ELECTRIC CENTURY『ELECTRIC CENTURY』(2021)
2021年2月26日にリリースされたELECTRIC CENTURYの2ndアルバム。現時点で日本盤は未発売。
ELECTRIC CENTURYはMY CHEMICAL ROMANCEのベーシスト、マイキー・ウェイとSLEEP STATIONのフロントマンでもあるデヴィッド・デビアクによるユニット。セルフタイトルのEP(2015年)を経て、2016年3月に1stアルバム『FOR THE NIGHT TO CONTROL』を雑誌『KERRANG!』に付属する形で発表しています(2017年7月には一般流通開始)。
実に5年ぶりの新作、かつマイキーにとってはMY CHEMICAL ROMANCE再始動後初のアイテムとなる本作は、そのバンドメイトでもあるレイ・トロ(G)がプロデュースを担当。1st EP以来となるセルフタイトル作であると同時に、そのアートワーク/グラッフィック含めた本格的なコンセプト作となっております。
ストーリーは「売れない俳優のジョニー・アシュフォードが、飲酒運転で逮捕されたことを機に催眠療法士の治療を受けることに。ところが、その催眠療法によってジョニーは1980年代のアトランティック・シティに送られてしまう」といったもの。要は、今作はこのストーリーを音楽によって彩っていく、独自のサウンドトラックといったところでしょうか。もともと80年代のニューウェイヴやエレポップからの影響が濃厚だったELECTRIC CENTURYでしたが、このコンセプトに沿って展開していくことによって、よりリアリティが増したのではないでしょうか。
チープながらも非常に現代的なリズムトラックとシンセをベースにしたサウンドメイキングは思った以上にミニマル寄り。ですが、意外にも2021年のポップフィールドでも十分に通用するもので、流麗なメロディとあわせて非常に聴きやすく仕上げられています。オープニングを飾る「Till We're Gone」なんて、冒頭のリズムパターンや音色からしてモロに80年代的で、音が鳴った瞬間に「懐かしい!」と感じるものの、全体を通して聴いていると不思議とモダンさが伝わってくるから不思議です。マイケミのメンバーが関わっていることもあって、マイケミとの共通点を無理やり見つけることもできるかもしれません。メロディが醸し出すノスタルジックな雰囲気はまさにそれですよね。全体的に平坦なアレンジが目立ちますが、これをもしマイケミでプレイしたらまた印象も大きく変わり、それっぽく聴こえるのではないでしょうか。
「Little Things」や「Free To Be OK」のようなバンドサウンド寄りの楽曲もあるものの、基本的には打ち込みエレポップ中心なので、エモなどを好むバンド系リスナーにはちょっと敷居が高く感じられるかもしれません。でも、それこそ最近のPANIC! AT THE DISCOあたりを愛聴しているリスナーならば、すんなりと受け入れられるのではないでしょうか。
80年代リアルタイム通過組の自分にはどこか懐かしく、それでいて新鮮に響く本作。マイケミのファンにはどう映るのかも気になるところですが、こういった「大きくハネることはないけど、時代や世代を問わず愛されるであろう魅力を秘めたスルメ作」が正当な評価を受けることに期待しています。
▼ELECTRIC CENTURY『ELECTRIC CENTURY』
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