CARCASS『TORN ARTERIES』(2021)
2021年9月17日にリリースされたCARCASSの7thアルバム。
2007年にジェフ・ウォーカー(B, Vo)、ビル・スティアー(G)の初期メンバーに90年代前半に在籍したマイケル・アモット(G)とマイケルの盟友ダニエル・アーランドソン(Dr)というARCH ENEMY組の4人で再結成&ライブ活動を再開させたCARCASS。当初は過去の楽曲を演奏するだけにとどまりましたが、ジェフ&ビルは新ドラマーにダニエル・ワイルディング(Dr)を迎えて新作制作に突入。2013年に17年ぶりの新作『SURGICAL STEEL』を発表し、真の意味での復活を遂げます。同作リリースと同時に2ndギタリストとしてベン・アッシュが加入。2013&2015年秋に『LOUD PARK』出演、2014年春には1994年以来となる単独来日(初の本格的ジャパンツアー)と、3年連続来日を果たしました。
2018年にはベンが脱退し、ジェフ/ビル/ダニエルのトリオ編成でレコーディングに突入。2019年には再結成後2作目となるアルバムを完成させ、2020年夏のリリースを目指して活動していました。が、ご存知のとおり、コロナ禍の影響によるロックダウンで海外のプレス工場が閉鎖されたこともあり、リリースは1年延期に。こうして、前作から8年ぶりとなるニューアルバムが手元に届けられたわけです。
CARCASSに関しては、もはやこんな駄文を読むよりも『ヘドバン』での掟ポルシェ氏のテキストを参考にしていただくのが一番。もっとも信頼できる圧倒的な解説が展開されているので、まずはそちらを読んでいただいて……こちらは暇つぶし程度に。
『SURGICAL STEEL』がCARCASSの知名度を高める結果となった3rdアルバム『NECROTICISM – DESCANTING THE INSALUBRIOUS』(1991年)と4thアルバム『HEARTWORK』(1993年)でのサウンド……のちにメロディックデスメタルと呼ばれるようになるスタイルの原型となる楽曲/演奏を軸にしつつ、今のCARCASSらしく(良い意味で)整頓された、ガッチリしたメタル/エクストリームミュージックを楽しむことができました。しかし、これまでに1枚たりとも同じスタイルの作品を作ってこなかったCARCASS、続く本作では前作とまったく異なるスタイルにチャレンジしています。
サウンドや演奏のベースになるものは前作『SURGICAL STEEL』の延長線上にありつつも、楽曲の質感や音楽性はもっと別のもの……ぶっちゃけ、エクストリームミュージックとは一線を画するものが採用されているように感じました。ジェフのインタビューでは“Dad Rock”という例えが出てきましたが、70年代のハードロックなどHR/HMのルーツになるような音楽からの影響が、各曲の随所から感じ取ることができます。なのに、アルバムを通して聴いたときにしっかり感じられるエクストリーム感。本当に不思議です。
さらに、本作からはビルにとっての大切なルーツであるNWOBHM期のバンドたちからの影響もしっかり汲み取ることができる。例えば、「Eleanor Rigor Mortis」でのアレンジは80年代初頭のスラッシュメタルとそのルーツとなっているNWOBHM期のバンド、10分近くにおよぶ「Flesh Ripping Sonic Torment Limited」はDIAMOND HEADやIRON MAIDENをはじめとするバンドからの影響も見つけることができるのが、これまでの作品との大きな違いかなと。
今作を語る上でもうひとつ重要になってくるのが、実はリリース時に酷評された5thアルバム『SWANSONG』(1996年)の存在。同作は『HEARTWORK』で試みたスタイルをよりシンプルかつピュアな形に昇華させたもので、ビルのNWOBHM趣味が前作以上に色濃く表れています。リリースから25年経った今聴くと同作は非常に聴きやすい、よく作り込まれたハードロックアルバムとして十分通用する1枚ですが、今回の『TORN ARTERIES』はその『SWANSONG』で試みたことをより純化させつつ、しっかりエクストリームミュージックとして機能するアルバムへと昇華させた。共通項はたくさんあるものの、似て非なる“オリジナル”な1枚だと思うんです。
初期のアグレッシヴさとは別ベクトルの攻撃性と、『SWANSONG』級の聴きやすさ/親しみやすさを伴った異色作。いや、CARCASSのアルバムは毎回、常に異色なんです。今回も我々の期待を遥かに上回る、予想の斜め上をいく傑作です。8年待った甲斐があった。本当にありがとうございます。
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