ALICE IN CHAINS『MUSIC BANK』(1999)
1999年10月26日にリリースされたALICE IN CHAINSのボックスセット。日本盤未発売。
本作は同年6月に発売されたバンド初のコンピレーションアルバム『NOTHING SAFE: BEST OF THE BOX』(1999年)に続く、ALICE IN CHAINSのキャリアを総括するCD3枚組(+CD-ROM)作品。『FACELIFT』(1990年)でメジャーデビューする前のデモ音源から、アルバム収録曲の未発表バーションやアウトテイク、さらには3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)以来となる新曲「Get Born Again」(先のコンピにも収録)と「Died」を含む盛りだくさんの内容となっています。
3枚のCDをそれぞれ時期的にざっくり区切るとするなら、DISC 1は「インディーズ期〜メジャーデビュー2年目まで」、DISC 2は「2ndアルバム『DIRT』(1992年)での大ブレイク」、DISC 3は「『DIRT』の余波とレイン・ステイリー(Vo)破滅へのカウントダウン」といったところでしょうか。
本作でももっとも注目すべきなのが、DISC 1にたっぷり収められたデビュー前の音源。具体的にはM-2「I Can’t Have You Blues」からM-7「Killing Yourself」までの6曲でしょう。過去にSOUNDGARDENのメンバーから「80年代後半のALICE IN CHAINSは単なるヘアメタルバンドだった」とバラされておりましたが、それを証明するような楽曲群を確認することができるわけです。「I Can't Have You Blues」なんて冒頭はヘアメタル期のWHITESNAKEかと思いきや、その後GUNS N' ROSES的なアレンジへと展開していくという。以降の楽曲も(良くも悪くも)GN'Rフォロワー的な香りがし、本当に好きだったんだなあということが伺えます(ボックスセット封入のブックレットでは、当時の“ヘアメタルバンドらしい”ビジュアルも公開されているので、ぜひチェックしてもらいたいです)。
上記6曲は1988年の録音とのことですが、これが1989年になるといきなり『FACELIFT』のスタイルへと進化していることに驚かされます。M-10「Sea Of Sorrow」のデモテイクは1989年の録音ですが、アレンジはほぼスタジオテイクと一緒。一体何があったんだ!?と驚かされます。ただ、よくよく1988年の音源を聴き込めば、すでに『FACELIFT』の片鱗は散りばめられていたことにも気づくはず。この進化は必然だったのかもしれません。
DISC 2には『DIRT』のセッションから生まれた2曲の未発表曲(M-2「Fear The Voices」、M-12「Lying Season」)を収録。前者は本ボックスセットからシングルカットもされており、結果としてレイン在籍時最後のシングルとなっています。『DIRT』の流れを汲むドライヴ感の強いアレンジは非常にカッコいいものがありますが、確かにアルバム収録曲と比べたら若干地味な印象も。後者に関しては完全にほかのアルバム収録曲より劣る仕上がりなので、まあアウトテイクになるのも致し方ないわな。
DISC 3には未発表曲の類は(「Died」を除けば)皆無。この時期(1994年以降)は無駄な音源を残せないくらい、レインがギリギリの状態だったのかなと想像してしまいます。クラブリミックスが突如増え始めたのもこの時期ですが、そういったシングル用の水増しが必要だったのも理解できます。
で、肝心な新曲について。「Get Born Again」はアルバム『ALICE IN CHAINS』の流れを汲む、カオティックな側面を持つ王道グランジロック。もはや初期のキャッチーさは薄まっていますが、この混沌さもまた良し。一方、「Died」のほうは逆に初期の彼らを思わせるメロディ運びが復調している印象も。サウンドプロダクションやアレンジは確かに『ALICE IN CHAINS』の延長線上なんだけど、リフワークなどはBLACK SABBATH直系で、初期を思わせるシンプルさもある。もしこのスタイルでもう1枚くらいアルバムを作っていたら……なんて、ないものねだりをしてしまいたくなります。
どちらもオリジナルアルバム3作には匹敵するクオリティとは言い難い。でも、バンドをどうにか続けようという意思がこの時点では感じられるんですよね。残念ながら、その数年後にはレインが命を落とし、バンドは一度終焉を迎えることにあるのですが。
ALICE IN CHAINSのことを手軽に知りたいのならば、コンパクトに『NOTHING SAFE: BEST OF THE BOX』を聴けばいいし、ALICE IN CHAINSというバンドのキャリアをもっと深掘りしたければこのボックスセットに手を出せばいい。今やストリーミングでほぼすべての音源を聴くことができる世の中ですが、こういう形でバンドの歴史に触れてみるのも、たまにはいいものですよ?
▼ALICE IN CHAINS『MUSIC BANK』
(amazon:海外盤3CD+CD-ROM / MP3)
« '68『GIVE ONE TAKE ONE』(2021) | トップページ | NIRVANA『LIVE AT THE PARAMOUNT』(2019) »
「Alice in Chains」カテゴリの記事
- BLACK SABBATH / OZZY OSBOURNE: BACK TO THE BEGINNING(2025年7月5日)(2025.07.06)
- JERRY CANTRELL『BRIGHTEN』(2021)(2021.11.02)
- METAL CHURCH『HANGING IN THE BALANCE』(1993)(2021.07.28)
- ALICE IN CHAINS『MUSIC BANK』(1999)(2021.04.03)
- ALICE IN CHAINS『THE DEVIL PUT DINOSAURS HERE』(2013)(2020.08.25)
「1999年の作品」カテゴリの記事
- BERNARD BUTLER『FRIENDS AND LOVERS』(1999)(2024.06.01)
- THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』(2024)(2024.03.17)
- ブライアン・アダムスのベストアルバムを総括する(2022年版)(2022.03.12)
- SCORPIONS『EYE II EYE』(1999)(2022.03.02)
- GUNS N' ROSES『OH MY GOD』(1999)(2021.09.25)