BIFFY CLYRO『THE MYTH OF THE HAPPILY EVER AFTER』(2021)
2021年10月22日にリリースされたBIFFY CLYROの9thアルバム。日本盤未発売。
昨年8月に発売された前作『A CELEBRATION OF ENDINGS』(2020年)から1年2ヶ月という短いスパンで届けられた本作は、その前作と対になる連作。ロサンゼルスで録音された前作とは異なり、今作は初めて故郷のスコットランドで、たった6週間で完成させたとのこと。それもあってかプロデューサーも、過去2作を手がけたリッチ・コスティー(AT THE DRIVE-IN、MUSE、MY CHEMICAL ROMANCEなど)からアダム・ノーブル(PLACEBO、dEUS、リアム・ギャラガーなど)に交代しています。
前作が“陽”であれば、今作は“陰”。また、前作が“Before”であれば、今作は“After”というように、2枚は表裏一体の関係。当初は前作から漏れた楽曲を完成させるつもりでスタジオに入ったそうですが、セッションを重ねる中でアイデアが膨らんでいき、結果として『A CELEBRATION OF ENDINGS』の“先”にあるものが形となったようですね。
テーマも正反対ならタイトルも正反対。歌詞で表現されているテーマも、例えば前作が不屈な精神だとしたら、今作は人の弱さが扱われているとのこと。そういった要素を従来の彼ららしいアグレッシヴなハードロックや、ポップテイストの強いソフトなナンバーに落とし込んでいるのですが、不思議と爽快感が弱く、(良い意味で)モヤモヤする感覚が伝わってくる。そのへんは歌詞のテーマとリンクしているのでしょうか。このひねくれた感覚もいかにもBIFFY CLYROらしいなと、個人的には前作以上にのめり込んで楽しんでいます。
サンプリングを用いたオープニング曲「DumDum」といい、キャッチーなポップチューン「Witch's Cup」といい、アコースティック色の強い「Holy Water」といい、日本語の「春うらら」をタイトルに用いた穏やかな「Haru Urara」といい、良い意味で内向的な印象が強い。でも、だからといってダークさやネガティブさが強調されているのかというと、また違う。内省的な中から、そこから抜け出そうとするポジティブさも微かに伝わり、そこがもう1枚の『A CELEBRATION OF ENDINGS』とのつながりを感じさせるんですよね。だからこそ、アルバムのラストを飾る異色のアグレッシヴ・ニューウェイヴナンバー「Slurpy Slurpy Sleep Sleep」の意味がとても重要に思えてくる。「DumDum」から始まり「Slurpy Slurpy Sleep Sleep」で終わるこのアルバム、実は非常にストーリー性の強い1枚ではないでしょうか。BIFFY CLYROというクセの強いバンドの、もっとも濃い部分が凝縮された、ファンにはたまらない1枚だと断言します。
後付けの2部作となった今回のアルバム。コロナ禍を経て届けられた内容がこれという点においても、非常に興味深いものがあります。本作を楽しんだあとは再び前作にも立ち返り、この連作の魅力にじっくり浸ってほしいところです。
なお、本作のフィジカル盤(CD)は『A CELEBRATION OF ENDINGS』を完全再現したライブアルバム付き。注文したCDがまだ手元に届いていないので現時点では未聴ですが、ストリーミングサービスで耳にして気になったら、ぜひCDを購入することもオススメします。
▼BIFFY CLYRO『THE MYTH OF THE HAPPILY EVER AFTER』
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