DEPECHE MODE『ULTRA』(1997)
1997年4月14日にリリースされたDEPECHE MODEの9thアルバム。日本盤は同年4月10日発売。
全米&全英1位を獲得した前作『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』(1993年)から4年ぶりの新作。バンドは同作を携えたワールドツアー「DEVOTIONAL TOUR」を1993〜94年にかけて14ヶ月にわたり敢行し、大成功を収めました。また、同アルバム収録曲のライブテイクをオリジナルアルバムと同じ曲順で収めたキャリア2作目のライブアルバム『SONGS OF FAITH AND DEVOTION LIVE』(1993年)も発表。こちらはオリジナルアルバムほどの成功は記録できませんでしたが(全英46位、全米193位)、バンドの人気はピークに達したのではないでしょうか。
しかし、こういったバンドの好調ぶりと相反し、メンバーは肉体的・精神的に疲弊していきます。デイヴ・ガーン(Vo)は薬物に溺れ、マーティン・ゴア(G, Key)もアルコール中毒に悩まされます。そんなメンバーの不安定ぶりに見切りをつけ、1995年にアラン・ワイルダー(Key, Piano, Dr)はバンドを脱退。この頃、デイヴは家庭内不破も一因となり自殺未遂やオーバードーズにより意識不明に陥ったりと、生死を彷徨うことになります。
1996年に入り、ひとまずデイヴ抜きでマーティンとアンディ・フレッチャー(Key)は新作レコーディングを開始。アランが抜けた穴を新規プロデューサーとして起用したティム・シムノン(BOMB THE BASS)とともに曲作り/トラック制作を進めます。途中からデイヴも合流しますが、まだまだ復調にまで至っていなかったこともあり、このときに録音したボーカルで使用できたものはごくわずか。しかし、それでも根気強くスタジオワークを続け、1997年2月にようやく完成にまで漕ぎ着けます。
当時、リードトラック「Barrel Of A Gun」を最初に聴いたときは、デイヴのどこか覇気のないボーカル(しかもじゃっかん歪む)を含めそのダークさに若干引きました。いや、これまでの作品だって、それこそ前作『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』だってダークでした。しかし、この「Barrel Of A Gun」とそれに続くアルバム『ULTRA』のダークさはどこか別方向からのもの……生理的な嫌悪感を覚えるくらいのダークさだったのです。例えば、それ以前の作品が自身の宗教観など信仰から生まれるものだったとしたら、今作はそういった信仰すらあてにならないという絶望の底から生まれたものという気がしてならないのです。
だからなのか、本作リリース当時はあまりポジティブに受け入れることができず、生理的拒否反応を示すのです。特に1997年当時はTHE CHEMICAL BROTHERSやTHE PRODIGYのようなアッパー、かつサイケデリックなダンス/エレクトロニックミュージックがブレイクしており、僕自身もそういった方向性に興味を示していたので、しばらくは『ULTRA』という作品の魅力に気づくことはできませんでした。
しかし、あれから20数年経った今、僕自身もいろんな経験を積んだこともあってなのか、それとも時代がそういうダークさを求めているのか、『ULTRA』という作品とフラットに向き合うことができるようになりました。自然とこういうダークさを欲する自分がいることに気づき、触れ合い続けるとそのさらに奥底にある“癒し”や“赦し”の要素を見つけることができたのです。
ティム・シムノンの果たした役割(時代を反映したヒップホップ以降のダンスミュージックを反映させたトラックメイキング)は、それ以前のDEPECHE MODEから思えば斬新なものですし、そこにゴシック色の強いテイストが乗ることで唯一無二の世界観が繰り広げられる。こんなの、クセにならないほうがおかしい。過去2、3作ほどのわかりやすさは薄いかもしれませんが、それだからこそ一度魅力に気づいてしまったあとの中毒性は随一だと思います。これぞ至高の1枚。
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