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2021年9月12日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE ULTRA VIVID LAMENT』(2021)

2021年9月10日にリリースされたMANIC STREET PREACHERSの14thアルバム。当初は9月3日発売予定でしたが、制作上の都合で世界的に1週間遅れでリリースされることになりました。

オリジナルアルバムとしては『RESISTANCE IS FUTILE』(2018年)から約3年半ぶりの新作。この期間には5thアルバム『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998年)の20周年記念盤(2018年)および同作を伴う来日公演(同年)、2ndアルバム『GOLD AGAINS THE SOUL』(1993年)のデラックスエデション(2020年)などアニバーサリー企画が複数あったので、意外と空いた感覚がないんですよね。それに、ジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)の2ndソロアルバム『EVEN IN EXILE』(2020年)もありましたしね。

レコーディングは2020〜21年にかけて、長年のコラボレーターであるデイヴ・エリンガととも実施。その後、デヴィッド・レンチがミックスを手がけることで完成に至っています。本作に対して、ニッキー・ワイヤー(B, Vo)は事前に「Like The Clash playing Abba」「The Clash when you felt they play in any style」というキャッチフレーズを掲げていました(そのへんについてはリード曲「Orwellian」発表時のレビューにてご確認を)。

ここ20年くらいのマニックスにはABBA的要素、そしてTHE CLASH的な音楽的編成は当たり前のように存在していました。しかし、なぜここでABBAという名前を改めて挙げたのか。その理由のひとつとして、楽曲制作時に使った楽器の大半がギターではなくピアノだったころが挙げられるでしょう。ジェイムズがピアノを覚えたことで、そのまま作曲にも用いられたことで、メロディやコードの運びはこれまでのギター中心の楽曲群と異なる形に。結果として、全体を通して穏やかで優しく、温かみの強いアルバムに仕上がったような気がします。

マニックスもメジャーデビューして今年で30年。もはや初期のようなパンキッシュな音楽スタイルを求めることはありませんが、ここからは「どう枯れていくか」がポイントになると思っています。そんな中で、あえて「ただ枯れる」のではなく、大人になったからこその懐の深さ、豊かさを前提に、「老いていくのも悪くない」と提示していく。それがここ数作のマニックスだったような気がします。

そして、その境地……50代に入り「生きること、年を取ることは悪いもんじゃない」と高らかに宣言したのがこの14作目なのかなと。しかも、その過程で曲作りの手法をちょっと変えることで、さらなるフレッシュさも手に入れた。こうなったのは昨今のコロナ禍も少なからず影響しているとはいえ、これは良い進化ではないかと個人的にも感じています。

とにかく、どの曲もメロディがより練り込まれていて、ライブ云々よりも音源としての作品性が高いものばかり。コロナ禍でツアーが思うようにできなくなったこともあり、スタジオにこもってじっくり制作と向き合えたことも、この完成度の高さに大きな影響を与えていることは間違いありません。

歌詞は相変わらずただ甘いだけではない、現在の社会情勢を見据えた上での50代の彼らの目線が刻まれています。もちろん、ただ甘ったるいだけのアルバムを彼らに求めることはありませんし、だからこそこのスウィートなメロディに辛辣な歌詞が載るのもいかにもマニックスだなと。うん、いつもどおりすぎ(笑)。

そんな中で、オープニングを飾る「Still Snowing In Sapporo」が醸し出すセンチメンタルさには胸を締め付けられます。これがオープニングトラックか……と最初に聴いたときはびっくりしましたが、このタイミングにリッチー・エドワーズ(G)を含む編成での最後のジャパンツアー(1993年)に訪れた札幌のことを歌にするなんて……オッサンたち、ノスタルジーに浸ってるんじゃねえよ(笑)。最高かよ。

近年は90年代の初期6作のアニバーサリー関連での来日が続き、純粋なニューアルバムのサポートツアーでの日本公演は皆無。アニバーサリー抜きの純粋なライブ、2014年のフジロックが最後じゃないでしょうか。このご時世でなかなか難しいものはありますが、できることなら早くこの新曲群を生で聴きたいものです。そして、「A Design For Live」や「You Love Us」を大合唱できる日はいつ戻ってくるのでしょうか……2022年、少しでも状況がよくなっているといいな。

 


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