BLUR『THE GREAT ESCAPE』(1995)
1995年9月11日にリリースされたBLURの4thアルバム。日本盤は同年9月6日に先行発売。
バンドを国民的存在へと導いたメガヒット作『PARKLIFE』(1994年)から1年5ヶ月という非常に短いスパンで届けられた本作は、2ndアルバム『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)から始まった“ブリットポップ三部作”の完結編にあたる、初期の集大成的内容。『PARKLIFE』が依然ヒットチャートを賑わす中、堂々と全英1位に輝き、セールス的にも『PARKLIFE』に次ぐヒットアルバムとなりました。また、本作は初めて全米チャートにランクイン(最高150位)した記念すべき1枚でもあります。
シングルに関しても、OASIS「Roll With It」との同時期リリースでチャート上での直接対決が注目された「Country House」が初のシングル全英1位を獲得したほか、「The Universal」(同5位)、「Stereotypes」(同7位)、「Charmless Man」(同5位)とすべてのシングルがTOP10入りを果たす快挙を成し遂げました。まさにBLURの最盛期と呼べる時期の、神がかった1枚と言えるかもしれません。
ブリットポップと呼ばれるムーブメントのトップランナーに勝手に認定され、OASISと常に比較される中で完成させた本作。当然、そういった葛藤や苦悩、あるいは闘争心といったものが作風にも反映されており、冒頭を飾る「Stereotypes」のどこかギラついたサウンド、“very british”ながらも神経を擦り減らすような感覚も伝わる名曲「Country House」などは、そういった側面の象徴的楽曲といえるでしょう。また、楽曲のバラエティ豊かさに関しても過去イチで、そのとっ散らかりぶりに最初は拒否反応を示すリスナーも少なくないかもしれません。かくいう自分も、リリース当時は「やりすぎ!」と若干拒絶気味でした(苦笑)。
しかし、続く5thアルバム『BLUR』(1997年)で方向転換したあとに本作に触れると、不思議と受け入れられるものがあるんですよね。さらに、より時間が経ってから久しぶりにこの『THE GREAT ESCAPE』を引っ張り出して聴くと、最初に触れたとき以上にその魅力が感じられるようになった自分に気づく。なぜなんでしょう。
アルバムの作風的に言えば、実は本作ってサブスク/プレイリスト全盛の昨今にぴったりな1枚だと思うんです。20年以上はまだアルバム・オリエンテッドな考え方が当たり前の時代でしたし、そりゃ時代を先取りしすぎでしょ、と(笑)。もちろん、楽曲1つひとつの完成度や質感に関しても、あの頃より今のほうが伝わるものがあるから、よりそう思えるわけですが。
いわゆるブリットポップ的なものをイメージして本作に触れると、実はすべてがすべてブリットポップ的とは言い難い。次作『BLUR』を予兆させるテイストも含まれているし、もっと言えばそれ以降の変化の序章と受け取れる楽曲も存在する。バンドとしては最盛期にして過渡期と呼べる時期だったかもしれませんが、そんな混沌の中で制作された本作は異様に研ぎ澄まされており、かつ先を進みすぎていた。それが当時、バンドの意図した通りに受け入れられていたかはわかりませんが、少なくとも自分のようなリスナーも少なからず存在したと記憶しています。
ブリットポップというブームが去り、丸裸になったBLURがよりアーティスティックな側面を強めていったからこそ、本作がその原点であり処女作であったことにも気付かされた。そんな方もいるのではないでしょうか。15曲ものバラエティ豊かな、高品質のポップ/ロックソングが詰め込まれた60分近いボリュームの本作は、『PARKLIFE』と『BLUR』というエポックメイキングな傑作に挟まれたことで印象的には地味さが伴いますが、実は今こそ再評価されるべき名盤ではないかと信じています。
▼BLUR『THE GREAT ESCAPE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)
« BLUR『THE MAGIC WHIP』(2015) | トップページ | OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995) »
「Blur」カテゴリの記事
- SUMMER SONIC 2023(2023年8月19日、8月20日)(2023.08.25)
- 2023年総括(2023.12.31)
- BLUR『LEISURE』(1991)(2023.02.04)
- DAMON ALBARN『THE NEARER THE FOUNTAIN, MORE PURE THE STREAM FLOWS』(2021)(2021.12.02)
- DURAN DURAN『FUTURE PAST』(2021)(2021.10.30)
「1995年の作品」カテゴリの記事
- REEF『REPLENISH』(1995)(2022.04.06)
- THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(2022.02.14)
- OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995)(2021.03.28)
- BLUR『THE GREAT ESCAPE』(1995)(2021.03.27)
- AC/DC『BALLBREAKER』(1995)(2020.10.01)