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2021年7月

2021年7月31日 (土)

2021年6月のアクセスランキング

ここでは2021年6月1日から6月30日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↑●位)」の表記は、「更新日/2021年5月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:GASTUNK『VINTAGE SPIRIT,THE FACT』(2021)(※2021年6月13日更新/NEW!)

2位:KISS THE FAREWELL TOUR JAPAN 2001@東京ドーム(2001年3月13日)(※2001年3月25日更新/→2位)

3位:FLOTSAM AND JETSAM『BLOOD IN THE WATER』(2021)(※2021年6月7日更新/NEW!)

4位:HELLOWEEN『HELLOWEEN』(2021)(※2021年6月17日更新/NEW!)

5位:BLACK MIDI『CAVALCADE』(2021)(※2021年6月1日更新/NEW!)

6位:BUCKCHERRY『HELLBOUND』(2021)(※2021年6月23日更新/NEW!)

7位:FEAR FACTORY『AGGRESSION CONTINUUM』(2021)(※2021年6月19日更新/NEW!)

8位:ENUFF Z'NUFF『PEACH FUZZ』(1996)(※2021年6月20日更新/NEW!)

9位:MIDNITE CITY『ITCH YOU CAN'T SCRATCH』(2021)(※2021年6月10日更新/NEW!)

10位:KISS『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』(2021)(※2021年6月12日更新/NEW!)

 

11位:PAUL GILBERT『WEREWOLVES OF PORTLAND』(2021)(※2021年6月2日更新/NEW!)

12位:SAXON『INSPIRATIONS』(2021)(※2021年6月4日更新/NEW!)

13位:THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)(※2018年6月28日更新/↓1位)

14位:MOTLEY CRUE『THEATRE OF PAIN (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)(※2021年6月26日更新/NEW!)

15位:THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』(2020)/『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』(2021)(※2021年6月5日更新/NEW!)

16位:MAMMOTH WVH『MAMMOTH WVH』(2021)(※2021年6月11日更新/NEW!)

17位:HELLOWEEN『MASTER OF THE RINGS』(1994)(※2021年6月18日更新/NEW!)

18位:OUR HOLLOW, OUR HOME『BURN IN THE FLOOD』(2021)(※2021年6月3日更新/NEW!)

19位:PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』(1993)(※2021年6月18日更新/NEW!)

20位:GO AHEAD AND DIE『GO AHEAD AND DIE』(2021)(※2021年6月14日更新/NEW!)

 

21位:DANNY ELFMAN『BIG MESS』(2021)(※2021年6月15日更新/NEW!)

22位:METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』(1993)(※2021年6月23日更新/NEW!)

23位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓21位)

24位:ATREYU『BAPTIZE』(2021)(※2021年6月9日更新/NEW!)

25位:KISS『ROCK AND ROLL OVER』(1976)(※2021年6月20日更新/NEW!)

26位:NINE INCH NAILS『BROKEN』(1992)(※2018年10月5日更新/↓3位)

27位:DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』(2021)(※2021年6月25日更新/NEW!)

28位:GARBAGE『NO GODS NO MASTERS』(2021)(※2021年6月16日更新/NEW!)

29位:HELLOWEEN『UNITED ALIVE IN MADRID』(2019)(※2021年6月18日更新/NEW!)

30位:WHITE LION『MANE ATTRACTION』(1991)(※2021年6月21日更新/NEW!)

2021年7月のお仕事

2021年7月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※7月30日更新)

 

[WEB] 7月30日、「リアルサウンド」にてインタビューイングヴェイ・マルムスティーン、『パラベラム』で語る表現者としてのメッセージ「自分の中のアートを吐き出さないといけない」が公開されました。

[紙] 7月28日発売「Ani-PASS Plus #04」にて、22/7インタビュー(ユニット別3本)、Gothic×Luckの各インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 7月28日発売「別冊カドカワScene 08」にて、「気になるエンタメTOPICS」を執筆しました。(Amazon

[紙] 7月22日公開の映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」公式パンフレットにて、音楽担当・牛尾憲輔インタビューを担当・執筆しました。

[紙] 7月22日発売「CONTINUE」Vol.72にて、「ラブライブ!スーパースター!!」Liella!初イベント(5月開催)レポートを執筆しました。(Amazon

[WEB] 7月17日、「ひかりTV」にてインタビュー弓木奈於スペシャルインタビュー『乃木坂46弓木奈於とやみつきちゃん』放送開始記念が公開されました。

[WEB] 7月15日、「リアルサウンド」にてインタビュー大塚紗英、青春時代を救った音楽創作との歩み 表現の根底にある葛藤と家族への思いを語るが公開されました。

[WEB] 7月12日、櫻坂46・日向坂46合同野外ライブ「W-KEYAKI FES.2021」オフィシャルレポートを執筆しました。「これからもお互い高みを目指していきたい」 櫻坂46・日向坂46による合同野外ライブ『W-KEYAKI FES.2021』終幕!など、各媒体にて公開中です。

[WEB] 7月11日、「ぴあ」にてインタビュー工藤晴香の来たる夏、新たな挑戦が詰まった初シングル『Under the Sun』を語るが公開されました。

[紙] 7月2日発売「日経エンタテインメント!」2021年8月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

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また、2021年6月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2106号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

YNGWIE J. MALMSTEEN『TRILOGY』(1986)

1986年11月4日にリリースされたイングヴェイ・マルムスティーンの3rdアルバム。日本盤は同年10月4日に先行発売。

RISING FORCE(YNGWIE J. MALMSTEEN'S RISING FORCE)名義で発表された前2枚とは異なり、本作は“YNGWEI J. MALMSTEEN”と個人名を打ち出してのアルバム。とはいえ、RISING FORCEであろうが何であろうが、どれもイングヴェイのワンマン体制のもと制作されたものなので、異なるのはジャケットに刻まれた名前だけ。あとはメンバーをすげ替えつつもやってることは一緒です。

前2作でボーカルを務めたジェフ・スコット・ソートが早くも離れ、新たにマーク・ボールズという隠れた才能の持ち主が参加。前作『MARCHING OUT』(1985年)ではマルセル・ヤコブ(B/TALISMAN、ex. EUROPEなど)が全面的に参加しましたが、今作では1stアルバム『RISING FORCE』(1984年)同様にイングヴェイがベースも兼務しています。なお、イエンス(Key)&アンダース(Dr)のヨハンソン兄弟は本作でも健在です。

全9曲中インストは2曲(「Crying」「Trilogy Suite Op:5」)のみ。それ以外はマークの圧倒的な歌唱力を活かしたメロディアスハードロックで占められており、どの曲も完成度が非常に高い。オープニングを飾る「You Don't Remember, I'll Never Forget」を筆頭に、「Liar」や「Queen In Love」など、70年代後半以降のクラシカルなハードロックをベースにしたネオクラシカル路線の楽曲群は耳馴染みの良いものばかりで、マークの歌唱スタイルなど含めてどこかロニー・ジェイムズ・ディオ時代のRAINBOWを彷彿とさせるものばかりなんですよね。ただ、ギターソロになるといきなり世界が一変し、モダンさに満ち溢れる。このバランス感こそ初期イングヴェイの真骨頂ではないでしょうか。

自身のギタープレイを前面に打ち出しまくったデビュー作、歌モノを強く意識し始めた2作目を経て、ついに初期のスタイルがここで完結(完成)した。イングヴェイ・マルムスティーンというアーティスト/ソングライターにとって最初に到達点が本作であり、それをよりわかりやすく噛み砕いたのが、当のRAINBOWメンバーだったジョー・リン・ターナー(Vo)を迎えた次作『ODYSSEY』(1988年)だったのかなと。改めて振り返ってみても、この中の流れは神がかっていますよね。

今のイングヴェイと比較してしまうのは少々酷ではありますが、あの時代だからこそ成し得ることができた奇跡の名盤。これが35年前の作品だと気づき愕然としていますが(苦笑)、時代を超越した傑作はいつ聴いても悪いわけがありません。

 


▼YNGWIE J. MALMSTEEN『TRILOGY』
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YNGWIE MALMSTEEN『PARABELLUM』(2021)

2021年7月23日にリリースされたイングヴェイ・マルムスティーンの通算22作目となるスタジオアルバム(カバーアルバム、インストアルバムなどを除くと通算18枚目)。

前作がカバー曲中心のブルースアルバム『BLUE LIGHTNING』(2019年)だったことを考えると、ハードロックアルバムはその前の『WORLD ON FIRE』(2016年)以来5年ぶり。今作もイングヴェイが歌い、ギターを弾き、ベースを弾き、ドラムのみ他プレイヤー名義(おそらくリズムマシーンかな)というワンマン体制で制作されたもので、『RELENTLESS』(2010年)以降の方向性がそのまま維持されています。

『RELENTLESS』以降、アルバム全体のミックスの酷さが取り沙汰されることの多いイングヴェイですが、その音質問題は今作でも引き続き(苦笑)。しかし、ここ10数年でこの音に慣れてしまうと、もはやこれがスタンダードのようにも思えてくるから不思議です。慣れなんでしょうか(いや、それじゃいけないんだけど)。

ただ、一方で楽曲の完成度、作り込み度は近作では最良/最高ではないかな。イングヴェイ曰く、コロナ禍で時間がありすぎたこともあり、作って録ったらしばらく聴き込んで、時間が経ってから手を加える的な制作方法だったらしく、『TRILOGY』(1986年)ぶりに余裕を持って制作に臨めたんだとか。だからといって、当の『TRILOGY』やその前後の作品と比較してしまうのはダメ。それでは本作を真の意味では楽しめません。あくまで2000年代後半以降のイングヴェイを軸に考えるのが基本です。80〜90年代は切り離してください。

イングヴェイのギタープレイも気持ち丁寧さが復調しているんじゃないでしょうか。それも先の時間的余裕が関係しているのかなと。締め切りに追われることなく、心に余裕を持って制作に臨めたのは10代以来だって、当のご本人がインタビューでおっしゃっていたので、信じることにします。それもあってか、ボーカルも気持ち……うん、味だね味。

全10曲中ボーカルナンバーが4曲のみというのは寂しいところですが、最初の『RISING FORCE』(1984年)もそれくらいだしね。あ、切り離して考えなくちゃいけないんだった(苦笑)。

全体的に余裕が感じられず作風ということもあってか、ここ10年の彼のアルバムの中ではもっともポジティブに楽しめました。それもこれも、きっとイングヴェイ本人にインタビューしていろいろ話を聞くことができたことが大きかったから、かな? イングヴェイらしいクドさをだいぶカットして読みやすくした形になっていますが、ぜひ合わせて読んでいただけるとうれしいです。

 


▼YNGWIE MALMSTEEN『PARABELLUM』
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2021年7月30日 (金)

DREAM THEATER『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』(2011)

2011年9月13日にリリースされたDREAM THEATERの11thアルバム。日本盤は同年9月7日に先行発売。

2010年9月にマイク・ポートノイ(Dr)が脱退し、バンドは企画色の強いドラムオーディションを実施。数々の強豪を抑えて正式メンバーの座を勝ち取ったのが、過去にスティーヴ・ヴァイのサポートや後期EXTREMEなどに在籍した経験を持つマイク・マンジーニ。そして、ポートノイの脱退から1年という短期間で届けられたのが、Roadrunner Records移籍3作目に当たる今作でした。

前作『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』(2009年)で10作目、そしてポートノイのリーダー体制最後のアルバムという区切りを経て新編成で臨んだ11作目は、まるでバンド何度目かのデビューアルバムのようでもあり、ブレイク作となった2作目『IMAGES AND WORDS』(1992年)の再来とも言えるような作風・内容でした。

せっかくマンジーニという名手を獲得したにもかかわらず、ミックス状態はドラムが若干引っ込み気味というチグハグさに、最初こそ戸惑いを隠せませんでしたが(マンジーニが加入間もないこともあり、そこまで強く主張できなかったのかなと)、楽曲の良さは近作では随一ではないかと言えるほど。もっと言ってしまえば、本当に『IMAGES AND WORDS』並みにわかりやすい楽曲が並ぶ、バランス感に優れた内容なのです。

3rdアルバム『AWAKE』(1994年)以降のモダンヘヴィネス路線は若干後退し、耳に残りやすい歌メロと複雑ながらもわかりやすさを重視したアレンジを大切にしたことから、前作にあった重苦しさはまったく感じられず。全9曲で77分という長尺ながらも最後まで飽きずに楽しめる作り込みは、過去10年を振り返っても見当たらないんじゃないかと思えるほど。だんだんと高音が厳しくなり始めていたジェイムズ・ラブリエ(Vo)の声域を把握しつつも、メロディの動きがしっかり感じられる構成もさすがだなと思いました。

ポートノイが確立させたDTらしい個性を踏まえつつ、マンジーニらしい圧倒的なプレイが思う存分楽しめる「Outcry」を筆頭に、演奏面も文句なしに素晴らしい楽曲ばかりで、これでリズム面のミックスがもう少しシャープでアタックの強いものだったら200点満点だったのに……そんな惜しさを残しつつ、それでもなお完成度の高さを感じさせるのは、そもそもの基準値が高すぎるという事実の表れかなと。とにかく、後期DTが自身の過去の偉業を見つめ直し、再スタートを切った記念すべき1枚。プログレハードやプログメタル初心者にもオススメの良盤です。

 


▼DREAM THEATER『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』
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DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』(2021)

2021年7月23日にリリースされたDREAM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年7月21日に先行発売。

本作は今年6月に発売された『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』に続く、オフィシャル・ブートレッグシリーズの第2弾。2011年発売の11thアルバム『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』を携えたワールドツアー(2011〜12年開催)から、東京公演の音源を含むベストセレクト・ライブテイク集となっています。

実は本作、2013年にファンクラブ限定でダウンロード配信されていたのですが、CDやアナログ盤などのフィジカルリリースはこれが初めて。僕も今回のリリースで初めてこの音源に触れましたが、なかなか興味深い感覚で向き合うことができました。

アルバム『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』は、バンドの創設メンバーのひとりマイク・ポートノイ(Dr)脱退を経て、マイク・マンジーニ(Dr/スティーヴ・ヴァイEXTREMEANNIHILATORなど)を迎えた現編成での最初のスタジオ作品。一時なドラム世界最速記録の持ち主として知られたマンジーニが加わったDTがどんな変化を迎えるのか、当時もこのアルバムはツアーにはかなり注目が集まったと記憶しています。

そんなツアーを総括するような音源集、しかもジャパンツアーの音源を含むとあって、個人的にもリリース前から非常に楽しみにしていました。収録地は2011年4月12日の米・フェニックス公演、同年7月19日のイタリア・テルアビブ公演、7月24日の英・ロンドン公演、10月7日のカナダ・モントリオール公演、10月26日の米・オースティン公演、2012年4月24日の東京・渋谷公演(SHIBUYA-AX)、同年7月7日のオースティン公演、7月19日の米・ニューヨーク公演と比較的バラティに富んだもの。全13曲と比較的少ないように映りますが、そこはDTのこと。これでもCD2枚組、トータル2時間超えの長尺作品なんですよ(笑)。だって、「The Great Debate」は14分超え、「The Count Of Tuscany」なんて21分超ですからね!

本作は通常のライブアルバムの感覚で制作されたものとは少し異なります。例えば、1曲目にいきなり「Under A Glass Moon」が配置されているのですが、この曲は同ツアーでアンコールラストに用意されることが多かった1曲。実際、本音源でも最後にライブの終演を思わせるMCが残されています。要するにこれ、同ツアーの様子を再現するというよりは、マンジーニのプレイに焦点を当てて、かつバンドとしてのグルーヴ感を提示することに徹した内容なわけです。じゃなければ、13曲という限られた収録曲の中に7分近いドラムソロをまるまる入れませんし、そこからインスト「YtseJam」へとつなげたりしませんから。ジェイムズ・ラブリエ(Vo)の声の調子が良い音源を選んではいるものの、歌はメインではありません(だったら、いわゆる代表曲をもっと豊富にセレクトしますしね)。

というわけで、本作はある程度バンドのことを熟知したコアファン向けアイテムかな。あとは、自身も楽器を嗜むという方向け。個人的にはヘッドフォンやイヤホンなどでじっくり楽しんでもらいたい、妙技満載の作品集です。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』
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2021年7月29日 (木)

SLIPKNOT『ANTENNAS TO HELL』(2012)

2012年7月23日(UK/USは24日)にリリースされたSLIPKNOT初のグレイテストヒッツアルバム。日本盤は同年7月25日発売。

2010年5月にポール・グレイ(B)が急逝するものの、バンドは初期メンバーのドニー・スティール(G)をサポートベーシストとして迎え、2011年夏の『Sonisphere Festival』からライブ活動を再開。2012年8月には主催イベント『Knotfest』を初開催し、その健在ぶりを証明することになります。

時系列的に考えると、このベストアルバムは『Knotfest』初開催にあわせて制作されたといっても過言ではありません。ポールを欠いたバンドが次に進む上でのインターバルを考えても、『ALL HOPE IS GONE』(2008年)に続くオリジナルアルバムをすぐに制作するよりは、ここでコンピ盤を出してひと区切りつけるというのは、バンドを長く続けていく上でも必要不可欠なトピックになるでしょうし。

また、これは結果論ですが、ジョーイ・ジョーディソンも2013年にバンドを脱退することを考えると、続くオリジナルアルバム『.5: THE GRAY CHAPTER』(2014年)の前に本作を出しておくことは必須だったのかなと。メンバーチェンジによる変化がどうしても生じてしまいますし、結果やっぱり出してよかったんでしょうね。

さて、内容に関してですが、特に目新しさはありません。シングルとして既発だった「My Plague」のリミックスバージョン(映画『バイオハザード』サントラ収録)や「Vermilion」のテリー・デイトによるリミックスがアルバム初収録になったほか、ライブ映像作品『DISASTERPIECES』収録の「The Heretic Anthem」「Purity」が音源化されたことくらいが大きなトピックで、ここでしか聴くことができない未発表曲などは皆無。つまり、オリジナルアルバムをすべて持っている人には無用な産物と言えるのかもしれません。

しかし、そんなコアリスナーにとってスルーできないのが本作のデラックスエディション。2CD+DVD仕様で発表され本作、CDのDISC 2には2009年の『Download Festival』でのヘッドライナー公演がほぼ完全収録されているのです。同ライブの映像は2010年発売の2枚組映像作品『(sic)nesses』に完全収録されているものの、完全音源化はこれが初めて。ポール&ジョーイを含む編成の記録としても、またSLIPKNOTデビューから10年の節目を飾るタイミングの集大成としても、このライブはファン必聴の内容。映像のみならず、音源として所持しておきたいアイテムのひとつです。

また、特典DVDは『THE COMPLETE MUSIC VIDEOS』と称して「Spit It Out」から「Snuff」までのMV(別バージョン含む)と、「People = Shit」「Psychosocial」などのライブ映像を総括。こちらもファンならば手に入れておきたい代物ではないでしょうか。

『IOWA』(2001年)や『ALL HOPE IS GONE』の10周年デラックスエディションにもリリース当時の貴重な音源で構成されたライブアルバムが付属していますが、それはそれ。『9.0: LIVE』(2005年)を聴いたあとに手にするべきライブ関連のアイテムとしては、実は本作のデラックスエディションではないかと筆者は断言しておきます。

最後に。ジョーイ・ジョーディソンのご冥福をお祈りいたします。

 


▼SLIPKNOT『ANTENNAS TO HELL』
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SLIPKNOT『9.0: LIVE』(2005)

2005年11月1日にリリースされたSLIPKNOTのライブアルバム。日本盤は同年11月2日発売。

ライブ映像作品やオリジナルアルバムのデラックス盤付属CDでのライブ音源発表は数あれど、SLIPKNOTの正式なライブアルバムは今のところ本作のみ。3rdアルバム『VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)』(2004年)リリース後に行われたワールドツアー(2004〜5年)からベストテイクを集めたもので、収録地が異なる音源をひとつのショウのような形で並べた構成となっています。

バンドとしても最初の不和を乗り越えて完成させた『VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)』とあって、勢いや荒削りさよりも安定感の強い演奏(およびそういったプレイが求められる楽曲)を楽しめる作品かなと。実際、アルバム同様にライブのオープニングを飾る「The Blister Exists」や「Before I Forget」「Vermilion」「Pulse Of The Maggots」など、スピードよりも重さやグルーヴを重視した楽曲が前作『IOWA』(2001年)以上に増えたことで、のちの“らしさ”をほぼ確立させていますし。そういった意味でも、SLIPKNOT最初の集大成を示す作品がこのライブアルバムなのかなと思います。

ポール・グレイ(B)&ジョーイ・ジョーディソン(Dr)を含むデビュー時からの黄金期ラインナップによるライブ音源が残されたという点においても、本作は非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。特にこのアルバムにはジョーイのドラムソロも含まれていますし。終盤の「The Heretic Anthem」をはじめとした怒涛の展開(特に「Duality」「Spit It Out」「People = Shit」の流れ)は今聴いても本当にシビレるものがあり、映像がなくてもアガリっぱなしですよ。

SLIPKNOTというと視覚的側面でのエンタメ性(メンバーのヴィジュアル、ライブにおける演出など)を取り沙汰される機会が多いですが、こうやって音源のみで表現されることで彼らのライブ力/演奏力の高さを改めて実感することができるはずです。

現在では初期4作(およびポール&ジョーイ在籍時)を総括するグレイテスト・ヒッツ『ANTENNAS TO HELL』(2012年)が存在するのでアレですが、初期はこのライブアルバムがベスト盤的役割を果たしてくれました。そういった意味でも、個人的には重要な作品だったりします。YouTubeの普及やスマホによるライブ撮影の一般化、さらに映像作品が安価で入手できるようになった今、ライブアルバムにどれだけの価値があるのか正直わかりませんが、それでもコンピレーションアルバム以上に好きなんですよね、ライブアルバム。むしろ、ライブアルバムを1枚も作っていないロックバンドは信用できないというか。本作はそんな自分の思いにしっかり応えてくれる、大切な1枚です。

 


▼SLIPKNOT『9.0: LIVE』
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2021年7月28日 (水)

METAL CHURCH『CLASSIC LIVE』(2017)

2017年4月28日にリリースされたMETAL CHURCHのライブアルバム。本作の日本盤単品リリースは現在まで実現しておらず、代わりに最新オリジナルアルバム『DAMNED IF YOU DO』(2018年)デラックス盤にボーナスディスクとして付属。

本作は2016年に発表したマイク・ハウ(Vo)復帰作『XI』を携えたツアーにて披露された、1stアルバム『METAL CHURCH』(1984年)から5thアルバム『HANGING IN THE BALANCE』(1993年)までの楽曲からセレクトした9曲に、3rdアルバム『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)収録の「Fake Healer」再録バージョン(ゲストボーカルにQUEENSRYCHEのトッド・ラ・トゥーレが参加)を加えた10曲で構成。まさに“CLASSIC”の名に相応しい内容となっています。

内訳的には下記のとおり。

1st『METAL CHURCH』(1984年):M-1
2nd『THE DARK』(1986年):M-5、M-6
3rd『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)M-8、10
4th『THE HUMAN FACTOR』(1991年):M-2、4、9
5th『HANGING IN THE BALANCE』(1993年):M-3、7

『THE HUMAN FACTOR』からの楽曲が最も多く、『BLESSING IN DISGUISE』からのライブテイクが「Badlands」のみというのが不満っちゃあ不満ですが、マイク加入前の『THE DARK』から「Watch The Children Pray」「Start The Fire」のマイク歌唱バージョンを楽しめるとう点ではお得感が強いかなと。せっかくならもっと曲数を増やしてほしかったな、と思うのですが、当時のツアーでは旧曲をこれくらいしかやっていなかった可能性も大なので、まあ仕方ないのかな。ほかにも良い曲、たくさんあるんですけどね。

今のMETAL CHURCHの姿をライブ音源を通じて体験するというよりは、過去の名曲群を今のライブサウンドで聴くというくらいのスタンスなのかな。さすがにイマドキ、CDにライブ音源9曲+ボートラでスタジオ再録1曲はモノ足りなさすぎますよ。

そういう意味では『DAMNED IF YOU DO』のレビューにも書いたように、『DAMNED IF YOU DO』のオマケ程度でこのライブベストを楽しむのがもっとも正しい聴き方なのかな?という気も。あとは、2019年8月の25年ぶり再来日公演の余韻を味わったり、同ライブに行けなかったことを悔しがりながら聴くのもアリかと(笑)。

……なんてこと言って、実はそのライブがマイク・ハウ在籍時最後の来日になるとは、当時は思いもしませんでしたが……。

マイク・ハウの冥福をお祈りいたします。

 


▼METAL CHURCH『CLASSIC LIVE』
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METAL CHURCH『HANGING IN THE BALANCE』(1993)

1993年10月7日にリリースされたMETAL CHURCHの5thアルバム。日本盤は同年8月21日に先行発売。

Epic Records移籍第1弾アルバム『THE HUMAN FACTOR』(1991年)が前々作『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)同様に高評価を獲得したものの、湾岸戦争勃発の影響によるワールドツアー短縮、および不景気からくるレーベル内淘汰によりアルバム1枚で契約打ち切りとなってしまったMETAL CHURCH。そんな苦境にもめげず、新たにジョーン・ジェット運営のBlackhearts Recordsと契約(アメリカと日本のみ。ヨーロッパではSPV / Steamhammer Recordsと契約)し、2年半ぶりの新作を完成させます。

アートワークの酷さに聴く前から引き気味になるリスナーも少なくないでしょうが、中身は前作の延長線上にある王道パワーメタルの良作。インディーズ落ちによる予算削減も影響してか、音質はあまり良くないのですが、その生々しいサウンドがミドルヘヴィナンバーには不思議と合っているような気がします。

重めのミドルナンバーと疾走感の強い楽曲が交互に並ぶ序盤の構成は、過去2作のスラッシュメタルの影響下にある作風とは異なるものが感じられ、特にジェリー・カントレル(G/ALICE IN CHAINS)がリードギターで参加したオープニング曲「Gods Of Second Chance」や、BメロがJUDAS PRIEST的なアップチューン「Losers In The Game」(この2曲のタイトルの素晴らしさよ)、前作を経たことで生まれたシャッフル調のヘヴィチューン「Hypnotized」、当時のツアーでオープニングを飾った「No Friend Of Mine」、いかにも彼ららしいヘヴィバラード「Waiting For A Savior」という前半の流れは完璧に近いものがあります。

後半もBUDGIE「Breadfan」を彷彿とさせるイントロの「Conductor」から始まり、アメリカ人目線で原爆について歌われた「Little Boy」(コーラスでジョーン・ジェットもゲスト参加)、ザクザク刻むギターリフが気持ち良い「Down To The River」、緩急に富んだアコースティックギターの使い方が絶品な「End Of The Age」、終盤に向けての小休止的インスト「Lovers And Madmen」を経て突入するパワフルなミドルチューン「A Subtle War」という構成で締め括り。特に後半は7〜8分台の長尺曲「Little Boy」「End Of The Age」で魅せる構築美にうっとり。その合間に入るアップチューンがそれぞれタイプが異なることと相まって、前作とは異なる色彩美で聴き手を魅了します。

マイク・ハウ(Vo)のボーカルも良好ですし、これでレコーディング環境やミックスにもっとお金をかけていたら最強のメタルアルバムになっていたはずだし、彼らも解散という道を選ばずに済んだのでは……もちろん、今となってはの話ですが。

本作を携えたワールドツアーを2年にわたり続けたMETAL CHURCHでしたが、1996年にバンドは解散の道を選択。マイク・ハウは音楽業界を引退することとなるのでした(その19年後、マイクはMETAL CHURCH復帰とともに業界にカムバック)。

 


▼METAL CHURCH『HANGING IN THE BALANCE』
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2021年7月27日 (火)

OASIS『DON'T BELIEVE THE TRUTH』(2005)

2005年5月30日にリリースされたOASISの6thアルバム。日本盤は同年5月25日に先行発売。

リアム・ギャラガー(Vo)、ノエル・ギャラガー(Vo, G)、アラン・ホワイト(Dr)にアンディ・ベル(B/ex. RIDE、ex. HURRICANE #1)、ゲム・アーチャー(G/ex. HEAVY STEREO)という新編成で“第2のデビューアルバム”ともいえる前作『HEATHEN CHEMISTRY』(2002年)を制作し、大ヒットにつなげたOASIS。しかし、2004年に10年近くにわたりバンドに在籍したアランが脱退してしまい、早くも新編成が崩壊します。

バンドは新たなドラマーとして、リンゴ・スター(ex. THE BEATLES)の実子ザック・スターキー(THE WHOなど)をサポートメンバーに迎え、レコーディングに突入。プロデューサーのひとりにデイヴ・サーディー(HELMETSLAYERSYSTEM OF A DOWNなど)が参加した本作は一聴すると地味に映るものの、実は“『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995年)再び”という精神性と、“バンド”感を再び取り戻そうとする気概が入り混じった非常に意欲的な1枚ではないかと思うのです。

まず、アルバムの冒頭を飾る「Turn Up The Sun」がアンディの楽曲という時点で“ノエル一強体制”が終焉したことを匂わせているし、さらにアンディはもう1曲「Keep The Dream Alive」を提供している。ゲムも単独で書いた「A Bell Will Ring」のほか、リアムとの共作「Love Like A Bomb」も用意。リアムも単独で「The Meaning Of Soul」「Guess God Thinks I'm Abel」を提供しており、ノエル楽曲はリードシングル「Lyla」(全英1位)や「The Importance Of Being Idle」(同1位)、「Let There Be Love」(同2位)など5曲にとどまっており、全キャリア中もっともノエル色の薄い1枚と言えるのではないでしょうか。

冒頭2曲が非常に地味なこともあり、リリース当時はあまり印象がよくなかった本作。実はアルバムとしての充実度は中後期でもっとも高い力作ではないかと確信しています。アンディ曲はHURRICANE #1色濃厚ながらも、リアムが歌うことでしっかりOASIS化しているし、ゲムの曲もしかり。そして、リアムが書いたアルバムの中で良いスパイスとなっており、OASISの新たな可能性をしっかり提示している。

この色彩豊かさ、“『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』再び”を無意識のうちに狙ったものだったんだろうな。きっとその想いは、ノエルではなくほかのメンバーが漠然としてイメージしていたものだったのかも……というのは言い過ぎでしょうか。

OASIS現役期間中で、個人的にはもっとも聴く頻度の低かったアルバムですが、実はここ5年くらいで一番リピートする機会が増えたのが本作。古き良きブリティッシュロック(ブリットポップに非ず)を2000年代にリバイバルさせ、かつ90年代半ばの自身をもう一度よみがえらせようとした挑戦の1枚。ぜひ偏見なしに触れてみることをオススメします。

 


▼OASIS『DON'T BELIEVE THE TRUTH』
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OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(2002)

2002年7月1日にリリースされたOASISの5thアルバム。日本盤は同年6月26日に先行発売。

前作『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000年)リアム(Vo)&ノエル(Vo, G)のギャラガー兄弟、アラン・ホワイト(Dr)というイレギュラーな編成で完成させたOASIS。アルバム完成後にはアンディ・ベル(B/ex. RIDE、ex. HURRICANE #1)、ゲム・アーチャー(G/ex. HEAVY STEREO)という“Creation Recordsオールスターズ”が参加して、ツアーを敢行します。

2001年秋から新体制で初のアルバム制作に突入したOASISは、バンドのセルフプロデュースのみならず、リアムやアンディ、ゲムも楽曲提供するなどバンドらしさをさらに強める結果に。アルバムは全英1位を獲得し、セールス的にも前作以上を記録。「The Hindu Times」(同1位)、「Stop Crying Your Heart Out」(同2位)、「Little By Little」(同2位)、「Songbird」(同3位)とヒットシングルも多数生まれました。

新編成で約1年にわたりツアーを重ねた結果、バンドとしてのまとまりの強さを確かなものとし、そこからアルバム作りに入ったことから前作以上にバンドのグルーヴ感が存分に楽しめる1枚と言えるのではないでしょうか。かつ、リアムのソングライターとしての成長がアルバムに広がりを与えており(本作では「Songbird」をはじめ3曲提供)、ゲム(「Hung In A Bad Place」)やアンディ(1分強のインスト「A Quick Peep」)はまだまだバンドへの貢献度は低いものの、ソングライターが4人に増えたことで初期3作とは異なる“OASIS第2章”の序章にふさわしい内容に仕上がったと言えます。

ノエルのソングライターとしての才能は相変わらずですが、多少“第2のデビューアルバム”を意識したのか、大人になったノエルが初期衝動を取り戻そうとしている感も伝わってくる。オープニングを飾るストレートな王道ロック「The Hindu Times」はまさにその象徴的な存在ではないでしょうか。と同時に、前作での実験もなかったことにせず、「Force Of Nature」で昇華させている。さらに、過去と次作以降をつなぐ「(Probably) All In The Mind」や「Better Man」も用意されており、ある意味ではバンド後期へと向けたもうひとつの過渡期的作品と言えなくもないのかな。

とはいえ、ロックバンドとしての躍動感と高揚感は満載だし、ガキンチョだった初期から大人の階段を登り始めたギャラガー兄弟の成長が窺えるという点でも魅力的な1枚ではないでしょうか(余談ですが、「(Probably) All In The Mind」のギターソロ、「Born On A Different Cloud」のスライドギター、「Better Man」のギター&バックボーカルでジョニー・マーがゲスト参加しています。UKロックファンはそこも聴きどころかなと)。

 


▼OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』
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2021年7月26日 (月)

HURRICANE #1『ONLY THE STRONGEST WILL SURVIVE』(1999)

1999年4月21日にリリースされたHURRICANE #1の2ndアルバム。

アンディ・ベル(Vo, G)がRIDE脱退後、アレックス・ロウ(Vo, G)らと結成したHURRICANE #1はブリットポップ末期の流れに乗って、デビューアルバム『HURRICANE #1』(1997年)は全英22位まで上昇。同作からは「Step Into My World」(同29位)、「Just Another Illusion」(同35位)、「Chain Reaction」(同30位)というヒットシングルも生まれました。

1998年には2ndアルバムに先駆けて新曲「Only The Strongest Will Survive」(同19位)、「Rising Sun」(同47位)をシングル発売。1999年に入ると来たる2ndアルバムからのリードトラックとして「The Greatest High」(同43位)が中ヒットし、続いて本作が待望のリリース。しかし、最高55位と前作ほどの成功を得ることができず、アンディの脱退とともにバンドは解散。アンディはその後、OASISにベーシストとして加入することになります。

これだけ聞くと失敗作のように思えるこの2ndアルバムですが、実際の内容は新基軸も見え隠れする意欲作に仕上がっており、完成度という点においては前作以上ではないかと思っています。イントロダクション&アウトロが用意された作風は若干コンセプチュアルでもありますが、そこまで明確なものがあるわけでもなく。ストレートなロックチューン「N.Y.C.」があったかと思えば、ブラスセクションを導入したエモーショナルなバラード「The Greatest High」、サプリングを大々的に導入したテイストは中期OASIS的でもある「Remote Control」、サイケデリックなダンストラック「Rising Sun」、多幸感に満ち溢れた「Only The Strongest Will Survive」など、1曲1曲のクセが強く、言ってしまえばアルバムとしてのトータル性は弱いかもしれません。

しかし、どの曲もしっかり練り込まれている(かつ、良い意味で遊び心に満ちている)からコンピレーションアルバム感覚で聴くことができる。トータルで70分超えという長尺さが唯一の難点ですが、それすらも2021年の耳で聴くとプレイリストのように楽しめるのではないでしょうか。

確かにここから10曲程度に絞って、50分程度にまとめていたら、もうちょっと聴きやすい1枚だったかもしれません。しかし、RIDEのラスト作『TARANLULA』(1996年)同様ここでもアンディの悪いクセが炸裂してしまい、結果としてバンドを終焉へと導いてしまったのかなと。ただ、RIDEのときと違うのは、今作のほうが1曲1曲のクオリティが上ということ。そこだけがせめてもの救いです。

にしても、このあとOASISにサポート扱いで加入することになるとは、当時はまったく予想もしていなかったので、最初にその事実を知ったときはひっくり返りました(誇張ではなく)。けど、彼があの当時やりたかったことを考えると、意外と納得できる選択だったんだなと、今なら理解できるんですけどね。

 


▼HURRICANE #1『ONLY THE STRONGEST WILL SURVIVE』
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RIDE『SMILE』(1990)

1990年7月に北米でリリースされたRIDEのコンピレーションアルバム。日本盤は1991年1月25日に、本国イギリスでは1992年11月23日にそれぞれ発売。

本作は1990年前半にイギリスで発表された2枚のEP(1月リリースの『RIDE』、4月リリースの『PLAY』)に収録された計8曲を1枚にまとめたもの。同年10月に発売を控えた1stフルアルバム『NOWHERE』を盛り上げるため、アメリカの所属レーベルSire Recordsが企画したものではあるのですが、当時『RIDE』や『PLAY』といったEPを入手できなかったファン、あるいはそこまで手が伸びなかったライト層にとって初期RIDEの重要な2作品を手軽に楽しめる、非常にありがたい1枚でした。

収録順も前半4曲が『RIDE』収録曲、後半4曲が『PLAY』収録曲がEPと同じ曲順で収められているので、ありがちな「コンピ盤ならではの曲順」みたいな煩わしさもなく、ストレートに楽しむことができるはずです。

「Chelsea Girl」を筆頭とした初期衝動の塊のような『RIDE』収録曲、「Like A Daydream」をはじめ『RIDE』から短期間で急成長を果たした『PLAY』収録曲の聴き比べはもちろん、USオルタナティヴロックの影響下にあるシューゲイザースタイルの確立など『NOWHERE』へと至るバンドの成長過程を知る上でも、本作は『NOWHERE』とあわせて聴くべきマストアイテムと断言できます。

個人的には「Like A Daydream」で初めてRIDEに触れたという思い入れもあって、M-5〜8に肩入れしてしまいがちですが、もちろん「Chelsea Girl」を筆頭としたM-1〜4も悪くない(という言い方は非常に上からですが。笑)。ただ、やっぱり思い入れ的には「Like A Daydream」があり、「Dreams Burn Down」があり、「Vapour Trail」があり、「Leave Them All Behind」へと到達するという流れが重要になってくるので、今でも後半をリピートする率が必然的に高くなってしまいます。

本作は全アルバムを聴いてから聴くのではなく、ぜひ『NOWHERE』とともに、いや、なんなら『NOWHERE』より先に聴いておいてほしい1枚かなと。オリジナルアルバムにはカウントされないものの、オリジナルアルバム以上に重要度の高い作品だと断言しておきます。

 


▼RIDE『SMILE』
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2021年7月25日 (日)

RIDE『TARANTULA』(1996)

1996年3月11日にリリースされたRIDEの4thアルバム。日本盤は同年4月10日発売。

前作『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)ではマーク・ガードナー(Vo, G)とアンディ・ベル(Vo, G)が半々ずつ曲を書き、かつそのバランス感も非常に優れたものであり、一介のシューゲイザーバンドから普遍性の強いロックバンドへと脱却する契機を作る成功を得ました。しかし、この頃からマークとアンディの均等なバランスが崩れ始め、続く今作ではアンディ主体でアルバム制作が進められます。

これはアンディのエゴが爆発したと受け取ることもできますが、裏を返せばマークがバンド(および音楽活動)に以前ほど熱を感じられなくなっていたとも言えるのかなと。事実、この『TARANTULA』というアルバムにはマークの楽曲は全12曲中2曲(うち1曲はスティーヴ・ケラルト&ローレンス・コルバートとの共作)と非常に少ない。となると、必然的にアンディが頑張るしかなかったと受け取ることもできます。

そのアンディ主導の楽曲ですが、前作で得た成功および自信が悪い方向に動いてしまった感があります。『CARNIVAL OF LIGHT』の延長線上にある楽曲も少なくありませんが、それ以上にアルバムを覆うのが当時にブリットポップ的な方向性。本作が制作された1995年というと、イギリスではOASIS vs BLURでメディアが盛り上がっていた頃。チャート上にもブリットポップ・ムーブメントの影響下から登場したバンドたちがその名を連ね、RIDEのようなバンドは早くもひと世代前の存在へと追いやられていたわけです。

そんな中で、アンディが「俺たちにだってそれくらいできる」と起死回生を狙ってアクションを起こしたのかどうかはわかりませんが、実際本作で聴くことができる楽曲群の多くが本来のRIDEらしさを見失った、ブリットポップ・ムーブメントに惑わされたどっちつかずの佳作ばかり。マークの携わった曲も『CARNIVAL OF LIGHT』の延長線上にあるものの精彩さに欠け、アンディの曲の影に隠れてしまっている。結果、完成したアルバムを聴いて愕然としたのではないでしょうか。

アンディはこのアルバムが発売される前にバンドからの脱退を発表。本作から唯一のシングル「Black Nite Crash」は全英67位と低調に終わり、アルバム自体も最高21位と過去イチ低い数字を残しています。そして本作発売から間もなくして、RIDEは解散を正式発表。1988年の結成から8年という短い命を終えることになります。

 


▼RIDE『TARANTULA』
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ANDY BELL『THE VIEW FROM HALFWAY DOWN』(2020)

2020年10月9日にリリースされたアンディ・ベルの1stソロアルバム。日本盤は同年10月7日に先行発売。

アンディ・ベルはご存知のとおりRIDEのフロントマン(Vo, G)のひとりで、RIDE解散中にはHURRICANE #1のギタリストを経てOASISのベーシスト、さらにはリアル・ギャラガー主導によるBEADY EYEのギタリストとして活躍してきたアーティストです。RIDE以外でボーカリストとして活躍することはなかったので、特にOASIS加入以降はアンディのソロアルバムを心待ちにしていたというオールドファンは少なくなかったはずです(筆者もそのひとり)。

このソロアルバムはもともと、2016年1月のデヴィッド・ボウイの死に触発されて制作がスタートしたんだとか。OASIS〜BEADY EYE時代の盟友ゲム・アーチャー(ex. HEAVY STREO)のスタジオでいくつかの楽曲を作り上げたものの、RIDEが再結成後初となるアルバム『WEATHER DIARIES』(2017年)制作に乗り出したこともあり、ソロアルバムは一度暗礁に乗り上げます。以降もRIDEは順調に活動を続け、2019年夏には再始動後2作目となる『THIS IS NOT A SAFE PLACE』をリリース。しかし、2020年に入ると新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンで、すべてがストップしてしまいます。

この空白の時間を通じて、アンディはソロアルバム制作を再開。ちょうど同年8月に50歳の誕生日を迎えることもあり、これまでの音楽人生を総括するような内容のアルバムを完成させます。

内容はRIDE的な要素も若干感じられるものの、かといってシューゲイザーかといわれるとまったくそんなことはなく。むしろRIDEの3作目『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)で見せたソングライターとしての成熟ぶりにさらに拍車がかかったかのような、非常に聴き応えのある楽曲群を楽しむことができます。

60年代のビートルズやTHE BYRDSを経て、80〜90年代のTHE STONE ROSESやSPACEMEN 3、THE LA'Sを通過したサイケデリック感とフォーキーさ、近年のアンビエント/エレクトロユニットGLOKを通じて得たテイスト、そしてRIDE以降の音楽活動で培った作曲家/表現者としての技量が遺憾なく発揮された楽曲の数々は、全体的に穏やかながらも安心して楽しめるものばかり。RIDEでやれそうでやれないであろう作風も少なくなく、人生の折り返し地点を追加したアンディのリアルが伝わる良作と言えるのではないでしょうか。

RIDEファンはもちろんのこと、特に『CARNIVAL OF LIGHT』や再始動後の2作を気に入っているリスナーなら、すんなり受け入れられるはず。もちろんRIDEにあるような派手さは皆無ですが、バンドの4分の1ならではのエッセンスは見事に健在。今後定期的にソロ作に着手するのかどうかはわかりませんが、できることなら節目節目でこのように内向的でサイケデリックな作品を届けてもらえるとうれしいかな。

 


▼ANDY BELL『THE VIEW FROM HALFWAY DOWN』
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2021年7月24日 (土)

YONAKA『SEIZE THE POWER』(2021)

2021年7月15日にリリースされたYONAKAの最新ミックステープ。日本盤未発売。

Asylum Records / Fueled By Ramenからリリースされた1stアルバム『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』(2019年)に続くまとまった音源集は2ndアルバムという形態ではなく、ヒップホップ系アーティストに多いミックステープでのリリースに。それもあってなのか、リリースもとは自主レーベルのCreature Recordsからの発売となります(このCreature Records、パリが拠点のデジタル音楽ディストリビューターBelieve流通であり、Asylum Records / Fueled By Ramenとの契約がすでに終了しているのか、あるいはデジタルリリースのみのリリース元なのか詳細は不明)。

2021年に入ってから「Seize The Power」「Ordinary」「Call Me A Saint」「Raise Your Glass」と新曲を配信し続けてきたYONAKA。これらは来たる2ndアルバムからのリード曲だと思われていましたが、結果はご覧のとおり。今回のミックステープにもこれらの既発4曲は収録されており、さらにFEVER 333をフィーチャーした「Clique」や、イギリスのシンガーソングライターであるバーンズ・コートニーとのコラボ曲「Anthem」など新曲4曲を加えた全8曲/全26分という短尺の作品集としてまとめられています。

方向性的には『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』の延長線上にあるものの、ロックバンド的スタイルは前作以上に希薄に。全体を通してヒップホップ色がより強まっているように感じられます。

また、オープニングトラック「Ordinary」をお聴きいただけばおわかりのように、全体的に攻撃性がさらに強まっているのも印象的です。ラップ調ボーカルや低音を効かせたビートが耳に残る「Seize The Power」、FEVER 333の色も強く加わったラップコア「Clique」などはその真骨頂。歌詞の面でも“4 Letter Words”が強調されており、作品の至るところから怒りや攻めの姿勢がダイレクトに伝わる構成となっています。

かと思えば、本作ラストを飾る「Anthem」はエレクトロニカ的な冷たさを持つバラードナンバー。テレサ・ジャーヴィス(Vo)とバーンズ・コートニーの歌声の対比も非常に興味深く、ゴスペルや讃美歌のように美しく響く世界観はそれ以前の7曲とは対極にあるものと言えるでしょう。タイプの異なるシンガー2人の対比、アルバム内での表現/スタイルの対比がこのような形で示されているあたりにも、YONAKAというバンドが今ノリにノッテいることが伝わってきます。

この後、正式な2ndアルバムが登場するのか、そしてそれはこのミックステープの延長線上にある作風なのか否か。いろいろ気になることはありますが、今はこの意欲作を素直に楽しみたいと思います。

 


▼YONAKA『SEIZE THE POWER』
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YONAKA『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』(2019)

2019年5月31日にリリースされたYONAKAの1stフルアルバム。日本盤未発売。

YONAKAは2014年にイギリス・ブライトンで結成された4人組バンド。彼らがその名を広めるきっかけとなったのが、2016年の音楽フェス『Radio 1's Big Weekend 2016』でのBBC Introducingステージのパフォーマス。これを機に、2017年には初のEP『HEAVY』を自主制作で発表し、2018年には英Asylum Recordsと契約して2枚のEP(『TEACH ME TO FIGHT』『CREATURE』)をリリースしたほか、BRING ME THE HORIZONのヨーロッパツアーにFEVER 333とともに帯同します。2019年に入ると新たにFueled By Ramenとワールドワイド契約を果たし、この1stアルバムを発表することとなります。

彼らのバンド名は日本語の「夜中」に由来しているとのことで、深夜が醸し出す独特な空気感やエネルギーはこのバンドにおける大きなモチーフになっているとのこと。また、そういった世界観と並行して、歌詞ではメンタルヘルスについて題材にすることも多く、このアルバムの多くの楽曲もそういったテーマが扱われているとのことです。

サウンド的には2010年代後半以降の主流であるモダンポップを下地にしたロックが軸になっており、要所要所でBMTH『amo』(2019年)以降を思わせるモダンなラウドロック的手法も見受けられます。ボーカル、ギター、ベース、ドラムというシンプルなバンド編成ながらも、音源ではドラムを打ち込みで表現したり、ギターがサウンドエフェクトの役割を果たしていたりと、必ずしもバンドサウンドにこだわっていないことも感じられる。というもの、このバンドの大きな武器となっているのが紅一点テレサ・ジャーヴィス(Vo)の歌声であり、このボーカルを最大限に活かすための良曲を最重要視した結果がこのアルバムなのだと考えたら、こういったテイストも非常に合点がいくわけです。

歌詞にこだわらなければ、意外とスルリと聴き進められてしまうポップな1枚ですが、どうせなら歌っている内容にもこだわっておきたいところ。残念ながら日本盤がリリースされていないことから正式な対訳は存在しませんが、ストリーミンスサービスの歌詞機能を使って、独自に翻訳してみるのもいいかもしれません。事実、どの曲もそれほど難しい表現は使われていないので(解釈の差異は多少あれど)、どんなことが歌われているか意外と理解することが可能かと思います。

なお、YONAKAはこの7月15日にミックステープと称した8曲入り最新作『SEIZE THE POWER』を発表したばかり。こちらもあわせてチェックしてもらいたいところです。

 


▼YONAKA『DON'T WAIT 'TIL TOMORROW』
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2021年7月23日 (金)

IRON MAIDEN『KILLERS』(1981)

1981年2月にリリースされたIRON MAIDENの2ndアルバム。

前作『IRON MAIDEN』(1980年)はデビューアルバムながらも全英4位という好記録を残しましたが、続く本作は全英12位とランクを落としてしまっています。しかし、一方で初の全米チャートへのランクイン(最高78位)などもあり、着実に進歩していることは数字からも伝わってきます。

今作からデニス・ストラットン(G)に代わりエイドリアン・スミス(G)が加入。また、今作を最後にポール・ディアーノ(Vo)が脱退するなど、早くも大きな転換期を迎えます。しかし、内容的にはそんないざこざがまったく感じられない、前作からの成長がダイレクトに伝わる良作に仕上がっています。

前作では全体的に勢いで押す曲(「Prowler」「Charlotte The Harlot」など)とプログレッシヴさを全面に打ち出す曲(「Phantom Of The Opera」「Transylvania」など)と二分された感がありますが、今作からはその個性により磨きをかけた感が伝わる。前作の流れを組むパンキッシュさは「Purgatory」程度に収められ、「Murders In The Rue Morgue」や「Another Life」のようなアップチューンはメタリックに整頓されている感がより強まっています。

一方で、オープニングを飾るドラマチックなインスト「The Ides Of March」から「Wrathchild」へ、「Genghis Khan」から「Innocent Exile」へと続く組曲的構成や、6分強におよぶプログレッシヴな「Prodigal Son」、前作における「Iron Maiden」的な展開を持つ「Drifter」などは現在まで続くスタイルのプロトタイプと言えるもの。ブルース・ディッキンソン(Vo)加入後に確立されるスタイルの処女作、といえばわかりやすいのかな。そういった過渡期的な立ち位置にあるアルバムだなと、個人的には昔から感じていました。それもあってか、初期の作品の中でも不思議と手に取る機会の少ない1枚だったんですよね。

ところが、最近久しぶりに聴いたら……面白いことに、1stアルバム以上に気に入ってしまった。周期的なものもあるんでしょうけど、今まで気づいていなかった魅力(暴力的な1作目よりコントロールされている感)にハマってしまったんです。実はこのへんの魅力って、プロデューサーをマーティン・バーチ(BLACK SABBATHDEEP PURPLERAINBOWWHITESNAKEなど)に交代したのも大きく作用しているのかなと。さすがです。

1 stアルバムと比べたらインパクトは若干弱いかもしれませんが、中身の濃さは前作以上。あなどれない1枚です。

 


▼IRON MAIDEN『KILLERS』
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2021年7月22日 (木)

DEE GEES『HAIL SATIN』/FOO FIGHTERS『LIVE』(2021)

2021年7月19日にリリースされたDEE GEESとFOO FIGHTERSのスプリットアルバム。日本盤未発売。

本作はRecord Store Dayの一環で制作されたもので、先に7月17日にアナログ盤みて発表。続いて、翌々日にデジタルリリースおよびストリーミング配信されています。前半5曲がDEE GEESのスタジオ音源(BEE GEESのカバー4曲とアンディ・ギブのカバー1曲)で、後半が FOO FIGHTERSの最新アルバム『MEDICINE AT MIDNIGHT』(2021年)収録曲のライブバージョンとなります。

このDEE GEESですが、すでにファンの皆さんはご存知の通りFOO FIGHTERSの覆面(?)ユニット。アー写は70年代のディスコムーブメントを意識した出立ちですが、先に公開された「You Should Be Dancing」ではFOO FIGHTERSの6人がそのまんまの姿でBEE GEESの名曲群をカバーしています。デイヴ・グロール(Vo, G)のファルセットボイスは聴いているうちにだんだんと笑えてきますし、唯一アンディ・ギブの「Shadow Dancing」のみ地声ボーカル。とはいえ、こちらも普段のボーカルとは毛色が異なるので、笑える感じはそのままなのですが(笑)。

にしても、よく練り込まれたアレンジだなと。随所でハードなサウンドも聞こえてくるものの、基本的には「ロックバンドがディスコサウンドを取り入れたら」以上の力の入れ具合。ボーカルワークに関しては頭が下がるくらいのこだわりようです。これ、カバーだからまだいいけど、オリジナル曲を作り始めたらどんなリアクションがあるんでしょうね。

で、後半のライブテイクですが、こちらはバンドがロサンゼルスに所有するStudio 606でのスタジオライブ音源。アルバム同様に女性ボーカルをフィーチャーしており、しっかり作り込まれたスタジオテイクとは異なる生々しさ、ライブならではのグルーヴ感などを思う存分堪能できます。前半(アナログでいうところのA面)からの落差はハンパないですが(笑)、カッコいいので良しとしましょう。

 


▼DEE GEES『HAIL SATIN』/FOO FIGHTERS『LIVE』
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FOO FIGHTERSはこのスプリットアルバムに先駆け、『MEDICINE AT MIDNIGHT』収録曲「Making A Fire」のマーク・ロンソンによる新バージョンも公開。もともとソウルフルな色合いの強い大らかなノリの楽曲でしたが、新バージョンは大らかさにさらなる磨きがかかり、レイドバックしたテイストはまさに60年代末のTHE ROLLING STONESそのもの。こちらもあわせてお楽しみいただけたらと思います。

 


▼FOO FIGHTERS『MAKING A FIRE (MARK RONSON RE-VERSION)』
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2021年7月21日 (水)

ANTHRAX『WORSHIP MUSIC』(2011)

2011年9月12日にリリースされたANTHRAXの10thアルバム。日本盤は同年9月14日発売。

2005年にスコット・イアン(G)&チャーリー・ベナンテ(Dr)にジョーイ・ベラドナ(Vo)、フランク・ベロ(B)、ダン・スピッツ(G)が加わったクラシック・ラインナップが復活しますが、2007年にダンが再脱退。ジョーイも再びバンドを離れ、ダン・ネルソンが短期間在籍したりジョン・ブッシュが復帰したりバタバタしますが、結局ジョーイが2010年にバンドに再復帰。ダンのポジションには2000年代前半に在籍したロブ・カジアーノ(のちにVOLBEATに加入)が加わることになります。

この新編成で『WE'VE COME FOR YOU ALL』(2003年)以来8年ぶりのオリジナルアルバム(新作音源としてはリメイク盤『THE GREATER OF TWO EVILS』以来7年ぶり)を制作。ANTHRAXとしては過去最長のスパンを経て届けられた新作となります。

ロブ&ジェイ・ラストン(THE DONNAS、STEEL PANTHERSTONE SOURなど)をプロデューサーに迎えた今作は、王道のクラシックANTHRAXアルバムに仕上げられています。楽曲のテイストとしては前作『WE'VE COME FOR YOU ALL』との共通点も見受けられるものの、ジョーイが歌うことで見事に80年代の空気感が復調している(ように感じられる)。実際、今でもライブで披露される機会の多い「The Devil You Know」や「Fight 'Em 'Til You Can't」あたりは2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)や3rdアルバム『AMONG THE LIVING』(1987年)に収録されていたとしても違和感がない仕上がり。と同時に、これをジョン・ブッシュが歌っていたとしたら前作や『STOMP 442』(1995年)に収録されていたとしても不思議じゃない気がする。要は初期から現在まで、時代時代で味付けに変化はあったものの、軸はまったく変わっていないという事実に気付かされるわけです。これぞボーカルマジック。

初期のような尖った部分はもはや感じられず、スラッシュメタルというよりは王道のヘヴィメタルアルバムに近い作風は、もしジョーイが90年代初頭、あのままバンドに止まっていたら5作目『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)に続く新作としてこんなテイストのアルバムが届けられていたのかも……けど、あの頃はまだ尖った部分が残っていたから『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)みたいなアルバムが完成したのか。とすると、やっぱり2011年にこのテイストの新作というのはあながち間違ってないのかな。みんな大人になったわけですね。

この正統派ヘヴィメタルアルバムはチャート上でも大健闘し、全米12位と『SOUND OF WHITE NOISE』(最高7位)に次ぐ成績を残しています。そして、続く『FOR ALL KINGS』(2016年)では最高9位とさらに数字を上げるわけですが、完成度的にはこちらのほうが上のような気がしないでもないかな。

 


▼ANTHRAX『WORSHIP MUSIC』
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2021年7月20日 (火)

TIMES OF GRACE『SONGS OF LOSS AND SEPARATION』(2021)

2021年7月16日にリリースされたTIMES OF GRACEの2ndアルバム。日本盤未発売。

TIMES OF GRACEは2000年代後半、KILLSWITCH ENGAGEのアダム・デュトキエヴィッチ(G, Dr)が当時元KILLSWITCH ENGAGEのジェシー・リーチ(Vo)に再び声をかけ、2人で始動させたサイドプロジェクト。2011年1月に発表された1作目『THE HYMN OF A BROKEN MAN』は全米44位まで上昇し、ジェシーの圧倒的なボーカル力と作詞家としての才能が再評価される結果へとつながりました。

その後、ジェシーがKsEに再加入したことでこのプロジェクトは活動停止することになりますが、今年デビュー作リリース10周年ということもあり、10年ぶりに再始動。アダムがギターとベースを担当し、新ドラマーとしてダン・グルシャク(ex. ENVY ON THE COAST)が参加する形で2作目を完成させます。

1作目はKsEのようでKsEではないという、不思議なバランス感のもとで成立していた作品でしたが、この2作目は(もちろんジェシーが歌い、アダムがギターを弾いている時点でKsEとの類似は避けられませんが、それでも)バンドとして新たな個性が確立されているような気がします。それはオープニングを飾る「The Burden Of Belief」から十分に強く伝わるものがありますし、以降もスクリームを随所に織り交ぜつつも“シンガー:ジェシー・リーチ”の個性が強く伝わるような楽曲/テイストでまとめられている。言ってしまえば、KsEの中にあるひとつの要素に特化した“Other side of KsE”なのかなと。

ダークでアーシーなメタルサウンドは、どこかLAMB OF GODあたりにも通ずるものも見受けられます。ですが、KsEのパブリックイメージから離れ、ジェシーの歌を生かす/活かすことに主軸を置いた作風は、2021年時点ではこれ以外考えられないということなのでしょう。個人的にはメインバンドとの差別化含め、非常にしっくり来るものがありました。

1作目は「ジェシー・リーチ、カムバック!」という側面が非常に強かったお祭り的作品だったことは否めません。また、もしかしたらアダムの中にはジェシーを呼び戻すためのテスト的な1枚だったのかもしれません。そういった意味では、今作こそがTIMES OF GRACE正真正銘の1stアルバムなのかもしれませんね。青(蒼)を基調とした絵画風ジャケットが音と見事にマッチしているというのも、非常に納得できるものがあります。このダークな世界観、クセになりますね!

 


▼TIMES OF GRACE『SONGS OF LOSS AND SEPARATION』
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2021年7月19日 (月)

ANDREW W.K.『I GET WET』(2001)

2001年11月3日にリリースされたANDREW W.K.の1stアルバム。日本盤は『アイ・ゲット・ウェット〜パーティー・一直線』の邦題で、2002年2月21日発売。

ANDREW W.K.はアンドリューW.K.(Vo, Key)を中心に結成されたロックバンドで、初期のメンバーはアンドリューのほかジミー・コープ(G)、フランク・ワーナー(G)、エリック・ペイン(G)、グレッグ・ロバーツ(B)、ドナルド・ターディ(Dr/OBITUARY)という異色の布陣。FOO FIGHTERSのツアーサポートを経て、今作でのメジャーデビューに漕ぎ着けます。

どこかデスメタル経由のボーカルスタイルなんだけど、楽曲自体はパワーポップ風のキャッチーさがある。だけど、演奏自体は非常にモダンメタル的で、コーラスワークなどはDEF LEPPARDを思わせる80年代的な豪華さがある。この「ハード&ヘヴィなんだけど、どこかチープ」というアンバランスさが魅力的で人気を博したのと同時に、このインパクト大のアルバムジャケットも当時大きな反響を呼び、気づいたら多方面へと拡散していったわけです。

海外盤から3ヶ月遅れでリリースされた日本盤ですが、こちらは『アイ・ゲット・ウェット〜パーティー・一直線!』というアルバムタイトルのみならず、各曲の邦題も当時は話題になりましたね。「It's Time to Party」→「パーティーの時間がやってきた!」や「Party Hard」→「パーティー・一直線!」はまだわかりますが、「Ready to Die」→「爆死上等!」や「I Love NYC」→「好き好きニューヨーク」、「She Is Beautiful」→「イカす彼女に一目ぼれ」、「Got To Do It」→「人生は楽しむものだから」、「Don't Stop Living In The Red」→「こんな生活やめられない」、「We Want Fun」→「宴を求めて三千里」、「Make Sex」→「ヤラせろ!」あたりまでくると、もはや何が何やら(苦笑)。当時の担当者がパーティ縛りで無理くり頑張ったことが痛いほど伝わります(笑)。

まあ邦題の話題はこれくらいにして。デビューアルバムとしては完璧すぎるほどのインパクトと内容だと思います。2001年というとニューメタル全盛でこういったパーティロックは完全に下火だったので、古き良き時代のパーティロックをこういった形で21世紀によみがえらせた功績は非常に大きいと言えるのではないでしょうか。きっとMOTLEY CRUEあたりは羨ましがったんじゃないかなと(今作のプロデュースには、当のMOTLEY CRUEも手がけるスコット・ハンフリーも携わっていますしね)。

リリースから20年経った今聴いても十分通用する内容ですし、むしろ今のほうがフィットするような気もするのですが、いかがでしょう?

 


▼ANDREW W.K.『I GET WET』
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2021年7月18日 (日)

MÅNESKIN『TEATRO D'IRA: VOL.1』(2021)

2021年3月19日にリリースされたMÅNESKINの2ndアルバム。日本盤未発売。

フランス・ギャルやABBA、セリーヌ・ディオン、LORDIEなどを輩出したヨーロッパ最大の音楽の祭典『EUROVISION SONG CONTEST』。その2021年版で見事優勝を果たしたのがイタリア出身の4人組バンドMÅNESKIN(日本ではマネスキンと呼ばれていますが、どちらかというとモーネスキンのほうが言語に近いのかな)。2016年に結成されて以降、カバー曲を含むEP『CHOSEN』(2017年/イタリア3位)、1stフルアルバム『IL BALLO DELLA VITA』(2018年/同1位)とすでに本国では人気の高いバンドのひとつとして捉えられているようです。

2作目のアルバムとなる今作には、その『EUROVISION SONG CONTEST 2021』で優勝受賞曲となった「Zitti e buoni」(ITA 2位/UK 17位)のほか、「Vent’anni」(ITA 12位)、「I Wanna Be Your Slave」(ITA 7位/UK 5位)といったヒット曲を含む全8曲を収録。トータル29分と尺は短いものの、非常に聴き応えのある内容に仕上がっています。

個性的なヴィジュアルと若干硬質なサウンド含め、彼らをHR/HMの範疇で語ろうとする動きもあるようですが、個人的にはそこに対する違和感がずっと残っていて。言わんとしていることもわかるんだけど、それだったら過去20年ちょっとの間に登場したあのUKバンドも、このUSバンドもみんなそのカテゴライズで語ってほしかったな……なんていう疑問が残ったり。まあいいんですけどね。

「Zitti e buoni」を筆頭に、RED HOT CHILI PEPPERSの影響下にあるゴリっとしたサウンドの“跳ね”気味の楽曲やラップボーカルをフィーチャーしたスタイルがHR/HM寄りと受け取られるんでしょうけど、このへんは90年代後半以降のUK ロックやヨーロッパのバンドにも普通に見受けられました。その延長線上にありながらも、純粋に楽曲の良さを追求し、その曲を最良の形で届けるバンドアンサンブル、そしてバンドとしての色気など含めすべてが「当たり前のカッコよさ」としてそこに存在することが、もしかしたら2021年においては奇跡なのかもしれませんね。

「Coraline」や「La paura del buio」のように湿り気の強いメロディラインは日本人の琴線にも触れるはずですし、「I Wanna Be Your Slave」や「In nome del padre」でのループするヘヴィなリフ&リズムとラップボーカルの気持ちよさは確かにハードロックリスナーにも強く響くものがあるでしょう。と同時に、そういったジャンル分けなどを気にすることなく、純粋にカッコいいロックバンドとして広く受け入れられる要素もこの作品には無数に散りばめられているように感じられます。

何か特別飛び抜けた存在というよりは、良い曲を当たり前のように追求した結果、高く評価されたという至極真っ当な1枚。「○○だから、××のリスナーにも聴いてほしい」ではなく、いい曲、カッコいいバンドというシンプルな理由で広まってほしい。そう願わずにはいられません。

 


▼MÅNESKIN『TEATRO D'IRA: VOL.1』
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2021年7月17日 (土)

MR. BIG『LEAN INTO IT (30TH ANNIVERSARY EDITION)』(2021)

2021年7月16日にリリースされたMR. BIGの2ndアルバム『LEAN INTO IT』のリイシュー盤。日本盤はありませんが、輸入盤に日本語解説を付けた日本仕様輸入盤が同日に発売されています。

オリジナル盤は1991年3月にリリースされ、「To Be With You」の全米No.1ヒットを生み出したことで知られるMR. BIG最大のヒットアルバム。全米15位まで上昇し、120万枚以上ものセールスを記録しました。その代表作が今年でリリース30周年ということで、アルバム本体に最新リマスタリングを施し、過去にシングルのカップリングなどで発表されてきたアルバム未収録曲や、今作のために用意された未発表曲や“マイナスワン”トラックなどを追加したボーナスディスクを追加した豪華仕様でのリイシューとなります(アルバム本編の内容に関しては、過去のレビューをご参照ください)。

本作は2010年の再結成時にもリマスター盤が発売されていますが、今回の最新リマスターと聴き比べてみると……2010年版のほうが全体のダイナミズム(高音を効かせた強弱の差など)がより強く感じられ、今回の2021年版はそれよりもコンプの効きが強いのか、なんとなく平坦に感じられます。「Never Say Never」のようなダイナミックなハードロックで聴き比べると、その差がわかりやすいのではないでしょうか。

個人的な好みでいうと、スピーカーを通して大音量で楽しむ場合は2010年版リマスターで、スマートフォンなどを通じてヘッドフォン、イヤフォンなどで聴くときは2021年版のほうが合っているような気がします。このへんはもう好みの範疇なので、最終的には聴いて判断してみてください。

まあ、リマスター効果の良し悪しによって作品自体の評価はそんなに大きく変わりませんけどね。1stアルバム『MR. BIG』(1989年)以上に聴き込んだ1枚で、そらで歌える楽曲ばかりですが、30年経ってもいいものはいいなと。以上です。

……嘘です。ボーナスディスクについても触れておきます。

「Stop Messing Around」と「Wild Wild Women」は本作のために用意された未発表曲。『LEAN INTO IT』のプロデューサー、ケヴィン・エルソンが本作のためにしっかりマスタリングを施しており、アルバム本編の楽曲と同じ質感で楽しめるはずです。両者ともアルバムに入っていてもおかしくなさそうな、ソウルテイストのハードロックですが、もうひと捻り欲しかったかな。なんとなくアルバム本編から外れたのも納得というところでしょうか。

そのほかには映画『ネイヴィー・シーズル』(1990年)に提供したアルバム未収録曲の「Shadows」「Strike Like Lightning」(どちらもバンドのメンバーが一切関わっていない外部提供曲ですが、後者がとにかくカッコいい!)や日本初版ボーナストラックだった「Love Makes You Strong」、ヒットシングル「Just Take My Heart」アコースティックバージョンや「Alive And Kickin'」「Green-Tinted Sixties Mind」のアーリー・バージョン、「To Be With You」のレゲエ・バージョンといった2010年リイシュー版にも収められていたでもトラックもまとめられています。

そして、今作ならではの新規トラックとして、「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」「Green-Tinted Sixties Mind」のギター抜き、「Love Makes You Strong」「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」のベース抜きバージョンを用意。これ、ギター&ベースプレイヤーが練習用に使う“マイナスワン”トラックというやつで、楽器を弾かない人にとってはほぼ有り難みの感じられない代物なのですが……ギターがないことでビリー・シーンのベースがよく聴き取れたり、その逆にポール・ギルバートのギターがよく聴き取れるという利点もあったりで。手数の多いプレイヤー陣だけに、そういった意味では種明かし的なトラックとも言えるのではないでしょうか。

パット・トーピー(Dr)が亡くなって以降、バンドとしては完全に時が止まってしまったMR. BIG。ビリーやポールは個人の活動で忙しそうですが、エリック・マーティン(Vo)はこれといって表立った大きな活動は行っていません。パットのいないMR. BIGを続けろとは言わないけど、せめて元気な歌声をまた聴かせてほしいところです(できればハードロックアルバムでね)。

 


▼MR. BIG『LEAN INTO IT (30TH ANNIVERSARY EDITION)』
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2021年7月16日 (金)

MAYHEM『ATAVISTIC BLACK DISORDER / KOMMANDO』(2021)

2021年7月9日にリリースされたMAYHEMの最新EP。日本盤は同年7月7日発売。

最新オリジナルアルバム『DAEMON』(2019年)に続く本作は、同アルバムからのアウトテイク3曲にメンバーが影響を受けたパンク/ハードコアバンドの楽曲カバー4曲に加えた異色の内容。ここ日本では今年2月にMAYHEM周りを題材にした映画『ロード・オブ・カオス』が公開されたばかりとあり(かつ、久しぶりの日本盤発売とあって)、手に取りやすい1枚ではないでしょうか。

現メンバーはネクロブッチャー(B)、ヘルハマー(Dr)の初期メンバーにアッティラ・シハー(Vo)、テロック(G)、グール(G)という5人。また、本作にはメシア、マニアックといった初期ボーカリストもゲスト参加しており、映画を観たばかりというビギナーにも訴えかけるものがあるはずです。

オリジナル曲3曲のうち、「Voces Ab Alta」のみ完全未発表。少なからずMAYHEAMの楽曲に触れたことがあるというリスナーなら、これらのオリジナル曲のリフワークやギターフレーズなどを耳にしたら「あ、MAYHEMだ」と感じるのかもしれません。それくらい“らしさ”の詰まった楽曲群といえるでしょう。『DAEMON』から漏れたのは同作のビジョンに合わなかったというだけで、決して完成度が劣っていたわけではない。そういう意味でも、これらの楽曲を改めて耳にできるのはありがたい限りです。

そして気になるカバー曲。取り上げたのはDISCHARGE「In Defense Of Our Future」、DEAD KENNEDYS「Hellnation」、RUDIMENTARY PENI「Only Death」、RAMONES「Commando」というMAYHEMの名前からはおよそ想像もできないバンドばかり。MAYHEMがデッケネやRAMONESをカバーするってどういうこと?と、聴く前はかなり不安でしたが……原曲の雰囲気を踏襲しつつ、要所要所にメタリックなアレンジが散りばめられており、許容の範囲として楽しむことができました。まあ、遊びの範疇としてはアリなのかな(さすがにオリジナル曲「Everlasting Dying Flame」からカバー曲「In Defense Of Our Future」への流れは唐突なので、新曲で構成されたM-1〜3をDISC 1、カバーで構成されたM-4〜7をDISC 2くらいの感覚で楽しめたらと)。

ボーカルワークに関しては、意外と普通に歌ってしまっている(笑)ので、何も知らずに聴いたらMAYHEMとは判別不能でしょうけどね。ちなみに「In Defense Of Our Future」にはメシア、「Hellnation」にはマニアックがそれぞれゲスト参加しているので、意識して聴いてみるのもいいかもしれません。

MAYHEMはこのコロナ禍、1996年以来という長い休暇期間に突入し、2022年には本格的再始動するそうなので、遅くても2023年までには『DAEMON』に続くオリジナルアルバムが届くのではないでしょうか。それまでのつなぎとしては、本作は十分すぎる1枚だと思います。

 


▼MAYHEM『ATAVISTIC BLACK DISORDER / KOMMANDO』
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2021年7月15日 (木)

CATHEDRAL『FOREST OF EQUILIBRIUM』(1991)

1991年12月6日にリリースされたCATHEDRALの1stアルバム。日本盤は『この森の静寂の中で』の邦題で1992年2月21日発売。

1989年、NAPALM DEATHを脱退したリー・ドリアン(Vo)が、CARCASSのローディーだったマーク・グリフィス(B)、元ACID REIGNのギャリー・ジェニングス(G)ともに結成。彼らの敬愛するBLACK SABBATHCANDLEMASS、PENTAGRAM、TROUBLE、WITCHFINDER GENERALの影響下にあるドゥームメタル、ストーナーロック、スラッジメタルを表現するべく、“世界最速”なNAPALM DEATHとは対局にある“世界最遅”なサウンドがこの1stアルバムでは展開されています(そういえば、1990年のデビューEP『IN MEMORIUM』ではPENTAGRAMの「All Your Sins」がカバーされていましたものね)。

レコーディングメンバーはリー、ギャリー、マーク、アダム・レハン(G)、マイク・スマイル(Dr)。曲によってはキーボーディストやフルート奏者がフィーチャーされており、陰鬱な中にも耽美なテイストを見つけることができます。

全7曲で54分という尺はかなり長く感じられますが、実際収録曲の大半が8分前後以上ある超大作ばかり。オープニングトラック「Picture Of Beauty & Innocence (Intro) / Commiserating The Celebration」からして11分超えですからね(笑)。その後も「Ebony Tears」(7:46)、「Serpent Eve」(7:40)と長尺かつスロー、ヘヴィ&ダークな楽曲が続いていきます。ギターのチューニング/ピッチが微妙にズレているようにも感じられることもあり、ツインリードなどのフレーズからは不穏な空気が伝わり、このへんはALICE IN CHAINSなどグランジ勢のそれとはまた異なる不気味さと言える。気持ち悪さ、邪悪さという点では本作のほうが数歩上のような気がします(まあ比べるべきではないとは思いますが、発売タイミング的に念のためね)。

リーのボーカルは当時主流になりつつあったデスメタル派生のデスボイスに頼ることなく、オジー・オズボーン直系のヘタウマボーカル(笑)で陰惨とした世界観を見事に表現。ダウンチューニングで構築されたドロドロしたギターリフと、ズルズル引きずるような重苦しいリズム隊が生み出す地獄のアンサンブルは、先人たちからの影響を感じさせつつもオリジナリティが早くも確立されている。1991年という時代の転換期にとてつもなく恐ろしい、唯一無二の個性的アルバムを完成させたわけです。

ぶっちゃけ、リリース当時はあまりにスローで抑揚が感じられず退屈にすら思えた本作。しかし、何度も聴き返しているうちにクセになり、気づけばどハマりしていた。ところが、リリースから30年経った2021年にじっくり聴いてみると……思っていたほどスローに感じられず、むしろ随所にメロディアスさが感じられる。自分の感性がおかしくなったのでしょうか(苦笑)。ドゥームメタルだのストーナーロックだのいろんなジャンル分けがあるとは思いますが、個人的には「これ……プログレじゃん」と。BLACK SABBATHにあったプログレッシヴな部分をしっかり踏襲した、新世紀のプログメタルだったんだな……と今さらながらに実感しています。

彼らが真の意味で“化ける”のは、続く2作目『THE ETHEREAL MIRROR』(1993年)から。このデビューアルバムは処女作としては十分すぎる内容、完成度ではないでしょうか。

 


▼CATHEDRAL『FOREST OF EQUILIBRIUM』
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2021年7月14日 (水)

AEROSMITH『PANDRA'S BOX』(1991)

1991年11月19日にリリースされたAEROSMITHのCD3枚組ボックスセット。日本盤はかなり遅れて1994年4月21日発売(『GET A GRIP』ツアーにあわせて発売されたようです)。

Geffen Records移籍後の『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)がバカ売れする中、古巣のColumbia / Sony Recordsが企画した本作には、1973年のデビューアルバム『AEROSMITH』から『ROCK IN A HARD PLACE』(1982年)までに発表した既発音源に加え、同期間のレコーディングセッションから生まれた未発表音源、ライブ音源、さらにはデビュー前の貴重なテイクなどを収めたファン垂涎の内容。この時期までにSony時代のベストアルバムにはシングル曲中心の『GREATEST HITS』(1980年)、ライブで人気の楽曲などを集めた『GEMS』(1988年)が公式リリースされていましたが、このボックスセット誕生はその2枚を超えるボリューミーな内容(全53曲/231分)ということもあり、かなり重宝した記憶があります(初版は縦長の分厚いボックスだったので収納に困りましたが……)。

基本的には時系列に沿った収録内容ですが、一部構成上の都合により前後するものもあります。DISC 1のオープニングを飾るのはAEROSMITH結成前夜、スティーヴン・タイラー(Vo)が在籍していたCHAIN REACTIONというバンドの「When I Needed You」という楽曲。1966年録音ということなので、AEROSMITHのデビューから7年前ということになります。いわゆる60's的なサウンドですが、エアロの1stアルバム『AEROSMITH』にも通ずるテイストは見つけられるはずです。

その後、『AEROSMITH』収録曲やアウトテイク、別バージョンなどがずらりと並ぶわけですが、DISC 1は基本的に同作と2作目『GET YOUR WINGS』(1974年)からの楽曲中心。DISC 2にはブレイク作となる3rdアルバム『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)から5作目『DRAW THE LINE』(1997年)まで、DISC 3は『DRAW THE LINE』の続きから『ROCK IN A HARD PLACE』までの楽曲で基本構成されています。要するに、DISC 1は黎明期、DISC 2はブレイク期、DISC 3は衰退期と大雑把に分けられるわけですね。

DISC 1も味わい深いですが、やはりピークとなるDISC 2で体感できる熱量は相当なものがあります。例えば、伝説の『TEXXAS JAM 1978』からの未発表ライブテイク「I Wanna Know Why」や「Big Ten-Inch Records」、そして「Adam's Apple」の1977年ライブ音源からは名ライブアルバム『LIVE! BOOTLEG』(1978年)にも匹敵する生々しさ、どぎつさが感じられるはずです。

あと、個人的に興味深かったのがDISC 3冒頭に収録された「Kings And Queen」のライブテイク。これは『CLASSICS LIVE』(1986年)からの既発音源なのですが、キー(再生速度)が異なるんですよね。『CLASSICS LIVE』のほうが原曲よりキーが高く、本作のテイクのほうは原曲キーとなっている。それもあってか、原曲キーの本作収録テイクのほうが『CLASSICS LIVE』のテイクより収録時間が50秒くらい長いんです。こういうの、アナログ時代あるあるエピソードですよね(笑)。

DISC 3は後半に進むにつれて時系列がめちゃめちゃなんですが、Geffen移籍後に発表された企画盤にて初公開された未発表曲「Major Barbra」「Chip Away The Stone」を経て、1975年録音のビートルズ「Helter Skelter」カバー、そして名曲「Back In The Saddle」で締め括るという構成は全然アリだと思います(本当はそのあとに、隠しトラックとして1977年のアウトテイク「Circle Jerk」収録。デジタル版では曲名が表記されてしまっているので興醒めですが)。

Geffen移籍後はこういったボックスセットは制作されておらず、『O, YEAR! ULTIMATE AEROSMITH HITS』(2002年)で初めてレーベルの壁を超えたオールタイム・グレイテスト・ヒッツが完成。以降はこまめにコンピ盤を発表していますが、そろそろ全キャリアを総括する10枚組ボックスセットなんて代物が登場しそうな気がします(笑)。

 


▼AEROSMITH『PANDRA'S BOX』
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2021年7月13日 (火)

KIX『HOT WIRE』(1991)

1991年7月9日にリリースされたKIXの5thアルバム。日本盤は同年7月25日発売。

前作『BLOW MY FUSE』(1988年)からシングルカットされた「Don't Close Your Eyes」が最高11位まで上昇し、アルバム自体も1年がかりで100万枚を超えるヒット作に(最高46位)。1989年9月には念願の初来日公演も実現するなど、それまでの苦労が一気に報われることになります。

前作から約3年ぶりとなるニューアルバム、前作で「Cold Blood」や「No Ring Around Rosie」で共作したテイラー・ローズをプロデューサーに迎えて制作。前作の延長線上にある(といっても、彼らの場合基本路線はほぼ変わりませんが)AC/DC直径のキャッチーなハードロックを展開しています。

とはいえ、前作での成功がもたらした自信は至るところから感じられ、オープニングナンバー「Hot Wire」のイントロで聴くことができる仰々しさや、シングルカットもされた「Girl Money」アウトロの口笛など、これまでにない仕掛け/演出を楽しむことができます。

楽曲自体もメインソングライターであるドニー・パーネル(B)を軸にしつつも、テイラー・ローズが前作以上にコ・ライターとして関わっており(全10曲中5曲にクレジット)、「Don't Close Your Eyes」にも関わったボブ・ハリガン・Jrも「Cold Chills」「Same Jane」の2曲に、USプログロックバンドCRACK THE SKYのフロントマンだったジョン・パルムボも「Pants On Fire (Liar, Liar)」「Hee Bee Jee Bee Crush」に名を連ねています。職業ソングライターとのコ・ライトは80年代後半以降活発化し、レコード会社やプロデューサーの意向もあって90年代にはいってからさらに増えていった印象があります。

ああ、そうだ。先ほど「前作の延長線上にある(といっても、彼らの場合基本路線はほぼ変わりませんが)AC/DC直径のキャッチーなハードロック」と書きましたが、バラードタイプの楽曲に関してはそれに当てはまらないかな。AC/DCはこの手の楽曲に手を出していませんが、KIXの場合この時期のほかのHR/HMバンド同様にパワーバラードにも着手。本作では「Don't Close Your Eyes」とも異なる「Tear Down The Walls」というメジャーキーのバラードを制作しており、バンドの可能性を広げています。

クールな「Cold Chills」や王道ナンバー「Luv-A-Holic」などは初期からの彼らにも通ずるスタイルですし、「Same Jane」や「Pants On Fire (Liar, Liar)」は前作での成功から得た手応えが見事に反映されたカッコよさ&キャッチーさを楽しむことができる。『BLOW MY FUSE』での成功を完璧な形でフォローアップする良作ではないでしょうか。

しかし、1991年という時代が災いしてか、本作からはヒットシングルは生まれることなく(「Girl Money」や「Tear Down The Walls」がUSロックチャートで中ヒットした程度)、アルバムも最高64位(全米で20万枚程度)という結果で終了してしまいます。その後、KIXは今作を携えたツアーからの音源を収めたライブアルバム『LIVE』(1993年)をリリースし、デビューから長らく所属したAtlantic Recordsを離れることになります。まさにHR/HM冬の時代と符合しますね……。

 


▼KIX『HOT WIRE』
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2021年7月12日 (月)

L.A. GUNS『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991)

1991年6月25日にリリースされたL.A. GUNSの3rdアルバム。日本盤は同年6月27日発売。

最大のヒット曲「The Ballad Of Jayne」(全米33位)を生み出し、アルバム自体も最高38位、全米のみで50万枚以上を売り上げた2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)。グラムメタル/ヘアメタル全盛末期にギリギリねじ込んだこの1枚のおかげで、L.A. GUNS自体も寿命が少しだけ伸びたような気がします。

そんなわけで、フィル・ルイス(Vo)、トレイシー・ガンズ(G)、ミック・クリプス(G)、ケリー・ニッケルズ(B)、スティーヴ・ライリー(Dr)という黄金期布陣でレコーディングに臨んだ2作目にあたる本作では、新たにマイケル・ジェイムズ・ジャクソンをプロデューサーに迎えて制作。前作での路線をさらに整理した作風で、まだまだ若干チープさが残った前作(そこが良かったんだけど)から相当ドーピングが課せられたような(笑)、そんなタフさが備わった初期L.A. GUNSの集大成的1枚に仕上がっています。

いきなり能楽からスタートして意表をつくオープニング曲「Over The Edge」のヘヴィ&シリアスさは、まさしく『COCKED & LOADED』で得た新たな武器をスキルアップさせたもの。思えば2017年の来日公演(LOUD PARK 2017)もこの曲からスタートしましたね(。バラードタイプではありますが、「Crystal Eyes」もこの系統に含まれるでしょう。それ以外にも、スリージーなノリを持つ「Dirty Luv」あたりも前作を経たことで生まれたスタイルでしょうし、ヘヴィロカビリーなんて例えがぴったりな「Snake Eyes Boogie」も然り。

かと思えば、どこまでもキャッチーな「Kiss My Love Goodbye」「My Koo Ka Choo」や王道アコースティックバラード「It's Over Now」「I Found You」もあるし、ストレートなハードロック「Some Lie 4 Love」「Wild Obsession」もある。どれも完成度は非常に高いです。

ただ、L.A. GUNSにここまでの完成度を求めてもいいものか……ファンは求めていましたっけ?(苦笑) このへん、POISONが2ndアルバム『OPEN UP AND SAY...AHH!』(1988年)から3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)へ移行した流れと同じものを感じてしまいます。気張りすぎてしまったんでしょうか。

1991年というとメインストリームを席巻したハードロックが下火になり始め、グランジやオルタナが台頭し始めるタイミング。そのわりに本作は全米42位と前作に匹敵する数字を残し、「It's Over Now」というスマッシュヒットシングル(全米62位)を生み出しています。もう1年早かったら、もうちょっといい結果を出したのかしら……。

なお、このアルバムも『COCKED & LOADED』同様、日本ではストリーミング未配信。機会があれば聴いてもらいたい1枚なだけに、ぜひなんとかしてもらいたいものです。→※2022年1月追記:国内ストリーミング配信、解禁されました。

 


▼L.A. GUNS『HOLLYWOOD VAMPIRES』
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2021年7月11日 (日)

L.A. GUNS『COCKED AND LOADED LIVE』(2021)

2021年7月9日にリリースされたL.A. GUNSのライブアルバム。

現在トレイシー・ガンズ(G)&フィル・ルイス(Vo)組とスティーヴ・ライリー(Dr)&ケリー・ニッケルズ(B)組の2つが同時に存在するL.A. GUNS。どうやらこの春、両者のバンド名権利をめぐる訴訟で和解が成立し、前者はL.A. GUNSのまま、後者はRILEY'S L.A. GUNSとして活動していくようです。ただ、ストリーミングサービスでは今後も「L.A. GUNS」の括りで両バンドの楽曲が表示されるとのこと。紛らわしい(苦笑)。

今回紹介するライブ作品は前者によるもので、昨年11月28日にラスベガスで開催された2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)発売31周年(笑)記念完全再現ライブのもようを収めたもの。完全再現といいながら、当日は「I'm Addicted」に代わり『THE MISSING PEACE』(2017年)のリードトラック「Speed」が披露されていたり、アルバムではオープニングトラック「Letting Go」が省かれているという中途半端ぶり(笑)。まあそこも含めてL.A. GUNSらしいのかも。

オリジナル制作時のオリメンはトレイシー&フィルのみで、記録に間違いがなければジョニー・マーティン(B)、エース・ヴォン・ジョンソン(G)、スコット・クーガン(Dr)という布陣のはず。エースとスコットは『THE DEVIL YOU KNOW』(2019年)完成後に加入したので、これが初参加作品となります。

まず、このライブは有観客で実施されたもので、日本とは異なり観客の歓声もまばらながらも聞こえてきます。日本だとこの歓声が記録として残されてしまうと、あとあと問題になりそうな気がしますが……。それはさておき、中身は良くも悪くもフィルらしい不安定なボーカルと(笑)、原曲をしっかり再現しようとする楽器隊の演奏、そしてリリースから31年(現時点では32年か)経っても色褪せることのない楽曲群をしっかり楽しむことができます。『COCKED & LOADED』は日本では依然ストリーミング配信されていないので(2000年に制作された再録アルバム『COCKED & RE-LOADED』は聴くことができますが)、代用に……とまではいかないものの、先の再録盤よりは楽しめるのではないでしょうか。

やっぱり冒頭の「Slap In The Face」「Rip And Tear」の流れは痺れるし、「The Ballad Of Jayne」は普通にいい曲だし、「Magdalaine」はスリリングだし、「Wheels Of Fire」ってこんなにカッコよかったっけ?という気づきがあったし、いろいろ思い出させてくれる内容だと思いました。けど、一番カッコいいなと思ったのが最新曲の「Speed」だったというのはここだけの話で(笑)。

今年11月にはトレイシー&フィルのコンビが復活してから3作目のスタジオアルバム『CHECKERED PAST』のリリースも控えているとのこと。『THE MISSING PEACE』『THE DEVIL YOU KNOW』といいアルバムが続いているので、こちらにも期待しておきましょう。

 


▼L.A. GUNS『COCKED AND LOADED LIVE』
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2021年7月10日 (土)

HAMMER KING『HAMMER KING』(2021)

2021年6月11日にリリースされたHAMMER KINGの4thアルバム。

HAMMER KINGは2015年に結成されたドイツ出身の4人組バンド。フロントマンのタイタン・フォックスV(Vo, g)は過去にロス・ザ・ボス(ex. MANOWAR)のバンドで歌っていた経験の持ち主で、当のHAMMER KINGもMANOWARに匹敵する男臭さ満載のパワーメタルを聴かせてくれます。現在のメンバーはタイタン、ジーノ・ワイルド(G)、グラディウス・サンダースワード(B)、ドルフ・アイダン・マカラン(Dr)の4人。

バンド名をタイトルに冠した本作は勝負作のように感じられますが、過去のアルバムから大きな変化は見受けられず。と言っても、この手のバンドに求められるヘヴィでスピード感の強いサウンド&楽曲、ドラマチックなアレンジ、キャッチーなメロディと地を這うようなシンガロングといった必要な要素がすべて揃っており、すべてにおいて“かゆいところに手が届く”1枚と言えるでしょう。

タイタンのボーカルはMANOWARほどいかつくなく(笑)、適度な憂いと繊細さも備わっており、力でねじ伏せるような楽曲にその声が乗ったときにまったく暑苦しさを感じさせません。これはパワーメタルバンドにとってはリスナーの間口を広げるのに一役買う高ポイントだと思うのですが、いかがでしょうか。それとも、生粋なパワーメタルファンからしたら「ヤワい」と感じられるのでしょうか。僕にはこれくらいがちょうど良く、リピートするにも最適なバランス感だと思いました。

疾走感あふれるパワーチューン「Hammerschlag」にはTANKARDのアンドレアス“ゲッレ”ジェレミア(Vo)、EPICAのアイザック・デラハイ(G)、WARKINGSのザ・クルセイダー(G)がゲスト参加。新旧・欧州パワーメタル同盟と言わんばかりの豪華な共演(というか狂演か)を楽しむことができます。また、日本盤のみこの「Hammerschlag」の“HKバージョン”(ゲスト抜きテイク)も収録されているので、ぜひ聴き比べてみることをオススメします。

スピードナンバーとミドルテンポのヘヴィーチューンが交互に並んだ構成含め、最後までスルスル聴き進められてしまう、平均点を軽く超える良作。個人的にはリフワークがIRON MAIDENを彷彿とさせる「Into The Storm」、MANOWAR直系のドラマチック“漢”パワーメタル「King Of Kings」が特にお気に入りです。ピュアなメロディック・ヘヴィメタル/パワーメタルに少しでも興味がある方なら、間違いなく気に入る1枚ではないでしょうか。

 


▼HAMMER KING『HAMMER KING』
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2021年7月 9日 (金)

TURNSTILE『TURNSTILE LOVE CONNECTION』(2021)

2021年6月27日にリリースされたTURNSTILEの最新EP。デジタル配信のみで、日本盤未発売。

Roadrunner Records移籍第1弾となった2ndアルバム『TIME & SPACE』(2018年)がBillboard Heatseekers Albumsで1位を獲得するなど、一躍その名をメジャーロックフィールドにも知らしめた米・メリーランド州ボルチモア出身の5人組バンド。その『TIME & SPACE』に続く3rdアルバムがいつ届けられるのか、期待が高まり続けていました。

そんな中、急に届けられたこのEP。先の「Mystery」のほか「Holiday」「T.L.C. (Turnstile Love Connection)」にインタールード「No Surprise」を加えた計4曲/約8分と非常にコンパクトな仕上がり。前作EP『SHARE A VIEW』(2020年)はオーストラリア出身の次世代ハウスの旗手であるモール・グラブとのコラボ作で、ハウスやエレポップに寄った異色の1枚でしたが、今作は本来のハードコアサウンドに比重を置いたアグレッシヴだけどキャッチーさに満ち溢れた充実の内容に仕上がっています。

思えば彼らは『TIME & SPACE』の時点で「Right To Be」にてDIPLOとタッグを組んでいましたし(あくまでTURNSTILE本来のサウンドをベースにDIPLOが味付けしている程度でしたが)、ジャジーなインタールード「Disco」などもあり、前作EPの流れも必然といえば必然でした。そういったひとつの方向に振り切った企画作を経てたどり着いた今作は、いよいよ3rdアルバムへ向けて本格的に動き出したということなのでしょうか。

EPオープニングを飾る「Holiday」では『TIME & SPACE』から『SHARE A VIEW』を経た経験も(大々的にはないものの)随所から感じ取ることができるし、ハードなサウンドの中にも相変わらずキャッチーさが備わっている。このギリギリのバランス感やさじ加減が最強だなと感じるわけです。

続くインタールード「No Surprise」はまさに“『TIME & SPACE』から『SHARE A VIEW』を経た経験”が最良の形で活かされたベストな“つなぎ”であり、だからこそ続く「Mystery」のイントロが映える。この曲も非常にキャッチーで、思わず一緒にシンガロングしたくなる1曲。そういったハードコアながらも親しみやすさを兼ね備えた2曲+αを経て、最後に1分40秒のタイトルトラック「T.L.C. (Turnstile Love Connection)」にて全速力疾走で締め括る。この曲も随所に過去2作の経験が活かされており、どこか不穏なエンディング含め一筋縄でいかない感が強く伝わってきます。

前作の時点では確たる個性を確立する寸前といったところでしたが、どうやら近い将来届けられるであろう3rdアルバムでは完全に振り切ったTURNSTILEならではの個性を、思う存分に楽しむことができそうです。ポップなタッチのアートワーク含め、どんな快作が届けられるのか、今からワクワクが止まりませんね(笑)。

そうそう、本作はEP収録の4曲すべてに映像を付けた11分半におよぶ動画もYouTubeにて公開されています。音だけで楽しむも良し、映像ありきで楽しむも良し。個人的にはこの映像作品ありきのEPなのかなと思っているので、こちらを延々とリピートしております。

 


▼TURNSTILE『TURNSTILE LOVE CONNECTION』
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2021年7月 8日 (木)

BILLY F GIBBONS『HARDWARE』(2021)

2021年6月4日にリリースされたビリー・F・ギボンズの3rdアルバム。

ビリー・F・ギボンズとはZZ TOPのフロントマン、ビリー・ギボンズ(Vo, G)そのひと。ZZ TOPとしての最新作は『LA FUTURA』(2012年)以降リリースがストップしており、以降ビリーはBILLY BIBBONS AND THE BFG'S名義での『PERFECTAMUNDO』(2015年)、ビリー・F・ギボンズ名義での『THE BIG BAD BLUES』(2018年)と約3年おきに新作を発表し続けています。

本作はZZ TOPのメガヒット作『AFTERBURNER』(1985年)以降の諸作品や、ビリーのソロ2作にエンジニアおよびミュージシャンとして携わってきたジョー・ハーディー(2019年没)が初めて参加しないビリーの作品。代わりに今作ではビリーのほかマット・ソーラム(ex. GUNS N' ROSES 、ex. VELVET REVOLVERなど)、マイク・フィオレンティーノが共同プロデューサーとして携わっています。また、マットは前作から引き続き、本作でもドラマーとして全面参加。ソングライティングにも全面的に加わっています。

ジョー・ハーディーへの追悼の意も込められた今作は、70年代のZZ TOPを思わせる非常にスモーキーなブルースロックを思う存分堪能できる1枚。過去2作にはカバー曲も複数含まれていましたが、今作は全12曲中11曲がオリジナル曲。『AFTERBURNER』以降のデジタルエフェクトを施したサウンドが完全に払拭され、時に緩やかに、時にタイトなグルーヴを生み出すバンドアンサンブルが全面に打ち出され、それらのサウンドに引っ張られるかのよにリラックスした、味わい深いビリーのボーカルも味わうことができます。

ブギーやルーズなロックンロールが中心なのはもちろんのこと、「Vagabond Man」のようなスローバラード、ソウルフルで音数の少ないブルース「Spanish Fly」、ラーキン・ポーをフィーチャーしたゴキゲンな「Stackin' Bones」、ラテンテイスト強めな「Hey Baby, Que Paso」など、統一感が強いようで意外と楽曲の幅は広め。初期のZZ TOPが好きなリスナーなら当然のこと、“これぞアメリカ!”な豪快ロックンロールを思い切り楽しみたいというリスナーには絶対に手に取ってほしい1枚です。

今年でZZ TOPでのデビューからまる50年、今も変わらず最高にイカしたロックンロールを鳴らし続けてくれている事実はただただうれしい限り。特に2000年代に入ってからはZZ TOPの動きも停滞気味でしたが、御年71歳のビリーがここ10年精力的にリリースを重ねているのは、目前に迫るタイムリミットを意識してのことなんでしょう。もはや80年代的なZZ TOPサウンドは期待できそうにありませんが、時には思い出したようにあの頃の曲も演奏しつつ、可能な限り新しい作品を残し続けてほしいものです。

車を運転する方なら共感してもらえると思いますが、こういう音楽は深夜の高速道路ではなくて真っ昼間の海岸沿い一般道をチンタラ走りながら、爆音で楽しみたいものです(もちろん近所迷惑にならない程度に)。

 


▼BILLY F GIBBONS『HARDWARE』
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2021年7月 7日 (水)

BEARTOOTH『BELOW』(2021)

2021年6月25日にリリースされたBEARTOOTHの4thアルバム。日本盤未発売(日本語歌詞対訳を付けた国内仕様輸入盤あり)。

全米40位まで上昇した前作『DISEASE』(2018年)から2年9ヶ月ぶりの新作。メンバーのケイリブ・ショーモ(Vo)とオシー・ビッチャー(B)のセルフプロデュース作となります。ヘヴィメタルやハードロックの範疇というよりは、ポストハードコア寄りのメタルコアに属するバンドですが、2000年代以降のラウドロック、モダンヘヴィネスバンドを愛聴してきたリスナーなら問題なく楽しめる1枚だと断言できます。

このバンドはとにかくメロディラインが秀逸で、作品を重ねるごとにそのクオリティはどんどん高まっています。本作におけるメロディアスさ、キャッチーさは過去3枚を軽く超えるほどの仕上がりで、どの曲も一度聴いたら口ずさめるようなものばかり。スクリームも要所要所に登場するものの、彼らの場合はよくいるポストハードコアバンドにある「取ってつけたようなメロウなライン」的手法とは真逆に位置する「スクリームは味付け程度で、軸になるのはしっかり作り込まれたメロディ」を武器とする存在ではないでしょうか。

しかし、メロディを重視するからといって楽曲全体がヤワになることもなく、どれもアグレッシヴさが水準以上に保たれている。このバランス感、普通の同系統バンドなら極端にソフトになるか極端にコアに進むかの二極化を迫られると思うんですが(そんなことない?)、BEARTOOTHの場合は現在の時点にとどまり続けながら、その精度をさらに高めることに注力している。その真摯な姿はリスペクトに値するものだと思うんです。

大半の楽曲が3分台とコンパクトにまとめられており、その中にエモの延長線上にあるポストハードコア、メロディアスなハードロック的なスタイル、ブラストビートやカオティックなギターリフを用いたコアなアレンジなどさまざまな形態が用意されているのですが、それらがすべてメロウに響くのですから、面白いったらありゃしない。これ、やろうと思ってもそう簡単にできることじゃないですよ。

で、ふと思ったのですが、彼らって今後“2000〜2010年代におけるAVENGED SEVENFOLDのような存在”に進化していくんじゃないでしょうか。A7Xのように王道を目指すようなタイプとは異なるかもしれませんが、少なくともここ日本においてはCrossfaithとの共演をはじめ、2000年代後半以降に誕生した国内ラウドロックバンドとの共通点が見受けられる。それだけに、ここ日本と海外ラウドシーンとをつなぐ架け橋的存在になるんじゃないか……そう信じています。

いやあ、それにしても想像をはるかに超える力作でした。百聞は一見にしかず、じゃないですけど、この手のバンドに対して偏見を持っているメタルリスナー、そして洋楽はあまり聴かないという国内ラウドロックファンにこそ触れてもらいたい、現在の海外メタル/ラウドシーンに入門編的1枚です。

 


▼BEARTOOTH『BELOW』
(amazon:海外盤CD(歌詞対訳付) / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年7月 6日 (火)

SKID ROW『RISE OF THE DAMNATION ARMY - UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER TWO』(2014)

2014年8月5日にリリースされたSKID ROWのEP。日本盤未発売。

前作『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』(2013年)に次ぐ本作は、三部作の第2弾。参加メンバーは前作同様にジョニー・ソーリンガー(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)、ロブ・ハマースミス(Dr)の5人。

内容も前作から引き続き、オリジナル5曲+カバー2曲の全7曲で構成されています。前作で先祖返りしてリスナーを驚かせた彼らですが、前の1枚をデビュー作『SKID ROW』(1989年)寄りのテイストと無理矢理括るならば、続く今作は2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)寄りのテイストで統一されているかな、という衣装を受けます。良くも悪くも『SKID ROW』の路線を焼き直した楽曲が散見されたものの、個人的にはご祝儀的に高評価を与えた前作を経て、ここでは『SLAVE TO THE GRIND』のテイストを用いているものの、より今の5人らしさが強く滲み出ているかな、という気もしています。

前作にあったメジャーキーのパワーバラードは皆無で、唯一「Catch Your Fall」がそっち寄りの1曲。ただ、ここでは『SLAVE TO THE GRIND』に収録されていそうなダークサイドを表現しており、かつ単なる焼き直しで終わらないオリジナリティも伝わってくる。

かと思えば、「Slave To The Grind」の“腹違いの弟”的なファストチューン「Damnation Army」があったり、地を這うようにダーク&ヘヴィな「Zero Day」がある。後者のみギリギリ3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)的かなという気がしますが、全体を通して聴いたときの統一感もあって、スルスルと楽しめてしまう。本来彼らが4thアルバム『THICKSKIN』(2003年)でやろうとしていたことの一端ってこういうことだと思うんですが、ようやくここであの路線が消化できたんじゃないでしょうか。10年かかったか……(苦笑)。

カバー曲はQUEEN「Sheer Heart Attack」、AEROSMITH「Rats In The Cellar」とド直球なセレクト。どちらもアップテンポの軽やかなハードロックですが、むしろこの2曲って前のEPに入れるべきだったんじゃないかな。で、前のEPに収めていたE・Z・O「Fire Fire」やJUDAS PRIEST「United」がこっちに入っていると収まりがよかったような気がするんですが……難しいものですね。

本EP発売前の2014年4月には19年ぶりの来日公演も実現。三部作完結編の登場を期待されていたところ、2015年春にジョニーが脱退。以降、トニー・ハーネル(TNT)やZPサート(ex. DRAGONFORCE)がフロントに立っていますが、噂される三部作完結編となるフルアルバムはいまだ届けられず。そして、2021年6月末にジョニーの病死がアナウンスされました……。

実は昨日からの更新は、この訃報を受けて「このタイミングにフラットな視点で、ジョニー在籍時のSKID ROWを総括しよう」と思ったことがきっかけでした。2014年の来日時は仕事の都合などもあり足を運ぶことができませんでしたが、本当にあのとき無理してでも観ておけばよかったな……と今回振り返ってみて改めて実感しました。

ZPサートを含む布陣で三部作をしっかり完結させてくれるのか、それとも別の方向へと進むのか。なんにせよ、今のSKID ROWから目を逸らすことなく、しっかり行く末を見届けようと思います。

最後に、ジョニー・ソーリンガーの冥福をお祈りいたします。

 


▼SKID ROW『RISE OF THE DAMNATION ARMY - UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER TWO』
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SKID ROW『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』(2013)

2013年4月16日にリリースされたSKID ROWのEP。日本盤未発売。

新作音源としては5thアルバム『REVOLUTIONS PER MINUTE』(2006年)から約7年ぶり。参加メンバーはジョニー・ソーリンガー(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)、新加入のロブ・ハマースミス(Dr)。

本作は三部作の第1弾となる新録作品で、5曲のオリジナル曲と2曲のカバー曲で構成されています。『REVOLUTIONS PER MINUTE』がレイチェルのカラーが強く反映されたパンク/オルタナ路線で、新生SKID ROWのスタイルがいよいよ確立されたか……そう思わせておいて、7年後に発表された今作では先祖返りしているという(笑)。

そうなんです。ここで聴けるオリジナル曲の大半がメガヒットを記録したデビュー作『SKID ROW』(1989年)や、全米1位を獲得した2作目『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)の延長線上にあるスタイルなのです。どちらかというと『SKID ROW』寄りのテイストなのかな、オープニングを飾る「Kings Of Demolition」といい、王道パワーバラード「This Is Killing Me」といい、古き良き時代のキャッチーなハードロックを思わせるテイストで、楽曲の出来自体も決して悪くない。ジョニーのボーカルも4作目『THICKSKIN』(2003年)ではあまり声域が広くないんだなと感じていたものの、ここではセバスチャン・バック(Vo)の影がチラつくくらいにまでパワフルな高音域ボーカルを聞かせてくれている。バズの影がチラつくのはどうかと思うものの、これはこれで古くからのファンはうれしいんじゃないかな。

ダークな「Get Up」や「Stitches」も『THICKSKIN』や『REVOLUTIONS PER MINUTE』のカラーとは異なる、明らかに90年代前半的なものだし。これを貶すのはもう、単にバズがいないというイメージだけで判断してしまっているんじゃないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、初めて聴いたときは「続編はよ!」ってワクワクしたよなあ。

気になるカバーですが、E・Z・Oの「Fire Fire」とJUDAS PRIEST「United」。この選曲センスもバズ時代に回帰した感があるし、かつ仕上がりも期待値以上。特に「Fire Fire」はジョニーのボーカルにMASAKIが憑依していて、本家にも匹敵する好演だと思いますよ。

過去2作はなんだったんだ……と疑問を呈したくなりますが、これはこれでいいんじゃないでしょうか。SKID ROWがSKID ROWであることを選んだわけですからね。

 


▼SKID ROW『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』
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2021年7月 5日 (月)

SKID ROW『REVOLUTIONS PER MINUTE』(2006)

2006年10月24日にリリースされたSKID ROWの5thアルバム。日本盤は同年12月20日発売。

ジョニー・ソーリンガー(Vo)を迎えて2作目のフルアルバム。ドラマーは前作参加のフィル・ヴァロン(ex. SIGON KICK)からデイヴ・ガラ(ex. BETTY BLOWTORCH、ex. BULLETBOYSなど)に交代しています。また、このアルバムではプロデューサーにデビュー作『SKID ROW』(1989年)や全米No.1アルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)を手がけたマイケル・ワグナーが参加しています。

マイケル・ワグナープロデュース作ということで淡い期待をしてしまうわけですが……よせばいいのに(笑)。内容的には前作『THICKSKIN』(2003年)で展開したスタイルをより濃縮し、統一感を持たせた“USオルタナティヴロックの延長線上にあるハードロック”といったところでしょうか。前作でのぼんやりした印象から一転、今作からは迷いがまったく感じられないエネルギッシュな内容に仕上がっています。

グルーヴメタル的な楽曲も存在するのですが、それらがオルタナ路線からの派生という形でうまく消化されており、土着的オルタナ路線やパンキッシュな楽曲群と並んでも違和感なく楽しめる。また、パンクロック度が高まったことで、どこか『SLAVE TO THE GRIND』にも似た感触もある。これがマイケル・ワグナー効果でしょうか。

前作はジョニー加入前から制作していた楽曲も含まれていたでしょうし、なんなら90年代後半から書き溜めていた楽曲も多少は含まれていたでしょう。それもあって全体像が90年代的だったんですが、今作は(まだまだ90年代から抜け切れてはいないものの)2000年代に聴いてもあまり古臭さや時代遅れ感がない。バンドとしての一体感も良い形で作用して、新たなSKID ROWがようやくここで確立されたのかなという気がします。

THE ALARMが80年代半ばに生み出したヒットシングル「Strength」のカバーも収録されていますが、原曲のイメージから外れないアレンジは今作のテイストにも見事にマッチしている。きっとセバスチャン・バック(Vo)がいた頃ならセレクトしなかった1曲だと思いますが、ジョニーの声質や声域を考えると見事なカバーだと言えるでしょう。

唯一難点を挙げるとするならば、前作にあったバラードタイプの楽曲が皆無なこと。今作はレイチェル・ボラン(B)単独で書いた楽曲が全11曲中7曲と、彼のパンク魂がダイレクトに反映されたことも大きく、楽曲の幅は前作ほどではありません。統一感は文句なしですが、そういった点では物足りなさも感じてしまう。一長一短あるかと思いますが、『SLAVE TO THE GRIND』が好きなリスナーにも多少はアピールできる1枚だと断言しておきます。

 


▼SKID ROW『REVOLUTIONS PER MINUTE』
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SKID ROW『THICKSKIN』(2003)

2003年8月5日にリリースされたSKID ROWの4thアルバム。日本盤は同年10月29日発売。

セバスチャン・バック(Vo)、ロブ・アフューソ(Dr)が脱退し、3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)以降活動が停滞気味だったSKID ROW。1998年11月にはAtlantic Records時代の総決算となるベストアルバム『40 SEASONS: THE BEST OF SKID ROW』が発売され、一度バンドとしての節目を迎えてから新たなフロントマンとしてジョニー・ソーリンガーをオーディションにて迎えることになります。

前作から約8年半ぶり、レーベルをインディーズのSPV / Steamhammer Records(本国では自主レーベルのSkid Row Records、日本はビクター)に移して初の新作は、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)の全盛期メンバーに新加入のジョニー、元SAIGON KICKのフィル・ヴァロン(Dr)という新たな布陣で制作。大半の楽曲はデイヴ&レイチェルが書き下ろし、一部でデーモン・ジョンソン(ex. BROTHER CANE、ex. BLACK STAR RIDERSなど)などがソングライティングに参加しています。

作風的には2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)〜3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』で見せたグルーヴメタルの延長線上にある楽曲と、グランジ以降、主にPEARL JAM以降の土着的アメリカンロックをベースにしたオルタナティヴロックの延長線上にある楽曲という2つの軸が見えてきます。前者に関してはおそらく『SUBHUMAN RACE』以降に書き溜めていた楽曲なのかなという印象が強く、「Mouth Of Voodoo」や「Lamb」あたりは『SLAVE TO THE GRIND』に収録されていても不思議じゃないタイプ。

もう一方の土着的路線ですが、これはジョニーというシンガーの声質や声域に合わせた結果でもあるのかなと。「Ghost」や「See You Around」「One Light」あたりに代表される楽曲スタイルは、いかにも90年代半ば以降のオルタナ路線ですしね。実際、ジョニーの声質に非常に合っていますし、楽曲自体の完成度も非常に高い(これら多くの楽曲にデーモン・ジョンソンが携わっていることは触れておくべきポイントでしょう)。こういった楽曲が当時ラジオから流れてきても、そしてそれがSKID ROWの楽曲だと知らなかったとしても違和感なく楽しめたと思うんです。

そう、これをSKID ROWという名前のもとで披露することで違和感が生じてしまったんです。アルバムの中で先のグルーヴメタル路線とうまく噛み合っていないこともあり、全体的にぼんやりした印象を与えてしまう。これは8年というブランクがあまり良い方向に作用しなかった例ではないでしょうか。勿体ないったらありゃしない。

そこに加えて、代表曲「I Remember You」のパンクアレンジ「I Remember You Two」ですからね……これも蛇足でしたよね。いろいろできることを示したアルバムの中で、唯一過去を引きずってしまっている気がしてなりません。

あと、このテイストのアルバムを2003年に出すセンスも……いや、そこは100歩譲ろうか(苦笑)。悪いアルバムではないんだけど、先に述べたように全体像がぼんやりしてしまった、そんな惜しい1枚です。

 


▼SKID ROW『THICKSKIN』
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2021年7月 4日 (日)

2021年上半期総括

恒例となった上半期ベスト。昨年はコロナのあれこれで完全に失念していましたが、今年は6月末から続く仕事上のバタバタですっかり忘れていました。昨年は7月3日正午に出していたんですね……(苦笑)。

ということで、年々出し日が遅れつつある上半期ベスト。昨年は特例として「デジタルフォーマットならではのミニアルバムやEPを含む国内外の10作品」という形に変更しましたが、今年はそれ以前の「洋楽5枚、邦楽5枚」を死守しつつ「デジタルフォーマットならではのミニアルバムやEP、単曲を含む10作品」をピックアップしてみました。

 

THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』(amazon)(レビュー

 

THE ARMED『ULTRAPOP』(amazon)(レビュー

 

DANNY ELFMAN『BIG MESS』(amazon)(レビュー

 

GOJIRA『FORTITUDE』(amazon)(レビュー

 

WEEZER『VAN WEEZER』(amazon)(レビュー

 

GASTUNK『VINTAGE SPIRIT, THE FACT』(amazon)(レビュー

 

Little Glee Monster『REUNION』(amazon

 

からあげ姉妹『1・2・3』(amazon

 

楠木ともり『Forced Shutdown』(amazon

 

ドレスコーズ『バイエル』(amazon

2021年7月 3日 (土)

BORN OF OSIRIS『ANGEL OR ALIEN』(2021)

2021年7月2日にリリースされたBORN OF OSIRISの6thアルバム。日本盤未発売。

2019年1月に発売された『THE SIMULATION』から約2年半ぶりに届けられた本作は、前作の8曲26分というコンパクトさから一転、全14曲55分とボリュームが倍増。2015年の4thアルバム『SOUL SPHERE』(12曲47分)以降、初期EPを現メンバーで再録&再構築した『THE ETERNAL REIGN』(2017年/9曲24分)、『THE SIMULATION』とEP的な作品が続いていましたが、てっきり現在のサブスク主流なシーンを見据えた作風なのかと勘違いしていました(事実、『THE SIMULATION』発表時は2019年内にもう1枚同様のアルバムを発表予定と宣言していましたしね)。

『THE ETERNAL REIGN』での原点回帰、および前作『THE SIMULATION』での王道感の確立を経て届けられる本作ですが、もはやDjent云々だけでは語りきれない、2010年代以降のエクストリームメタルの中でも非常にオーソドックスになりつつあるプログ・メタルコアの第一人者にまで成長し、本作では王者の風格のようなものすら伝わってきます。

ただ、なんとなくですが3作目『TOMORROW WE DIE ALIVE』(2013年)あたりにまで存在した魅力的な要素が減退したような……オープニング曲「Poster Child」冒頭のスペーシーなシンセも彼ららしいっちゃあらしいんだけど、過去の楽曲と比べると整理されすぎている。それはどこか2000年代後半以降のメロディックデスメタル的な作風と重なり、結果として彼らの王道感向上にプラスとして作用している。特にこの曲はアウトロにのアーバンテイストが秀逸で、さりげなくフィーチャーされたサックスがいい味出していて、このへんも先の王道感につながるのかな。

「White Nile」といい、リードトラック「Angel Or Alien」といい、イビツさから生じる従来のらしさとバンドとして一般化したからこその王道感が見事にミックスされており、どんどん聴きやすくなっている印象を受けます。言い方を変えれば、良くも悪くも“普通”になり始めているのかなと……「Threat Of Your Presence」や「Crossface」などを聴くと、まだまだらしさ健在とうれしくなるものの、そのほかの楽曲ではBORN OF OSIRISとして突出した唯一無二の個性が見つけにくくなっているような気がしてなりません。

こういうスペーシーなシンセをフィーチャーしたDjent風味のプログ・メタルコアバンド、探せばいくらでも見つかりそうですしね。バンドがメジャー化していけばしていくほど、活動歴が長くなればなるほど、そういったポイントをいかに進化させ、いかに守り続けるかがどんどん難しくなると思うのですが、この6作目はまさにそういう壁にぶち当たっている最中なのかなと、聴いていて強く感じました。

同様の不安は前作の時点でも見えてはいたのですが、あのときはインタールードを含む少ない曲数だったので及第点を与えられましたが、今作のように14曲入り/55分というボリューミーな内容となるとそうもいかず。曲の差別化も正直うまく機能しているとは言い難いし、ポイントポイントでフックを見つけることはできるものの、それらが最後まで持続することなく、なんとなく最後まで到達してしまう……そういう勿体ないアルバムなんですよね。

純粋なプログメタル、あるいはプログレッシヴロックバンドのように長尺曲でのアンサンブルで個を確立させるタイプでもないし、今のように4分前後のコンパクトさで勝負を続けるのなら、どこかで大きな転換期を迎えないと難しいのかなという気がしています。『TOMORROW WE DIE ALIVE』で魅了された身からすると、もどかしさが否めませんが……頑張れ!

 


▼BORN OF OSIRIS『ANGEL OR ALIEN』
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2021年7月 2日 (金)

DOKKEN『SHADOWLIFE』(1997)

1997年4月15日にリリースされたDOKKENの6thアルバム。日本盤は同年4月9日に先行発売。

当初はドン・ドッケン(Vo)が元メンバーのジェフ・ピルソン(B)&ミック・ブラウン(Dr)を迎えて制作したソロアルバムが元となり、最終的にジョージ・リンチ(G)が加わる形で完成した再結成DOKKEN第1弾アルバム『DYSFUNCTIONAL』(1995年)。ソングライティング面でジョージがあまり関わっていないこともあって、非常にイビツな形でしたが、続く今作ではドン/ジョージ/ジェフ/ミックの黄金期体制が完全復活。のちにQUEENSRYCHEに加入するケリー・グレイ(CANDLEBOX、BROTEHR CAIN、NEVERMOREなど)をプロデューサーに迎え……結果として前作以上にイビツな内容の迷作を完成させることになります。

前作はグランジ影響下というよりも、そのルーツにあるロッククラシックからの影響をモダンに昇華させた作風でしたが、今作は真逆の方向性……つまり、グランジやモダンヘヴィネスをDOKKEN流に消化したゴリゴリの1枚なのです。ソングライティングのクレジットはすべて4人連名となっていますが、明らかにジョージの色が強まっていることはその曲調やプレイスタイルからも窺えるはずです。

『DYSFUNCTIONAL』での作風を気に入っている人なら、この新たなスタイルも違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。ただ、これをDOKKENの名でプレイするにはちょっと時期早々だったかな。だって、解散から6、7年しか経っていないわけで、まだ「In My Dreams」「Into The Fire」のイメージが完全に払拭できていませんからね。あの時代をリアルタイムで通過してしまったリスナー、DOKKENの功績を後追いしたビギナーにとって本作の内容は衝撃以外の何ものでもなく、そりゃ酷評されても仕方ないですよね。

でも、リリースから25年近く経った今、特にその後のジョージが関わった作品を考えると、ここでの変化は非常に筋が通っているというか、今さら驚くものではないんですよね(笑)。まあすべて後付けの意見でしかないですけど、これはこれで全然悪くない。ドン・ドッケンの念仏ボーカルもこういったモノトーンの楽曲にピッタリですし(苦笑)。ALICE IN CHAINSSTONE TEMPLE PILOTSと同時代に活躍した旧世代バンドとしては、なかなかの検討ぶりじゃないでしょうか(良くも悪くも)。前作にあった不協和音寄りのハーモニーに頼らなかったことだけは、褒めてあげるべきではないでしょうか。

ちなみに、M-8「Here I Stand」でボーカルを担当するのはジェフ・ピルソン。無理矢理ドンの歌唱に寄せている気がしないでもないですが、これはこれで味わい深い。「Hello」や「I Don't Mind」のグルーヴ感なんてこの楽器隊ならではの最高のものですし、ちゃんと聴き込めば発見の多い1枚じゃないかな。残念ながら、本作はすでに廃盤状態。日本ではデジタル配信もストリーミング配信もなしなので、中古ショップで安価で入手することをオススメします。

少なくとも、僕は本作以降の回帰路線よりも気に入っています(なんだかんだジョージ・リンチ派ですしね)。

 


▼DOKKEN『SHADOWLIFE』
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2021年7月 1日 (木)

ROUGH CUTT『III』(2021)

2021年6月8日にリリースされたROUGH CUTTの3rdアルバム。日本盤未発売。

ご存知の方も多いかと思いますが、ROUGH CUTTは80年代半ばに活躍したアメリカ出身のヘアメタル/グラムメタルバンド。結成当初はのちにオジー・オズボーンのバンドに参加するジェイク・E・リー(G)が在籍していたことで知られ、1985年に1stアルバム『ROUGH CUTT』、翌年に2ndアルバム『WANTS YOU!』を発表しますが、1987年にポール・ショティノ(Vo)が脱退(その後、QUIET RIOTに加入)。バンドは解散に追い込まれます。以降、アミア・デラクは90年代末にORGYのメンバーとして再デビューしています。2000年にポール・ショーティノを中心に新たなメンバー再結成していますが、2016年頃にポール、アミア、マット・ソーア(B)、クリス・ヘイガー(G)、デイヴ・アルフォード(Dr)の全盛期メンバーで復活。しかし、2020年頃にポール、アミア、マット組とクリス&デイヴ組に分裂し、結果2つのROUGH CUTTが誕生することになります(あれ、どこかで聞いたことがある話。笑)。クリス&デイヴ組ROUGH CUTTはスティーヴン・St.ジェイムズ(Vo)らを迎えて「Black Rose」ちう新曲をYouTubeで発表しています。

……話は長くなりましたが、本題はここから(笑)。今回紹介するROUGH CUTTはポール、アミア、マット組のほう。タイトルからもわかるとおり、本作は2ndアルバム『WANTS YOU!』(1986年)から実に35年ぶり(笑)の3作目となります。レコーディングには上記3人に加え、アディショナル・ミュージシャンとしてクリス&デイヴの名前もクレジットされています。要は、2016年以降から制作していた楽曲、音源をそのまま使用しているということでしょうか。さらに、元QUIET RIOT、元RATTのカルロス・カヴァーゾ(G)が「Bleed」「Bed Of Black Roses」「Electric」でリードギターを担当。ブックレット内のバンドクレジットにはカルロスの名前も4人目のメンバーとして掲載されています。LAメタル界の人事、2021年も複雑です(苦笑)。

思えばポール・ショーティノは昨年春、『MAKE A WISH』(2020年)という11年ぶりのソロアルバムを発表しており、中音域を中心とした歌唱スタイルに昔の面影がなくなったことで若干肩を落としたものですが、今作のボーカル/メロディラインに関してもその延長線上にあると言えるでしょう。初期のような派手さは皆無で、ダーク&ヘヴィかつブルースフィーリングの強いハードロックはどこか90年代的ですが(「House Of Pain」なんてもろにモダンヘヴィネス以降のハードロックだしね)、それも1周回ってアリかな。最初通して聴いたときは物足りなさを覚えましたが、2度3度と聴き返しているうちに意外と馴染んできました。「Electric」は比較的派手な部類ですし、うん、悪くはないかな。

ちなみに、「Bed Of Black Roses」という曲はクリス&デイヴ組ROUGH CUTTが発表した「Black Rose」と異名同曲。アレンジは比較的似ており(そりゃそうだろう、レコーディングメンバーが被ってるしな)、ボーカルのタッチの違いでこうも印象が変わるんだなと。そのへんもぜひ聴き比べてもらいたいところです。


(個人的にはクリス&デイヴ組ROUGH CUTTの「Black Rose」のほうがキャッチーに聴こえます)

LAメタルファンやヘアメタル/グラムメタル愛好家は聴いておいて損はないですが、初めてROUGH CUTTを聴くビギナーはまず1stアルバム『ROUGH CUTT』から聴くのが無難です。だって、純粋にカッコいいから。そのあとに、ポール&カルロスが在籍したQUIET RIOTのアルバム『QR』(1988年)を聴いてみてください。QUIET RIOTのイメージを覆す、最高にカッコいいブルースハードロックが堪能できるので(笑)。

ということで、本作はマニア向けの1枚かな。ストリーミング配信もされていませんし、CDの入手も難しそうですし(僕は大阪・難波のS.A.MUSIC通販で入手しました)、気になる方はBandcampでデジタルアルバムを入手してみてはいかがでしょう。

 


▼ROUGH CUTT『III』
(bandcamp:MP3

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