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2021年9月 4日 (土)

THE WiLDHEARTS『21ST CENTURY LOVE SONGS』(2021)

2021年9月3日にリリースされたTHE WiLDHEARTSの8thオリジナルアルバム。当初ファンクラブ限定でリリースされた『FISHING FOR LUCKIES』(1994年)、カバーアルバム『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE, VOL. 1』(2008年)を含むと、通算19枚目のスタジオアルバムということになります。

ジンジャー(Vo, G)、C.J.(G, Vo)、リッチ(Dr)、ダニー(B, Vo)というクラシックラインナップが約16年ぶりに正式復活し、約10年ぶりに完成させたフルアルバム『RENAISSANCE MEN』(2019年)から2年4ヶ月ぶり。同じ布陣での2作目となりますが、基本的には前作の延長線上にある“らしい”良作と言えるでしょう。

前作はバンドの1stフルアルバム『EARTH VS THE WiLDHEARTS』(1993年)とよく比較され(実際、ジンジャー自身もそのような発言をしていましたが)、続く今作は順当に2ndフルアルバム『P.H.U.Q.』(1995年)のような内容になるのでは?などと、リードトラック「Remember These Days」が公開されたときに噂されました。ジンジャーも今作リリース発表時に同様の件に触れていましたが、確かに本作にはそれらしいテイストが随所から感じられます。

が、しかし。当初バンドの2ndアルバムは『FISHING FOR LUCKIES』になるはずだったのでは?……ということを急に思い出したんです。『FISHING FOR LUCKIES』と『P.H.U.Q.』って表裏一体の2枚だよなということを考えると、確かにこの新作って『FISHING FOR LUCKIES』っぽいんですよね。

アルバム冒頭を飾るタイトルトラックの複雑怪奇な展開は、まさに『FISHING FOR LUCKIES』で見せたそれですし、「Remember These Days」や「Splitter」でのキャッチーさは『P.H.U.Q.』で聴けたそれで、「Institutional Submission」での“ハードコアなほろ苦いテイストの中にも、ホロっとする甘さやサイケデリックさが感じられる”のは『FISHING FOR LUCKIES』や『P.H.U.Q.』で試みたことそのまま。そういったテイストを5分間に凝縮するあたりが、あの頃から30年近く経って成長を遂げた彼らならではといったところでしょうか。

前作はこのバンドの持つ初期衝動性を再現させ、もう一度ここからスタートしていくという気概がパンキッシュなサウンドに表れていましたが、今作はそこからずっしりと腰を据えて、やりたいことをよりやりたいように追求していく“2作目らしさ”が伝わる。バンドにとって何度目かの“2ndアルバム”的ポジションのアルバムとなりますが、2000年代に発表されたどんなアルバムよりも極上な仕上がりだし、前作以上にこのバンドのエバーグリーンな側面とストレンジな側面が極端な形で並列する、問答無用の1枚だと断言できます。

こんな状況でもなければ、きっとこの傑作を携えた来日も近いうちに実現したんでしょうけど、それでなくても前回の来日でジンジャーがポカをしてしまったので、日本公演はしばらく難しいかな……まずはこの最高のロックンロール/ハードロックアルバムを存分に楽しみ尽くしたいと思います。

 


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