2022年1月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリー

無料ブログはココログ

« 2021年5月 | トップページ | 2021年7月 »

2021年6月

2021年6月30日 (水)

2021年5月のアクセスランキング

ここでは2021年5月1日から5月31日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↑●位)」の表記は、「更新日/2021年4月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/↑25位)

2位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日更新/↑15位)

3位:NINE INCH NAILS『BROKEN』(1992)(※2018年10月5日更新/Re)

4位:WEEZER『VAN WEEZER』(2021)(※2021年5月8日更新/NEW!)

5位:CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』(2021)(※2021年5月16日更新/NEW!)

6位:GOJIRA『FORTITUDE』(2021)(※2021年5月3日更新/NEW!)

7位:GARY MOORE『HOW BLUE CAN YOU GET』(2021)(※2021年5月1日更新/NEW!)

8位:FROST*『DAY AND AGE』(2021)(※2021年5月25日更新/NEW!)

9位:ROYAL BLOOD『TYPHOONS』(2021)(※2021年5月10日更新/NEW!)

10位:DIRTY HONEY『DIRTY HONEY』(2021)(※2021年5月11日更新/NEW!)

 

11位:EVILE『HELL UNLEASHED』(2021)(※2021年5月4日更新/NEW!)

12位:MONSTER MAGNET『A BETTER DYSTOPIA』(2021)(※2021年5月23日更新/NEW!)

13位:BODOM AFTER MIDNIGHT『PAINT THE SKY WITH BLOOD』(2021)(※2021年5月19日更新/NEW!)

14位:SUNBOMB『EVIL AND DIVINE』(2021)(※2021年5月18日更新/NEW!)

15位:GILBY CLARKE『THE GOSPEL TRUTH』(2021)(※2021年5月6日更新/NEW!)

16位:BLACK LABEL SOCIETY『1919 ETERNAL』(2002)(※2021年5月2日更新/NEW!)

17位:NANCY WILSON『YOU AND ME』(2021)(※2021年5月12日更新/NEW!)

18位:TOMMY'S ROCKTRIP『BEAT UP BY ROCK 'N ROLL』(2021)(※2021年5月14日更新/NEW!)

19位:MANIC STREET PREACHERS『ORWELLIAN』(2021)(※2021年5月15日更新/NEW!)

20位:エレファントカシマシ@渋谷公会堂(2002年5月30日)(※2002年6月29日更新/Re)

 

21位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓17位)

22位:MYLES KENNEDY『THE IDES OF MARCH』(2021)(※2021年5月17日更新/NEW!)

23位:CALIBAN『ZEITGEISTER』(2021)(※2021年5月20日更新/NEW!)

24位:ANNIHILATOR『KING OF THE KILL』(1994)(※2021年5月5日更新/NEW!)

25位:JIMMY PAGE / ROBERT PLANT『NO QUARTER』(1994)(※2017年12月27日更新/Re)

26位:CAPRA『IN TRANSMISSION』(2021)(※2021年5月9日更新/NEW!)

27位:THE FALL OF TROY『MUKILTEARTH』(2020)(※2020年8月14日更新/Re)

28位:JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』(1992)(※2017年4月10日更新/Re)

29位:WHITESNAKE『WHITESNAKE (1987)』(1987)(※2017年2月3日更新/Re)

30位:HEART『BEAUTIFUL BROKEN』(2016)(※2021年5月13日更新/NEW!)

2021年6月のお仕事

2021年6月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※6月29日更新)

 

[WEB] 6月29日、Little Glee MonsterオフィシャルライブレポートLittle Glee Monster、5人が再結集したホールツアーが開幕!最速ライブレポートが到着!を執筆しました。各媒体にて公開中です。

[WEB] 6月24日、「ぴあ」にてインタビューNGT48が『Awesome』で見せる新しい姿「これからの活動がすごく楽しみ」が公開されました。

[WEB] 6月23日、「リアルサウンド」にてコラムLittle Glee Monster、音楽で繋がる仲間への思い 芹奈復帰曲「REUNION」と「君といれば」に込められたバックストーリーが公開されました。

[紙] 6月23日発売「BRODY」2021年6月号にて、「乃木坂46 舞台に立つ理由」総力特集の生田絵梨花、樋口日奈、伊藤純奈、伊藤理々杏、久保史緒里、中村麗乃、向井葉月、清宮レイ、筒井あやめ、早川聖来の各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 6月22日発売「ヘドバン」Vol.30にて、BABYMETAL「10 BABYMETAL BUDOKAN」ハイライト・ベスト5、X「Jealousy」クロスレビュー、新譜レビュー6作分を担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 6月21日発売「別冊カドカワScene 07」にて、日向坂46丹生明里インタビュー(100問100答+α)、ZOC鎮目のどかインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 6月20日から全国5都市の主要CDショップなどで配布開始の「FLYING POSTMAN PRESS」2021年7月号にて、ドレスコーズ志磨遼平インタビューを担当・執筆しました。

[WEB] 6月19日、「リアルサウンド」にてコラムGARNiDELiA toku、多彩な女性シンガー10名に贈るカラフルな楽曲群 ソロアルバム『bouquet』で再確認する才能が公開されました。

[WEB] 6月19日、櫻坂46「BACKS LIVE!!」オフィシャルレポートを執筆しました。「ドワンゴジェイピーnews」櫻坂46、フォーメーション3列目メンバーによる白熱ライブ完走など、各媒体にて公開中です。

[WEB] 6月17日、「ぴあ」にてインタビュー井上小百合が探すアイデンティティ「自分じゃない何かになってお芝居をしているときが一番楽しい」が公開されました。

[WEB] 6月11日、「Billboard Japan」にてインタビュー和楽器バンド 音楽シーンに合わせて変化を続ける彼らの最新作『Starlight EP』が公開されました。

[WEB] 6月11日、「ぴあ」にてインタビュー高橋悠也×崎山つばさ、『TXT vol.2「ID」』は演者も観客も自分と向き合うことになる舞台が公開されました。

[WEB] 6月10日、「ポニーキャニオン公式ニュース」にてライブレポートGARNiDELiAのtokuが鈴木このみ、やなぎなぎを迎え初のソロライブを開催!が公開されました。このほかにも各媒体にて掲載中です。

[WEB] 6月10日、「リアルサウンド」にてライブレポートRAISE A SUILEN、個々の演奏が生み出す圧倒的な爆発力 初の東名阪ツアー初日を振り返るが公開されました。

[WEB] 6月10日、「リアルサウンド」にてインタビューMAN WITH A MISSIONが『ゴジラvsコング』から感じたシンパシーとは? Jean-Ken Johnnyが語る、作品との共鳴が公開されました。

[WEB] 6月8日、「ポニーキャニオン公式ニュース」にてライブレポート写真集の発売も発表!MARiAデビュー後初のソロライブで草野華余子、TAKUYA、本間昭光、清水信之など豪華クリエイター陣を迎えた一夜限りの豪華な共演が公開されました。このほかにも各媒体にて掲載中です。

[WEB] 6月8日、「リアルサウンド」にてインタビュー乃木坂46 星野みなみ×新内眞衣×梅澤美波インタビュー 各期生が語る、次世代メンバーへの信頼と10年目迎えたグループの今が公開されました。

[WEB] 6月4日、「SQUARE ENIX」公式サイトにてインタビュー【テリーのワンダーランド】姓名判断士から学ぶモンスター命名のコツ!あなたの理想のパーティを組んでみよう!が公開されました。

[紙] 6月4日発売「日経エンタテインメント!」2021年7月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

=====

また、2021年5月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2105号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

SOEN『IMPERIAL』(2021)

2021年1月29日にリリースされたSOENの5thアルバム。日本盤未発売。

SOENは2010年、マーティン・ロペス(Dr/ex. OPETH)を中心結成されたスウェーデン出身のプログレッシヴメタルバンド。初期には現TESTAMENTのスティーヴ・ディジョルジオ(B)も在籍していたようです。デビュー時からSpinefarm Recordsに所属するなど、今日に至るまで常にメジャーフィールドで活動しており、前作『LOTUS』(2019年)ではドイツでTOP30入り(最高22位)、Billboard Top Heatseekersで最高13位を記録する成功を収めています。

3rdアルバム『LYKAIA』(2017年)で初期からのスタイルを完成形に導き、続く4作目『LOTUS』で新たな方向性へと舵を切った彼らですが、この5作目は前作の延長線上にある1枚。テイストとしてのプログレッシヴロック感を随所に散りばめながらも、軸になっているのは2000年前後に勃発したニューメタル以降のモダンメタルということもあり、非常に聴きやすい内容と言えるでしょう。

どの曲も5分前後と、この手のバンドにしては比較的コンパクトにまとめられており、主張の強い演奏でグイグイ引っ張るというよりは曲/メロディの良さで勝負するという印象。ボーカルも中音域主体のメロディ作りで、クセが強すぎない歌唱法と相まって親しみやすさを覚えるものとなっている。旧来のハイトーンシャウトやデスメタル以降のスクリーム、グロウルに偏見を持つリスナー(あまりいないと思いますが)にもうってつけの1枚ではないでしょうか。

楽曲ありき、歌を届けるということに重きを置いていることもあってか、バンドとしてのクセや個性は過去作と比べて減退しているのが気になりますが、1枚のHR/HMアルバムとしては非常に優れた内容だと断言できます。

「Illusion」のように古き良き時代のプログレッシヴロックの香り(あくまで雰囲気モノですが)をさせる楽曲があるかと思えば、2000年前のニューメタルシーンを彷彿とさせる「Antagonist」みたいな曲もあったりで、そういった意味ではいかにも2000年代的な作品と言えなくもないですが、初期作にあったOPETHやTOOLからの影響が薄らいだ今、ここから先どういった強固な個性を確立させていくのかも気になるところ。出来は良いものの、バンドとしては過渡期にあるような気もするので、本当の勝負作は次の1枚なのかな。

 


▼SOEN『IMPERIAL』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月29日 (火)

OPETH『BLACKWATER PARK』(2001)

2001年3月12日にリリースされたOPETHの5thアルバム。日本盤は同年5月23日発売。

初期3作をCandelight Records、前作『STILL LIFE』(1999年)を名門Peaceville Recordsから発表した彼らでしたが、今作からMusic For Nations Recordsへと移籍。日本では過去に2ndアルバム『MORNINGRISE』(1996年)がAvalonから1年遅れて発売された経験がありましたが、今作から本格的に日本リリースが復活。当時はVictorからの発売でしたが、のちにBMG / Sonyから再発されています。

前作まではフレドリック・ノルドストームなどエクストリームメタル界隈のプロデューサーが関わっていましたが、今作ではPORCUPINE TREEスティーヴン・ウィルソンとバンドが共同プロデュース。スティーヴンを起用した影響が大きいのか、今作では従来のデスメタルテイストと70年代的なプログレッシヴロックのテイストがバランスよく融合され、以降に続くスタイルが確立し始めます。

ボーカルワークは完全にデスメタル特有のグロウル中心で構成されていますが、そのサウンドやアンサンブルは“KING CRIMSON meets death metal”と呼ぶにふさわしい独特なもの。プログミュージック嗜好のメタルファンならば、オープニングを飾る「The Leper Affinity」でいきなりノックアウトされるはずです。しかもこの曲、中盤にクリーントーンボーカルがいきなり飛び込んできてメランコリックさを強調させているし、ギターソロにもメロディアスな要素を織り交ぜることでメロディックデスメタルとはまた異なる抒情性を楽しむことができる。ぶっちゃけ、この1曲に本作の魅力が体現されているといっても過言ではありません。

また、前作までプロデュースに携わったフレドリックは本作でエンジニアリング&ミキシングを手がけていることで、エクストリームメタル的側面を減退させることなく、前作までのファンも惹きつけることに成長。かつ、プログミュージック的側面を強めることでリスナー層を少しずつ広げ始めている。近作の王道プログミュージック感にはまだ程遠いですが、ヘヴィメタル/デスメタルの範疇における“プログレッシヴさ”においてはこれ以上ないと言えるほどの傑作ではないでしょうか。

“今のOPETH”という観点では、入門編にふさわしいのは8作目『GHOST REVERIES』(2005年)だと思いますが(自分もそうでしたしね)、ヘヴィメタルバンドとの解釈で最初に聴くべきなのは本作なのかなと。本作があったから、続く『DELIVERANCE』(2002年)、『DAMNATION』(2003年)の二部作が生まれ、出世作となる『GHOST REVERIES』へとつながるわけですからね。

なお、2021年7月16日には『BLACKWATER PARK』の20周年アニバーサリー・エディションも発売されます。CDでの購入を考えている方にはこちらの最新エディションをオススメしておきます。

 


▼OPETH『BLACKWATER PARK』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD(20th Anniversary Edition) / 海外盤CD / 海外盤CD(20th Anniversary Edition) / 海外盤アナログ / 海外盤アナログ(20th Anniversary Edition) / MP3

 

2021年6月28日 (月)

LEPROUS『COAL』(2013)

2013年5月20日にリリースされたLEPROUSの3rdアルバム。日本盤は同年10月2日発売。

EMPERORイーサーン(Vo, G)の義理の弟にあたるエイナル・スーベルグ(Vo, Syn)が在籍しているつながりから、2011年のイーサーン初来日公演でバックバンドを務めたLEPROUS。この時点ではLEPROUSは2枚のアルバムを発表していましたが、どちらも日本未発売。2013年のイーサーン再来日に合わせて、本作にてついに日本デビューを飾ることになります。

僕もこのタイミングに初めてLEPROUSの音に触れたのですが、「なるほど、イーサーンのソロ作品にも通ずる聴きごたえのあるアヴァンギャルドなプログミュージックだな」という印象を受けたことをよく覚えています。エクストリームミュージックの範疇にあるサウンドで、メタリックな質感はあるもののヘヴィメタルそのものではなく、かといってかつてのプログレッシヴロックとも質感が異なる。要所要所で独特な変態性(褒め言葉)が感じられ、それがついついクセになって、気づいたら何度もリピートしている。そんな中毒性を持った不思議な1枚なんです。

全8曲(日本盤ボーナストラック除く)で約56分、7〜9分台の長尺曲が大半を占める構成はかつてのプログレそのものなのですが、オープニングトラック「Foe」で見せる特異性、続く「Chronic」でのオルタナロックとエクストリームミュージックの融合、モダンメタルとプログレッシヴロックがバランスよくミックスされたタイトルトラック「Coal」から間髪入れずに続く浮遊感の強い「The Cloak」という曲構成など、とにかく“アルバム・オリエンテッド”なイメージが強い作風からは、目の前の音とじっくり腰を据えて向き合うべきだという主張が伝わってきます。

ギターに比重を置きすぎないアレンジであったり、「The Valley」で聴けるDjent的なリズム遊びや音の隙間を効果的に用いたアンサンブル、“これぞ北欧”と言いたくなるほど透明感の強いエイナルのボーカルワークなど、USやUKの同世代プログバンドとは一線を画する存在感は、すでにこの時点で完成されていたんだなと、久しぶりに聴き返して強く実感しました。タイプは異なるけど、現在の立ち位置含めOPETHTOOLあたりにもっとも近い存在なんじゃないでしょうか。

なお、本作のラストを飾る超大作「Contaminate Me」には盟友イーサーンがゲストボーカルで参加。楽曲自体もっともエクストリームミュージック色が強く、その中で彼らしいスクリームを楽しむことができます。さらにイーサーンは「Chronic」でストリングスのアレンジも手がけており、どのようにしてLEPROUSをフックアップしようかという当時の良好な関係が伺えます。

2021年8月27日には待望のニューアルバム『APHELION』のリリースも控えています。新境地を打ち出しながらも好評を博した前作『PITFALLS』(2019年)を超える傑作になるのか、今から発売が楽しみでなりません。

 


▼LEPROUS『COAL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ

 

2021年6月27日 (日)

LIGHT THE TORCH『YOU WILL BE THE DEATH OF ME』(2021)

2021年6月25日にリリースされたLIGHT THE TORCHの2ndアルバム。DEVIL YOU KNOW名義を含めると、通算4作目となります。現時点で日本盤未発売。

Billboard 200(全米アルバムチャート)で最高169位を記録した前作『REVIVAL』(2018年)から3年3ヶ月ぶりの新作。元KILLSWITCH ENGAGEのハワード・ジョーンズ(Vo)、元ALL SHALL PERISHのフランチェスコ・アルトゥサト(G)、BLEEDING THROUGHのライアン・ウォンバチャー(B)という前作までの布陣に、今作からWHITECHAPELやOBSCURAなどでの活動で知られるアレックス・リュディンガー(Dr)が正式加入しています。

作風的には前作の延長線上にある内容ですが、より正統派ヘヴィメタルや現代的なヘヴィメタルの色合いが強まっている印象があります。「Let Me Fall Apart」や「End Of The World」のような楽曲ではスクリームも随所に盛り込まれているものの、主軸となるのは「More Than Dreaming」や「Wilting In The Light」のようにスクリーム完全排除の歌モノ叙情的メタル。歯切れの良いギターリフの刻みと、それに呼応したリズムトラックの重低音感、その上に乗るマイナーキーのメロディと、エモーショナルに歌い上げるハワードの圧倒的ボーカルこそがこのバンドの武器であり、その個性的な部分をベストな形(かつコンパクト)にまとめ上げたのが本作、といったところでしょうか。

「Death Of Me」のように曲のクライマックスと呼べるパートで、スクリームをポイント的に用いることで「メタルコアバンドが正統派メタルに歩み寄る」よりも「正統派メタルバンドがメタルコアなどのモダンサウンドに寄せる」ようにも受け取れる本作。各メンバーの出自を知らなければ、多くのリスナーが後者なんじゃないかと受け取ってしまいがちですが、アルバム中盤に配置された「Living With A Ghost」や後半の「Denying The Sin」を聴くと改めて彼らがどのジャンルから登場したかを再認識できるのではないでしょうか。こういう曲がいくつか残されていることで、KILLSWITCH ENGAGEやBLEEDING THROUGH時代からのリスナーもホッとするような……そんなことないかな。

あと、本作は味付けにスペーシーなサウンドエフェクトが用いられているのも印象的。「Wilting In The Light」や「Become The Martyr」あたりのイントロや「Denying The Sin」の間奏に挿入されたシンセを聴くと、その要素が顕著に表れている気がします。これがあるとないとでは、楽曲から受ける印象もかなり変わるのではないでしょうか。

平均点を軽く超える高品質のヘヴィメタルアルバムではあるものの、ここに思いっきり歌い上げるヘヴィメタルバラードがプラスされたら、さらにクオリティがアップするんじゃないかなという気もしていて。でも、そうするとまた別モノになってしまうのかな。難しい判断かもしれませんが、バンドがもうひとつ上へとステップアップするためにはどこかでその決断も必要になるのかもしれませんね。

 


▼LIGHT THE TORCH『YOU WILL BE THE DEATH OF ME』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2021年6月26日 (土)

MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年6月11日にリリースされたMOTLEY CRUEの4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカル発売なし、デジタルのみのようです。

先に『THEATRE OF PAIN』(1985年)最新リマスターを取り上げましたが、実はこの『GIRLS, GIRLS, GIRLS』がMOTLEY CRUE結成40周年記念リマスター企画の第1弾だったんですね。6月前半、仕事でバタバタしていたので完全に見逃していました(苦笑)。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』は2017年8月にリリース30周年記念でリマスター盤がワールドワイドリリースされていますが、そっちは聴いていないんですよ……あまりにも評判が悪かったので(苦笑)。どうやらリマスター効果があまりなかったのか、それもと旧企画の音源をそのまま使っていたのか。国内リリース元もアレでしたしね(ジャケットも酷かったし)。

そういったことを踏まえて、この最新リマスターに触れてみたのですが……オリジナル版にあったナマっぽさを活かしたが故の線の細さが払拭され、全体的にふくよかな音になった印象を受けました。あと、『THEATRE OF PAIN』の最新リマスターを聴いた直後にこちらに触れたこともあってか、全体のまとめ方、整理の仕方が非常に近い印象を受け、リアルタイムで聴いていたときに両作に感じた差異がほぼなくなった気がします。

こうやってリマスタリング効果によって比較的近い音になった2作を続けて聴くと、楽曲的にも連続性が感じられるというか、バンドとしてアルバムごとにまったく違うことにチャレンジしていたのではなくて、バンドの音楽性自体はほぼ変化せず、ちょっとした味付けやヴィジュアル戦略で聴き手側が受け取るイメージに影響を与えていたんだな、と気づかされます。こんな簡単なことに、今までどうして気づかなかったんだろう。刷り込みや思い込みって怖い。

ボブ・ロックが手がけた『DR. FEELGOOD』(1989年)以降のゴージャスな音作りと比べるとさすがに異なるものがありますが、80年代半ばに制作されたこの2作が実は兄弟のような存在だったんだ……そんな事実に改めて気づけたのは、今回のリマスター効果のおかげかな。となると、いずれ登場するであろう2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)のリマスター効果が非常に気になるところです。なにせ、『SHOUT AT THE DEVIL』から『GIRLS, GIRLS, GIRLS』まではトム・ワーマンのプロデュース作ですからね(ミックスは『SHOUT AT THE DEVIL』のみ異なるから、その差は多少あるかもですが)。

 


▼MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
(amazon:MP3

 

MOTLEY CRUE『THEATRE OF PAIN (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年6月25日にリリースされたMOTLEY CRUEの3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカル発売なし、デジタルのみのようです。

タイトルに“40TH ANNIVERSARY REMASTERED”と銘打っていますが、これは『THEATRE OF PAIN』発売40周年というわけではなく、MOTLEY CRUEの結成40周年記念を意味するもの。そもそも『THEATRE OF PAIN』は1985年発売なので、現時点で36周年という中途半端なタイミングですしね。

アルバムの詳細なレビューに関しては4年前に執筆したものに譲るとして、ここではそのリマスター効果について記していきたいと思います。

1985年の作品ということで、ちょうどアナログとデジタルの間のタイミングに制作された音源。なので、リマスター効果はギリギリ表れるのかなという気がします。それはドラムサウンドに顕著で、「Smokin' In the Boys Room」や「Louder Than Hell」「Use It Or Lose It」「Save Our Souls」のようにリズムが強調された、あるいはドラムが目立つ曲だとその違いが明確かと思います。ぜひ一度、過去のバージョンや並行して配信されている以前のバージョンと聴き比べてみてください。

あと、過去のマスタリングは全体的に丸みのある音作りだったように感じていますが(それが80年代的な音だったんでしょうね)、今回のリマスタリングではよりエッジが効いた、メリハリの大きいマスタリングに変更されています。だからこそ、「Smokin' In the Boys Room」や「Home Sweet Home」のようにダイナミズムを強調したアレンジの楽曲ではリマスタリング効果が活きているんじゃないでしょうか。

リマスタリングによってイマドキの音っぽくなるケースも多々見受けられますが、本作に関してはオリジナル盤の魅力をそのまま残し、若干今風に整理した程度で、作品から受ける印象自体はあまり変わらないかな。ただ、今の耳にはすごくフィットしたマスタリングなんじゃないかという気はしています。

けど、改めて本作に触れる機会をくれたという意味では、これもアリかな。なにせ、僕個人として初めてMOTLEY CRUEに触れたアルバムですからね(ってことは、このバンドに出会ってもう36年ってことなんですね。ウケる。笑)。

 


▼MOTLEY CRUE『THEATRE OF PAIN (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
(amazon:MP3

 

2021年6月25日 (金)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』(2021)

2021年6月25日にリリースされたDREAM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年6月23日に先行発売。

本作はバンドが現在所属するInsideOutMusic Recordsとのコラボレーションで、今後定期的に発表されるオフィシャル・ブートレッグシリーズの第1弾。DREAM THEATERは過去にも自主レーベルYsejam Recoresを通じて、さまざまなオフィシャル・ブートレッグをリリースしてきたことはご存知の通り。初期楽曲のデモ音源からMETALLICAIRON MAIDENPINK FLOYDなどの名作アルバムを完全再現したライブアルバムまで、多種多様な作品が大量に発表されてきたのですが、今回はメジャーレーベル(InsideOutMusicの配給元はソニー)を通じて、限定販売とはいえ比較的楽に入手できるのでありがたいかぎりです。

さて、その第1弾として選ばれたのが2017年9月11日の日本武道館公演『IMAGES, WORDS & BEYOND 25th Anniversary Tour』の第2部、2ndアルバム『IMAGES AND WORDS』(1992年)完全再現パートです。この日のライブには僕も仕事として足を運んでおり、当時リアルサウンドさんにこのようなライブレポートを執筆しています。こちらを読めば、当日の雰囲気はなんとなくご理解いただけるはずです。

そこを踏まえて、改めて音源を聴き返してみたのですが……ああ、半音下げチューニングだったね。忘れてた!(笑) 最近の楽曲はヘヴィさを強調すること、あるいはジェイムズ・ラブリエ(Vo)のハイトーンが厳しいことなども影響しているので6弦、7弦ギターを使用して重低音に比重を置いたサウンドメイキングが施されていますが、1992年当時はこの手のプログメタルバンドはレギュラーチューニングが一般的でしたものね。ダウンチューニングで表現される『IMAGES AND WORDS』の世界観は、確かにジョン・ペトルーシのギターはよりエッジの効いたサウンドを楽しめるものになっていますが、楽曲本来のポップさ、キャッチーさ、カラフルさは一切落ちていないのはさすがの一言。改めてすごいアルバムだと実感させられます。

「Take The Time」などでのラブリエの歌がアレなのは一旦置いておいて(苦笑)、アレンジ面では当時のオリジナルメンバーが2人交代している(ドラムのマイク・ポートノイ→マイク・マンジーニ、キーボードのケヴィン・ムーア→ジョーダン・ルーデス)ことも影響してか、若干モダンなテイストが感じられるものにバージョンアップしているのでは。特にジョーダンはケヴィンの個性を尊重しつつ、自身の“らしさ”もうまい具合にミックスさせていますし、マンジーニも然り。ジョン・マイアングのベースに関しては手数、音数が増えているようにも感じますが……どうかな? 当時のプレイよりも昨今の楽曲に沿ったプレイに近いのかなという印象があります。

ペトルーシのギターソロも要所要所で長めに用意されており、特に圧巻なのが先の「Take The Time」かな。この曲後半の長尺プレイは確かに記憶に残っていましたし、実際音源で聴き返してみるとそのとき以上の鮮烈さを味わうことができました。これは良い。

歌に関してはまあアレですが(すでに1時間近く歌ったあとに『IMAGES AND WORDS』完全再現はキツいわなそりゃ)、記録として非常に価値のある1枚ではないでしょうか。今月はKISSオフィシャル・ブートレッグアルバムもありましたし、しかもどちらも実際に足を運んだ日本公演なので、ちょっとした振り返りタイミングになってしまいましたが……ひと昔前の「日本限定ライブ・イン・ジャパン」的な作品(主にMR. BIG)とは異なる、ワールドワイド盤としてこういう音源が世に残されるのは非常にうれしいものですね。みんなもっとやればいいのに(笑)。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月24日 (木)

METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』(1993)

1993年11月23日にリリースされたMETALLICA初のボックスセット作品。日本盤は『メタルVOX・ライヴ!』という邦題で、ほぼ同タイミング(1994年年明けだったかな?)に発売。

本作は1993年2月25〜7日および3月1〜2日のメキシコ・シティ公演のベストテイクで構成された3枚組CDと、1992年1月13、14日のサンディエゴ公演と1989年8月29、30日のシアトル公演を収めた2枚のDVD(初出時はVHSテープ3本)を同梱したもの。初盤(VHS)にはバックステージパスのレプリカやTシャツ、ブックレットも封入された豪華仕様でしたが、とにかく箱が大きくて収納に一苦労したことをよく覚えています(苦笑)。2003年頃に最初された形態は、3枚組CD+DVD2枚(DVDはシングルCDなどに用いられる薄いケース)のみのコンパクトな形に変わったので、こちらの記憶が強いという若いリスナーも少なくないかもしれませんね(もはやVHSを再生する機器も中古じゃないと手に入らないでしょうし)。

ワールドツアーの模様が逐一音源化される『LIVE METALLICA』企画が始まる前は、本作が唯一のMETALLICAライブ音源ということもあり、特に90年代半ばから2000年代初頭はかなり重宝された作品だったのではないでしょうか。特にバンドの絶頂期であるブラックアルバム(1991年)を携えたツアーの模様を、フルスケールで楽しめるライブアルバムですしね。ブラックアルバムのツアーではここ日本にも2度(1991年大晦日の東京ドームと1993年3月)訪れているものの、以降は1998年、2003年とほぼ5年おきの来日でしたし(リリースもしばらく途絶えたしね)、その間にファンになったリスナーがライブを追体験するという点でも、本作はかなり重要な役割を果たした作品だったと断言できます。

全24トラック、約3時間という特大ボリュームのライブはまさに当時の彼らそのもの。ミックスの派手さも非常に90年代的ですよね。ブラックアルバムの楽曲が軸になるものの、要所要所で「Creeping Death」や「Fade To Black」「Seek & Destroy」「Whiplash」など初期の楽曲が挿入されるセットリストは、意外と今と変わりないんですよね。ただ、『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)収録曲をメドレー形式で10分にまとめた「Justice Medley」なるコーナーがあったり、「Seek & Destroy」をジェイソン・ニューステッド(B)が歌っていたりするのはこの時期ならですし、QUEEN「Stone Cold Crazy」カバーがあったりするのもお得感満載。ベストアルバム的コンピレーションアルバムが存在しない彼らにとっては、初期5作品をおさらいする上でも実はかなり有能な1枚(CD3枚組)ではないでしょうか。

そして、映像のほうに関して。確か1992年のライブはこの時期のMVなども手がけたウェイン・アイシャムがディレクションを担当していたと記憶します。それもあってか、冒頭のドキュメンタリー的イントロダクションが20分もあって煩わしかったりするのですが、そこを除けば非常に90年代初頭らしい“MTV感覚のライブ映像“と言えるのかな。今の目で観るとちょっと作りすぎ感が否めませんが、歴史的資料としては十分かなと。

もうひとつの1989年の映像は、もともと商品化を予定していなかったこともあり、質はイマイチ。ですが、当時オフィシャルで現存する『...AND JUSTICE FOR ALL』期のライブ映像はこれだけだったので、特にブラックアルバム以降ファンになった方々にはうれしい逸品だったはずです。正直、僕は1992年のほうよりこっちばかりリピートしたなあ……それこそVHSテープが擦り切れるほどに(誇張なし)。

2021年9月10日にはブラックアルバム発売30周年を記念したボックスセットが発売されます。こちらにもさまざまなライブ映像が収録される予定ですが、そことはまた違った、作品性の高いライブ映像という意味でも、本作は事前にチェックしておくべき重要作品だと言っておきたいです。

さ、もう一回1989年のライブ映像を再生しますか(今はDVDなのでご安心を。笑)。

 


▼METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』
(amazon:国内盤3CD+2DVD / 海外盤3CD+2DVD / MP3

 

2021年6月23日 (水)

BUCKCHERRY『HELLBOUND』(2021)

2021年6月23日に日本先行リリースされたBUCKCHERRYの9thアルバム。海外では同年6月25日発売。

ジョシュ・トッド(Vo)、スティーヴィー・D(G)、ケリー・レミュー(B)に新メンバーのケヴィン・レントゲーン(G)、フランシス・ルイズ(Dr)を加えた新編成で“三度目のデビューアルバム”と呼ぶにふさわしい前作『WARPAINT』(2019年)を発表したBUCKCHERRY。今作が届けられる2年3ヶ月の間に、ケヴィンが脱退してしまい、新たにビリー・ロウ(G/ex. JETBOY)が加入してこの新作を完成させました。

レコーディングは2020年11月にナッシュビルで実施。プロデューサーには過去に4作目『BLACK BUTTERFLY』(2008年)を手がけ、最大のヒット曲「Sorry」(2007年)を共作したマーティ・フレデリクセンが担当。マーティは楽曲制作においても、ジョシュとスティーヴィーとともに大部分で共同執筆しており、その影響なのか前作での毒々しさが若干薄れた、メロウで聴きやすいロックンロールアルバムに仕上がっています。

全体的に非常に整理された感が強く、それも聴きやすさにつながっているのでしょう。90年代のAEROSMITHと黄金期のAC/DCがミックスされたかのようなグルーヴィーなロックチューンの数々は、大ヒット作となった3作目『15』(2005年)をより洗練させたように映ります。パンク風味の豪快なロックチューンがあるかと思えば、「No More Lies」のようないかがわしいファンクロックもあるし、ブルージーなミディアムナンバー「Wasting No More Times」、名曲「Sorry」にも匹敵するスローバラード「The Way」、レゲエテイストのリズムを取り入れた「Barricade」のような楽曲も存在し、思いのほかバラエティに富んでいる。だけど、全10曲36分があっという間に感じられるのは決して退屈なわけではなくて、それだけ馴染みやすい構成ということなのでしょう。

前作にあったえげつなさは皆無だけど、BUCKCHERRYらしさはしっかり存在している。数ある個性のどこをフィーチャーするかの違いでしょうけど、これはこれでありだと思いました。個人的に難を挙げるとするならば、楽曲の出来は申し分ないけど、これぞ!という問答無用にカッコいいギターリフが少ない気がするので、そこかなあ……この手のバンドにとっては死活問題だと思うんですが、どうでしょうか。

なお、日本盤はさらに2曲(「Don't Even Mention」「Cool With」)ボーナストラックを追加した、全12曲43分という程よいボリューム。ポップさ際立つ前者とダルなロックチューンの後者は……まあ“おまけ”といいったところでしょうか。ただ、前者は比較的出来が良いしアルバム本編にない色なので、これを含む全11曲39分という内容でもよかったんじゃないかという気がします。でも、昔ながらの10曲という構成も潔くていいけどね。

 


▼BUCKCHERRY『HELLBOUND』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月22日 (火)

HACKTIVIST『HYPERDIALECT』(2021)

2021年6月18日にリリースされたHACKTIVISTの2ndアルバム。日本盤未発売。

HACKTIVISTは2011年から活動する、イギリスはミルトン・キーンズ出身の2MCラップメタル/グライムメタルバンド。当初は2MC(を擁し、Djentを積極的に取り入れたモダンなスタイルが早くから注目を浴びていたようです。2016年に1stアルバム『OUTSIDE THE BOX』をリリースしていますが、その後ラッパーのひとりが脱退し、代わりにアンクリーンボーカル専任シンガーが加入。クリーンボーカルを兼任していたギタリストも2018年にメンバーチェンジしています。つまり、この2作目のアルバムは新編成で初の作品であり、ボーカル面でもかなり新鮮に響く1枚と言えるのではないでしょうか。

とはいえ、僕が彼らの作品に触れるのはこれが初めて。あえて前作を聴かないままこの新作と向き合ったのですが……うん、普通にカッコいい。重低音を活かしたDjentに浮遊感の強いヒップホップサウンドやグライムのスタイルを大々的に織り交ぜることで、過去のラップメタルバンドとは一味違う個性を確立させている。もっとも最新型のストリートメタル/エクストリームミュージックと言えるのではないでしょうか。

気になるボーカルの絡みですが、アンクリーン専任シンガーもラップ調で歌っているので、結果として2MC体制が維持されるように映りました。歌メロらしいメロディのない楽曲中心なので、クリーンボーカルの役割はそこまで比重が高くなく、気持ち的にはヘヴィなヒップホップ/グライムに触れているという感覚が強いかもしれません。けど、そこがよかったりするんですが。

とはいえ、サウンド的には「Anti Emcees」の後半に登場するブラストビート風アレンジだったり、要所要所にエクストリームミュージックらしいアレンジも登場するので、LIMP BIZKIT以降のラップメタルファンなら問答無用で楽しめるはず。そこに「Planet Zero」などで聴けるようなリズミックなDjentアレンジが重なることで、なんとも言えない気持ちよさを堪能できるのではないでしょうか。

残念ながら歌詞に関しては完璧な形で解釈することは難しいのですが、過去のRAGE AGAINST THE MACHINEや最近のFEVER 333にも通ずるレベルミュージックとして機能しているようです。そもそも、HACKTIVISTというバンド名からして、政治や社会に対するアンチの姿勢が伝わりますものね。この手のバンドは本当なら、歌詞までしっかり踏まえた上で聴いて楽しみたい(あるいは評価したい)ところではあるのですが、もはや海外アーティストの対訳付き日本盤発売は超ビッグネームでもなければ実現が難しい世の中になってしまったので、ここは独自で可能な限り解釈していければと思います。

そういった意味では、サウンドのみを楽しんでいる現時点では彼らの魅力を100%解釈できているとは言い難いですが、それでもデカい音で聴いたときのカッコよさは筆舌に尽くし難いものがあるので、ここはぜひヘッドフォンやイヤフォンではなくてスピーカーを通して、このゴリゴリのサウンドを大音量で楽しんでもらいたいところです。きっと、浮遊感の強い音と轟音との対比含めて、より魅力が伝わるはずですから。

 


▼HACKTIVIST『HYPERDIALECT』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月21日 (月)

WHITE LION『MANE ATTRACTION』(1991)

1991年4月2日にリリースされたWHITE LIONの4thアルバム。日本盤は同年4月25日に発売。

出世作『PRIDE』(1987年)をフォローアップする3作目『BIG GAME』(1989年)もスマッシュヒットを記録し、なんとか時代の波から取り残されずに済んだWHITE LIONでしたが、そんな彼が本気の勝負をかけたのがこの4作目。イギリスでは過去最高の31位という好成績を残したものの、湾岸戦争以降の不安定な情勢とグランジへとシフトし始める“前夜”的空気感が影響してか、アメリカでは61位と惨敗。シングルも「Love Don't Come Easy」がラジオヒットするものの、それ以外は大きな成功を収めることができず、バンドは1992年に解散の道を選ぶこととなります。

先行き不安な状況が影響していか、本作が放つ空気感はいつになくシリアスなもので覆われており、かつSE的なイントロダクションを用いた長尺曲(オープニングを飾る「Lights And Thunder」は8分超え。ほかにも「Warsong」や「She's Got Everything」は約7分)も少なくなく、全12曲/62分というトータルランニングも彼らにしては非常に長く感じられます。

このパーティロック感を排除したシリアスでダークなテイストこそ、彼らがハードロックバンドとして真剣に勝負をかけた表れなのでしょう。実際、この年のヒット作でもあるMETALLICAブラックアルバムNIRVANA『NEVERMIND』PEARL JAM『TEN』などはヘヴィでダークな作風ですし、HR/HMシーンもPANTERAなどのグルーヴメタルバンドが台頭し始める。WHITE LIONの“シリアスでダークでヘヴィ”という読みは間違っていなかったのです。

それでもヒットしなかったのは、もはや彼らのパブリックイメージが強過ぎたということなのでしょう。事実、アルバム自体は非常に練り込まれたアンサンブルが印象的な、完全無欠のハードロック作品であり、先に挙げたような長尺曲(個人的には「Lights And Thunder」や「Warsong」がお気に入り)もヴィト・ブラッタ(G)のスリリングなギタープレイを存分に楽しめますし。一方で、彼らのポップな側面をより大人びた方向へと進化させた「Love Don't Come Easy」や「You're All I Need」のような楽曲もしっかり用意されており、従来のファンも手放さない配慮がなされている。

だけどヒットしなかった。これはもう、時代と運が悪かったとしか言いようがないでしょう……。実際、10曲くらいに絞り込んだら、本作はもっとタイトなアルバムとして楽しめたはずなんです(良い曲が多いけど、バラードが複数含まれているのも本作のマイナスポイントかな)。

ヴィト・ブラッタは本作を最後にレコーディング音源を残しておらず、現在はミュージシャンとして引退状態。結果、このアルバムが生涯最後の音源ということになります。ギタリストとしてはもちろん、作曲家としても類稀なる才能の持ち主だっただけに、勿体ないったらありゃしない。このアルバムがもう少し成功を収めていたら、そしてWHITE LIONが続いていたら、さらにいろんな曲やプレイを耳にすることができたんじゃないか……そう考えると、つくづくタイミングって重要だなと思わずにはいられません。

 


▼WHITE LION『MANE ATTRACTION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

SAIGON KICK『SAIGON KICK』(1991)

1991年2月12日にリリースされたSAIGON KICKの1stアルバム。日本盤は同年3月25日に発売。

マット・クレイマー(Vo)、ジェイソン・ビーラー(G)、トム・ディファイル(B)、フィル・ヴァロン(Dr)の4人からなるSAIGON KICKは1988年にフロリダ州にて結成。1990年にAtlantic Recordsと契約すると、DOKKENSKID ROWなどで名を上げたマイケル・ワグナーをプロデューサーに迎え、このデビューアルバムを完成させます。

ポップ色の強いハードロックをベースにしつつ、随所にサイケデリック風味やパンクロックからの影響を散りばめたスタイルは、同時期にブレイクを果たしたFAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONあたりとも通ずるものがあり、アルバム自体1990年前後のバンドらしい音が詰まった良作と言えるでしょう。ストレートなHR/HMとは異なる、ひとひねり加わったアレンジや楽曲構成からも時代の移り目が伝わってきますし、本作リリースの数ヶ月後にMR. BIGが「Green-Tinted Sixties Mind」を含む2ndアルバム『LEAN INTO IT』(1991年)を発表するというあたりにも、いろいろなつながりを感じずにはいられません。本作でいうと「What You Say」あたりはMR. BIGのそのテイストと重なりますしね。

かと思えば、「Suzy」には当時本格的ブレイクを果たしたEXTREMEの姿が見つけられるし、オープニングトラック「New World」にはSOUNDGARDEN、あるいはのちにデビューするPEARL JAMとの共通点も散見される。「Coming Home」なんて、ペリー・ファレルが歌ったらJANE'S ADDICTIONっぽくなっちゃいますから……そういった意味では、このデビューアルバムの時点ではSAIGON KICKらしい個性はまだ確立できておらず、当時好きだったアーティストからの影響やシーンの潮流を読み取った音が表現されていただけに過ぎなかったのかな。結局、続く2ndアルバム『THE LIZARD』(1992年)でチャート的にもセールス的にも成功を収めるわけですから、本作はそこへ向けた習作だったということなのでしょう。

プロデューサーの人選、その流れからなのかゲストボーカルとしてジェフ・スコット・ソートが参加している点など、当時はHR/HMの観点で語られることが多く、初来日もオジー・オズボーンの引退前興行のオープニングアクト(1991年秋)。僕も日本武道館で彼らのパフォーマンスを観ており、それにあわせてアルバムも購入したのですが、正直チグハグ感は否めませんでした。結局、日本では彼らもカテゴライズの難しい存在でしたから……。

グランジの本流とは異なるものの、ポストグランジバンドとしては意外と重要な存在じゃないかと言える彼ら。ヒット作『THE LIZARD』はもちろんですが、本作もぜひチェックしておきたい1枚です。

 


▼SAIGON KICK『SAIGON KICK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月20日 (日)

ENUFF Z'NUFF『PEACH FUZZ』(1996)

1996年1月19日にリリースされたENUFF Z'NUFFの6thアルバム。

当初は完全新作と謳われていた本作、実は以前発売された『1985』(1994年)同様に、過去にレコーディングされながらもアルバム未収録だった楽曲を集めた、いわゆる寄せ集めコンピレーションアルバム。「Let It Go」や「Kitty」あたりは2ndアルバム『STRENGTH』(1991年)からのシングルC/W曲として発表済みなので、そういった事情もディープなファンは承知だったのでしょうね。

とはいえ、常にクオリティの高い楽曲を増産し続ける彼らのこと。本作には“残りもの”感は一切なく、言われなければ3rdアルバム『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』(1993年)の延長線上にある1枚として受け取るのではないでしょうか。事実、当時の僕もそう感じながら聴いていましたから。

レコーディングクレジットの参加メンバーから各曲の制作時期はなんとなく想像できますが、おそらく大半は『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』前後に録音したものなのかな。ジーノ・マルティノ(G)やジョニー・モナコ(G)の名前がないことから、80年代後半〜90年代初頭の楽曲が中心なんでしょうね。全体の音の質感やドラムの音色、楽曲の方向性的にも初期3作と重なるものがありますしね(中にはデモトラックっぽいクオリティの音源も含まれていますが)。そういった意味では、ハードロック色の強い時期のズナフがお気に入りというリスナーにはうってつけの1枚かもしれません。

本当に今聴き返しても、オリジナルアルバムとして純粋に通用するクオリティの1枚。アルバムとしてのまとまりは過去作ほど強くはないかもしれませんが、「Message Of Love」や「So Long」あたりは以降の作風にも通ずるものが感じられるので、90年代後半に『PARAPHERNALIA』(1999年)で本格的に復調するまでのつなぎとしても存分に機能する佳作かなと。個人的にはドニー・ヴィ(Vo, G)が歌ってくれさえすればオールOKです。

なお、本作は初出時、日本盤と海外盤とで収録内容/曲順およびアートワークがまったく異なるものでした(海外盤は日本盤より2曲少ない全10曲。実は隠しトラックとして「Kitty」が収録されているので、本当は11曲入り)。日本盤は90年代以降一度も最初されていませんが、海外では2008年の再発以降、日本盤と同じ収録内容/曲順に新たなアートワークが施されたものが流通しています。現在ストリーミングサービスで耳にすることができるバージョンもこちらなので、ご安心を。

 


▼ENUFF Z'NUFF『PEACH FUZZ』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

KISS『ROCK AND ROLL OVER』(1976)

1976年11月にリリースされたKISSの5thアルバム。

ライブアルバム『ALIVE!』(1975年)およびシングルカットされた「Rock And Roll All Nite」がスマッシュヒットを記録(前者が全米9位、後者が同12位)。続くスタジオアルバム『DESTROYER』(1976年)も全米11位まで上昇し、シングルカットされ「Beth」が最高7位を記録するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時のKISSは、前作から8ヶ月という短いスパンで次作を届けます。そういう時代だったとはいえ、この頃のKISSの創作意欲(というか創作能力)には相当なものがあったように感じます。

ボブ・エズリンをプロデューサーに迎え、鉄壁なスタジオワークでまとめあげた『DESTROYER』での反動からか、続く今作ではプロデューサーに『ALIVE!』を手掛けたエディ・クレイマー(ジミ・ヘンドリクスデヴィッド・ボウイLED ZEPPELINなど)を迎え、ライブ的な生々しさと躍動感を重視した作風で仕上げられています。そのレコーディングも通常のレコーディングスタジオではなく、ニューヨークの劇場を借り切って行われたとのこと。KISSが本作に何を求めていたかがよくわかるエピソードではないでしょうか。

前作に見受けられたシアトリカルな要素はここでは払拭され、ポップさはそのままに、初期のシンプルなスタイルによりハードさを加えたサウンドに進化。楽曲のキャッチーさ、RAMONESが“パンクロック版BEACH BOYS”だとしたら、本作はそのハードロック版と言えなくもないかな。それくらい1曲1曲の個が立っており、歌、コーラスワーク、演奏どれもが無駄のないアレンジで固められている。だけど、そこには作り込まれた感は皆無で、程よいラフさがライブバンドらしさを見事に表現しているわけです。

シングルカットされた「Calling Dr. Love」(全米16位/ジーン・シモンズ歌唱)や「Hard Luck Woman」(同15位/ピーター・クリス歌唱)のほか、「I Want You」や「Makin' Love」(ともにポール・スタンレー歌唱)などのライブ映えする代表曲、「Take Me」や「Ladies Room」「Love 'Em And Leave 'Em」「Mr. Speed」など隠れた名曲も多く、全編を通してダレることが一切ない完璧な1枚。アイコン的なアートワーク含め、1stアルバム『KISS』(1974年)や前作『DESTROYER』同様、入門者に最適な1枚ではないでしょうか。

実は筆者も、70年代のKISSオリジナルアルバムで最初に手にしたのが、このアルバムでした。自分に中での「初期のKISSらしさ」がもっとも感じられる1枚はこれなのかな……なんて、最近聴き返すたびに感じています。

 


▼KISS『ROCK AND ROLL OVER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月19日 (土)

FEAR FACTORY『AGGRESSION CONTINUUM』(2021)

2021年6月18日にリリースされたFEAR FACTORYの10thアルバム。

ディーノ・カザレス(G)が復帰した7作目『MECHANIZE』(2010年)から4作目、前作『GENEXUS』(2015年)から約6年ぶりの新作。本来ならもっと早くに出ていたなんて話もありましたが(ボーカルトラックは2017年に録音されていたそうですし)、結局アルバムの発売を待つことなく2020年後半にバートン・C・ベル(Vo)がバンドを脱退してしまいます。

現在はボーカル不在で、ディーノと2012年加入のマイク・ヘラー(Dr/RAVENなどにも在籍)、2015年加入のトニー・カンポス(B/STATIC-X)の3人がバンドに在籍。しかし、本作のレコーディングにトニーは参加しておらず、ベーストラックはディーノがプレイしています。これはここ数作と同じ流れですね。また、前々作『THE INDUSTRIALIST』(2012年)および前作の一部はリズムトラックがすべて打ち込みでしたが、今作ではマイクがすべてプレイしているようです。これだけの凄腕プレイヤーを擁するんだから、使わないのはおかしいですわな。

さて、気になる内容ですが……よくも悪くも“いつもどおり”です。もっと言えば、『MECHANIZE』以降3作の延長線上にある作風で、特段目新しさは見つけられないかな。このバンドに何を求めるかによって、本作の評価も大きく変わるかもしれませんが、名作『DEMANUFACTURE』(1995年)やそれ以降の諸作品を気に入っているリスナーなら、今作も間違いなく楽しめるはずです。

ところが、90年代は“近未来的”だとか“一糸乱れぬ機械的なユニゾンプレイが気持ちいい”だとはいってもてはやされた彼らのスタイルも、今では特別すごいというわけでもない(言ってしまえば、もっとエクストリームなスタイルはいくらでも存在するし、いくらなんでも2021年に“近未来的”はないかなと)。ある程度のアップデートは毎回施されているものの、基本路線は90年代半ばから変わっていないわけですから、これを今の耳で聴くとどうなるかというと……おわかりですよね?

確かにディーノのギター(およびベース)とマイクのドラムが生み出す機械的なユニゾンプレイの気持ちよさ、シンセを効果的に用いたスペーシーなサウンドとドラマチックなエクストリームメタルナンバーの数々、スクリームとクリーントーンの比率もちょうどいいバートンのボーカル、そのすべてがカッコいいと思いますが、同時にどこか「懐かしい」とも感じてしまう。そう、気づけば彼らのスタイル/サウンドって一世代、二世代前のものになってしまっていたんです。びっくりですね(別に驚かないか)。

もはやスタンダードとも言えなくないこのスタイルとサウンド。古臭く感じられる部分もゼロではない。もはや先鋭的とも言えなくなった……恐竜のような存在でもあるこのアルバムが、2021年にどう評価されるのかが本当に気になります。10年前はまだ「新しい」と感じられたんですけどね。自分の感性が変わってしまったんでしょうか……。

あと、このアルバムからネガティブな要素が拭えないもうひとつの理由が、すでに脱退したボーカルの歌を活かして、そのままリリースしてしまったこと。復帰の可能性が大きいのならわかるけど、それもなさそうですし、ましてや新ボーカリストも決まっていない状態で、本作を携えたツアーも望めない(しかもこういう情勢ですし)。本来ならリリースにワクワクするところ、今作に関しては単なる“記録”としてしか接することができない。どれだけカッコいい曲、カッコいいプレイがたくさん詰まっていても、「でもこれ、この編成でのライブは期待できないし……」と冷静になってしまう。

これ、出す意味あったのかなあ……。

いや、出してくれた事実はうれしいですし、やっぱり良いとは思うんですが、同時に素直に楽しめない自分も間違いなく存在する。なんとも罪作りなアルバムです。

 


▼FEAR FACTORY『AGGRESSION CONTINUUM』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2021年6月18日 (金)

HELLOWEEN『MASTER OF THE RINGS』(1994)

1994年夏にリリースされたHELLOWEENの6thアルバム。日本盤は同年8月24日発売。Wikipediaでは海外盤は7月8日リリースとあるのですが、これが正しいかどうかは不明。日本初盤帯に「日本先行発売」と記されているので、海外でのリリースは8月末以降の可能性が高いですね。

前作『CHAMELEON』(1993年)を携えたツアーを終えたあと、マイケル・キスク(Vo)とインゴ・シュヴィヒテンバーグ(Dr)がバンドを離れ、残されたマイケル・ヴァイカート(G)、ローランド・グラポウ(G)、マーカス・グロスコフ(B)は新たにアンディ・デリス(Vo/ex. PINK CREAM 69)、ウリ・カッシュ(Dr/ex. GAMMA RAY)を迎えた新編成でアルバムを制作。気心知れたトミー・ハンセンとともに起死回生の1枚を完成させます。

前々作『PINK BUBBLES GO APE』(1991年)、前作『CHAMELEON』で正統派ヘヴィメタル路線から徐々に離れていったHELLOWEENでしたが、そうした嗜好の強かったキスクが抜けたことで再びパワーメタル路線が復活。アンディ・デリスという“歌える”シンガーを得たことで、そういったスタイルにPINK CREAM 69あたりがやりそうなメロディアスハードロックのテイストも加わった、1本芯が通りつつもバラエティ豊かな作風へとシフトします。

シンフォニックなSE「Irritation (Weik Editude 112 in C)」からアップテンポの歌モノメタル「Sole Survivor」へと続く構成は、どこか『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS: PART II』(1988年)を彷彿とさせるものがあるし、王道疾走メタル「Where The Rain Grows」はこれぞHELLOWEENという十八番的1曲。かと思えば、アンディが作詞作曲した「Why?」はHELLOWEENに新たな魅力を与えているし、ローランド書き下ろしの「Mr. Ego (Take Me Down)」はこれまでにないタイプのミディアムヘヴィチューンに仕上がっている。遊び心の強い「The Game Is On」はやはりヴァイカート作かとニヤリとさせられたと思えば、PINK CREAM 69でやっても違和感のないバラード「In The Middle Of A Heartbeat」やひたすら突っ走る「Still We Go」で新しいHELLOWEENを提示する。各ソングライターのカラーが色濃く表れつつも、アンディが歌うことでアルバムに統一感を持たせ、「これが1994年のHELLOWEENだ!」と高らかに宣言するという、ある意味力技の1枚と言えるでしょう。

初めて聴いたときは「いいアルバムだけど、これをHELLOWEENと呼んでいいものか……」という違和感も残りました。しかし、そんな迷いも数回リピートしたことには払拭され、気づけばHELLOWEENのキャリア中1、2を争う傑作にまで昇格。今でも聴く頻度の高いアルバムのひとつです。

このアルバムが当時、日本で数10万枚も売れたことは決して忘れてはならないし、HELLOWEENが真の意味でトップバンドの仲間入りを果たせたのは本作の功績が大きい。本来なら本作のあとか次作『THE TIME OF THE OATH』(1996年)のタイミングに日本武道館に立っておくべきだったよな……と、改めて思わずにはいられません。BON JOVIがミリオンヒットするなど、HR/HMが日本でバカ売れした90年代半ばは夢のような時代でしたよね……(遠い目)。

そんな、あの頃メタルファンなら誰もが聴いていた名作を2021年現在、日本ではストリーミングサービスはおろかデジタル配信もされていないという事実。悲しいったらありゃしない。ぜひ『PINK BUBBLES GO APE』から『BETTER THAN RAW』(1998年)までの諸作品と『KEEPER OF THE SEVEN KEYS: THE LEGACY』(2005年)の、国内未配信のアルバムを各種ストリーミングサービスでも楽しめるようにしてもらいたいところです。

 


▼HELLOWEEN『MASTER OF THE RINGS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ

 

PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』(1993)

1993年5月3日にリリースされたPINK CREAM 69の3rdアルバム。日本盤は同年6月17日発売。

日本デビュー作となった前作『ONE SIZE FITS ALL』(1991年)は、そのメロディアスなハードロックサウンドとアンディ・デリス(Vo)のハスキーな歌声との相性も抜群で、本国ドイツでは最高22位まで上昇。ここ日本でも高く評価され、国内未発売だった1stアルバム『PINK CREAM 69』(1989年)の日本盤リリースや初来日公演実現など大きな結果へとつながりました。

そんな好状況を経て届けられた3作目ですが、何やら過去2作とは少し質感が異なります。甘く官能的なメロディラインはどこかモノトーンなものへとシフトし、アルバムを構築する楽曲群もヘヴィでエッジの効いたミドルテンポが中心。要するに、1993年という時代(グランジブームの真っ只中、かつPANTERAMETALLICAブラックアルバムを筆頭とするグルーヴメタルがシーンを席巻)がモロに反映された作りへと変化しているのです。

こういう要素も過去2作(特に前作)には含まれていたものなので、突然変異というわけではない。だけど、ここまであからさまに偏ると、さすがに面食らうよね……ってことで、リリース当時は「悪くはないけど、コレジャナイ」と常々感じていた1枚でした。シングルカットされた「Keep Your Eyes On The Twisted」やミディアムバラード「Somedays I Sail」、エモーショナルなアップチューン「Shattered」などは前作までのカラーが感じられるものの、さすがにオープニングを飾る「Face In The Mirror」や、アルバム中盤に配置された「Dyin' Century」のダークさにはたじろぐよね……って話なんです。

確かに「Monday Again」のようなファストチューンや、メロディラインは過去2作には及ばないもののそれに限りなく近い作風の「Till You're Mine」など、仮に前作に含まれていたとしたら普通に楽しめるであろう楽曲も存在するのですが、過去2作にあったキラーチューンが存在しないこと、そしてアルバム冒頭の流れの悪さ(歯痒さ)がこのアルバムをワンランクもツーランクも落としている気がしてなりません。

久しぶりに聴いてみたら、当時ほどネガティブな印象を受けなかったし、最後まで新鮮な気持ちで楽しめたんです。確かにダークさ、モノトーン感は否めませんが、そういうアルバムが3作目に生まれたとしても決して不思議じゃない。ただ、そのさじ加減や見せ方がうまくなかった。ここから3曲くらいダークな曲を間引いて、「Livin' My Life For You」や「Signs Of Danger」「Where The Eagle Learns To Fly」級の名曲がひとつでもあれば、アンディ・デリスはバンドを辞めずに済んだのではないか……だとしたら、その後のHELLOWEENには誰が加入していたのか。たられば話をしたところでどうにもなりませんが、そんな未来もあったんじゃないかと思うと、やはり罪作りな1枚だなと思わずにはいられません。

 


▼PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』(2019)

2019年10月4日にリリースされたHELLOWEENのライブアルバム。日本盤は同年10月2日に先行発売。

HELLOWEENにとって『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS: THE LEGACY WORLD TOUR 2005/2006』(2007年)に続く、通算4作目のライブアルバム。アンディ・デリス(Vo)、マイケル・ヴァイカート(G)、サシャ・ゲルストナー(G)マーカス・グロスコフ(B)、ダニ・ルブレ(Dr)という2005年からの布陣に創設メンバーのひとりカイ・ハンセン(G, Vo)、そして80年代後半から90年代前半にかけて在籍した2代目シンガーのマイケル・キスク(Vo)を加えた7人編成で行ったワールドツアーから、2017年12月9日のスペイン・マドリッド公演を完全収録した2枚のディスクに、2017〜18年のワールドツアーからの4曲を収めたボーナスディスクが付いた3枚組/2時間40分のボリューミーな内容となっています。

カイやキスクが参加したライブアルバムは、バンド1作目の『LIVE IN THE U.K.』(1989年/日本盤は『KEEPERS LIVE』のタイトルで流通)以来のこと。もっともあれはライブ完全収録盤ではなかったので、一部の楽曲のみしか聴くことができなかったんですよね。そう考えると、2人が参加した『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS』2部作からの楽曲や、『PINK BUBBLES GO APE』(1991年)からのライブテイクを楽しめるのは(キーが下げられているとはいえ)当時からのリスナーとしてはうれしいものがあります。

ボーナスディスク含む全24トラック中、キスク在籍時の楽曲が12トラック(うち1トラックは2曲メドレー)、アンディ加入後の歌唱曲が9トラック、カイ歌唱曲が2トラック(うち1トラックは4曲メドレー)、そして「Pumpkins United」という内訳になります。とはいえ、ライブオープニングを飾る「Halloween」や「A Tale That Wasn't Right」、「Perfect Gentleman」や「Forever And One」ではキスクとアンディがデュエット(笑)を披露しているし、「How Many Tears」ではカイを含むトリプルボーカルが楽しめる。さすがにアンディ歌唱原曲をキスクがひとりで歌ったり、その逆というパターンはゼロですが、原曲をベストな形でお届けしようというバンド側の気遣い(もしくはキスクへの気遣い。笑)は伝わってくるかな。

僕は本ツアーでの来日公演はさまざまな事情で参加できなかったのですが、こういう形で追体験できるのはうれしい限り。しかも、本作はほぼ同タイトルのライブ映像作品(『UNITED ALIVE』)も制作されているので、映像でも堪能できますしね(ただし、こちらは複数公演の映像をミックスしたもの)。選曲的にもベスト中のベストと言えるものだと思いますし(例えば迷作『CHAMELEON』(1993年)からは1曲も採用されていなかったり、最新作『MY GOD-GIVEN RIGHT』(2015年)の曲もゼロだったり)。アンディやキスクのボーカルも比較的良好なほうだと思うので、最後まで安心して楽しめますしね。かつ、演奏面も文句なし。これを聴いたら/観たら、そりゃ“この7人での新作”に過剰な期待を寄せちゃいますよね。

最新アルバム『HELLOWEEN』(2021年)が発売された今となっては、このライブアルバムって来る新作に対する副読本だったのかな?という気がしてなりません。アルバム『HELLOWEEN』をより深く理解する、楽しむために一度は触れておくべき、もうひとつの“HELLOWEEN史の集大成”。このタイミングに改めて聴いてみることをオススメします。

 


▼HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』
(amazon:国内盤3CD / 海外盤3CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月17日 (木)

HELLOWEEN『HELLOWEEN』(2021)

2021年6月16日に日本先行でリリースされたHELLOWEENの16thアルバム。海外では同年6月18日に発売。

ご存知のとおり、本作はアンディ・デリス(Vo)、マイケル・ヴァイカート(G)、サシャ・ゲルストナー(G)マーカス・グロスコフ(B)、ダニ・ルブレ(Dr)という2005年からの布陣に創設メンバーのひとりカイ・ハンセン(G, Vo)、そして80年代後半から90年代前半にかけて在籍した2代目シンガーのマイケル・キスク(Vo)を加えた7人編成で制作された、バンドの集大成的1枚。オリジナルアルバムとしては5人時代の『MY GOD-GIVEN RIGHT』(2015年)から6年ぶりとなり、マイケル・キスク参加作としては『CHAMELEON』(1993年)以来28年ぶり、カイ・ハンセン参加作としては『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS: PART II』(1988年)以来33年ぶり(!)とオリジナルアルバムとなります。

2016年秋にこの布陣でのライブ活動を宣言し、2017年からワールドツアー開始。さらに同編成で初のオリジナル曲「Pumpkins United」を制作し、古くからのリスナーを驚かせました。しかし、これは単なるファンへのサプライズアイテムとして制作されたもので、その後もここまで同編成での活動が続くとは思いもしませんでしたし、なんならアルバムまで到達するとは誰もが想像していなかったと思います。みんな自分のエゴを殺して同調できるような大人になったんですね(笑)。

さて、実際に届けられた本作。先行シングルとして発表された12分にもおよぶ大作「Skyfall」は、どこからどう聴いても“あの”HELLOWEENでした。“あの”というのは……アンディ・デリスが歌えば今のHELLOWEENだし、マイケル・キスクが歌えば往年のHELLOWEENに戻るし、カイ・ハンセンが歌えば最初期のHELLOWEENっぽくなる……そう、どの時代のHELLOWEENにも行き来できる便利な体制になったおかげで、こうした長尺曲に複数の要素を詰め込み、聴き手を飽きさせない工夫がより効果的に活用できるようになったわけです。

ですが、そういったトリッキーな仕掛けはアルバムの中ではこの1曲ぐらい。オープニングを飾る「Out For The Glory」から始まるアルバムは、各楽曲ごとにメインソングライターの色がくっきりと表れており、それぞれの曲で過去40年近くにおよぶHELLOWEENの歴史を総括するような作りになっています。だから、『KEEPERS OF THE SEVEN KEYS』期を思わせる正統派メタルもあれば、『MASTER OF THE RINGS』(1994年)以降の世界観を踏襲した楽曲、さらにはモダンな味付けが施された近年の楽曲の延長線上にあるナンバーも存在する。そういった意味では、ひとつの方向に向かって各ソングライターがカラーを寄せていくのではなく、各ソングライターのカラーを最大限に活かした“各々が思い描くHELLOWEEN像”をプロデューサーが整えてひとつの作品としてまとめ上げたというのが正しいのかもしれません。

プロデュースを手掛けたのは、『THE DARK RIDE』(2000年)以降すべてのアルバムに携わるチャーリー・バウアファイントと、PINK CREAM 69やUNISONICでアンディやカイ、マイケル・キスクと活動をともにし、現在はMAGNUMに在籍するデニス・ワード。チャーリーが関わることで、音の質感やまとめ方は近年のHELLOWEEN的ですが、それでも最近の作品にはなかったテイストも随所に感じられるので、そのへんはデニス(もちろん、カイやキスクも)の手腕によるものも大きいのかな。個人的にはここ10年くらいのアルバムは数回聴いて満足してしまうことが多かったのですが、今作はそのカラフルさも相まって、今のところ何度リピートしても新たな発見がある1枚として、かつてないほどに楽しめています。そういった意味でも、本作は先にも触れたようにHELLOWEENというバンドの歴史を現在進行形で総括する良作ではないでしょうか。

全12曲/65分というボリューミーな内容(限定盤は「Pumpkins United」に新曲3曲を加えたボーナスディスク付き。トータル16曲で80分超え!)なので、今後もじっくり時間をかけて楽しみたいと思います。

 


▼HELLOWEEN『HELLOWEEN』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / MP3

 

2021年6月16日 (水)

GARBAGE『NO GODS NO MASTERS』(2021)

2021年6月11日にリリースされたGARBAGEの7thアルバム。日本盤未発売。

新作アルバムとしては前作『STRANGE LITTLE BIRD』(2016年)から実に5年ぶり。その間に「No Horses」(2017年)や、X(X JAPANではなく、ロス出身のパンクバンド)のジョン・ドゥ&エクシーン・セルベンカをフィーチャーした「Destroying Angels」(2018年)といったアルバム未収録の新曲を発表しています。

初期から一貫した“インダストリアル経由のオルタナティヴロック”は本作でも健在。オープニングを飾る王道チューン「The Men Who Rule The World」を筆頭に、シャーリー・マンソン(Vo)の気怠いボーカルが乗った瞬間に「あ、GARBAGEの新曲だ!」と納得できる楽曲がずらりと並びます。デジタルパンクとまでは言わないものの、適度な疾走感を伴ったエレクトロテイストのガレージロック/パンクロックや、トリップホップ経由のムーディなミディアムチューン、尖った装飾が施されているものの実はエヴァーグリーンなポップチューンなど、リスナーが彼らに求める要素はすべて詰め込まれているように感じます。

一方で、時代に沿った変化や進化、革新的な要素といったものはあまり感じられず。80年代のNEW ORDERDEPECHE MODEを起点に、90年代のグランジやトリップホップを通過し、そのまま2000年代へと突入したものの、以降はほぼ固定されたスタイルを維持し続けているように思うのですが、このバンドの場合これでいいのかもしれません。もちろん、質感的にはモダンに仕上げられているので、古臭く感じるようなことは皆無なのですが。

まあとにかく。近作の中でも楽曲の作り込み度が非常に高く、何度聴いても飽きがこない。1作目『GARBAGE』(1995年)を除いて、彼らのアルバムって数日聴き込むと「しばらくいいや」と思えてしまうものが多かったのですが、今作に関しては今のところそれもなさそう。過去のいろんな作品の要素が随所に散りばめられているものの、実は今作って原点回帰でもあるのかな、という気がしてきました。思えば昨年でデビュー25周年(!)。途中、活動を止めた時期もありましたが、彼らがここまで長く続いていることって意外と奇跡なのかもしれませんし。

昨今の不安定な世相が反映された切れ味鋭い歌詞といい、バンドのあるべき姿を取り戻したように映るこのアルバム。しばらくGARBAGEのアルバムを聴いていないというリスナーにこそ、手にしてもらいたい1枚です。

なお、本作のCD限定盤およびデジタル版には、アルバム未収録曲8曲を収めたボーナスディスクが付属。こちらには先の「No Horses」や「Destroying Angels」に加え、デヴィッド・ボウイ「Starman」、パティ・スミス「Because The Night」の各カバーや、ブロディ・デイル(THE DISTILLERS)をフィーチャーした「Girls Talk」、ブライアン・オーバート(SILVERSUN PICKUPS)参加の「The Chemicals」など、過去にリリースされたアルバム未収録楽曲などをまとめて楽しむことができます。ちょっとしたコンピレーションアルバムとしても通用する内容なので、アルバム本編の合間に聴くことで双方より長く楽しめるはずです。

 


▼GARBAGE『NO GODS NO MASTERS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月15日 (火)

DANNY ELFMAN『BIG MESS』(2021)

2021年6月11日にリリースされたダニー・エルフマンの2ndソロアルバム。日本盤未発売。

80〜90年代にOINGO BOINGOのフロントマンとして活躍すると同時に、『バットマン』(1989年)や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)、『ミッション:インポッシブル』(1996年)、『メン・イン・ブラック』シリーズなどの数々の映画音楽を手掛けてきたダニー。純粋なるソロアルバムは『SO-LO』(1984年)以来、実に37年ぶりとなります。

Anti-Records/Epitaph Recordsから発表された本作は、全18曲/約72分におよぶ大作。自分はまだCD未購入のため、ストリーミングサービスを通じて本作に触れているのですが、前半8曲と後半10曲がそれぞれDISC 1、DISC 2と分割されているので、ある種コンセプチュアルなまとめかたをされているようです。

レコーディングにはジョシュ・フリース(Dr)やスチュ・ブルックス(B)、ロビン・フィンク(G)、ニリ・ブロシュ(G)、ウォーレン・フィッツジェラルド(G)など、その筋では著名なミュージシャンが参加。さらに多数の映画音楽/スコアを手掛けてきたダニーらしくオーケストラや女性クワイアも大々的にフィーチャーした、アヴァンギャルドかつドラマチックな1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Sorry」の時点でおわかりかと思いますが、ボーカルの淡々とした歌唱のわりにバックトラックの攻めっぷり&エモーショナルさが半端ない。ストリングスなどの生音とインダストリアル調のエレクトロニックサウンドもどちらか一方が強すぎるということなく、絶妙のバランス感で成り立っており、そこから生まれる不思議な浮遊感が非常に気持ち良いんですね。「In Time」のような楽曲は、ボーカルこそなければ映画のサウンドトラックとして成立してしまいそうなテイストですものね。ただ、そこにこの淡々としたボーカルが乗るからこそ、なんとも言えない味わい深さが生まれるわけで、やっぱりダニーの歌なくしてこれらの楽曲は成立しないことも理解できるはずです。

全編にわたり激しさを追求するような音楽ではないからこそ、エッジの効いたサウンドが効果的に活きる。「Everybody Loves You」のような楽曲はまさにそのお手本のような1曲で、ここで本作の魅力の一端が見出せるのではないでしょうか。

長尺かつ情報量の多い作品なので、先にも触れたようにDISC 1、DISC 2と分割された前半・後半をそれぞれ1枚ずつじっくり聴き込んでいくのもありだし、「それでも俺は作者の意図するものどおりに楽しみたい!」という方はこの独創的な音世界にじっくり浸ってみるのもいいでしょう。実際、僕自身もまだすべてを反芻できているわけではないので、今後も時間をかけてじっくり吟味していきたいと思います(それもあって、現在CDを注文中)。

参加アーティストの名前にピンときた人、90年代以降のオルタナティヴメタルやインダストリアルロック、エクスペリメンタルロックを通過してきた人なら必ず引っかかるものがある傑作。2021年に必ず聴いておくべき1枚です。

 


▼DANNY ELFMAN『BIG MESS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月14日 (月)

GO AHEAD AND DIE『GO AHEAD AND DIE』(2021)

2021年6月11日にリリースされたGO AHEAD AND DIEの1stアルバム。

GO AHEAD AND DIEは元SEPULTURA、現在はSOULFLYKILLER BE KILLEDCAVALERA CONSPIRACYなどで活動するマックス・カヴァレラ(Vo, G)が、自身の息子イゴール・アマデウス・カヴァレラ(B, G, Vo)と新たに立ち上げたプロジェクト。「初期CELTIC FROSTやパンクから大きな影響を受けたデスメタルとスラッシュメタルのミックス」をテーマに、非常に80'sテイストが強いオールドスクールなエクストリームミュージックを展開しています。

レコーディングにはカヴァレラ親子に加え、ザック・コールマン(Dr/KHEMMIS、BLACK CURSE)が参加。マックスがボーカルを担当していること、またギターのリフワークが“スラッシュメタル以降”を彷彿とさせるものがあることから、90年代以降のデスメタルの流れを汲むテイストも感じられますが、全体的にはそのタイトなサウンドプロダクションやストレートなプレイも手伝って、80年代末のハードコア+メタル=クロスオーバー的な色合いも見え隠れします。

曲によっては初期グラインドコアっぽさもありますし、そういった意味ではスラッシュメタルというよりもパンクの色のほうが強く感じられます。マックスがこれまでに携わったバンド/プロジェクトの中では、もっともプリミティブなパンク/ハードコアなサウンドかもしれませんね。

楽曲的には実はあれこれチャレンジしているものの、いかんせんマックスのボーカルがいつもどおりなこともあり(かつクセが強いせいで)、全体を通して一本調子に聴こえてしまうのが難点かな。息子のイゴールも頑張っているんですが、突出した個性も感じられず(この手のスクリームで個性を際立たせるのは難しいですけどね)。新しいことに挑戦しているのに、いつも通りに思えてしまうのは非常にもったいないなと。

悪くはないです。いや、悪いわけがない。だけど、プラスアルファやこのプロジェクトだけの強みが見つけられない。マックスが関わる作品はすべて大歓迎というリスナーなら文句なしに楽しめる1枚だと思いますし、エクストリームメタルシーンにおいても非常にユニークな1枚なのは間違いありません。けど、個人的にはもうひとクセ欲しかったなと思いました。

こういう「親子でバンド作ったけど、親の個性が強すぎて子供の影が薄い」バンド、ほかにどういうのがありましたっけ?(VAN HALENのウルフギャングは途中加入なので除く) 日本だとこういう主張の強い親って誰がいたかなと思いまして……そんなことがふと気になってしまう1枚でした(内容とまったく関係ないですが)。

 


▼GO AHEAD AND DIE『GO AHEAD AND DIE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月13日 (日)

GASTUNK『VINTAGE SPIRIT,THE FACT』(2021)

2021年6月9日にリリースされたGASTUNKの4thアルバム。

新作音源としては、2度目の再始動時直後にリリースしたEP『DEADMAN'S FACE』(2010年)以来実に11年ぶり、オリジナルアルバムとしては解散前に発表した『MOTHER』(1988年)から33年ぶり(!)。BAKI(Vo)、TATSU(G)、BABY(B)に新メンバーKEI(Dr)を加えたラインナップで制作されました。

その情報を知ったとき、最初は『DEADMAN'S FACE』のときに感じた「22年ぶりの新曲!」という衝撃には及ばないものの、いざアルバムに触れたときの驚きと感動は『DEADMAN'S FACE』以上のものがありました。それくらい“あの”GASTUNKの新作であり、次のステージへと到達したGASTUNKの“新たな姿”が感じられる1枚だったのです。

『MOTHER』というコンセプチュアルな傑作で臨界点を突破した結果、終焉の道を選んだのは、大人になった今なら重々理解できます(当時高校生だった自分には「なんでだよ!?」という不満しかなかったけど)。だからこそ、それを超える次作を作るのは非常にハードルが高かったのではないかと勝手に想像していました(それが、これだけの時間を要した理由なんだろうな、とも)。けど、オープニングを飾る「Black Forest」から「Seventh Heavens Door」へと続く冒頭の構成を聴いただけで、そんなこちらの邪推が馬鹿馬鹿しくなるくらい、誰もが納得する1枚を作り上げた……そう実感しました。

BAKIが歌い、TATSUがギターを弾き、BABYがベースを弾き、そしてこの3人が楽曲制作に携われば自然と従来の“GASTUNKらしさ”が表出するのは当たり前のこと。ただ、それだけでは単なるセルフパロディになってしまう。そこに“これまでにありそうでなかった”テイストや、この33年間に蓄積されたミュージシャン/表現者としての経験、さらには新ドラマーKEIのセンスや個性が加わることで、過去の名作にも匹敵する正真正銘、問答無用の“GASTUNKのニューアルバム”が完成したわけです。

この感覚、もっとも近いのは……世代的なものもあるけど、やっぱりDEAD ENDの復活作『METAMORPHOSIS』(2009年)に触れたときに近いのかな。きっと若い世代には理解してもらえないだろうけど(苦笑)。

全14曲/66分と非常にボリューミーな内容で、すべてを反芻するにはもっと時間を要することになると思いますが、数回リピートした現時点では確実に「『MOTHER』の次のアルバム」であると認識していると同時に、「GASTUNKという名の新しいバンドのデビューアルバム」というフレッシュな感覚で楽しめている。また、ここ33年の間に誕生しては消えていったいくつものハード&ヘヴィなジャンルや、そこから派生したバンドたちの亡霊たちも見え隠れする。そういった者たちが達成させたくてもできなかったことが、この1枚に凝縮されている……そんな気もするのです。

デジタルリリースもなければ、ストリーミング配信もない。現状CDのみでしか聴くことができない1枚。だからこそ、CDを購入してじっくり聴き込んでほしい傑作アルバムです。

 


▼GASTUNK『VINTAGE SPIRIT,THE FACT』
(amazon:国内盤CD / 国内限定盤CD

2021年6月12日 (土)

KISS『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』(2021)

2021年6月11日にリリースされたKISSの最新ライブアルバム。日本盤は7月14日発売予定。

KISSが新たに立ち上げた集金企画 オフィシャル・ライブ・ブートレッグ・シリーズ“OFF THE SOUNDBOARD”。その第1弾で2001年3月13日に行われた東京ドームでの日本公演の模様が、余すところなく音源化されました。数々のライブアルバムを発表しているKISSですが、日本公演は一度も音源化されていなかったので、ファンとしてはうれしい限りです。

オフィシャル・ブートレッグと謳っていますが、そのサウンドはよくあるライン録りをそのまま音源化したものとは異なり、しっかりミックス(と歓声の被せ)が施されています。なので、過去のライブアルバム同様の音源同様のクオリティで楽しめるはずです。

このライブは当初、『KISS THE FAREWELL TOUR』と銘打って2000年11月に開催予定だったもの。その際にはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(Vo, G)、ピーター・クリス(Vo, Dr)のオリジナルメンバー4人で来日予定でしたが、すったもんだがあり、気付けば4ヶ月後へと延期され、さらにはピーターが抜けてエリック・シンガーに交代されていました。そのへんはライブ開催当時の執筆したライブレポートが残っているので、そちらが詳しいかと(このライブ盤発売が決まってから、同記事へのアクセスが急に増えています。ここがアーカイブの良さかな。にしても、こういうサイトも長く続けるものですね)。

エース・フレーリーを含む編成ではこれが最後の日本公演であり、そういった意味でも貴重な音源と言えるのかもしれません。実際、セットリストも「Talk To Me」といったレア曲が含まれていますしね。あと、エリックが復帰したことが影響してか、オリメン解体以降の楽曲……「I Love It Loud」「Heaven's On Fire」「Lick It Up」「I Still Love You」といったヘヴィメタル期の楽曲が復活したのも、このライブの特筆すべきポイントでしょう。エースがギターを弾く「Heaven’s On Fire」や「Lick It Up」……非常に貴重です。

ポールの日本語混じりのMCも思う存分楽しめますし、エリックの歌う「Black Diamond」もいい味出してるし(意外と好きなんですよね、エリック版「Black Diamond」も)、映像がないと何が何やらのエースのギターソロやジーンのベースソロ、さらにはエリックのドラムソロもしっかり残されており、20年ぶりに2時間10分の完全版ライブを追体験できるはずです。あの日、会場に足を運んで「最後にもう一度KISSを観れた!」と歓喜した方、1年半前の“最後の”来日公演に足を運んで「何回フェアウェルツアーやるんだよ!」と御立腹した方(笑)も、ご祝儀として 記念としてぜひCDを手元に置いてみてはいかがでしょう。なお、当方はこの4月にAmazonで輸入盤を予約したものの、なぜか6月末到着予定ということで、先にストリーミングで散々楽しませてもらっています。

 


▼KISS『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月11日 (金)

MAMMOTH WVH『MAMMOTH WVH』(2021)

2021年6月11日にリリースされたMAMMOTH WVHの1stアルバム。

MAMMOTH WVHは2020年10月に急逝したエディ・ヴァン・ヘイレンの実子であり、末期VAN HALENのベーシストでもあるウルフギャング・ヴァン・ヘイレンのソロプロジェクト。昨年11月に配信リリースされたオリジナル曲「Distance」が同名義での初作品となりましたが、今作はそれに次ぐフルアルバムとなります。

レコーディングは米・カリフォルニアに構えるVAN HALEN所有の5150 Studioにて実施。ウルフギャングはベースのみならず、歌やギター、ドラムなどすべてのボーカルパフォーマンス&楽器演奏を自身ひとりでこなし、プロデュースのみマイケル“エルヴィス”バスケット(ALTER BRIDGEINCUBUSSLASHcoldrainなど)に任せるという、まさにソロプロジェクトの名にふさわしい1枚に仕上がっています。

正直、親の七光りでここまで来た感が否めなかったウルフギャングですが、このアルバムを聴くとしっかり偉大な親から音楽を学び、いろんな才能を身に付けていたんだなと感心させられます。まず、その楽曲やサウンドはモダンなハードロックといった感じで、VAN HALENとはかけ離れたものがあります。なので、オールドファンはそこに関してあまり期待しすぎないほうがいいでしょう。

ただ、どの曲も非常にバラエティに富んだもので、歌も演奏もそつなくこなしている感が強い。それこそFOO FIGHTERSから暑苦しさを取り除くとこうなるんじゃないか?っていう、パワーポップとガレージロックとハードロックの中間といったバランス感が保たれており、適度なサイケ感と泣きメロ要素も散りばめられており、日本人の耳にも優しい。いや、むしろこれはアメリカ人よりも日本人向けじゃないかしら。そんな気がします。

アルバム本編ラストを飾るサイケな「Stone」のみ6分半の大作ですが、それ以外はすべて3〜4分とコンパクト。このへんのバランス感にも非常に優れており、ソングライターとしての非凡さは父親譲りかな。もしこの才能が、のちのVAN HALENで活かされていたら……と思ったのですが、VAN HALENでは出る幕もなかったんだろうな。なにせ周りが我が強い父親と、我が強い叔父と、我が強いフロントマンですし(苦笑)。

なお、日本盤のみボーナストラック「Talk & Walk」を追加収録。その前に収録されているのが先の「Distance」(一応ボーナストラック扱い)なんですが、できることなら収録順を逆にしたほうがよかったのでは? それくらい、「Talk & Walk」がアルバム本編のノリを引き継ぐ良曲だけに、ちょっとチグハグさが否めません。

どれも80点以上の優れた楽曲ですが、1曲だけでも95点レベルのキラーチューンがあったら完璧なデビューアルバムだったんだけどなあ。破綻することなく終始安心して聴ける1枚だけに、ちょっと優等生すぎたかしら。そこは次作へ向けた及第点ですね。

 


▼MAMMOTH WVH『MAMMOTH WVH』
(amazon:国内盤CD / MP3

 

2021年6月10日 (木)

MIDNITE CITY『ITCH YOU CAN'T SCRATCH』(2021)

2021年6月4日にリリースされたMIDNITE CITYの3rdアルバム。日本盤は同年5月26日に先行発売。

MIDNITE CITYはイギリス・ノッティンガム出身の5人組ハードロッバンド。フロントマンのロブ・ワイルド(Vo/TIGERTAILZ)とピート・ニューデック(Dr/EDEN'S CURSE、ex. GRIM REAPERなど)を中心に結成され、2017年のデビュー以降2枚のアルバムを発表し、2019年には初来日公演も実現させています。

BON JOVIDEF LEPPARDWHITESNAKEなどを中心に、80年代半ばから後半に世界の音楽シーンを席巻したHR/HMブーム、とりわけ“ヘアメタル”とカテゴライズされるスタイル(ヴィジュアル面およびサウンド)を現代に踏襲するMIDNITE CITYの楽曲&サウンドは、懐かしさ以上に新鮮味を覚えるものがあります。ロブ・ワイルドの所属するTIGERTAILZ(彼らこそ“80年代のUSヘアメタルに対するUKからの回答”と言われていましたが)ほどケバさやキワモノ感はなく、むしろBON JOVIやDEF LEPPARDが世界に向けて旅立っていく前後の、クールさと野暮ったさが同居した“ダサカッコよさ”を存分に楽しめる1枚だと思います。

楽曲およびサウンドのキラキラ具合はBON JOVIの出世作『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)前夜といった感じだし、そこにDEF LEPPARD的な重厚コーラスが加わることで豪華さも伝わる。能天気というよりは若干の翳りが見えるマイナーキーの楽曲群は、特にこのバンドの魅力、個性を際立たせるに十分な役割を果たしており、パワーバラードに頼りすぎないバランス感もベスト(ミディアムテンポの「Fire Inside」もバラードと言えなくもないけど、唯一“らしい”のは「If It's Over」。これがまた良いんですわ)。個人的にはかなりレベルの高い1枚と言えます。

ロブのボーカルがクセが弱く、どこかWARRANT時代のジェイニー・レインを彷彿とさせるのも、また良し。この手のバンドって、どこかジョン・ボン・ジョヴィ的なハスキーボイスが多くなりがちだけど、これくらいサラッとしているほうが聴きやすいし、飽きが来なくていいんですよ(あくまで個人的観点ですが)。

唯一難点を挙げるとすれば、ギターの主張が弱いことかな。耳に残るスペシャルなギターリフもないし(キーボーディストを含む編成だと若干後ろに引いてしまいがちなのかな)、ギターソロも平均的。曲が良いだけに、あと一歩なんですよね。

まあとにかく。軽く80点超えの良作。2021年に80'sヘアメタルってどうなの?という声もわかりますが、良いものは時代を超えて良いんです。まずは聴いてみてほしいな。

 


▼MIDNITE CITY『ITCH YOU CAN'T SCRATCH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月 9日 (水)

ATREYU『BAPTIZE』(2021)

2021年6月4日にリリースされたATREYUの8thアルバム。日本盤未発売。

前作『IN OUR WAKE』(2018年)から2年8ヶ月ぶり、2014年の再始動後3作目のオリジナル作品。結成時からのフロントマンであるアレックス・ヴァルカッツァス(Vo)脱退を経て、ドラム&クリーンボーカル担当だったブランドン・サーラーが新たなフロントマンとして全ボーカルを担当した最初のアルバムでもあります。要するに、ATREYUにとっては新たに生まれ変わった、心機一転の1枚なわけです。

アレックスのスクリームによるカッコ良さが光っていた初期作と比べて、近年はスクリームの比重が低くなっており、特に前作はメロディアスに歌い上げる王道路線へとシフトしていたので、この新作を聴いても特に大きな変化は感じられないかもしれません。ブランドンの歌声もアレックスほどザラつきがなく、スルスルっと耳に入ってくる心地よいボーカル(ちょっと意地悪な言い方をすれば没個性かなと)。デジタルエフェクトを多用したこのモダンなメタルサウンドには十分合っていると感じました。また、スクリームはベースのマーク・マックナイトが担当しており、こちらも要所要所にアクセント程度で登場するのみ。バランスとしては悪くないのではないでしょうか。

2〜3分前後とコンパクトにまとめられた楽曲群はどれもわかりやすく耳馴染みの良いものばかりで、アグレッシヴな作風の中に「Dead Weight」のようなパワーバラードも用意されており、アレンジや音の質感こそ2010年代後半以降のそれですが、目指す方向性は意外と古き良きヘヴィメタル的なものなのかな、と受け取りました。だからこそ、我々のようなオッサンにも非常に受け入れやすいものがある。昨今のメタルコア事情に疎い同世代のリスナーにもオススメしやすい、入門編的1枚と断言させてください。

とはいえ、2000年代の彼らに魅せられた身としては、この正統派スタイルはちょっと寂しくも感じられ。そりゃあ20年近くにわたり初期のようなアグレッションを維持するのは難しいでしょうし、音楽家としても日々成長しているので、作品ごとにアップデートしたい気持ちも重々理解しています。そういう個人的感傷を切り離すのはなかなか難しいところですが、そこを抜きにすれば本作は平均点以上のヘヴィメタルアルバムだと言えるでしょう。

なお、本作にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス、TRIVIUMのマット・ヒーフィー、BLINK-182のトラヴィス・バーカーがゲスト参加。ATREYUの新たな船出に華を添えているので、これらの楽曲も必聴です。

 


▼ATREYU『BAPTIZE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月 8日 (火)

BURNING WITCHES『THE WITCH OF THE NORTH』(2021)

2021年5月28日にリリースされたBURNING WITCHESの4thアルバム。

新たなフロント・ウーマンであるローラを迎えて制作した前作『DANCE WITH THE DEVIL』(2020年)から1年1ヶ月という非常に短いスパンで届けられた本作。おそらくこのコロナ禍で活動が停滞してしまうのを恐れ、こうした強硬手段に挑んだのでしょう。基本的には前作の延長線上にある作風と言えますが、今回はオペラシンガーをゲストに迎えるなど新たなトライも見受けられ、的が絞られ始めている印象を受けます。

これまで同様、DESTRUCTIONのシュミーアやV.O.プルヴァーのほか、今回は同じくDESTRUCTIONのギタリスト・ダミアも制作に参加。ローラの歌声も2作目ということもあり、聴き手側も慣れ初めており、前作で少々感じられた違和感がほぼ払拭されています。また、スラッシュメタル/スピードメタルのスリリングさとミドルテンポの重厚感をバランスよく織り交ぜた前作までの作風から、今作では後者側に比重を強め始めています。もちろん、速い曲は豊富に用意されているのですが、今作ではその“見せ方”に大きな変化が感じられるのです。

それは、これまで続いた「短いイントロダクション〜ファストナンバー」というオープニング構成が解体され、今作ではトラッドミュージック風のインスト「Winter's Wrath」からミディアムテンポのパワーメタル「The Witch Of The North」、ミドル&ファストが交互に訪れる「Tainted Ritual」という新たな構成が組まれていることからもご理解いただけるでしょう。

また、前任シンガーのセイレナよりもアクが強く聞こえるローラの歌声は、実はアップチューンよりもドスの効いたミドルヘヴィナンバーのほうが似合っており、緩急に富んだドラマチックな「Flight Of The Valkyries」や「Nine Worlds」、オペラボーカルをフィーチャーしたパワーバラード「Lady Of The Woods」、オーソドックスなハードロック「For Eternity」などはローラが歌ってこその楽曲だと言えるでしょう。そういった意味では、シンガーの特性に合わせて方向性が変化するのは、バンドを長く続ける上で必要な舵取りであり、本作ではその変化と本格的に向き合った過渡期1枚と言えなくもありません。短いスパンで2作立て続けにアルバムを制作した裏側には、実はそういった事情も含まれているのかもしれませんね。

となると、本当に意味で評価されるべきなのは続く5作目のアルバムということになるのでしょうか。そこでどう化けるかで、この4作目の評価もさらに変わってくるような気がします。なので、(良いアルバムだとは思うものの)本格的な良し悪しは次作発表時まで持ち越したいと思います。

なお、アルバムのたびに恒例となったカバー曲。今回はSAVATAGEの名クラシックチューン「Hall Of The Mountain King」にチャレンジしていますが、このアルバムの作風にもぴったりなセレクトで、MANOWARチックな漢気あふれるアレンジ含めなかなかの仕上がりです。

 


▼BURNING WITCHES『THE WITCH OF THE NORTH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月 7日 (月)

FLOTSAM AND JETSAM『BLOOD IN THE WATER』(2021)

2021年6月4日にリリースされたFLOTSAM AND JETSAMの14thアルバム。日本盤未発売。

新たなドラマーにケン・メアリー(HOUSE OF LORDSIMPELLITTERIBAD MOON RISINGなど)を迎えた前作『THE END OF CHAOS』(2019年)発表後の2020年秋、今度はマイケル・スペンサー(B)が脱退。代わりに2016年、2019年のツアーでサポート参加したビル・ボディリー(CONTRAIAN、INHUMATUS、TOXIKなど)が正式加入することとなりました。

2年4ヶ月というスパンで届けられた本作は、内容的にも評価的にも大成功を収めた前作『THE END OF CHAOS』を見事な形でフォローアップする良作。テクニカルなスラッシュメタルというよりはパワーメタル的要素が強まった前作の流れを汲む作風は、間違いなく多くのHR/HMリスナーから好意的に受け入れられるはずです。

エリック“AK”ナットソン(Vo)のパワフルなハイトーンボーカルは、前作ではブルース・ディッキンソンっぽいなと感じられたものの、今作ではどことなくジェフ・テイト(ex. QUEENSRYCHE)にも似た癖が見受けられます。仰々しいメロディアス・パワーメタルにはこの歌唱が非常に似合っており、スピード感の強い冒頭4曲(「Blood In The Water」「Burn The Sky」「Brace For Impact」「A Place To Die」)はもちろんのこと、地を這うようなケン・メアリーのツーバスドラムが気持ちよく響くミディアムナンバー「The Walls」、ダーク&プログレッシヴなパワーバラード「Cry For The Dead」のような曲でこそこの歌唱が映えるのですよ。最高ったらありゃしない。

また、ギタリスト2人(マイケル・ギルバート&スティーヴ・コンリー)のプレイもツボを押さえたメタリックなもので、先の「The Walls」では冒頭&エンディングにドラマチックなツインリードを入れてくるもんですから、知らず知らずのうちに拳を高く掲げちゃってますよね。「Too Many Lives」の冒頭にフィーチャーされた不穏なツインリードから、激烈ヘヴィリフへと続く構成もカッコよすぎます。

もはやスラッシュメタルバンドというよりは王道ヘヴィメタルバンドへと先祖返りしたと言えなくもない、現在のFLOTSAM AND JETSAM。この進化はどこか80年代末以降のMETAL CHURCHと重なるものがありますが、一度見つけた進路を、信念を持ち続け走りる様は今のFLOTSAM AND JETSAMのほうが一枚上手かも。第一、ここまでの良作を2作連続で届けてくれているのですから、最高ったらありゃしない(二度目)。

そんな全HR/HMファン必聴の1枚が、今回日本リリースの予定がないというのも寂しいものです。まあ、昨今の事情を考えれば致し方ないのかもしれませんが……。だからこそ、もっと多くの人たちの間で大々的に評価されてほしい1枚です。

 


▼FLOTSAM AND JETSAM『BLOOD IN THE WATER』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月 6日 (日)

ELECTRIC PYRAMID『ELECTRIC PYRAMID』(2021)

2021年5月28日に日本先行リリースされたELECTRIC PYRAMIDの1stアルバム。海外では6月18日発売予定。

イギリス出身のELECTRIC PYRAMIDは2010年代後半から活動を活発化させ、アルバム発売に先駆け2019年夏には『SUMMER SONIC』で初来日を実現。当時は4人編成だったようですが、現在はオル・ビーチ(Vo)、クリスチャン・メンドーサ(G, Key, Vo)、ライナス・テイラー(G, Vo)、ルイージ・カサノヴァ(B, Vo)、クリス・ブライス(Dr, Per, Vo)の5人編成で活動しているようです。なお、ボーカルのオルはQUEENのマネージャーとして知られるジム・ビーチの実子とのこと。

プロデュースを手掛けたのはジョン・コーンフィールド(MUSEOASISロバート・プラントなど)。最近はGRETA VAN FLEETDIRTY HONEYのように、20代の若者たちが60〜70年代のロッククラシックを現代によみがえらせるようなサウンドを奏でることが増えていますが、このELECTRIC PYRAMIDもまさにその系譜に含まれる存在と言っていいでしょう。ただ、先の2バンドがアメリカ出身なのに対し、今回紹介するELECTRIC PYRAMIDはイギリスのバンド。このアルバムではロッククラシックを下地にしつつも、ブリットポップ以降のUKロックの香りが随所に感じられ、それこそMUSEやKULA SHAKER、初期のKASABIANあたりが好きなリスナーにも引っかかるような要素がしっかり備わっています。

正直、フロントマンのオル・ビーチの歌声はそこまで個性が強くなく、ぶっちゃけ魅力を感じませんが、奏でられているサウンドは適度なプログロック感とブリットポップ色満載で、あの時代をリアルタイムで通過したリスナーなら嫌いになれないのではないでしょうか。かつ、60年代末から70年代にかけてのUKロックのオリジネーターたちの影響も随所に感じられる。個人的には80年代のニューロマンティック以降のテイストとも重なるところがあり、まったく新鮮味はないものの不思議と嫌いになれないんですよね。

ただ、ELECTRIC PYRAMIDというバンドならではのオリジナリティはまだまだこれからといったところで、今は「自分たちの好きな音楽を、自分たち流にミックスしました」止まり。ここから2枚目、3枚目とアルバムを重ねていくうちに確たるオリジナリティを確立できるのか否か……気になるところです。

正直、ここからどう化けるのか、あるいはこのまま消えてしまうのか……神のみぞ知るといったところですが、「これ!」というキラーチューンが生まれたときに一気に“山”は動くのかもしれませんね。なかなか思うように来日もできない昨今ですし、音源だけ発表して終わりという可能性もゼロではありませんが、できることなら息の長い活動を続けて“らしさ”を見つけ出してもらいたいものです。

 


▼ELECTRIC PYRAMID『ELECTRIC PYRAMID』
(amazon:国内盤CD / MP3

 

2021年6月 5日 (土)

THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』(2020)/『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』(2021)

2020年7月31日にリリースされたTHUNDERMOTHERの4thアルバム。日本盤未発売。

THUNDERMOTHERはスウェーデン出身の4人組女性ロックバンド。AC/DCを思わせるシンプルなハードロックンロールが特徴で、これまでに3枚のアルバムを発表しています。2020年にはAFM Recordsとワールドワイド契約し、この『HEAT WAVE』で活動ベースを一気に広げることになる……予定でした(コロナ禍さえなければ、ね)。

ソロアーティストとしても活動するデンマーク出身のギタリスト、セーレン・アンデルセンをプロデューサーに迎えて制作された本作。一聴すればサウンドやギターリフそのものはAC/DCを彷彿とさせるハイエナジー・ハードロックですが、ハスキーな女性ボーカルが乗ることで新鮮さが伝わります。僕自身はこのアルバムで初めてTHUNDERMOTHERの作品に触れたのですが、うん、これは大好物です。

序盤こそAC/DC直系……というか、まんまな音なのですが、ハードロックバンドのパワーバラードと呼ぶにふさわしい「Sleep」あたりからその様子が変化し始めます。リフそのものはAC/DCそのものな「Free Ourselves」などはあるものの、北欧バンドらしい爆走ロックンロール「Driving In Style」に「Somebody Love Me」、ハードブギー「Mexico」、メロディアスなミディアムナンバー「Purple Sky」といったバラエティに富んだナンバーがアルバムに多彩さを与えています。

女性バンドに求められる繊細さは「Sleep」や「Purple Sky」などから少々感じられるものの、基本的には性別を超越したリアル・ロックンロールを堪能できる1枚。おそらく過去のアルバムをさかのぼっても、(「Sleep」や「Purple Sky」のような曲があるかどうかは別として)全体的な基本路線はさほど変わらない、いや、変わりようのないバンドだと思うので、基本的には最新作から入るのがベストかなと。特に本作は後半の彩り豊かさが印象に残るので、気になる方はぜひ本作から手に取ってみてください。

 


▼THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

 

なお、本作は2021年5月21日に10曲入りボーナスディスクを追加&アートワークを一新したデラックス・エディションを、CD&デジタルでリリース。ボーナスディスクにはアルバム未収録の新曲のほか、「Driving In Style」「Dog From Hell」のアコースティックバージョンのほか、D-A-Dのイェスパー・ビンザー(Vo)をフィーチャーした「Sleeps」アコースティックテイク、「Thunderous」「Hellevator」のライブテイク、そしてポンタス・スニッブ(BONAFIDE)、ドレゲンBACKYARD BABIES)がゲスト参加した「Rock'n'Roll Heaven」といったレアトラックを楽しむことができます。特にアルバム未収録のスタジオ音源およびアコースティックバージョンは、アルバム本編同様に必聴の内容なので、もしフィジカルでの購入を計画している方はぜひこちらをご購入いただけると幸いです。僕もこっち買いましたから(ジャケもカッコいいし)。

今年の開催も延期となってしまった世界最大級のメタルフェス『Wacken Open Air』。2022年開催予定の同フェスに、このTHUNDERMOTHERの出演も決定しております。それまでにもう1枚くらいスタジオアルバムが出ていそうな気がしないでもないですが、本作や次のアルバムを通じて一気に名が知れ渡りそうな、そんな北欧ガレージロック/ハードロックファン必聴のバンドです。

 


▼THUNDERMOTHER『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2021年6月 4日 (金)

SAXON『INSPIRATIONS』(2021)

2021年3月19日にリリースされたSAXONのカバーアルバム。日本盤は同年4月21日発売。

スタジオアルバムとしては2018年の『THUNDERBOLT』以来、実に3年ぶり(通算23枚目)。その間にビフ・バイフォード(Vo)キャリア初ソロアルバム『SCHOOL OF HARD KNOCKS』(2020年)を挟んだので、そこまで空いた感覚はないですよね。

過去には「Set Me Free」(SWEET)、「Ride Like The Wind」(クリストファー・クロス)、「I Just Want To Make Love To You」(マディ・ウォーターズ)、「The Court Of The Crimson King」(KING CRIMSON)といった一貫性のないカバー曲をアルバムの中に放り込んできたSAXON。今回は基本的にバンドのルーツとなるクラシックロックの名曲を中心に選ばれており、クリストファー・クロスのときのような(良くも悪くも)衝撃は少ないかなと。アレンジも基本的には原曲に忠実で、メタリックというよりはハードロック的な側面が強いのかなという気がします。

「Immigrant Song」(LED ZEPPELIN)や「Evil Woman」(BLACK SABBATH)、「Speed King」(DEEP PURPLE)、「The Rocker」(THIN LIZZY)、「Problem Child」(AC/DC)あたりは当たり触りのない仕上がりだし(AC/DCは単なるモノマネだし、「Speed King」はギターソロでの熱の入れようが異常だし。笑)、「Bomber」(MOTÖRHEAD)も想定の範囲内。まあこうなるよな……と。

ストーンズ「Paint It Black」やビートルズ「Paperback Write」あたりは(出来の良し悪しは別として)SAXONなりの工夫が感じられます。特に後者は、不思議とクセになるものがあって、気づいたら何度かリピートしていました。

そんな中、本作最大の聴きどころはTOTOのカバー「Hold The Line」じゃないでしょうか。これは確実にルーツとかそういったものではなく、なんとなくクリストファー・クロスのときと同じ匂いを感じます。アレンジ的に80年代後半のSAXONを思い浮かべる色合いは、原曲の枠を思い切り飛び越えてはいないものの、これはこれでアリなんじゃないかと思えるものです。

ビフのソロアルバムでサイモン&ガーファンクルで知られる「Scarborough Fair」が取り上げられていましたが、あっちが思い切ったカバーだっただけに、本家SAXON側は思った以上の衝撃はなかったかな。どうせやるなら、キャリア44年のバンドがフォロワーたちの楽曲を解体するくらいの面白チャレンジがあってもよかったんじゃないかな。まあ、彼らが今それをやる必要はまったく感じられませんが……。

『THUNDERBOLT』が会心の一撃だっただけに、ちょっと肩透かしな1枚でした。あのテイストでカバーしたらよかったのにね。

 


▼SAXON『INSPIRATIONS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月 3日 (木)

OUR HOLLOW, OUR HOME『BURN IN THE FLOOD』(2021)

2021年5月28日にリリースされたOUR HOLLOW, OUR HOMEの最新アルバム。日本盤未発売。

OUR HOLLOW, OUR HOMEはイギリス・サウサンプトン出身の5人組メタルコアバンド。2015年頃からさまざまな音源を発表しておりますが、オリジナルアルバムは『HARTSICK』(2017年)、『IN MOENT // IN MEMORY』(2018年)に続く3作目のようです。

オープニングを飾るタイトルトラック「Burn In The Flood」が示すように、本作はメロディック・メタルコアを軸に、重低音とクランチを効かせたギターとスペーシーなサウンドメイクが印象に残る1枚。ラップメタルを通過したボーカルスタイルはどこか懐かしさを感じさせるものがありますが、全体を通じてUKメタルコアバンドらしさに満ちあふれた安心の内容と言えるのではないでしょうか。

近年はBRING ME THE HORIZONの世界的大躍進を筆頭に、ARCHITECTSの全英1位獲得など明るい話題の多い英メタル/ラウドシーンですが、その中でも彼らはちょっと特殊というか独特な香りが感じられます。それが先の“懐かしさ”にもつながるのですが、それは単にラップメタル以降というだけでなく、1〜2世代前のメタルコア……具体的に言えばFUNERAL FOR A FRIENDあたりの香りがすると言えば、なんとなくおわかりいわだけるでしょうか「Better Daze」なんてまさにその筆頭だし、「Blood」のようなアコースティックバラードが存在するのもなんとなくFFAFに通ずるところがあるし。そこにBRING ME THE HORIZON以降のモダンテイストを散りばめた、いわば英国産メタルコア史のハイブリッド的存在なんじゃないか……そんな気がしています。

だから、新作なのに「ずっと慣れ親しんできた」錯覚に陥るし、不思議と嫌いになれない魅力に満ちている。どこかモサいメロディもFFAF的だし、なのにキラキラしたスペーシーなアレンジはモダンという不思議な感覚もある。で、慣れ親しんできたものだったらすぐに飽きそうなところを、なんだかんだで何度も楽しめる。要は隙なく徹底的に作り込まれているんでしょうね。

また、本作では「Nerv」にオリ・ダンカンソン(THECITYISOURS)、「Remember Me」にRyo(Crystal Lake)、「Children Of Manus」にロキエ・キーオ(ALPHA WOLF)といったゲストシンガーが参加して華を添えています。特に「Remember Me」のカッコよさといったら……たまらんですね。

イギリスからまだまだこういうバンドの良作が定期的に届けられるあたり、アメリカのシーンに比べると依然ロック/メタル健在と思わずにはいられません。間違いなくOUR HOLLOW, OUR HOMEにとって最高傑作と断言できる本作が、高い評価を獲得することを願わずにはいられません。

 


▼OUR HOLLOW, OUR HOME『BURN IN THE FLOOD』
(amazon:MP3

 

2021年6月 2日 (水)

PAUL GILBERT『WEREWOLVES OF PORTLAND』(2021)

2021年6月2日に日本先行リリースされたポール・ギルバートの16thアルバム。海外盤は6月4日発売。

前作『BEHOLD ELECTRIC GUITAR』(2019年)からほぼ2年ぶりに届けられた本作は当初、昨年春にさまざまなミュージシャンとともにレコーディングを行う予定でした。しかし、コロナ禍のロックダウンによりすべてのスケジュールが保留に。その後も思うように動けない状況が続きましたが、ポールはほかの方法で制作を進められないかと模索、最終的にギターのみならず、すべての楽器を自身で演奏する手法で着手し、完成に至りました。

聴いていただいておわかりのとおり、本作はギターインストゥルメンタルアルバムです。しかし、ポールはこのアルバムの楽曲を制作する際、歌詞も一緒に作っています。そして、レコーディングではまずその歌詞を用いてボーカルをレコーディング。その後、メロディラインをギターで録り直す。それにより、ボーカリストとしての制約(声域など)を無視したメロディアレンジも可能になり、楽曲に幅を広げることができた。聴いていて気持ち良いメロディ作りは、こうした「もともとは歌モノとして制作が始まった」ことが大きいのかもしれませんね。

楽曲のタイプも実にさまざまで、冒頭を飾る「Hello! North Dakota!」はイントロこそQUEENブライアン・メイを彷彿とさせるギター・オーケストレーションを響かせるものの、楽曲自体はカントリーを通過したアメリカンパワーポップに通ずるテイストが存在する。いきなりの速弾きに圧倒される「My Goodness」も古き良き時代のロックンロールの香りが感じられるし、タイトルトラック「Werewolves Of Portland」のスリリングなアレンジはRACER-XやMR. BIGでのポールのスタイルを投影したものとなっている。以降もメロディアスさを重視しながら、随所にテクニカルさをフィーチャーし、変幻自在な楽曲アレンジからはポールのルーツ(主にQUEENやELO、KANSASあたりが思い浮かびますが、中にはブルースやジャズの香りが伝わってくるものも)を思う存分に楽しめる。ポール自身が歌う過去の作品はもちろん大好きですが、こういった「インストものなのに、歌モノ以上にポップ」な作品もたまには悪くないなと思わずにはいられません。

前作『BEHOLD ELECTRIC GUITAR』もインスト中心の作品でしたが、なぜこうも印象が異なるのか(もちろん前作は前作で気に入っています)。それは、ポールがすべての楽器をプレイすることで、ある程度やれることの幅が限定されたことも大きいのでしょう。ベースとなるドラムでできることが限定されることで、前作ほどテクニカルさに磨きがかかることなく、かつ仮の歌詞と歌メロが存在したことでポップさをキープすることができた。コロナ禍という偶然が重なったことで、本来生まれる予定のなかったアルバムかもしれませんが、ひとりの表現者として自身に課した制約がこういった良作を生み出すことになるなんて、ちょっと複雑な心境です。

なにはともあれ、言葉というファクターが存在しないぶん、ひたすら音の気持ちよさ、メロディの気持ちよさに集中できる稀有な1枚。HR/HMリスナー以外にも届いてほしい良作です。

 


▼PAUL GILBERT『WEREWOLVES OF PORTLAND』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年6月 1日 (火)

BLACK MIDI『CAVALCADE』(2021)

2021年5月28日にリリースされたBLACK MIDIの2ndアルバム。

名門Rough Tradeからリリースされた前作『SCHLAGENHEIM』(2019年)からほぼ2年というスパンで届けられた本作。今年1月に発表されたとおりメンバーのマット・ケルヴィン(Vo, G)がメンタルヘルスの不調でレコーディングを含むバンド活動から離脱しており、残されたジョーディ・グループ(Vo, G)、キャメロン・ピクトン(Vo, B, Synth)、モーガン・シンプソン(Dr)の3人に、ツアーメンバーのカイディ・アキンニビ(Sax)とセス・エヴァンス(Key)を加えた5人で本作を制作しています。

本作の原型は2019年の時点でほぼ完成していたようですが、そこから従来のジャムセッション型楽曲制作から離れ、上記の5人でより奇想天外な楽曲の詰め方を進めたとのこと。その結果……完全に“化け”ましたね。

正直、前作の時点では「う〜ん?」と判断に悩んだんです。ホンモノなのかハイプなのか……すごいのはわかるんだけど、素直に受け入れられない自分がいる。そのへんは前作のレビューからも浮き出ていますが、今作に関しては完全に抜けきっており、オリジナリティが確立されたんじゃないか。そんな気がしています。

冒頭の「John L」を聴くと、きっと誰もが「これって80年代のKING CRIMSONじゃん!」とツッコミそうな気がするのですが、そこにアフロビート的な躍動感と、フランク・ザッパ的な変態性をミックスすることで、なんとも形容し難いものに生まれ変わっている。以降の楽曲も静と動を反復しながら、前作とは一風ことなるアバンギャルドなサウンド&アレンジが展開されており、曲が進むごとにグイグイと引き込まれていく。「Diamond Stuff」あたりからはゴスや宗教音楽、さらにはジャズのテイストも感じられ、本当に一筋縄ではいかないんですよ。

じゃあ、本作でプログレ側に振り切ったのか?と問われると、実はそうでもないんじゃないかという気もしていて。だったら、前作の時点ですでにプログレだったもんなあ、と。むしろ本作で表現されているのは、プログレが前時代的な代物となり、ニューウェイヴ以降のポストロック・アーティストたちが新たな活路を見出した際に得たスタイルの延長線上にあるんじゃないか……そんな気がしてなりません。要するに、広意義でのプログロックということには違いありませんが。

もっと言うとこれ、ZAZEN BOYSっぽいなと……思った方、少なくないんじゃないでしょうか。

要所要所に強いクセが散りばめられているのに、アルバムラストを飾る10分もの対策「Ascending Forth」までするすると聴き進められてしまうのも、前作から大きく成長した結果なのでしょう。とにかくすごいアルバム、ありがとう。今回は素直に楽しみます!

 


▼BLACK MIDI『CAVALCADE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« 2021年5月 | トップページ | 2021年7月 »