カテゴリー

無料ブログはココログ

« 2021年9月 | トップページ | 2021年11月 »

2021年10月

2021年10月31日 (日)

2021年9月のアクセスランキング

ここでは2021年9月1日から9月30日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↑●位)」の表記は、「更新日/2021年8月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:METALLICA『METALLICA: DELUXE EDITION』(2021)(※2021年9月14日更新/NEW!)

2位:CARCASS『TORN ARTERIES』(2021)(※2021年9月17日更新/NEW!)

3位:MOTLEY CRUE『DR. FEELGOOD (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)(※2021年9月5日更新/NEW!)

4位:THE WiLDHEARTS『21ST CENTURY LOVE SONGS』(2021)(※2021年9月4日更新/NEW!)

5位:IRON MAIDEN『SENJUTSU』(2021)(※2021年9月16日更新/NEW!)

6位:GUNS N' ROSES『HARD SKOOL』(2021)(※2021年9月25日更新/NEW!)

7位:MANIC STREET PREACHERS『THE ULTRA VIVID LAMENT』(2021)(※2021年9月12日更新/NEW!)

8位:V.A.『THE METALLICA BLACKLIST』(2021)(※2021年9月11日更新/NEW!)

9位:ENUFF Z'NUFF『NEVER ENUFF: RARITIES & DEMOS』(2021)(※2021年9月7日更新/NEW!)

10位:OZZY OSBOURNE『NO MORE TEARS (30TH ANNIVERSARY EXPANDED EDITION)』(2021)(※2021年9月19日更新/NEW!)

 

11位:GUNS N' ROSES『OH MY GOD』(1999)(※2021年9月25日更新/NEW!)

12位:TURNSTILE『GLOW ON』(2021)(※2021年9月1日更新/NEW!)

13位:BRING ME THE HORIZON『DiE4u』(2021)(※2021年9月21日更新/NEW!)

14位:ENUFF Z'NUFF『SEVEN』(1997)(※2021年9月8日更新/NEW!)

15位:DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』(2021)(※2021年9月15日更新/NEW!)

16位:THE BRONX『BRONX VI』(2021)(※2021年9月3日更新/NEW!)

17位:HALSEY『IF I CAN'T HAVE LOVE, I WANT POWER』(2021)(※2021年9月2日更新/NEW!)

18位:LEPROUS『APHELION』(2021)(※2021年9月18日更新/NEW!)

19位:SPIRITBOX『ETERNAL BLUE』(2021)(※2021年9月22日更新/NEW!)

20位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓2位)

 

21位:MOTÖRHEAD『MARCH ÖR DIE』(1992)(※2021年9月20日更新/NEW!)

22位:CHEAP TRICK『THE LATEST』(2009)(※2021年9月10日更新/NEW!)

23位:DANKO JONES『POWER TRIO』(2021)(※2021年9月6日更新/NEW!)

24位:DEPECHE MODE『ULTRA』(1997)(※2021年9月13日更新/NEW!)

25位:GUNS N' ROSES『ABSUЯD』(2021)(※2021年8月6日更新/↓1位)

26位:SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』(2021)(※2021年9月24日更新/NEW!)

27位:MANIC STREET PREACHERS『NATIONAL TREASURES - THE COMPLETE SINGLES』(2011)(※2021年9月23日更新/NEW!)

28位:CHEAP TRICK『HEAVEN TONIGHT』(1978)(※2021年9月9日更新/NEW!)

29位:AVENGED SEVENFOLD『DIAMONDS IN THE ROUGH』(2020)(※2020年2月8日更新/Re)

30位:JINJER『WALLFLOWERS』(2021)(※2021年9月30日更新/NEW!)

2021年10月のお仕事

2021年10月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※10月31日更新)

 

[WEB] 10月31日、「リアルサウンド」にてインタビューGARNiDELiA×土岐隼一 『大正オトメ御伽話』特別対談 両者に聞く、いつの時代も変わらない幸福の在り方が公開されました。

[WEB] 10月29日、「リアルサウンド」にてライブレポートGALNERYUS、新旧楽曲を織り交ぜて提示した“最高”を超える姿 新体制で臨んだ最新ツアーを振り返るが公開されました。

[WEB] 10月29日、「リアルサウンド」にてインタビュー日向坂46 潮紗理菜&上村ひなのインタビュー 初の全国ツアーや攻めの新曲「ってか」で深まった自信と絆が公開されました。

[WEB] 10月29日、「リアルサウンド」にてライブレポート乃木坂46 寺田蘭世、清々しい笑顔で迎えたラスト公演 “原点回帰”的なアンダーライブがグループにもたらす意味が公開されました。

[WEB] 10月27日、「QJweb」にてインタビュー上坂すみれが語る「お金、生活、そしてナチュラルな私」声優デビュー10年、アーティストとしての未来が公開されました。

[WEB] 10月24日、「リアルサウンド」にてコラムONE OK ROCK、新たなライブアンセム「Wonder」誕生 閉塞感を打破する豪快なスタジアムロックが公開されました。

[WEB] 10月23日、「クランクイン!!」にてコラム乃木坂46、初ベストアルバムのタイトルは『Time flies』が公開されました。同様のテキストが複数メディアにて公開中です。

[WEB] 10月21日、「リアルサウンド」にてライブレポート日向坂46、力強いパフォーマンスで交わした新たな約束 『全国おひさま化計画 2021』ファイナルでの挑戦と集大成が公開されました。

[WEB] 10月18日、「ホミニス」にてコラムGuilty Kiss・逢田梨香子、小林愛香、鈴木愛奈が「ラブライブ!」シリーズ初の生バンドライブで見せた歌唱力が公開されました。

[WEB] 10月14日、「ホミニス」にてコラム日野聡が「鬼滅の刃」でも聴かせた凛とした声で世界の呪い伝説をナビゲート!が公開されました。

[WEB] 10月13日、「ホミニス」にてコラム神谷浩史が子育てをするペンギンたちの姿をナレーションとともに温かく見守る!が公開されました。

[WEB] 10月13日、「リアルサウンド」にてインタビュー櫻坂46 小池美波&井上梨名&関有美子が語る2年目のテーマ 挑戦する中で色づき始めた“櫻坂らしさ”が公開されました。

[紙] 10月12日発売「日向坂46新聞」2021年秋号にて、金村美玖×丹生明里×渡邉美穂ユニット座談会、小藪千豊×潮紗理菜+佐々木美玲+東村芽依+丹生明里座談会、全国アリーナツアー初日レポート、佐々木久美×高瀬愛奈×富田鈴花×松田好花ツアー座談会、加藤史帆×齊藤京子対談を担当しました。(Amazon

[紙] 10月6日発売「Ani-PASS」#15にて、内田真礼インタビューを担当しました。(Amazon

[紙] 10月4日発売「日経エンタテインメント!」2021年11月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 10月1日、「Billboard Japan」にてインタビュー神はサイコロを振らない×キタニタツヤが明かす「愛のけだもの」の制作裏話が公開されました。

=====

また、2021年9月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotify、AppleMusicにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2109号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

R.E.M.『NEW ADVENTURES IN HI-FI』(1996)

1996年9月9日にリリースされたR.E.M.の10thアルバム。日本盤は同年9月25日発売。

前作『MONSTER』(1994年)から2年ぶりに発表された本作は、同作を携えたUSツアーの最中訪れた各地でレコーディングを実施。プロデューサーにはブレイク作『DOCUMENT』(1987年)からタッグを組むスコット・リット(INCUBUSNIRVANAHOLEなど)を迎えています。

アコースティックやカントリーのテイストを強めた『OUT OF TIME』(1991年)『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』(1992年)、生々しいロックを取り戻した『MONSTER』と、ここ数作は作品ごとに趣向を凝らしてきた彼らでしたが、今作は録音した土地によって曲調やスタイルも異なることもあり、土着的な音楽とハードなオルタナティヴロックが交互に並ぶようなハイブリッドな作品に仕上がっています。例えば、オープニングを飾る「How The West Was Won And Where It Got Us」は『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』からの流れを汲む内省的な楽曲だとしたら、続く「The Wake-Up Bomb」は『MONSTER』の延長線上にあるガレージロック。以降もカントリーやフォーキーな楽曲とグランジ以降の流れにあるロックチューンが無作為に並びます。

“無作為に”と表現したのは、そこにストーリー性などドラマチックな構成が感じられないから。むしろ淡々とした流れがいかにも彼ららしく、制作過程なども踏まえるとどこかドキュメンタリータッチのロードムービーのようにも感じられます。アートワークといい、アルバムタイトルといい、本作における「旅」というキーワードは切っても切れないものがあるはずです。

作為的なドラマチックさがないぶん、アルバムは山を迎えることもなければ極端にダークな深みにハマることもない。全14曲がスルスルと、淡々に進行していき、気づけば65分というバンド史上最長のアルバムは終了している。そういう構成もあって、初めて聴いたときは特に印象に残らず、メジャーデビュー作『GREEN』(1988年)以降ではもっとも薄味なアルバムと認識していました。『AUTOMATIC FOR THE PEOPLE』や『MONSTER』という圧倒的な傑作のあとだけに、ここまでインパクトが薄いとそりゃそう感じてしまいますよ。

ところが、1曲1曲を取り上げると非常にクオリティの高い良曲が並んでいることに気付かされる。パティ・スミスをゲストに迎えた「E-Bow The Letter」や、『MONSTER』の進化系といえる「Leave」「Departure」、王道のR.E.M.流ロック「Bittersweet Me」「Electrolite」など、本当に粒揃い。結局、曲数が多くて尺が長すぎるのが災いして、かつ淡々とした作り/構成も影響して薄味に感じてしまうのかもしれません。これ、もう2曲くらい減らしたらまた違ったのかな(正直、10曲でもちょうどいいくらいかもしれない)。

作品というよりは記録(=Record)という色の強い本作ですが、このアルバム発売から1年後にオリジナルメンバーのビル・ベリー(Dr)が脱退。以降、R.E.M.はマイケル・スタイプ(Vo)、ピーター・バック(G)マイク・ミルズ(B)の3人にサポートメンバーを加える形で活動を継続。スコット・リットとも袂を分かち、次作『UP』(1998年)以降新たなプロデューサーを迎えることとなります。

本作発売から25年後の2021年10月29日には、リリース25周年記念2枚組エディションも発売。アルバム本編にはリマスタリングを施し、ライブ音源やリミックス、アルバム未収録のアウトテイクや別バージョンなどが収録されたボーナスディスクが付属しています。ただでさえ長尺なのに、曲数倍くらいになってるし(苦笑)。まあ、この機会に本作と改めて向き合ってみてもいいんじゃないでしょうか。

 


▼R.E.M.『NEW ADVENTURES IN HI-FI』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD(25周年記念) / 海外盤CD / 海外盤2CD(25周年記念) / 海外盤2CD+Blu-ray(25周年記念) / 海外盤アナログ / MP3

 

<

2021年10月30日 (土)

DURAN DURAN『FUTURE PAST』(2021)

2021年10月22日にリリースされたDURAN DURANの15thアルバム。日本盤は同年10月27日発売。

前作『PAPER GODS』(2015年)で本国イギリスでは『ASTRONAUT』(2004年)以来11年ぶり、アメリカでは『DURAN DURAN (THE WEDDING ALBUM)』(1993年)以来22年ぶりのトップ10入りを果たしたDUNRA DURAN。約6年という過去最長のスパンを経て届けられた本作は、バンドの原点ともいえるニューウェイヴ/ニューロマンティック的なサウンドを現代的に昇華させた意欲作に仕上がっています。

全体を統括するプロデューサーとしてエロール・アルカン、ジョルジオ・モロダー、そして過去数作でタッグを組んできたマーク・ロンソンを迎えた今作。フィジカル通常盤およびデジタル版は12曲、海外デラックス版CDは15曲、日本盤はデヴィッド・ボウイ「Five Years」のカバーを加えた16曲入りという、前作を継承した構成となっています。

固定のギタリストを置かない現在のDURAN DURANですが、今回はレコーディングメンバーとしてBLURのグレアム・コクソンをフィーチャー。グレアムはギタープレイ以外にも、「All Of You」「Give It All Up」など9曲でソングライターとしてもクレジットされています。意外な人選に驚きを隠せませんが、タイトルトラック「Future Past」で耳にすることができるシンプルなギターソロを聴く限りではマッチしているように映ります。が本作、そこまでギターを全面に打ち出していない現代的な作風なので、グレアムの色はそこまで濃く出ていません。BLURファンはそのへんご注意を。

サウンドメイクやちょっとしたアレンジには初期3作を彷彿とさせるものがありますが、メロディの運びや楽曲の軸部分はマーク・ロンソンががっつり絡んだ前々作『ALL YOU NEED IS NOW』(2010年)や前作の延長線上といったところでしょうか。つまり、今のDURAN DURANを80年代初頭なアプローチで表現した、と。前作が黄金期(80年代半ば)を思わせるテイストだったことを考えると、デビューから40年を経ての原点回帰と言えなくもありません。

それでも、サイモン・ル・ボン(Vo)のボーカル含め大人になった彼ららしい深みも随所から伝わり、そのへんは軽薄さが売りだった初期との大きな違いなか。まあ、音的には今作も十分に軽薄ではあるんですが。

また、先のグレアムに加えトーブ・ロー(Vo)、アイヴォリアン・ドール(Vo)、日本のバンドCHAIがそれぞれゲストボーカルとして参加。アルバムのラストを締め括る「Falling」にはデヴィッド・ボウイとの共演で知られるマイク・ガーソン(Piano)をフィーチャーしています。特に日本盤ではこの曲の前にボウイ「Five Years」カバーが置かれているので、一部ファンにはたまらないものがあるのではないでしょうか(個人的にはこのボートラ、なくてもいいんですけどね)。

12曲バージョンはシンプルでスルッと聴ける流れで、15曲バージョンはインストの「Velvet Newton」は流れを作る上でもよかったけど、残りの2曲(特に「Laughing Boy」)は90年代のDURAN DURANっぽかったので、蛇足だったかな。そういう意味ではデジタル配信されている12曲バージョンのほうが構成はベストだと思います。

前作もなかなかの内容でしたが、今作はそれ以上の仕上がりでは。個人的には『ALL YOU NEED IS NOW』が大好きだったので、そことの共通点が多い今作は近年でベストな1枚でした。

 


▼DURAN DURAN『FUTURE PAST』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月29日 (金)

ANGEL DU$T『YAK: A COLLECTION OF TRUCK SONGS』(2021)

2021年10月22日にリリースされたANGEL DU$Tの4thアルバム。日本盤未発売。

ANGEL DU$TはTURNSTILETRAPPED UNDER ICEといった米・メリーランド州ボルチモアのハードコア界の重要人物が集った、2013年結成のスーパーバンド。初期こそパンク色の強いテイストでしたが、作品を追うごとにカレッジロックと呼ばれるような作風へとシフト。前作『PRETTY BUFF』(2019年)からはRoadrunner Recordsへと移籍し、TURNSTILEとともにその知名度を徐々に高めています。

約2年半ぶりのアルバムは、ポップロック/ソフトロックをベースにしながらも、BLURをはじめとする90年代のUKロックとの共通点も見受けられる1枚。脱力系ボーカルと随所にアコースティックギターをフィーチャーしていることで、その側面がより強まっているように感じます。そもそもこういったオルタナティヴなテイストはTURNSTILEも包括しているものであり、このANGEL DU$Tではそういった一面をより強調させた結果、パンクやハードコアを超越したスタイルが確立されたのでしょうね。

なお、「Dancing On The Radio」にはRANCIDのティム・アームストロングがゲスト参加。ビブラフォンやらストリングスをフィーチャーしたこの穏やかな曲で、ティムはそれとわかるパンクスピリットあふれるボーカルを披露しています。それでも曲調に引っ張られてか、いつもより穏やかな雰囲気ですけどね(笑)。

本作を聴いていると、中〜後期BLURやVAMPIRE WEEKENDあたりの諸作品を思い浮かべてしまうのは、やはり必然なのでしょうか。脱力系のオルタナティヴ感は前者で、若干トロピカルさも含む底抜けの明るさは後者かな。そのカラーを強める要因として、ジャスティス・トリップ(Vo, Acoustic G)の脱力系ボーカルが非常に大きな役割を果たしているように思います。TRAPPED UNDER ICEというハードコアバンドでは野太いシャウトを轟かせる彼ですが、このギャップもまた良し。まあTRAPPED UNDER ICEを聴いたら、その楽曲スタイル/歌唱法ともに同一人物とは思えないですけどね(笑)。

サイドプロジェクトというよりは、もはやひとつの独立した個性を持つバンドにまで成長したANGEL DU$T。前作の時点でそれは確立されたも同然でしたが、そこからさらに一歩踏み込んだ今作はダメ押しの1枚と言えるのではないでしょうか。メタル耳には刺激が足りないかもしれませんが、逆に普段メタルやエクストリームミュージックとは無縁のリスナーに新世代ハードコアへの入り口として、本作に触れていただきたいなと。もしくは、上記のUK/USバンドを普段愛聴する方にオススメしたい良作。本作を起点にしてTURNSTILEの新作『GLOW ON』(2021年)に手を伸ばすと、より入っていきやすいかもしれませんよ。

 


▼ANGEL DU$T
『YAK: A COLLECTION OF TRUCK SONGS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月28日 (木)

CRADLE OF FILTH『EXISTENCE IS FUTILE』(2021)

2021年10月22日にリリースされたCRADLE OF FILTHの13thアルバム。

前作『CRYPTORIANA – THE SEDUCTIVENESS OF DECAY』(2017年)から4年ぶりという、過去最長のスパンで届けられた本作。リンゼイ・スクールクラフト(Female Vo, Narration)に代わりアナベル・イラトニ(Key, Female Vo, Iyre)が加入しての1作目となります(近作ではメンバーチェンジが続いていたので、これも恒例行事のひとつと言えますが)。

これまでの彼らのアルバム同様、本作もコンセプチュアルな作風で、プレスリリースによると「『存在することは虚しい』というタイトル通り、必ず死に直面しなくてはならない我々の存在というものを、ひたすらシンフォニックなオーケストレーション、クワイヤ、そしてダニ・フィルス(Vo)のドラマチックな語りで描いていく」内容とのこと。前作がこれまでの総決算的なテイストだったのに対し、今作はひたすらダークさにこだわった1枚と言えるでしょう。

ブラックメタルをベースにしつつも、オーケストラやクワイヤをフィーチャーすることでシンフォニックメタルの側面も非常に強く、ダニのスクリーム以上にメロウな要素(シンフォニックな味付け+アナベルの女性Voなど)が強いことから、この手のバンドの作品にしてはかなり聴きやすいほうだと思います。バンド演奏においてはドラムのブラストビートやギターの痙攣リフなど、ブラックメタルに必要不可欠なテイストしっかり軸として残しているものの、早くからブラックメタルを逸脱して独自のスタイルを築き上げてきた存在だけに、今さらこのアルバムをブラックメタルの枠で括って語るのもおかしな話ですが。

また、アレンジにおいては全体的にクラシカルな正統派メタルのテイストも強まっております。そういった楽曲においてはダニのボーカルが(本来はメインにも関わらず)良いアクセントとなっており、メロディアスなギターソロ(「Discourse Between A Man And His Soul」でのツインリードはお見事!)を結果的に引き立てる要素にもなっています。もはや「本来は何を聴かせたかったんだっけ?」と本末転倒な点もあるものの、このバンドの場合ダニはボーカル云々よりもストーリーテラー的立ち位置のほうが似合っているので、これは結果オーライではないでしょうか。

全12曲中1〜2分程度のインタールードが3曲含まれており、トータルで57分程度。コンセプトアルバムのわりには聴きやすい尺で、そのダークさ、メランコリックさと相まって集中して楽しめる1枚です。なお、フィジカルのデラックス版およびデジタル版にはボートラ2曲が追加され、全14曲で70分という長尺に。ボートラはあくまでオマケとして受け取って、ありがたく聴くもよし、飛ばすもよし(え?)。本作の延長線上にある2曲だとは思いますが、まずは潔く12曲だけでこのアルバムの世界にじっくり浸ってみることをオススメします。

 


▼CRADLE OF FILTH『EXISTENCE IS FUTILE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月27日 (水)

EVERY TIME I DIE『RADICAL』(2021)

2021年10月22日にリリースされたEVERY TIME I DIEの9thアルバム。日本盤未発売。

1998年から活動を開始し、すでにベテランの域に達しているEVERY TIME I DIE。フロントマンのキース・バックリー(Vo)がANTHRAXのスコット・イアン(G)、FALL OUT BOYのジョー・トローマン(G, Vo)&アンディ・ハーレー(Dr)らとTHE DAMNED THINGSとして活躍していることもあり、メタルコア/ハードコア界隈のみならず、数世代前のメタルを愛するリスナーやパンクシーンにもその名が知られる存在ではないでしょうか。

EVERY TIME I DIEとしては前作『LOW TEENS』(2016年)から実に5年ぶりとなる本作。プロデューサーには前作から引き続き、ウィル・パットニー(THE GHOST INSIDEKNOCKED LOOSEUNEARTHなど)を起用しており、熟練という言葉とは無縁のアグレッシヴなサウンドが展開されております。

とにかく走る、叫ぶ、謎に複雑な演奏/アレンジを絡めてくる。この高揚感を煽りながら先の展開を読ませない曲構成は相変わらずなのですが、そこには安定感や先の熟練を無視した「今が絶頂期」と言わんばかりのエネルギーが凝縮されており、ジッとして聴いていられないほどのパッションは5年待たされた甲斐があったと納得させられるものがあります。なんなんだ、このヤケクソにもにた爆発力は。

とはいえ、実はしっかり聴き込んでいくと無軌道のように思えた先行き不明なアレンジも、非常に緻密な計算の上で成り立っていることが理解でき、そこが見えてくるとこのアルバムの魅力により深くハマってしまうのではないでしょうか。

中盤には不穏なアルペジオからじわじわと盛り上げていくエモーショナルな「Thing With Feathers」(曲中の美しいハーモニーや、ちょっと初期RADIOHEADにも似た質感は非常に好み)が非常に強い個性を放っているのですが、それ以降は再び激しくも変な曲のオンパレード。アンセミックな歌モノミディアムチューン「White Void」のような変化球もあるにはありますが、その口にはすぐ「Distress Rehearsal」みたいな爆走ナンバーが用意されている。そしてアルバムは異質な「We Go Together」で締め括り。本当に心休まる暇もなく、全16曲/51分があっという間に感じられる1枚です。

聴いているだけでサークルモッシュの輪に加わりたくなる楽曲満載の本作。5年のブランクはコロナの影響もあるようですが(実際、コロナ禍の前にアルバムは完成していたようですが、リリースのタイミングを見定めていたようです)、そんな閉塞感の強い時代に大きな風穴をぶち開けてくれる強烈な傑作ではないでしょうか。ああ、早くライブでこの音を、爆音で浴びたい!

 


▼EVERY TIME I DIE『RADICAL』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月26日 (火)

DON BROCO『AMAZING THINGS』(2021)

2021年10月22日にリリースされたDON BROCOの4thアルバム。日本盤は同年11月24日発売予定。

DON BROCOは2008年に結成されたイギリス出身の4人組バンド。2ndアルバム『AUTOMATIC』が全英6位を記録するなど、本国ではすでに知名度のある存在ですが、日本デビューは前作『TECHNOLOGY』(2018年)にて。そこもおそらく、2017年にONE OK ROCKMAN WITH A MISSIONといった国内バンドとの共演および来日が影響したといっても過言ではないでしょう(さらに2018年にはMWAM、coldrainとも共演済み)。

約3年8ヶ月ぶりに届けられた本作は、前作から引き続きジェイソン・ペリー(McFLY、KIDS IN GLASS HOUSES、THE BLACKOUTなど)&ジョン・ランカスター(BRING ME THE HORIZON、ONE OK ROCK、BLINK-182など)がプロデュース。ポストハードコアやオルタナティヴロックの影響下にあり、適度にエレクトロの味付けを施した現代的なラウドロックサウンドが展開されています。

ギターリフやその鳴らし方含め、随所から90年代後半以降のモダンメタル的色合いも感じられ、至るところから“DEFTONES以降”や“LIMP BIZKIT以降”、あるいは“LINKIN PARK以降“のテイストがにじみ出ている。また、プロデューサーの手腕によるものだと思いますが、全体を覆う質感は最近のBMTHと共通するものが見つけられる。そういった意味ではフォロワー感の強いバンドのようにも思えますが、1つひとつの楽曲の仕上がり、作り込みが同系統のバンドよりも優れていることもあってか、不思議と最後まで飽きずに楽しめるんです。

個人的なツボは「One True Prince」や「Anaheim」といった中盤の流れかな。それこそ先に挙げた数バンドのうち、DEFTONES的ダークさとBMTH的モダンさが程よいバランスでブレンドされており、そこに親しみやすいメロディが乗っている。タイトなバンドサウンドも非常に気持ちよく響き、それこそヒットチャートを賑わすダークポップとの共通点も豊富に見受けられるし、国内ラウドロックのリスナーにも引っかかる要素がたくさん含まれているような気がします。

見方によっては商業的な存在……ひと昔、いやふた昔前なら産業ロックとレッテルが貼られるようなタイプのバンドかもしれません。しかし、楽曲の質とアルバムの内容、そしてライブパフォーマンスが良ければすべてよし。この3要素のうち、僕はまだライブだけ体験できていませんが、映像などで目にする限りでは合格点を与えられる存在なので、ぜひ機会があったら観てみたいです(というか、このアルバムの楽曲をどうライブで表現するのか非常に楽しみ)。

なお、海外から1ヶ月遅れてリリースの日本盤にはボーナストラックとして「Action (feat. Taka Moriuchi, Tyler Carter, Caleb Shomo & Tilian Pearson)」「Half Man Half God」の2曲を追加。ともに2019年に配信された楽曲で、前者にはONE OK ROCKのTaka、当時ISSUESのタイラー・カーター、BEARTOOTHのケイリブ・ショーモ、DANCE GAVIN DANCEのティリアン・ピアーソンというモダンヘヴィ/ラウド系を代表するバンドのフロントマンがゲスト参加しています。

当時もかなり話題になった1曲なので、ぜひこの機会に日本盤アルバムを手に入れておくことをオススメします。

 


▼DON BROCO『AMAZING THINGS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月25日 (月)

Happy 40th Anniversary!! Seiko Matsuda Concert Tour 2020〜2021 “Singles & Very Best Songs Collection!!”@日本武道館(2021年10月22日)

松田聖子の単独ライブを最後に観たのは、たぶん90年代後半だったかと思います。たぶん「あなたに逢いたくて〜Missing You〜」がバカ売れしたあとだったかな。以降はイベントだったり紅白のリハ現場だったりで歌う姿を目にしていましたが、じっくり単独公演を目にするのは20数年ぶり。しかし、今回目の当たりにしたステージの様子は20数年前と変わらず、いや、もっと言えば80年代の残り香を漂わせながらもエンターテイナーとして前進し続ける“聖子ちゃん”の姿がそこにありました。

オープニングからひとりドラムを叩きながら歌うという演出や、その後大勢のダンサーを交えながら歌い踊る姿、アコースティック編成で初期のアルバム曲をしっとり聴かせる構成(しかも、観客が掲げたボードに書かれたリクエスト曲を次々とワンフレーズ、アカペラで歌唱していく豪快なサービスっぷり!)、後半の王道アイドルを地で行く衣装&見せ方など、首尾一貫「アイドル・松田聖子」を全うする内容には、関心を超えて感動するばかり。なんなら途中から涙が溢れてきましたから。

個人的にはアコースティックコーナーの選曲がドツボで、リアルタイムで聴いていた曲もあれば20代になって後追いで知った曲もあり、いろんな意味で懐かしさでいっぱいに。還暦を目前に、以前のような高音は厳しくなったものの、それでも今できる精一杯の形で松田聖子であろうとする彼女の姿は、日本の芸能界やエンターテインメント界の頂点に君臨する者としての使命感すら伝わりました。すげえよ本当に。

個人的に驚いたのは、観客が声を上げたり一緒に歌ったりできない時世にも関わらず、観客にシンガロングさせるような曲(「赤いスイートピー」でのサビ入りやタイトル部分)でも客席にマイクを向けて歌わない姿勢(笑)。いや、冗談抜きであれは肝が据わっていないとできないと思うんです。だって、演奏だけになってしまって歌がゼロなわけですよ? ステージに立つ側としてはその“空白”がどれだけプレッシャーなのかは当人にしかわからないですが、それでも観る側としてもあの“空白”は怖いものなんですよ。にもかかわらず、笑顔でマイクを向ける聖子ちゃん。その姿や姿勢からは、ある種の覚悟も見え隠れして、この人はどんな状況であっても自分のスタイルを崩すことなく、松田聖子であろうとしているんだなと感動すらしました。

大半の楽曲がワンハーフだったりメドレーだったりしてしまうのは、40年にもおよぶ活動でそれだけ名曲やファンから求められる曲を生み出してきた証拠。改めて80年代のテレビが産んだスーパーアイドルが40年も第一線で活躍し続けている事実、ものすごい偉業だと思います。誰に向けてというわけではないですが、本当にいろいろ見習ってほしい。

自分にとってツアーのたびに毎回足を運ぶタイプのアーティストではないですが、今後も機会があったらできる限り観てみたいと思わされた、そんな極上のエンターテインメントショーでした。

セットリスト
01. It's Style '95
02. It's Style
03. Wanna Know How
04. 時間の国のアリス 〜Alice in the wonder of time〜
05. 渚のバルコニー
06. 秘密の花園
07. ピンクのモーツァルト
08. 瑠璃色の地球2020

<アコースティックセット>
09. ピーチ・シャーベット
10. 愛の神話
11. 雨のリゾート
12. 小さなラブソング
13. 瞳はダイアモンド 〜Diamond Eyes〜
14. ※アカペラで1フレーズ歌唱
  ・一千一秒物語
  ・蒼いフォトグラフ
  ・SUNSET BEACH
  ・Rock'n'Roll Good-bye
  ・櫻の園
  ・制服
  ・水色の朝
  ・私の愛
15. 時間旅行 〜I still miss you〜
16. SWEET MEMORIES 〜甘い記憶〜

17. 赤いスイートピー(English Ver.) 〜 赤いスイートピー
18. 青い珊瑚礁 〜Blue Lagoon〜
19. メドレー
  ・裸足の季節
  ・風は秋色
  ・ハートのイアリング
  ・P・R・E・S・E・N・T
  ・天国のキッス
  ・チェリーブラッサム
  ・夏の扉

<アンコール>
20. SQUALL
21. 40th Party
22. 20th Party

 

 


▼松田聖子『SEIKO MATSUDA 2021』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / MP3

BIFFY CLYRO『THE MYTH OF THE HAPPILY EVER AFTER』(2021)

2021年10月22日にリリースされたBIFFY CLYROの9thアルバム。日本盤未発売。

昨年8月に発売された前作『A CELEBRATION OF ENDINGS』(2020年)から1年2ヶ月という短いスパンで届けられた本作は、その前作と対になる連作。ロサンゼルスで録音された前作とは異なり、今作は初めて故郷のスコットランドで、たった6週間で完成させたとのこと。それもあってかプロデューサーも、過去2作を手がけたリッチ・コスティー(AT THE DRIVE-INMUSEMY CHEMICAL ROMANCEなど)からアダム・ノーブル(PLACEBO、dEUS、リアム・ギャラガーなど)に交代しています。

前作が“陽”であれば、今作は“陰”。また、前作が“Before”であれば、今作は“After”というように、2枚は表裏一体の関係。当初は前作から漏れた楽曲を完成させるつもりでスタジオに入ったそうですが、セッションを重ねる中でアイデアが膨らんでいき、結果として『A CELEBRATION OF ENDINGS』の“先”にあるものが形となったようですね。

テーマも正反対ならタイトルも正反対。歌詞で表現されているテーマも、例えば前作が不屈な精神だとしたら、今作は人の弱さが扱われているとのこと。そういった要素を従来の彼ららしいアグレッシヴなハードロックや、ポップテイストの強いソフトなナンバーに落とし込んでいるのですが、不思議と爽快感が弱く、(良い意味で)モヤモヤする感覚が伝わってくる。そのへんは歌詞のテーマとリンクしているのでしょうか。このひねくれた感覚もいかにもBIFFY CLYROらしいなと、個人的には前作以上にのめり込んで楽しんでいます。

サンプリングを用いたオープニング曲「DumDum」といい、キャッチーなポップチューン「Witch's Cup」といい、アコースティック色の強い「Holy Water」といい、日本語の「春うらら」をタイトルに用いた穏やかな「Haru Urara」といい、良い意味で内向的な印象が強い。でも、だからといってダークさやネガティブさが強調されているのかというと、また違う。内省的な中から、そこから抜け出そうとするポジティブさも微かに伝わり、そこがもう1枚の『A CELEBRATION OF ENDINGS』とのつながりを感じさせるんですよね。だからこそ、アルバムのラストを飾る異色のアグレッシヴ・ニューウェイヴナンバー「Slurpy Slurpy Sleep Sleep」の意味がとても重要に思えてくる。「DumDum」から始まり「Slurpy Slurpy Sleep Sleep」で終わるこのアルバム、実は非常にストーリー性の強い1枚ではないでしょうか。BIFFY CLYROというクセの強いバンドの、もっとも濃い部分が凝縮された、ファンにはたまらない1枚だと断言します。

後付けの2部作となった今回のアルバム。コロナ禍を経て届けられた内容がこれという点においても、非常に興味深いものがあります。本作を楽しんだあとは再び前作にも立ち返り、この連作の魅力にじっくり浸ってほしいところです。

なお、本作のフィジカル盤(CD)は『A CELEBRATION OF ENDINGS』を完全再現したライブアルバム付き。注文したCDがまだ手元に届いていないので現時点では未聴ですが、ストリーミングサービスで耳にして気になったら、ぜひCDを購入することもオススメします。

 


▼BIFFY CLYRO『THE MYTH OF THE HAPPILY EVER AFTER』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月24日 (日)

SANTANA『BLESSINGS AND MIRACLES』(2021)

2021年10月15日にリリースされたSANTANAの26thアルバム。日本盤未発売(サンタナの新作が日本盤リリースされない時代が来るとは……)。

『AFRICA SPEAKS』(2019年)から2年4ヶ月ぶりの新作。ここ2作は固定のバンドメンバー&シンガーという編成でアルバム作りに臨んできたカルロス・サンタナですが、今作ではメガヒットした『SUPERNATURAL』(1999年)以降定着している、フィーチャリングアーティストを曲ごとに変えたスタイルに回帰しています。

その参加メンバーも大ヒット曲「Smooth」でお馴染みのロブ・トーマス(MATCHBOX TWENTY)を筆頭に、スティーヴ・ウィンウッド、チック・コリア、カーク・ハメットMETALLICA)、ナラダ・マイケル・ウォルデンなどジャンルを超えた多彩な顔ぶれ。もちろんボーカルレスのインストナンバーも多彩で、頭2曲と終盤3曲にインストを置くという構成からも、単に歌モノに頼っているだけじゃないんだよというサンタナの意思が伝わります。

どの曲もサンタナらしいラテンフレイバーが散りばめられた個性的なものばかりで、全体を通してリラックスして聴くことができるはず。そんな中、「おいおい、どうしてこうなった?」な珍作/異色作も含まれています。

例えば、スティーヴ・ウィンウッドをボーカルに迎えた「Winter Shade Of Pale」。ご存知PROCOL HARUMの名曲「青い影」のカバーなんですが、ラテンフレイバーを散りばめたアレンジで表現するという暴挙ぶり(笑)。でも、これが意外と悪くない。いや、不思議とクセになるんです。聴く人によっては原曲レイプにほかならないカバーですが、僕的にはありかな。面白いし(笑)。

メタルリスナー向けにはLIVING COLOURのコリー・グローヴァー(Vo)をフィーチャーした「Peace Power」のグルーヴィーなファンクロックもおすすめ。この熱量、たまらないっす。また、カーク・ハメット(G)とDEATH ANGELのマーク・オセグエダ(Vo)が参加した「America For Sale」も濃厚なファンク/ブルースハードロックといった印象で、なかなかの仕上がり。マークがメタル以外の、ストーンズっぽい楽曲を歌うのも興味深いし、なによりサンタナとカークのギターバトルが面白いったらありゃしない。カーク、頑張っているんだけど若干サンタナに押されているのが微笑ましい(笑)。手癖っぽいフレーズも多少見受けられるけど、ファンなら聴いておいて損はない1曲でしょう。

もちろん、ロブ・トーマス参加の王道ナンバー「Move」だとかカントリーシンガー/ギタリストのクリス・ステイプルトンを迎えた「Joy」だとか、聴きどころは豊富なので、クラシックロックファンはプレイリスト感覚で触れてみてはいかがでしょう。

 


▼SANTANA『BLESSINGS AND MIRACLES』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月23日 (土)

ラブライブ!サンシャイン!! CYaRon! 2nd LoveLive! ~大革命☆Wake Up Kingdom~@幕張メッセ 国際展示場(2021年10月16日)

Aqoursの3ユニット中、AZALEAとGuilty Kissは配信で拝見(前者は地方公演のため、後者はチケット確保できず)。会場でラブライブ!関連のライブを観るのは、2020年1月のラブライブ!フェス以来1年9ヶ月ぶり……昨年から今年にかけて、配信で何度も目にしてきていたとはいえ、やっぱり生で観ると迫力も感動も違いますね。

今回は仕事一切関係なく、自力で取ったチケット。開演数日前まで座席がどこかわからないようになっていました。自分はアルファベットの後ろのほうで7列目ということでしたが、入場してびっくり。自分のブロックは一番前……つまり、ステージから7列目という神席。しかもセンターからちょい上手寄り。2021年の運をここで使い果たしたんじゃないかって思いましたはい。30分以上入場できずモヤモヤしていた気持ちが一瞬で晴れました(笑。このへんについては触れずにおきますので各自調べてください)。

Guilty Kissに続いて、今回のCYaRon!も生バンド編成。しかもTAKUYA(G)、本間昭光(Key)、かどしゅんたろう(Dr)、高野逸馬(B)、渡辺キョータ(G)という豪華なメンツからなるスペシャルバンド“CYaRoTOMO'S”の演奏と聞けば、ラブライブ!関係なく血が騒ぐというもの。実際、アルバム『ある日...永遠みたいに!』からのCYaRon!ナンバーはもちろんのこと、豊富に用意されたAqoursナンバーの数々が生バンドアレンジで表現されることで、いつも以上の迫力と熱量が伝わりました。

それにしても……あのセットリストはズルい! CYaRon!曲中心で3人のソロ曲+Aqours曲少々といったセトリかと勝手に想像していたら、ソロ曲なしで全体の半分近くがAqoursの名曲なんですから。頭2曲(「ある日...永遠みたいに!」「Braveheart Coaster」)のあとに「MY LIST to you!」でびっくりしていたら、さらに「恋になりたいAQUARIUM」のイントロがうっすら聞こえてきて……アゲ曲にもかかわらず、なぜか涙腺崩壊していました。それはあかんて。

そのほか「Hop? Stop? Nonstop!」は意外だったし、「スリリング・ワンウェイ」はバンド編成ありきでセレクトされたんだろうなと納得しまくりだし、本編ラストの「ユメ語るよりユメ歌おう」でまた泣き、アンコールの「MY舞う☆TONIGHT」でステージ前の炎の熱を直で感じたりと……注目トピックを挙げ始めたらきりがない。もちろん、バンドアレンジで披露されたCYaRon!ナンバーも原曲とは違った魅力を発していて、「元気全開DAY! DAY! DAY!」や「サクラバイバイ」「近未来ハッピーエンド」はバンドだからこそのパワーが加わったことで原曲増しの仕上がりだったし、TAKUYA氏のストレンジな側面全開の「Whistle of Revolution」や彼のコーラスが良い味を出していた「コドク・テレポート」では楽曲そのものの魅力を再発見もできましたし。幕間の映像含めて、個人的にはまったくダレることなく約3時間のステージを堪能することができました。

規制退場を経て、海浜幕張から帰宅したのが24時前だったというのはアレですが(苦笑)、久しぶりのラブライブ!関連の生ライブおよびAqours(の片鱗)を思う存分堪能し、年末のAqours単独公演の期待がより高まりました……ってチケットが確保できなきゃどうにもならんのだけど。

……と、ここまではライブ後にメモとして記していたのですが、バタバタしていて公開タイミングを逃していました。ところが本日、12月30日のぴあMMアリーナ公演のチケットを無事ゲット。急にテンションが上がり、ライブ開催から1週間を経ての公開と相成りました。当日のセトリで構成したプレイリスト含め、ひっそりとアップしておきます(笑)。

 

 


▼CYaRon!『ある日...永遠みたいに!』
(amazon:国内盤CD / MP3

STEVE WHITEMAN『YOU'RE WELCOME』(2021)

2021年7月2日にリリースされたスティーヴ・ホワイトマンの1stソロアルバム。日本盤未発売。

ご存知、KIXのフロントマンとして40年以上にわたり活躍し続けるスティーヴ。KIXが90年代に一度解散したあとは、FUNNY MONEY(STEVE WHITEMAN & FUNNY MONEYとも)というバンドで活動していたこともありましたが、純粋なソロ作品はこれが初めてとなります。

レコーディングはスティーヴ(Vo, B, G, Harp)にKIXやFUNNY MONEYでの盟友ジミー・チャルファント(Dr)、1984年までKIXに在籍していたブラッド・ディヴェンス(B)のほか、ボブ・パレ(G)、FUNNY MONEYのディーン・クラマー(G)という気心知れたメンツが参加しており、プロデューサーにはこの5人の名前がクレジット。さらに、レコーディングやミックスなどのエンジニアリングをブラッドが担当しています。

ギターの歪みがそこまで強くないこと、また楽曲自体も肩の力が抜けレイドバックしたロックンロールが中心なことから、KIXのようなAC/DC直系のハードロックというよりはTHE ROLLING STONESの影響下にある、ルーズなアメリカンロックという印象が強いかな。年齢的なこともあり、スティーヴの歌声も以前ほどハリが感じられず、結果その枯れ具合がスカスカのロックンロールにフィットしているように感じられました。

楽曲自体は可もなく不可もなくの、ごく普通のロックンロール。そんな中、「Shock」のように湿り気の感じられる楽曲や、「Bad Blood」のような疾走チューンからはKIXの香りも感じられる。かつ、要所要所でスティーヴの吹くブルースハープがフィーチャーされることで、否が応でもKIXが思い浮かんでしまうし、したくなくても比較してしまう。長期にわたりバンドの顔として活躍してきた、クセの強いフロントマンの宿命ですね。

KIXの延長線として聴くと肩透かしを喰らうかもしれません。しかし、すべてがすべて「KIXっぽくないか」と問われると、そうでもない。KIXとしての新作が『ROCK YOUR FACE OFF』(2014年)以降途絶えていることもあり、どうしてもこのアルバムにKIXを求めてしまいたくなりますものね。でも、KIXがこういう方向性に進む世界線だって考えられたわけで……そう考えると、アリにも思えてくるんじゃないでしょうか。

「Kid Dynamite」みたいにKIX本編では出て来なそうな平均点以上の楽曲も複数含まれているし、全体的にも水準以上の仕上がりだと思います。KIXのスピンオフとして、心の隙間を埋めてくれる1枚ではないでしょうか。なんだかんだで、僕は結構リピートしています。

 


▼STEVE WHITEMAN『YOU'RE WELCOME』
(amazon:MP3

 

2021年10月22日 (金)

DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(2021)

2021年10月22日にリリースされたDREAM THEATERの15thアルバム。

Inside Out Music移籍第1弾の前作『DISTANCE OVER TIME』(2019年)から2年8ヶ月ぶりのオリジナル新作。この期間の間にライブアルバム&映像作品『DISTANT MEMORIES』(2020年)のほか、4つのオフィシャルブートレッグ(『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: TRAIN OF THOUGHT INSTRUMENTAL DEMOS (2003)』『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』)を続発していたこともあり、インターバルが空いている感覚は皆無。むしろ、コロナ禍の影響とはいえ3年に満たないスパンで新作が届けられたことは、素直に喜ばしいことだと思っています。

プレスリリースによると、前作は「原点回帰を目指した楽曲制作とレコーディング手法で、贅肉を削ぎ落としたパワーを封じ込めたコンパクトな楽曲群」中心の内容とのことでした。確かに、それ以前の作品と比較すれば4〜6分台の楽曲が中心で、全9曲で57分というトータルランニングも近年の彼らにしてはコンパクトだったと言えるでしょう。しかし、そこに封じ込まれた楽曲のメロディはインパクトの弱いものばかりで、個人的にはあまり響かない作品でした。

では、今作はどうでしょう。全7曲で70分とう構成は『DISTANCE OVER TIME』よりも前に立ち返ったように映り、アルバムのラストに構えるタイトルトラック「A View From The Top Of The World」は20分超えの超大作です。ファンからしたら、若干薄味だった前作よりも「そうそう、これを待っていた!」と言える1枚なんじゃないでしょうか。

リードトラックである1曲目「The Alien」を初めて聴いたとき、僕は9分半の長尺曲にもかかわらず「これはアルバムも期待できそうだ」と感じました。それは、前作よりもメロディラインに響くものが多々見つけられたからにほかなりません。バンドのスリリングなアンサンブルは相変わらず最高の一言ですが、デビュー時から比べたらだいぶ声域の狭まったジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルは中音域を軸にしながらも、可能な限り動きのあるメロディラインで曲ごとに変化を付けている。そりゃあメロディの動きは以前ほど大きなものではありませんが、それでも(前作のレビューで例えに挙げたDEEP PURPLEの)イアン・ギランと比べたらかなり健闘しているほうじゃないかなと(いや、近年のイアンはかなり良いんですけどね)。

要は、ここ数作はバンドの演奏力に対してボーカルが釣り合っていなかったけど、今作ではようやくそれに見合うバランス感を見つけることができた。だから全体を通して飽きずに楽しむことができるのかな、と思いました。無理に短い曲で勝負するより、歌割りが少なくなろうとも長尺曲で勝負し、なんならボーカルすらも曲の演出に徹する。それくらい割り切ったほうが今のDTは突き抜けられるんじゃないか……本作を聴いてそう確信しました。

2ndシングルとして先行配信された「Invisible Monster」や「Sleeping Giant」で耳にすることができる往年の輝きに匹敵するアンサンブルを筆頭に、これぞDT!と言える楽曲ばかりが詰め込まれた今作。ポップサイドを象徴する「Transcending Time」ではジェイムズのボーカルワーク(および歌メロ)も現時点でのベストと言えるものだと思いますし、「Awaken The Master」でのジョン・ペトルーシ(G)による重低音リフのカッコよさ、そして「A View From The Top Of The World」での圧倒感など、我々がDTに求める要素がしっかり揃っている。原点回帰という言葉は、むしろ今作のほうがぴったりなんじゃないでしょうか。アンディ・スニープによる際立ったミックス含め、ここ数作の中ではもっとも好きな1枚です。

 


▼DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+Blue-ray / 海外盤CD / 海外盤2CD+Blu-ray / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月21日 (木)

YES『THE QUEST』(2021)

2021年10月1日にリリースされたYESの22ndアルバム。

新シンガーのジョン・デイヴィソン(Vo)初参加の前作『HEAVEN & EARTH』(2014年)から約7年ぶりの新作。この7年の間に中心人物のクリス・スクワイア(B)急逝(2015年6月27日)という不幸に見舞われましたが、バンドはサポートメンバーとしてツアーに参加していたビリー・シャーウッドが新ベーシストとして迎え、ジョン、ビリー、スティーヴ・ハウ(G)、ジェフ・ダウンズ(Key, Piano)、アラン・ホワイト(Dr)の5人を中心に活動を継続しています。

今作では初めてスティーヴ・ハウがプロデューサーを兼務し、ゲストプレイヤーにジェイ・シェレン(Dr, Per)を迎えてレコーディング(ジェイは2016年からツアーに参加しており、このレコーディングを機に正式メンバーとしてクレジットされています)。残されたメンバーがYESらしさを“演じた”ように感じられる、ある意味ではYES全盛期の幻影を追っているようでもあり、またある意味ではYESというバンドの歴史を絶やさないという強い意志の塊のようでもある、そんな内容だと感じました。

オープニング曲「The Ice Bridge」のイントロで鳴るシンセの音色に、一瞬ELP(パウエルのほう)がフラッシュバックして苦笑いするものの、この曲を筆頭に牧歌的なYESのソフトサイドを強調したナンバーが並びます。スリリングや刺激は皆無、しかし要所要所からは“らしさ”がしっかり感じられるし、ハウのギターフレーズからも年齢を感じさせない冴え渡りぶりが伝わる。そしてなにより、ビリー・シャーウッドによるクリス・スクワイアの意思を継いだかのようなベースプレイは注目に値すべきものがあり、アラン&ジェイのリズムの上で“らしさ”を見せつけてくれるのです。

そんな牧歌的YESの真骨頂と言えるのが、DISC 1ラストに収録された「A Living Island」。もしYESというバンドがこの新作を最後に活動終了させるのならば、まさに“スワンソング”にふさわしい良曲ではないでしょうか(DISC 2はアルバム本編というよりもボーナストラック的立ち位置だと認識しています)。

確かに刺激はまったくありません。しかし、どの曲もしっかりと練り込まれており、そこまで退屈することはないでしょう。この手のサウンド/スタイルが好きなリスナーなら何かしら引っかかるポイントが見つけられるはずです。もはやオリメンは誰ひとり残っていませんが、だからこそクリスが去ったあと残されたメンバーたちがYESであることをここまで全うし演じきった、有終の美を飾るにふさわしい良作だと思います(誰もこれで終わりとは一言も言ってないけど)。

 


▼YES『THE QUEST』
(amazon:国内盤2CD+Blue-ray / 国内盤2CD / 海外盤2CD+Blu-ray / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月20日 (水)

TEARS FOR FEARS『THE SEEDS OF LOVE』(1989)

1989年9月25日にリリースされたTEARS FOR FEARSの3rdアルバム。

「Shout」「Everybody Wants to Rule The World」という2つの全米No.1ソングを輩出し、アルバム自体も全米1位獲得、500万枚超えのセールスを記録した前作『SONGS FROM THE BIG CHAIR』(1985年)から4年半ぶりの新作。同作での大成功がもたらしたローランド・オーザバル(Vo, G)とカート・スミス(Vo, B)の不和により、しばらく活動が停滞していましたが、オリータ・アダムス(Vo)との出会いにより受けた刺激から、それまでのスタイル/サウンドからの脱却を図ります。

過去2作を手がけたクリス・ヒューズから新たにデイヴ・バスコム(DEPECHE MODEGENESIS、トム・ヴァーラインなど)をプロデューサーに迎え、3年にもわたる難産の末に完成した本作は、前作で垣間見えたジャズからの影響に加え、ソウルやブルース、中期ビートルズ的なサイケデリックロックの色合いが散りばめられた、非常に音楽的幅の広がった1枚に。ニューウェイヴの流れから誕生したTEARS FOR FEARSですが、作品を重ねるごとにスタート地点からどんどんと離れていき、この3作目からはジャンルにとらわれずに“音楽”を心底楽しんでいる様子が伝わってきます。

また、1stアルバム『THE HURTING』(1983年)時点ですべての楽曲をローランドが手がけていたものの、リードボーカルに関してはローランドとカートが半々だったボーカル体制も、今作ではほぼローランドのソロプロジェクト体制に(前作の時点でその予兆はありましたが)。カートは「Sowing The Seeds Of Love」での一部パート、および「Advice For The Young At Heart」でその透明感の強い歌声を聴けるのみ。オリータが加わったことで前作にはなかった多様性も少々増えていますが、基本的にはローランドのシンガーとしての成長や表現力の向上を存分に味わえる作品集なのかな。そう考えると、次作以降のカート脱退/ローランドのソロプロジェクト化も頷けるものがあります。

全体を通して前作以上に大人びた印象が強く、ワールドミュージック的な側面もありつつ、視点を変えるとプログレッシヴロック的にも聴こえてくる、そんな多彩さ/多面性を持つ傑作。ひとつのバンドが短い期間で急成長を遂げ、ひとつの頂点に到達した瞬間を克明に記録した、奇跡的な1枚と言えるでしょう。その結果、ローランド/カート体制はここで燃え尽きてしまうわけですが。そこから10数年を経て、ローランドがバンドに復帰したものの、2021年10月時点では初期3作に匹敵する作品は生み出せていません。

しかし、2022年2月25日に約17年ぶりのニューアルバム『THE TIPPING POINT』のリリースが決定。現在タイトルトラックが先行公開されており、初期2作の作風を現代的にブラッシュアップさせたような良曲ですが、これ1曲ではなんとも判断が難しいところ。ぜひともTFF本格復活!と声高に宣言したくなるような1枚に期待したいところです。

なお、本作からは日本でもさまざまなCMソングに起用された「Sowing The Seeds Of Love」(全米2位/全英5位)のほか、「Woman In Chains」(全米36位/全英26位)、「Advice For The Young At Heart」(全米89位/全英36位)、「Famous Last Words」(全英83位)といった個性的かつ斬新なヒットシングルが生まれています。シングル曲以外の4曲(本作のオリジナル仕様は全8曲と非常にコンパクト)も個性的な良曲ばかりなので、ぜひアルバムを通してじっくり向き合ってほしいところです。

 


▼TEARS FOR FEARS『THE SEEDS OF LOVE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月19日 (火)

ANGELS & AIRWAVES『LIFEFORMS』(2021)

2021年9月24日にリリースされたANGELS & AIRWAVESの6thアルバム。日本盤未発売。

当時BLINK-182のフロントマンだったトム・デロング(Vo, G)が同バンド活動休止中に結成したオルタナティヴロックバンド、前作『THE DREAM WALKER』(2014年)から7年ぶりのオリジナルアルバム。その後もEPを3作発表しており、新曲で構成された音源集としては『CHASING SHADOWS』(2016年)以来5年半ぶりとなり、どちらにしても過去最長のインターバルであることには間違いありません。

2016年当時のメンバーはトムとアイラン・ルービン(Dr)のみでしたが、今作はその2名に加えてデヴィッド・ケネディ(G)、マット・ルバノ(B)の4人で制作。プロデューサーには『THE DREAM WALKER』以降の共同制作者であるアーロン・ルービン(LOSTPROPHETS、SIMPLE PLANなど)を迎え、2018年春から3年かけてじっくり作り込んだ内容に仕上がっています。

僕自身、彼らのアルバムはGeffen Records時代の2作、1stアルバム『WE DON'T NEED TO WHISPER』(2006年)、2ndアルバム『I-EMPIRE』(2007年)程度しか聴いていなかったのですが、今作はその初期のスタイルを意識した作風とのこと。確かにポップパンクをベースにしながらも、その近くながらも微妙に外側にあるオルタナティヴロックやニューウェイヴを意識したサウンドはANGELS & AIRWAVESらしさに満ち溢れているものの、さらに進化/成長していることも伝わる作風かなと思いました。

一言で言ってしまえば、ジャンル分けの難しいロックといいましょうか。オルタナの枠内なんでしょうけど、そのスペーシーなサウンドメイク&アレンジはどこか80年代前半のRUSHを思わせるものもあり、かと思えば90年前後のUKロックを思わせるポップなギターロック風でもある。もちろんBLINK-182っぽさも随所から感じ取れるのですが、それ以上にANGELS & AIRWAVESならではのオリジナリティが確立されてしまっていることで、もはやBLINK-182との比較も意味のないものに感じられる。僕自身はBLINK-182にあまり思い入れがないので、むしろフラットに接することができるのですが、当時のファンからしたら今も複雑に響くのかもしれませんね……。

まあとにかく。良質なポップロック/オルタナロック/パワーポップアルバムだと思います。新しさよりも懐かしさのほうが強いのかもしれませんが、それすらも今の若い世代には新鮮に響くかもしれませんし、これはこれでアリなんじゃないでしょうか。気持ちよく楽しめる1枚ですね。

 


▼ANGELS & AIRWAVES『LIFEFORMS』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月18日 (月)

WAGE WAR『MANIC』(2021)

2021年10月1日にリリースされたWAGE WARの4thアルバム。日本盤未発売。

米・フロリダ州出身の5人組メタルコアバンドによる。前作『PRESSURE』(2019年)から2年ぶりの新作。ドリュー・ファルク(BULLET FOR MY VALENTINE、リル・ウェイン、MOTIONLESS IN WHITEなど)、アンドリュー・ウェイド(A DAY TO REMEMBERTHE GHOST INSIDEHER NAME IN BLOODなど)、A DAY TO REMEMBERのフロントマンでもあるジェレミー・マッキノン(THE DEVIL WEARS PRADA、THE GHOST INSIDE、NECK DEEPなど)と複数のプロデューサーを起用するスタイルは近作同様ですが、随所にメタル/ラウド界隈以外の要素も散りばめられた非常にモダンな作りは今ならではと言えるでしょう。

グルーヴィーなリフワーク&リズムは従来の延長線上にあるものの、タイトルトラック「Manic」を筆頭に曲にDISTURBEDなど2000年前後のニューメタルを彷彿とさせる曲も含まれており、特に「Circle The Drain」などで見せるメロディアスなスタイルはバンドの新たな挑戦と受け取ることができるはずです。と同時に、こういったコテコテのメロウナンバーがモダンなメタルコアと非常にフィットしており、だからといって簡単に「ヤワになった」と言えないくらいのタフさもしっかり備わっている。

また、過去の作品よりヘヴィになった側面も随所から感じられ、メロウな要素とエレクトロな味付けとのバランス感も絶妙。クリーンで歌うメロディアスさとゴリゴリのグロウルの対比も非常に効果的で、この手のバンドが苦手な人にも入門編に最適な1枚ではないでしょうか。

「Death Roll」のギターリフからは90年代リスペクトが伝わるけど、決して古臭さは感じない。同時期のグルーヴメタル、2000年代のニューメタル、そして2000年代後半以降のメタルコアを1本の線でつなぎ、2021年ならではの質感でまとめ上げた本作は、幅広いヘヴィミュージックリスナーに愛されるべき良作だと断言しておきます。

古き良きヘヴィメタルの魅力も、ハードコアから派生したエクストリームミュージックの側面も、そしてLINKIN PARKやDISTURBEDが一時代を築いた2000年代ラウドシーンの色合いもすべて包括した、非常に万能感の強い1枚。こういう作品がしっかりとチャート上位に入るような世の中が再び訪れることを、願わずにはいられません(本作、残念ながらBillboard 200でチャートインしていないんですよ……)。

 


▼WAGE WAR『MANIC』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月17日 (日)

KNOCKED LOOSE『A TEAR IN THE FABRIC OF LIFE』(2021)

2021年10月13日にデジタルリリースされたKNOCKED LOOSEの最新EP。フィジカルリリースは同年12月17日予定。日本盤発売は未定。

2ndアルバム『A DIFFERENT SHADE OF BLUE』(2019年)に続く新作音源は、コール・クラッチフィールド(G)に代わる新メンバーのニコ・カルデロンを迎えて初めて制作された6曲入りEP。なんの事前情報などの前触れもなく突如配信され、ファンを驚かせました。

本作は過去2枚のアルバム同様、プロデューサーにウィル・パットニー(THY ART IS MURDERAFTER THE BURIALPIG DESTROYERなど)を迎えてレコーディング。全体を通じての統一感やストーリー性が感じられる構成となっており、冒頭の車に乗り込んでカーラジオを再生するという穏やかな雰囲気から、突如スリリングで暴力的な轟音へとなだれ込む「Where Light Divides The Holler」での構成や、そのまま間髪入れずに「God Knows」へと続く演出、さらに同曲ラストで再びカーラジオの演出へと戻るなど、かなりコンセプチュアルな作りとなっています。

そういった作り込みはこの2曲のみ突出しているものの、3曲目「Forced To Stay」以降の流れも短い曲間で続くことから、アルバム並みのこだわった作り込みが伝わるはずです。また、このコンセプチュアルな構成はYouTubeで公開された、EPと同タイトルのアニメーション・ショートフィルムにも引き継がれており、EPに収録された全曲を使用した21分にもおよぶ見応えある作風は、数ヶ月前にTURNSTILEがEP『TURNSTILE LOVE CONNECTION』(2021年)で試みたチャレンジに通ずるものがあります。同じ時代に共闘する2バンドが似たテイストで作品づくりに注力する姿勢、お見事としか言いようがありません。

ただ、TURNSTILEが進化したサウンドで前進を続けるのに対し、こちらのKNOCKED LOOSEは深化したサウンドで前進している。グルーヴィーなミドルテンポを軸にヘヴィさを追求するそのスタイルは、まさに90年代以降のグルーヴメタルやハードコアの延長線上にあるものであり、その歴史的に重要なサウンドをよりディープに追求。しかし、ただ歴史をなぞるだけではなく、現代的に進化/深化した音を提供する。そのKNOCKED LOOSE流の最新形がこのEPでのトータル性なのかな、と感じました。

どこか20分超の組曲にも感じられるこの6曲入りEP。1曲1曲を取り上げるよりも塊としてまとめて聴くことをオススメします。そういった意味では、先のショートフィルムはうってつけの作品であり、個人的にもサブスクで聴くよりは映像作品とともに楽しむべき内容だと思います。

これがニューアルバムへの前触れなのか、それともアルバムとは別の形の表現なのか。いろいろ気になるものの、まずは本作を思う存分楽しんでおきたいところです。

 


▼KNOCKED LOOSE『A TEAR IN THE FABRIC OF LIFE』
(amazon:MP3

 

2021年10月16日 (土)

TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』(2021)

2021年10月15日にリリースされたトム・モレロの最新ソロアルバム。日本盤(輸入盤国内仕様)は同年10月20日発売予定。

個人名義では『THE ATLAS UNDERGROUND』(2018年)に続く3年ぶり2作目のソロアルバムですが、THE NIGHTWATCHMAN名義を含めるとこれが6作目。RAGE AGAINST THE MACHINEAUDIOSLAVE、STREET SWEEPER SCIAL CLUB、PROPHETS OF RAGEとは異なり、曲ごとにコラボレーターが異なるという点においては、『THE ATLAS UNDERGROUND』同様に真の意味でのソロ作品と言えるでしょう。

今作も相変わらずゲスト陣が豪華で、ブルース・スプリングスティーンエディ・ヴェダーPEARL JAM)、BRING ME THE HORIZON、PHANTOGRAM、クリス・ステイプルトン、グランドサン、マイク・ポズナー、ダミアン・マーリー、フェム、プロトハイプ、デニス・リクセゼン(REFUSED)、サマ・アブドゥルハーディとジャンルも多岐にわたる人選。トムはそれぞれのコラボレーターに合わせた作風、曲調で楽曲制作を進め、その中でいかにも彼らしいギタープレイを披露しています。

オープニングを飾る「Harlem Hellfighter」ではEDM調のトラックに日本語で歌う女性ボーカル(おそらくボーカロイドか?)に、いきなり度肝を抜かれる。かと思えば、続くAC/DCのカバー「Highway To Hell」ではブルース・スプリングスティーン&エディ・ヴェダーという新旧“Voice of America”が暑苦しいボーカルバトルを繰り広げる(笑)。ここではさすがにトムの個性がボーカルに負けてしまっていますね。さらに、BMTHを大々的にフィーチャーした「Let's Get The Party Started」もBMTHの色が強すぎる。あれれ、大丈夫かトム・モレロ……。

PHANTOGRAMをフィーチャーしたエレクトロポップ「Driving To Texas」以降も、ギターの活躍頻度はそこまで高くない。というより、ギターをギターと聴かせないようなエフェクトが施されていたり、楽曲を構築する上での素材と化していたりと、むしろトムはコンポーザー/アレンジャーとしての個性を発揮しているような作品なのかなと、聴き進めていくうちに感じました。いわゆるRATM的なテイストを期待すると痛い目に遭いますが、彼が制作してきた楽曲の色は至るところに散りばめられているので、聴く人が聴けば「トム・モレロらしい1枚」と理解できるかもしれません。

ラップボーカルものよりも、しっかり聴かせる歌モノのほうがらしい色を発揮しているし、「Naraka」や「The Achilles List」で聴くことができるエレクトロ調エフェクトのギターソロに今のトムがやりたいことが表れている気がしたりと、過去にとらわれずに前進を続ける彼にリスナー側がどこまでついていけているのか……。個人的にはベースはいかにもRATMテイストながらもエレクトロな味付けを施すことで新鮮味が増した「Charmed I'm Sure」や「Save Our Souls」、女性ボーカルならではの艶やかさが心地よい「Driving To Texas」や「Night Witch」みたいな楽曲がお気に入りです。

統一性の強いスタイルではなく、あくまで現代的なプレイリスト風の作風もいかにもソロらしくて好印象。この手の作品はコラボ相手の人選やネームバリューに多少左右されがちですが、今作においてはバランス感に優れていると思うし、前作以上なんじゃないかなという気がしました。しばらくは難しいことを考えずに、大音量で楽しみたいと思います。

 


▼TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2021年10月15日 (金)

JUDAS PRIEST『REFLECTIONS - 50 HEAVY METAL YEARS OF MUSIC』(2021)

2021年10月15日にリリースされたJUDAS PRIESTの最新コンピレーションアルバム。

本作はバンド結成50周年を記念して、同日に全世界3000セット限定で発売されたCD42枚組ボックスセット『50 HEAVY METAL YEARS OF MUSIC』から既存曲/テイクと未発表ライブ音源が抜粋されたハイライト盤。全16トラック中7トラックが未発表音源となっており、トータル80分という非常にボリューミーな内容となっています。

いわゆるベストアルバムやグレイテストヒッツとは異なり、その選曲は非常にマニアックなもの。だって、本作には「Breaking The Law」も「Metal Gods」も「You've Got Another Thing Comin'」も「Freewheel Burning」も「Turbo Lover」も「Painkiller」も入っていないんですから。その代わり、3rdアルバム『SIN AFTER SIN』(1977年)から「Let Us Prey / Call For The Priest」、6thアルバム『BRITISH STEEL』(1980年)から「You Don't Have To Be Old To Be Wise」、8thアルバム『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)から「Fever」、9thアルバム『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)から「Eat Me Alive」、12thアルバム『PAINKILLER』(1990年)から「All Guns Blazing」、最新作『FIREPOWER』(2018年)から「Never The Heroes」と、マニアックながらも隠れた名曲たちが選出されており、改めてこのバンドの懐の深さを実感できるのではないでしょうか。

また、既存のライブテイクは「Dissident Aggressor」が『A TOUCH OF EVIL: LIVE』(2009年)から、「Out In The Cold」が『PRIEST... LIVE!』(1987年)から、「Running Wild」が『UNLEASHED IN THE EAST』(1979年)から。こちらのセレクトも通好みで良いんじゃないでしょうか。「Dissident Aggressor」のみここ10年くらいのライブテイクで、ロブ・ハルフォード(Vo)も以前のようにハイトーンが出ない状態ですが、これくらいなら全然アリという内容。問題ありません。

で、気になる未発表ライブ音源。「Victim Of Changes」や「The Green Manalishi (With The Two Pronged Crown)」「Bloodstone」は1980〜82年の録音、「Beyond The Realms Of Death」に至っては1979年のライブ音源ということで、音質や録音状態は決して良好とは言えないものも含まれています。このへんはもうマニアのためのものといったところでしょうか。そんな中でも、「Beyond The Realms Of Death」はニューヨークのThe Mudd Club公演からのテイクで、ほかのライブ音源がホールやアリーナ会場での録音と考えると非常に貴重な1曲ではないでしょうか。ロブのボーカルパフォーマンスもごきげんですしね。そんな貴重な1曲から「The Hellion / Electric Eye」(1986年録音)へ続き、「Sinner」(1988年録音)で締め括る流れは最高の一言。なんだかんだ、終盤には人気曲が並ぶので、最後は安心して聴き終えることができるはずです。

僕自身、3000セット限定のボックスセットを買おうかどうか迷っている間にソールドアウトしていたので、今はこのコンピを聴いて気を紛らわせているところ(笑)。初心者がベスト盤に手を出すなら『METAL WORKS '73-'93』(1993年)や『THE ESSENTIAL JUDAS PRIEST』(2006年)あたりが最適ですが、そこからさらに一歩深みにハマりたかったら、本作はそのマニアックさ含めてオススメではないでしょうか。意外にも、ここ20年くらいに出たコンピの中では一番リピートしている1枚です。

 


▼JUDAS PRIEST『REFLECTIONS - 50 HEAVY METAL YEARS OF MUSIC』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月14日 (木)

OBSCURA『DILUVIUM』(2018)

2018年7月13日にリリースされたOBSCURAの5thアルバム。日本盤未発売。

2002年にドイツで結成された4人組テクニカル・デスメタルバンド。フレットレスベースを擁する、デスメタルバンドとして非常に稀な存在ですが、そのサウンドも非常に個性的。その技巧派スタイルはプログメタルにも通ずるものがあり、随所に散りばめられたメランコリックな要素も魅力のひとつと言えるでしょう。

本作は2作目『COSMOGENESIS』(2009年)から続いたコンセプト連作の最終章にあたる1枚。序盤こそ前のめりで攻めまくるテクニカル・デスメタル的な側面が随所に散りばめられているものの、曲が進むにつれてメランコリックかつドラマチックなテイストも増えていき、ギターソロもデスメタルにありがちな不穏な音階を奏でるよりは、非常に計算されたメロディアスなものが多い。ボーカルはデス声中心ですが、コーラスとしてメロウなクリーンボイスが用意されているから、非常に聴きやすい作品としてまとめられているんですよね。

前任ベーシストがフレットレスプレイヤーだったこともあってか、本作でプレイしているベーシストもその音色を意識したものとなっており、そこもほかの同系統バンドにはない個性につながっている。というかこのアルバム、めちゃめちゃ各楽器の録音/ミックスバランスが良すぎて、それも聴きやすさにつながっているような気がします。

かつ、アルバムが後半に進むに連れてメランコリックさがどんどん増していく。なんとなくOPETHあたりとの共通点も見受けられ、非常に好印象。特に「The Seventh Aeon」中盤パートでの緩急の付け方はお見事としか言いようがありません。こういうの、大好きです。

このアルバムに参加したメンバーのうち、フロントマンのシュテフェン・クメラー(Vo, G)以外は現在脱退しており、ベーシストには初期に在籍したフレットレスプレイヤーのヨルン・パウル・テセリンが復帰。ギタリストの片割れも2008〜2014年に在籍したクリスティアン・ミュンツナーが出戻り、ドラマーにはダーヴィト・ディーボルトを迎え、約3年ぶりの新作『A VALEDICTION』が11月19日にリリース予定。現在公開されている3曲を聴く限りでは、本作にあった抒情性は後退しているような印象があります。さて、どうなるのやら……。

まあ、まずはこの『DILUVIUM』という傑作を入り口に、OBSCURAのめくるめくテクニカル&プログレッシヴな音世界に浸ってみてはどうでしょう。個人的には2018年の年間ベスト候補にも挙げられた1枚なので、ぜひこの機会に改めて触れてみることをオススメします。

 


▼OBSCURA『DILUVIUM』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月13日 (水)

PARADOX『HERESY II – END OF A LEGEND 』(2021)

2021年9月24日にリリースされたPARADOXの8thアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年9月22日発売。

PARADOXは80年代半ばに結成された、ドイツ出身の4人組スラッシュメタル/パワーメタルバンド。1991年に一度解散するものの、1998年に再結成して以降、中心人物のチャーリー・スタインハウアー(Vo, G)を軸にメンバーチェンジを繰り返しながら現在まで活動を続けています。

前作『PANGEA』からおよそ5年ぶりの新作となる本作は、彼らの代表作でもある2ndアルバム『HERESY』(1989年)の続編にあたる1枚。レコーディングにはバンド結成時の一員でもあるアクセル・ブラハ(Dr)のほか、クリスチャン・ミュンツナー(G/OBSCURA)、オリー・ケラー(B)という過去の在籍メンバーが集結しています。

『異端』という邦題が付けられ、当時は日本盤も発売された『HERESY』でしたが、2021年の耳で聴くと若干の古臭さを感じさせつつも、スラッシュメタルとジャーマンパワーメタル的なテイストが程よいバランスで融合した良作でした。そんな傑作のパート2という立ち位置ですが、正直なところ共通点はさほど見つからないかなと。確かにスラッシュメタルとパワーメタルが融合したテイストはPARADOXそのものですが、どうにも『HERESY』の頃とは別モノという気がしてならない。これが2021年のPARADOXということなのでしょう。

とにかく1曲1曲がやたらと長く、オープニングを飾る「Escape From The Burning」からして約8分。全13曲中、6分超えの楽曲が6曲もあり、そのうち2曲は9分台という事態。唯一の4分台である「A Man Of Sorrow」も、そのインタールード(イントロ)である「A Man Of Sorrow (Prologue)」を加えれば6分台なので、結局は6分以上が半数超え。なもんですから、アルバムのトータルランニングも76分と非常に長くて、噛み砕くのに相当な時間を要する。なんだか勿体ない気がするんですよ、このアルバム。

『HERESY』の素晴らしさって、その即効性に強いアグレッションとメロディアスさ、全9曲で42分という程よい長さにあったと思うんです。ところが、その続編の今作は倍近い長さ。これ、せめて60分以内にまとめてくれていたら、もうちょっと印象に残る作品になったんじゃないかな……長い曲が多い、曲数が多いのはいいんですけど、やたらめったら詰め込めばいいってものでもない。5年分の蓄積であったり、名作の続編という気合いの入りっぷりもあったとは思うけど、ちょっとだけ空回りしている気がしました。

1曲1曲は平均点を与えられるだけの仕上がりだし、リフがカッコ良かったり歌メロに惹きつけられたりと、一瞬でも「おおっ!」と思える良曲はあるものの、ひとまとまりになると散漫に聞こえてしまう。そこだけが残念でなりません。本当に惜しい1枚。

 


▼PARADOX『HERESY II – END OF A LEGEND 』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月12日 (火)

ECLIPSE『WIRED』(2021)

2021年10月8日にリリースされたECLIPSEの8thアルバム。

スウェーデン・ストックホルム出身の4人組メロディアスハードロック/ヘアメタルバンドの彼らも、今年でデビュー20周年。前作『PARADIGM』(2019年)、およびライブアルバム『VIVA LA VICTOURIA』(2020年)を経て届けられた今作は、20年以上にわたる活動の集大成と呼べるような内容/仕上がりです。

2000年代前半〜半ばにかけて、北欧ではこういったヘアメタルからの影響が強いバンドが多数登場しましたが、今作で聴くことができる彼らのサウンドはEUROPEなど同郷の先輩たちの影響下にあるメロディアスなハードロックが主軸。「Saturday Night (Hallelujah)」なんてタイトルだけ見たらパーティロック調かなと思いきや、適度な湿り気を帯びたマイナー調の“らしい”作風。アコースティック主体のパワーバラード(すげえ矛盾してますが。笑)「Carved In Stone」も、北欧の厳しい寒さが空気として伝わってきそうなテイストで、そりゃ嫌いになれるわけがない。非常に好みです、こういう音/楽曲。

以前もどこかで書いたかもしれませんが、僕は2000年代のこの手のバンドにあまり触れておらず、どちらかというと当時は若干の嫌悪感すら持っていました。だって、ヘアメタルって音楽性を示す名称じゃなくて、ヴィジュアル系と同じ括りですからね。もちろん良い曲があるのは知っていましたが、なんとなく偏見があって避けて通ってきたところがあるんです。

ところが、このサイトの運営を本格的に再開させた5年くらい前から、そういったジャンル/アーティストに対してもまずは偏見を取っ払って聴いてみよう、と思うようになり、サブスクなどを通じて気軽に触れるようになったわけです。その結果、本作のような良作に出会うことができた。そういった意味ではサブスクリプションサービスって、本当に新しい出会いの場になっていると思うんです。

さて、話題を本作に戻します。過去作に一切触れずに本作と接したわけですが、80年代〜90年代初頭のBON JOVIDEF LEPPARD、解散前のEUROPE、あるいは90年代のFAIR WARNINGなどを筆頭に、マイナーキーの美メロを武器としたハードロックを下地にしつつ、タイトな演奏とコンパクトなアレンジでまとめ上げているなと感心しました。かつ、メロディラインも非常に練られており、まったく飽きが来ない。こういったバンドの場合、どうしても似通った曲が複数あったり、あるいは1曲くらい(妙に陽気なパーティソングみたいな)捨て曲があったりするものですが、全11曲/41分を終始楽しく聴くことができた。結局のところ、良い曲、良い歌、良い演奏という基本が守られていれば、知らないアーティストでも楽しめるものなんだなと再確認させられました。

ベートーヴェン「歓喜の歌」の主メロを引用した「Twilight」のような遊びもありつつ、先人たちの影響をベースにどこまでもオリジナリティを追求した本作は、まさに北欧バンドならではの1枚と言えるでしょう。刺激よりも安心感を味わいたいリスナーにうってつけの良作です。

 


▼ECLIPSE『WIRED』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月11日 (月)

SIXX:A.M.『THIS IS GONNA HURT』(2011)

2011年5月3日にリリースされたSIXX:A.M.の2ndアルバム。日本盤は同年5月4日発売。

MOTLEY CRUEの頭脳ニッキー・シックス(B)が、プロデューサーやシンガーソングライターとしても活動するジェイムズ・マイケル(Vo)、当時GUNS N' ROSESにも参加していたDJアシュバ(G/ex. BULLETBOYS、ex. BEAUTIFUL CREATURESなど)とともに立ち上げたサイドプロジェクト。彼らのデビューアルバム『THE HEROIN DIARIES SOUNDTRACK』(2007年)は文字どおりニッキーの自伝的書籍『THE HEROIN DIARIES』のサウンドトラック的役割も果たしていましたが、その翌年に発表されたMOTLEY CRUEの(現時点での)最終作『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)との共通点も見受けられ、ニッキーが今一番やりたいことはこの方向性なんだろうなということが伺える良質なメロディアスハードロックアルバムでした。

そんなサイドプロジェクト、1枚こっきりで終わるのかと思いきや、しっかり2作目も届けてくれました。しかも、今回もニッキーによるアルバムと同タイトルの書籍に紐づいた作品なのですが、前作以上の完成度を誇る傑作。びっくりです。

前作同様にジェイムズがボーカルやリズムギター、キーボード、ドラムを担当したことで、この3人のみでレコーディングは完結。しかもプロデューサー気質の強いメンバーが集まっていること、ソングライターとしても非凡な才能を発揮するニッキー&ジェイムズがいることで、前作をより濃厚に煮詰めたような、極上の作品に仕上がっているのです。

オープニングを飾るタイトルトラック「This Is Gonna Hurt」を筆頭に、メロディアスでツボを押さえた良質ハードロックチューンがずらりと並ぶ冒頭。特に4曲目「Live Forever」までの流れは圧巻ではないでしょうか。そして、5曲目でバラードタイプのミディアムナンバー「Sure Feels Right」で小休止し、豪快な「Deadlihood」で攻撃再開。アコースティックテイストの美しいバラード「Smile」、シンガロングしやすいフレーズが並ぶ「Help Is On The Way」、大陸的な壮大さを持つ「Oh My God」、ピアノの音色とオペラ調メロディラインがゴシック色を強めるアップチューン「Goodbye My Friends」、ピアノ&ストリングスが切なさとエモーショナルさを際立たせるスローバラード「Skin」と、とにかく良曲しか存在しない。かつ、曲の並び/構成も非常によく練られており、バラードタイプの楽曲が3曲と多めながらもすべてタイプが異なるので、そこまで多いと感じさせないのも良し。

要するにこのアルバム、傑作なわけです。ニッキー・シックスが関わってきた作品の中でも5本指に入るほどの完成度を誇る1枚だと思います。その結果が、全米10位というキャリア最高位を獲得するわけですから。

と同時に、本作はSIXX:A.M.というプロジェクトが初めてバンドになった瞬間を捉えたアルバムとも言えるのではないでしょうか。前作ほどの悲壮感もなく、頭からラストまでシンプルに楽しむことができる、このバンドの入門編に最適な内容だと思います。

ヴィンス・ニールが悪いわけではないですが、本当は『SAINTS OF LOS ANGELES』もここまで練り込まれた作品になるはずだったんじゃないかな……いや、そんなことないか。そりゃね、MOTLEY CRUE(のワールドツアー)で集金して、SIXX:A.M.の活動に本腰入れたくなる気持ちもわかります。結果、MOTLEYは数年後に活動終了(その後再結成)し、SIXX:A.M.をメインバンドとして動かしていくことになるわけですから(それも、最近では再び逆転しつつあるのが悲しいんですけどね...)。

 


▼SIXX:A.M.『THIS IS GONNA HURT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2021年10月10日 (日)

MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年10月1日にリリースされた、MOTLEY CRUEの2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカルでの発売なしの、デジタル限定作品となっています。

今年6月に4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)と3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、9月には5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)の最新リマスター盤を立て続けにリリースしたMOTLEY CRUE。これらはバンド結成40周年の記念企画の一環で、残すは1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)のリマスター盤発表を待つばかり。こちらはオリジナル盤の発売と同日の11月10日を予定しているようです。

過去に取り上げてきた作品の中では1983年制作と、本作がもっとも古いアルバム。当時の録音技術や機材の影響もあり、例えば『DR. FEELGOOD』と比べたらそのプロダクションに大きな差を感じてしまうのは仕方のないところ。しかし、この生々しさを伴うサウンドプロダクションこそ『SHOUT AT THE DEVIL』の魅力であり、ブレイク直前のはちきれんばかりのパッションと勢いが見事な形で表現された良作(および良ミックス)だと思っております。

で、実際に2021年の技術および価値観で最新リマスタリングが施された本作ですが、全体的に丸みを帯びた、非常にバランスの整えられた音像に変化しています。これまでの作品もそうであったように、その違いがもっとも表れているのがドラムサウンド。オリジナルバージョンおよび以前のリマスター作ではスネアにヒットがかなり刺々しく、それが本作に収録された楽曲群/テイストにフィットしていました。

ところが、これらも今の耳で聴くと若干古臭く感じられる。時代的にアナログ録音だと思うので、そのへんの個性/魅力が端的に表れているのだと思います。また、時代的にはすでにCDは存在していたものの、マスタリングでそこまで意識していなかったはず。アナログレコードで聴くとその魅力/威力を遺憾なく発揮するものの、CDだと若干チープに感じられ、ぶっちゃけ70年代の音像とさほど変わらない(ちょっと言い過ぎか)。そのへんが、時代時代のリマスタリングで徐々に変化していったわけですが、今回の配信を意識したリマスタリングはまさに2020年代にフィットしたものと言えるのではないでしょうか。

ほかの作品ほどギターの音像には変化は感じられず、若干音量が増したくらいの違いかな。ボーカル含め、コンプをかけて均一化したようなバランス感の良さは、ヘッドフォンやイヤフォンで聴けばより深く理解できると思います。ただ、この均一化が果たして『SHOUT AT THE DEVIL』という作品に最適なのかどうかは、ちょっと疑問も残りますが。

以前、レギュラーで出演しているDJイベントで本作のアナログ(1983年当時の日本プレス盤)を大音量で回したのですが、そこで耳にした音がこれまで聴いてきた『SHOUT AT THE DEVIL』の中ではベストだった、という一言だけは付け加えておきます。結局、アナログ主流の時代に制作された音源はアナログ盤で聴くのが一番!(趣旨が変わってる)

 


▼MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
(amazon:MP3

 

2021年10月 9日 (土)

TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』(2021)

2021年10月8日にリリースされたTRIVIUMの10thアルバム。日本盤はボーナストラック2曲(ライブ音源)を追加し、同年10月20日発売予定。

昨年4月に2年半ぶりの新作『WHAT THE DEAD MEN SAY』(2020年)を発売したばかりのTRIVIUMですが、新型コロナウイルスの影響でライブ活動がままならず、気づけば同年6月から次作の楽曲制作に突入していたとのこと。そのまま秋にはレコーディングに入り、過去2作を担当したジョシュ・ウィルバー(GOJIRALAMB OF GODSONS OF TEXASなど)をプロデューサーに迎え、締め切りを気にすることなくじっくり作り上げたとのことです。

今回のアルバムはアートワークや曲名から、なんとなくファンタジックな神話性を感じさせますが、実のところは架空の神話を昨年世界中に起こった大きな出来事=コロナ禍に照らし合わせて制作していったんだとか。ただし、「In The Court Of The Dragon」というタイトル自体は、アメリカの作家ロバート・W.チャンバースのショートストーリーから名付けられたそう。そのストーリー自体、恐怖や不確実性に満ちたもので、まさに我々が昨年から直面している出来事とリンクすることから、それを直接的に描くのではなく別のルートで表現したそうです。

そういったテーマやメッセージ性の強さに比例するように、サウンド自体も非常にアグレッシヴさに満ちたものに仕上がっています。前作『WHAT THE DEAD MEN SAY』でさまざまな経験を得た上での原点回帰を試み、見事な形で作品化させたTRIVIUMでしたが、本作ではその経験をさらにブラッシュアップさせることで、よりブルータルさを増し、よりドラマチックにスケールアップした楽曲群を制作。アルバム冒頭を飾るインスト「X」では、7thアルバム『SILENCE IN THE SNOW』(2015年)のオープニングトラック「Snøfall」を制作したイーサーンEMPEROR)が再び作曲・トラック制作を手がけており、アルバムの不穏さを際立たせます。そこからアルバムを象徴するタイトルトラック「In The Court Of The Dragon」へとなだれ込むのですが、これがもう最高の一言。2ndアルバム『ASCENDANCY』(2005年)や4thアルバム『SHOGUN』(2008年)の頃を思わせるアグレッションとプログレッシヴさを兼ね備えた良作で、この時点でガッツポーズを取ってしまったリスナーは少なくないはずです。

その後もブラストビートを多用したブルータルな楽曲、王道ヘヴィメタルらしいメロディアスなナンバーなどが豊富に用意。アルバム中盤に置かれた“いかにも”なメタルバラード(と呼んでいいですよね?)「The Shadow of The Abattoir」のドラマチックさも文句なしですし、前のめりな楽曲で終わると思いきや、ラストはヘヴィ&メロディアスで後半にかけてドラマチックに展開するミドルチューン「The Phalanx」で豪快に締め括る。この少し余韻を残すエンディングもさすがの一言です。

全体を通してスクリームとクリーンボーカルのバランスも絶妙ですし、これはアグレッシヴなTRIVIUMが好きなリスナー、メロウなテイストのTRIVIUMが好きなリスナー両者を納得させる1枚ではないでしょうか。本作はコロナ禍がなければ生まれなかった作品かもしれませんが、10作目という節目に最高傑作と呼ぶにふさわしいアルバムを完成させたのですから、世の中悪いことばかりじゃないなと少しだけ思ってしまいました。

2021年という時代に「ヘヴィメタルとは?」と問われたら、真っ先に提示したいアルバムです。

 


▼TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2021年10月 8日 (金)

JUDAS PRIEST『POINT OF ENTRY』(1981)

1981年2月下旬にリリースされたJUDAS PRIESTの7thアルバム。リリース初出時、UK盤と日本盤およびUS盤はジャケットが異なりましたが、最近はUKオリジナル盤のアートワークに統一されています。あの遠近感含め意味不明な荒野&道路のジャケットの印象で覚えているリスナーも少なくないはずです(笑)。

前作『BRITISH STEEL』(1980年)が、ちょうど同時期にイギリスから勃発したNew Wave Of British Heavy Metal(=NWOBHM)ムーブメントとリンクし、全英4位/全米34位という過去最高順位を記録。また、同作から「Living After Midnight」(全英12位)、「Breaking The Law」(同12位)、「United」(同26位)といったヒットシングルが生まれたことも手伝い、本国イギリスではロニー・ジェイムズ・ディオが加入したBLACK SABBATH、パンクとハードロックを見事な形でミックスさせたMOTÖRHEADらとともに、新世代バンドたちと共闘することになります。

そして、そのメタルの新たな波はアメリカにも飛び火。『BRITISH STEEL』がアメリカでも高評価を得たことで、バンドは次のターゲットをアメリカのマーケットに定めます。

前作でのソリッドなスタイルはそのままに、シンプルなアレンジ/作風はさらに強調され、かつメロディの親しみやすさもより強めていく。アルバム冒頭を飾る3曲(「Heading Out To The Highway」「Don't Go」「Hot Rockin'」)はまさにその方向性を象徴するような楽曲ではないでしょうか。

その一方で、やたらとソフトな印象が強まった「Turning Circles」、ブルースロック的な方向性の「Desert Plains」など、アメリカナイズされた楽曲もしっかり用意。「Don't Go」「Hot Rockin'」のキャッチーさも今思えば、その方向性にある2曲なんですけどね。「Solar Angels」もイントロこそヘヴィさを醸し出していますが、歌メロのわかりやすさはこの一環といえるものでしょう。

ただ、本作の残念なところは、後半に進むにつれて印象に残る曲が少ないこと。序盤の力の入れようと比較すると、より明確かと思います。あと前作では「Rapid Fire」や「Steeler」のように、アルバムの冒頭とラストを疾走感の強いメタルチューンで固めていましたが、今作にはそれが足りない。それ以外の要素は比較的『BRITISH STEEL』の延長線上にあるものなんですが、そのモノ足りなさも本作の低評価につながってしまったのは、致し方ないのかな。本国ではアルバムが最高14位、シングルは「Don't Go」(全英51位)、「Hot Rockin'」(同60位)と低調気味でしたが、アメリカではアルバム最高39位と前作と同程度、シングルでは「Heading Out To The Highway」がBillboard Mainstream Rock Songs(当時はRock Albums & Top Tracks)で最高10位まで上昇と、それなりの成功を収めています。

こういった戦略が、続くアルバム『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)と、翌1983年アメリカで開催された歴史的野外フェス『US Festival』での成功につながるわけです。そういった意味では、本作は中継ぎとしてそれなりの役割を果たしたわけですね。その功績含め、たまには本作のことも思い出してあげてください。なにせ「Hot Rockin'」という名(迷)MVを生み出した歴史的価値の高い1枚なんですから……(笑)。

 


▼JUDAS PRIEST『POINT OF ENTRY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月 7日 (木)

KK'S PRIEST『SERMONS OF THE SINNER』(2021)

2021年10月1日にリリースされたKK'S PRIESTの1stアルバム。

その名からもわかるように、このバンドは元JUDAS PRIESTのギタリスト、K.K.ダウニングが2020年に結成した新バンド。当初のメンバーはティム・“リッパー”・オーウェンズ(Vo/SPIRITS OF FIRE、A NEW REVENGE、ex. JUDAS PRIEST、ex. ICED EARTH、ex. YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEなど)、レス・ビンクス(Dr/ex. LIONHEART、ex. TYTANなど)といった元JP組を含むこと、バンド名に“PRIEST”のワードを含むことから、K.K.が何をしたいのか想像に難しくなかったと思います。

その後、レスが手首を怪我したことでドラマーがショーン・エルグに交代。トニー・ニュートン(B)、A.J.ミルズ(G)の5人でこのデビューアルバムを完成させます。レスは現在70歳と高齢ですい、今作で表現されているサウンド/演奏を考えたら、このメンバーチェンジはある意味必然だったのかもしれません。

聴いていただければおわかりのように、本作で表現されているのは80年代〜90年代初頭のJUDAS PRIESTを彷彿とさせるクラシカルなヘヴィメタル。まんまと言ってしまえばそれまでですが、ロブ・ハルフォード(Vo)の後釜として“まんま”なボーカルを聴かせたティムと、JP時代もソングライターのひとりとしてバンドに貢献してきたK.K.がいるんですから、そりゃそうなるでしょうね。

ここ数作でモダンさよりもクラシックロック的な側面を強調し続けているJPですが、このKK'S PRIESTも比較的そのラインにいると言えるでしょう。中には「Sermons Of The Sinner」のように、あからさまに「Painkiller」や「Exciter」の冒頭を意識した楽曲もありますしね。この曲といい、“怒りの一撃”的な(SE「Incarnation」に続く)オープニングトラック「Hellfire Thunderbolt」といい、JP時代のカッコよさをうまい形にディフォルメしているように感じました。

……そう、“ディフォルメ”なんですよ。もっと言っしまえば、パロディ。JPっぽいんだけど、やっぱり別モノ。ここにいるのは、あくまでソングライターの3分の1なわけで、そりゃ本家より薄まるのでディフォルメせざるを得ない。そう考えると……なんか余計な要素がチラついて、どうにも素直に楽しめない自分もいるんですよね。

1枚のヘヴィメタルアルバムとしては非常に高品質で、新しさや斬新さは皆無だけど安心して楽しめる。90点に近い良作だと思うのですが、変にJPをちらつかせることで「ああ、大丈夫です……」と気持ちが引いてしまう。「今のJPより良い!」という声もわるのもわかります。そりゃそうでしょう、そこそこ若いメンバーもいるでしょうから、そういった若手からのインプットも多少はあるでしょうから(今のJPにおけるリッチー・フォークナー(G)みたいにね)。

ここまでの完成度で中身も最高。でも、もしこれを“JPを想像させないバンド名”で発表していたら、もうちょっと違った結果や評価が得られたんじゃないか。JP50周年のタイミングに被せてくるのも、アレですし。「Metal Through And Through」とか「Hail For The Priest」「Return Of The Sentinel」とかせっかくの良曲なのに、本当にこのタイトルで良かったのかな……とかいろいろ含めて、相対的に悩ましい1枚です。

 


▼KK'S PRIEST『SERMONS OF THE SINNER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月 6日 (水)

LIMP BIZKIT『DAD VIBES』(2021)

2021年9月30日に配信リリースされたLIMP BIZKITの新曲。

オリジナルラインナップが復活した5thアルバム『GOLD COBRA』(2011年)を最後に、まとまった音源集のリリースがストップしているLIMP BIZKIT。その後、10数年にわたり在籍したInterscope Recordsを離脱、新たにCash Money Recordsと契約し、2012年から『STAMPEDE OF THE DISCO ELEPHANTS』と題された6thアルバムに向けて新曲を小出しに発表していきます。2012年秋から2014年夏にかけて「Lightz (City Of Angels)」、「Ready To Go」(リル・ウェインをフィーチャー)、「Thieves」(MINISTRYのカバー)、「Endless Slaughter」と4曲発表するものの、今度はCash Money Recordsとの契約を解除。以降もアルバムの制作は遅れに遅れ、DJリーサル(Turntables)が脱退〜再加入したり、サム・リヴァース(B)も脱退〜再加入を繰り返したりといろいろありつつ、2021年10月初頭現在までリリースの目処は立っていません。

そんな中、この夏に行われた最新ツアーでフレッド・ダースト(Vo)が見せた新たなヴィジュアルと、公演後に流れる新曲「Dad Vibes」が注目を集めました。今回配信された楽曲はこのツアー終演後に流れる新曲で、アートワークには話題のフレッドの新ヴィジュアル(笑)が採用されています。

Spotifyなどで今も聴ける「Ready To Go」や「Endless Slaughter」は王道ニューメタルをさらに一歩押し進めつつ、古き良き時代のヘヴィメタルのテイストも取り入れている拙僧のなさを発揮(褒めてます)。ところが、今回発表された新曲は90年代後半の彼ららしい、ヒップホップをベースにしたニューメタル/ラップメタルが展開されているのですが、例に挙げた前の2曲と比べると若干地味な印象も。アルバムでいうと箸休め的な1曲といったところでしょうか。

2分少々という短さも手伝って、大きな山場もなく終了してしまうこの曲。正直、これだけでLIMP BIZKITの新作はこう!と断言することはできませんが、もし終始このテンションで1枚作っていたとしたら……それはそれで聴いてみたいかも(単なる怖いもの見たさとして)。それよりも、これまでに配信された4曲を含む形でまとまった作品集が届けられるのだとしたら、一体どんなまとまりを見せるのか……いや、こんな時代だからこそ、まとまりなんていらないのかな。それこそ、プレイリストやミックステープ的な作品集でもいいわけで、むしろそれがこのバンドらしいとも言えるのではないでしょうか。

ロス・ロビンソンがプロデュースしたという噂の『STAMPEDE OF THE DISCO ELEPHANTS』。このままのタイトルで進めるのかどうかも不明ですが、この2020年代にLIMP BIZKITがどんな新作を投入するのかは非常に気になるところです。

 


▼LIMP BIZKIT『DAD VIBES』
(amazon:MP3

 

RUN D.M.C.『RAISING HELL』(1986)

1986年5月27日にリリースされたRUN D.M.C.の3rdアルバム。

80年代半ば、いわゆるMTV世代のポップスリスナーにとって初めて接したヒップホップがRUN D.M.C.かBEASTIE BOYSだった、という現在40代後〜50代前半の方は少なくないと思います。RUN D.M.C.の「Walk This Way」とBEASTIE BOYS「(You Gotta) Fight For Your Right (To Party!)」はともにBillboard Hot 100にてトップ10入りするほどのヒットになり、かつ2曲ともロック/ハードロックをベースにしたトラックなのでライト層の入り口としても効果的でした。当の僕もRUN D.M.C.の「Walk This Way」が初めて本格的に接するヒップホップとなり、続くBEASTIE BOYSの1stアルバム『LICENSED TO ILL』(1986年)とこの『RAISING HELL』がヒップホップの入り口になったのですから。

当時すでにAEROSMITHが大好きだった僕は、「Walk This Way」のカバーに本家(スティーヴン・タイラージョー・ペリー)が参加したMVをVHSテープに録画して、何度もリピートし。気づいたらレンタルレコード店でこのアルバムを借りていました。しかし、まだまだヒップホップ/ラップというものが斬新すぎた自分は、「Walk This Way」や「It's Tricky」「Raising Hell」といったギターが入ったトラックばかりを再生して、アルバム自体はそこまで深く聴き込んでいなかった記憶があります。サンプリング文化なんてものはまだまだ自分には未知の世界だったので、「It's Tricky」がTHE KNACK「My Sharona」のギターリフをサンプリングしているなんて気づいていませんでしたし、アルバム冒頭を飾る「Peter Piper」の元ネタがボブ・ジェームズ「Take Me To Mardi Gras」だと知るのも、そこから10数年以上経ってからでした。

1986年12月だったかな。RUN D.M.C.の初来日公演があって(確かNHKホールだった記憶が)、なぜかチケットを購入して行った記憶も。METALLICAに続いて人生二度目の外タレがRUN D.M.C.。なぜ行ったか? そりゃAEROSMITH目当てでしょうが(来るはずないのに)。このアルバムを聴くと、そんな淡い中学生時代の思い出がよみがえります。

本作の本当の魅力に気づいたのは、たぶん20代になってから。ラップやヒップホップがヒットチャートを賑わし、洋楽リスナーの中では当たり前のように定着して以降だったかな。幼い頃はギターの入った曲にしか興味を示さなかった自分が、ビート(音色や鳴りの違い)やスクラッチの気持ち良さに気づき、その流れでラップの気持ちよさにたどり着く。そうなると、冒頭の「Peter Piper」からすでに気持ちよく、シームレスに続く曲構成や低音の鳴りの心地よさ、音数が少ないからこそのカッコよさにどんどんハマっていくわけです。

今もそこまで真剣にヒップホップを聴き漁っているわけではないですし、自分にフィットするものに手を出して聴く程度のリスナーですが、そんな僕でも本作は初期ヒップホップの入り口、教科書として非常によくできた名作だと理解しています。深夜にヘッドフォンで、大音量で聴く気持ち良さといったら。ねえ?

にしても、先の「Walk This Way」はもちろんですが、「It's Tricky」や「You Be Illin'」といった曲が全米トップ100に入っていた80年代半ばって、本当に面白い時代だったなと。そんな時代を多感な10代半ばに過ごせたのは、今も音楽と触れる上で大きな財産だと思っています。

……と、今回は急に思い出話に花咲かせてみました。たまにはこういうのもね。

 


▼RUN D.M.C.『RAISING HELL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月 5日 (火)

AEROSMITH『O, YEAH! ULTIMATE AEROSMITH HITS』(2002)

2002年7月2日にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。日本盤は同年7月3日発売。

80年代後半にGeffen Recordsから『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)『GET A GRIP』(1993年)とメガヒット作を連発させ、90年代後半に再びSony Recordsへと移籍したバンドが、初めてレーベルの枠を超えて制作したベストアルバム。シングルヒット、ライブの定番曲を中心にセレクトし、新曲「Girls Of Summer」「Lay It Down」、そしてRUN D.M.Cとのコラボカバー「Walk This Way」をエアロ名義の作品に初収録した初のコンピ作品となっています。

70年代の選曲はまあこんなもんかな?という無難な内容に。一応黄金期のメンバー(ジョー・ペリー&ブラッド・ウィットフォード在籍時)での楽曲に限られているので、70年代は5thアルバム『DRAW THE LINE』(1977年)まで。80年代は再ブレイクを果たす「Dude (Looks Like A Lady)」以降で、『DONE WITH MIRRORS』(1985年)はスルーされています。仕方ない。

Geffen時代のヒットシングルはほぼ網羅かな。「Blind Man」や「Walk On Water」といった、Geffen時代のシングル曲をまとめた『BIG ONES』(1994年)からの楽曲は外されていますが。Sony復帰後のシングルは「Hole In My Soul」「Full Circle」(ともに『NINE LIVES』(1997年)収録)、「Fly Away From Here」「Sunshine」(ともに『JUST PUSH PLAY』(2001年)収録)がカットされています。「Hole In My Soul」はまだしも、それ以外はTOP100入りしていないので仕方ないですが。それに、「Hole In My Soul」を入れちゃうとDISC 2は本当にバラードばかりになっちゃいますしね。

「Pink」はシングル用のリミックスが施されたバージョン、そして初の全米No.1シングル「I Don't Want To Miss A Thing」、ラジオオンエア用に“4 letter words”が変更された「Just Push Play」はエアロ名義のまとまった作品に初収録。特に「I Don't Want To Miss A Thing」に関してはそれまで、映画『アルマゲドン』のサウンドトラックか同曲シングルを購入するしかなかったので、にわかファン ビギナーにはありがたい措置ではないでしょうか。

新曲2曲は、まあおまけ程度の内容かな。サイケポップ調の「Girls Of Summer」は「Pink」以降の流れを狙ったものなのかな。「Lay It Down」はお約束のパワーバラード。これもありきたりっちゃあありきたりかな。相変わらず高品質ですが。

日本盤CDにはここにボーナストラック4曲を追加収録。ライブの定番曲「Train Kept A Rollin'」(スタジオバージョン。できればライブバージョンがよかった)、「Toys In The Attic」、ビートルズのカバー「Come Together」、そして本作と同じ2002年公開の映画『スパイダーマン』サントラに収録された「Theme From Spider-Man」カバーというセレクトで、レア感が強いのは「Theme From Spider-Man」くらいかな。せっかく時代を追って曲が進んでいくのに、最新曲のあとにいきなり「Train Kept A Rollin'」で30年くらい逆戻りするのもねえ。考えものです。

なお、本作は2011年9月に『THE ESSENTIAL AEROSMITH』とタイトルを変え、アートワークも変更され再発に。同年11〜12月の来日公演にあわせて、日本では『マキシマム・ベスト』と題した3枚組仕様で発売されています。

そういえば、最近AEROSMITHはSony時代を含むすべてのカタログをUniversal Recordsに集約させることを発表したばかり(ソース)。これまで各種ストリーミングサービスでは、レーベルの枠を超えたコンピは歯抜け状態のものが多く、本作もApple MusicではGeffen時代の音源が聴けず、Spotifyではフルで聴けるという状況でした。近々こういった不都合も解決することになるのかと思うと、リスナーとしてはありがたいかぎりです。

 


▼AEROSMITH『O, YEAH! ULTIMATE AEROSMITH HITS』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / MP3

 

2021年10月 4日 (月)

ANDREW W.K.『GOD IS PARTYING』(2021)

2021年9月10日にリリースされたANDREW W.K.の6thアルバム。

セルフプロデュース作だった約9年ぶりのオリジナルアルバム『YOU'RE NOT ALONE』(2018年)から約3年半ぶり、新たにNapalm Recordsと契約しての新作。アンドリューW.K.自身と、前作でミックスを手がけたテッド・ヤング(カート・ヴァイル、KING CARDINALなど)との共同プロデュース作となっております。

前作の印象がほとんど残っていなかったので「どんな内容だっけ?」とサブスクを探してみると、日本のリリース元がなくなったこともあってかサブスクからも、そしてYouTubeからも音源/MVが消えている始末。これだからサブスクは……と思いつつ、自身が書いた前作のレビューを読み返してから本作に臨みました。

タイトルこそ過去の片鱗を感じさせますが、サウンド的にはいわゆる初期の“パーティ感”は完全に払拭され、シリアスかつドラマチックなテイストがより強調されているのは前作同様。しかし、今作はここ数年の世界情勢が反映されたのか、オープニングトラック「Everybody Sins」から相当ヘヴィな音像/楽曲でじわじわと攻め寄ってきます。続くリード曲「Babalon」や「No One To Know」もまさにそういった作風で、アルバム全体を通じて重苦しさが伝わってくる、ある意味では“らしくない”作風かもしれません。

しかし、ここ数作のANDREW W.K.のアルバムって常にそういう“らしくなさ”の連続で、アーティスティックな作風を模索しているように映っていたので、それ自体は別段驚きに値しません。それに、偏見なしでアルバムと向き合えば間違いなく“ここ数作のANDREW W.K.らしさ”がしっかり伝わる内容ですからね。

ちょっとしたサウンドメイクやアレンジからは、いかにも彼らしい80年代ロック/ハードロック/AORへのオマージュも感じ取れますし、モダンなのかレトロなのかわからない味付けの「Stay True To Your Heart」や「I'm In Heaven」、メロウな王道パワーバラード「Remember Your Oath」、パーティ感こそ激薄ながらもノリの良いロックチューン「I Made It」や「Not Anymore」、そして「And Then We Blew Apart」を筆頭にQUEENからの影響が濃厚な楽曲群など、意外にも良曲多し。むしろ、2作目『THE WOLF』(2003年)をスタート地点と捉えると正しい進化を遂げた1枚だと受け取ることができるはずです。

デビューアルバム『I GET WET』(2001年)以外はダメダメだ、と感じているリスナーには無理にオススメしませんが、むしろそれ以降の作品も好意的に受け取っていたり、好きな作品/楽曲が存在するという方には積極的にオススメしたい1枚かもしれません。いやあ、思ったより良かったので安心しました。

 


▼ANDREW W.K.『GOD IS PARTYING』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月 3日 (日)

ASKING ALEXANDRIA『SEE WHAT'S ON THE INSIDE』(2021)

2021年10月1日にリリースされたASKING ALEXANDRIAの7thアルバム。日本盤未発売。

前作『LIKE A HOUSE ON FIRE』(2020年)から約1年5ヶ月という短いスパンで届けられた本作は、デビュー以来在籍してきたSumerian Recordsを離れ、新たにBetter Noise Musicとの契約第1弾アルバム。プロデューサーに過去2作を手がけたFROM FIRST TO LASTのマット・グッド(G, Vo)を三度迎えて制作した、王道スタジアムロック風メタルコア作品に仕上がっています。

前作で“わかりやすくてメロディアス”な作風を追求し、メタルコアやポストハードコアから(良くも悪くも)脱却を図ったASKING ALEXANDRIA。今作はその延長線上にある1枚なのですが、若干メタルコア側に舵を切り返したようなテイストが増えています。要するに、80年代のハードロック黄金期を思わせるシンプルでわかりやすい作品にまとめあげられていた前作のテイストを残しつつ、現代的なヘヴィさが復調した作風へとシフトしている。聴く人が聴いたら……言い方は悪いですが、後戻りしているのです。

ですが、この後戻りは戦略的撤退のようにも感じられるし、もっと言えばライブがままならない2020年を通過したことによる、鬱積した心の暗部がそのまま音に凝縮された作品とでもいいましょうか。『LIKE A HOUSE ON FIRE』が新境地を見せたセルフタイトル作(にしてフロントマンのダニー・ワースノップ復帰作)『ASKING ALEXANDRIA』(2017年)で試した方向性の、ひとつの到達点だとしたら、今作はそのガワをブラッシュアップさせつつ、軸足を原点回帰させたとでも言えばいいのかな。バンドのルーツも垣間見えるし、かつ現在の“らしさ”も失っていない。コロナ禍が導き出した、過去と現在のハイブリッド作というのが正しいのかはわかりませんが、僕にはそう感じられました。

ちょっと行き過ぎた感もあった前作でしたが、あれはあれで素晴らしい完成度でしたし、リリース後もしばらくはよくリピートした1枚でした。しかし、“ASKING ALEXANDRIAらしさ”を強く感じさせるという点においては、実はダニー復帰後の3枚中、本作がもっとも色が濃いのではないか。そんな気がしています。要は、リリース順が悪かったよね、と。

でも、それもこれも結果論でしかなく、本作も前2作を通過していなかったら生まれていなかったかもしれない。そういう意味では、然るべき過程を経て2021年に届けられた1枚なのでしょう。実験的な過去2枚も好きだけど、本作はそれ以上に好き。今はシンプルにそれでいいかなと思っています。

 


▼ASKING ALEXANDRIA『SEE WHAT'S ON THE INSIDE』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2021年10月 2日 (土)

MINISTRY『MORAL HYGIENE』(2021)

2021年10月1日にリリースされたMINISTRYの15thアルバム。

前作『AMERIKKKANT』(2018年)から約3年半ぶりの新作。前作は当時のドナルド・トランプ政権に対するアメリカへの怒りがそのまま作品として昇華されていました。では、当時と状況が大きく変化した現在、アル・ジュールゲンセン(Vo, G)はどんな思いを抱え、表現の源泉としているのでしょう。

プレスリリースには、本作に対して「トランプも退陣し、民主党政権となった現在のアメリカで、アルは何を思うのか。彼によれば、『道徳的衛生』と題された本作は、『怒りよりも教訓的な内容』になっているとのこと。レーガンが新自由主義を掲げると、強欲が美徳となった。人々は他人を顧みず、自分のことだけを考えるようになってしまった。今こそ、そんな世の中を変える時だ。我々が必要としているのは『道徳的衛生』なのだ。そんなメッセージが、おなじみのミニストリーのヘヴィなビート乗って、紡ぎ出されていく」との説明があります。作品のテーマは前作での怒りとは異なるものですが、世界を変えようとする彼の意思はまったくブレておらず、そのへんが過去作の延長線上にある作風にて表現されているように感じます。

確かに前作ほどストレートなアングリー感はありませんが、それでもMINISTRYらしいご機嫌のヘヴィなインダストリアルサウンドは健在。従来の作品を楽しんできたファンなら問答無用で楽しめる内容と言えるでしょう。ここ数作で再び復活した「TV」シリーズの新曲「TV Song #6 (Right Arount The Corner Mix)」も収録されていますしね。

ゲストミュージシャンも相変わらず豪華の一言。「Sabotage Is Sex」では元DEAD KENNEDYSのジェフ・ビアフラ(Vo)が、いかにも彼らしいボーカルを披露しており、イギー・ポップ率いるTHE STOOGESの名曲「Search And Destroy」のインダストリアル風カバーではビリー・モリソン(G/ビリー・アイドル、ex. THE CULTなど)が豪快なギタープレイを聴かせてくれます。このほか、プロフェッサーXことアラビアン・プリンス(DJ)がオープニングトラック「Alert Level」が参加しているほか、ロイ・マイヨルガ(Dr/STONE SOUR)、デイヴィッド・エレフソン(B/ex. MEGADETH)などの名前を見つけることもできます。

個人的には「ちょっとユルいかな……」と感じる場面もある1枚で、正直言え均的、いかにも普通な仕上がりなんですよ。全体的に楽曲1つひとつがコンパクトなのもそうですし、ちょっと薄味かな、と。それはこのバンド/ユニットに対する期待値が、常に一定水準以上のものを求めてしまっているからなのかもしれません。特に、サウンドに関してはもはや新しいテイストを求めていないような気もしますし(もちろん、MINISTRYという存在にとってはそれが正解かもしれませんが)。

となると、このバンドにとっての正解は、やはり歌詞やメッセージ、姿勢、体制で作品の真価を問うことなのかな。こと日本人にとっては、そのへんを深く理解するにはちょっと難しいのかもしれませんが(対訳だけでは伝わらない、英詞から垣間見えるものもありますし)、そのへんも含めしっかり評価できるようになりたいなと、個人的には考えています。

なので、音的には70点、メッセージ性を含めてプラス15点くらいの内容かな、と。あくまで個人的観点ですが。

 


▼MINISTRY『MORAL HYGIENE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2021年10月 1日 (金)

LITURGY『ORIGIN OF THE ALIMONIES』(2020)

2020年11月20日にデジタルリリースされたLITURGYの5thアルバム。フィジカル(CD、アナログ)は2021年6月4日リリース。なお、現時点で日本盤は未発売。

前作『H.A.Q.Q.』(2019年)もデジタルで先行リリース後、約半年後にフィジカルで発売されましたが、ほぼ1年ぶりとなったこの新作も同様の流れでデジタル/フィジカルでのリリースが続いたようです。それもあってか(また、こちらの情報収集力が鈍っていることもあってか)、つい最近まで完全に見逃していた本作。まさかこんな立て続けに良作を連発するなんて思ってもいなかったものでして(言い訳)。

昨年5月、『H.A.Q.Q.』をリリースするタイミングに自身がトランスジェンダーであることをカミングアウトしたハンター・ハント=ヘンドリクス(Vo, G, Electronics)。それもあってなのか、今作からは前作以上の開放感が伝わる……気がします。

作品のテイスト、およびオープニング曲「The Seperation Of HAQQ From Hael」というタイトルから、今作が前作『H.A.Q.Q.』の続編、もしくは対となるような作品であることは想像に難しくありません。ブラックゲイズをベースにしつつも、デジタルエフェクトとストリングス&ブラスといった生楽器を並列したサウンドメイクはまさに前作の延長線上にあるもの。ですが、今作はアバンギャルドさと宗教音楽的な“癒し”効果が前作以上の広がりを見せており、そのタガの外れた感覚(それでいて整合感も備わっている)は、ハンターが自己解放を遂げた結果でもあるのかな……というのはこじつけでしょうか?

序盤はインストゥルメンタル中心の構成で、中盤以降からブラックゲイズ色が徐々に増していき、それに伴うようにアバンギャルドさにも磨きがかかっていく。特に大半の楽曲がシームレスになっている流れはどこか組曲のようにも感じられる。それは、特に2曲目以降の「OIOION's Birth」「Lonely OIOION」や「The Fall Of SIHEYMN」「SIHEYMN's Lament」と2曲ペアになったタイトルからも推測は難しくありません。

かつ、終盤には14分超えの大作「Appartion Of The Eternal Church」でクライマックスを迎える。この曲で展開されるアグレッションと美しさの共存は、まさにこのバンドの真骨頂と呼べるもので、KING CRIMSONを筆頭とするかつてのプログレッシヴロックが果たした役割を現代的に昇華させ、さらに数歩前進されたものと受け取ることができます。美しいったらありゃしない。

どこか残虐性を孕みながらも、全体を覆う上品さ、気高さはクラシック音楽やオペラ音楽などとの共通点も見出せるし、先の「Appartion Of The Eternal Church」のドラマチックさからはまさにそういった音楽と共通のテイストが見つけられることでしょう。だからこそ、アルバムラストを飾る「The Armstice」の、なんとなく悲哀に満ちた空気感からはエピローグと呼ぶにふさわしいものさえ伝わってくるのです。

最高傑作との呼び声も高い『H.A.Q.Q.』に続く今作もまた、『H.A.Q.Q.』と並ぶ、いや、同作を超える傑作だと断言できるもの。全7曲/37分というコンパクトさ含め、すべてにおいてパーフェクトな1枚です。

 


▼LITURGY『ORIGIN OF THE ALIMONIES』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« 2021年9月 | トップページ | 2021年11月 »