KIX『HOT WIRE』(1991)
1991年7月9日にリリースされたKIXの5thアルバム。日本盤は同年7月25日発売。
前作『BLOW MY FUSE』(1988年)からシングルカットされた「Don't Close Your Eyes」が最高11位まで上昇し、アルバム自体も1年がかりで100万枚を超えるヒット作に(最高46位)。1989年9月には念願の初来日公演も実現するなど、それまでの苦労が一気に報われることになります。
前作から約3年ぶりとなるニューアルバム、前作で「Cold Blood」や「No Ring Around Rosie」で共作したテイラー・ローズをプロデューサーに迎えて制作。前作の延長線上にある(といっても、彼らの場合基本路線はほぼ変わりませんが)AC/DC直径のキャッチーなハードロックを展開しています。
とはいえ、前作での成功がもたらした自信は至るところから感じられ、オープニングナンバー「Hot Wire」のイントロで聴くことができる仰々しさや、シングルカットもされた「Girl Money」アウトロの口笛など、これまでにない仕掛け/演出を楽しむことができます。
楽曲自体もメインソングライターであるドニー・パーネル(B)を軸にしつつも、テイラー・ローズが前作以上にコ・ライターとして関わっており(全10曲中5曲にクレジット)、「Don't Close Your Eyes」にも関わったボブ・ハリガン・Jrも「Cold Chills」「Same Jane」の2曲に、USプログロックバンドCRACK THE SKYのフロントマンだったジョン・パルムボも「Pants On Fire (Liar, Liar)」「Hee Bee Jee Bee Crush」に名を連ねています。職業ソングライターとのコ・ライトは80年代後半以降活発化し、レコード会社やプロデューサーの意向もあって90年代にはいってからさらに増えていった印象があります。
ああ、そうだ。先ほど「前作の延長線上にある(といっても、彼らの場合基本路線はほぼ変わりませんが)AC/DC直径のキャッチーなハードロック」と書きましたが、バラードタイプの楽曲に関してはそれに当てはまらないかな。AC/DCはこの手の楽曲に手を出していませんが、KIXの場合この時期のほかのHR/HMバンド同様にパワーバラードにも着手。本作では「Don't Close Your Eyes」とも異なる「Tear Down The Walls」というメジャーキーのバラードを制作しており、バンドの可能性を広げています。
クールな「Cold Chills」や王道ナンバー「Luv-A-Holic」などは初期からの彼らにも通ずるスタイルですし、「Same Jane」や「Pants On Fire (Liar, Liar)」は前作での成功から得た手応えが見事に反映されたカッコよさ&キャッチーさを楽しむことができる。『BLOW MY FUSE』での成功を完璧な形でフォローアップする良作ではないでしょうか。
しかし、1991年という時代が災いしてか、本作からはヒットシングルは生まれることなく(「Girl Money」や「Tear Down The Walls」がUSロックチャートで中ヒットした程度)、アルバムも最高64位(全米で20万枚程度)という結果で終了してしまいます。その後、KIXは今作を携えたツアーからの音源を収めたライブアルバム『LIVE』(1993年)をリリースし、デビューから長らく所属したAtlantic Recordsを離れることになります。まさにHR/HM冬の時代と符合しますね……。
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