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2021年9月16日 (木)

IRON MAIDEN『SENJUTSU』(2021)

2021年9月3日にリリースされた、IRON MAIDENの17thアルバム。

全英1位/全米4位を記録した前作『THE BOOK OF SOULS』(2015年)から6年ぶりのオリジナルアルバム。バンドはこの期間にも『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』(2017年)、『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』(2020年)とライブアルバム2作を発表しており、それぞれ全英17位/全米49位、全英7位/全米53位というまずまずの数字を残しています。

前作は初のCD2枚組/全11曲・92分という過去最長の内容でしたが、続く今作もCD2枚組という形態に。今作は全10曲・82分とボリューム的には前作には及ばないものの、CD1枚に収録するには2分ほど長すぎるということで2枚組になったようです。それでも70年代だったら、アナログ盤4枚組に相当するボリュームですけどね。

さて、内容について。リードトラック「The Writing On The Wall」が比較的地味なミディアムナンバーだったこともあり、個人的には「なんとなく『A MATTER OF LIVE AND DEATH』(2006年)の作風に似てるかな?」と感じていました。で、いざアルバムを通して聴いてみると……地味。前作『THE BOOK OF SOULS』も決して派手な作品ではなかったですし、あのときも「なんとなく『A MATTER OF LIVE AND DEATH』の作風に似てるかな?」という感想を抱きましたが、今作に関してはそれ以上。むしろ『A MATTER OF LIVE AND DEATH』をまた聴いているんじゃないか?というデジャブに陥ったほどです。

こういう作風のときって、間違いなくスティーヴ・ハリス(B)の創作意欲にブーストがかかっているときなんですよね。『A MATTER OF LIVE AND DEATH』然り、『THE BOOK OF SOULS』然り。『THE FINAL FRONTIER』(2010年)のときも比較的その傾向にありましたが、あのときはほかのメンバーの創作意欲も強まっていた時期だと思うので、もうちょっと全体的なバランスが整っていた気がしますが、今作に関してはスティーヴ・ハリス無双という表現がぴったり。80年代から90年代初頭にかけて、ファンが喜ぶことに徹しつつ自身の表現したいことも重ねてきた彼ら、そういったことを散々やってきたのだから、メンバー全員が60代に突入した今はもう余生。リスナーが、ファンが、過去のメイデンがといった外野の声を無視して、本当にやりたいことを、作りたい音楽を、表現したい芸術を形にするのがベストなのかもしれません。そういった意味で、このアルバムで表現されている内容は純度100%のIRON MAIDEN=スティーヴ・ハリスだと思います。文句なし。

ただ、そこに従来のファンが求めるであろう派手さ、尖った部分、わかりやすさが伴っていないだけ。商業作品としては間違っているのかもしれないけど、IRON MAIDENが2021年に表現すべき音楽としては大正解。この矛盾を孕んだ作品、果たしてどこまで正しく評価されるのかわかりません。きっとこの先、あと1枚2枚アルバムを作れるのかどうか。あるいは、何か突発的な事故が起こってこのアルバムがラストアルバムになる可能性だってある。年齢的に、そして時勢的に考えると、近年のメイデンは毎回「これがラストアルバム」という気持ちで制作と向き合っていると思うんです。

商業的に成功するような作品は『FEAR OF THE DARK』(1992年)でひとつ完結している。あるいは、6人になって最初の1、2枚(『BRAVE NEW WORLD』『DANCE OF DEATH』)でもう一度トライしてきた。もう昔のような「売れるアルバム」「大衆にアピールするアルバム」という鎖に縛られる必要はない。演奏していて楽しい音楽、自分たちが聴いて楽しい音楽を作ればいい。その答えが今回の『SENJUTSU』というアルバムなのかもしれません。

ブルース・ディッキンソン(Vo)は前作制作前に舌癌と向き合い、さらに加齢による声域減退から、ボーカリストとしては確実に下り坂へと折り返しています。それにより、メロディラインが以前と比べて単調になり始めている。これはもう仕方のないこと。楽曲のテンポ問題も一緒でしょう。そういった肉体的制限が以前よりも厳しい中で、ここまでまとめるのは相当苦労したはずです。

ですが、そういった問題は作品の質とは無関係。以前より地味だからダメ、サヨナラ、という人もいるはずです。実は、このアルバムを最初に聴いたときは自分もそっち側に行ってしまうのかな、と思っていました。しかし、二度三度とリピートしているうちに、嫌いになれない自分に気づく。むしろこれ、好きなやつじゃん、と気づくのです。そうか、自分『A MATTER OF LIVE AND DEATH』も『THE BOOK OF SOULS』も嫌いになれなかったもんな。じゃあ好きなわけだ。特にDISC 2(7分20秒、10分20秒、12分40秒、11分20秒という長尺曲4曲収録)がお気に入りです。

こんなのレビューでもなんでもないですし、単なる自己肯定のための戯言に過ぎません。しかし、現在進行形のIRON MAIDENが自分にとってどんな存在なのか、それを再認識する上で今回のアルバムは非常に重要な“踏み絵”になったような気がします。最高傑作ではないけれど、真ん中より2、3歩上に位置する「気づいたら手に取っているお気に入り」。そういうユルいポジションの良作だと断言しておきます。

最後に。本作はイギリスで3作連続1位を獲得することができませんでしたが(最高2位)、アメリカではキャリア最高位となる3位にランキングしたことを記して、この長い駄文を締めたいと思います。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 


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