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2021年3月

2021年3月31日 (水)

2021年2月のアクセスランキング

ここでは2021年2月1日から2月28日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↓●位)」の表記は、「更新日/2021年1月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:WEEZER『OK HUMAN』(2021)(※2021年2月7日更新/NEW!)

2位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/→2位)

3位:ACCEPT『TOO MEAN TO DIE』(2021)(※2021年2月1日更新/NEW!)

4位:MICHAEL SCHENKER GROUP『IMMORTAL』(2021)(※2021年2月2日更新/NEW!)

5位:WHITESNAKE『THE BLUES ALBUM』(2021)(※2021年2月20日更新/NEW!)

6位:LOVE AND DEATH『PERFECTLY PRESERVED』(2021)(※2021年2月12日更新/NEW!)

7位:THE PRETTY RECKLESS『DEATH BY ROCK AND ROLL』(2021)(※2021年2月14日更新/NEW!)

8位:THE DEAD DAISIES『HOLY GROUND』(2021)(※2021年2月5日更新/NEW!)

9位:MOGWAI『AS THE LOVE CONTINUES』(2021)(※2021年2月19日更新/NEW!)

10位:WIG WAM『NEVER SAY DIE』(2021)(※2021年2月4日更新/NEW!)

 

11位:CARCASS『HEARTWORK』(1993)(※2017年10月21日更新/Re)

12位:FOO FIGHTERS『MEDICINE AT MIDNIGHT』(2021)(※2021年2月6日更新/NEW!)

13位:THE WHITE STRIPES『MY SISTER THANKS YOU AND I THANK YOU: THE WHITE STRIPES GREATEST HITS』(2020)(※2021年2月16日更新/NEW!)

14位:GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』(2020)(※2021年2月13日更新/NEW!)

15位:DURBIN『THE BEAST AWAKENS』(2021)(※2021年2月17日更新/NEW!)

16位:WHITESNAKE『LOVE SONGS』(2020)(※2020年11月9日更新/↑27位)

17位:NERVOSA『PERPETUAL CHAOS』(2021)(※2021年2月15日更新/NEW!)

18位:WARDRUNA『KVITRAVN』(2021)(※2021年2月9日更新/NEW!)

19位:ANNISOKAY『AURORA』(2021)(※2021年2月10日更新/NEW!)

20位:GREY DAZE『AMENDS... STRIPPED』(2021)(※2021年2月8日更新/NEW!)

 

21位:YOU ME AT SIX『SUCKAPUNCH』(2021)(※2021年2月3日更新/NEW!)

22位:GOD IS AN ASTRONAUT『GHOST TAPES #10』(2021)(※2021年2月18日更新/NEW!)

23位:TO KILL ACHILLES『SOMETHING TO REMEMBER ME BY』(2021)(※2021年2月11日更新/NEW!)

24位:JOEL HOEKSTRA'S 13『RUNNING GAMES』(2021)(※2021年2月21日更新/NEW!)

25位:THE ALMIGHTY『SOUL DESTRUCTION』(1991)(※2021年2月23日更新/NEW!)

26位:RICKY WARWICK『WHEN LIFE WAS HARD & FAST』(2021)(※2021年2月22日更新/NEW!)

27位:WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)(※2019年3月27日更新/Re)

28位:NINE INCH NAILS『THE FRAGILE』(1999)(※2019年1月25日更新/↓18位)

29位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/Re)

30位:ANDY TAYLOR『THUNDER』(1987)(※2017年9月28日更新/↓19位)

2021年3月のお仕事

2021年3月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※3月31日更新)

 

[紙] 3月31日発売「ヘドバン」Vol.29にて、LOVEBITES harunaインタビュー、GOJIRA新作クロスレビュー、新譜レビュー5作分を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 3月31日発売「My Girl」vol.32にて、楠木ともりインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 3月26日発売「メタルの基本」がこの100枚でわかる!にて、9作品分のディスクレビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 3月25日発売「CONTINUE」Vol.70にて、乃木坂46 からあげ姉妹(生田絵梨花&松村沙友理)インタビュー、「ゾンビランドサガ」フランシュシュライブレポを執筆しました。(Amazon

[紙] 3月25日発売「Rolling Stone Japan」vol.14にて、BABYMETAL「10 BABYMETAL BUDOKAN」1月・2月開催3公演のライブレポートを執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月24日、「Rolling Stone Japan」にてライブレポートLiSAアコースティックライブを考察、むき出しの「歌」とともに10周年へが公開されました。

[紙] 3月24日発売「WHITE graph」005にて、乃木坂46山下美月、伊藤理々杏、矢久保美緒、掛橋沙耶香、柴田柚菜の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月22日、「Rolling Stone Japan」にてライブレポート伊藤美来、全国ツアー最終公演で見せた多彩なポップの形が公開されました。

[紙] 3月22日発売「別冊カドカワScene 06」にて、ヒプノシスマイクMAD TRIGGER CREW各キャラクター解説&全楽曲解説、最新バトルCDレビューを執筆しました。(Amazon

[紙] 3月17日発売PROG MUSIC Disc Guide──プログレッシヴ・ロック/メタル/オルタナティヴの現在形にて、DREAM THEATER、PERIPHERY、MESHUGGAHを中心としたディスクレビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 3月10日発売「月刊ニュータイプ」2021年4月号にて、「ゆるキャン△」特集 劇伴・立山秋航&音楽プロデューサー村上純インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 3月7日、「リアルサウンド」にてコラムザ・コインロッカーズ、異例の毎週末オンラインライブで急成長? 約2カ月間で積み上げた努力を紐解くが公開されました。

[WEB] 3月6日、「リアルサウンド映画部」にてコラム乃木坂46×櫻坂46×日向坂46による本格ミステリードラマ 『ボーダレス』の注目ポイント解説が公開されました。

[紙] 3月4日発売「日経エンタテインメント!」2021年4月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

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また、2021年2月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2102号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

SMITH/KOTZEN『SMITH/KOTZEN』(2021)

2021年3月26日にリリースされたSMITH/KOTZENの1stアルバム。日本盤未発売。

このSMITH/KOTZENはIRON MAIDENのエイドリアン・スミス(G)とTHE WINERY DOGS、ex. POISON、ex. MR. BIGなどで知られるリッチー・コッツェン(G, Vo)によるバンド/プロジェクト。UKを代表する王道ヘヴィメタルバンドのギタリストと、ブルースフィーリング溢れるUSギタリスト/シンガーの邂逅はなかなか想像しにくいものがあるかと思いますが、そもそもエイドリアンはその昔、ASAP(ADRIAN SMITH AND PROJECT)というアメリカンハードロック寄りのソロバンドを組んで、そっち側に傾倒してメイデンを脱退したなんて話もあったほど、根っこの部分ではUSロックをルーツに持つ人なわけで、どこかでつながる機会があれば意気投合するのも理解できるわけです。

数年前に知人を通じて出会った2人は、以降ジャムセッションを何度か重ねたとのこと。エイドリアンによると「僕らはクラシック・ロックとブルージー・ロックへの愛を共有しているから、一緒になって曲を書き始めようと決めたんだ」そうで……ほらね(笑)。昨年2月、ミックスエンジニアにケヴィン・シャーリー(IRON MAIDEN、DREAM THEATERJOURNEYなど)を迎え、ギターとベースはエイドリアン&リッチーが、ドラムも5曲をリッチーがそれぞれ担当し、IRON MAIDENのニコ・マクブレイン(Dr)とリッチーの盟友タル・バーグマン(Dr)のゲスト参加を含めてレコーディングを実施。昨年12月に1stシングル「Taking My Chances」をリリース後、楽曲を小出しにしつつ、レコーディングから1年強の歳月を経てついにアルバムが届けられたわけです。

この2人のタッグにIRON MAIDEN的な側面を求めて本作に手を出したなんて方はまずいないと思いますが、上記のような事情を知っている方なら納得のブルース/ソウル/R&Bを通過したアメリカン・クラシックロック/ハードロック満載の本作。ボーカルも2人で歌いわけられており、リッチーのしゃがれた声と、どこか頼りなさげなエイドリアンの歌(笑)が、それぞれ異なる個性を発しながら独特のグルーヴを作り上げています。ギターとベースは交互に担当しているようで、リッチーのプレイはなんとなく「これかな?」と予想できるので、それ以外がエイドリアンのプレイということでしょう(苦笑)。

非常にシンプルなバンドアンサンブルで、無駄が一切ないトラディショナルなハードロックは、リッチーのソロ作の延長として楽しめるはずです。また、リッチーの味わい深いボーカルがしっかりと確立されているからこそ、程よいバランスで組み込まれたエイドリアンの歌声も同時に楽しむことができる。ギターも適度な派手さと色気、ヘヴィさが備わっており、すべてにおいて「痒いところに手が届く」作りかなと。

特別新しい要素や突出した個性こそ感じられないものの、文句なしに何度も楽しめる安心安定の1枚ではないでしょうか。個人的には大好物ですが、年間ベストに選ぶようなタイプとは違うかな。だけど、気づくと何年経っても手に取っている、そんな良作だと断言できます。できれば、忘れた頃に2作目、3作目も作ってほしいなと思う、そんな良プロジェクトです。

 


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2021年3月30日 (火)

EVANESCENCE『THE BITTER TRUTH』(2021)

2021年3月26日にリリースされたEVANESCENCEの5thアルバム。日本盤は同年3月24日に先行発売。

スタジオ作品としてはオーケストラとのコラボアルバム『SYNTHESIS』(2017年)から3年4ヶ月ぶり、全曲新曲で構成されたオリジナルアルバムとなると『EVANESCENCE』(2011年)から約9年半ぶりの新作。随分と時間が経ってしまった感がありますが、良くも悪くも「Bring Me To Life」(2003年)の幻影を断ち切るには十分だったのではないかと思います。

プロデュースを担当したのは、前々作『EVANESCENCE』を手掛けたニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSCODE ORANGEDEFTONESHALESTORMなど)。メインソングライターのひとりだったテリー・バルモサ(G)に代わり2015年に加入した女性ギタリスト、ジェン・マジューラ(G)を含む新編成で取り組んだ、真のデビュー作と言えるでしょう。大半の楽曲はエイミー・リー(Vo)、トロイ・マクロウホーン(G)、ティム・マッコード(B)、ウィル・ハント(Dr)の4人が中心となり制作されており、そこにジェンや、ウィル・B.ハントなるドラマーのウィル・ハントと同名のプログラマー/プロデューサー(前作『SYNTHESIS』のプロデュースはこちらのB.ハントのほうが担当したようです。同名なので、クレジット上では“B”を付けているみたいですね)、ニックなどが加わりまとめあげたと推測されます。

メロディの抑揚が以前の作品と比べて弱いせいもあってか、ダークが際立ちつつも、どこかこじんまりした印象を与える本作。それでも随所にこのバンドらしい美メロが散りばめられており、一定以上の完成度は保っていると思います。実際、フックになるような楽曲も少なくないですし、アルバム本編12曲を通して聴いたときの印象も決して悪くありません。個人的には中盤から終盤にかけての流れや楽曲の配置の仕方が、従来のEVANESCENCEらしいと思いましたし、序盤でちょっとした違和感を残しつつも後半にかけて“らしさ”を提示する流れは決して嫌いじゃありません。

演奏面でも非常に工夫されており、前々作『EVANESCENCE』以上に“バンド”感が強まっている。“エイミー・リーwithバンド”だった初期2作と比べたら、そりゃあエイミーが後ろに引っ込んでいるように映るかもしれませんが、これが今のEVANESCENCEの在り方であり、バンドを長生きさせるための処世術なんだろうなということが伝わってきます。

何度かリピートしても、やはり「Use My Voice」から本編ラストの「Blind Belief」までの流れ(および各楽曲)が文句なしの仕上がりなので、若干薄味な序盤と帳消しという点ではやはり及第点かな。

実は昨年2月中旬、エイミーが和楽器バンドとのライブ共演(およびコラボ新曲制作)のために来日した際、大阪でのライブ前日に和楽器バンドとエイミーの座談会のほか、エイミーの単独インタビューも担当したのですが(こちらは翌月に控えた『DOWNLOAD JAPAN』や、春から始まるWITHIN TEMPTATIONとの欧州ツアーについても伺っていたのですが、コロナの影響でいろいろな予定が狂ったため、現在まで未公開のまま)、その際にニューアルバムの進行についても聞いており、「ほぼ完成しているけど、残り数曲をツアーの手応えを経てから完成させて、秋には発表したい。それまでには新曲も随時リリースしていきたい」という話をしてくれていました。

そう考えると、このアルバムって当初予定していた内容とは少し違うものになったのかなと思うんです。もっと言えば、コロナの影響がもろに反映された愛用/作風だなと。抑揚の弱さや本作以前と比べて質感の異なるダークさは、まさにその一環だろうと感じます。「Use My Voice」にはリジー・ヘイル(HALESTROM)やテイラー・モムセン(THE PRETTY RECKLESS)、シャロン・デン・アデル(WITHIN TEMPTATION)などの女性ボーカリストがゲスト参加していますが、これらもリモート(データのやり取り)で制作されたものでしょうし。きっと、これらのバンドとツアーをしていたらまた違った仕上がりになっていたかもしれないし、もっと言えばこの曲は生まれなかったかもしれない……そう考えると、つくづく難しい世の中になったものだなと感じます。

コロナの影響を差し引いても、本作は特別ずば抜けたアルバムとは言い難いかもしれません。しかし、どうしても2021年という“withコロナ”の時代に生まれたという事実は加味して考えないといけない。半年後、1年後に世の中がどう変わっているかわかりませんし、実はそんなに大きな変化はないのかもしれない。それでも、本作は時間が経つにつれて響き方が変わってくるんじゃないだろうか……そんな気がしてなりません。だから、一方的に否定できないし、嫌いになれない。そんなふうに、いろんなことを考えさせられる1枚なんです。

聴けば聴くほど語るべきことがたくさん見つかる。時が経てば経つほど、たくさん語りたくなる。そんな不思議なアルバムです。

 


▼EVANESCENCE『THE BITTER TRUTH』
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2021年3月29日 (月)

OASIS『THE MASTERPLAN』(1998)

1998年11月3日にリリースされたOASISのコンピレーションアルバム。日本盤は同年10月28日に先行発売。

全英1位/全米2位/日本3位(オリコン総合チャート)という好成績を残した3rdアルバム『BE HERE NOW』(1997年)を経て、続く4thアルバムまでのつなぎ且つ1998年のクリスマス商戦に向けたアイテムとして制作された、既出のシングルBサイド曲で構成された内容。ファン投票の結果を踏まえ、ノエル・ギャラガー(G, Vo)によって決定した14曲が収められており、「隠れた名曲が多いアルバム未収録曲」による“裏ベスト”的1枚となっています。

本作にはライブでの定番曲だった「Acquiesce」や「Talk Tonight」、ビートルズのカバー「I Am The Walrus」のライブテイクなど、耳馴染みのある楽曲も多数収録されています。当時のOASISファンにとって、毎回アルバム未収録の新曲が複数用意されたシングルはマストアイテム。なので、新曲や未発表曲皆無の本作はある意味スルー案件ではあったものの、こうやってアルバム1枚にまとめられると手軽に楽しめるので重宝した、なんてファンも少なくないはずです。

録音時期や録音環境(スタジオ/ライブテイク)、録音メンバーも異なるため、アルバムとしてのトータルクオリティはオリジナルアルバムには及びませんが、それでも捨て曲なしの本作はOASISに多少なりとも興味があるリスナーなら、避けては通れない1枚。上記のような楽曲に加え、「Underneath The Sky」「Going Nowhere」「Rockin' Chair」「Stay Young」「Headshrinker」、そしてタイトルトラック「The Masterplan」とノエル・ギャラガーの才能が遺憾無く発揮された名曲がたっぷり用意されているのですから。このクオリティでアルバムから漏れるんだ……と当時は驚かされたものです。

あと、ノエルVo曲が多いのも本作の特徴かな。この当時はまだ、アルバム本編では抑え気味だったノエルのシンガーとしての側面は、シングルのBサイドナンバーで発揮されていたわけで、本作では全14曲中5曲(うち「Acquiesce」はリアム・ギャラガーとのツインVo)でノエルの歌を楽しめます。その中でも特筆すべき1曲が、先にも挙げた「The Masterplan」。これ、なんで『BE HERE NOW』から漏れたんだろうと頭を抱えるほど出色の完成度で、あの時期の創作意欲はバンドとしてもピークに達しつつあったことが理解できるんじゃないかと。それこそ「Stay Young」も『BE HERE NOW』期のBサイド曲ですしね。

本作りリースからしばらくして、初期メンバーのボーンヘッド(G)とギグジー(B)が相次いで脱退。残されたリアム&ノエルと、1995年に加入したアラン・ホワイト(Dr)の3人で4thアルバム『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000年)を完成させることになります。結果として本作は、初期OASISの節目を飾る1枚となってしまいましたが、ありきたりなシングルコレクションではなく、こうした裏ベストで第1期を締めくくったのも実にOASISらしかったのではないでしょうか。

 


▼OASIS『THE MASTERPLAN』
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2021年3月28日 (日)

OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995)

1995年10月2日にリリースされたOASISの2ndアルバム。日本盤は同年10月10日発売。

1stアルバム『DEFINITELY MAYBE』(1994年)がイギリスのみで200万枚を超える大ヒット作となり、デビューしていきなりスターバンドへと昇格したOASIS。約1年1ヶ月という非常に短いスパンで届けられたこの2作目のアルバムはその1作目をさらに上回るセールスを記録し、イギリスのみで約500万枚を突破。その勢いはアメリカにまで飛び火し、最高4位/400万枚という快挙を成し遂げます。また、本作からは「Some Might Say」(全英1位)、「Roll With It」(同2位)、「Wonderwall」(全英2位/全米8位)、「Don't Look Back In Anger」(全英1位/全米55位)というヒットシングルも生まれ、そのほかにも「Morning Glory」や「Champagne Supernova」がオーストラリアでシングルカットされともにTOP30入りを記録しました。

久しぶりに現れた破天荒なロックバンドで、リアム・ギャラガー(Vo)&ノエル・ギャラガー(G, Vo)のビッグマウスぶりがゴシップ誌で取り沙汰されることも多い。だけど楽曲は非常にポップ&ロックでわかりやすく、幅広い層にアピールする。そういったトピックがすべて良い方向に作用し、『DEFINITELY MAYBE』というアルバムで最初のピークを迎えるわけですが、それはあくまでイギリスや日本において。続く今作ではそういった話題が世界規模にまで拡大し、国民的バンドから「今、世界でもっとも人気のアイコン」にまで登り詰めることになるのですが、それもこれも楽曲の完成度、アルバムとしてのわかりやすさ/親しみやすさあってこそだと思うのです。

1stアルバムは処女作らしく尖った部分や(良い意味で)未完成/未発達な部分も随所に見受けられましたが、この2ndアルバムではトゲを適度に残しつつも、未開拓だった部分がまったく見つからないほどの鉄壁さを手に入れた。前作にも迷いはまったく感じられませんでしたが、本作でのそれは1作目の比ではなく、無敵さを獲得したからこその「有無を言わさぬ説得力」が備わっているのです。

1曲1曲の出来については僕がここで書くまでもなく、聴いてもらえば重々おわかりいただけるはずです。すべての楽曲がアンセミックな輝きを放っており、気づけば一緒に歌えてしまう。その輝きはリリースから25年以上経った今聴いても、まったく色褪せていないし、もっと言えば古さすら感じられない(そもそもが、最初から時代を先取りした新しい音ではなかったですしね。笑)。エヴァーグリーンってこういうことを示すんだなと、改めて実感させられます。

絶対的なポピュラリティを保ちつつ、随所にマニアックさも散りばめられている。万人を唸らせる王道さがありながらも、実はロックマニアが食いつくような要素も用意されている。この絶妙なバランス感こそ、ブリットポップというブームを超越して広く行き渡った要因ではないでしょうか。もっと言えば、そのバランス感がもっとも保たれているOASISのアルバムって、実は本作くらいなんじゃないかな。本作と前後して発表された1作目と続く3作目『BE HERE NOW』(1997年)はそのバランス感が若干いびつですし、それ以降の作品は良くも悪くもそのバランスを取り戻そうとする感が伝わるし。そういった意味でも、本作は奇跡的な1枚なのかもしれません。だからバカ売れしたんでしょうね。

※追記(2021/3/29):本作を含むOASISのアルバム初期3作やTHE VERVE『URBAN HYMNS』(1997年)などのアートワークを手がけた英国のグラフィックデザイナー/アートディレクターのブライアン・キャノンが3月28日にお亡くなりになりました。このタイミングの訃報に驚きを隠せません。ご冥福をお祈りいたします。 

 


▼OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』
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2021年3月27日 (土)

BLUR『THE GREAT ESCAPE』(1995)

1995年9月11日にリリースされたBLURの4thアルバム。日本盤は同年9月6日に先行発売。

バンドを国民的存在へと導いたメガヒット作『PARKLIFE』(1994年)から1年5ヶ月という非常に短いスパンで届けられた本作は、2ndアルバム『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)から始まった“ブリットポップ三部作”の完結編にあたる、初期の集大成的内容。『PARKLIFE』が依然ヒットチャートを賑わす中、堂々と全英1位に輝き、セールス的にも『PARKLIFE』に次ぐヒットアルバムとなりました。また、本作は初めて全米チャートにランクイン(最高150位)した記念すべき1枚でもあります。

シングルに関しても、OASIS「Roll With It」との同時期リリースでチャート上での直接対決が注目された「Country House」が初のシングル全英1位を獲得したほか、「The Universal」(同5位)、「Stereotypes」(同7位)、「Charmless Man」(同5位)とすべてのシングルがTOP10入りを果たす快挙を成し遂げました。まさにBLURの最盛期と呼べる時期の、神がかった1枚と言えるかもしれません。

ブリットポップと呼ばれるムーブメントのトップランナーに勝手に認定され、OASISと常に比較される中で完成させた本作。当然、そういった葛藤や苦悩、あるいは闘争心といったものが作風にも反映されており、冒頭を飾る「Stereotypes」のどこかギラついたサウンド、“very british”ながらも神経を擦り減らすような感覚も伝わる名曲「Country House」などは、そういった側面の象徴的楽曲といえるでしょう。また、楽曲のバラエティ豊かさに関しても過去イチで、そのとっ散らかりぶりに最初は拒否反応を示すリスナーも少なくないかもしれません。かくいう自分も、リリース当時は「やりすぎ!」と若干拒絶気味でした(苦笑)。

しかし、続く5thアルバム『BLUR』(1997年)で方向転換したあとに本作に触れると、不思議と受け入れられるものがあるんですよね。さらに、より時間が経ってから久しぶりにこの『THE GREAT ESCAPE』を引っ張り出して聴くと、最初に触れたとき以上にその魅力が感じられるようになった自分に気づく。なぜなんでしょう。

アルバムの作風的に言えば、実は本作ってサブスク/プレイリスト全盛の昨今にぴったりな1枚だと思うんです。20年以上はまだアルバム・オリエンテッドな考え方が当たり前の時代でしたし、そりゃ時代を先取りしすぎでしょ、と(笑)。もちろん、楽曲1つひとつの完成度や質感に関しても、あの頃より今のほうが伝わるものがあるから、よりそう思えるわけですが。

いわゆるブリットポップ的なものをイメージして本作に触れると、実はすべてがすべてブリットポップ的とは言い難い。次作『BLUR』を予兆させるテイストも含まれているし、もっと言えばそれ以降の変化の序章と受け取れる楽曲も存在する。バンドとしては最盛期にして過渡期と呼べる時期だったかもしれませんが、そんな混沌の中で制作された本作は異様に研ぎ澄まされており、かつ先を進みすぎていた。それが当時、バンドの意図した通りに受け入れられていたかはわかりませんが、少なくとも自分のようなリスナーも少なからず存在したと記憶しています。

ブリットポップというブームが去り、丸裸になったBLURがよりアーティスティックな側面を強めていったからこそ、本作がその原点であり処女作であったことにも気付かされた。そんな方もいるのではないでしょうか。15曲ものバラエティ豊かな、高品質のポップ/ロックソングが詰め込まれた60分近いボリュームの本作は、『PARKLIFE』と『BLUR』というエポックメイキングな傑作に挟まれたことで印象的には地味さが伴いますが、実は今こそ再評価されるべき名盤ではないかと信じています。

 


▼BLUR『THE GREAT ESCAPE』
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2021年3月26日 (金)

BLUR『THE MAGIC WHIP』(2015)

2015年4月27日にリリースされたBLURの8thアルバム。日本盤は同年4月29日に発売。

グレアム・コクソン(G, Vo)抜きで制作された『THINK TANK』(2003年)以来12年ぶり、グレアムを含むオリジナル編成となると『13』(1999年)以来16年ぶりのアルバム。2009年に再始動したBLURにとっては、「Fool's Day」(2010年)、「Under The Westway」「The Puritan」(ともに2012年)に続く新作となります。

2013年春、BLURは日本で開催予定だった大型野外フェス『TOKYO ROCKS』に出演する予定でした。しかし、香港滞在中にフェス中止が告げられ、5日間の空き時間が生じることになります。ここでバンドはイギリスからレコーディングエンジニアを呼び出し、香港でスタジオを押さえて新曲制作に取り組みます。ここでの音源はしばらくお蔵入り状態でしたが、2014年後半にグレアムがデーモン・アルバーン(Vo)に「香港でレコーディングした新曲を完成させよう」と提案。その後、グレアムとBLURの過去作に携わったプロデューサーのスティーヴン・ストリートを中心に制作が進められ、同年末にはバンドメンバー4人が勢揃いして作業を継続。こうして、思いも寄らないニューアルバムが完成したわけです。

香港でのレコーディングが中心ということもあり、アートワークはバンド名とアルバムタイトルをそれぞれ漢字で表現。サウンドにアジアテイストが影響しているかというと、それもせいぜい「Mirrorball」でのストリングスの音色くらい。全体的には我々がイメージする「BLURらしさ」をベースに、この10数年にデーモンやグレアムが積み重ねた「新たな要素」を散りばめた、非常に“らしい”1枚に仕上がっています。

適度なブリットポップ感は随所に満載で、オープニングを飾る「Lonesome Street」の時点でそのラインを求めているリスナーにはヒットするのではないでしょうか。しかし、一筋縄でいかないのがBLUR。以降はダウナーでオルタナロック色の強いサウンドや、デーモンが当時傾倒していたアフロミュージックテイスト、打ち込みを多用したポップチューン、映画のサウンドトラックを彷彿とさせるドラマチックな楽曲など、多種多様な顔を見せるという、ある意味では90年代半ばのBLUR黄金期にもっとも近い作風と言えるでしょう。しかし、本作の場合そこに『BLUR』(1997年)や『13』、『THINK TANK』のテイストもしっかり活かされているので、バンドの総決算的1枚と呼ぶこともできるはずです。

内省的な作風は90年代後半のBLURや、直近に制作されたデーモンのソロアルバム『EVERYDAY ROBOTS』(2014年)に近いものがあるので、その流れを踏まえて触れたらスッと入っていける内容と言えるでしょう。90年代半ば、もしくは『BLUR』あたりで“止まって”しまっている懐古厨の皆さんには厳しい作品かもしれませんが、そういった意味では15年という時間の重みが強く伝わる「聴き手の立ち位置によりまったく響き方が異なる」1枚かもしれませんね。

 


▼BLUR『THE MAGIC WHIP』
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2021年3月25日 (木)

MESHUGGAH『CONTRADICTIONS COLLAPSE』(1991)

1991年1月1日にリリースされたMESHUGGAHの1stアルバム。日本盤は1995年11月22日、ビクターからリリースされたものが初版になります。

1989年に発表されたデモEP『MESHUGGAH』に続く、正規作品として最初のアイテムとなる本作はイェンス・キッドマン(Vo, G)、フレドリック・トーデンダル(G)、ペーテル・ノルディン(B/1995年に脱退)、トーマス・ハーケ(Dr, Vo)という布陣で制作。当時はイェンス、ギターを弾きながらボーカルを務めていました。また、「Choirs Of Devastation」ではトーマスのボーカルを聴くこともできます。

今ではジェントというジャンルの始祖的扱いを受けているMESHUGGAHですが、本作はスラッシュメタルの影響下にあるヘヴィメタルを展開。複雑な展開/アレンジの楽曲群はMEGADETH以降のインテレクチュアル・スラッシュの延長線上にあるスタイルで、イェンスのボーカルもグロウルというよりはスラッシュの流れにある吐き捨て型といえるでしょう。そういった要素により、また時代的にもメタル全盛末期ということで、80年代末の空気感をまとっている作品とみなすこともできます。

が、すでにこのデビュー作の時点でのちのストレンジなスタイルの片鱗は見え隠れしており、フレドリックの奏でる不協和音を用いたリフワークやソロプレイ、「Abnegating Cecity」や「Internal Evidence」などで見られる異質なアレンジ&バンドアンサンブルはすでに「MESHUGGAHらしい」と断言できるものばかり。知名度的には非常に低い存在だったと思いますが、やろうとしていることのレベルはデビュー時から相当高かったんだということが伺えます。

また、当時主流になりつつあったPANTERA以降のグルーヴメタル的な香りも随所に見受けられ、そこにジェイムズ・ヘットフィールド的ボーカルスタイルが乗ることで「もしMETALLICAが『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)の次にこちら側に寄っていたら」なんて仮定の世界も想像できてしまう(笑)。いわゆるスラッシュの大御所たちが日和らずに攻め続けていたら、こんな世界線もあったんだろうな……なんて“IFの世界”を、まさかスウェーデンのバンドが具体化してくれるなんて。僕自身、1991年に本作と出会っていたら、またその後のメタルとの接し方も変わっていたのかもしれません。

MESHUGGAHが現在に至るスタイルの基盤にもっとも近づいたのは、2ndアルバム『DESTROY ERASE IMPROVE』(1995年)以降。そういった意味では、現在のMESHUGGAHとはまた別のバンドのようにも感じられますが、これはこれで非常によくできたプログレッシヴなスラッシュメタルアルバムなので、いろんな意味で楽しめる1枚ではないでしょうか。個人的にもお気に入りの作品です。

 


▼MESHUGGAH『CONTRADICTIONS COLLAPSE』
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2021年3月24日 (水)

VOIVOD『ANGEL RAT』(1991)

1991年11月12日にリリースされたVOIVODの6thアルバム。日本盤は同年11月25日発売。

前作『NOTHINGFACE』(1989年)に続く、メジャーのMechanic / MCA Records第2弾作品。プロデューサーには前作から引き続きのスティーヴ・シンクレアと、初期RUSHを手掛けたテリー・ブラウンが参加しています。

スネイク(Vo)、ピギー(G)、ブラッキー(B)、アウェイ(Dr)という初期黄金期メンバー最後の作品。本作完成後にブラッキーはバンドを離れているので、アルバムクレジットではアディショナル・プレイヤー扱いとなっています。なぜブラッキーがバンドを離れたのか、その理由は本作の音を聴くとなんとなく想像できるのではないでしょうか。

初期のテクニカル・スラッシュメタル路線を飛び越え、前作『NOTHINGFACE』では適度なアグレッシヴさを持つプログレッシヴ・メタルへと進化する姿を提示したVOIVODでしたが、本作では『NOTHINGFACE』での路線をはらみつつも(1991年という時代性も反映されてか)オルタナティヴロック色が強まっています。5分を超えるようないわゆる大作路線は完全に払拭され、どの曲も3〜4分程度のコンパクトな仕上がりに。かつ、ストレートでシンプル、かつストレンジという手の込んだアレンジは、どこかRUSHのようでもあります。

テリー・ブラウンをプロデューサーに起用したからRUSHに似ている、なんていうレベルではなく、確実にそちら側に近づきたいという意思が強く感じられる作風です。前作ではヘヴィメタル版PINK FLOYDを目指すのかと思いましたが、実はこっちだったんですね。もちろん、本作にも初期PINK FLOYD的サイケデリック色は存在します。タイトルトラック「Angel Rat」や、今でもライブで披露される機会の多い「The Prow」なんて完全にそっち側ですし。

でも、このバンドのスタンス的にはRUSHというのも理解できる。要するに、先人たちのいいとこ取りをしながら初期のスタイルを脱却して新たなスタイルを確立させようとしたのでしょう。本作で見せた新たなスタイルは次作『THE OUTER LIMITS』(1993年)で完成の域に達することになりますが、本作は迷いが少し垣間見えるという点において過渡期の1枚なんじゃないかな。良いアルバムだけど傑作とは言い難い。特に『NOTHINGFACE』のあとだけに、若干薄味に感じられるしね。

ところが、リリースから30年経った2021年に聴いてみると、30年前(1991年)の空気感が最高の形で真空パックされていることに気づきます。良くも悪くもどっちつかずなところは、あの時代にHR/HMシーンが抱えていた空気感そのもの。と同時に、このさじ加減が今はとても心地よく感じられるのです。不思議なものですね。グランジブームが勃発する直前の作品ですが、意外にもあの当時の空気を先取りしていた、今こそ再評価されるべき1枚かもしれません。

 


▼VOIVOD『ANGEL RAT』
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2021年3月23日 (火)

LANDMVRKS『LOST IN THE WAVES』(2021)

2021年3月19日にリリースされたLANDMVRKSの3rdアルバム。日本盤未発売。

LANDMVRKSは2014年にフランス・マルセイユで結成されたメタルコア/ポストハードコアバンド。スクリーモ風のメロウなテイストやラップメタル的側面、デスメタルを彷彿とさせるブルータルさや、果てはジェントまで、さまざまな要素をバランスよく取り入れたスタイルは非常に現代的で、2019年4月にはオーストラリアのメタルコアバンドPOLARISと日本公演も実施しています。

約3年ぶりに発表された今作は、アートワークこそ(フランス出身ということで)フレンチポップ風の爽やかさをにじませますが、冒頭のタイトルトラック「Lost In A Wave」のダークなオルタナメタル風リフ→のたうち回るヘヴィ&グルーヴィーなバンドサウンドと激しいスクリームという構成に、一発で心を掴まれるはずです。適度なメロディアスさ(シンガロングパート)も用意されているほか、疾走パートやお約束のブレイクダウンなど、1曲の中にさまざまな要素が詰め込まれたアレンジ力には目を見張るものがあります。

ラップメタル風の「Visage」やアンセミックなモダンメタルナンバー「Tired Of It All」、ジェントを思わせるリズムの刻み方&楽器隊のシンコペーションを効かせたプレイ、マシンガンボーカルがひたすらカッコいい「Say No Word」、浮遊感を強調したミディアムナンバー「Paralyzed」など、とにかく1曲1曲の完成度が非常に高く、いろいろ“狙った”感の強い“売れ線バンド”だなと思いました。産業メタルならぬ、産業メタルコアといったところでしょうか(笑)。

あ、こう書くと揶揄しているように受け取れるかもしれませんが、これってめちゃくちゃ褒め言葉ですよ? LINKIN PARKPAPA ROACHだってデビュー作はあの当時、僕は産業モダンメタルと解釈していましたから。このLANDMVRKSも、それくらい才能あるブレインがバンド内に存在するということなんでしょうね。しっかり爪痕を残しているし、キラーチューンも満載なので、全然アリだと思います。

フローラン・サリファティ(Vo/読み、これでいいのかしら?)の声質も、ほかのメタルコア/ポストハードコアバンドとは一線を画する個性的なもの。言ってしまえばメタル寄りの声質ではないと思いますが、ここではそれが良い方向へと導き、バンドの個性確立に貢献しているように感じます。ぶっちゃけ、最初聴いたときは女性かと思ったくらい(笑)。好きですよ、僕は。

全10曲(うち1曲が30秒程度のインタールード)どれもが3分前後のコンパクトさで、トータル31分というトータルランニングも“ちょうどよい”。実際にライブを観たことがないのでなんとも言えませんが、世が世ならこのアルバムを携えたツアーでブレイクスルーするんじゃないかと思うのですが、このご時世だけに先が読めないものがあります。ひとまず、この系統の作品としては非常にクオリティの高い内容なので、聴いておいて損はないと思います。

 


▼LANDMVRKS『LOST IN THE WAVES』
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2021年3月22日 (月)

EYEHATEGOD『A HISTORY OF NOMADIC BEHAVIOR』(2021)

2021年3月12日にリリースされたEYEHATEGODの6thアルバム。日本盤は3月10日に先行発売。

セルフタイトルとなった前作『EYEHATEGOD』(2014年)制作直後にジョーイ・ラケイズ(Dr)が急逝。また、2018年にはリードギタリストのブライアン・パットンが脱退し、シングルギターの4ピースバンドとなってしまったEYEHATEGODでしたが、ここに約7年ぶりの新作を完成させました。

80年代末から活動しているバンドですが、オリジナル作は30年強の活動で6枚のみ。僕自身が彼らの作品をよく耳にしていたのも90年代前半、それこそPANTERAやDOWNからの流れだったので、今でいうところのスラッジというよりはヘヴィでドゥーミーなヘヴィメタルという感覚で触れていたと記憶しています。

実際、この新作で20数年ぶりに彼らの新作に触れてみたのですが、そういったヘヴィメタル的なテイストよりもハードコアパンク経由のスラッジという印象を強く受けました。そういったテイストはもちろん過去の作品からも感じ取れていましたが、シングルギター編成になったことも影響してか、ひとつの塊として音を表現する方向性がどこかハードコア的だなと感じたんです。

スラッジであることは間違いないのですが、もはやヘヴィメタルとは別次元の音だなあと。もちろん、これは褒め言葉ですよ。僕はこれを聴いてBLACK SABBATH云々という印象は持ちませんでしたし、それよりは80年代後半からアメリカに根付くオルタナティヴロックの流れにあるんだろうなと感じられた。かつ、そこにアヴァンギャルドな側面を加えた結果、要所要所で90年代前半のモダンヘヴィネス(PANTERAというよりはHELMETあたり)との共通点も見つけられる。そういう音が2021年に今、このアルバムでも健在という意味では、良くも悪くも「いつもどおり」と捉えることができるかもしれません(近作を聴いていないのに生意気ですが)。

あと、90年代の諸作品では“怒り”をパワーにしつつ、それらをストレートに音として表現していた印象がありましたが、今作ではその怒りにベールがかかっているようにも受け取れました。怒りの矛先が見えないというか、いろんな方向に向かって闇雲に吠えているというか。それが(良い方向で受け取れば)どこかカオスな空気を作り上げていると僕は感じたのですが、いかがでしょう。

リフメイカーとしてのジミー・バウワー(G)の仕事ぶりは相変わらず素晴らしいものがありますし、マイク・ウィリアムズ(Vo)の凄みの効いた叫びもカッコいいったらありゃしない。だけど、他者を圧倒するような“特別なもの”が感じられないのも気になるところ。そのもどかしさが、まさに上記の“怒りにベールがかかっている”という言葉にもつながるような。

でも、もしかしたらこのバンドはこれくらいのさじ加減がちょうどいいのかもしれませんね。何度かリピートしているうちに、そうポジティブに受け取れるようになりました。そんな、クセになる1枚。可能なら、ばかデカい音で聴いてもらいたいです。

 


▼EYEHATEGOD『A HISTORY OF NOMADIC BEHAVIOR』
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2021年3月21日 (日)

A.A. WILLIAMS『SONGS FROM ISOLATION』(2021)

2021年3月19日にリリースされたA.A. ウィリアムズのカバーアルバム(通算2作目)。日本盤(輸入盤国内仕様)は3月24日発売予定。

A.A. ウィリアムズはロンドン出身の女性シンガーソングライターで、昨年7月に1stアルバム『FOREVER BLUE』をリリースしたばかり。そのデビュー作から1年経たずして発表された本作は2020年3月、イギリス全土がロックダウンされたことを受けてスタートしたプロジェクトで、ファンが選んだロック/ポップスの名曲群をシンプルなアレンジでカバーするというもの。ロンドン北部にある彼女に自宅でレコーディングされた楽曲その大半は、ピアノ弾き語りで表現された、まさに“孤独の歌(=SONGS FROM ISOLATION)”というタイトルに相応しい仕上がりです。

カバーされたのは、60年代から2000年代まで幅広いセレクト/ジャンルの楽曲たち(カッコ内は原曲リリース年)。

THE CURE「Lovesong」(1989年)
PIXIES「Where Is My Mind?」(1988年)
ゴードン・ライトフット「If You Could Read My Mind」(1970年)
RADIOHEAD「Creep」(1993年)
THE MOODY BLUES「Nights In White Satin」(1967年)
DEFTONES「Be Quiet And Drive (Far Away)」(1997年)
NINE INCH NAILS「Every Day Is Exactly The Same」(2005年)
NICK CAVE & THE BAD SEEDS「Into My Arms」(1997年)
THE SMASHING PUMPKINS「Porcelina Of The Vast Oceans」(1995年)

ここで取り上げられた楽曲の大半はヘヴィなギターサウンドを軸にしたロックナンバーですが、A.A. ウィリアムズは無駄をすべて削ぎ落としたアレンジを施すことで、メロディの良質さを再提示。かつ、ダークでゴシックテイストの強い、落ち着いたトーンで歌うことで全体のトーンを統一することに成功しています。基本的にはピアノのみをバックに一発録り的な作風ですが、中には「Be Quiet And Drive (Far Away)」のように若干歪んだギターに多重コーラスを被せたものもあり、こういった工夫がダークでダウナーなアルバムにおいて適度なスパイスとなっています。

また、彼女のボーカルも曲によって強弱がしっかりつけられており、「Creep」ではトム・ヨークとはまた違った高揚感が感じられるし、「Every Day Is Exactly The Same」はトレント・レズナーとも異なる気だるさ&セクシーさが伝わる仕上がり。特にピアノアレンジが施された後者は、「NINE INCH NAILSもこのバージョンで演奏すればいいのに」という親和性すら感じられる。非常にマッチしているんですよね。

そんな中で、「If You Could Read My Mind」や「Nights In White Satin」のような若いロックファンがあまり知らない楽曲(若くはないけど、自分も含む)が非常に新鮮に響きます。本作の中で原曲をまったく知らなかった2曲ですが、これらの楽曲と出会わせてもらえたことは、本作における大きな収穫と言えます。

本作での彼女のボーカルパフォーマンスやアレンジが気に入った人なら、デビュー作の『FOREVER BLUE』も間違いなく気に入るはず。個人的にも去年よく聴いたアルバムのひとつなので、今回のカバー集を機にさらに多くのリスナーに見つかってほしいアーティストのひとりです。

 


▼A.A. WILLIAMS『SONGS FROM ISOLATION』
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2021年3月20日 (土)

PAUL STANLEY'S SOUL STATION『NOW AND THEN』(2021)

2021年3月19日にリリースされたPAUL STANLEY'S SOUL STATIONの1stアルバム。

このバンドはKISSポール・スタンレー(Vo, G)がここ数年の間にスタートさせた、15人編成のR&B/ソウルミュージック・バンド。過去の偉大な名曲群に敬意を表してカバーしており、2018年には日本のブルーノートでの来日公演も実現しています。ある種、KISSを終えた後のライフワークにしようとしているのが見えますね。

今回制作されたデビューアルバムは、ポールのソロワークとしては『LIVE TO WIN』(2006年)以来約15年ぶりの新作。全14曲のうち、9曲が60年代前後のR&B/ソウルの往年の名曲カバーで、5曲が今作のためにポールが書き下ろしたオリジナル新曲となります。制作開始当初はカバー曲のみで構成される予定だったアルバムでしたが、ポール曰く「バンドも曲も、過去だけに頼っていてはいけないと思い始めたんだ。それで、過去と現在とを継ぎ目なく滑らかに結び付けるような曲を書くことを目標に、新曲作りに着手した」そうです。

アルバムで取り上げられたカバー曲はTHE SPINNERS「Could It Be I'm Falling In Love」、SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES「Ooo Baby Baby」、FIVE STAIRSTEPS「O-O-H Child」、THE TEMPTATIONS「Just My Imagination (Running Away With Me)」、スモーキー・ロビンソン「The Tracks Of My Tears」、アル・グリーン「Let's Stay Together」、THE DELFONICS「La-La – Means I Love You」、THE STYLISTICS「You Are Everything」、FOUR TOPS「Baby I Need Your Loving」とロックリスナーにも比較的わかりやすいセレクト。アレンジも特にヘンテコな味付けをすることなく、ゴージャスなバンドセクションにより原曲の魅力を大切にカバーされています。

で、その間に配置されたオリジナル新曲の数々ですが、これらの仕上がりも先のカバー曲に引けを取らないものばかり。ぶっちゃけカバーの原曲を知らない人が聴いたら、どれがオリジナルでどれがカバーか気づかないくらい違和感なく楽しめるものばかりです。かつ、“あのKISSのポール・スタンレー”が書いたと納得できる、KISSの匂いが節々から感じられる内容と言えるでしょう。もともとポールの書くKISSナンバーには、初期からソウルの影響が感じられるメロディラインや節回しが多かったですし、そういった意味でも想定内の完成度だと言えます。

KISSやロックテイストのソロ作では必要以上に力み過ぎた歌唱で、逆にそれが爽快感につながっていました。が、時々聴かせるファルセットなど繊細な表現も彼の魅力のひとつであり、このSOUL STATIONではその側面をより強調させた作風となっています。楽曲や演奏は悪いわけがない、ボーカルも御年69歳のわりに張りがありながらも穏やかさが伝わる、非の打ちどころがないゴージャスな1枚。刺激的な内容ではないけど、ずっと楽しめる良作です。

 


▼PAUL STANLEY'S SOUL STATION『NOW AND THEN』
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2021年3月19日 (金)

TURBULENCE『FRONTAL』(2021)

2021年3月12日にリリースされたTURBULENCEの2ndアルバム。

TURBULENCEはレバノンの首都ベイルートにて、2013年に結成されたプログレッシヴメタルバンド。地中海に面し、欧州とアラブの境界に位置することで宗教的かつ民族的な多様性を持つレバノンという土地柄、メタルはそこまでメジャーではないような印象を受けますが、彼らはDREAM THEATERから多大な影響を受けており、DREAM THEATERのカバーを中心に地元ベイルートで活動を重ね、2015年に1stアルバム『DISEQUILIBRIUM』を発表しています。

そのサウンドからはDREAM THEATERのみならず、ベイルートという場所も影響してから欧州のバンド(HAKENやTESSERACTなど)からの影響も感じられ、楽器隊のテクニカルさと緻密に作り込まれた展開の多い楽曲構成などで着実に注目を集める存在へと成長していきました。

現在のバンドメンバーが揃ったところで、続く2ndアルバムの制作がスタート。世界的規模の流通網を持つイタリアのFrontiers Recordsと新たに契約し、本作をもって日本を含む地域でワールドワイドデビューを果たすこととなりました。

オープニングを飾る「Inside The Gage」から11分超えの超大作で、このバンドのキモであるテクニカルさやヘヴィ度の高いプログレッシヴメタルぶりを提示。オマー・エル・ヘイジ(Vo)の歌唱スタイルはジェイムズ・ラブリエのそれとは異なる落ち着いたトーンでソウルフル、言ってしまえばそこまでメタルっぽくない。若干ジェント的でもある「Madness Unforeseen」などではギターも低音を強調した複弦ギターを使用しているものの、そこまでエッジを効かせていないので、DREAM THEATERから影響をうけつつもそこまで“まんま”にはなっていない。むしろ、先のHAKENあたりのほうが近いような印象を受けます。

「Dreamless」のように浮遊間の強い2分強の短い曲もあるけど、それ以外はどことなくダンサブルさも感じられる新世代プログレメタル「A Place I Go To Hide」や、スリリングさと優雅さが交互に訪れる「Crowbar Case」、アルバムラストに相応しいドラマチックな「Perpetuity」など、とにかく8〜10分前後の大作ばかり。ボーカルのトーンが良い方向に作用して、プログレメタルにありがちなクドさが抑え気味に感じられるのは、本作の良い面ではないでしょうか。全8曲で60分をゆうに超える長編アルバムですが、そのテクニカルさとモダンな味付けが施されたアレンジ、ボーカルのソウルフルな歌唱法によって最後まで楽しめるはずです。

日本盤にはここに、15分にもおよぶDREAM THEATER「In The Name Of God」のカバーを追加収録。これを加えると、日本盤のみトータル9曲で80分超えの超大作となってしまいます。このカバーは今のところ日本盤CDでしか聴くことができない代物なので、ストリーミングやデジタル購入ではなく国内盤を購入して確かめてみることをオススメします。意外と良いんですよ、このカバーが。しっかり自分たちのものにしてしまっていて、さすがバンド初期にカバーで鍛えただけありますね。

 


▼TURBULENCE『FRONTAL』
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2021年3月18日 (木)

RONNIE ATKINS『ONE SHOT』(2021)

2021年3月12日にリリースされたPRETTY MAIDSのフロントマン、ロニー・アトキンスの1stソロアルバム。

昨年10月、以前から闘病を続けてきた癌が再発し、ステージ4と宣告されたことを公式発表したロニー。ちょうど前年秋にバンドとして3年半ぶりの新作『UNDERESS YOUR MADNESS』(2019年)を発表し、コロナ明けには2018年秋以来となる待望の来日公演も……なんて思った矢先に飛び込んできたニュースだけに、驚きを隠せませんでした。

しかし、ロニーはそこで「残りの余生を静かに過ごす」ことを選ばず、最後まで表現者として最高の1枚を残し続けることを選択。気づけば、バンド名とのクリス・レイニー(G, Key)とともに人生初のソロアルバム制作へと向かっていったわけです。

現メンバーのクリスとの共同プロデュース作となる本作には、アラン・ソーレンセン(Dr)やモルテン・サンダゲル(Key)といったかつてのバンドメイトに加え、ポンタス・ノルグレン(G/KING DIAMOND)、キー・マルセロ(G/ex. EUROPE、OUT OF THIS WORLD)、オリヴァー・ハートマン(G/ex. AT VANCE)、ビョーン・ストリッド(Back Vo/SOILWORK)など名だたる面々が多数参加。ミックスにはPRETTY MAIDSの近作を手掛けてきたヤコブ・ハンセン(DIZZY MIZZ LIZZYVOLBEATAMARANTHEなど)が携わった、北欧メロディックハードロック極みの1枚と呼ぶにふさわしい内容に仕上げられています。

アルバム冒頭を飾る「Real」を筆頭に、かつての「Please Don't Leave Me」などPRETTY MAIDSのポップ/ソフトサイドをさらに純度を高めて昇華させたような作風は、その爽やかなテイスト相まって全体的に生命力に満ち溢れた仕上がりと言えるでしょう。「Scorpio」などではメタリックでパワフルなボーカルも相変わらず健在で、そのスケール感の大きなハードロックサウンドとの相性は抜群。これが嫌いな人なんているわけがない!(言い過ぎかと思われるでしょうが、それくらい素晴らしいんです)。

もちろん、「One Shot」のような美しいバラード(ボーナストラックとして追加収録された同曲のオーケストラバージョンも、違った味わい深さがありまた良し)も、「Before The Rise Of An Empire」みたいな豪快メタルチューンもしっかり用意されており、全体を通して緩急に富んだ構成は完璧の一言。確かにPRETTY MAIDSのパブリックイメージと比較したらソフトすぎるかもしれませんが、この美メロ三昧の1枚を前にしたらそんな贅沢な不満などそのうち吹き飛ぶはず。それくらい、良曲/良パフォーマンスが詰め込まれた極上のメロディックハードロックアルバムだと断言できます。

一度でもPRETTY MAIDSというバンドに触れたことがあるリスナーならば、間違いなく引っかかるものがあるでしょうし、良質なハードロックを愛聴するファンならばマストで聴くべき傑作。と同時に、この先も延々リピートし続けるであろう至高の1枚。これが最後とならずに、この先もソロやPRETTY MAIDSの新作に出会えることを願いつつ、ひたすらリピートしたいと思います。

 


▼RONNIE ATKINS『ONE SHOT』
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2021年3月17日 (水)

CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020)

2020年9月18日にリリースされた、THE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスと元SUEDEバーナード・バトラーによるコラボアルバム。日本盤未発売。

本作は2014年に制作されていたものの、諸事情により6年以上お蔵入りとなっていた曰く付きの1枚。2020年に入ってからNeedle Mythologyというインディレーベルの目に留まり、正式リリースが実現したという経緯があります。

キャサリンにとってはTHE ANCHORESSのデビューアルバム『CONFESSIONS OF A ROMANCE NEVELIST』(2016年)発表前に関わった作品であり、バーニーにとってはEP2枚と短命に終わったTRANSと同時進行で制作に取り組んだ1枚でもあるのですが……これが非常に良いんです。僕、このアルバムの存在を2021年に入ってから知ったんですね(THE ANCHORESSの新作発売に関するプレスリリースを通して)……なんでもっと早くに出会ってなかったんだろう!? と強く思った、2020年のベストアルバムに選出すべき1枚だったのです。

キャサリンの歌を軸にしつつ、バーニーは裏方(ギタリスト&ソングライター、プロデューサー)に徹した内容なのですが、曲が進むにつれてバーニーのギタリストとしての主張がどんどん強くなっていくのが非常に興味深いんです。最初こそTHE ANCHORESSにも通ずる耽美な世界観が構築されているのですが、「Sabotage (Looks So Easy)」あたりから空気が一変。あのねちっこい激情型ギタープレイが随所にフィーチャーされ始めるのです。そうそう、これよこれ!

McALMONT & BUTLERやバーニーのソロ作で感じられたソウルフルさと、初期SUEDEにも通ずるグラマラスな要素がバランスよく散りばめられた楽曲の良さと相まって、2人の個性も曲を重ねるごとにどんどんディープさを増していく。個人的には「I Know」や「No More Tears To Cry」「The Waiting Game」あたりで楽しめる2人の化学反応と、その集大成といえるラストナンバー「F.O.H.」がツボすぎて、聴くたびに何度も鳥肌を立てたものです。いやあ、本当に素晴らしい。バーニー関連の作品でいうと、個人的には彼のソロ1作目『PEOPLE MOVE ON』(1998年)以来となる会心の仕上がりと断言したいです。

今回の正式リリースに際して、アルバムにはボーナストラック2曲を追加。ひとつはマドンナの80年代のヒット曲「Live To Tell」カバーで、こちらはTHE ANCHORESS的側面が強いアレンジと言えるかもしれません。これはこれで良きかな。もうひとつは、アルバム収録曲「The Patron Saint Of The Lost Cause」の別バージョン。リズムトラックを排除し、鍵盤ハーモニカを主軸にしたアレンジとなっています。これもこれで味わい深くて良きかな。まあ、アルバム本編は「F.O.H.」という大傑作で盛大に幕を下ろすので、この2曲はオマケ以外の何ものでもないですけどね。できれば「F.O.H.」が終わったところでワンクッションおいて、しばらくしてからボートラに触れると最適かもしれません。

いやあ、それにしても素晴らしい作品じゃないですか。THE ANCHORESS自体がMANIC STREET PREACHERSMANSUN、そしてSUEDEあたりを好むリスナーにドンピシャなアーティストであるわけですが、このコラボ作はその中でも飛び抜けてど真ん中な1枚であると同時に、時代を超越したロック/ポップスの名盤と呼ぶに相応しいのではないでしょうか。昨年リリースされたアルバムの中ではトップクラスに好きな作品です。

 


▼CHATHERINE ANNE DAVIES & BERNARD BUTLER『IN MEMORY OF MY FEELINGS』
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2021年3月16日 (火)

THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』(2021)

2021年3月12日にリリースされたTHE ANCHORESSの2ndアルバム。日本盤(輸入盤の国内流通仕様)は3月31日発売予定。

THE ANCHORESSはウェールズ出身のマルチ・インストゥルメンタリスト、キャサリン・アン・デイヴィスのソロプロジェクト。2013年から同名義での活動を開始し、2016年には初のアルバム『CONFESSIONS OF A ROMANCE NEVELIST』をリリースし、音楽誌『Prog』主催の音楽賞で新人賞を受賞しました。また、2017年にはポール・ドレイパー(ex. MANSUN)の1stアルバム『SPOOKY ACTION』で5曲を共作したほか、エンジニアとしても同作に参加。2018年にはキャサリン・AD名義でSIMPLE MINDSにも加入し、『WALK BETWEEN WORLDS』(2018年)でアルバムデビューも果たしました。

特に日本の音楽ファンの間で彼女の名前をよく目にする機会となったのが、彼女が長年にわたり熱狂的ファンだと公言してきたMANIC STREET PREACHERSの最新アルバム『RESISTANCE IS FUTILE』(2018年)収録曲「Dylan & Caitlin」にフィーチャリング・アーティストとして名を連ねたことでしょう。昨年は元SUEDEバーナード・バトラーとのコラボアルバム『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020年)も発表しており、個人的にも大好きなMANICSやSUEDE、そしてMANSUNに関連するアーティストということで、その名前を常に意識していました。

プログ・ミュージック専門レーベルKscope Recordsから発表された本作は、キャサリン自身のプロデュースに加え、MANICSでお馴染みのデイヴ・エリンガと、マリオ・マクナルティ(デヴィッド・ボウイプリンス、MANICS)の2名をミキシングエンジニアに迎えて制作。全体的にダークさの漂う、ニューウェイヴ以降のアーティスティックなプログ・ロック/ポップという印象の1枚に仕上がっています。

レコーディングにはDURAN DURANやデヴィッド・ボウイとの共演で知られるスターリング・キャンベル(Dr)や、彼女が敬愛するMANICSのジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo)がゲスト参加。ジェイムズの歌は「The Exchange」にてしっかり楽しむことができます。シンセを多用したキラキラしたニューウェイヴ風ポップと、ピアノや弦楽器などの生音を全面に打ち出した耽美な楽曲が共存する世界観は、広意義でプログ・ロック/ポップと呼ぶに相応しい内容。かつ、90年代以降のオルタナロック/ブリットポップに触れてきたリスナーにはしっくり来る、「一聴して難しそうなことをやっているのに、実は非常に親しみやすい」楽曲で埋め尽くされており、良い意味で聴き手を選ばない1枚と言えるのではないでしょうか。

キャサリンの歌声も適度な色気と気だるさが共存しており、非常に心地よく響く。刺々しさこそ皆無ですが、不思議と刺さるものがあるのは、その洗練されたサウンドによるものが大きいのかもしれません。先に触れたMANICSやMANSUN(およびポール・ドレイパー)、そしてバーニー在籍時の初期SUEDEを通ってきたリスナーなら、間違いなくハマる1枚だと断言できます。中でもMANICSファンは同じウェールズ出身アーティストということもあり、必ず引っかかるものがあるはずです。

このアルバムでさらに知名度を高めることになるであろう傑作、ぜひこのタイミングに一度触れてみてほしいです。

 


▼THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』
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2021年3月15日 (月)

ROB ZOMBIE『THE LUNAR INJECTION KOOL AID ECLIPSE CONSPIRACY』(2021)

2021年3月12日にリリースされたロブ・ゾンビの7thアルバム。日本盤未発売。

WHITE ZOMBIE時代の名盤再現ライブを収めた『ASTRO-CREEP: 2000 LIVE』(2018年)の発売こそあったものの、スタジオ作品としては『THE ELECTRIC WARLOCK ACID WITCH SATANIC ORGY CELEBRATION DISPENSER』(2016年)以来まる5年ぶりの新作。Geffen、Roadrunner、Zodiac Swan / T-Boy(Universal流通)と渡り歩いてきたロブ・ゾンビですが、本作は大手インディーズレーベルのNuclear Blast移籍第1弾作品となります。

プロデューサーには前作も手がけたゼウス(HATEBREEDQUEENSRYCHESOULFLYSUICIDE SILENCEなど)が続投。全17トラックと一見ボリューミーな作品のように映りますが、うち6曲が1分にも満たないSE(インタールード)なので、歌モノは実質11曲。トータル約42分とこれまでの作品同様の適度なトータルランニングなので、非常に聴きやすいはずです。

で、内容も過去のロブ・ゾンビ作品(WHITE ZOMBIE含む)に触れてきたリスナーなら、最後まで安心して楽しめるもので、良くも悪くも“いつもどおり”。ホラー映画チックな演出が随所に盛り込まれ、サウンドは適度なデジタル感が取り入れられたモダンヘヴィロック、歌メロは(一本調子なロブのがなる歌声はあるものの)非常にポップでキャッチーという、全体的にコンセプチュアルのようで実は1曲1曲が独立した完成度の高さを誇る鉄壁のアルバムなわけです。そりゃ悪いわけがない。

……うん、「悪いわけがない」んですけど、どこか物足りないと感じるのもまた正直なところでして。要するに、ソロデビューアルバム『HELLBILLY DELUXE』(1998年)から本作まで、まったく破綻することなし、常軌を逸脱することもなしという安パイなんです。そりゃあ、シングルカットされたような楽曲含め、いくつかは「やっぱり最高だな」と思える良曲は存在しますが、数回聴き終えたら「……まあ、今回もこんな感じだよね」とCDをラックの奥にしまってしまうような。もっと言えば、「これ聴くなら『HELLBILLY DELUXE』、『THE SINISTER URGE』(2001年)、『EDUCATED HORSES』(2006年)といった初期の作品を引っ張り出すよね?」と思えてしまうくらい、「新作を聴く意味」が見出せなくなってしまう。そんな、残念な1枚でもあるのです。

といっても、これは4作目にあたる『HELLBILLY DELUXE 2』(2010年)以降、ロブ・ゾンビの新作で常につきまとう問題なわけでして。 “新世代ショックロックの帝王”に新しいショッキングなサウンドを求めるのは至極当たり前の話ではあるものの、ロブ自身がエンタテインメントとして安心安定の“ノーマル”な作品を提供し続けるという、需要と供給がまったく噛み合っていない状況が10年以上にわたり続いているわけです。なもんだから、よく聴くロブの作品となると上記の初期3作に加え、ソロベスト的なライブアルバム『ZOMBIE LIVE』(2007年)や『SPOOKSHOW INTERNATIONAL: LIVE』(2015年)ばかりになってしまうわけです。で、その傾向は今作を経ても変わりそうにありません。残念ですが。

決して悪い内容ではないけど、平均的でいつもどおりすぎ。ハードコアなロブ・ゾンビのファンなら生涯愛し続けることができる内容かもしれませんし、ここから新たにロブの音楽に触れるというビギナーにも入口としては最適と言えるかもしれません。が、2021年を代表するような1枚ではないし、この先「歴史に残る名盤」に昇格する可能性も限りなく低い……そんなもどかしさを伴う微妙な作品です。いや、好きは好きなんですけどね……。

 


▼ROB ZOMBIE『THE LUNAR INJECTION KOOL AID ECLIPSE CONSPIRACY』
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2021年3月14日 (日)

THUNDER『ALL THE RIGHT NOISES』(2021)

2021年3月12日にリリースされたTHUNDERの12thアルバム。

オリジナルアルバムとしては全英3位という好記録を樹立した『RIP IT UP』(2017年)から4年ぶり、新録作品としても結成30周年を記念して制作されたセルフカバーアルバム『PLEASE REMAIN SEATED』(2019年)から2年ぶりの新作となります。再々結成後の『WONDER DAYS』(2015年)以降、ライブアルバムやベストアルバム含め、定期的にアイテムを届けてくれる勤勉なバンドなので、オリジナル作が4年ぶりという事実に改めて驚かされました。

昨年、本作のオープニングを飾るリードトラック「Last One Out Turn Off The Lights」が公開されたとき、「いつも以上にストレートなオマージュ楽曲だな」と思い、「そろそろネタ切れか?」と若干意地悪な見方もしたのですが、何度も繰り返して聴くとクセになる1曲なんですよね。メインリフがLED ZEPPELIN有名曲オマージュであることは一聴瞭然なのですが、楽曲の構成やメロディ自体は王道のTHUNDER節。パクリとか簡単な言葉では片付けられない、彼らにしか鳴らせない音にちゃんと仕上がっています。

で、2ndシングル「Going To Sin City」が年明けに公開されたときは、そのタイトルと豪快なギターリフもあり「今度はAC/DCか?(笑)」なんて茶化したのですが、確かにそれっぽさはあるものの、ブラスをフィーチャーした豪快なロックンロールはTHUNDER以外の何者でもない。「Last One Out Turn Off The Lights」同様、先人たちからの影響を示しつつもオリジナルであろうと真摯に音楽と向き合う姿勢はさすが生真面目なTHUNDERらしいなと、ニヤニヤしたものです。

そして、ようやく届けられたこのアルバム。楽曲のバラエティ豊かさは近年イチではないでしょうか。序盤の2曲(「Last One Out Turn Off The Lights」「Destruction」)のハードさ、「The Smoking Gun」を含めた冒頭3曲のダークさにドキリとさせられます。思わずコロナ禍以降の生活と重ね合わせてしまいがちですが、レコーディング自体は昨年春までに終了していたとのことなので、一概にそこと結びつけるのも間違いかなと。単純に30周年を経たバンドの今のモードがこっち側ということなのでしょう。『RIP IT UP』、そして『PLEASE REMAIN SEATED』と玄人好みなロックアルバムが続きましたが、今作も全体的にはその延長線上にありながらも、さらに幅を広げようとする攻めの姿勢が伝わる。そういう意味では『RIP IT UP』のような守りはまったく感じられず、最初から最後まで新鮮な気持ちで楽しむことができました。

「I'll Be The One」のような“酸いも甘いも知り尽くした大人”のバラードも、T. REXへのリスペクトが伝わるヘヴィグラムロック「Young Man」も、FACESを豊富とさせるアーシーなロックチューン「You're Gonna Be My Girl」も、ヘヴィ&グルーヴィーな「Force Of Nature」も、ソウルフルな王道ハードロック「She's A Millionairess」も、どれも新鮮なのにどれもTHUNDERそのもの。好きな人なら大満足、初めて聴く人にも純粋に「カッコいい大人のロック」と感じさせてくれる納得の1枚です。

なお、本作の初回限定盤にはアルバムから漏れた新曲4曲に、アルバム本編収録曲のスタジオライブ音源7曲を追加したボーナスディスク付き。こちらの新曲の出来もオマケ以上の仕上がりですし、ライブ音源は新曲を生々しいサウンドで楽しめるゴキゲンなテイクばかりなので、こちらもオススメです。日本盤はこのボーナスディスクが永久仕様で付属しますし、ストリーミングではこちらの11曲は聴けないので、ぜひ国内盤CDの購入をオススメします。

そろそろ二度目の再結成から10年経ちますが、今後もこのスタンスで安定感の強いロックアルバムを量産してくれることを願わんばかり。あとは健康な世の中になって、これらの新曲群を生で聴ける日が少しでも早く訪れることを待つだけ。きっと自分、ダニー(Vo)の「Hello, team!」の第一声で泣くんだろうな(苦笑)。

 


▼THUNDER『ALL THE RIGHT NOISES』
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2021年3月13日 (土)

THE CROWN『ROYAL DESTROYER』(2021)

2021年3月12日にリリースされたTHE CROWNの11thアルバム。日本盤は海外に先駆け、3月10日に発売。

高評価を獲得した前作『COBRA SPEED VENOM』(2018年)から3年ぶりの新作。前作同様に往年の名作を手掛けてきたフレドリック・ノルドストローム(ARCH ENEMYIN FLAMESSOILWORKなど)を再度プロデューサーに迎え、さらにヘヴィ&アグレッシヴな1枚を完成させました。

僕自身、前作で久しぶりに彼らの音に触れたのですが、そのスピード感や攻めの姿勢に感銘を受けたことが非常に強く印象に残っておりましたが、今作は冒頭の「Baptized In Violence」からしてそのアベレージを軽く上回ってきます。1分少々というショートチューンに凝縮されたアグレッションこそすべて!と言わんばかりのオープニングから、6分以上にわたるスピードナンバー「Let The Hammering Begin!」へと続く構成はお見事と言いたくなるほどの気持ちよさ。同曲からはかつてのSLAYERを彷彿とさせるカラーも見え隠れし、要所要所でゾクゾクさせられます。

かと思えば、メロディックデスメタルバンドの側面が垣間見える「Motordeath」、冒頭のミドルヘヴィパートに「おおっ!?」と驚きつつも、途中からタガが外れたかのようなスピードで突進する「Ultra Faust」、パワフルなツインペダルがベースを固めるミドルヘヴィナンバー「Glorious Hades」、ストレートなスピードチューン「Full Metal Justice」など緩急に富んだ流れでまったく飽きさせません。

特に冒頭の「Baptized In Violence」や「Full Metal Justice」「Scandinavian Satan」(タイトルからして最高!)、「Devoid Of Light」のような1〜3分程度の短めなスピードナンバーからは、初期のスラッシュメタルやそれ以前のハードコアパンクの性急さも見出すことができるし、そこに90年代以降のメロデイックデスメタルの色合いが加わることで、楽曲のバリエーションに広がりが感じられる。また、ボーカルの表現力もさすがの一言で、単なるデス声の一言では済まされない、グロウルの中でも強弱や高低の付け方を変えることによって、一筋縄ではいかない個性を確立させているわけですから、恐れ入ります。

5分を超える長尺曲も4、5曲含まれていますが、そういった楽曲ではしっかりアレンジで“聴かせる”要素を増やしているし、何よりもギタープレイだけに耳を傾けてもその表現力の奥深さに圧倒される。だてに長いこと続けているわけじゃないんだなと実感させられます。

個人的にはメランコリックなテイストが強調されたラスト2曲「We Drift On」「Beyond The Frail」が、特にお気に入り。全体的にパワーゲームな内容だからこそ、こういった楽曲がより際立つわけですね。正直ジャケットを観たときはどうかと思いましたが(笑)、“外見”に騙されずぜひその“芯”に触れてみてください。

 


▼THE CROWN『ROYAL DESTROYER』
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2021年3月12日 (金)

TRIBULATION『WHERE THE GLOOM BECOMES SOUND』(2021)

2021年1月29日にリリースされたTRIBULATIONの5thアルバム。日本盤は同年2月5日に発売。

TRIBULATIONは前身バンドHAZARDでの活動を経て、2005年に結成されたスウェーデン・アルヴィカ出身のヘヴィメタルバンド。コープスペイントをしているそのビジュアルからブラックメタルをルーツに持つことが窺えるのですが、サウンド自体はゴシックメタルに近いものがあり、今回紹介する新作はボーカルこそブラックメタル的ながらも音は非常に耽美でメロディアス。ビジュアルからじゃなくて音から入って正解でした。

資料によると、本作は「神話や魔術への傾倒がこのバンドの売りの一つであるが、今回はエレメンタル・マジックに特化した内容」とのこと。午前3時の墓場のような不気味なスタイルにはますます磨きがかかりつつ、よりヘヴィでゴージャスなサウンド作りになっているのが印象的」という説明はもはや意味不明(丑三つ時じゃなくて午前3時である必要は? 午前3時の墓場のわりにメランコリックな音だし、そもそも“村外”では笑いのタネにしかならないこういう表現が、最終的に聴き手のマイナスイメージにつながるのでは……)で、頭を抱えてしまいますが、内容は非常に良いです。

随所にメランコリックな要素が散りばめられており、ドラマチックさも伝わるそのバンドアンサンブル/アレンジは非常にクオリティが高く、ボーカル抜きだったら「こういうゴシックロック/ハードロック、いいよね」と高評価を得られそうな気がします。また、「Lethe」のようなピアノのみによる短いインストが曲間にフィーチャーされた構成も、アルバム全体のドラマチックさに拍車をかけることに成功。そこからプログレメタル的な側面も見える「Daughter Of The Djinn」へと続く流れも絶妙です。

ただ、先にも書いたように彼らはブラックメタル的スタイルがベースになっているので、ボーカルに関しては全編デス声。ゴシックメタルリスナーやデス声に対して免疫のあるリスナーなら問題ありませんが、このメランコリックさに惹かれた“メロウなHR/HMが好き”な方々には少々ハードルが高いかな……と。そこは僕がどういう言っても仕方ないので、あとは聴いて判断してもらうしかなさそうです。

僕自身はその単調なデスボイスを補って余りあるほどのバンドアンサンブル、楽曲のクオリティの高さに魅力を見出しているのもあって、最後まで楽しめました。最近のゴシックメタルバンドはクリーントーンを効果的に用いる歌唱スタイルも少なくないので、こういったオールドスタイルもたまに聴くには新鮮だなと思います。ただ、こればかりを聴くのは少々キツいですが。

ボーカルで変化をつけるタイプのバンドではないのは重々承知しているので、今後もこういったクオリティの高い楽曲と演奏で楽しませてくれたらな、と思います(そもそもこの評価が、TRIBULATIONというバンドを表すのにふさわしいものなのかは微妙ですが、こういう声もあるよということでひとつ)。

 


▼TRIBULATION『WHERE THE GLOOM BECOMES SOUND』
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2021年3月11日 (木)

STARMEN『BY THE GRACE OF ROCK 'N' ROLL』(2021)

2021年2月26日に日本盤先行発売となったSTARMENの3rdアルバム。海外では3月12日にリリース予定。

昨年3月に『WELCOME TO MY WORLD』で日本デビューを果たし、同年夏には“幻のデビューアルバム”『KISS THE SKY』(2018年にデジタルリリース。2020年にリマスター&新ジャケットで初CD化)を発表するなど、立て続けにアルバムのリリースが続いたSTARMEN。日本ではレーベルを新たにAvalonへと移し、1年ぶりの新作を届けてくれました。

『WELCOME TO MY WORLD』は「AORのフィーリングとDEF LEPPARDAC/DCオジー・オズボーンをブレンディングさせたファンタスティックな楽曲を聴かせるバンド」という謳い文句がぴったりな、ハードロックというよりはAOR色の強いポップロック/グラムメタルでしたが、今作はもうちょっとハードロック色が強まったような印象を受けます。

80年代のメタリックなKISSを全体的に柔らかくしたような楽曲スタイルはそのままに、スウェーデン出身というルーツを大切にした繊細さやメロディアスさに磨きがかかった楽曲群は、確実にクオリティアップしていることが伝わります。また、タイトルトラック「By The Grace Of Rock 'N' Roll」を聴けば(MVを観れば)わかるように、フレーズごとに歌うメンバーが入れ替わっていたりする工夫も増え、そういったフックも随所に感じられる。かなり気合いが入ったレコーディングだったことが窺えるでしょう。

かと思えば、日本盤ボーナストラック「Ghosts」のようなモロ“北欧メタル”があったり、ジーン・シモンズ風のヘヴィチューン「Black Thunder White Lightning」もあるし、抜けの良いポップメタル「Kisses Of An Enemy」まで存在する。楽曲のバラエティ豊かさは前作以上に広がっていることで、何度リピートしても飽きが来ないんですよね。オープニングトラック「Shining Star」のボーカルトラックに手を加えた「Shining Star (Voice Outro)」で終わる構成もカッコいいし(これがあるから、日本盤ボーナストラックが4曲目なんですね)。

ただ、それでも難癖をつけるならば、「Ghosts」のようなアップチューンがアルバム本編に存在しないこと。この曲が含まれる日本盤はバランス的にも適度で良いなと思えましたが、その他の楽曲のBPMが比較的近いことから、もしかしたら数ヶ月もしたら飽きてしまうんじゃないか……なんて気もしています。そういった意味では、本作はぜひ日本盤で聴くべき1枚だなと思いました。

欲を言えば、もう1曲くらいアップテンポの楽曲があって、さらにバラードがあったら最高だったんだけど……そのへんは次回作に期待しましょう。

 


▼STARMEN『BY THE GRACE OF ROCK 'N' ROLL』
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2021年3月10日 (水)

LOVEBITES『GLORY, GLORY, TO THE WORLD』(2021)

2021年3月10日にリリースされたLOVEBITESの最新EP。

昨年1月発売の3rdアルバム『ELECTRIC PENTAGRAM』、および同作からの楽曲を軸にした同年2月発売のEP『GOLDEN DESTINATION』に続く1年ぶりの新作。新たに制作された4曲を中心に、初回限定盤AにはMVを収めたDVD、初回限定盤Bには押井守総監督の新作アニメ『ぶらどらぶ』のオープニング主題歌として制作された新曲「Winds Of Transylvania」のオリジナルバージョンと同曲インストバージョンを収めたシングル『WINDS OF TRANSYLVANIA』が同梱されています。

このテキストではEP収録の4曲、および初回限定盤Bで聴くことができる「Winds Of Transylvania」の計5曲について触れていきます。

攻撃的な長尺曲中心だった前作『ELECTRIC PENTAGRAM』と比較すると、今回のEPも6分超えの楽曲が2曲と、その延長線上にある作風かな。ただ、テイスト的にはオープニング曲「Glory To The World」が示すようにポジティブさに満ちた印象も受けます。このへんは、コロナ禍の停滞感、閉鎖感を打ち破るかのように、希望を散りばめた作品を意識したのかな。

最初に本作を通して聴いたときから「Glory To The World」が今作のキモであると確信できましたし、間違いなくこの後のLOVEBITESを象徴する1曲になることでしょう。これはキラーチューンですわ。

かと思うと、LOVEBITESらしいストロングスタイルの王道チューン「No Time To Hesitate」があったり、スラッシーなパワーナンバー「Paranoia」、メロディアス&ドラマチックなパワーメタル「Dystopia Symphony」があったりと、4者4様のテイストで色分けもしっかり施されている。演奏陣の技術、表現力も文句なしですし、asami(Vo)もすでにこのバンドになくてはならない個性として確立されている。前作『ELECTRIC PENTAGRAM』で得た自信がどれほど大きなものだったかが窺える、問答無用の1枚です。

「Winds Of Transylvania」もアニメの主題歌だからといって、無理にそちら側に寄せたテイストではなく、従来のLOVEBITES節をそのまま採用してもらった印象。『GLORY, GLORY, TO THE WORLD』というEPのオマケ曲というよりは、2つの独立したEP/シングルが同タイミングに誕生したと捉えるのか正解かな。メロディやアレンジの構成力含め、さすがに一言です。

このEPに収められた4曲は、今後誕生するであろう4thアルバムには未収録とのこと。『ELECTRIC PENTAGRAM』での経験を昇華させた新曲と受け取るもよし、次作への習作として受け取るもよし。近い将来に今作や『ELECTRIC PENTAGRAM』を超える力作が届くのが今から楽しみになる、程よいボリュームの“煽り”作です。

 


▼LOVEBITES『GLORY, GLORY, TO THE WORLD』
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2021年3月 9日 (火)

WITHERFALL『CURSE OF AUTUMN』(2021)

2021年3月5日にリリースされたWITHERFALLの3rdアルバム。日本盤は同年3月10日発売。

WITHERFALLは2013年、ジェイク・ドレイヤー(G/2016〜21年にはICED EARTHにも在籍)とジョセフ・マイケル(Vo/2018年からはSANCTUARYにも参加)を中心に結成された。LA出身のメロディックメタルバンド。2017年10月(日本盤は2018年3月)に1stアルバム『NOCTURNES AND REQUIEMS』を発表しますが、同作完成直前の2016年12月にメンバーのアダム・セイガン(Dr)が悪性リンパ腫により亡くなるという悲劇に見舞われます。しかし、バンドは歩みを止めることなく、翌2018年11月(日本盤は2019年2月)に2ndアルバム『A PRELUDE TO SORROW』をリリース。海外盤リリースと同タイミングとなる同年11月には、KAMELOTのオープニングアクトとして初来日も果たしました。

前作から2年4ヶ月ぶりとなる新作。その間にはHELLOWEEN「A Tale That Wasn’t Right」などのカバー曲を含む8曲入りEP『VINTAGE』(2019年)も発表していましたが、まとまった新曲をたっぷり楽しめるという点では、待望の1枚と言えるでしょう。プロデュースをジェイク&ジョセフ、最近アメリカの国会議事堂乱入の暴動で逮捕されるという話題でその名を広めてしまったICED EARTHのジョン・シェイファーが担当。コロナ禍のロックダウンによりツアー活動が中止され、2020年4月にはジェイク&ジョセフ、アンソニー・クロフォード(B)のオリメンにゲストドラマーとしてマルコ・ミンネマン(Dr)を迎えてスタジオ入りしたとのことです。

オープニングを飾る1分に満たないインスト「Deliver Us Into The Arms Of Eternal Silence」から「The Last Scar」へとなだれ込むドラマチックな流れ、8分半近くにもおよぶ「Tempest」の緩急に富んだアレンジとジェイクのエモーショナルなギタープレイなど、全体を通して激しさと切なさを交互に交えた劇的な演出は過去イチの完成度。かと思えば、アルバムタイトルトラック「Curse Of Autumn」が1分半程度のフォーキーな楽曲ということにも驚かされます(曲終盤で激しさを増し、そのまま次の「The Unyielding Grip Of Each Passing Day」へと続くのですが)。

いわゆるプログレッシヴメタルの範疇に入るバンドなのかもしれませんが、単なるプログレメタルとも一線を画する個性が感じられるし、かといってパワーメタルやネオクラシカル系ともちょっとだけ違う。なんてことを考えていると、終盤に登場する15分超の力作「...And They All Blew Away」に圧倒され、BOSTON「Long Time」をアコースティックテイストで切なくカバーしたテイクで幕を閉じる……ものすごく壮大なアルバムだなあ、と呆気に取られるはずです(笑)。なお、日本盤にはこの「Long Time」のバンドアレンジ・バージョンも追加収録されており、こちらもオススメです。

メロディアスなヘヴィメタルが好きで、適度にプログレッシヴでスラッシーなテイストが好みというリスナーには、うってつけの1枚。長きにわたりじっくり楽しめる良盤です。

 


▼WITHERFALL『CURSE OF AUTUMN』
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2021年3月 8日 (月)

A DAY TO REMEMBER『YOU'RE WELCOME』(2021)

2021年3月5日にリリースされたA DAY TO REMEMBERの7thアルバム。現時点で日本盤未発売。

全米2位という快挙を成し遂げた前作『BAD VIBRATIONS』(2016年)から4年半ぶりとなる今作は、レーベルを新たにFueled By Ramenへと移して最初のアルバム。プロデューサーにはコリン・ブリテン(ALL TIME LOW、ONE OK ROCKPAPA ROACHなど)とメンバーのジェレミー・マッキノン(Vo)を迎えて制作されました。

初期こそポップパンクの流れを汲むバンドでしたが、ここ数作はメタルコア色を強めており、今作ではモダンなエレクトロポップのテイストを散りばめつつも、随所でメタルコア的ヘヴィさを響かせる非常に“イマドキ”のHR/HMサウンドを展開しています。

1曲1曲の楽曲の強度も非常に高いものがあるし、なによりもアルバムを通して聴いていて非常に心地よく楽しめる。過激さこそ皆無ですが、繰り返し楽しむことができる良盤だと断言できるでしょう。

ボーカルプロダクションも、メロディアスさを全面に打ち出しつつ要所要所でスクリームを織り交ぜる。また、低音&高音のオクターブ・ツインボーカルもポップさを強調する良い武器にあっており、それらが先のエレポップ風メタルコアサウンドにマッチしている。決して新しい手法ではないですし、なんなら手垢の付きまくった作風でもありますが、この作品においては不思議といやらしく感じられないのですから、不思議なものです。

こういった先人たちが生み出してきた小技を的確に使いこなすことで、メタルコア/ラウドバンドとしての王道感がより強まっているように感じられるというのもあり、改めて賢いバンドだなあと実感。思えばプロデューサーのコリンはワンオクや5 SECONDS TO SUMMERなどモダンなバンドを手がけるほか、アヴィーチーの作品にも参加した経験の持ち主。なるほど、納得です。

全体を柔らかでしなやかな空気感で包み込むからこそ、「Resentment」のようなメタルコアテイストの楽曲や「Viva La Mexico」みたいなアリーナロック的作風のナンバーがより映える。そういった楽曲の活かし方も非常にわきまえた、鉄壁の1枚ではないでしょうか。

こういう音、日本のリスナーにめちゃめちゃウケそうな気がするのですが……いかがでしょう?

 


▼A DAY TO REMEMBER『YOU'RE WELCOME』
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2021年3月 7日 (日)

KING 810『AK CONCERTO NO.47, 11TH MOVEMENT IN G MAJOR』(2020)

2020年11月13日にリリースされたKING 810の4thアルバム。日本盤未発売。

デヴィッド・ガン(Vo, G)とユージーン・ギル(B, G, Dr)の2人体制になって初のアルバム『SUICIDE KING』を2019年1月に自主リリースした彼らですが、そこから約2年を経て届けられた今作。今回もデヴィッドを中心に同じ布陣、同じスタイルで制作されたことが伺える仕上がりとなっています。

前作にてハードコア色が後退し、一方でニューメタル色が濃くなりはじめていましたが、今作ではその色合いがさらに強まることに。オープニングを飾る「AK Concerto No. 47」では、DISTURBEDのデヴィッド・ドレイマン(Vo)を彷彿とさせるパーカッシヴな歌唱スタイルに驚かされることでしょう。(恐らく)打ち込みで構成されたリズムトラックはこのミドルヘヴィな曲調に非常に合っており、かつそこにデヴィッド・ガンの新たな歌唱法が加わることで……懐かしさを感じずにはいられません。

かと思えば、前作からの流れを汲むリードトラック「Hellhounds」では、MARILYN MANSONあたりを彷彿とさせる作風(MVではビジュアルも)で無駄にスケールの大きさをアピール。続く「Love Under Will」のようなデジタル・ゴシックと言わんばかりの曲調も、早くもこのバンドのカラーにマッチしており好印象を与えます。

前半は前作の延長線上にあるミドルヘヴィのニューメタルスタイルで押し通しますが、後半に入るとそのカラーに少しずつ変化が。「Dukes」での若干跳ね気味なリズム&ギターリフは、本作において良いアクセントになっているように案じました。さらに「House Of Dust」ではテンポを上げることでさらなる高揚感を与え、インダストリアル調の「Love Bomb」、グルーヴィーな「Suicide Machines」と良い流れを作り、ラストの「2a」で盛大に締めくくる。後半から終盤にかけて、尻上がりに良くなっていく印象を与える内容だと思いました。

もはやRoadrunner時代の2作とは完全に別モノへとシフトしたKING 810。“全米一危険なバンド”なんて謳い文句も今は昔、これはこれでアリのような気もしてきました。グルーヴメタルやニューメタルを2020年代に再生するという意味では、彼らが本作で果たした役割は非常に大きなものがあると思うし、このアルバムも高く評価されるべき作品だと言えるでしょう。しかし、目新しさや“2020年ならでは”の要素は皆無。上のような見方を外せば、単なる懐古主義で片付けられてしまいそうで勿体ないなと。LIMP BIZKITKORN、MARILYN MASONなどの90年代後半のグルーヴメタル、DISTURBED以降のニューメタルを好むリスナーに今こそ触れていただきたい1枚。

にしても、良いアルバムタイトルですね。この際過去のキャリアを切り離して、新鮮な気持ちで接してもらいたいなかなかの良作です。

 


▼KING 810『AK CONCERTO NO.47, 11TH MOVEMENT IN G MAJOR』
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2021年3月 6日 (土)

GATECREEPER『AN UNEXPECTED REALITY』(2021)

2021年1月13日にリリースされたGATECREEPERの最新EP。現時点で日本盤は未発売。

2ndフルアルバム『DESERTED』(2019年)から1年3ヶ月ぶりの新作となる本作は、Relapse RecordsからではなくClosed Casket Activitiesというインディレーベルからのリリース。全8曲入りとフルアルバム並みの収録曲数ですが、そのトータルランニングに目をやると……17分強。1曲2分前後のショートチューンで構成されているのかな?と思いきや、M-1「Starved」からM-7「Superspreader」までの7曲はすべて1分前後の超ショートチューン(笑)。で、ラストナンバー「Emptiness」のみ11分の大作というイビツな構成となっております。

ミックス&マスタリングを手がけたのは、過去のアルバム同様にCONVERGEのカート・バルー(G)が担当。カオティックで鋭角的なサウンドながらも全体の分離/バランスが非常に良く、この手のバンドの中でもかなり聴きやすく整理されている印象を受けます。だからといって“ウェル・メイド”なのかと問われると、まったくそんなことはなく。このバランス感はさすがに一言です。

前作のレビューにも書きましたが、彼らの魅力は「80年代のUSデスメタル・オリジネーター(OBITUARYなど)や90年代の北欧デスメタル勢、そしてBOLT THROWERに代表される初期UKデスメタルバンドのエッセンスを取り入れつつも、XIBALBAなどデスメタルやスラッジの要素を取り入れ始めたハードコアバンドとも並列で語れるようなスタイルを維持し続けているところ」にあると思うんです。そういった意味では、本作はここで説明しているような要素がよりダイレクトに封じ込められた、濃厚な1枚に仕上がっていると思います。

オープニングからの数曲は本当に切れ目なく進行するので(かつ1曲が1分からそれに満たないほどの短さなので)、開始からしばらくして「今何曲目?」と確認するとすでに4、5曲目という事実に驚かされたりするのではないでしょうか。特に冒頭3曲「Starved」「Sick Of Being Sober」「Rusted Gold」はその傾向がより強く、完全に初期のNAPALM DEATHに通ずるものがあると思うのです。また、サウンド的にはENTOMBEDあたりの北欧デスメタルを彷彿とさせるものがあるし、改めてルーツに忠実なバンドだなとニンマリ。

ところが、このスピーディーな展開もラストナンバー「Emptiness」ですべてひっくり返されます。このスロー&ヘヴィなドゥーム/スラッジナンバーからは、不思議と叙情的な空気も伝わり、それこそ先のXIBALBAあたりとの共通点も見受けられる。と同時に、個人的には初期CATHEDRALからの影響も見受けられると思っていて。そのへんは聴き手によって受ける印象も異なるのでしょうけど、それを抜きにしても自分たちのルーツを隠そうとしないその姿勢と、かつそれらの影響を自分たち流にしっかり消化/昇華させているところにも共感が持てます。

前半の駆け足感と後半のタメ&泣きの対比含め、非常に強烈なインパクトを放つ1枚。早くも2021年度ベストアルバム候補の誕生です。

 


▼GATECREEPER『AN UNEXPECTED REALITY』
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2021年3月 5日 (金)

HAYLEY WILLIAMS『FLOWERS for VASES / descansos』(2021)

2021年2月5日にリリースされたヘイリー・ウィリアムスの2ndアルバム。現時点で日本盤は未発売。

PARAMOREのフロント・ウーマンによるソロ活動は2020年2月リリースのEP『PETALS FOR ARMOR I』から本格化し、同年5月発売の1stソロアルバム『PETALS FOR ARMOR』で最初のピークを迎えます。しかし、ご存知のとおりソロ活動開始と同時にコロナ禍に突入してしまったこともあり、ツアーなどのライブ活動は一切行えない状況でした。

そんな中、昨年12月にはアコースティックEP『PETALS FOR ARMOR: SELF-SERENADES』をリリース。そこから2ヶ月という短いスパンで、本作は事前情報なしでサプライズリリースしました。

エレポップやニューウェイヴからの影響濃厚なアートポップが基盤だった前作から一転、本作は非常に内省的なアコースティックサウンド中心で構築されています。これはもちろん、コロナ禍によるロックダウンがもたらした影響が大きいのですが、もっといえばロックダウンがなかったら生まれなかった1枚とも言えるでしょう。

このサウンドの変化は、プロデューサー交代も大きく影響していると言えます。前作ではPARAMOREのテイラー・ヨーク(G)という気心知れた人選でしたが、今作ではセレーナ・ゴメスやニッキー・ミナージュ、THE VERONICASなどを手がけてきたダニエル・ジェームズが担当。もともとエレポップやダンスポップを中心に制作してきた方ですが、本作ではそういった派手さは皆無で、アコースティックギターやピアノなどの生楽器主体のシンプルな作風でまとめられています。

ナッシュビルにあるヘイリーのホームスタジオですべての楽器をテイラーによって録音された本作は、ナッシュビルという土地柄もあってかゴシック調の中にもカントリー的テイストも見つけることができる。ヘイリーは本作に対して「テイラー・スフィフトにおける『FOLKLORE』に相当するもの」と説明していますが、このアーシーで内向的な作風はまさに『FOLKLORE』と同列で語られるべき1枚だと断言できます。

タイトルに用いられたワード「descansos」は、スペイン語で「休息」や「(予期しない突然死に対して配置される)十字架」を意味します。これはコロナによって亡くなった大勢の人たちに贈られたものと受け取ることもできるでしょう。ロックダウンが生み出す閉鎖感と孤立、コロナの影響で次々と亡くなっていく人たち。そういった日常は日本からは想像できないほどのものがあるはずです。そういった2020年を音楽に刻むという点において、本作は『PETALS FOR ARMOR』に続く純粋な新作というよりは、もっとシンプルに“記録=Record”としての新作と捉えたほうが正しいのかもしれません。

我々の生活が以前に近くことで、本作の響き方もまた違ったものになると思いますが、だからこそまだひどい状況が続くこのタイミングに触れておきたい、そんな日々の生活に根付いた1枚です。

 


▼HAYLEY WILLIAMS『FLOWERS for VASES / descansos』
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2021年3月 4日 (木)

ELECTRIC CENTURY『ELECTRIC CENTURY』(2021)

2021年2月26日にリリースされたELECTRIC CENTURYの2ndアルバム。現時点で日本盤は未発売。

ELECTRIC CENTURYはMY CHEMICAL ROMANCEのベーシスト、マイキー・ウェイとSLEEP STATIONのフロントマンでもあるデヴィッド・デビアクによるユニット。セルフタイトルのEP(2015年)を経て、2016年3月に1stアルバム『FOR THE NIGHT TO CONTROL』を雑誌『KERRANG!』に付属する形で発表しています(2017年7月には一般流通開始)。

実に5年ぶりの新作、かつマイキーにとってはMY CHEMICAL ROMANCE再始動後初のアイテムとなる本作は、そのバンドメイトでもあるレイ・トロ(G)がプロデュースを担当。1st EP以来となるセルフタイトル作であると同時に、そのアートワーク/グラッフィック含めた本格的なコンセプト作となっております。

ストーリーは「売れない俳優のジョニー・アシュフォードが、飲酒運転で逮捕されたことを機に催眠療法士の治療を受けることに。ところが、その催眠療法によってジョニーは1980年代のアトランティック・シティに送られてしまう」といったもの。要は、今作はこのストーリーを音楽によって彩っていく、独自のサウンドトラックといったところでしょうか。もともと80年代のニューウェイヴやエレポップからの影響が濃厚だったELECTRIC CENTURYでしたが、このコンセプトに沿って展開していくことによって、よりリアリティが増したのではないでしょうか。

チープながらも非常に現代的なリズムトラックとシンセをベースにしたサウンドメイキングは思った以上にミニマル寄り。ですが、意外にも2021年のポップフィールドでも十分に通用するもので、流麗なメロディとあわせて非常に聴きやすく仕上げられています。オープニングを飾る「Till We're Gone」なんて、冒頭のリズムパターンや音色からしてモロに80年代的で、音が鳴った瞬間に「懐かしい!」と感じるものの、全体を通して聴いていると不思議とモダンさが伝わってくるから不思議です。マイケミのメンバーが関わっていることもあって、マイケミとの共通点を無理やり見つけることもできるかもしれません。メロディが醸し出すノスタルジックな雰囲気はまさにそれですよね。全体的に平坦なアレンジが目立ちますが、これをもしマイケミでプレイしたらまた印象も大きく変わり、それっぽく聴こえるのではないでしょうか。

「Little Things」や「Free To Be OK」のようなバンドサウンド寄りの楽曲もあるものの、基本的には打ち込みエレポップ中心なので、エモなどを好むバンド系リスナーにはちょっと敷居が高く感じられるかもしれません。でも、それこそ最近のPANIC! AT THE DISCOあたりを愛聴しているリスナーならば、すんなりと受け入れられるのではないでしょうか。

80年代リアルタイム通過組の自分にはどこか懐かしく、それでいて新鮮に響く本作。マイケミのファンにはどう映るのかも気になるところですが、こういった「大きくハネることはないけど、時代や世代を問わず愛されるであろう魅力を秘めたスルメ作」が正当な評価を受けることに期待しています。

 


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2021年3月 3日 (水)

ALICE COOPER『DETROIT STORIES』(2021)

2021年2月26日にリリースされたアリス・クーパーの28thアルバム(ALICE COOPER BAND時代含む。ソロ名義では21作目)。

豪華ゲストが多数参加した『PARANORMAL』(2017年)から約3年半ぶりのフルアルバムではありますが、その間にHOLLYWOOD VAMPIREの2ndアルバム『RISE』(2019年)や、今作の前哨戦となるEP『BREADCRUMBS』(2019年)も発表しているので、このご時世にしてはかなり短いスパンで新作を届けてくれたことになります。老いてなおご盛ん、素晴らしいことです。

今作は『BREADCRUMBS』で実践したことの集大成と呼べる内容で、作風的には『PARANORMAL』以降……いや、HOLLYWOOD VAMPIRE以降と言ったほうが正しいでしょうか。とにかく、ここ10年くらいの音楽活動の総決算と呼ぶにふさわしい、アリスの“Back to roots”的な1枚。60年代後半から70年代前半のALICE COOPER BAND時代を思わせる、ポップでパンキッシュ、なのにソウルフルなフィーリングも含まれたゴリゴリのガレージロック満載で、80年代末の“再ブレイク”期以降なら『THE LAST TEMPTATION』(1994年)あたりが好きなリスナーなら一発で気に入る仕上がりです。

プロデュースを手がけたのは、『PARANORMAL』『BREADCRUMBS』と3作連続のボブ・エズリン。レコーディングには『BREADCRUMBS』にも参加したウェイン・クレイマー(G/MC5)やポール・ランドルフ(B, Vo/JAZZANOVA)、ジョニー“ビー”バダニェック(Dr/MITCH RYDER & THE DETROIT WHEELS)に加え、ALICE COOPER BANDのオリジナルメンバーでもあるデニス・ダナウェイ(B)、ニール・スミス(Dr)、マイケル・ブルース(G)、さらにはジョー・ボナマッサ(G)やマーク・ファーナー(G/GRAND FUNK RAILROAD)、スティーヴ・ハンター(G)、ラリー(Dr/U2)など近作にも参加したお馴染みの面々が顔を並べています。豪華さが相変わらずなのは、きっと「アリス・クーパーのアルバムになら参加したい!」という仲間がそれだけ多いってことの表れなんでしょうね。

全15曲の収録曲の中には、『BREADCRUMBS』で既出の4曲や昨年先行リリースされた「Hanging On By A Thread (Don't Give Up)」も含まれていますが、オープニングを飾るTHE VELVET UNDERGROUNDのカバー「Roc & Roll」からラストの「East Side Story」(『BREADCRUMBS』収録のBOB SEGER & THE LAST HEARDカバー)までトータル50分があっという間に感じられるほど心地よく楽しめるんですよね。2〜3分台のシンプルなロックンロールが中心というのも大きいのでしょうけど、狙い過ぎずに自然な形で先祖返りすることをアリス本人が楽しんでいるのも作用しているのかな。それでいてマンネリ化せず、ちゃんと新作としてのクオリティも維持しているのは、さすがの一言です。

もはやアリスに「Poison」や「Hey Stoopid」のような楽曲を求めないけど(ライブではこれらの曲もちゃんと聴けますしね)、「Under My Wheels」や「Shool's Out」みたいな新曲は求めてもいいよね?……そう言いたくなる、“アリス・クーパーがアリス・クーパーであることをしっかり引き受けた”良作です。

 


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2021年3月 2日 (火)

HARAKIRI FOR THE SKY『MӔRE』(2021)

2021年2月19日にリリースされたHARAKIRI FOR THE SKYの5thアルバム。現時点で日本盤未発売。

HARAKIRI FOR THE SKYはオーストリアのウィーン&ザルツブルクで結成されたポスト・ブラックメタルバンド。マルチプレイヤーのMS(G, B, Dr)とフロントマンJJ(Vo)の2人組で、ツアーではドラム、ギター、ベースの各プレイヤーが加わるようです。もともとは別名のブラックメタルバンドだったそうですが、現在の名前に変わってからはよりオルタナティヴな方向へとシフト。2012年のデビューアルバム『HARAKIRI FOR THE SKY』以降、コンスタントにアルバムを制作しています。

今作はバンドにとって初のCD2枚組作品。大半の楽曲が7〜8分台で、全10曲/トータル85分という超大作に仕上がっています。この手のバンドにありがちなブラックゲイズ的な方向へ向かうことなく、ブラックメタルをよりポストロック的な手法で浮遊感強めのスタイルへと昇華させた、アグレッシヴだけど耽美さも伝わる媚薬かつ劇薬と言えるのではないでしょうか。

オープニングの「I, Pallbearer」では随所にピアノがフィーチャーされることで、バンドが持つ耽美さが良い形で表現されており、2曲目「Sing For The Damage We've Done」では冒頭で空間系のエフェクトがかかったギターのストロークでその世界観を引き継ぎつつも、途中から破天荒なブラストビートに突入する。この緩急のつけ方がとにかく気持ちよく、ぶっちゃけこの冒頭2曲で彼らがやりたいことはすべて伝わると思います。

このバンドは作品ごとに何か新しいことにチャレンジしたり、革新的なことを追求するというタイプではなく、当初からのポスト・ブラックメタルスタイルをより深化させ、アルバムのたびにバージョンアップさせていくことに意義を見出している気がします。なので、長尺の楽曲内で展開される、激しさと美しさ/優しさが交互に訪れる“飴と鞭”的な作風を、曲ごとに異なるバリエーションで楽しむことが本流なのではないでしょうか。そういう意味では、本作はその本流通りに沿った、現時点でのHARAKIRI FOR THE SKYの最新アップデート版であり、ビギナーにとっても入門盤的役割を果たしてくれることでしょう。

とはいっても、85分というトータルランニングは確かに初心者には敷居の高いものでしょう。しかし、このカオティックなサウンドに浸り続けていると、不思議と気持ちよくなっていくのもまた事実。耽美さを追求した終盤の2曲……「Time Is A Ghost」とPLACEBOのカバー「Song To Say Goodbye」に到達することには、きっと誰もがこのバンドの魅力に夢中になっているのでは……そう信じたいです。

なお、「Sing For The Damage We've Done」にはALCESTのネージュ(Vo)、「Silver Needle // Golden Dawn」にはポルトガルのブラックメタルバンドGAEREAがゲスト参加しています。

初期のMOGWAIあたりが好きなメタル/ラウド系リスナーなら、きっと気にいるであろう本作。日本人にとってインパクト大なそのバンド名含めて、この機会にしっかり触れてみることをオススメします。

 


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2021年3月 1日 (月)

ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(2021)

2021年2月26日にリリースされたARCHITECTSの9thアルバム。現時点で日本盤未発売。

トム・サール(G, Key)の死を経て完成させた前作『HOLLY HELL』(2018年)が全英18位と3作連続でUK TOP20入りしたほか、全米89位と初のBillboard TOP100入りを果たしたARCHITECTS。初のウェンブリー・アリーナ公演も大成功を収めるなど、もはや一介のメタルコアバンドから“次世代を担うUKメタルバンド”へと成長を遂げたと言っても過言ではないでしょう。

そんな彼らが2年3ヶ月というスパンを経て完成させた本作は、前作から引き続きダン・サール(Dr/亡くなったトムの双子の弟)&前作から正式加入のジョシュ・ミドルトン(G/SYLOSIS)がプロデュースを担当。トムへ捧げられた楽曲が多く含まれた前作から一転、今作ではカオティックな要素や悲壮感は若干後退し、ポップさやストレートさが増した印象を受けます。

今作のテーマは「今からでも遅くはない」というポジティブさと「敗北主義」というネガティブさの狭間にある、地球の未来が直面している問題の数々。これらを彼ららしいキャッチーなメロディと硬質なメタルコアサウンドに加え、エレクトロの要素やストリングスなどによるオーケストレーション、クワイアなどをフィーチャーすることで楽曲本来が持つ親しみやすさを、よりわかりやすい形に拡張することに成功しています。

上記のようなアレンジは前作にも見られたものですが、今回の場合は曲によっては絶望感を強調する武器にもなり、またある曲では希望が伝わるような温かみにもつながっている。この変化の付け方に、前作以上に巧みさが感じられ、バンドとして(あるいはダン&ジョシュのプロデュースチームとして)表現力や技術力の成長が大いに感じられるのです。確かに以前のアルバムと比べたら“ヤワになった”ように映るかもしれません。しかし、僕はこの進化を非常に前向きに捉えており、これこそが“次世代を担うUKメタルバンド”としての覚悟の表れなんじゃないかと考えています。

また、本作はフィーチャリングゲストの多彩も魅力のひとつで、「Impermanence」にはPARKWAY DRIVEのウィンストン・マッコール(Vo)、「Little Wonder」にはROYAL BLOODのマイク・カー(Vo)、「Goliath」にはBIFFY CLYROのサイモン・ニール(Vo)がそれぞれ参加。PARKWAY DRIVEは同時代を生きる「メタルコアからアリーナ/スタジアムバンドへと登りつめた稀有な存在」同士だし、ROYAL BLOODやBIFFY CLYROはメタルコアというよりはオルタナティヴロックの範疇に含まれるものの、同じUKを代表するロックバンドとしての絆を感じさせるコラボだし、と何かと話題性も多いのではないでしょうか。

全15曲で約58分と非常にボリューミーな大作ですが、1曲1曲の作り込みが尋常じゃないので全編通して聴いても飽きることはないのでは。少なくともこの数日、本作を何度もリピートしていますが、聴くたびに新たな発見が見つかる。2021年のメタルシーンを象徴する1枚になるのではないか?と、個人的には確信しています。

数字的にもキャリア的にも、ここで一気に化けることが期待できる、“確変”の1枚です。

 


▼ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』
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