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2021年3月31日 (水)

SMITH/KOTZEN『SMITH/KOTZEN』(2021)

2021年3月26日にリリースされたSMITH/KOTZENの1stアルバム。日本盤未発売。

このSMITH/KOTZENはIRON MAIDENのエイドリアン・スミス(G)とTHE WINERY DOGS、ex. POISON、ex. MR. BIGなどで知られるリッチー・コッツェン(G, Vo)によるバンド/プロジェクト。UKを代表する王道ヘヴィメタルバンドのギタリストと、ブルースフィーリング溢れるUSギタリスト/シンガーの邂逅はなかなか想像しにくいものがあるかと思いますが、そもそもエイドリアンはその昔、ASAP(ADRIAN SMITH AND PROJECT)というアメリカンハードロック寄りのソロバンドを組んで、そっち側に傾倒してメイデンを脱退したなんて話もあったほど、根っこの部分ではUSロックをルーツに持つ人なわけで、どこかでつながる機会があれば意気投合するのも理解できるわけです。

数年前に知人を通じて出会った2人は、以降ジャムセッションを何度か重ねたとのこと。エイドリアンによると「僕らはクラシック・ロックとブルージー・ロックへの愛を共有しているから、一緒になって曲を書き始めようと決めたんだ」そうで……ほらね(笑)。昨年2月、ミックスエンジニアにケヴィン・シャーリー(IRON MAIDEN、DREAM THEATERJOURNEYなど)を迎え、ギターとベースはエイドリアン&リッチーが、ドラムも5曲をリッチーがそれぞれ担当し、IRON MAIDENのニコ・マクブレイン(Dr)とリッチーの盟友タル・バーグマン(Dr)のゲスト参加を含めてレコーディングを実施。昨年12月に1stシングル「Taking My Chances」をリリース後、楽曲を小出しにしつつ、レコーディングから1年強の歳月を経てついにアルバムが届けられたわけです。

この2人のタッグにIRON MAIDEN的な側面を求めて本作に手を出したなんて方はまずいないと思いますが、上記のような事情を知っている方なら納得のブルース/ソウル/R&Bを通過したアメリカン・クラシックロック/ハードロック満載の本作。ボーカルも2人で歌いわけられており、リッチーのしゃがれた声と、どこか頼りなさげなエイドリアンの歌(笑)が、それぞれ異なる個性を発しながら独特のグルーヴを作り上げています。ギターとベースは交互に担当しているようで、リッチーのプレイはなんとなく「これかな?」と予想できるので、それ以外がエイドリアンのプレイということでしょう(苦笑)。

非常にシンプルなバンドアンサンブルで、無駄が一切ないトラディショナルなハードロックは、リッチーのソロ作の延長として楽しめるはずです。また、リッチーの味わい深いボーカルがしっかりと確立されているからこそ、程よいバランスで組み込まれたエイドリアンの歌声も同時に楽しむことができる。ギターも適度な派手さと色気、ヘヴィさが備わっており、すべてにおいて「痒いところに手が届く」作りかなと。

特別新しい要素や突出した個性こそ感じられないものの、文句なしに何度も楽しめる安心安定の1枚ではないでしょうか。個人的には大好物ですが、年間ベストに選ぶようなタイプとは違うかな。だけど、気づくと何年経っても手に取っている、そんな良作だと断言できます。できれば、忘れた頃に2作目、3作目も作ってほしいなと思う、そんな良プロジェクトです。

 


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