FLESH & BLOOD』(2019年)の元凶はお前か……っ!」と思ったものの、曲が進むにつれて……まあモダンなWHITESNAKE的な産業ロック調の楽曲もあるにはあるものの、それよりも本作の軸になっているのはいわゆる“メロハー(メロディックハードコア……じゃない、メロディックハードロック)”、それも欧州寄りの湿り気を残したメロハーなのかなと。4曲目「How Do You」あたりに到達して、そう感じました。

そうと気づいてからは、「Heart Attack」のような曲を聴いても「ああ、そういう北欧メロハーバンドいるよねー」と好意的に受け取ることができるように。人の印象っていい加減というか、自分の中で引っかかる点を見つけられたらあとは可能な限りポジティブに受け取ろうとするんですね、「ジョエル、本当はこういうのやりたいんだ……じゃあWHITESNAKEは出稼ぎみたいなもんか!」とか(後半は違うな)。すごく聴きやすい、良質なメロディアスハードロックをたっぷり楽しめる1枚ではないでしょうか。本当に悪い印象はないです、平均点以上の楽曲ばかりですし。聴いていて楽しいし。

でも、そこまでというのもまた事実。正直な話、「これ!」という90点超えのキラーチューンが1曲だけでもあれば、さらに良い印象なんだけど。全曲70〜80点前後。「Cried Enough For You」あたりはいい線行ってるんだけど、もう一歩なんだよなあ……もちろん、全編においてこれだけのクオリティを保てていること自体すごいことなんですけどね。ただ、加えてギタリストとしての個性も……うん。結局、ソングライターとして大成したいのか、ギタリストとして出世したいのか、そのどっちも中途半端な印象を受けてしまうんですね。だから、これだけ豪華なメンツを揃えていても、そこまでスペシャルな印象を受けない。すべてにおいて「あと一歩」と感じてしまう勿体なさ。そこだけが本当に残念です。

何も考えずに楽しむには申し分のない1枚。ただ、年間ベストクラスではないかな。好きな人にはたまらないと思いますが、僕はたまに聴くくらいで丁度よい佳作かなと。コンスタントに続けるのなら、次に期待したい。それくらいには注目を続けておきます。

(改めて読み返してみたけど、比較的ネガティブに受け取れますよね。でも、僕的にはかなりポジティブに受け取った1枚です。そもそも気に入らなかったら紹介してないですからね!)

 


▼JOEL HOEKSTRA'S 13『RUNNING GAMES』
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2021年2月20日 (土)

WHITESNAKE『THE BLUES ALBUM』(2021)

2021年2月19日にリリースされたWHITESNAKEの最新コンピレーションアルバム。

本作は昨年6月発売の『THE ROCK ALBUM』、11月発売の『LOVE SONGS』に続く、<Red, White and Blues Trilogy>と題した新編集によるベストアルバム三部作の最終章。Red=ラブソング、White=ロックアンセム、Blue=ブルースをテーマに選曲された楽曲群が、最新リマスター&リミックスにより新たな形に生まれ変わりまとめられています。

今作は文字通り、ブルース“寄り”の楽曲を集めたもの。WHITESNAKEでブルースナンバーといえば、それこそ70年代後半から80年代初頭の名盤たちからの楽曲を多数イメージするかと思いますが、そこは今のデヴィッド・カヴァーデイルのこと。本格的全米進出を果たす『SLIDE IT IN』(1984年)以降の作品からピックアップされた楽曲群のみで構成されており、初期の彼らに多少なりとも魅せられた身としては若干の肩透かしは否めません。

以下、収録曲の内訳です。

M-4:『SLIDE IT IN』(1984年)
M-3、13、14:『WHITESNAKE』(1987年)
M-4、6、12:『RESTLESS HEART』(1997年)
M-8:『INTO THE LIGHT』(2000年/ソロ)
M-10:『LIVE: IN THE SHADOW OF THE BLUES』(2006年)
M-2、7、11:『GOOD TO BE BAD』(2008年)
M-1、9:『FOREVERMORE』(2011年)

過去2作にあったようなアウトテイク(未発表曲)は今回皆無。『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)からは1曲も選ばれていません。まあブルースっぽい曲、ほとんどなかったしね。入れるならせめて「Sailing Ships」かなと思ったんですけど、違ったようです(単純に収録容量の問題も大きいかと。本作は3作中もっとも少ない14曲ですが、トータルランニングは78分ありますし)。

「Give Me All Your Love」がブルースか?と問われると確かに疑問ですが、この曲をシンプルに演奏したら確かにブルースなんですよね。まあ、あの音がすべての元凶なわけなので、ここではその話題は置いておきます(苦笑)。また、個人的にはCOVERDALE・PAGEあたりからも1曲くらい選んでくれてもよかったのに、と思っていたのですが、そっちはそっちで間もなく30周年エディションの準備があるようなのでタマを残しておきたいのでしょう。

で、ザーッと通して聴いてみたのですが……ある程度納得できる、無難な戦局かなと。でも、『THE ROCK ALBUM』との違いってなんだろう?と。だって、先の「Give Me All Your Love」なんて『THE ROCK ALBUM』にも収録されているんですから、最初は何かの間違いかと思いましたよ。それ入れるんだったら、ほかにもセレクトすべき曲はあっただろ、と。「Too Many Tears」も被りっちゃあ被りですが、『LOVE SONGS』に収録されたのはカヴァーデイルのソロアルバム『INTO THE LIGHT』バージョンで、こっちは『RESTLESS HEART』バージョン。そこでカサ増しするほど曲が少ないわけじゃないでしょうに。もうちょっと3作購入する側のことも考えてほしかったな(まあ、そういうコンセプトなんだよ!と言われてしまったらそれまでですが)。

過去2作同様、今作でも録音の時代/環境/エンジニアが異なる音源を統一感の強いリミックスにより再構築。『WHITESNAKE』の音も『RESTLESS HEART』の音も、続けて聴いて違和感なく楽しめます。というか、『WHITESNAKE』のサウンドは数年前のリマスターバージョンよりも派手さが抑え気味で、個人的に好み。これはあれですかね、2000年代以降のアルバムに合わせた結果なんでしょうかね。「Steal Your Heart Away」や「If You Want Me」あたりを聴いて、そう感じました。

あと、個人的ツボはもうひとつ。終盤の4曲……「A Fool In Love」「Woman Trouble Blues」「Looking For Love」「Crying In The Rain」の流れが非常によかったこと。「A Fool In Love」はアレンジ的に「Crying In The Rain」の亜流と切り捨てることもできなくはないけど、アリーナロック期のWHITESNAKEによるブルースの解釈がよくわかる4曲ではないかと思いました。「Looking For Love」もブルースというよりはヘヴィバラードの類なんだけど、この並びで聴くと確かにブルースだなと納得させられます(フェードアウトしないエンディングも良し)。それと、肝心なのが「Crying In The Rain」。オープニングに付け加えられた音やシンセやオルガンを強調したミックス含め、どこか『SAINTS AND SINNERS』(1982年)収録のオリジナルバージョンへのオマージュが見え隠れします(ギターはジョン・サイクスのギターは相変わらずうるさいけど。笑)。

そんなわけで、三部作がこれですべて揃いました。この3枚を聴けばWHITESNAKEのすべてがわかる……わけではありません(苦笑)。世の中的なWHITESNAKEを知るにはこれでいいのかもしれませんが、真の意味でのWHITESNAKEを知りたければ、輸入盤で発売中の3枚組ベストアルバム『30TH ANNIVERSARY COLLECTION』(2008年)を手にすることをオススメして、このレビューを締めくくりたいと思います。

 


▼WHITESNAKE『THE BLUES ALBUM』
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2021年2月19日 (金)

MOGWAI『AS THE LOVE CONTINUES』(2021)

2021年2月19日にリリースされたMOGWAIの10thアルバム。

映画やドキュメンタリー番組のサウンドトラック、さらにはリミックス集など豊富にリリースしている印象があったのですが、オリジナルアルバムとしてはこの25年でまだ10枚なんですね。いや、2〜3年に1枚換算なら通常のペースか。むしろ、オリジナル盤以外にいろいろ出しすぎってことですね、このバンドの場合。

初の全英TOP10入り(最高6位)を記録した前作『EVERY COUNTRY'S SUN』(2017年)から3年ぶりの新作。今回も盟友デイヴ・フリッドマン(MERCURY REVTHE FLAMING LIPS、MGMTなど)をプロデューサーに迎えたほか、アッティカス・ロス(NINE INCH NAILS)とコリン・ステットソンがそれぞれ「Midnight Flit」と「Pat Stains」にコントリビューターとしてフィーチャーされています。

本作はコロナ禍の影響で、レコーディングもバンドのいるイギリスのスタジオとプロデューサーのいるアメリカとでリモートで行われたとのこと。成功を収めた前作のあとだけに、できれば一緒に作業したかったことでしょうが、それでも前作をフォローアップするに十分な力作に仕上がっていると断言できます。

基本的な路線は近作の延長線上にあり、ピースフルでムーディーな「To The Bin My Friend, Tonight We Vacate Earth」からユラユラと始まったかと思うと、エレクトロ色を強めた「Here We, Here We, Here We Go Forever」「Dry Fantasy」で早くもアクセントを付け、UKギターロック色濃厚な歌モノ「Ritchie Sacramento」で色彩豊かさを表す。もはや初期のエクストリームな側面は希薄ですが、それでも「Drive The Nail」や「Ceiling Granny」を筆頭にアルバムの随所からその片鱗も見つけることもでき、“現在進行形の集大成”といういかにも彼ららしい内容を楽しむことができます。

にしても、『AS THE LOVE CONTINUES』っていうアルバムタイトルは非常に今ならではと言いましょうか。『COME ON DIE YOUNG』(1999年)や『MR. BEAST』(2006年)、『HARDCORE WILL NEVER DIE, BUT YOU WILL』(2011年)といったタイトルを付けてきたバンドというよりは、『HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE』(2003年)や前作『EVERY COUNTRY'S SUN』に近いモードということなのでしょうか(とかいいながら、アルバムには「Fuck Off Money」なんてタイトルのヒリヒリする曲も含まれていますが)。

初期のスタイルを好むリスナーには、もはやショッピングモールのBGM程度にしか思えない作風かもしれませんが、このスタイルとしては相当な完成度の高さだと思うわけです。逆に、これがショッピングモールで流れていたら気が散って買い物どころじゃない(笑)。現代社会のサウンドトラックという意味では「そばで鳴っていてほしい音楽」ですけどね。うん、素晴らしい1枚です。

 


▼MOGWAI『AS THE LOVE CONTINUES』
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2021年2月18日 (木)

GOD IS AN ASTRONAUT『GHOST TAPES #10』(2021)

2021年2月12日にリリースされたGOD IS AN ASTRONAUTの9thアルバム。現時点で日本盤未発売。

GOD IS AN ASTRONAUTはアイルランド出身の4人組ポストロックバンド。1stアルバム『THE END OF THE BEGINNING』(2002年)以降、これまでに8枚のフルアルバムと1枚のEPをリリースしており、今作を含めると10枚の作品集を発表していることになり、今回のタイトル『GHOST TAPES #10』はそこから取られているのかなと想像します。

本作で初めて彼らの音に触れ、そこから前作『EPITAPH』(2018年)、前々作『HELIOS / EREBUS』(2015年)とさかのぼって聴いてみたのですが、なるほどこれは気持ちいい音だなと。インスト曲のみで構成された全7曲/約37分の本作は、ドリーミーさというよりは不穏さをじわじわと感じさせるサウンドスケープ/曲構成を取っており、聴き流しができないほど惹きつけられる魅力に満ちています。

クリーントーンと空間系エフェクト、狂気を感じさせるディストーションと多彩さに満ちたギターサウンドからは、時にシューゲイザー的な側面も伝わり、それは一時期のMOGWAIを彷彿とさせるものも。また、「Burial」のようにピアノなど鍵盤系、エレクトロ系のエフェクトを効果的に取り入れている点も好印象で、実にうまい形で楽曲に緩急を付けることに成功しています。

まあ、とにかく曲が良いなと。先に挙げた不穏さはコード進行やギターのエフェクト/ハーモニー、メロディなどで見事な形で表現されており、だけどそれが不思議と嫌な気持ちにならない。要所要所でメタリックなテイストも散りばめられていることから、例えばRUSSIAN CIRCLESあたりが好きなリスナーにも引っかかるものがあるだろうし、ちょっと方向性は違うかもしれないけどNINE INCH NAILSとの共通点も見つけられる。ポストメタルと呼ばれるようなジャンルと、王道のポストロックを現代的な形で結びつけた本作は、実は幅広い層にモダンメタルを印象付ける役割を果たすための重要作ではないかと思うんです。

また、1曲の尺も適度なものがあり、最長でも1曲目「Adrift」の6分57秒。ほかに6分強が2曲に5分台1曲、4分台2曲に3分台1曲と、1曲ピックアップして聴くぶんにも通して聴くぶんにも程よい長さなんですよね。40分に満たないトータルランニングも実に現代的だし、そこも含めて手軽に触れやすい1枚ではないでしょうか。

いわゆる王道HR/HM的なクサいドラマチックさは皆無で、むしろモノトーンの中でグラデーションを付けて緩急を表すタイプの音楽ですが、間違いなくメタル/ヘヴィ系、あるいはプログレを好む耳も惹きつけられるはず。個人的には“みっけもの”の1枚でした。

 


▼GOD IS AN ASTRONAUT『GHOST TAPES #10』
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2021年2月17日 (水)

DURBIN『THE BEAST AWAKENS』(2021)

2021年2月12日にリリースされたDURBINの1stアルバム。

DURBINはアメリカのオーディション番組『アメリカン・アイドル』出身のソロシンガー、ジェームズ・ダービンのソロプロジェクト。ジェームズはソロ名義でこれまでに3枚のアルバムを発表したほか、2017年から2019年にかけてはQUIET RIOTにも在籍し、『ROAD RAGE』(2018年)と『HOLLYWOOD COWBOYS』(2019年)という2枚のスタジオアルバムと『ONE NIGHT IN MILAN』(2019年)と題したライブ作品に参加しました。

そんなジェームズが、老舗LAメタル/ヘアメタルバンドを離れて新たに立ち上げたのが、自身のルーツに立ち返った“Pure Heavy Metal”プロジェクト。アルバムにはバリー・スパークス(B/ex. DOKKEN、ex. MICHAEL SCHENKER GROUP、ex. イングヴェイ・マルムスティーンB'zサポートなど)&マイク・ヴァンダーヒュール(Dr/Y&T、ジョエル・ホークストラなど)をリズム隊に、ジョン・ヤドンJr.、ディラン・ローズ、マーク・プットナム、ニック・ギャラントといったギタリスト(ジェームズ自身もギターをプレイ)やアール・サリンドー(Key)などがメンバーとして名を連ねるほか、「Kings Before You」にはクリス・ジェリコ(Vo/FOZZY)、フィル・デンメル(G/VIO-LENCE、ex. MACHINE HEAD)がゲスト参加しています。

過去のソロアルバムでは少々オルタナメタル/ハードロック寄りのスタイルでしたが、このアルバムでは先のコンセプトどおり、骨の髄までピュアなメタルを堪能することができます。だって、1曲目「The Prince Of Metal」(タイトルよ!)からして、楽曲スタイルから歌唱スタイルまでどこからどう切り取ってもヘヴィメタルそのものですからね。QUIET RIOTのときは「このバンドにしては線の細さが……」なんて思っていたけど、本作でのハイトーンを強調した歌唱法は「どこにそんな特技を隠していたんだ?」と思わされるほど。まあこの人、『アメリカン・アイドル』ではJUDAS PRIEST「You've Got Another Thing Comin'」まで歌った人ですものね。そのほかにもサミー・ヘイガー「Heavy Metal」、JOURNEY「Don't Stop Believin'」、AEROSMITH「Dream On」なども歌ってましたし、メタリックなハイトーンには定評があったわけですよ。

その「伝家の宝刀」がQUIET RIOT時代はうまく活かしきれなかった気がして。いや、曲によってはハイトーンバリバリ活用してましたけど、曲が軽すぎて印象に残らなかったというのが正解か。適材適所ってまさにこのことなんですよ。クラシカルなテイストのアップチューン「Necromancer」やDIOを彷彿とさせるミドルヘヴィ「Riders On The Wind」、ワイルドな疾走ナンバー「Calling Out For Midnight」、メロディアスな正統派メタル「The Beast Awakens」、ジャーマンメタル的なファストナンバー「Rise To Valhalla」など、高音のみならず中音域〜低音まで幅広く駆使したボーカルをベストな形で聴かせることができる楽曲が目白押しです。

個人名義のソロ作品は彼の『アメリカン・アイドル』でのイメージを、2010年代前半という時代性を反映させることで具体化できたものでしたが、このDURBINで聴ける楽曲群はそういった時代性を無視して、ジェームズ・ダービンという男が生涯をかけて表現したいHR/HMが凝縮されている。そういった意味では、本作こそが彼の真のデビューアルバムなのかもしれませんね。偏見抜きで触れてもらいたい、良質なクラシカルHR/HMアルバムです。

 


▼DURBIN『THE BEAST AWAKENS』
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2021年2月16日 (火)

THE WHITE STRIPES『MY SISTER THANKS YOU AND I THANK YOU: THE WHITE STRIPES GREATEST HITS』(2020)

2020年12月4日にアメリカでリリースされたTHE WHITE STRIPES初のグレイテストヒッツ・アルバム。同作はイギリスおよびアイルランドで2021年2月26日に、日本を含むそれ以外の諸外国では2021年2月12日に発売。

2011年2月に解散を発表しているTHE WHITE STRIPESですが、意外にもその手のコンピ盤はこれまで未発売。解散から10年という歳月を経て、レーベルの枠(Sympathy For The Records Industry / V2 Recoreds / Warner Bros. Records / Third Man Records)を超えてジャック・ホワイト(Vo, G)のプライベートレーベルThird Man Recordsの配給元Columbia Recordsからのリリースとなります。

アルバム未収録の「Let's Shake Hands」や「Jolene」(ライブの定番となっている、ご存知ドリー・パートンのカバー)を含む全26曲入りという大ボリュームで、各アルバムから満遍なく(1st『THE WHITE STRIPES』:4曲、2nd『DE STIJL』:4曲、3rd『WHITE BLOOD CELLS』:5曲、4th『ELEPHANT』:4曲、5th『GET BEHIND ME SATAN』:4曲、6th『ICKY THUMP』:3曲)セレクトされています。大半がシングルカットされたりMVが制作されたりした、耳馴染みの強く曲ばかりなので、これからTHE WHITE STRIPESに触れようというビギナーにも打って付けの内容ですし、久しぶりにこのバンドのキャリアを振り返りたいリスナーにも手っ取り早い1枚ではないでしょうか。

Tws_time実は今回このアルバムを紹介しようと思ったのは、その内容ではなく収録時間/容量にギョッとしたからです。Wikipediaには全26曲/79:28と記されていますが、実際にCDを読み込むと「81:32」という驚異的な数字が表示されます。

 

……CDっていつから82分近くも収録できるようになったの?(汗)

 

The1975この話題、実は1年前にも友人たちの間としていまして。昨年リリースされたTHE 1975の最新アルバム『NOTES ON A CONDITIONAL FORM』、こちらもCDを購入して再生しようとしたら「80:32」との表示が。恐らく自分が所持するCDの中で最長の1枚はこれだなと実感しました。

それ以前にも80分数秒という作品にはお目にかかっていましたし、技術的には不可能でないことも(特にライターになる前は合成樹脂メーカーに勤めていたので)理解していました。ただ、それをすべての再生機器で楽しめるかといったら、また別の話。古いタイプのプレイヤーやCDJ、CD-Rドライブでは最後まで再生したり、特にCD-Rドライブでのリッピングしたりするのは難しいかもしれません(最後の数曲を読み取れないというケースが多いはず)。

要するに、それだけCDの素材となるポリカーボネートの品質が向上したこと、プレス技術やデータの記憶技術が進化したこと、再生機器の性能がアップしたからこそ実現したわけです。とはいえ、これが全世界共通化といわれると実は疑問もあり。特に今回のTHE WHITE STRIPESは日本盤がBlu-spec CD2というBlu-rayと同じ素材/技術を用いたディスクなので、使用機器さえしっかりしていれば問題なく再生/リッピングできますが、これが輸入盤となるとちょっとした“賭け”が生じるかもしれません。

自分が勤めていた20年前と比べたら素材の品質も世界的に向上しているとは思いますが、それでもたまにバラツキがあるのは否めない。以前、別の80分近くある作品の輸入盤を購入したら、ラスト3曲が再生/リッピング不可というトラブルに見舞われました。再生機器数台で試したり、CD-Rドライブも新しいものに買い替えたものの、まったく同じ結果。要はブツ側が悪いわけです。最終的には購入店で事情を説明して返品、代わりに同作品の日本盤を購入しましたが、そちらは問題なく再生/リッピングできました。

……そんなことを思い出しながら、現在日本盤からリッピングしたTHE WHITE STRIPESを再生しておりますが、問題なく楽しめております。きっとこのサイトを読んでいる方の多くはストリーミングサービスで本作を楽しんでいるかと思いますが、もしこれからフィジカル購入を予定していましたら、安い輸入盤よりも日本盤で安心をとるか、アナログ盤に逃げるか検討いただけると。もちろん、すべての輸入盤が再生不可ではないですし、数百分〜数十分の1でNG品にぶつかるといった程度だとは思います。あ、あと再生機器のご確認もお忘れなく。

今回はこれが書きたくて、このアルバムをピックアップしました(笑)。内容とはまったく関係ないですが。あ、もちろん内容は最高です!(付け足し程度かよ)

 


▼THE WHITE STRIPES『MY SISTER THANKS YOU AND I THANK YOU: THE WHITE STRIPES GREATEST HITS』
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2021年2月15日 (月)

NERVOSA『PERPETUAL CHAOS』(2021)

2021年1月22日にリリースされたNERVOSAの4thアルバム。

NERVOSAはブラジル・サンパウロ出身の女性スラッシュ/デスメタルバンド。2010年の結成から着実に経験を重ねていき、2014年にNapalm Recordsと契約して以降はヨーロッパを中心に人気を集めてきました。もともとメンバーチェンジの激しいバンドではありましたが、昨年プリカ・アマラル(G)以外のメンバーが全員脱退。新たにディーヴァ・サタニカ(Vo)、ミア・ウォラス(B)、エレニ・ノタ(Dr)という3人が加わり、ベース/ボーカル兼任から専任ボーカル、専任ベースを得たことで4人編成となりました。

ミア・ウォラスのみ知名度のそこそこ高いメンバーで、彼女は過去にABBATHやTRIUMPH OF DEATHなどで活躍した経歴の持ち主。また、ディーヴァ・サタニカもBLOODHUNTERというスペインのメロディック・デスメタルバンドで活動した経験の持ち主。吐き捨てるようなボーカルスタイル、イカしてます。

過去3作をすべて聴いているわけではないので、前作『DOWNFALL OF MANKIND』(2018年)との比較にとどまってしまいますが、全体の録音バランスやミックスは非常にブライトにまとまっており、この手のバンドにありがちな「音が潰れて各楽器の音が聴き取れない」「ドラムがチープ」という難点も見当たらず、非常に聴きやすい仕上がりと言えるでしょう。また、楽曲も幾分かレベルアップしているように見受けられますし、全体的にクオリティが向上したことは間違いないようです。

全曲2〜3分台という潔い曲構成も、性別を超越した残虐さとアグレッションを骨の髄まで味わうことができる直線的な攻撃性にぴったり。デスメタルやブラックメタルを経由しながらもオールドスクールなスラッシュメタルの魅力もしっかり維持した全力疾走スタイルは、間違いなく新旧スラッシュメタルファンを魅力するはずです。こういう作品は難しいことを考えず、爆音で頭を振るに限ります。

「Until The Very End」にはギルハーム・ミランダ(ENTOMBED A.D.)がギターで、「Genocidal Command」にはシュミーア(DESTRUCTION)がボーカルで、「Rebel Soul」にはエリックA.K.(FLOTSAM AND JETSAM)がボーカルでそれぞれゲスト参加して、アルバムに華を添えています。このへんのつながりからも、NERVOSAというバンドがどこを目指しているのか、どのへんのシーンにいるのかがご理解いただけるかと思います。

これらゲストアーティストが所属するバンドのファンも、間違いなく気に入るであろう本作。これを機に、NERVOSAの日本での知名度がさらに高まることを期待しています。

 


▼NERVOSA『PERPETUAL CHAOS』
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2021年2月14日 (日)

THE PRETTY RECKLESS『DEATH BY ROCK AND ROLL』(2021)

2021年2月12日にリリースされたTHE PRETTY RECKLESSの4thアルバム。日本盤は2月24日発売予定。

前作『WHO YOU SELLING FOR』(2016年)から約4年半ぶりの新作。海外ではFearless Records / Century Media Recordsへ、日本ではSony Musicへとレーベル移籍しての第1弾作品となります。

前作リリース後、バンドはSOUNDGARDENとのツアーを行なっていましたが、そのツアー途中でクリス・コーネルが亡くなるという悲劇に見舞われます。さらに、デビュー作からタッグを組んできたプロデューサーのケイトー・カンドゥワラが2018年春にバイク事故で急逝。バンドは負のスパイラルに陥ります。

しかし、2018年暮れから次作に向けた制作に着手。長年の友人ジョナサン・ワイマンを新たな共同プロデューサーとして迎え、1年以上にわたるスタジオセッションを経て完成に至ったのがこの『DEATH BY ROCK AND ROLL』という象徴的なタイトルが付けられたアルバムです。

バンドの中心人物であるテイラー・モムセン(Vo, G)に対して、ドラマ『ゴシップガール』のイメージをいまだに持っているという人も少なくないかもしれませんが、THE PRETTY RECKLESSとしての活動もすでに10数年。個人的にはデビューアルバム『LIGHT ME UP』(2010年)で一発ノックアウトされたクチなので(かつ『ゴシップガール』は観ていなかったので)、テイラー・モムセン=次世代のロック・ヒロインという印象が強く、本作もその延長で接したのですが……完全に化けましたね。適度なヘヴィさと適度なスモーキーさ、それでいてしっかりポップさも際立っている。問答無用にカッコいいロックアルバムだと断言できます。

本作には象徴的なタイトルの「Death By Rock And Roll」や「Rock And Roll Heaven」、SOUNDGARDENのキム・セイル(G)&マット・キャメロン(Dr)がゲスト参加した「Only Love Can Save Me Now」や、RAGE AGAINST THE MACHINEのトム・モレロをフィーチャーした「And So It Went」のようなガッツのある楽曲がある一方で、キャッチーなミディアムスローナンバー「Got So High」、つなぎ的な短尺曲ですが異色の仕上がりな「Broomsticks」、切なげなアコースティックバラード「Standing At The Wall」、テイラーにとってターニングポイントとなった25歳について歌った不穏な「25」、ブルースハープを取り入れたアーシーな「Harley Darling」など、非常にバラエティ豊かな内容。序盤こそタフでヘヴィに感じられるかもしれませんが、曲が進むにつれて中盤以降の奥行きの広さには驚かされることでしょう。ビビッドなカラフルさとは異なる、モノトーンの中でグラデーションで変化を付けていくスタイルは、まさにこのバンドならではといったところでしょうか。

スタートはダークなところから始まったのかもしれませんが、結果としては前進することを強くアピールした本作。ジャケットのセクシーさにドキッとさせられますが、中身は正真正銘のアメリカンロックンロールが鳴らされている。そんな非常にシンプルでわかりやすい、2021年ならではのロックアルバムの良作だと断言させてください。

 


▼THE PRETTY RECKLESS『DEATH BY ROCK AND ROLL』
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2021年2月13日 (土)

GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』(2020)

2020年12月18日にリリースされたジョージ・リンチ&ジェフ・ピルソンのカバーアルバム。日本盤(輸入盤に帯を付けた仕様)は同年12月23日に発売されています。

DOKKEN時代の盟友であり、最近はT&NやTHE END MACHNEで活動をともにするジョージとジェフ。本作ではジェフのプロデュースのもと1950〜2000年代の非HR/HM曲を中心にセレクトされています。カバーの内訳は以下のとおり(カッコ内の年数は原曲リリース年)。

01. One Of Us [ジョン・オズボーン/1995年]
02. You Got The Love [RUFUS & CHAKA KHAN/1974年]
03. I Feel The Earth Move [キャロル・キング/1971年]
04. Ordinary World [DURAN DURAN/1993年]
05. Music [マドンナ/2000年]
06. Apologize [ONEREPUBLIC/2007年]
07. Nowhere To Run [MARTHA & THE VANDELLAS/1965年]
08. Kiss [プリンス/1986年]
09. It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine) [R.E.M./1987年]
10. Champagne Supernova [OASIS/1995年]
11. Lucille [リトル・リチャード/1957年]

これらの楽曲をジョージ(G)、ジェフ(B)、ブライアン・ティッシー(Dr)というT&Nまんまのメンツで演奏し、その大半をウィル・マーティンというニュージーランド出身のシンガーが歌唱。「You Got The Love」でマーク・トリエン(BULLETBOYS)、「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」にてジェフがそれぞれボーカルを担当しています。また、「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」ではFISHBONEのアンジェロ・ムーアもオルガンでゲスト参加しております。なかなかとっ散らかったメンツですね(笑)。

選曲はまあ置いておいて、アレンジや演奏ですが……某氏は本作を酷評しておりましたが、そこまで言うほどか?と。原曲の良さはそのままに、しっかりジョージらしくハードロックしていて聴きやすく、個人的にはかなり好印象な1枚なのですが。ウィル・マーティンのクセのない歌唱が「I Feel The Earth Move」「Nowhere To Run」といったソウルフルな楽曲でまったく活きていないという難点はあるものの(「Kiss」はこれで正解だけど)、逆に「Ordinary World」や「Music」のような現代的なポップソングにはぴったり合っているのでプラマイゼロといったところでしょうか。そんな中で、マーク・トリエンがいい味出してます。全部マークが歌ったら……とも考えたけど、マークが歌う「Champagne Supernova」とかまったく想像できないので、これで正解だったのでしょうね。

とにかくアレンジと演奏がかなり高得点です。最近のジョージ関連の作品は比較的ハズレが少ないですが、そこにジェフという気心知れた仲間かつプロデューサーとしてもそれなりの実力を発揮する方が携わったことで、平均点以上の仕上がりになった。もうこれ、今後は全部ジェフにプロデュースしてもらえよと思ってしまうのは間違っているのでしょうか(笑)。

某氏は自分が以前のように歌えないやっかみですよね。早くお経ボーカルから脱してほしい……と脱線してしまいましたが、本作は原曲を知るリスナーはもちろん、知らないHR/HMリスナーでもジョージ・リンチの新作として存分に楽しめるはずです。

 


▼GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』
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2021年2月12日 (金)

LOVE AND DEATH『PERFECTLY PRESERVED』(2021)

2021年2月12日にリリースされたLOVE AND DEATHの2ndアルバム。現時点で日本盤未発売。

LOVE AND DEATHはKORNのブライアン“ヘッド”ウェルチ(G)が2012年に結成したニューメタル・バンド。当時はKORN脱退中だったこともあり、このバンドがヘッドにとってのメインバンドだったわけですが、2013年1月に1stアルバム『BETWEEN HERE & LOST』を発表してしばらくしてKORNに正式復帰。その後も2016年にシングル「Lo Lamento」を発表していますが、2020年に入り新たなリズム隊を迎えてバンドを再編。前作から8年の歳月を経て、Earache Recordsから2作目を無事届けることができました。

新メンバーはBREAKING BENJAMINのジェイセン・ラウチ(BREAKING BENJAMINではリードギターですが、こちらではベース)、PHINEHASのアイザイア・ペレッツという元クリスチャンメタル・バンド出身者(ジェイセンはBREAKING BENJAMINの前にクリスチャンバンドのREDに在籍)。ヘッド自身もクリスチャンに転向することでKORNを離れていますし、本作にゲスト参加しているレイシー・シュトゥルム(ex. FLYLEAF)、キース・ウォーレン(BREAKING BENJAMIN)、ライアン・ヘイズ(RIGHTEOUS VENDETTA)という面々も直接的/間接的にそちら側の方々ですから、歌われている内容的にも深読みすると“教え”的なものを汲み取ることができるのかもしれません。

が、サウンドや楽曲自体はKORNにも通ずるゴリゴリさとメロディアスさ/センチメンタルさが感じられる、90年代後半以降の音といった印象で、かなり聴きやすいと思います。ヘッドのボーカルもジョナサン・デイヴィスほどクセも強くなく、ときどきスクリームやグロウルを響かせるものの、全体的には(顔に似合わず。笑)爽やかな歌声といったところでしょうか。演奏面、歌唱面ともにKORN的なフックも随所に用意されているので、KORNのファンも十分楽しめるはずです。

ジョナサンのソロアルバム『BLACK LABYRINTH』(2018年)がその“声”でKORNとのつながりをアピールするものならば、本作は楽曲面やサウンドメイクでKORNとの接点を強く感じられる1枚。そういった個々の要素が組み合わさることで今のKORNになるんだなと、改めて実感できる貴重な機会ではないでしょうか。

どの曲も好みですが、もっともKORNらしい「Affliction」や「White Flag」、レイシーの歌声がフックになっている「Let Me Love You」などは特にお気に入り。全11曲/約35分というトータルランニングもイマドキっぽくて聴きやすいですし、往年のKORN節と現在のKORNらしさを同時に味わいつつも良質なメロディも楽しめる。これは非常に“みっけもの”かもしれませんよ。

 


▼LOVE AND DEATH『PERFECTLY PRESERVED』
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2021年2月11日 (木)

TO KILL ACHILLES『SOMETHING TO REMEMBER ME BY』(2021)

2021年2月5日にリリースされたTO KILL ACHILLESの2ndアルバム。現時点で日本盤未発売。

TO KILL ACHILLESはスコットランドのダンディーで2010年に結成された5人組ポストハードコア・バンド。2013年に初のフルアルバム『EXISTENCE』を自主制作で発表して以降、地道な活動を続けてきましたが、2020年にドイツの大手インディーズレーベルArising Empireと契約し、約7年ぶりの2ndアルバムを完成させました。

全14曲が収録された今回のアルバムは、ある主人公の生き様を追ったコンセプチュアルな内容とのこと。25歳の誕生日を迎えた主人公が、生きていく中でさまざまな困難に直面し、最終的に自らの命を絶つまでの12ヶ月間とその後の反響までが描かれており、「We only exist when we exist together.」というメッセージとともにメンバーの実体験が投影されているそうです。

そういった(ある意味では)悲劇的な物語を、鬼気迫る激しさと感情に訴えかけるエモーショナルさが同居したカオティックなバンドアンサンブルで表現。歌うというよりは悲痛な叫びにも似たスクリームは、そういった劇的なバンドサウンドに乗ることでより強く響き、最初こそ息苦しさを覚えるものの、終盤に差し掛かるにつれてそれがどんどん悲しみを帯びて聴こえるように変化していきます。

また、曲と曲とをつなぐインタールード的なインストもアルバムをより盛り上げる要素となり、ピアノなど繊細な楽器を用いることでその効果はさらに向上。激しさ、エモさも通り一辺倒なものではなく、変化の付け方が非常に考えられている。なので、14曲と比較的多い曲数ながらも、最後まで飽きることなく楽しむことができます。

先のバンドからのメッセージをそのまま曲名に用いた11曲目「We Only Exist When We Exist Together」は、不穏なギターアルペジオをバックに言葉が吐き出されるという非常にミニマルな構成ですが、間違いなく本作のクライマックスと呼べる1曲。そこからつながる「21:36」というタイトル……なんとなく想像つきますよね。その後、「Beautiful Mourning」へと続く流れは、曲調と相まってただただ悲しく、ラストナンバーであるタイトルトラック「Something To Remember Me By」はひたすら虚しく響きます。

前作から本作までに間にEP『ANYWHERE BUT HERE』(2017年)のリリースこそあったものの、この約7年というブランクはこの圧倒的な1枚を完成させるために必要な期間だったんだなと、強く実感させられます。それくらい驚異的な1枚。できることなら歌詞をすべて把握して、もう一度じっくり本作と向き合ってみようと思います。

 


▼TO KILL ACHILLES『SOMETHING TO REMEMBER ME BY』
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2021年2月10日 (水)

ANNISOKAY『AURORA』(2021)

2021年1月29日にリリースされたANNISOKAYの5thアルバム。現時点で日本盤未発売。

前作『ARMS』(2018年)から2年5ヶ月ぶりのアルバムとなりますが、おの期間の間にバンドは大きな転換期を迎えています。まず、前作発表直後にリードギターのフィリップ・クレッチマーが脱退し、バンドは4人編成に。2019年にはデビュー時からアンクリーン・ボーカルを担当してきたデイヴ・グランウォルドも脱退。新たにルディ・シュヴァルツァーをメンバーに迎え、今作の制作に臨みました。

ジェントを思わせる複雑なリズムで繰り出される低音ギターリフと、適度にエモーショナルな歌メロ、味付けにエレクトロニコアを織り交ぜた現代的なサウンドは、本作でも健在。ただ、エモさの中にもエッジの立ったバンドアンサンブルが際立った前作と比較すると、今作は若干ヌルさが強いような。楽曲のトーンもメロディのキーの高さも全体的に抑え気味なせいもあり、だいぶ落ち着いた印象を受けます。

良く言えばメジャー感が増したことで聴きやすくなった、悪くいえばよくいるメタルコアバンドと並列になり差別化が難しくなった。このバンドらしい個性というのがよくわからなくなっているのです。

オープニングを飾る「Like A Parasite」や、シャッフルビートを用いた「Face The Facts」などカッコいいと思える楽曲も少なくはないですし、「Overload」や「Bonfire Of The Millenials」のようにエモエモな楽曲もしっかり存在するし、新入りのルディによるスクリームもイカしていると思います。ただ、似たような楽曲があまりに多すぎて、全13曲/48分が長すぎると感じてしまうくらい、最後まで聴くのがちょっとキツく感じられてしまうのもまた事実。

前作発表後にBRING ME THE HORIZONのカバー(というか、まんまのコピー)曲「Nihilist Blues」を配信リリースしている彼らですが、どことなくそういったバンドたちのフォロワーに甘んじている気がしてなりません。前作がかなり感触だっただけに、そこからANNISOKAYらしさをどう伸ばしていくかと楽しみにしていたのですが……メンバーチェンジからのバンド立て直しに、もうちょっとだけ時間がかかりそうですね。

アルバムとしては厳しさもあるけど、曲単位ではお気に入りも複数あるので、そういった良きポイントを今後どう伸ばしていくのか、気長に待ちたいと覆います。

 


▼ANNISOKAY『AURORA』
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2021年2月 9日 (火)

WARDRUNA『KVITRAVN』(2021)

2021年1月22日にリリースされたWARDRUNAの5thアルバム。現時点で日本盤未発売。

ほぼアイナルのソロアルバム形態で制作された前作『SKALD』(2018年)を経て、新たにメジャーのSony Music / Columbia Recordsと契約したWARDRUNA。本来ならメジャー第1弾となる本作を2020年6月に発売予定でしたが、ご存知のとおりコロナ禍の影響で半年以上もの遅延を経てようやく手元に届けられました。

アートワークが初期3作を彷彿とさせるものがあることから、やはり前作『SKALD』は特殊な1枚だったことが伺えます。アルバムタイトルの『KVITRAVN』は“白いカラス(=White Raven)”を意味するワードとのことで、ジャケットの黒はカラスの羽にて構成されています。過去の作品でも北欧に伝わる神話や土着的民謡の伝承をテーマに掲げてきた彼らですが、本作でも魔術や霊魂、北欧神話や概念などをもとに楽曲制作されています。

ノルディック・フォークやダーク・フォーク、ダーク・アンビエントを下地に、北欧に古くから伝わる古楽器を用いたアレンジで密教的な世界観を構築するスタイルは、過去の作品をそのまま踏襲したもので、彼らの作品に一度でも触れたことがある方なら一発で気にいる内容だと思います。

とはいいながら、日本デビュー作となった前々作『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016年)あたりと比べると重厚さや冷徹さが若干薄れ、適度な温もりが伝わる音使い/アレンジになっている印象もあり、そのへんは「創生」「生長」「終末」というサイクルを描いたコンセプチュアルな初期三部作との違いかなと。聴きやすさという点においては、今回の新作のほうが初心者にも最適なんじゃないでしょうか。

実際、前々作までの作品は流し聴きするにはちょっとヘヴィすぎて、個人的には気構えないと触れられない世界だったんですが、新作はもうちょっとラフに接することができる印象が強く。ブラックメタル経由のフォーク/トラッド作品という後ろ盾が無意味なほどに、幅広いリスナーに親しんでもらいたい1枚に仕上がっていると思います。

こういった音楽は、歌詞に込められた歴史的背景を踏まえながら対訳をじっくり味わいたいところ。欧州ソニーからのリリースという大きなバックアップを受けた作品だけに、ぜひ日本盤のリリースにも期待したいところです。

 


▼WARDRUNA『KVITRAVN』
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2021年2月 8日 (月)

GREY DAZE『AMENDS... STRIPPED』(2021)

2021年1月29日にデジタルリリースされたGREY DAZEの最新EP。同年4月9日にはアナログ盤のリリースも予定されています。

本作は2020年6月にリリースされた、チェスター・ベニントン(Vo)がLINKIN PARK結成前に在籍していたバンドの最新作『AMENDS』収録曲のアコースティックバージョンなどをまとめた5曲入りEP。『AMENDS』を発表後、昨年10月に再びスタジオに戻ったGREY DAZEのメンバーは、チェスターの別ボーカルトラックをセレクトし、このアコースティックセッションに用いたとのことです。

このEPのアイデアは『AMENDS』リリース前からメンバー間で話し合われていたとのことで、改めてチェスターのシンガーとしての才能をより広く知らしめることが目的だったんだとか。前回のレビューにも書きましたが、『AMENDS』というアルバムで使用されたチェスターのボーカルトラックはすべて90年代のもの。つまり、今回のようなアコースティックアレンジを目的として録音されていないため、若干のこじつけ感は否めません。

しかし、バックトラックがハードだろうがソフトだろうが関係なく、20代前半のチェスターから発せられるエモーショナルな歌声は非常に響くものがあり、もとからこういうアレンジだったんじゃないかと思えるほど自然なテイクに仕上がっています。

チェスターって歪み系の歌い方のイメージが強いかもしれないけど、実はかなり繊細な歌声の持ち主で、そのへんは生前ラスト作となった『ONE MORE LIGHT』(2017年)を聴けばよくわかると思うんです。このEPでも熱が高まる場面ではおなじみのディストーションボイスを耳にすることができるものの、大半は繊細さを伴う優しく温かみのある歌声。そういった魅力をアコースティックアレンジで、しかも歌声を前面に押し出す形で楽しむことができるのは、ファンとしても非常にありがたいかぎりです。

とはいえ、もうこれ以上は素材もないだろうから、GREY DAZEとしての新作は今回が最後かな。むしろそれでいいと思います(そもそも前回のアルバム自体も無理矢理完成させたようなものなわけですから)。

 


▼GREY DAZE『AMENDS... STRIPPED』
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2021年2月 7日 (日)

WEEZER『OK HUMAN』(2021)

2021年1月29日にリリースされたWEEZERの14thアルバム。

2019年初頭にカバーアルバム『WEEZER (TEAL ALBUM)』をサプライズリリースし、1ヶ月後に予定どおり『WEEZER (BLACK ALBUM)』を立て続けに発表したWEEZER。その年の夏には早くも次のアルバムに向けた新曲「The End of The Game」も配信され、2020年5月にはハードロック色の強い14thアルバム『VAN WEEZER』が発売されることがアナウンス済みでした。

しかし、すべてのスケジュールを新型コロナウイルスがめちゃめちゃにしてしまった。医療従事者に向けた応援歌として『VAN WEEZER』からの2ndシングル「Hero」こそ配信されたものの、アルバム自体は1年後の2021年5月まで先送りされることになってしまいました。

そんな中、リヴァース・クオモ(Vo, G)は秘密裏にもう1枚のアルバム制作に着手。それがHR/HMとは真逆にあるTHE BEACH BOYSの名盤『PET SOUNDS』(1966年)からインスピレーションを得た作品を作ることでした

この予定外の14作目は2020年夏、リヴァースと38名のオーケストラとともに、アナログ技術を駆使してレコーディング。タイトルの『OK HUMAN』からしてRADIOHEADの名盤『OK COMPUTER』(1997年)へのアンチテーゼか、はたまたパロディか……まあ中身的にはまったく関係ありませんが、とにかくフルオーケストラをバックにリヴァースが本気を出したわけです。

興味深いことに、本作はアコースティック楽器のみで構成されていることから、エレキギターが一切登場しません。つまり、WEEZER特有のエモいギターロックは皆無なわけです。ところが、リヴァースが歌う楽曲群のどれもがWEEZERのそれだとすぐに認識できる。アルバムに1曲、こういう曲が入っていても不思議ではない、そんな楽曲のみで構成されたアルバム。確かに移植ではあるんですが、至極真っ当なWEEZERのアルバムでもあるなと感じられます。

だって、メロディやコーラスの重ね方はいつものWEEZERだもん。リヴァースの歌い方が(オーケストラのソフトな側面に引っ張られてか)さらに弱々しさ際立つものですが、そこも含めてまた良し。これを日和ったなんて捉えることもできるでしょうけど、2020年という時代を経た今となっては、そんな切り捨て型は暴力でしかない。誰もが求める癒しや救いを、リヴァースはこのアルバムを通して音楽で表現しただけなんですから。

個人的には前作『WEEZER (BLACK ALBUM)』がここ10年のWEEZERでもっとも好きなアルバムでしたが、ある意味その延長線上にあるテイストの本作も同じくらい好き。で、続く『VAN WEEZER』は大好物な音になりそうだから……今年もWEEZER、数々の作品で我々を楽しませてくれそうです。状況はあまり改善されていないかもしれないけど、ちゃんと5月にリリースしてもらいたいですね。

 


▼WEEZER『OK HUMAN』
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2021年2月 6日 (土)

FOO FIGHTERS『MEDICINE AT MIDNIGHT』(2021)

2021年2月5日にリリースされたFOO FIGHTERSの10thアルバム。

二度目の全米1位を獲得した前作『CONCRETE AND GOLD』(2017年)から3年5ヶ月ぶりの新作。その合間には“Foo Files EPs”と題して、過去のシングル・カップリングトラックや未発表ライブトラックを配信するプロジェクトもありましたが、2020年にデビュー25周年を迎えたことで、この10thアルバムからのリードトラック「Shame Shame」がリリースされると、オリジナル新作に対する期待度が一気に高まっていきました。

プロデュースは前作から引き続き、THE BIRD AND THE BEEのグレッグ・カースティン(アデル、リリー・アレンポール・マッカートニーリアム・ギャラガーなど)とバンドが担当。ポップスを中心に手がけるグレッグが携わることで、デイヴ・グロール(Vo, G)が本来持ち合わせたメジャー感/メインストリーム感がよりわかりやすい形で作品化され、さらにそこにモダンポップの質感が加えられることで“2021年のロックバンド感”が強まる結果となりました。

タイトなロックサウンドにゴスペル的なコーラスパートを加えた王道感が加えられたオープニングトラック「Making A Fire」に、新たなFOO FIGHTERSの魅力を見つけることができたかと思うと、続くリードシングル「Shame Shame」でその新境地要素はさらに増していく。ある意味では実験色の強い作風と言えるかもしれませんね。そういった意味では、メインストリームでオルタナティヴなことにチャレンジするという、デビュー当時とは逆の方向性と捉えることもできるでしょう。

以降は「Cloudspotter」や「Waiting On A War」と、前作の延長線上にあるFOO FIGHTERSらしさが強くにじみ出た楽曲が続きます。このへんのバランス感も非常に“らしい”ものがあります。で、ブラックミュージックからのえいきょうが表出したタイトルトラック「Medicine At Midnight」で、再び新境地を提示したかと思えば、アップテンポの「No Son of Mine」で暑苦しいハードロックを展開する。この緩急に富んだバランス感、さすがの一言です。

楽曲の幅がかなり広いように感じられるかもしれませんが、統一感に関しては前作以上に強いものがあるように思いました。新しいことに挑戦していても、そのトーンが全体的に近しいものがあるというのが、この統一感の秘密ではないでしょうか。そんな気がします。

だから、終盤の3曲……初期を思わせる王道ロックチューン「Holding Poison」、穏やかなスローバラード「Chasing Birds」、キャッチーなロックナンバー「Love Dies Young」と従来の“らしさ”が強くにじみ出た楽曲群でクライマックスを迎えると、全9曲/約37分があっという間に感じられるわけです。実際、FOO FIGHTERSの全アルバム中もっともトータルランニングの短い作品ですしね。

サラッと楽しめてしまうのに、実は1曲1曲の濃さが尋常じゃない。そう感じさせないくらい自然に聴かせてしまう、楽しませてしまうのはその構成力や完成度の高さのなせる技だと思います。NIRVANA消滅という傷から立ち直り作り上げた1stアルバム『FOO FIGHTERS』(1995年)から25年超を経て、FOO FIGHTERSがこんなに“大人のロックバンド”としてメインストリームに君臨しているなんて、当時は想像もできませんでした。

このバンドがこういう素晴らしいロックアルバムを作り続けてくれている間は、まだまだロックは死なないと信じ続けることができますね。

 


▼FOO FIGHTERS『MEDICINE AT MIDNIGHT』
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2021年2月 5日 (金)

THE DEAD DAISIES『HOLY GROUND』(2021)

2021年1月22日にリリースされたTHE DEAD DAISIESの5thアルバム。

前作『BURN IT DOWN』(2018年)から約3年ぶり、それまでに発表したカバー曲を集めたコンピレーションアルバム『LOCKED AND LOADED: THE COVERS ALBUM』(2019年)から数えても1年半ぶりということになりますが、特にこの1〜2年はバンドにとって大きな転換期となりました。まず、ボーカリストがジョン・コラビからグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLEなど)に交代。グレンはベースも兼任するため、同時にマルコ・メンドーザも脱退せざるを得ませんでした。

このアルバムのレコーディングメンバーはグレン(Vo, B)、ダグ・アルドリッチ(G)、デヴィッド・ローウィー(G)、ディーン・カストロノヴォ(Dr)という布陣。オリジナルメンバーはすでにデヴィッドのみというのは置いておいて、日本で彼らが知られるようになってから現在までバンドに残るのはダグのみというのも……まあいいでしょう。

『BURN IT DOWN』はディーンの特徴を活かしてか、それ以前のルーズなロックンロール/ハードロック路線からヘヴィなリズムを強調した硬質なサウンドへと変化を遂げましたが、この新作も基本路線は『BURN IT DOWN』に近いのかな。ただ、グレンが加わったことでメロディラインや歌、節回しにソウルフルさが加わり、若干アンバランスさが気になった前作よりもまとまりが良くなった印象を受けます。

ぶっちゃけ、カッコいいです。しっかり歌えるシンガーによるクールなHR/HM。「My Fate」のようなヘヴィなノリでもソウル&ブルースフィーリングを感じさせるグレンの歌があれば、非常に聴きやすいものに昇華されている。また、そんなグレンに引っ張られるように、ダグもブルージーさの強いソロプレイを乗せてくる。いい相乗効果じゃないですか。個人的にはこういった曲や、「Far Away」みたいにソウルフルさを打ち出したスローナンバーに惹かれてしまいます。この曲もグレンの特性を活かしており、良い出来です。

お約束となったカバー曲は今回も用意されており、MR. BIGなどでおなじみの「30 Days In The Hole」(原曲はHUMBLE PIE)を“らしく”味付けしております。こういった楽曲を歌うグレンは最高以外の何ものでもなく、全体的にタイトな印象を受ける本作の中でちょうど良い息抜きポイントとなっています(もちろん良い意味ですよ、この息抜きは)。

アルバム1枚通して非常によく作り込まれたハードロックアルバムですが、正直これをTHE DEAD DAISIESという名前で制作する必要があったのかな……という疑問もゼロではありません。グレンの前にジョン・スティーヴンス(ex. INXS)、ジョン・コラビという2人のシンガーが存在しているわけで、それぞれが在籍した時代の音/曲というのもあるわけで、特にこのバンドの場合はその前任2名が在籍した時代こそバンドのアイデンティティを確立させる上で重要だったと認識しているだけに、前作から今作へのシフトは素直に受け入れられないものもあります。もっと言えば、「これ、グレンのソロアルバム(もしくはグレン&ダグのプロジェクト)として出せば、もっと正統な評価を受けたんじゃないかな?」とも。もちろん、内容の良さがすべてだとは思うんですが、どうにもこうにも……難しいなあ。

なお、本作リリースと同タイミングにディーンの脱退も発表に。新たに末期BLACK SABBATHのツアーなどに参加したトミー・クルフェストがツアーでプレイするとのことです。相変わらず人の出入りの激しいバンドだなあ……。

 


▼THE DEAD DAISIES『HOLY GROUND』
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2021年2月 4日 (木)

WIG WAM『NEVER SAY DIE』(2021)

2021年1月22日にリリースされたWIG WAMの再結成第1弾アルバム(通算5作目)。

ノルウェー出身のグラムメタル/ヘアメタルバンドWIG WAMは本国のみならず、ここ日本でも高い人気を誇る存在。2014年3月に一度解散するものの、2019年11月に再結成・再始動をアナウンスしますが。そして、2020年10月下旬に新曲「Never Say Die」のMVを公開すると同時に、翌2021年1月に同曲をアルバムタイトルに冠したニューアルバムをリリースすることをアナウンスしました。

グラム(Vo)、ティーニー(G)、フラッシュ(B)、スポーティー(Dr)という解散前と変わらぬ布陣で制作された今作は、結果としてラストアルバムとなった『WALL STREET』(2012年)から約9年ぶりのオリジナルアルバム。2000年代に登場した時点で「80年代のグラムメタルを彷彿とさせるビジュアルと、古き良き時代の王道ハードロック」という時代錯誤な存在だっただけに、解散から7年経とうが何しようがその音楽性やスタイルは普遍なわけです。つまり、本作でも「80's Metal Forever」なスタイルでクールなハードロックをかましてくれています。

タイトルトラック「Never Say Die」でバンドの復活を高らかに宣言すると、キラキラしたサウンドとメロディが心地よい「Hypnotized」「Shadows Of Eternity」でその気持ちをさらに高揚させ、ブルージーかつ壮大なノリを持つミディアムテンポの「Kilimanjaro」(タイトル……笑)で気づけば一緒にシンガロングしている自分に気づく、という。初めて聴いた曲でも初めて聴いた気がしない、80's HR/HMをトレースしつつメロディの良質さにこだわった楽曲群は、今回も我々を存分に楽しませてくれます。

中盤ではゴリっとした「Where Does It Hurt」、王道パワーバラード「My Kaleidoscope Ark」、拳を突き上げたくなるヘヴィなミドルチューン「Dirty Little Secret」や「Call Of The Wild」などで、前半からの高揚感を持続させつつ、ティーニーによる泣きメロ満載のソロプレイをたっぷりフィーチャーしたインスト「Northbound」でひと呼吸置き、ラストはスウィング感が加わったミディアムヘヴィ「Hard Love」、シンガロング必至のパワーバラード「Silver Lining」で締めくくり。日本盤にはさらに2ndアルバム『WIG WAMANIA』(2006年)収録の「Dare Devil Heat」の再録バージョンが追加され、爽快感を味わったままアルバムを聴き終えることができます。

ラストアルバム『WALL STREET』ではダークな側面も打ち出し始めたものの、楽曲の出来がイマイチだったこともあり好意的には受け入れられませんでしたが、そういった失敗も新作では見事な形で昇華されているのではないでしょうか。全体を覆う(以前よりも)硬派なイメージは、そういった経験から得た新たな個性と受け取ることもできるでしょう。そういった意味でも8〜9年のブランクは解散してでも必要だったのだなと実感させられる、問答無用の“最高の復活作”です。

 


▼WIG WAM『NEVER SAY DIE』
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2021年2月 3日 (水)

YOU ME AT SIX『SUCKAPUNCH』(2021)

2021年1月15日にリリースされたYOU ME AT SIXの7thアルバム。日本盤は同年1月20日に発売されました。

YOU ME AT SIXは2004年にイギリス・ウェイブリッチにて結成された5人組バンド。2008年にアルバム『TAKE OFF YOUR COLOURS』にてデビューを果たし、これまでに発表した7作中6作が全英TOP10入り、うち4作目『CAVALIER YOUTH』(2014年)とこの最新作『SUCKAPUNCH』の2作が全英1位を獲得しています。

サウンド的にはポストハードコアを通過したポップパンク/オルタナティヴロックといったところでしょうか。かつ、本作ではサンプリングやエレクトロの要素も前面に打ち出されており、モダンな色合いが強くなったことで昨今のヒットチャートに並ぶポップアーティストたちにも匹敵する楽曲群がずらりと並ぶ、幅広い層にアピールできる鉄壁な1枚に仕上がっています。

特にダンスロック/ポップやモダンなR&B/ヒップホップ色を強めた本作は、メタル/ヘヴィロックファン側の穿った見方をすれば「ロック低迷の今、時代にすり寄ったサウンド/楽曲」と切り捨てることもできるかもしれません。ですが、この実験的なサウンドメイクやアレンジは2010年代半ばにBRING ME THE HORIZONが切り開いたモダンメタルの進化型のひとつと解釈することもできるはず。メタルはポストハードコアといったコアでアングラなジャンルが、いざとなったときにオーバーグラウンドでヒットしている音に取り組んだらこうなるんだ。そう堂々と宣言することは、僕はセルアウトだとは思えないんですよね。

特にこのバンドの場合は自然と進化を続けてきたと思いますし、前作『VI』(2018年)の時点で味付けとして現在の要素は随所に散りばめられていましたからね。同作リリース直後から制作に取り掛かったという本作『SUCKAPUNCH』は、そのテストをより効果的に実戦に用いた最良の結果ではないかと思っています。

まあ、サウンドメイク的には賛否あるのは仕方ないとしても、楽曲自体は非常によく作り込まれたものだと断言できます。生のバンドサウンドを加工したようなリズムトラックを土台に、これまたエフェクトの効いたギターサウンドで色付け。だけど、軸となるメロディのキャッチーさは過去の作品と比べてもかなりクオリティの高いものではないかなと。本作からは2019年から2020年にかけて5曲ものリードトラックが公開されてきましたが、裏を返せば「単曲でもしっかり勝負できる完成度」という自信の現れだと思うんです。どれも大きなヒットにはつながりませんでしたが、「What's It Like」を筆頭に「Makemefeelalive」「Beautiful Way」「Suckapunch」「Adrenaline」とどれもヒットチャートの上位に並ぶポップチューンの中に混じっても違和感ないテイストでありながら、昨今のオルタナメタルや進化型ポストハードコアにも引けを取らない仕上がりですしね。

日本では“村内”のリスナーからは敬遠されそうですが、実は“村外”にいる、普段ラウドロックと呼ばれるジャンルを耳にしているリスナーにこそ好意的に受け入れられそうなバンド、アルバムではないでしょうか。世が世なら、日本の同ジャンルのバンドたちと共演することでファンベースを広げていけそうな、そんな強力な1枚だと断言させてください。

 


▼YOU ME AT SIX『SUCKAPUNCH』
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2021年2月 2日 (火)

MICHAEL SCHENKER GROUP『IMMORTAL』(2021)

2021年1月29日にリリースされた、MICHAEL SCHENKER GROUP名義での10thアルバム。前作がゲイリー・バーデン(Vo)と組んだ『IN THE MIDST OF BEAUTY』(2008年)とのことなので、約13年ぶりということになります。といっても、マイケル・シェンカー(G)自身は現在MICHAEL SCHENKER FESTとしても活動しているので、そこから数えると『REVELATION』(2019年)から1年4ヶ月ぶりの新作。ここ数年、かなりハイペースで制作していますね。

さてさて。MSG名義としては1980年のデビューから約40年、シェンカー自身も音楽活動を開始してから50年という節目のタイミングということもあって、今回はMSG名義での制作となったようですね。ところが、いざ蓋を開けてみるとあまりMSGである意味が感じられないというか……ぶっちゃけ、MICHAEL SCHENKER FESTとの差別化をあまり意識していないんじゃないか、という印象を受けます。

それもそのはず、アルバム自体複数のボーカリスト、バンドメンバーと制作しているんですから。過去のMSGのように固定メンバーでアルバムまるまる1枚作るという発想は、もはやシェンカーの中には存在しないのではないでしょうか。

歌い手に関してはTEMPLE OF ROCKでタッグを組んだマイケル・ヴォスやFEST参加のロニー・ロメロといったおなじみの面々に加え、ラルフ・シーパース(PRIMAL FEAR、ex. GAMMA RAY)、ジョー・リン・ターナー(ex. RAINBOWなど)という過去にはありえなかった人選。さらにSCORPIONS「In Search Of Peace Of Mind」のセルフカバーにはロニーのほかゲイリー・バーデン、ドゥギー・ホワイト、ロビン・マッコーリーという過去バンドに携わった/現在FESTにも名を連ねるオールスターズが勢揃い。ゲイリー・バーデンをメインに使わないのは良しとして(笑)、彼とはFESTで活動を共にしているからあえてMSGからは外したってことなんですかね。だとしても、それはMSGなのかって話ですが。

演奏陣もバリー・スパークス(B)、サイモン・フィリップス(Dr)、ボド・ショプフ(Dr)、ブライアン・ティッシー(Dr)、スティーヴ・マン(Key)、デレク・シェリニアン(Key)という興味深いメンツが参加。デレクは意外なところですね。ちなみに、サイモンは先のSCORPIONSのセルフカバーのみ参加です。

サウンドや楽曲の質感自体は、先にも書いたようにFEST寄りの80年代後半以降の正統派HR/HM。キラキラした質感やモダンなテイストは、初期MSGのそれとは結びつかないものばかりですが、だからといって楽曲自体が優れていないわけではなく、どれも非常によく作り込まれたHR/HMチューンばかり。そういう楽曲なもんだから、ラルフがあのメタリックな高音で歌えばそれっぽく仕上がるし、ジョーが歌えば彼が参加した過去のバンドっぽくも聴こえる。だけど、楽曲の軸やギタープレイ自体はシェンカーそのもので、ドキッとさせられたり惹きつけられたりするポイントは思った以上にたくさんありました。

そんな中、後半に入り「The Queen Of Thorns And Roses」や「Come On Over」あたりからは初期のMSGっぽさ(後者はMICHAEL SCHENKER GROPというよりはMcAULEY SCHENKER GROUPっぽいかもしれませんが)も表出している。で、そういう楽曲をマイケル・ヴォスやロニー・ロメロという安心安定のシンガーが歌うというのも非常に腑に落ちるという。あと、ジョーが歌う「Sangria Morte」もMSGとRAINBOWの中間ぽくて好印象。リフワークやソロは完全にシェンカーそのものですが。

結局ね、聴く前は「なんでこれをMSG名義でやるかなあ」と貶そうくらいの気持ちでいたんですが、最初に聴き終えたときに満喫しまくっている自分に気づいたんです。ああ、いいアルバムだなあって。そういうことなんです。名前や枠やガワなんて今のシェンカーにはどうでもよくて、中身こそがすべてなんだと。本当にいいHR/HMアルバム、それで十分です。

 


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2021年2月 1日 (月)

ACCEPT『TOO MEAN TO DIE』(2021)

本来1月は連続更新をストップしようと考えていたんですが、急に思い立って70年代前半から1991年まで、毎日1枚ずつその年にリリースされた作品から個人的に思い出に残るものをピックアップして紹介する形で、なんとかモチベーションをつなぐことができました。できることなら新譜中心に紹介していきたいという気持ちも強いんですが、たまにはこういう息抜きもいいな。気が向いたら1992〜2001年、2002年〜2011年みたいに10年区切りでまたやってみたいと思います。

さて、というわけで2月に入ったので新譜を中心にまた紹介していこうかなと。2021年最初の新譜紹介は、今年1月29日にリリースされたばかりのACCEPTのニューアルバムです。

前作『THE RISE OF CHAOS』(2017年)から約3年半ぶりの通算16作目、再々結成後5枚目のスタジオアルバム。前作のツアー後にオリジナルメンバーのひとり、ピーター・バルデス(B)が脱退するという一大事が発生しましたが、残された唯一のオリメンであるウルフ・ホフマン(G)は歩みを止めることなく、新たなベーシストとしてマルティン・モイックを迎えるのみならず、“3人目のギタリスト”としてフィリップ・ショウズを加えたトリプルギター/6人編成で新作制作へと臨みます。

『BLOOD OF THE NATIONS』(2010年)以降の4作品を手がけてきたアンディ・スニープ(ARCH ENEMYKILLSWITCH ENGAGEOPETHなど。最近ではJUDAS PRIESTの2ndギタリストとしてもツアーに参加)がプロデュースを手がける本作は、安心・安定の“ACCEPTらしいヘヴィメタル”を楽しめます。もはやウド・ダークシュナイダー(Vo)の影もちらつくことなく、“らしさ”が強く伝わるマーク・トーニロのボーカルも絶好調だし、前作から加わったクリストファー・ウィリアムズ(Dr)のドラミングも派手でパワフル。ギターが3人編成になった効果はレコーディング音源からはほぼ伝わりませんが、おそらく今後のツアーでその効果を発揮することになるはずなので、今回の評価からは割愛します。

冒頭2曲に圧倒的なファストチューン「Zombie Apocalypse」「Too Mean To Die」を並べることで掴みはバッチリ。その次に従来のACCEPTらしさが強調された「Overnight Sensation」……もうこの3曲だけで、本作が紛れもなく良作であることに気づくはずです。その後もドラマチックなギターフレーズが印象的な「No Ones Master」やACCEPTならではのシンガロングをフィーチャーしたヘヴィチューン「The Undertaker」、ノリの良い「Sucks To Be You」、ライブで聴いたらギター3人の効果がより際立つはずの「Symphony Of Pain」など、緩急に富んだ構成で飽きさせません。

かと思えば、終盤には哀愁漂うバラード「The Best Is Yet To Come」、グルーヴィーなシャッフルビートが心地よい「How Do We Sleep」といった変化球が登場。場の空気がピリッとしたあとに、王道のファストチューン「Not My Problem」、エキゾチックなギターフレーズとクラシックの名曲からの引用にACCEPTの真髄が透けて見えてくるインスト「Samson And Delilah」で締めくくり。全11曲で50分強というボリュームもちょうど良い、2021年の幕開けにふさわしい傑作と言えるのではないでしょうか。

コロナの影響もあってか、リリース日が当初の1月15日から2週間後ろ倒しとなり、話題性的には同日発売のMSGなどに押され気味かもしれません。しかし、そのMSGの新作にも負けず劣らずの「メタルファン必聴の1枚」だと断言したくなる、そんな本作。ここ最近の「最近作こそベスト」を更新し続けるACCEPTの男気、大音量で満喫してください。

 


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