GRETA VAN FLEET『THE BATTLE AT GARDEN'S GATE』(2021)
2021年4月16日にリリースされたGRETA VAN FLEETの2ndアルバム。
2枚のEPを経て発表された1stアルバム『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(2018年)が全米3位という好記録を樹立させたGRETA VAN FLEET。2年半ぶりとなる本作は、プロデューサーにグレッグ・カースティン(FOO FIGHTERS、ポール・マッカートニー、リリー・アレンなど)を迎えた意欲作です。
制作自体は2019年のツアー中、2回にわたるセッションで10曲を仕上げるも、2020年のロックダウンにより身動きが取れなくなったことからさらに2曲を追加レコーディングし、同年冬に作業が終了。ツアーで得た熱量がそのまま凝縮されたエネルギッシュな内容かと思いきや、全体的にはサイケデリックでムーディな空気感で覆われた、聴き応えのある作品に仕上がっています。
EPの段階ではLED ZEPPELINとの比較ばかりが取り沙汰されましたが、前作ではそれだけではない懐の深さを見せた彼ら。ジョシュ・キスカ(Vo)の歌声は「Broken Bells」や「Built By Nations」のような楽曲でのハイトーンにてロバート・プラントとの共通点を見つけることができますが、やはりそれ以上にジョン・アンダーソン(ex. YES)のほうが似ている気がする。アルバムのオープニングを飾る「Heat Above」や「My Way, Soon」ではそのサイケデリックさも手伝い、60年代末〜70年代初頭のYESやPINK FLOYDのようにも感じられるから、面白いったらありゃしない。
ぶっちゃけモダンな要素は皆無に等しいし、録音状態をモノラルっぽくしたら本当に60年代後半のサイケデリックロックバンドだと信じてしまいそうになる。それくらい、時代を超越した説得力があるし、普遍性も強い。ただ、だからこそ“今である必要”も感じられない。ロックがこれだけ低迷している海外においては、本当にこの音が10代、20代のリスナーに届くのかどうか、正直疑問でしかないんです。確実に僕みたいなオッサン世代を狙ってますよね?(もちろん、だから幅広く届くという可能性も否めませんし、それが前作の全米3位という数字に表れているんでしょうけど)
登場時こそ面白いと思ったものの、今の状況と照らし合わせると「本当にこれで正解?」と悩ましさで頭がいっぱいになる。だけど、1曲1曲の完成度/強度は文句なし。アルバムとしてもケチのつけようがない素晴らしさ。素直に「良いものは良い」でいいんだろうけど、本当にそれでいいのだろうかとやっぱり悩んでしまう。すごくいいバンドで、すごくいいアルバムだけど、これが今のUSロックシーンを牽引する存在かと問われたら、僕はそのシーンを軽蔑してしまいそうだし。う〜ん。
この禅問答が延々と自分の中で繰り返され、いまだに彼らに対する正当な扱いがわからないままですが、皆さんは余計なことを考えずに、このサウンドスケープにじっくり浸るのが一番だと思いますよ。ただ、僕の中ではZEPなどクラシックロックの旧譜に触れるのと同じ感覚で、この良作を楽しむことになりそうです。
▼GRETA VAN FLEET『THE BATTLE AT GARDEN'S GATE』
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