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2021年11月

2021年11月30日 (火)

2021年10月のアクセスランキング

ここでは2021年10月1日から10月31日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日更新/↑●位)」の表記は、「更新日/2021年9月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』(2021)(※2021年10月9日更新/NEW!)

2位:MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)(※2021年10月10日更新/NEW!)

3位:ECLIPSE『WIRED』(2021)(※2021年10月12日更新/NEW!)

4位:LITURGY『ORIGIN OF THE ALIMONIES』(2020)(※2021年10月1日更新/NEW!)

5位:LIMP BIZKIT『DAD VIBES』(2021)(※2021年10月6日更新/NEW!)

6位:ANDREW W.K.『GOD IS PARTYING』(2021)(※2021年10月4日更新/NEW!)

7位:JUDAS PRIEST『POINT OF ENTRY』(1981)(※2021年10月8日更新/NEW!)

8位:MINISTRY『MORAL HYGIENE』(2021)(※2021年10月2日更新/NEW!)

9位:SIXX:A.M.『THIS IS GONNA HURT』(2011)(※2021年10月11日更新/NEW!)

10位:AEROSMITH『O, YEAH! ULTIMATE AEROSMITH HITS』(2002)(※2021年10月5日更新/NEW!)

 

11位:KK'S PRIEST『SERMONS OF THE SINNER』(2021)(※2021年10月7日更新/NEW!)

12位:JUDAS PRIEST『REFLECTIONS - 50 HEAVY METAL YEARS OF MUSIC』(2021)(※2021年10月15日更新/NEW!)

13位:ASKING ALEXANDRIA『SEE WHAT'S ON THE INSIDE』(2021)(※2021年10月3日更新/NEW!)

14位:DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(2021)(※2021年10月22日更新/NEW!)

15位:PARADOX『HERESY II – END OF A LEGEND 』(2021)(※2021年10月13日更新/NEW!)

16位:GUNS N' ROSES『HARD SKOOL』(2021)(※2021年9月25日更新/↓6位)

17位:RUN D.M.C.『RAISING HELL』(1986)(※2021年10月6日更新/NEW!)

18位:IRON MAIDEN『SENJUTSU』(2021)(※2021年9月16日更新/↓5位)

19位:JINJER『WALLFLOWERS』(2021)(※2021年9月30日更新/↑30位)

20位:KNOCKED LOOSE『A TEAR IN THE FABRIC OF LIFE』(2021)(※2021年10月17日更新/NEW!)

 

21位:OBSCURA『DILUVIUM』(2018)(※2021年10月14日更新/NEW!)

22位:WAGE WAR『MANIC』(2021)(※2021年10月18日更新/NEW!)

23位:METALLICA『METALLICA: DELUXE EDITION』(2021)(※2021年9月14日更新/↓1位)

24位:LEPROUS『APHELION』(2021)(※2021年9月18日更新/↓18位)

25位:TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』(2021)(※2021年10月16日更新/NEW!)

26位:YES『THE QUEST』(2021)(※2021年10月21日更新/NEW!)

27位:Happy 40th Anniversary!! Seiko Matsuda Concert Tour 2020〜2021 “Singles & Very Best Songs Collection!!”@日本武道館(2021年10月22日)(※2021年10月25日更新/NEW!)

28位:CARCASS『TORN ARTERIES』(2021)(※2021年9月17日更新/↓2位)

29位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日更新/↓20位)

30位:EVERY TIME I DIE『RADICAL』(2021)(※2021年10月27日更新/NEW!)

2021年11月のお仕事

2021年11月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。(※11月29日更新)

 

[WEB] 11月29日、「BARKS」にてライブレポート和楽器バンド、全国ホールツアー完遂。新曲「名作ジャーニー」配信&リリックビデオ公開が公開されました。このほかにも複数のメディアにて同レポートが公開中です。

[WEB] 11月26日、「ホミニス」にてライブレポート水瀬いのりが思いを込めた歌声を届ける「またステキな景色が見られるように」が公開されました。

[WEB] 11月26日、「Billboard.com」にてインタビューJ-Pop Duo GARNiDELiA Look Back on 10-Plus-Year Career, Talk New Album ‘Duality Code’ & More: Interviewが公開されました。

[紙] 11月26日発売「CONTINUE」Vol.74にて、上坂すみれロングインタビュー、上坂すみれライブレポート、Guilty Kissスペシャルライブレポートを担当しました。(Amazon

[WEB] 11月24日、「リアルサウンド」にてインタビューMAN WITH A MISSION、10年の中で見つけた“正解” 自らの強みを確信し作り上げた新アルバムを語るが公開されました。

[WEB] 11月23日、「ホミニス」にてライブレポート内田雄馬がライブで見せた一体感!ファンへ感謝の気持ちを歌で届けるが公開されました。

[WEB] 11月22日、「リアルサウンド」にてライブレポート乃木坂46 高山一実、感謝と別れを告げたラストライブ ドームでの“リベンジ”も果たした『真夏の全国ツアー2021 FINAL!』が公開されました。

[WEB] 11月19日、「BARKS」にてコラムGARNiDELiA 、“Duality=二元性”が具現化されたニューアルバム『Duality Code』が公開されました。

[WEB] 11月19日、「Yahoo!ニュース」の公式コメンテーターに就任しました。(個人ページ

[WEB] 11月18日、「Billboard Japan」にてインタビューGARNiDELiA “今、直接届けたい歌”を詰め込んだアルバム『Duality code』が公開されました。

[紙] 11月17日発売「Ani-PASS Plus」#05にて、22/7宮瀬玲奈・海乃るり・倉岡水巴インタビューを担当しました。(Amazon

[WEB] 11月11日、「ホミニス」にてコラム上坂すみれがアフリカの過酷な環境で生きる動物たちの姿を伝える!が公開されました。

[WEB] 11月10日、「ホミニス」にてイベントレポート花守ゆみり、東山奈央らの朗読劇と作品を彩った音楽で『ゆるキャン△』の世界を体感!が公開されました。

[紙] 11月6日発売「ヘドバン」Vol.32にて、NIRVANA『Nevermind』に関するコラム、新譜レビュー5作分を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 11月5日、「リアルサウンド」にてインタビューINORANが音楽を通して続ける心の旅 時代におけるミュージシャンとしての役目も語るが公開されました。

[紙] 11月4日発売「日経エンタテインメント!」2021年12月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」、日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 11月2日、「ぴあ」にてインタビュー桜井玲香×岡崎紗絵×三戸なつめ 「『シノノメ色の週末』はセンチメンタルな気持ちになりたいときにぴったりな映画です」が公開されました。

[WEB] 11月1日、「リアルサウンド」にてライブレポート櫻坂46、一人ひとりの成長が結実した結成1周年の集大成 『1st TOUR 2021』ファイナル公演を徹底レポートが公開されました。

[WEB] 11月1日、「Pop'n'Roll」にてライブレポート櫻坂46[ライブレポート]改名後初の全国アリーナツアー完遂!武道館での<1st YEAR ANNIVERSARY LIVE>も決定が公開されました。このほかにもさまざまな媒体で掲載中です。

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また、2021年10月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップして、30曲程度のプレイリストをSpotifyにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2110号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。(これまでApple Music版も作成してきましたが、プレイリストに関しては今月からしばらくSpotifyのみで進めてみます。もしリクエストなどありましたら、Twitterへコメントなどいただけると幸いです)

STING『TEN SUMMONER'S TALES』(1993)

1993年3月9日にリリースされたスティングの4thアルバム。日本盤は同年2月28日に先行発売。

実の父親の死と直面したこともあり、内省的で重苦しさも感じられた前作『THE SOUL CAGE』(1991年)から2年ぶりの新作は、正反対で陽気な作風。スティング(Vo, B)のほか、ドミニク・ミラー(G)、ヴィニー・カリウタ(Dr)、デヴィッド・サンシャス(Key)という布陣を軸に制作されたこともあってか、非常にバンド感の強い内容に仕上がっています。

THE POLICE時代を彷彿とさせる大きなノリのポップロック「If I Ever Lose My Faith In You」を筆頭に、そのタイトルからもわかるようにマカロニウェスタンをパロったカントリーロック「Love Is Stronger Than Justice (The Munificent Seven)」と、頭2曲だけでも過去3作とは異なるテイストであることが伝わります。特にジャズに系統した初期2作からは想像もできないポップさは、ある意味THE POLICE時代からの続きが描かれているようにも映ります。

その考えは「Field Of Gol」や「Seven Days」などといったポップ色の強い楽曲で、さらに確信へと変わります。かと思えば、初期作の延長線上にあるアレンジの「Heavy Cloud No Rain」もあるのですが、楽曲のスタイル自体はロックンロールのフォーマットにあり、このあたりからもスティングが本作で何を示したかったのかがご理解いただけるはずです。

ブギー調の「She's Too Good For Me」、変拍子を用いた「Saint Augustine In Hell」などは“もしTHE POLICEが90年代まで続いていたら”なんて想像してしまいたくなる作風だし、「Everybody Laughed But You」はTHE POLICEからソロを経て再びバンドに戻ったら……なんてこともイメージしたくなる仕上がり。さらに、アルバムのエンドロール的な「Epilogue (Nothing 'Bout Me)」の軽やかさ含め、本当に終始聴きやすいアルバムなんですよね。

また、本作には映画関連の楽曲が2曲含まれており、それもあって認知度がある程度高い作品かもしれません。その中でも「Shape Of My Heart」は映画『レオン』のエンディングで印象的な使われ方をしたこともあり、特に日本のリスナーの中にはこのアルバムがお気に入りという方が少なくないはずです。

楽曲のポップさはさることながら、それを巧みなアレンジ&演奏で支えるバンドエンバーの才能には驚かされるばかり。同作を携えた来日公演、僕も当時日本武道館に足を運びましたが、ヴィニー・カリウタのドラミングの素晴らしさや、ドミニク・ミラーのギタリストとしての多才さに圧倒されたことをよく覚えています。そりゃあこの2人、続く『MERCURY FALLING』(1996年)でも続投するわけです(ドミニクに至っては『THE SOUL CAGE』から3作連続なので、もはや片腕的存在でしょうしね)。

ソロ1作目『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』(1985年)に若干の敷居の高さを覚え、なおかつTHE POLICE時代のテイストを求めるのであれば、本作は入門編としてうってつけの1枚だと断言します。スティングのソロキャリアにおいても、もっとも間口が広くて奥がドロドロ(笑)な1枚ですしね。

 


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STING『THE BRIDGE』(2021)

2021年11月19日にリリースされたスティング通算15作目のスタジオアルバム。

今年3月に過去に制作した他アーティストとのデュエット曲/コラボ曲を集めたコンピ盤『DUETS』(2021年)をリリースしたばかりのスティングですが、新録スタジオ作品としてはTHE POLICE時代を含む過去曲のリワークアルバム『MY SONGS』(2019年)以来2年半ぶり、オリジナル作品としては『57TH & 9TH』以来5年ぶり。過去数作に携わったマーティン・キーゼンバウムとスティング自身のプロデュースにより制作されました。

海外通常盤は全10曲で36分と、トータル37分の前作にも匹敵するコンパクトさ。デラックス盤およびデジタル/ストリーミング向けはボーナストラック3曲を追加した45分という程よい長さ(日本盤はさらにデラックス盤13曲に「I Guess The Lord Must Be In New York City」を追加した14曲入り)。「世界的規模のパンデミックにより人命が奪われ、人と人が離れ離れになり、混乱とロックダウンと未曾有の社会的/政治的混乱に見舞われた1年間に書かれた曲を収録」とのことで、アルバムタイトルの『THE BRIDGE』はこういった経緯から、離れ離れになった人々の間に橋を架けることから導かれたものなんだとか。

レコーディングにはドミニク・ミラー(G)、ブランフォード・マルサリス(Sax)といった古くからの盟友やジョシュ・フリース(Dr)、マヌ・カチェ(Dr)、マーティン・キーゼンバウム(Key)、フレッド・ルノーディン(Synth)といった錚々たる面々が参加。レコーディングの多くがリモートで進められたそうです。

楽曲の多くは3分前後とコンパクトなものが多く、オープニングを飾るシリアスなロックチューン「Rushing Water」を筆頭に、口笛をフィーチャーした親しみやすいポップロック「If It's Love」、穏やかなミディアムチューン「The Book Of Numbers」、エレクトロ色の強いミディアムバラード「Loving You」などバラエティに富んだ仕上がりに。このあたりスティングらしい通常運転と受け取れますが、楽曲のシンプルさにはより磨きがかかり、無駄を極力排除したアレンジ含めモダンなテイストが強まっています。

また、変拍子を用いつつもキャッチーさを失っていない「Harmony Road」、過去の「Field Of Gold」や「Shapes Of My Heart」にも通ずる抒情的なアコースティックバラード「For Her Love」、カントリーや民謡などからの影響も強い「The Hills On The Border」、さらにそこにジャジーさを加えた「Captain Bateman」や「The Bells Of St. Thomas」と、終盤に向けてディープさを強めていき、本編ラストをシンプルなアコースティックナンバー「The Bridge」で締めくくります。

デラックス盤はその後、「The Bridge」の延長線上にあるテイストの「Waters Of Tyne」、ダンサブル&グルーヴィーなバンドアレンジとスキャットのみで進行する「Captain Bateman's Basement」、若干モダンアレンジのオーティス・レディングのカバー「(Sittin' On) The Dock Of The Bay」が続きますが、アルバムの構成としては10曲でちょうどいいような気がします。

この10月で70歳になったばかりのスティングですが、その創作欲や作曲家としての才能はまだ枯れることを知らず、今作でも遺憾なく発揮されています。トータルでロック色の強かった前作『57TH & 9TH』とは若干カラーが異なるものの、延長線的アルバムとして受け取ることもできるし、よりモダンさに磨きがかかっていると同時に40年以上にわたるキャリアを総括するような内容でもある。スティングのファンなら文句なしで楽しむことができ、これから彼の作品に触れてみようと思っているリスナーにも入門編に最適な1枚です。

 


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2021年11月29日 (月)

MR. BUNGLE『MR. BUNGLE』(1991)

1991年8月13日にリリースされたMR. BUNGLEの1stアルバム。日本盤は『オペラ座の変人』の邦題で、同年10月10日発売。

FAITH NO MOREのフロントマン、マイク・パットン(Vo)が同バンド加入前の1985年から在籍していたエクスペリメンタル・ロックバンド。4つのデモ音源集を1986〜89年の間に発表したのを経て、1991年にこのセルフタイトルアルバムにてWarner Bros. Recordsからメジャーデビューしています。

当時のメンバーはマイク(Vo, Key)、トレイ・スプルーアンス(G, Kye)、トレヴァー・ダン(B)、ダニー・ハイフェッツ(Dr, Trumpet)、クリントン・マッキノン(Tenor Sax)、テオ・レンジェル(Alto Sax)の6人。アルバムのプロデュースはNAKED CITYやPAINKILLERとしても活動した前衛音楽家およびサックスプレイヤーのジョン・ゾーンが担当。その事実だけでどんな奇天烈な音楽に挑んでいるか、想像が容易いと思います(笑)。

時期的にはFAITH NO MORE加入後最初のアルバム『THE REAL THING』(1989年)での大ブレイク後、次作『ANGEL DUST』(1992年)制作前といったところでしょうか。ミクスチャーロックの割に品が良すぎる『THE REAL THING』に堅苦しさを覚えたマイクが、その鬱憤を晴らすが如く好き放題やったのがMR. BUNGLEのアルバムなのかな。そう考えると、このおもちゃ箱みたいな内容も納得がいくのではないでしょうか。

「Quote Unquote」でのエッジの効いたギターサウンドにこそFAITH NO MOREの片鱗を見つけることができるものの、基本的には奇想天外なアレンジの数々で構築された、先の読めない展開の楽曲群が軸。闇の遊園地という例えばぴったりなダークさ&変態性は、アバンギャルドでプログレッシヴでジャジーでポップと、ひとつのジャンルで括るのが難しいもの。10分超の「Egg」みたいに1曲の中でコロコロ展開していく構成、普通に歌っていたかと思えばデス声が聞こえてきたりするボーカルワークなど、真顔で聴くのが馬鹿馬鹿しくなるのではないでしょうか。

1991年当時、ミクスチャーといえばメタルなどラウドな音楽にファンクやヒップホップの要素を加えたものが大半でしたが、だからこそMR. BUNGLEのスタイルはミクスチャーの一言では片付けられないほどに強烈なものがありました。これはもう、実験音楽という呼び方でいいんじゃないか、アルバム自体が実験室みたいなものなんじゃないか、と当時は思ったものです。

ですが、MR. BUNGLEの本気はこんなものじゃなかった。彼らが本領発揮するのは続く『DISCO VOLANTE』(1995年)からだったと気づくのは、もっとあとになってからでした。

リリースから30年経った今聴いても、本作の難解度は異常なものがあり、その衝撃はまったく色褪せていないどころか、さらに高まっているような気すらしてきます(それは次作『DISCO VOLANTE』然り、3rdアルバム『CALIFORNIA』(1999年)然りですが)。そう考えると、昨年発表された21年ぶりの新作『THE RAGING WRATH OF THE EASTER BUNNY DEMO』(2020年)のわかりやすいことよ(苦笑)。

 


▼MR. BUNGLE『MR. BUNGLE』
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OBSCURA『A VALEDICTION』(2021)

2021年11月19日にリリースされたOBSCURAの6thアルバム。

前作『DILUVIUM』(2018年)から3年4ヶ月ぶりの新作。2020年にフロントマンのシュテフェン・クメラー(Vo, G)以外の3人が全員脱退し、クリスティアン・ミュンツナー(G)、ヨルン・パウル・テセリン(B)、ダーヴィト・ディーポルト(Dr)が加入しました。クリスティアンとヨルンはそれぞれ2ndアルバム『COSMOGENESIS』(2009年)、3rdアルバム『OMNIVIUM』(2011年)期に在籍した元メンバー。古くからのファンにはうれしい出戻りではないでしょうか。

また、『COSMOGENESIS』から長らく在籍したRelapse Recordsを離れ、今作では新たにNuclear Blast Recordsへと移籍。旧知の仲のメンバーをかき集め、新天地で第一歩を踏み出すという気合いの入った1枚でもあるわけです。

そんなわけですから、聴く前から過剰に期待が高まっていた本作。オープニングを飾る7分超えの「Forsaken」を再生すると……あれ……うん……わかるんだけど……普通のヘヴィメタルじゃないか、これ……と素直に飲み込めずにいました。確かにOBSCURAらしさは随所から感じられるんだけど、正統派メタル的な色合いが強まっており、ちょっと違和感。何度もリピートすれば飲み込める、はず。

ですが、そんな不安も2曲目「Solaris」で解消。そうそう、この感じよ。この不安を掻き立てるようなスタイルを待っていたのよ。が、続くタイトルトラック「A Valediction」や「When Stars Collide」も「Forsaken」の延長線上にあるスタイルで再び違和感を覚える。悪くないんだけど……。

エクストリームさは随所に散りばめられているんだけど、全体的に聴きやすい。リスナーに向けて間口を広げているのは素晴らしいけど、前作に夢中だった身としては今回は若干ストレートすぎる気が。もっとも、他のこの手のバンドと比べたら十分に異質で、実はストレートには程遠いんですけどね(彼らにしては、ということです)。「In Unity」とか「Devoured Usuper」など中盤には不穏さ漂うテクニカルデスメタルが展開されていますが、その後も序盤のようなテイストは至るところから漂ってくる。なんだろう、うまく言語化できないけど……。

あと、前作までにあったOPETH的なメランコリックなプログメタル/プログロック的要素が後退した印象も受けます。ドラマチックなテイストは「Orbital Elements II」や「Heritage」を筆頭にいろんなところから受け取ることができますが、それらはどちらかといえばストレートなヘヴィメタル的な側面が強く、自分が求めているものとは異なる。思えば、前作は『COSMOGENESIS』から続いたコンセプト連作の最終章であったわけで、本作は新たな幕開けでもある。だから、それまでと若干違ったことにチャレンジするのは当たり前のこと。この変化を前向きに捉えるか否かは聴き手次第だけど、個人的にはちょっとだけ肩透かしだったかな。

数回リピートしたところで、「1曲1曲がコンパクトで聴きやすいし、これはこれで良いかも……」と思えてきたけど、やっぱりもっとも気に入っているのがラストの「Heritage」というあたりに、自分が彼らに何を求めているのかが透けて見えてしまう。う〜ん……。

客観的に見たら非常に優れたヘヴィメタルアルバムで、聴く人が聴けば最高にカッコいいアルバムになること間違いなし。だけど、主観的には求めていたものとは異なる……そういう1枚です。

 


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2021年11月28日 (日)

ARMORED SAINT『SYMBOL OF SALVATION』(1991)

1991年5月14日にリリースされたARMORED SAINTの4thアルバム。日本盤は同年6月25日発売。

3rdアルバム『RAISING FEAR』(1987年)発表後にデビューから在籍したChrysalis Recordsとの契約が終了し、メジャーデビュー前に所属したインディーズのMetal Blade Recordsに復帰。それと同じくして、バンド創設メンバーのひとりデイヴ・プリチャード(G)が白血病のため1990年2月28日に亡くなってしまいます。

バンドはデイヴ追悼として新作制作に取り掛かります。その際、1985年に脱退したフィル・サンドヴァル(G)が復帰。ジョン・ブッシュ(Vo)、ジョーイ・ヴェラ(B)、ジェフ・ダンカン(G)、フィル&ゴンゾ・サンドヴァル(Dr)という最終ラインナップが完成します。

アルバムのプロデュースを担当したのは、ALICE IN CHAINSJANE'S ADDICTIONなどオルタナ系メタルを手掛けてきたデイヴ・ジャーデン。収録された全13曲中8曲にデイヴ・プリチャードのクレジットがあり、うち6曲はデイヴが単独で書いた楽曲となります。また、ジョーイ・ヴェラが作曲した「Tainted Past」の最初のギターソロにはデイヴのものが用いられており、文字通りの追悼盤として仕上げられています。

オープニングを飾る「Reign Of Fire」を筆頭に、問答無用の男臭いパワーメタルが展開されていく。かと思えば、「Another Day」のようなパワーバラードも存在し、ジョン・ブッシュのボーカルも冴えわたっている。スピードで押すようなタイプは皆無で、それよりはグルーヴの強さで持っていく作風といいましょうか。1991年という時代にこのスタイルを選んだのは、まさに“呼ばれた”としか言いようがない。

無意識のうちにそうなったのかはわかりませんが、どの曲からも悲壮感よりも戦い抜こうとする強い意志が伝わってくる。かつ派手さは皆無で、玄人好みする楽曲や演奏が随所に散りばめられている。なもんだから、60分近くもある長尺の作品ながらも最後まで飽きずに楽しむことができるのです。

また、デイヴ・ジャーデンという人選も功を奏し、通常のパワーメタルとは異なるドライ感に満ちたサウンドプロダクションも、楽曲の持つダークな方向性にマッチしている。このへんは直近に彼がプロデュースしたALICE IN CHAINSのデビュー作『FACELIST』(1990年)と通ずるものがあるのではないでしょうか。

彼らのアルバムの中では、個人的に最高傑作だと思う1枚だと断言したいです。こんなに素晴らしい作品を完成させたにも関わらず、プロモーションが中途半端でヒットにつながらず。リリース翌年にジョンがANTHRAXに引き抜かれたことで、ARMORED SAINTはその歴史に一度幕を下ろすことになります。

そういえば、ジョンのANTHRAX加入後最初のアルバム『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年)がデイヴ・ジャーデンのプロデュース作というのも興味深いポイントではないでしょうか。このあたりからも、ANTHRAXがジョンを迎えて何をしたかったのかが窺えるような気がしてなりません。

なお、本作は2003年にデモ音源やインタビュー音源などを加えたデラックス盤が発売。2021年にはリリース30周年を記念した完全再現ライブCD+DVD『SYMBOL OF SALVATION LIVE』も発表されています。

 


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BLACK LABEL SOCIETY『DOOM CREW INC.』(2021)

2021年11月26日にリリースされたBLACK LABEL SOCIETYの11thアルバム。

間にセルフカバーアルバム『SONIC BREW (20TH ANNIVERSARY BLEND 5.99 - 5.19)』(2019年)を挟んだものの、オリジナルスタジオアルバムとしては『GRIMMEST HITS』(2018年)以来3年10ヶ月ぶり。期間的に考えると、コロナ禍で一番大変だった時期を外しているように映りますね。

デビュー20周年を経て初めて届けられる今作は、「1998年の結成時からバンドを支えているツアー・クルー、そして世界中のファンに捧げるもの」(リリース文より)とのこと。レコーディングにはザック・ワイルド(Vo, G, Piano)、ジョン・ディサルヴォ(B)、ジェフ・ファブ(Dr)、ダリオ・ロリーナ(G)というここ数年お馴染みのメンバーで実施しています。『GRIMMEST HITS』や『SONIC BREW (20TH ANNIVERSARY BLEND 5.99 - 5.19)』と同じ布陣ですね。ですが、過去2作はレコーディングではギターパートをすべてザックが担当していたため、ダリオはツアーのみ参加という形でした。ところが、今作ではダリオもレコーディングに参加。その影響か、今作ではツインギターバンドであることを強調するようなプレイやフレーズが随所に散りばめられています。

オープニングを飾る「Set You Free」の“これぞオープニング曲”といったドラマチックな曲構成は、正直BLSにしては品が良すぎないか?と最初に感じました。これは全体を通して言えることですが、今作の楽曲は整合性の強い、完成度の高い楽曲が並んでおり、まるでオジー・オズボーンのアルバムみたい……と感じる瞬間も多い。ぶっちゃけ、来たるオジーの新作から弾かれた曲が多く含まれているんじゃないか?とすら疑ったほどです。そういった点も踏まえ、オジーソロっぽいもの、BLACK SABBATHっぽいもの、そしてBLSらしいもの、そのどれかひとつが突出することなくバランス良くミックスされるとこうなるんだ、というよなアルバムとでも言えばいいんでしょうかね。

曲によってザックのボーカルがダブルでレコーディング(同じように歌ったテイクを重ねてレコーディング)されているものもあり、そこまで含めてオジー的。ただ、ギターソロになった途端に荒れ狂うプレイが飛び込んできて「あ、間違いなくBLSだ(笑)」と安心するんですよね。

あと、先に書いた「ツインギターバンドであることを強調するような」という点ですが、ツインリードやハーモニーを強調したギタープレイが随所に用意されており、このへんはレコーディングをギタリスト2人体制で行ったことによる変化であることは間違いないでしょう。こういったプレイはオジーの作品ではまずないでしょうから、BLSならではといったところでしょうか(といっても、BLS的にも新たな試みなんですが)。同じ布陣で複数のアルバムを制作する機会の少なかった彼らですが、こういった変化も同編成で良好な関係が築けている証拠でしょう。

あと、今作をオジーのソロっぽいと称したもうひとつの理由として、バラードタイプの楽曲が多く含まれていることも挙げられます。M-4「Forever And A Day」にM-8「Love Reign Down」、M-12「Farewell Ballad」と本編のみでも3曲。さらに日本盤はCROWDED HOUSEのカバー「Don't Dream It's Over」とEAGLESのカバー「I Can't Tell You Why」もボーナストラックとして追加され、アコースティックバラード2曲が増えたことでその要素がさらに強まっています。正直、この手のカバーはソロ名義の作品でやればいいのに、と思わずにはいられませんが……良い出来なので目を瞑ります(苦笑)。

個人的には中盤の「Ruins」「Forseke」あたりからいつもの空気が漂い始め、初期サバスを彷彿とさせるダウナー&サイケデリックな「Gospel Of Lies」からラストの「Farewell Ballad」にかけた流れがお気に入り。従来のらしさに新しさが加わった、バンドの明るい未来が想像できる楽曲群&構成ではないでしょうか。そういった意味では本作、20周年を経て次の一歩を歩み始めたBLSにおいて過渡期的1枚なのかもしれません。

……なんてことを数回聴いて書いたものの、あれからさらにリピートしてみたら「やっぱり良い! ザック大好き!」という結果に(笑)。そりゃザックヲタクなんだから仕方ないか。これはこれでアリな1枚です。

 


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2021年11月27日 (土)

OVERKILL『HORRORSCOPE』(1991)

1991年9月3日にリリースされたOVERKILLの5thアルバム。日本盤は同年9月25日発売。

前作『THE YEAR OF DECAY』(1989年)から約2年ぶりの新作。同作を携え、1990年には初来日公演も実現しています。傍目には好調に見えましたが、一方でオリジナルメンバーのボビー・グスタフソン(G)が脱退するトラブルにも見舞われます。

ボビーの穴を埋めるべく、バンドは新メンバーとしてメリット・ギャント(G)とロブ・キャナヴィーノ(G)を迎え、初のツインギター編成でレコーディングに突入。テリー・デイト(METAL CHURCHDREAM THEATERSOUNDGARDENPANTERAなど)を再度プロデューサーに迎え、前作以上にテンション&純度の高いヘヴィメタルアルバムを完成させます。

オープニングを飾る「Coma」はスラッシュメタルにありがちな、スローパートからアップテンポへと展開していく構成を持つ王道の1曲。スピードは若干抑え気味ですが、彼ららしさの伝わる良曲ではないでしょうか。ツインギター編成になったことの影響は、随所にツインリード的フレーズが散りばめられたことくらいかな。レコーディングはオーバーダビングがあるので、この影響はライブに大きく反映されるのかな。

「Coma」はあくまで序章に過ぎず、このアルバムが本領発揮するのは2曲目「Infectous」以降かな。OVERKILLらしい狂ったスピード感に満ちたこの曲を経て、「Blood Money」「Thanx For Nothin'」「Bare Bones」とファストナンバー連発。いいぞ、もっとやれ(笑)。このパートでは、特に「Bare Bones」の序盤アレンジが聴きどころ。ピアノの独奏で不穏さを演出してからのクレイジーな本編へと続く構成、さすがです。

そこから一転して、アルバムタイトルトラック「Horrorscope」はダークなヘヴィナンバー。次作『I HEAR BLACK』(1993年)でのモダンヘヴィネス化の片鱗を感じさせ、本作の直前にリリースされたMETALLICAブラックアルバムに呼応するような1曲かもしれません。

後半は「New Machine」でアイドリングしつつも、エドガー・ウィンターの名曲カバー「Frankenstein」で再び小休止。少々リラックスモードに入っていたところに、「Live Young, Die Free」で急激にフルスロットル状態に突入し、「Nice Day... For A Funeral」で緩急をつけて、メタルバラード「Soulitude」で締め括る。序盤の飛ばしっぷりを考えると、後半の尻すぼみっぷりに若干萎えるものの、メタルアルバムの構成としては王道感の強いものなのかな、という気がしないでもありません。

トータルバランス的にはこの時点まででのベストと言えるものの、後半にもう1曲くらいバキバキのファストチューンが欲しかったところ。逆に、序盤にあった1曲を後ろに回す構成でもよかったのではないかと思わずにはいられません。

個人的には彼らの初期作品で一番好きなのが3rdアルバム『UNDER THE INFLUENCE』(1988年)なのですが、それと同じものを臨みはしないものの、あれを超えるくらいのスラッシュメタルアルバムが欲しかったなと。そう、先にも書いたように本作は“ヘヴィメタル”アルバムなんです。ヘヴィメタルアルバムとしては文句ないけど、スラッシュメタルアルバムとしてはもう一歩。バンドが転換期を迎えたタイミングの1枚なので、そういう評価になりますよね。このへんはリスナーが本作に何を求めるかで、評価が二分するのかな。

 


▼OVERKILL『HORRORSCOPE』
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KHEMMIS『DECEIVER』(2021)

2021年11月19日にリリースされたKHEMMISの4thアルバム。

Nuclear Blast Records移籍作となった前作『DESOLATION』(2018年)から約3年半ぶりの新作。これが日本デビュー作となります。KHEMMISは2012年から活動する米・コロラド州デンバー出身のドゥームメタルバンドで、今年に入りダニエル・バイヤー(B)が脱退したことで現在はベン・ハッチャーソン(G, Vo)、フィル・ペンダーガスト(G, Vo)、ザック・コールマン(Dr)の3人組に(本作のレコーディングではベンがベーシストも兼任)。ザックはデス/ブラックメタルバンドBLACK CURSEのメンバーでもあり、マックス・カヴァレラ(SOULFLY、ex. SEPULTURAなど)のプロジェクトGO AHEAD AND DIEのアルバム『GO AHEAD AND DIE』(2021年)にも参加するなど、その界隈ではよく知られたプレイヤーです。

さて、そんな彼らの日本デビュー作ですが、ドゥームメタルと聞いて一瞬及び腰になった方にこそ聴いてもらいたい1枚。全6曲で42分、7〜8分台の楽曲が大半を占めますが、終始スローで引きずるような楽曲というわけではなく、例えばオープニング曲「Avernal Gate」でのアッパーでドラマチックな展開や「Living Pyre」でのエピカルなアレンジなど、1曲1曲における起承転結がはっきりした構成が持ち味のひとつ。そのテイストはどちらかというと正統派ハードロックのそれに近いものがあり、グロウルを取り入れつつも朗々と歌い上げるボーカルスタイルもオーソドックスなメタルそのものといえます。

ドゥームの枠で括られたバンドではありますが、どちらかというとMASTODONGOJIRAあたりと比較されるべき存在なのかなという気がします。要所要所にツインリードをフィーチャーしていたり、緩急に富んだドラマチックな曲構成にはプログメタル的な色合いももつけられる。また、曲によってはグランジ……特にALICE IN CHAINSからの影響が伝わってくるのも印象的でした。

ドゥームメタルを基盤にしつつ独自の進化を重ねてきた結果、今のスタイルに到達したのは、時代を考えると必然だったのかなという気もしてきます。ただヘヴィでオルタナティヴな存在であるだけではなく、しっかりど真ん中=メインストリームも捉えている。このハイブリッド感こそ、これからのシーンに求められる強さなのかなと、このアルバムを聴いて感じました。

先にも書いたように、本作はドゥームメタルに対して苦手意識を持っているリスナーにこそ聴いてほしい1枚であり、導入としては最適な良作ではないかと信じています。と同時に、普段プログメタルや正統派ヘヴィメタルを聴いているリスナーにもリーチするでしょうし、エクストリームメタル愛好家にも引っかかるはず。そんな大きな可能性を秘めた、2021年らしい良作です。

 


▼KHEMMIS『DECEIVER』
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2021年11月26日 (金)

INFECTIOUS GROOVES『THE PLAGUE THAT MAKES YOUR BOOTY MOVE... IT'S THE INFECTIOUS GROOVES』(1991)

1991年10月9日にリリースされたINFECTIOUS GROOVESの1stアルバム。日本盤は同年12月1日発売。

INFECTIOUS GROOVESはSUICIDAL TENDENCIESのマイク・ミューア(Vo)とJANE'S ADDICITONのステファン・パーキンス(Dr)を中心に、1989年に結成されたサイドプロジェクト。当時のメンバーはディーン・プレザンツ(G/1996年からSUICIDAL TENDENCIESのメンバー)、アダム・シーゲル(G/ex.EXCELなど)、ロバート・トゥルヒーヨ(B/METALLICA、ex. SUICIDAL TENDENCIES、ex. OZZY OSBOURNEなど)という布陣。今考えるとものすごいメンツですね。

音楽性は当時のSUICIDAL TENDENCIESにファンクロックのカラーを織り交ぜたミクスチャーロック。ソングライティングのクレジットを見ると、大半がマイクとロバートの共作で、SUICIDAL TENDENCIESでやれないスタイルをここで実践したのかなという気も。結果、すでにスラッシュシーンでは流れていたロバートがその存在感を本作でさらに強めることになります。

レコーディングにはSUICIDAL TENDENCIESのロッキン・ジョージ(G)や、のちにVELVET REVOLVERに加入するデイヴ・クシュナー(G)なども参加。リードトラック「Therapy」ではオジー・オズボーンがゲストボーカルで参加しており、曲タイトルを歌っているだけでその異様な存在感を発揮しております。

RED HOT CHILI PEPPERSにスラッシュメタルギターを乗せたようなその独特のサウンドは、当時すでにブレイクしていたFAITH NO MOREなどにも通ずるオルタナティヴ感が備わっており、その手のバンドに偏見なく触れてきたメタルファンにも好評を博した記憶が。ぶっちゃけ、本家SUICIDAL TENDENCIESよりこっちのほうがカッコいい!という声も少なくありませんでした(SUICIDAL TENDENCIES自体はもともとハードコアですから、そっちが苦手なメタルファンもいたでしょうし。個人的にはどっちも好きだったけど)。

ちょっとしたフレーズやプレイからは1991年という時代ならではの質感が伝わるものの、全体を通して聴くと意外と2021年にも通用するんじゃないかという気がします。それくらい古さがなく、フレッシュさが保たれていると同時に、この手のサウンドが1991年当時は先鋭的だったという事実を示しているのかなと。それくらいモダンなカッコよさがあり、いろいろ一周した今だからこそ再評価したい作品。と同時に、今の若い世代に届いてほしい1枚です。

なお、SUICIDAL TENDENCIES同様にINFECTIOUS GROOVESも今日に至るまで活動継続中。現在のメンバーはマイク、ロバート、ディーンのほか、元FAITH NO MOREのジム・マーティン(G)、現AVENGED SEVENFOLDのブルックス・ワッカーマン(Dr)の5人で、2020年には最新EP『TAKE U ON A RIDE - SUMMER SHRED SESSIONS VOL.1』を発表しています。

 


▼INFECTIOUS GROOVES『THE PLAGUE THAT MAKES YOUR BOOTY MOVE... IT'S THE INFECTIOUS GROOVES』
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EXODUS『PERSONA NON GRATA』(2021)

2021年11月19日にリリースされたEXODUSの11thアルバム(リメイクアルバム『LET THERE BE BLOOD』を含めると12枚目のスタジオアルバム)。

全米38位という過去最高記録を打ち出した前作『BLOOD IN, BLOOD OUT』(2014年)から、実に7年ぶりの新作。2016年から新作制作の計画はあったものの、ゲイリー・ホルト(G)のSLAYERでの活動が途切れなかったこともあり、結局2019年の活動休止までまとまった時間を取ることができませんでした。いよいよEXODUSの新作制作に本腰を入れようとした矢先に、今度は新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンがあり、最終的に本作の制作に取り掛かったのは2000年秋から。2021年初頭には完成するものの、今度はトム・ハンティング(Dr)のガンが発覚し、リリースを同年11月まで遅らせることに。

こうしてようやく届けられた待望の新作ですが、待たされた甲斐ももある極上のヘヴィ&スラッシーな傑作メタルアルバムが完成しました。ラテン語で「好ましからざる人物」という意味を持ち、通常は外交官の入国を断る場合などに使われる外交用語であるこのタイトル、まさに音にピッタリ。7分半におよぶ冒頭のタイトルトラックからして、実にEXODUSらしい狂気じみた仕上がりで、緩急に富んだ構成も往年のスラッシュメタルらしさ満点。続く「R.E.M.F.」しかり、スラッシュメタルのど真ん中をいくスタイルで聴き手を思う存分楽しませてくれます。

かと思えば、グルーヴィーなミドルヘヴィナンバー「Elitist」、モダンヘヴィネス系のミドルチューン「Prescribing Horror」で流れに変化をつける。ディープな世界にたっぷり浸っていると、今度は3分前後のショートチューン「The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)」で突っ走りまくる。曲単位のみならず、全体を通して大きな緩急をつけていく構成は、全12曲/60分という比較的長めのトータルランニングにおいて非常に効果的。以降も小気味良いリズムのミドルチューン「The Years of Death and Dying」やキチガイじみたファストナンバー「Clickbait」が交互に訪れ、1分少々のインスト「Cosa del Pantano」を経て約8分もの大作「Lunatic-Liar-Lord」へとなだれ込む。この曲も8分の中で起承転結が繰り広げられ、かなり聴き応えの強い1曲です。

そして、スリリングな「The Fires Of Division」、ミドル〜アッパーへと展開していく「Antiseed」でクライマックスを迎えて、アルバムは終了します。うん、これはなかなかの仕上がり。彼ららしいリフワークも健在ですし、スティーヴ・”ゼトロ”・スーザ(Vo)の年齢を感じさせないカオティックなボーカルも圧巻の一言。過去には時代に擦り寄った変化も見せましたが、本作にはそこでの経験もしっかり生かしつつ、原点を大切にした形に落とし込まれている。デビューから35年を経た今もなお、スラッシュメタルバンドという基盤に忠実であり、かつ進化した部分も常に提示し続けている。これぞ2021年のHR/HM界における至高の1枚だと断言しておきます。

こんな強烈かつ狂気じみたアルバムを作ったのだから、ぜひこれらの楽曲をライブにて生音で体験したいところですが、こういうご時世で来日の機会もままならず。次に彼らのステージを日本で味わえるのはいつになるのでしょうね……こんな時期だからこそ、まずはアルバムを購入することでバンドをフォローして、来る日に備えておきたいところです。

 


▼EXODUS『PERSONA NON GRATA』
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2021年11月25日 (木)

DEPECHE MODE『EXCITER』(2001)

2001年5月14日にリリースされたDEPECHE MODEの10thアルバム。日本盤は同年5月30日発売。

デイヴ・ガーン(Vo)、マーティン・ゴア(G, Key)、アンディ・フレッチャー(Key)の3人体制となって初のアルバム『ULTRA』(1997年)から4年ぶりのオリジナルアルバム。前作はヒップホップのテイストを取り入れつつも精神的なダークサイドが反映された内容でしたが、全英1位/全米5位という好記録を残すことに成功しました。

続く今作では、新たなプロデューサーとしてLFOのメンバーであり、ビョークとのコラボレーションでも知られるマーク・ベルを起用。ブリープテクノ界の重鎮として知られるマークですが、本作ではそのテイストを随所に散りばめつつも、いかにもDEPECHE MODEらしい重厚なエレクトロサウンドを構築することに成功しています。

全体を覆うダークさは若干薄れ、サウンド的には先のようなテイストを取り入れつつも『VIOLATOR』(1990年)『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』(1993年)でのオルタナティヴロックを彷彿とさせる色合いも復調。オープニングを飾る「Dream On」のアコースティックギターからは、あの頃の空気を多少なりとも感じることができるのではないでしょうか。ブルージーな作風の「The Dead Of Night」もまさに同様ですが、そこに現代的なテイストが加えられることでバージョンアップしていることも伺えます。

かと思えば、「When The Body Speaks」のように荘厳なストリングスとオルタナロック、そしてブリープテクノが融合したかの如く、ダウナーなサウンドスケープが展開されている。また、デイヴのボーカルも前作での悲壮感たっぷりなテイストから抜け出し、穏やかさの中に優しさと棘を隠しもった唯一無二の歌声を聴かせてくれる。「そうそう、これこれ!」と言いたくなる要素が至るところに散りばめられた、まさにDEPECHE MODE以外の何者でもない作品に仕上げられています。

……なんてポジティブなことを書いていますが、実はリリース当時はこのアルバム、素直に受け入れられなかったことも付け加えておきます。『ULTRA』の精神に迫り来るダーク&ヘヴィなテイストにどうしても馴染めず、しばらくこのバンドと距離を置いていた自分。今作リリース後もしばらく手にすることなく、実際にCDを購入したのは発売から半年近く経ってからのことでした。20年前はこのブリープテクノを通過したサウンドにどうにも馴染めず、一度聴いてしばらく放ったらかしにしていたのです。

でも、そこから5年くらい経ってからかな。たぶん次作『PLAYING THE ANGEL』(2005年)が発売されたあとだったと思うけど、ここで久しぶりにDEPECHE MODE熱が盛り上がり、過去作を振り返ろうとしたとき真っ先に手にしたのがこの『EXCITER』だったのです。時間を置いてから再び触れたことで、フラットな気持ちで本作と向き合えたことは言うまでもなく、当時の心境と見事にリンクしたこともよく覚えています。

今思えば、『ULTRA』でバンドとして再スタートを切ったDEPECHE MODEですが、あれはリハビリ期間に他ならず、真の意味で第2章の幕開けを切ったのはこの『EXCITER』からだったのではないか。発売から20年経った今、そんなことを考えています。思えばこのバンド、『MUSIC FOR THE MASSES』(1987年)以降は毎作(良い意味で)おかしなことになっており、そこに拍車が掛かったのが『EXCITER』だったのではないでしょうか。古くからのファンの間では賛否ある1枚ですが、個人的には前作『ULTRA』同様に2021年の今だからこそ聴くべき隠れた名盤のひとつだと断言しておきます。

 


▼DEPECHE MODE『EXCITER』
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KYLIE MINOGUE『DISCO』(2020)/『DISCO: GUEST LIST EDITION』(2021)

2020年11月6日にリリースされたカイリー・ミノーグの15thアルバム。日本盤は同年12月4日発売。

突然のカントリー路線でリスナーを驚かせた前作『GOLDEN』(2018年)から2年半ぶりの新作は、彼女らしいディスコ/ダンス路線へと回帰した会心の1枚。全体の空気感は彼女がデビューした1980年代後半より前の、70年代後半から80年代初頭を彷彿とさせるものがあります。

これまでの彼女の楽曲にもこういったテイストは存在していましたが、ここまで全編を通して往年のディスコサウンドに特化したアルバムは初めてではないでしょうか(なにせタイトルからして土直球ですからね)。かつ、モダンなエレクトロの味付けも皆無で、質感的には現代的ながらも、使う音色やアレンジの妙により往年の空気感を作り上げることに成功している。随所にフィーチャーされるストリングスやブラスの音色がまさにそれで、「懐かしくも新鮮」というレトロフューチャー感を見事に表現できたのではないかと思います。

カイリーの歌声からも力むことなく、非常にリラックスした空気が伝わる。この良い意味での脱力感こそがディスコナンバーには必要であることを、彼女自身よく理解しているんでしょうね。なもんで、聴き手側も終始気持ちよく楽しむことができる。2020年というお先真っ暗な時代をミラーボールで照らしてくれるような、そんなポジティブさに満ちた良作です。

実際、曲ごとにプロデューサーが異なったり複数のソングライターがコライトしていたりする作風は、彼女の従来の作品と一緒ですが、とにかくここまで気合を入れて作り込んだにもかかわらず、音からは伸び伸びした感が伝わるという。これ、フロアで聴いたら最高に楽しいんだろうなあ……もちろん、自宅のスピーカーやスマホのショボいスピーカー、あるいはヘッドフォンやイヤフォンで聴いてもその魅力は十分に伝わるし、再生環境や聴くシチュエーションによっても響き方が少しずつ変わる、そんな良質のポップアルバムです。前作は前作で良かったけど、やっぱりカイリーはこうじゃなくちゃ。

 


▼KYLIE MINOGUE『DISCO』
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そんなカイリーの新作『DISCO』に、新録トラックやリミックスなど10曲追加した全26曲入りの2枚組リパッケージ・アルバム『DISCO: GUEST LIST EDITION』が2021年11月12日にリリースされました(日本盤未発売)。

新たなアートワークが使用された本作には、YEARS & YEARSをフィーチャーした「A Second To Midnight」や、UK出身のR&Bシンガーのジェシー・ウェアとのコラボ曲「Kiss Of Life」、「I Will Survive」などのヒットで知られる世界的なディスコレジェンドのグロリア・ゲイナーを迎えた「Can't Stop Writing Songs About You」、そしてデュア・リパとタッグを組んだ「Real Groove」リミックスなど、アルバム本編以上に聴き応えのある最録曲を用意。それぞれ、より濃厚なディスコサウンドを堪能することができます。

さらに、BASEMENT JAXXやPURPLE DISCO MACHINE、SYN COLEなどの手による「Say Something」「Magic」のリミックスも用意。モダンな味付けでバージョンアップしたトラックの数々は、これこそフロアで爆音にて楽しみたいものばかり。久しくクラブやDJイベントに足を運んでいませんが、早く安心して夜遊びを満喫できる世の中が戻ってきてほしいところですね……。

1年前にリリースされてからしばらく再生していなかった『DISCO』を、こういう形で再び脚光を当ててくれたのは、リスナー視点でも非常にありがたい限り。このリパッケージ・アルバムは改めて『DISCO』の魅力に気づかせてくれるという点においても、非常に大きな意味のあるアイテムだと思います。

 


▼KYLIE MINOGUE『DISCO: GUEST LIST EDITION』
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2021年11月24日 (水)

QUEEN『LIVE MAGIC』(1986)

1986年12月1日にリリースされたQUEEN通算2作目のライブアルバム。日本盤は同年12月20日にアナログにて発売され、1988年2月3日に初CD化されています。


※YouTube上に『LIVE MAGIC』関連の公式映像はゼロのようなので、同時期の公式映像から。

フレディ・マーキュリー(Vo)存命中、QUEENのライブアルバムは『LIVE KILLERS』(1979年)とこの『LIVE MAGIC』の2枚のみ。しかも、この『LIVE MAGIC』はQUEENにとって最後のツアーとなった『The Magic Tour』から1986年7月11、12日のイギリス・Wembley Studium公演、7月27日のハンガリー・ブダペスト公演、そしてツアーファイナルにしてQUEEN最後のライブとなった8月9日のイギリス・Knebworth Park公演から抜粋されたライブベスト的内容。その“抜粋”の仕方も非常にクセの強いもので、本格的なライブアルバムを期待すると肩透かしを喰らう可能性が高い珍品です。

というのも、全15曲中「One Vision」「A Kind Of Magic」「Under Pressure」「Another One Bites The Dust」「Hammer To Fall」「Radio Ga Ga」のみほぼフル演奏ですが、それ以外の楽曲は当時演奏されたテイクをエディットしてメドレーっぽくつなげた形で、「Bohemian Rhapsody」に至っては、中盤のオペラパートをまるまるカットするという暴挙ぶり(怒)。なので、15曲(うち1曲はエンディングSE「God Save The Queen」なので実質14曲)で49分とアナログ1枚に収まる短さなのです(この49分はCDでの長さで、実際のアナログ盤は47分とさらに2分ほど短いのですが)。

当時の最新アルバム『A KIND OF MAGIC』(1986年)でQUEENに夢中になった筆者にとって、このライブアルバムがいかに期待外れだったか……来日が実現せず、今みたいにYouTubeで手軽にライブ映像を漁ることもできず、仮にライブ映像作品を購入しようとしても当時のVHSビデオテープ作品はどれも軽く1万円超えという時代。悶々としながらこのライブアルバムと向き合ったことは、言うまでもありません。

フレディ逝去後、先のWembley Studium公演をまるまる収めた2枚組作品『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992年)がリリースされ、中学生時代の悔しさをここで解消したこと、今でもよく覚えています。さらに2000年代以降は各時代の秘蔵ライブアルバムが制作され、それらを貪るように聴き漁り……自分がQUEENのライブ作品に対して敏感なのは、きっとこの『LIVE MAGIC』での落胆が大きかったのかもしれませんね。

Wembley Studium公演は先の『LIVE AT WEMBLEY '86』、ブダペスト公演はのちにリリースされた『HUNGARIAN RHAPSODY: QUEEN LIVE IN BUADPEST』(2012年)で完全版が公開されているので、ここで希少価値が高いのはラスト公演となった Knebworth Park公演の音源のみ。QUEEN関連のライブ作品では本来重要視されるべき作品にもかかわらず、先のようなエディットのため評価が低いという、なんともアレな1枚なので、コアファン以外は無理して手にするべきではないと思います。まあ、そもそも日本ではデジタル配信およびストリーミングサービスでも未配信ですけどね。

このアルバム、当時は日本やヨーロッパでのみ発売され、セールス的に不遇期だったアメリカでは未発売。血胸、フレディ死後の1996年8月になってようやくUSリリースされたのです。しかし、現在はQUEENのカタログ・リイシュー時に今作が含まれることはなく、廃盤状態の国も少なくないようです。そんな中、ここ日本では2019年に本作がSHM-CD仕様でフィジカルリリースされておりますので、気になった方は(無理にとは言いませんが)購入してみてはいかがでしょう。

 


▼QUEEN『LIVE MAGIC』
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QUEEN『A NIGHT AT THE ODEON - HAMMERSMITH 1975』(2015)

2015年11月20日にリリースされたQUEENのライブアルバム。

フレディ・マーキュリー(Vo)死去から24年後に制作された本作は、QUEENの4thアルバム『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)発表から約1ヶ月後の1975年12月24日にロンドンのHammersmith Odeon(現・Hammersmith Apollo)にて開催されたライブの模様を収録したもの。ライブCDに加え、同公演の映像(DVD、Blu-ray)が同梱された仕様も用意されています。

2014年に発表された『LIVE AT THE RAINBOW '74』と比べて、こちらのライブは当時BBCで映像収録されたほか、BBC Radio 1でもオンエアされたこともあり、これまで多数のブートレッグも出回っています。その完全版であり、音声/映像がクリアなものが40年の時を経てお披露目されたわけですから、そりゃありがたい限りです。

この日の公演は『A NIGHT AT THE OPERA』を携えたUKツアーの最終日。ちょうど「Bohemian Rhapsody」が9週連続で全英1位を獲得していた時期での公演とあって、会場には5000人もの観客が集まりました(当然ソールドアウト)。アルバム自体も初の全英1位を獲得したあとだけに、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たした絶妙なタイミングでの公演、悪いわけがありません。

「Now I'm Here」「Ogre Battle」「White Queen」という流れは1974年後半のツアーと似た流れですが、当然このツアーでは「Bohemian Rhapsody」をはじめとする『A NIGHT AT THE OPERA』も複数演奏されています。が、後年のように「Bohemian Rhapsody」の中盤パートをライブで(音源にて)再現することなく、オペラパート&ハードロックパートを省いて「Killer Queen」「The March Of The Black Queen」へとつなぐメドレー形式で披露。最後は再びエンディングのバラードパートへと戻って終わっていきます。このアレンジもこの時期ならではと言えるものではないでしょうか。これはこれでカッコいいし(特に「Killer Queen」へと切り替わるタイミングのスリリンスさ、たまらんです)。

あと、「Brighton Rock」からブライアン・メイ(G, Vo)の長尺ギターソロへと続く構成は、すでにこの時期からあったものだったのだと気づかされます。そこから「Son And Daughter」へと流れるアレンジもカッコいいの一言。こういう洒落たアレンジ、一度は生で聴いてみたかったなあ。

にしても、『A NIGHT AT THE OPERA』からの曲が思った以上に少ないなと……あのアルバム、それ以前と比べてライブを想定して制作に取り組んでいないような気がしますし、レコーディングが終了してからツアーに入るまでの期間が短すぎて、新曲を体に染み込ませるには時間が足りなかったのかな、という気もします。

それと、後年のように「Bohemian Rhapsody」をクライマックスに持ってきたり、「We Are The Champions」で締め括るお約束に慣れてしまうと、エルヴィス・プレスリー「Jailhouse Rock」が当たり前のように毎ツアー演奏されていたり、「Seve Seas Of Rhye」「See What A Fool I've Been」でエンディングを迎える終盤の流れは、我々のようにQUEENのライブを生で体験したことのない世代には非常に新鮮です。

フレディの死後、数々の企画盤が続発したことに対して悪い感情を持っているファンも少なくないようですが、こういう初期の貴重なライブ音源が楽しめるようになったことは、後期〜末期からファンになった僕や後追い世代にとってうれしいのでは。ここは素直に喜びたいところです。

 


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QUEEN『LIVE AT THE RAINBOW '74』(2014)

2014年9月8日にリリースされたQUEENのライブアルバム。日本盤は同年9月9日発売。

フレディ・マーキュリー(Vo)がこの世をさってから23年後に発表された本作は、ロンドンのThe Rainbowにて1974年3月31日に開催された公演と、同会場で同年11月19〜20日に実施された公演の模様を収めた2枚組ライブ作品。11月公演のみの単品ディスク、および11月公演の映像を収めたBlu-ray/DVDも同時発売されました。

1974年のQUEENは2つのアルバムをリリースしており、そのどちらもが彼らにとって非常に重要な作品として知られています。まず1974年3月8日に発売された2ndアルバム『QUEEN II』。全英5位を記録した言わずと知れたコンセプチュアルな作品で、QUEENらしさを完全に確立させた初期の重要作です。そしてもうひとつが、同年11月8日に発表された3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』。同作からは「Killer Queen」(全英2位)、「Now I'm Here」(同11位)という2つのヒットシングルも生まれ、アルバム自体も最高2位まで上昇した出世作です。

つまり、このライブアルバムに収録された2つのライブは、2ndアルバム&3rdアルバムをそれぞれリリースした直後の、バンドとしても非常に脂の乗った状態のステージを楽しむことができるのです。まだ初来日前の彼らが、現地でどのように受け入れられたのか、そしてその受け入れられ方は8ヶ月でどう変化したのか。そういった状況の違いも音源から楽しめるのではないでしょうか。

どちらの公演もアルバム2枚、3枚と持ち曲が限られていたこともあり、セットリスト的には非常に似たものがあります。特に『QUEEN II』をリリースしたばかりのDISC 1は、同作を軸にしたセットリストで濃厚な世界観を展開しています。一方、DISC 2に入るとオープニングSEこそ同じ「Procession」を使用していますが、そこに続く1曲目がロックンロール色の強い「Now I'm Here」と、「Father To Son」からドラマチックに始まるDISC 1とは雰囲気がガラリと変わります。ポップ色の強い楽曲が増えた『SHEER HEART ATTACK』期のライブは、その後の彼らのステージに近いものが感じられますが、とはいえまだ「Behemian Rhapsody」完成前のステージ。終盤には「Big Spender」や「Jailhouse Rock」といったスタンダードナンバーで締め括られているのも印象的です(「Jailhouse Rock」で終えるのは、この頃の定番だったのでしょう)。

加えて、非常に興味深いのが『SHEER HEART ATTACK』ツアーではすでにライブのエンディングSEとして、QUEENバージョンの「God Save The Queen」が用いられていること。同テイクがアルバムに収録されるのは、続く4作目『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)と1年先のことなので、すでに『SHEER HEART ATTACK』の時期にはレコーディングされていたことが伺えます。

また、作品を重ねるごとに1stアルバム『QUEEN』(1973年)からの楽曲が披露される頻度が低くなっていく。DISC 1では「Great King Rat」や、初期のシングルB面曲「See What A Fool I've Been」なども披露されており、特に前者のカッコよさは特筆に値するものがあります。かと思えば、DISC 2にはのちにMETALLICAがカバーすることでお馴染みの「Stone Cold Crazy」が含まれている。それぞれのセトリにそれぞれの良さがあるので、一概にどちらの時期が好みなんて言えない。それくらい両公演とも必聴のライブ音源なのです。

2000年代に入ってから過去の秘蔵ライブ音源が複数リリースされましたが、その多くが1980年代以降のものばかり。こういった初期の貴重なライブテイクを(しかも映像付きで)楽しめるようになったのも、もはや純粋なニューアルバムが望めないからこそと複雑な心境にもなりますが、ここは素直に楽しんでフレディに想いを馳せたいと思います。

 


▼QUEEN『LIVE AT THE RAINBOW '74』
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QUEEN『HUNGARIAN RHAPSODY: QUEEN LIVE IN BUADPEST』(2012)

2012年9月20日にリリースされたQUEENのライブ作品。日本盤は同年12月19日発売。

本作はもともとBlu-ray/DVDの映像作品で、同作品のライブ音源を収めた2枚組CDが初回限定エディションにのみ付属。その後、音源のみデジタルリリース/ストリーミングサービスでの配信が行われ、デラックス版パッケージを買い逃した方も手軽に楽しめる作品となりました。

収録されたのは1986年6月7日から8月9日にかけて実施された『Magic Tour』から、7月27日のハンガリー・ブダペスト公演。『Magic Tour』の音源は『LIVE MAGIC』(1986年/未配信)『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992年)と複数発売されていますが、この作品が大きな意味を持つポイントはそこではなく、1986年当時はまだヨーロッパでは冷戦状態下にあり、中でも「鉄のカーテン」の中であるハンガリーでイギリスのバンドがライブを行うという事実が非常に画期的だったわけです。

『Magic Tour』は本数も26本と決して多くなく、セットリストは基本的に大きく変わりません。しかし、初めて訪れたブダペストで、QUEENはこの日ならではの楽曲も用意しました。それが「Love Of My Life」と「Is This The World We Created...?」の間に披露されたハンガリー民謡「春の風(Tavaszi Szél Vizet Áraszt)」。約6万人のキャパシティに対し約8万人も集まった聴衆による大合唱の理由も納得です。

そんなカバーのあとに、「(You're So Square) Baby I Don't Care」「Hello Mary Lou」「Tutti Frutti」といったアメリカンポップス/ロックのスタンダードを披露するというのは、非常に大きな意味を感じます。もともと今ツアーに組み込まれていたカバーではあるものの、この流れは冷戦時代の“壁”をぶち破ろうとするQUEENの気概を感じずにはいられません。

ちなみにこれらのロックンロールメドレーや「Another One Bites The Dust」など一部楽曲は、映像版には未収録。「Tie Your Mother Down」「I Want To Break Free」「Crazy Little Thing Called Love」も映像版はエディットされているのでご注意を。バンドの意志を汲み取るという点では、ぜひ音源での完全版を味わってもらいたいところです。

とはいえ、8万人も集まった圧巻の映像もぜひBlu-rayやDVDにて体験しておきたいところ。なのでここはひとつ、ボーナスCD付きのデラックス版を入手しておくことをオススメします。残念ながら国内デラックス版はDVDのみなので、Blu-rayで楽しみたい方はすでに廃盤状態の輸入盤でご購入を。

 


▼QUEEN『HUNGARIAN RHAPSODY: QUEEN LIVE IN BUADPEST』
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QUEEN『QUEEN ROCK MONTREAL』(2007)

2007年10月29日にリリースされたQUEENのライブアルバム。日本盤は同年10月31日発売。

フレディ・マーキュリー(Vo)没後、さまざまな未発表音源が公式リリースされてきましたが、本作もそのひとつ。全英&全米1位を獲得した8thアルバム『THE GAME』(1980年)を携えたワールドツアーから、1981年11月24&25日にカナダ・モントリオールにて行われたファイナル公演のもようを収めたもので、もともとライブ映画『WE WILL ROCK YOU』として1982年に公開されたものに、映画ではカットされた「Flash」「The Hero」を追加した完全版。ライブアルバムと同時に、同タイトルの映像作品も発売されています。

フレディがこの世を去る(1991年11月24日)ちょうど10年前の録音という、非常に意味深い内容でもありますが、初めてイギリスとアメリカで同時に1位を獲得した、ある意味で第二の全盛期を迎え油の乗ったタイミングの録音でもあるので、筆者のようにフレディを含むQUEENを一度も生で目にすることができなかった世代や後追いファンにとっても貴重な作品と言えるでしょう。

名ライブアルバム『LIVE KILLERS』(1979年)同様、「We Will Rock You」のファストバージョンからスタートし、そのまま「Let Me Entertain You」へと続く構成は興奮ものですし、そこから「Play The Game」「Somebody To Love」と新旧の名ピアノバラードを連発する流れも圧倒的。特に後者は後半で聴けるフレディのアドリブやフェイク、そこに絡んでいくブライアン・メイ(G, Vo)のギタープレイなど聴きどころも多く、数ある同曲のライブテイクの中でも出色の出来ではないでしょうか(曲終わりにブライアンが「Under Pressure」のイントロを弾き始めると大歓声が湧くあたりもポイントでは)。

中盤の聴きどころは、「Now I'm Here」の中間にフィーチャーされた「Dragon Attack」かな。まあ中間というか「Now I'm Here」終盤にそのまま「Dragon Attack」へとなだれ込んでいき、「Dragon Attack」のエンディングでフレディのボーカルエフェクト&ブライアンのギターを挿入しつつ再び「Now I'm Here」に戻っていくという、ライブならではのアレンジなんですけどね。「Now I'm Here」はよくこういう使われ方するので、「Dragon Attack」とのドッキングはこの時期ならではと言えるでしょう。

後半に入ると、ようやく「Under Pressure」がちゃんと披露されるのですが、ベースリフが鳴り響いた瞬間の歓声もヒット直後のこの時期ならでは。そしてブライアンのギターソロから「Flash」「The Hero:へと続く構成も、この時期じゃないと聴けない貴重なもの。そこから大ヒット曲「Crazy Little Thing Called Love」からエルヴィル・プレスリー「Jailhouse Rock」へと続けるお遊び、「Boheian Rhapsody」よりもあとに「Another One Bites The Dust」が置かれているのも1981年という時代ならでは。こうやって代表曲の置き場所の違いによって、その時期のバンドの様子が窺えるのは面白いものですね。

『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992年)のように歴史的ライブを収めた作品とは異なる、数あるツアーの断片ではありますが、こうした作品が複数存在するのはファンにはありがたい限り。ストリーミングサービスを通じて気軽に聴くことができるライブアルバムはもちろんですが、ぜひ映像版(1985年の『LIVE AID』映像も追加収録)も併せて楽しんでほしいですし、中でも映画『ボヘミアン・プソディ』を観た方には絶対に刺さる作品だと思いますので。

 


▼QUEEN『QUEEN ROCK MONTREAL』
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KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

1988年11月15日にリリースされたKISS通算3作目のコンピレーションアルバム。日本盤は海外から少し遅れ、翌1989年1月25日発売。

公式コンピレーションアルバムとしては『KILLERS』(1982年)以来7年ぶりですが、同作は本国アメリカでは未発売だったこともあり、アメリカでは『DOUBLE PLATINUM』(1978年)以来10年ぶりのベスト盤ということになります。また、日本では1988年5月に来日記念盤として10万枚限定でリリースされた日本限定ベスト盤『CHIKARA』というベスト盤も存在。こちらは80年代の楽曲中心のレアアイテムとなっています(現在は中古屋にて安価で入手可能かと)。

さて、今作の注目ポイントはポール・スタンレー(Vo, G)主導の新曲2曲と、エリック・カー(Dr, Vo)が初めてリードボーカルを担当した「Beth」(もともとはピーター・クリス歌唱曲)、そして70年代〜80年代初頭の楽曲に新たなリミックスが施されている点でしょうか。全15曲で約52分というコンパクトさもあり、かつグラムメタル期の楽曲も複数含まれていることから、80年代のKISSをリアルで感じられる1枚と言えるでしょう。

「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲はどちらもポール歌唱曲で、ソングライティングにはポール&デズモンド・チャイルド(後者のみダイアン・ウォーレンも)が関わっています。陽気な前者とマイナーキーの後者、どちらも“KISSのポール・スタンレー”のパブリックイメージどおりの仕上がりで、ヘアメタル期の彼らの平均的な楽曲と言えるでしょう。

また、リミックスバージョンは『DOUBLE PLATINUM』の延長にあるような仕掛けが用意されているものもあり、「Love Gun」なんて終盤のポールのシャウトがカットされてストリングスが強調されていたり、「Shout It Out Loud」のエンディングがカットアウトだったり、「Deuce」など初期曲のドラムに変なリミックスが施されていたり、「Rock And Roll All Nite」なんて別モノ感半端なかったりと、ベスト盤というよりはお遊びの過ぎる魔改造アルバムといったところでしょうか(笑)。

そして、エリック・カーが歌う「Beth」……エリックの歌声はここで初めて耳にするわけですが、本家ピーターとは異なる繊細さが伝わり、この甘さはこれで良しといったところ。僕は嫌いじゃないです。

ちなみにこのベストアルバム。北米および日本盤には直近の最新オリジナルアルバム『CRAZY NIGHTS』(1987年)からのヒット曲が皆無。さすがに「Crazy Crazy Nights」くらいは入れてほしかった……ところが、本作のUK盤は収録内容が一部異なり、「Deuce」がカットされ代わりに「Crazy Crazy Nights」と「Reason To Live」の最新ヒット2曲を追加した全16曲入り(北米・日本盤は全15曲)。特に「Crazy Crazy Nights」はイギリスで4位という好記録を残していますし、入れない理由はないですものね。

なお、ストリーミングサービスで配信されているバージョンですが、Apple Musicは北米・日本バージョン、SpotifyはUKバージョンとそれぞれ異なるのでご注意を。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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KISS『KILLERS』(1982)

1982年6月15日にリリースされたKISS通算2作目のコンピレーションアルバム。日本盤は同年5月に発売とのこと。

『UNMASKED』(1980年)が全米35位、続くコンセプトアルバム『MUSIC FROM "THE ELDER"』(1981年)は全米75位とKISSのアメリカ国内での人気は低迷。これは海外でも同様で、『MUSIC FROM "THE ELDER"』リリース時はツアーすら行えなかった状態。そのテコ入れとして、すでにアメリカでは『DOUBLE PLATINUM』(1978年)や『ALIVE!』(1975年)『ALIVE II』(1977年)といったコンピ/ライブアルバムが短期間で続発していたことから、レコード会社は日本やオーストラリアなどアメリカ以外で新たなベストアルバムを発表することを決めます。

このベスト盤発売に際して、レーベル側は新曲の制作を要望。ポール・スタンレー(Vo, G)が中心となり、新たに「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」の4曲を制作します。ジーン・シモンズ(Vo, B)は前作『MUSIC FROM "THE ELDER"』を強行リリースした戦犯として干されたのでしょうか……(苦笑)。

実はエース・フレーリー(G, Vo)はすでにこの時点でバンドを離れており、レコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加。ボブは『ALIVE II』収録の新録曲にも参加していましたので、これが二度目の起用となります(ポールのソロアルバムにも全面参加していたので、その流れもありますよね)。

新曲は約半年後に発表される次作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)寄りというよりも、ポールのソロアルバムの延長線上にあるメロディアスなテイストが活かされたロックチューンが中心。ソングライターのクレジットに目をやると、ソロアルバムにも参加したマイケル・ジャップの名前を見つけることもできます。そのマイケルが参加した「Down On Your Knees」には、当時まだ無名だったブライアン・アダムスの名前も。彼は『CREATURES OF THE NIGHT』にもソングライターとして参加することになるので、この当時は(すでにデビューはしていたものの)修行の身だったということでしょうか。

ここでしか聴くことのできない新曲が4曲も含まれているということ、かつ「Love Gun」や「Shout It Out Loud」「Sure Know Something」「Detroit Rock City」「I Was Made For Lovin' You」「Rock And Roll All Nite (Live)」などのヒットシングルも含まれている。現行バージョンはさらに「Escape From The Island」「Talk To Me」「Shandi」を追加した15曲入り。ベスト盤としては非常に中途半端な選曲ではあるものの、『DOUBLE PLATINUM』以降の補足として、かつ『MUSIC FROM "THE ELDER"』と『CREATURES OF THE NIGHT』を繋ぐ(あるいはリセットさせる)上ではかなり重要な1枚ではないかという気がしています。

あ、ジーン参加曲があまりに少なかったせいか、ライブではお馴染みの「Cold Gin」「God Of Thunder」が追加されているのは、ちょっと微笑ましいな。

最後に。80年代半ば、中高生だった僕は音を弄りまくったリミックスベスト的『DOUBLE PLATINUM』よりも、実はこっちのほうをよく聴いたことを付け加えておきます。レコード盤では14曲入り(「Talk To Me」未収録)で50分強と、コンパクトで聴きやすかったからね。

 


▼KISS『KILLERS』
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KISS『MUSIC FROM "THE ELDER"』(1981)

1981年11月10日にリリースされたKISSの9thアルバム。

ディスコやソウルに傾倒した異色作『DYNASTY』(1979年)、『UNMASKED』(1980年)を経て届けられたのは、KISS初のコンセプトアルバム。当初、ジーン・シモンズ(Vo, B)原案の『THE ELDER』という映画が計画され、その映画のために楽曲制作を行なっていたのですが、映画が頓挫してしまい音楽だけが残った。そこでジーン(とバンドのマネージャー)は残った曲をどうにか生かそうということで、ほかのメンバーの反対を押し切ってアルバムを制作/発表することになった。これがKISS史上もっとも異色なアルバムの成り立ちです。

出世作『DESTROYER』(1976年)を手がけたボブ・エズリン(ALICE COOPERPINK FLOYDHANOI ROCKSなど)を再度プロデューサーに迎えたは、アルバムの冒頭&エンディングや曲間にインストゥルメンタル曲を挟むなどして、ストーリー性を重視したシームレスな作風に仕上げられています。ジーンが再度ボブ・エズリンを起用した理由は、『DESTROYER』でボブが施したファンタジー色の強いドラマチックなアレンジを求めたから。実際、このアルバムではそういったドラマ性が随所から感じられ、バンド本来がもつハードロックテイストと見事にマッチしているように映ります。

ただ、そのハードロックテイストは我々がイメージする“豪快なアメリカンロック”からはほど遠く、繊細さが色濃く表れた、どちらかというとヨーロピアンなテイストかなと。そういう意味では初期のロックンロールとも、『DESTROYER』以降のハードロック路線とも、そして直近のソウル/ポップ路線とも大きくことなる。そりゃあファンは「こんなのKISSじゃない!」と騒ぐわけです。

ただ、完全後追いの我々世代は前情報でイメージが出来上がってしまい、聴くのを躊躇していたものの、こうやって改めて耳を傾けると……意外に良いんです。こういうKISSも悪くない、と素直に思えます。ただ、ジーンがノリノリな一方で、ポール・スタンレー(Vo, G)は影が薄い気がします。

初出時のアナログ盤と現行のCDや配信版とでは、曲順や(短尺のインストを続く歌モノとくっつけてカウントするなどして)曲数が少し異なります。現行版は全11曲でインスト2曲、ジーン歌唱曲が3曲、ポール歌唱曲3曲、エース・フレーリー(G, Vo)歌唱曲1曲、ジーン&ポール歌唱曲2曲という内訳。こうやって数字で見ると均等なんですけど、不思議とジーンの印象が強いのはなぜでしょうね(ポールが声を張り上げず、抑え気味のトーンで歌っている曲が序盤に続くも大きいのかな)。

また、前作制作にほとんど参加していなかったピーター・クリス(Dr, Vo)に代わり加入したエリック・カー(Dr)にとっては、本作が初めてのレコーディング作品。せっかく花形と言えるようなバンドに加入したのに、最初がこれっていうのも可哀想というか……。

シングルカットされた「A World Without Heroes」は『UNMASKED』からの流れを引き継いだテイストも感じられるし、ポールがらしさを発揮するハードロック路線「The Oath」は次作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)への伏線にも受け取れる。エースが歌う「Dark Light」のヘロヘロぶりも相変わらずだし、インストながらもKISSらしいスリリングな演奏が楽しめる「Escape From The Island」、アルバムを豪快に締め括るラストナンバー「I」など、曲単位でピックアップすれば印象的なものも多い。KISSの名の下で楽しもうとすると変な意識が働いてしまうかもしれないけど、これはこれでよくできたアルバムではないでしょうか。

チャート的には「A World Without Heroes」が最高56位という成績を残してはいますが、アルバム自体は全米75位と惨敗。しかし、そういった記録とは関係なしに、リリースから40年を経た今こそ正当に評価されるべき隠れた良作だと思います

 


▼KISS『MUSIC FROM "THE ELDER"』
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KISS『ASYLUM』(1985)

1985年9月16日にリリースされたKISSの13thアルバム。

前作『ANIMALIZE』(1984年)リリース後のツアー数公演でマーク・セント・ジョーンズ(G)がバンドを脱退。代役としてブルース・キューリックを迎えると、そのままブルースはバンドに正式加入しました。『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)以降安定しなかったギタリストの座が、ここでしばらく安定することになります。

メイクを落とした『LICK IT UP』(1983年)以降、時代に呼応したヘアメタル/グラムメタル的派手なハードロックサウンドを展開してきたKISSですが、今作もその延長線上にあるサウンド/楽曲が中心。ただ、方向性的には前作『ANIMALIZE』でひとつ完成した感があり、そこから1年という短いスパンで届けられた本作はちょっとばかりマンネリかな……と思わされる箇所も少なくありません。

全10曲中ポール・スタンレー(Vo, G)歌唱曲が6、ジーン・シモンズ(Vo, B)歌唱曲が4というポールに偏ったバランスは前作同様。ただ、前作はジーンが映画『未来警察』出演のため途中で制作から離れ1曲少なかったという経緯がありましたが、今回はそういうわけでもなさそうですね。

アルバムはエリック・カー(Dr, Vo/もう30年ですか……改めてR.I.P.)の派手なドラムソロを冒頭にフィーチャーした「King Of The Mountain」からスタート。このオープニングは改めて今聴いてもカッコいいものがあります。ちなみにブルースは早くもこの曲でソングライターとして名を連ねています(ポール/ブルース/デスモンド・チャイルドの共作)。

続くジーン曲「Any Way You Slice It」は実に彼らしいロックンロール調のアップチューン。エンディングがいかにもなアレンジでニンマリです。シングルカットもされた「Who Wants To Be Lonely」はポールらしいメロウなミディアムナンバー。ジーン曲「Trial By Fire」は「Lick It Up」の流れを汲む1曲で、先のマンネリの要因のひとつかな。アナログA面ラストを締め括る「I'm Alive」は激しいドラミングとギターソロをフィーチャーしたメタリックなナンバー。こういう曲はジーンっぽい気がしたけど、何気にポール/ブルース/デズモンドの共作曲。

折り返しの1曲となる「Love's A Deadly Weapon」も、「I'm Alive」と同系統のアグレッシブチューン。ソングライターにはポール&ジーンが名を連ねていますが、こちらはジーンが歌っています。そうそう、このイメージなんですよね。続く「Tears Are Falling」はシングルヒットも記録した、80's KISSの代表曲のひとつ。現在もライブで頻繁に披露されているので、80年代をリアルタイムで通過していないリスナーも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ジーンが歌う「Secretly Cruel」はインパクトに欠ける、アルバムの穴埋めと思えてしまうありきたりな1曲。ポールによるミディアムヘヴィな「Radar For Love」も同様で、「Uh! All Night」までその中途半端な空気のままエンディングを迎えます。

序盤だってすべての曲がベストというわけではないですが、それにしても「Tears Are Falling」までで息切れしてしまうのはいかがなものかと。リアルタムで本作を聴いたときもA面とB面2曲、そしてラストの「Uh! All Night」の印象しかなくて、アルバムとして通して聴くことが少なかった記憶が。カセットで飛ばして聴いていたのか、もしくはお気に入りの曲だけをダビングしてオリジナルテープを作って聴いていたのか……どちらにせよ、80年代のKISSでは『HOT IN THE SHADE』(1989年)と同じくらい印象の薄い1枚かもしれません。

そのへんのインパクトの弱さはセールスにも影響を及ぼし、100万枚を突破した前2作とは相反し50万枚まで売り上げを落としてしまいます。それでも「Tears Are Falling」が全米51位まで上昇する小ヒットを記録しているので、かろうじて威厳を保つことができましたが……。

 


▼KISS『ASYLUM』
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2021年11月23日 (火)

THE SZUTERS『THE DEVIL'S IN THE DETAILS』(2021)

2021年10月31日に配信リリースされたTHE SZUTERSの6thアルバム。日本のみフィジカル(CD)にて同年11月28日発売予定。

マイク・ズーター(Vo, G)のソロプロジェクト体制で再結成を果たしたTHE SZUTERSは、昨年6月に約17年ぶりのアルバム『SUGAR』を配信リリース(日本のみ翌2021年にCD化)。ハードロック色を排除したシンプルなパワーポップサウンドで、古くからのリスナーを驚愕&歓喜させました。

早くも届けられたこの新作は、その『SUGAR』の延長線上にある内容というよりは、もっと広い意味での“パワーポップ”を具現化した意欲作。オープニングを飾る「How To Make A Good Thing Bad」ではどこかエルヴィス・コステロを彷彿とさせる王道感をにじませますが、続くイントロダクション「The Devil's Intro」から「(Everyone's A) Harry Prefontaine」へと続く流れ、および「Funny」や「Any Time You Want」で見せる/聞かせるサウンド/楽曲は前作でのストレートで甘美なロックンロールとは異なる、より深みと広がりを感じさせるものばかり。

さらに「Lull」のようなスローナンバーがあったり、若干ヘヴィさが増した「Right By You」など、要所要所でダークさも感じられる仕上がりに。思えば、前作はタイトルしかりアートワークしかり、甘口なアルバムであることはビジュアルからも伝わってきましたが、今回のジャケットはシンフォニックメタルかダークなデスメタルかと言われても信じてしまうようなファンタジー系のイラスト。さらにタイトルには「Devil」というネガティブなワードも用いられており、ここ1、2年の世の中の流れを反映させたかのような世界観が伝わってきます。

前作に収められた楽曲のほとんどはコロナ禍前に制作されたもので、今作はコロナ禍を通過したからこそ生まれたもの。そう捉えると、作品の質感が変化するのも頷けるものがあります。しかし、どちらも間違いなく王道のパワーポップ。それだけは間違いない事実で、視点を変えるだけでこんなにも違った魅力を伝えられるのだと気付かせてくれるわけです。

にしても、今回は全体的に重めの印象を受けます。ギターサウンドやドラムのチューニング、そしてミックスにおいても若干重さを意識しているようですし、スローナンバーやアコースティック曲、インタールードを加えることで多彩さに加え耽美さも増している。もちろんソングライター、そしてアレンジャー、シンガーとしてのマイクの才能も非凡さが伝わりますし、この短期間で個性の異なる2枚の良作を届けられるほどに創作意欲が爆発している今の彼は90年代後半の彼とは一味違うものが感じられます。

個人的ツボは、先にあげた「Lull」からラストナンバー「The Devil's Arrangement」までのひとつの流れ。1曲1曲の個性がまるで異なるうえに、エンディングまでの構成がまるで映画のサウンドトラックのように感じられる。こういう実験的要素も大好きです。

『SUGAR』での世界観をそのまま求めると違和感を覚えるかもしれませんが、これも間違いなく新生THE SZUTERSの個性そのもの。まるで陰と陽、表裏一体なこの2枚はあわせて楽しむべき作品集なのかもしれません。

 


▼THE SZUTERS『THE DEVIL'S IN THE DETAILS』
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THE SZUTERS『SUGAR』(2020)

2020年6月4日に配信リリースされたTHE SZUTERSの5thアルバム。日本のみフィジカル(CD)にて2021年7月28日発売。

90年代半ばにマイク(Vo, G)&クリス(G, Vo)のズーター兄弟を中心に結成され、ポール・ギルバートのプロデュースによりアルバム『THE SZUTERS』でデビューを果たした彼ら。4作目『MAGNA-FI』(2003年)後に一度解散し、マイクはポール・ギルバートのバンドに参加するなどして音楽活動を続けてきました。

このたび、マイクのソロプロジェクトとしてTHE SZUTERS名義での活動を再開。その第1弾として『MAGNA-FI』以来17年ぶりの新作がデジタル/ストリーミングで届けられたわけです。

ハードロックの中にパワーポップの香りを散りばめた解散前のTHE SZUTERSと異なり、今回の再始動THE SZUTERSは完全なるパワーポップサウンドにシフト。ビートルズE.L.O.といったルーツミュージックはもちろんのこと、70年代後半のCHEAP TRICKや90年代以降のJELLYFISHなどと共鳴する甘美なメロディ&サウンドは、マイクのルーツを考えれば非常に納得がいくものがあり、ファンなら聴けば「ああ、THE SZUTERSが帰ってきた!」と実感できることでしょう。

もうね、アルバムタイトルやアートワークまんまの音。時代を超越した普遍性の高いポップなメロディと、曲を見事に引き立てるコーラス/ハーモニーとシンプルなバンドアンサンブル。なにせギターがここまで歪んでいないのか!と最初はびっくりしたほどで、リフで引っ張るアレンジの解散前とはまったくの別モノ感ですから。マイクのボーカルも無理にシャウトすることなく、落ち着いたトーンで楽曲に合った歌を乗せている。若干強めに歌うパートに関しても、ハードロックのそれというよりはパワーポップやロックンロールにおけるそれなんですよね。「そうそう、これこれ!」と膝を叩きそうになるくらい、いい塩梅のアンサンブルなんです。

序盤の王道パワーポップ/ロックはどれも文句なしの仕上がり。けど、中盤に置かれた「The Things That You Said」での冒頭のハーモニーや、サイケデリックなアレンジはこの手のスタイルの真骨頂といえるもので、曲中に挿入される〈La La La La〜♪〉コーラスなど含め、ルーツを大切に消化して、無理して自己流に解釈するのではなくて自然のままにまかせてアレンジしたこの曲こそ、今のTHE SZUTERSの真骨頂ではないでしょうか。

だからこそ、そのあとにシンプルでありきたりなはずの「I Don't Wanna Cry」が来ても心ときめいてしまう。そうそう、流れも大事ですよね。以降の構成/楽曲すべてに無駄が感じられず、「Fall Away」冒頭の演出(iPhoneの「あの」音から始まる)含めエヴァーグリーンの中にしっかり現代的な味付けが施されているところ含めてさすがの一言。全12曲/43分というトータルランニング含め、すべてが完璧に思えてきます。

マイクのソロ体制となったTHE SZUTERSは、早くも今年10月31日に次作『THE DEVIL'S IN THE DETAILS』をリリースしたばかり。日本では今回もCDが11月28日に発売されるそうなので、ぜひあわせてチェックしてもらいたいところです。

 


▼THE SZUTERS『SUGAR』
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2021年11月22日 (月)

BANG TANGO『DANCIN' ON COALS』(1991)

1991年5月28日にリリースされたBANG TANGOの2ndアルバム。日本盤は同年7月21日発売。

デビュー作『PSYCHO CAFE』(1989年)が全米58位という、新人としてはまずまずの成績を残したLA出身の5人組バンドBANG TANGO。ロス出身のバンドらしい煌びやかでいかがわしいハードロックをベースに、オルタナ色の強いミクスチャーサウンドで個性を発揮した彼らが、この2作目で一気に化ます。

ジミ・ヘンドリクスのレコーディングにも携わったジョン・ジャンセン(CINDERELLAFASTER PUSSYCATWARRANTなど)をプロデューサーに迎えた今作は、前作よりもミクスチャー感を強めた作風に。前作でのヒット曲「Someone Like You」路線を期待した方は、オープニングを飾る「Soul To Soul」でのファンキーさにひっくり返るのではないでしょうか。もちろんこのカラーも前作の時点で備わっていたものですが、ここまでストレートにファンクロックを奏でられると、一瞬「へっ、別のバンド?」と焦るかもしれません。

続く「Untied And True」こそ従来の路線ですが、「I'm In Love」「Big Line」「Cactus Juice」などのファンキーさからはEXTREMEとはまた違ったファンクロック感が伝わってきます。演奏だけ聴くとRED HOT CHILI PEPPERSっぽくもあるのですが、フロントマンであるジョー・レステ(Vo)のクセが強い歌声のせいもあり、唯一無二の存在感を確立させている。このサイケ&ファンキーなミクスチャーロック感って、同時代に活躍したJANE'S ADDICTIONあたりとも通ずるものがあり、むしろ彼らはHR/HMの範疇よりあっち側で語られるべき存在だったのではと気づかされます。

アコースティックギターやピアノ、ゴスペル調のコーラスをフィーチャーしたバラード「Midnight Struck」も、その独特な歌声のおかげで他に似ない独特な空気を作り上げている。ストレートなタイトルトラック「Dancin' On Coals」は「Someone Like You」路線ですが、そこから「My Saltine」で再びファンク路線へと回帰。この曲はブラスセクションをフィーチャーしており、黒っぽさをより強めることに成功。カイル・カイル(B)のスラップを多用したファンキーなベースプレイも、このバンドの個性を強めることに一役買っているし、ティグ・ケトラー(Dr)のリズムキープも非常にスリリングさがあって好印象。そこに乗るギター2本が程よくハードロック感を提示しているから、このヘンテコなミクスチャー感が生まれているんでしょうね。

いわゆるストレートなロックチューンは、どこかビリー・アイドルあたりを彷彿とさせるものがあり、特にファンク度が上がった本作においては、こちらのタイプの曲のほうが異物感を醸し出している。うん、これでいいんですよ。個人的には1作目よりもこっちのほうが好みだし、実際完成度も上だと信じております。

ただ、いかんせん1991年という過渡期に発表されたせいもあり、全米113位と前作ほどの成功を収めることができず、バンドは1992年にライブEP『AIN'T NO JIVE... LIVE!』を発表したあとにMCA Recordsからドロップアウト。3作目の『LOVE AFTER DEATH』(1994年)をインディーズから発表し、翌年に一度解散します。その後、何度か再結成/解散/メンバーチェンジを繰り返し、2019年にはオリジナルメンバーで再結成を果たしたばかりです。

 


▼BANG TANGO『DANCIN' ON COALS』
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ENUFF Z'NUFF『HARDROCK NITE』(2021)

2021年11月12日にリリースされたENUFF Z'NUFFの最新カバーアルバム。日本盤未発売。

スタジオアルバムとしては昨年7月発売のオリジナル作品『BRAINWASHED GENERATION』(2020年)に続く新作。カバーアルバムは過去にも『COVERED IN GOLD』(2014年)と題したカバーコンピが存在しましたが、今回はビートルズナンバー、およびポール・マッカートニー(WINGS含む)とジョン・レノンのソロ楽曲から厳選された10曲を録り下ろし。すべの楽曲においてチップ・ズナフ(Vo, B)がリードボーカルを担当しています。

ザーッと聴いた印象では、パワーポップのルーツとしてビートルズをカバーするのではなく、ビートルズ周辺楽曲を題材にハードロックアルバムを作るという方向性かしら。ミックスの硬質感であったりアレンジに詰め方でったりが、以前の彼らと比べたら雑なんですよね。安直にハードロック風に焼き直しました、という感じとでもいいましょうか。

オープニング曲「Magical Mystery Tour」のイントロでちょっとしたコラージュ的遊びが飛び出すものの、その後の楽曲自体はストレートにハードロック色強めにカバーした印象。続く「Cold Turkey」も原曲自体がブルースロック的なのもあって、完全にハードロックのそれですし。かと思えば、味付けのしようが如何様にもあるであろう「Eleanor Rigby」までもがド直球のハードロックアレンジ。もっとほかにあっただろうに……。

以降もGUNS N' ROSESで手垢が付きまくりの「Live And Let Die」を、イントロで無駄にドラマチックにしようとするも失敗していたり、原曲よりもヘヴィではない「Helter Skelter」、唯一パワーポップ寄りな「Jet」、なんのひねりもない「Revolution」や「Back In The U.S.S.R」などが続きます……これまで無数ものビートルズHRカバー集が世に放たれましたが、それらと比べても工夫がなさすぎて評価に困るといいますか。

そんな中で、サイケデリックロック色を強めることでらしさが垣間見える「Dear Prudence」、ジョー・コッカー版アレンジでカバーした「Witha A Little Help From My Friends」あたりは特筆しておいてもいいかな、という仕上がり。前者はまあそうなるか……感が否めなくもないけど、このアルバムの中ではハイライトっぽい仕上がり。そして、アルバムの最後を締め括る後者は、このアレンジ自体BON JOVIやらTHUNDERも取り上げているのでHR/HMリスナーには新鮮味ゼロだけど、この流れの中ではフックになっているのではないでしょうか。

というわけで、なぜこんな作品をこのタイミングに制作して世に出そうと思ったのかは謎。彼らの名前くらいしか知らない人は無理して聴く必要もない、完全なファンアイテム。ビートルズのカバーを収集しているコアファンからどんなリアクションがあるのか、正直怖いくらいに平凡な“お遊び”盤。完全オリジナルの新作にボーナスディスクとしてくっ付けるでちょうどよかったんじゃないでしょうか。残念です。

 


▼ENUFF Z'NUFF『HARDROCK NITE』
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2021年11月21日 (日)

CHARLIE SEXTON『CHARLIE SEXTON』(1989)

1989年初頭にリリースされたチャーリー・セクストンの2ndアルバム。日本盤はリード曲から用いられた『ドント・ルック・バック』という邦題で、同年1月25日発売。

1985年前半にシングル「Beat's So Lonely」およびアルバム『PICTURES FOR PLEASURE』でメジャーデビューした、当時弱冠16歳だったチャーリー。そのルックスで本国のみならずここ日本でもアイドル的な人気を博し、1作目から全米TOP20入りするなど成功を収めました。しかし、そのギタリストとしての実力やソングライターとしての才能が霞むほどにアイドル視されることから少し距離を起くことに。結果、続く2ndアルバムが届けられるまでに4年もの歳月を要することになります。

前作はビリー・アイドルでおなじみのキース・フォーシーがプロデューサーを担当しましたが、今作では名手ボブ・クリアマウンテンと、ピーター・ガブリエルやSQUEEZEなどを手がけたトニー・バーグが参加。ティーンポップ的な色合いも含まれていたデビュー作から、さらに大人になった楽曲/サウンドが詰め込まれた1枚に仕上がりました。

当時20歳になろうとしていたチャーリーですが、前作にあった背伸び感は今作には皆無。リラックスしつつも締めるところは締めるという、等身大の都会的ロックを中心とした楽曲が並びます。オープニングを飾る「Don't Look Back」などは前作の延長線上にあるものの、若干落ち着いた印象を受けるのではないでしょうか。この曲、ボブ・クリアマウンテン絡みでブライアン・アダムスがコーラスで参加。よく聴けばそれとわかるしゃがれ声のハモリを見つけることができます。

かと思えば、「I Can't Cry」や「While You Sleep」のような大人びた楽曲も用意。後者のようにスペーシーなサウンドメイキングを施した楽曲は前作にも含まれていたものの、今作では人口甘味料を排除したビターな仕上がりに。個人的には「I Can't Cry」での歌やギターに、のちの彼の片鱗が見つけられたことが久しぶりに聴いた収穫かな。

全体的に落ち着いたトーン、おおらかなノリで統一されているのは、なんとなく前年にリリースされた氷室京介の1stソロアルバム『FLOWERS for ALGERNON』(1988年)と通ずるものがあるような気もします。というのも、チャーリーは同作のレコーディングやライブにゲスト参加しており、異国のトップアーティストから受けた影響も少なからずあったのではないかと。「Question This」みたいなミディアムチューンを聴くと、そんな想像をしたくなってしまうんですよね(笑)。

80年代半ば、チャーリーに夢中になったお嬢様方は現在の彼の活躍をどこまで知っているのでしょうか。往年のソロ公演は一度も観たことがなかった僕ですが、2000年代に入ってからボブ・ディランのライブで何度も彼のプレイを目に耳にすることができるなんて、中高生の頃は想像できなかったなあ……。

 


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BRYAN ADAMS『18 'TIL I DIE』(1996)

1996年6月4日にリリースされたブライアン・アダムスの7thアルバム。日本盤は同年6月1日に先行発売。

「(Everything I Do) I Do It For You」という世紀のメガヒット曲を生み出した前作『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)からは計6曲ものヒットシングルが生まれ、2年近くにわたるロングヒット作となりました。また、1993年にはこのヒットを受けて初のベストアルバム『SO FAR SO GOOD』も発表され、同作からの新曲「Please Forgive Me」も大ヒット。さらに映画のために制作されたロッド・スチュワートスティングとのコラボ曲「All For Love」も各国で1位を獲得するなど、しばらくは話題に事欠かないブライアンなのでした。

1995年に入ると、再び映画のために新曲「Have You Ever Really Loved A Woman?」を制作。この曲も世界各国で1位という大記録を樹立。そこから1年を経て、ついに届けられた5年ぶりのアルバムが“死ぬまで18歳(=青春)”と題されたいかにも彼らしい1枚でした。

プロデューサーには前作から制作に加わったジョン・マット・ラングを再起用。ソングライティングでもジョンとがっつりタッグを組み、前作ではジム・ヴァランスなど外部ライターも複数曲で関わっていたところを今作ではほぼブライアン&ジョンの2人で制作しています。

前作はモロにジョン・マット・ラングらしい音(=DEF LEPPARD的の機械的な硬さ)でしたが、今作はそれ以前のラフで軽やかなロックンロールを軸にしており、前作がなんとなく苦手だったというリスナーも本作のナチュラルさにホッとするのではないでしょうか。

一方で、楽曲面に目を向けると前作から5年という歳月の重みが強く伝わる、非常に落ち着いたトーンの楽曲が中心。リードシングル「The Only Thing That Looks Good On Me Is You」やタイトルトラック「18 Til I Die」「We're Gonna Win」「It Ain't A Party... If You Can't Come 'Round」のようにアンセミックなロックチューンも複数含まれているものの、「Let's Make A Night To Remember」や「Star」「I Think About You」「You're Still Beautiful To Me」などのように穏やかなミディアム/スローナンバーも数多く用意されている。しかも、これらの楽曲を覆う空気感がみずみずしさというよりは大人のほろ苦さといったアダルトなもので、“死ぬまで青春”と言いながらも若さ全開というわけではなく、大人になったブライアンが青春時代を振り返りつつこのまま前進していくというスタイルに近いのかな。そう考えると、ロックンロールナンバーの多くが若干大人びているトーンなのも納得がいきます。

今作をリリースした時点ですでに37歳。人生折り返しに近づいてきたブライアンが掲げる“生涯青春宣言”的ロックアルバム。グランジやヒップホップ主導の1996年においては前作ほど響くものではなく、第二の故郷であるイギリスでは1位を獲得したものの、本国カナダでは4位、アメリカにおいては31位止まり。シングルに関しても「The Only Thing That Looks Good On Me Is You」(全米52位/全英6位/カナダ1位)、「Let's Make A Night To Remember」(全米24位/全英10位/カナダ1位)、「Star」(全英13位)、「18 Til I Die」(全英22位/カナダ21位)と中ヒットで終わっています。が、本作発表後にリリースしたバーブラ・ストライサンドとのデュエット曲「I Finally Found Someone」は全米8位、全英10位という好成績を残しているので、まだまだ人気が下火というわけでもなさそうですね。

70分以上の長尺作だった前作と比べると、今作は全13曲で52分と比較的コンパクト。それもあってか、当時はドライブなど含め移動のお供として重宝した1枚でした。

 


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2021年11月20日 (土)

BULLETBOYS『FREAKSHOW』(1991)

1991年3月12日にリリースされたBULLETBOYSの2ndアルバム。日本盤は同年4月25日発売。

「Smooth Up In Ya」(全米71位)、THE O'JAYSのカバー「For The Love Of Money」(同78位)といったシングルヒットのおかげで、デビューアルバム『BULLETBOYS』(1988年)はアメリカで最高34位という好記録を残したBULLETBOYS。これに続く2年半ぶりの新作は、成功を収めた同作を踏襲する作風で仕上げられています。

プロデューサーは前作から引き続きテッド・テンプルマン(VAN HALENデヴィッド・リー・ロスサミー・ヘイガーAEROSMITHなど)が担当。カバー曲を含む構成も前作同様で、今作ではトム・ウェイツ「Hang On St. Christopher」、ブルースマンのJ.B.ルノア「Talk To Your Daughter」という通好みの選曲となっています。

VAN HALENフォロワー的なスタイルは前作同様ですが、楽曲の幅が少し広がり始めている印象を受けます。例えば、前作における「Smooth Up In Ya」をよりグルーヴィーに進化させたリード曲「THC Groove」などは、EXTREMEあたりにも通ずるファンクメタルの側面が感じられますし、「Hang On St. Christopher」でのパーカッシヴなアレンジも同様(この曲ではTHE DOOBIE BROTHERSなどで活躍したボビー・ラカインドがコンゴでゲスト参加)。タイトルトラック「Freakshow」での跳ね気味なリズムもその流れにあるものと言えます。

BULLETBOYS自身が「これからはファンクメタルだ!」と思ったかどうかは定かではありませんが、王道アメリカンハードロックにブラックミュージックのテイストを織り交ぜていくスタイルは、別に今に始まったことではなく、そもそもVAN HALENにもその色合いは少なからず含まれているので、この進化はごく当たり前のものだったのかもしれません。

ただ、そこを踏まえても楽曲の質感やバリエーションが少し広まり始めたのは、バンドとしての進化と捉えることができるでしょう。完成度自体は前作よりも質が上がっているのは間違いありませんし、マーク・トリエン(Vo)の表現力も少し上がっている。中でもミック・スウェダ(G)のアレンジ力は前作の比ではないほどに上昇しており、デビュー作の成功がバンドにもたらしたものは相当大きかったことが伺えます。

もうひとつ興味深いことに、本作を覆うダークさからはのちのグランジやグルーヴメタルのそれと近いものも感じられるんですよね。例えば先の「THC Groove」もそうですし、後半の「Goodgirl」もそう。「Do Me Raw」なんてALICE IN CHAINSあたりとの共通点も見出せる。思えばALICE IN CHAISも、結成当初はヘアメタルバンドでしたからね。BULLETBOYSが単に時代の先を読むことに長けていたのか、それとも「売れてるものは全部パ○れ!」精神だったのか……(後者のような気がしないでもない。笑)。

90年代初頭のヘアメタルバンドのアルバムとしては当時の流行が反映された、非常に聴き応えのある1枚だと思います。1991年という過渡期に発表された作品であることも災い、かつバンドがバンドなのでちゃんと正当評価されていない気がしますが、リリースから30年経った節目の今こそちゃんと評価されるべき1枚だと思います。

なお、本作はアメリカで最高69位まで上昇。大きなシングルヒットは生まれませんでしたが、「Hang On St. Christopher」はBillboard Mainstream Rockチャートで22位を記録しています。

 


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CRAZY LIXX『STREET LETHAL』(2021)

2021年11月5日にリリースされたCRAZY LIXXの7thアルバム。

前作『FOREVER WILD』(2019年)から2年半ぶりの新作。楽曲1つひとつの完成度が非常に高く、アルバムとして過去最高の仕上がりではないかと謳われた『FOREVER WILD』に続く作品ということで、プレッシャーもあったのでは……などと勘繰ってしまいたくなりますが、そんな外野の声を弾き飛ばすほどに高品質で、いかにも彼ららしい1枚を届けてくれました。

今思えば『FOREVER WILD』は全体を通して、ちょっと品行方正な仕上がりだったような気がします。陰と陽で大雑把にわけるとすれば、(作品自体はポジティブだけど)陰側といいますか(これには賛否あるかと思いますが、いち意見として)。それこそが最高傑作的な謳い文句につながったと思うのですが、一方今作は初期のはっちゃけた……バカバカしいまでに80年代を疑似体験させてくれるヘアメタル(陽のほう)に復調している気がしないでもありません。

それは、アルバムのアートワークからも大いに伝わります。日本盤は権利の関係で街中の立て看板に描かれた文字が全部消されていますが(MOGWAI1stアルバムと同じパターンですね)、海外盤およびストリーミングでのジャケットを見ればわかるように、おちゃらけています。おそらく2019年の初来日で新宿や渋谷を探索して味を占めたんでしょうね。と同時に、どこかサイバーなあの街の感じや日本を舞台にした映画やアニメのイメージ……これが『FOREVER WILD』以前のはっちゃけ感を呼び戻してくれた……というのは考えすぎでしょうか。

もちろん、前作で得た自信はこのアルバムにも最大限に発揮されており、1曲1曲の作り込みはお見事としか言いようのないもの。どれも80年代にヒットしたと言われても信じてしまいそうなほどに、あの時代を踏襲したHR/HM黄金期のサウンド/楽曲なのですから。ただ、『FOREVER WILD』と比べるとちょっとだけ“隙”が用意されていて、それが先に何度か記したはっちゃけ感やラフさにつながっているのかもしれません。

そんなアルバムに「Anthem For America」なんてタイトルの王道ハードロックを用意したり(笑)、抜けの良いAOHR(=Adult Oriented Hard Rock。なんて言葉はないですが)の「Reach Out」や「One Fire - One Goal」、80年代的シンセの香りがたまらない「Final Fury」、豪快なギターリフが時代を感じさせる「Street Leathal」、お約束のパワーバラード「In The Middle Of Nothing」など、とても2021年とは思えないような極上のハードロックが並ぶのですから。笑っちゃいますよね。

アルバム全体のパンチとしては前作には及ばないものの、これもまたCRAZY LIXXらしい“21世紀のヘアメタル”の教科書的作品。茶化したりバカにするのは簡単だけど、これをどこまでも真剣にやってる彼らにはもっと幸せになってほしい……と願う自分がいたりして(それこそ余計なお世話ですけどね)。

 


▼CRAZY LIXX『STREET LETHAL』
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2021年11月19日 (金)

TYKETTO『DON'T COME EASY』(1991)

1991年3月25日にリリースされたTYKETTOの1stアルバム。日本盤は同年4月21日発売。

TYKETTOは1987年に結成された、当時4人組のメロディアスハードロックバンド。フロントマンのダニー・ヴォーン(Vo, G)は後期WAYSTEDのシンガーとしても活躍した経歴を持ち、その後マイケル・クレイトン(Dr)とともにこのTYKETTOを結成します。1989年にはGeffen Recordsと契約を果たし、リッチー・ジトー(CHEAP TRICKHEARTMR. BIGPOISONなど)をプロデューサーに迎え本作を完成させます。

日本盤リリース直前から、伊藤政則氏のラジオ番組『Power Rock Today』(Bayfm)でオープニングトラック「Forever Young」がヘヴィローテーションされ、その完成度の高さから早い段階で注目を集める存在でした。アメリカのバンドながらもヨーロッパ的な憂いを感じさせるメロディラインは、完全に日本人好みのそれであり、僕自身もこの1曲にノックアウトされアルバムを購入した記憶があります。

しかし、「Forever Young」的な楽曲はアルバムの中でもこれ1曲だけで、アルバム全体を通して感じるのは王道のアメリカンハードロック/AORテイストの耳馴染みが良いハードロックということ。「Forever Young」のテイストだけを求めるリスナーには肩透かしかもしれませんが、それ以外の楽曲の完成度も非常に高く、デビュー作の時点でバンドとしてのカラーが確立されていることに気づきます。

1991年初頭というと、まだグランジの波が押し寄せる直前。また、彼らがメジャー契約した1989年はHR/HMが世界的に大ヒットを飛ばしていた後期だったこともあり、Geffenは同レーベル所属のGUNS N' ROSESAEROSMITHWHITESNAKE(アメリカのみ)、あるいは別レーベルのBON JOVIといった、世界中でメガヒットを記録する大物(ガンズのみ新人ですけどね)に続く正統派バンドに続く存在として育成したかったのではないでしょうか。事実、「Standing Alone」のようなパワーバラードからはAEROSMITHやWHITESNAKEにも通ずるブルースフィーリングが感じられますし、個人的には『WHITESNAKE』(1987年)以降のWHITESNAKEを継承する存在にまでは育てたかったのかな、という空気も感じ取りました。

ダニーのボーカルは適度なスモーキーさとウェット感があるのですが、一般的なアメリカンハードロックバンドのシンガーよりも品性が感じられる(笑)。実はこれが非常に大事で、「Lay Your Body Down」みたいに派手な演奏&アレンジの楽曲でも下品になりすぎない。この絶妙なバランス感ってかなり重要で、下品さがあると全部VAN HALEN的な方向に行ってしまうんですよね。今作にもVAN HALENからの影響を感じる楽曲がいくつか存在するものの、ボーカルの丁寧さや生真面目さのおかげで正統派感が強まっている。日本でウケた理由って、本当のところこのへんの要素が大きかったのではないかなと、改めて感じています。

しかし、本国アメリカでこういった方向性で戦うには非常に困難を強いられた。かつ、シーンが新たな方向へと向かいつつある過渡期にデビューしたのも運が悪く、TYKETTOはこの1枚でGeffenとの契約を終了することになります。本当、不運のバンドですね。

海外での評価はわかりませんが、ここ日本では今でも「Forever Young」を筆頭にこのアルバムは高く評価されており、この30年間で何度も再発されています。2022年1月にはユニバーサルミュージックが企画する「入手困難盤復活!! HR/HM VOL.4:北米編」の一環で、1枚1100円にて限定再発されるので、まだ聴いたことがないというリスナーはぜひチェックしてみてください。あるいは、今春からストリーミング配信も始まったので、そちらでチェックしてみてもいいかもしれません。

 


▼TYKETTO『DON'T COME EASY』
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L.A. GUNS『CHECKERED PAST』(2021)

2021年11月12日にリリースされたL.A. GUNSの13thアルバム。

今年7月に発表されたライブアルバム『COCKED AND LOADED LIVE』に続く今作は、『THE DEVIL YOU KNOW』(2019年)から2年8ヶ月ぶりのオリジナルアルバム。その期間にはスティーヴ・ライリー(Dr)&ケニー・ニケルス(B)バージョンのL.A. GUNSによるアルバム『RENEGADES』(2020年)もありましたが、こちらはトレイシー・ガンズ(G)&フィル・ルイス(Vo)バージョン。どっちが本家だとか分家だとかないでしょうけど、やはりバンドの創始者であるトレイシーとバンドの顔(=声)であるフィルが在籍するこちらのほうが本家っぽいですよね。

トレイシーのバンド復帰3作目となる今作。基本的には前2作の延長線上にある作風で、適度にハードで適度にパンキッシュという初期の彼ららしさが伝わる内容に仕上がっています。スピードチューン「Cannonball」で派手に飾ったかと思うと、怪しげなミドルチューン「Bad Luck Charm」、グラマラス&スリージーなロックンロール「Living Right Now」と曲ごとに表情を変えていく。しかし、全体を通して一環しているのは先にも挙げた「適度にハードで適度にパンキッシュ」という痒いところに手が届く感。おそらくリスナーがL.A. GUNSというバンドに求める要素は、この冒頭3曲だけで完璧かと思います。

ところが、そこからサイケデリックなアコースティックロック「Get Along」、ダークなメタルバラード「If It's Over Now」で少し様相が変わっていく。これも2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)や3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991年)あたりで見せていたスタイルであり、先の「適度にハードで適度にパンキッシュ」だけでは収まりきらないバンドの創作欲の表れなのかなと思いました。

全体を通してフィルが以前ほどハイトーンで叫ぶような曲がなく、全体的に中音域中心で穏やかに歌うこともあり、楽器隊のテンションの高の演奏にわりにクールすぎやしないかというチグハグさも、あったりなかったり。まあこのへんは加齢によるものが大きいと思うので、仕方ないのですが。

そんなモヤモヤを感じていると、アルバムは中盤のメタルチューン「Better Than You」で再び空気が激変。まあこの曲のボーカルもトーン抑えめなんですけどね(笑)。以降も緩急に富んだ楽曲がずらりとならび、最後まで飽きさせることなく聴き手を夢中にさせてくれます。

楽曲のバラエティ豊かさは1stアルバム『L.A. GUNS』(1988年)というよりは、そのあとの『COCKED & LOADED』と『HOLLYWOOD VAMPIRES』をベースにしているのかな。ただ、バンドのテンション感は明らかに1stアルバムに倣ったもので、それが「適度にハードで適度にパンキッシュ」につながっていく。結局、このバンドのベースになるものは初期3作で完成されたということなのかもしれません(視点を変えれば、それ以降の実験はある意味失敗だったとも受け取れますが)。

アルバムを聴いたときのインパクトはトレイシー復帰作の『THE MISSING PEACE』(2017年)には及ばず、作品を重ねるごとに“置きにいっている”感が強まっている気がしないでもありません。が、楽曲の完成度は間違いなく過去2作以上。バランスの取り方が難しいところではありますが、今作はデビューから30数年経った彼らが到達した、“大人のスリージー・ハードロック”のひとつの在り方なのかもしれませんね。そう捉えると、非常に完成度の高いハードロックアルバムだと断言できます。

 


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2021年11月18日 (木)

MOTLEY CRUE『TOO FAST FOR LOVE (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年11月10日にリリースされた、MOTLEY CRUEの1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカルでの発売なしの、デジタル限定作品となっています。

今年6月に4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)と3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、9月には5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)、そして10月に2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)の最新リマスター盤を立て続けにリリースしたMOTLEY CRUE。これらはバンド結成40周年の記念企画の一環として制作されたもので、今春のRecord Store Dayではこれら5作品のカセットテープが限定販売され話題を集めたばかりです。

これにて初期作品の最新リマスター盤企画はひとまず完結かな。最後にこの1stアルバムが選ばれたのは、リリース日の11月10日が40年前に今作が初めてリリースされた日だから。つまり、真の意味での40周年企画クライマックスなわけです。

さて、その40年前の音源の2021年最新リマスターの効果についてです。今回リマスターされた音源は、1981年初出時のオリジナルLeathürバージョンではなく、1982年のメジャーデビューに際してロイ・トーマス・ベイカーがリミックスを施したElektraバージョン。そもそもLeathürバージョンはすでにマスターテープが存在していないようなので、こうなりますわな(なので、過去ボックスなどでCD化された際のLeathürバージョンは、アナログ盤から起こした音なのです)。

気になるリマスタリング効果ですが、過去に触れてきた4作品同様に“音量をできる限りあげてコンプをかけて均一化したようなバランス感”でまとめ上げられています。なので、オリジナル版やその後のリマスターバージョンほど、ギターの尖った感が抑えられており、耳障りはだいぶ良いのではないでしょうか。「Starry Eyes」あたりを聴くと、そのへんの効果がよりわかりやすい気がします。

一方で、ドラムの低音がかなり効いており、イマドキのサウンドメイクに寄せられている印象も。「Live Wire」冒頭のツーバスでドコドコ突進するパートや、「Come On And Dance」でのドラムはこの効果がもっとも強く表れているような気がします。

まあ1981年のラフな録音をその後の作品と違和感なく聴かせること自体困難を極める作業ですし、ましてや『DR. FEELGOOD』のように鉄壁なサウンドと比較されたらたまったものじゃない。そう、この頃の音はオリジナルのチープさこそが売りであって、そこをなかったことにして現代的にドーピングするのはちょっと違うんじゃないかと思うんです。

なもんで、個人的には最初のLeathürバージョンの音が一番好きなんですよ。もっとも、僕がこれまで聴いてきた同作の音はレコード起こしの海賊盤と、正規版ながらも同様の起こしで若干のミックスを加えたバージョン。もしかしたら、レコードを通じて響く音がお気に入りなのかもしれません。『SHOUT AT THE DEVIL』のときにも

以前、レギュラーで出演しているDJイベントで本作のアナログ(1983年当時の日本プレス盤)を大音量で回したのですが、そこで耳にした音がこれまで聴いてきた『SHOUT AT THE DEVIL』の中ではベストだった、という一言だけは付け加えておきます。

と書きましたが、本作に関しても同様のことが言えると思います。だってこれ、CDが存在していなかった時代の作品ですからね。

まあ、なにはともあれ。これからMOTLEY CRUEのカタログに手を出そうとしている奇特な方(笑)には、ぜひこのデビュー作から順を追って彼らの進化を追体験してみてください。

 


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2021年11月17日 (水)

MØL『DIORAMA』(2021)

2021年11月5日にリリースされたMØLの2ndアルバム。

MØLは2012年結成、デンマーク出身のポストブラックメタルバンド。Bandcampを通じて楽曲を発表し続け、2018年にリリースされた1stアルバム『JORD』は“ブラックゲイズ界の新たな新星”として界隈で高く評価されました。

Nuclear Blast Recordsと新たに契約して制作された今作では、レコーディングおよびミックスをチュー・マドセン(GOJIRAMESSHUGGAHHEAVEN SHALL BURNDIR EN GREYなど)が担当。音のふくよかさと分離の良さが際立つ、この手のサウンドにしては非常に聴きやすい1枚に仕上がっています。

音の組み立て方や楽曲の方向性、ボーカルスタイルなどはブラックメタルやエクストリームメタルのそれなのですが、随所から匂い沸き立つシューゲイザー/ドリームポップ的な浮遊感やキャッチーさとが合間って、ブラックメタル的なアングラ感を薄めてくれている。このへんは先駆者のALCESTDEAFHEAVENとの共通点も見受けられ、両者のリスナーならすんなりと受け入れられるはずです。

また、ボーカルに関してもスクリーム一辺倒ではなく、「Vestige」後半や「Redacted」にはクリーントーンの歌声もフィーチャーされている。このへんは後期DEAFHEAVENに近いものがありますが、そのモダンなアレンジ含めMØLのほうがよりメタリック。最近のDEAFHEAVENはちょっと……という生粋のメタラーには、このMØLのアルバムで慣らしてからDEAFHEAVENへ戻っていくと、意外といけるかもしれませんよ。

また、プログメタル的な曲展開も随所から伝わり、特に終盤2曲(「Tvesind」「Diorama」)は7〜8分の大作とあってそのへんの魅力をより強く味わうことができるはず。もちろん、それ以外の楽曲も5分前後と比較的コンパクトながらも、1曲の中に複雑な展開がいくつか用意されているので、最後まで興味深く堪能できるのではないでしょうか。全8分/46分という昔ながらも尺も好印象で、比較的“ひとつのアルバム/曲の集合体”として飽きずに楽しめるはずです。

「これ!」というキラーチューンがあるわけではないですが、最初から最後までを通してムードを楽しむという点において、本作はアルバム単体として語るべき1枚かもしれません。これが最高傑作ではなく、あくまで入り口。この先にさらなる高みが待っていると期待させてくれる良作です。

 


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2021年11月16日 (火)

KORN『THE PARADIGM SHIFT』(2013)

2013年10月7日にリリースされたKORNの11thアルバム。日本盤は同年10月9日発売。

EDMに接近し、曲ごとにリミキサー/コラボレーターが異なるという異色ぶりを見せた前作『THE PATH OF TOTALITY』(2011年)から1年10ヶ月ぶりの新作。同年バンドに復帰したブライアン・“ヘッド”・ウェルチ(G)が『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003年)ぶりにレコーディングに参加した、記念すべき1枚でもあります。

新たなプロデューサーとしてドン・ギルモア(BULLET FOR MY VALENTINELINKN PARKアヴリル・ラヴィーンなど)を迎えた本作は、『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)以降の歌メロ重視メタルコア路線を踏襲した内容。ただ、『THE PATH OF TOTALITY』というクラブミュージックを通過した作品のあとだけに、「What We Do」や「Spike In My Veins」「Never Never」などの楽曲ではそれらしい味付けも散りばめられており、一筋縄ではいかないサウンドメイクを楽しめます。

「Love & Meth」や「Mass Hysteria」「Punishment Time」などで聴ける不穏なリフワークは1990年代後半から2000年代初頭の彼らを思わせる、ヘヴィさを強調したものが多く、良い意味で「従来のKORNらしさ」を維持している。一方で、先にも書いたように『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』でのポップ/メロディアス路線を踏襲しつつ、『THE PATH OF TOTALITY』で見せたEDMテイストもしっかり織り交ぜており、「新たなKORNの魅力」もしっかり伝わる。という意味では、どちらか一方に振り切るわけではなく、両者の魅力をバランスよく配分したハイブリッド作と言えるのではないでしょうか。これこそが「2013年版のKORN最新形」なんだと。

KORNのリスナーはどちらかといえば1stアルバム『KORN』(1994年)での衝撃、最大のヒット作となった3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)でのキャッチー&グルーヴィーなスタイルを好む傾向があり、これらこそがKORNのすべてと狂信しているイメージが少なくありません。しかし、プログレッシヴ志向の『UNTOUCHABLES』(2002年)やモダン路線の『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』、EDM寄りの『THE PATH OF TOTALITY』など、時に実験に振り切った作品も少なくなく、それらがファンの反感を買うこともあります。しかし、こういった実験があるからこそバンドは“進化”を続け、“無題”アルバム(2007年)や今作のように充実した作品を増産することができるのです。と同時に、その間には『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』や『KORN III: REMEMBER WHO WE ARE』(2010年)のように原点に立ち返ろうとする作品が存在することも忘れてはなりません。

この『THE PARADIGM SHIFT』はヘッドを再び迎え、新たなディケイドへと突進するKORNの所信表明であり、何度目かのデビューアルバムである……と言えるのではないでしょうか。そう考えると、本作のあとに『THE SERENITY OF SUFFERING』(2016年)、『THE NOTHING』(2019年)と続くのも頷けるものがあるはずです。

 


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2021年11月15日 (月)

THE HEARTBREAKERS『L.A.M.F.』(1977/2021)

1977年10月にリリースされた、ジョニー・サンダース(Vo, G/ex. NEW YORK DOLLS)率いるTHE HEARTBREAKERSの1stアルバムにして唯一のスタジオ作品。

1975年にNEW YORK DOLLSを脱退したジョニーとジェリー・ノーラン(Dr)。2人はウォルター・ルー(Vo, G)、リチャード・ヘル(B/ex. TELEVISION)の4人でこのTHE HEARTBREAKERSを結成します。のちにリチャードからビリー・ラスへとベーシストが交代。1977年初頭にロンドンで今作のレコーディングに突入します。

楽曲自体はNEW YORK DOLLSの延長線上にあるパンキッシュなロックンロールが主体。ただ、DOLLSがデヴィッド・ヨハンセン(Vo)の華のあるボーカルや煌びやかな味付けによってグラマラスさが強かったところを、THE HEARTBREAKERSではジョニー&ウォルターが歌うこと、シンプルなアンサンブルにより(また時代的なものもあり)パンクロック度が上昇。ともにガレージロックが下地にあるバンドですが、演者によってこうも変わるのかと納得させられるものがあります。

楽曲の1つひとつに関しては文句なしの仕上がり。今やパンクロックのクラシックといえる「Born To Lose」や「I Wanna Be Loved」、のちにRAMONESも取り上げた「Chinese Rocks」を筆頭に、どれもが最高の輝きを放っています。リリース時期もほぼ一緒だし、時代的にSEX PISTOLS唯一のアルバム『NEVER MIND THE BOLLOCKS HERE'S THE SEX PISTOLS』(1977年)と双璧を成すパンクロックのマスターピースと断言できる作品……になるはずでした。

実はこのアルバム、現在までに複数のミックスが存在していることはご承知かと思います。というのも、オリジナル盤のレコード(アナログ盤)のミックスが酷く、曲や演奏の素晴らしさのわりに高評価を獲得することができなかったのです(同じ作品のカセット版は音質が良好だったこともあり、アナログ盤のプレスに問題があったなどの説もあります)。その後、オリジナルのマスターテープ紛失により、同セッションからの別テイクをリミックス&追加レコーディングした『L.A.M.F. REVISITED』や『L.A.M.F.: THE LOST '77 MIXES』、『L.A.M.F.: DEFINITIVE EDITION』といった別バージョンが複数出回ることになります。

筆者がこのアルバムに初めて触れたのは90年代以降、おそらく『L.A.M.F.: THE LOST '77 MIXES』あたりが初めてだったかと思います。その後、新たなバージョンが発表されるたびにCDを購入してきましたが、そもそもオリジナル版を耳にしたことがなかったので、元々の音の悪さを知らないわけです。今ならそのへんの音もYouTubeなどで確認することができますが、もはや別モノといった印象すらあります。

ところが昨年、マスターテープのコピーが発見され、2021年11月5日(日本盤は11月10日)に『L.A.M.F.』が本来の形で再発。『L.A.M.F.: THE FOUND '77 MASTERS』と題されたこのアルバム、確かに音質/音圧含め良質なものかと感じます。ただ、複数の別バージョンでそこそこ音質の良い『L.A.M.F.』を耳にしてきた身にとっては、本来の形と謳われる今バージョンも現存する別バージョンのひとつにしか思えないんですよね。だって、後追い組からすればどれが“ホンモノ”なのか判別がつかないわけですから。

まあ、そうはいっても最高の曲と最高のプレイを最良の音で、アーティストやプロデューサーが本来想定していた形で聴くことができるようになったのは良いことかと。メンバー全員がすでにこの世に存在しない今、これらの作品の印税がどこに行くのかなど気になることもありますが、本来なら1977年のパンクシーンを代表するはずだった名盤を、今は爆音で浴びたいと思います。

なお、『L.A.M.F.: THE FOUND '77 MASTERS』のフィジカル版はCD2枚組仕様で、DISC 1にはアルバム本編(M1〜12)に「Can't Keep My Eyes On You」「Do You Love Me」を追加。DISC 2は「Born To Lose」「Chinese Rocks
」のシングルミックスと、アルバムレコーディングまでに複数実施されたデモセッションの音源がまとめられています。こちらにはリチャード・ヘル在籍時の音源も含まれているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼THE HEARTBREAKERS『L.A.M.F.: THE FOUND '77 MASTERS』
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2021年11月14日 (日)

THE QUIREBOYS『BITTER SWEET & TWISTED』(1993)

1993年2月18日にリリースされたTHE QUIREBOYSの2ndアルバム。日本盤は同年3月31日発売。

デビューアルバム『A BITTER OF WHAT YOU FANCY』(1990年)が全英2位という好記録を樹立し、「7 O'Clock」(同36位)、「Hey You」(同14位)、「I Don't Love You Anymore」(同24位)、「There She Goes Again」(同37位)を複数のヒットシングルも生み出したTHE QUIREBOYS。さらにライブアルバム『LIVE (RECORDED AROUND THE WORLD)』(1990年)も発表するなど、デビューから1年でトップバンドの仲間入りを果たすことになります。

しかし、1991年からハードロック全盛期からグランジやヒップホップを主体としたシーンに移行し始め、THE QUIREBOYSのようなクラシックロックをベースにしたバンドには苦しい時代に突入。これにより、長期にわたり制作を続けてきた2ndアルバムは完成までに難航することになります。

プロデューサーにかのボブ・ロック(METALLICAAEROSMITHBON JOVIMOTLEY CRUEなど)を迎えた本作。ラフでアーシーなロックンロールを武器とするTHE QUIREBOYSと、メタリックな音を武器とするプロデューサーのボブがどのような化学反応を起こすのかに注目が集まりましたが、ここに関しても終盤でテコ入りされ、THE ROLLING STONESなどで知られるクリス・キムゼイが第二のプロデューサーとして介入。ボブがプロデュースした多くの楽曲にリミックスを施したり、あるいは新たにクリスのプロデュースで楽曲が制作され、最終的に約3年ぶりの新作は全14曲/60分という非常に長尺なアルバムとして届けられることになります。

確かにボブが関わったであろう楽曲は全体的にドラムが硬質な、重心の低いミックスとなっています。が、もともとドラムの音が固めのバンドなだけに違和感はほぼなく、「ぶっちゃけ、ボブである必要があったのか?」という疑問すら生じます。楽曲のスタイル自体は前作の延長線上にあるものですが、デビュー作がそれまでのストック中心だったことを考えると、ここで聴くことができる新曲群は2年近くにおよぶワールドツアーを経て得た自信がラフなロックンロールとして良い形で凝縮されたのではないでしょうか。

ですが、楽曲の幅という点では焦点が絞れたぶん、前作ほどのバラエティの幅は感じられないかも。それを良しとするか否かで本作に対する評価も変わりそうな気がします。

シングルカットもされたHOT CHOCOLATEのカバー「Brother Louie」が出色の出来で、この1曲のためだけに本作を手に取ってもいいほど。ちなみにこの曲、ほぼ同時期にかのBON JOVIもライブでカバーしていましたね。

 


▼THE QUIREBOYS『BITTER SWEET & TWISTED』
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THE QUIREBOYS『A BIT OF WHAT YOU FANCY (30TH ANNIVERSARY EDITION)』(2021)

2015年7月23日にリリースされた、THE QUIREBOYSの1stアルバム『A BIT OF WHAT YOU FANCY』(1990年)のリ・レコーディング・アルバム。日本盤未発売。

リリース30周年を記念して制作された本作は、オリジナル盤収録の12曲を現メンバーで再録音し、ボーナストラックとして「Man On The Loose」「Mayfair」のライブテイク(ともに2019年発売のライブアルバム『35 & LIVE』音源)を加えた計14曲収録。レコーディングメンバーはスパイク(Vo)、ガイ・グリフィン(G)、ポール・ゲラン(G)、キース・ウィアー(Key)、ニック・モーリング(B)という布陣。ニックは2014年から参加しているもののサポートメンバー扱いで、本作ではドラムのプログラミングも担当しているようです。

オリジナル盤は1990年というハードロック黄金期に制作された、録音など多額の資金が用意されていたことが窺えるサウンドプロダクションでした。良く言えば派手、うがった見方をすればゴージャスすぎて本質が薄れてしまっている。しかし、あれから30年を経て再録音された本作は、生々しさが全面に打ち出された、まさに“この曲/音楽にこの音”と言わんばかりのマッチした質感でまとめられています。

年季の増したスパイクのボーカルといい、味わい深さがより増した演奏といい、加齢とともに向上した表現力が最良の形で形となった1枚。もちろんオリジナル盤への思い入れは相当強いものがありますが、この再録盤を聴いてしまうと「やっぱりこういう音楽には、こういう表現だよな」と思わずにはいられません。

「Hey You」のように、曲によってはキーを下げられたものもありますが、基本的なアレンジはオリジナルに沿ったもの。時代を経たからといって変にいじることもなく、初出時のアレンジがすべてと言わんばかりの開き直りっぷりにも感心します。THE ROLLING STONESロッド・スチュワートのようなアーティストが歳を重ねるごとに芳醇さが強まっていくのと同じように、このバンド、このアルバムも同様の深化を続け、原点を再現することでその深みをよりわかりやすく体感することができる。そんな1枚に仕上がったのではないでしょうか。

残念なのは、ドラムトラックのみか。前作『AMAZING DISGRACE』(2019年)のときにも感じましたが、この手のサウンドにしてはドラムの音が硬すぎるんですよね。特に今回はプログラミングによるものだと思いますが、もうちょっと軽やかで抜けの良いドラムでもよかったような気がします(このへんはもはや好みの問題かもしれませんが)。

改めて再録されたアルバムを聴いても、本作が1990年にリリースされていようが今年の音で発売されていようが、あるいは1973年に当時の質感で発売されていたとしても、まったく違和感のない曲/音だということ。初出時から30年以上経った今演奏されてもそう感じるんだから、彼らの勝利は30年前にはすでに決まっていたんでしょうね。

 


▼THE QUIREBOYS『A BIT OF WHAT YOU FANCY (30TH ANNIVERSARY EDITION)』
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2021年11月13日 (土)

楠木ともり『narrow』(2021)

デビューEP『ハミダシモノ』は“シンガーソングライター・楠木ともり”の名刺代わりになるような1枚、続く2nd EP『Forced Shutdown』は“アーティスト/表現者・楠木ともり”の可能性を広げる役割を果たした飛躍の1枚だとすると、3作目となる今作『narrow』は一体どんな立ち位置の作品になるのだろう。リリース直前までに小出しに発表されてきた収録曲たちを耳にしながら、このEPのリリースを心待ちにしてきました。

タイトルに選ばれた『narrow』は「狭い」「細い」「薄い」といった意味を持つ単語。この「狭い」には幅や範囲を示す以外にも「意味が狭い、狭義の」という意味も含まれ、そこから転じて「ギリギリ」「間一髪」という意味も持つといいます。こういった表現から、『narrow』という言葉の雰囲気がなんとなく伝わるのではないでしょうか。そこを踏まえつつ、EPのオープニングを飾るタイトルトラックについて触れていきたいと思います。

今回のEP収録曲はすべて楠木の作詞・作曲によるもの。過去2作は共作曲も含まれていたので、この3作目はより純度の高い“楠木ともり”の作品と言えるでしょう。タイトル曲のアレンジは「ハミダシモノ」の作編曲や「Forced Shutdown」の編曲を手掛けてきた重永亮介が担当。ヒリヒリしたロックテイストの前2曲と比べると、今回の「narrow」は温かみの強いサウンド&アレンジで、歌詞で描かれる切ない世界観と相まって、目の前が広がっていくような開放感を覚える仕上がりです。歌詞の中に登場する〈狭い空〉から取られたタイトルだと思いますが、楽曲自体の持つスタンダード感、エヴァーグリーンなイメージはそのタイトルの意味に反して非常に大きなものを感じます。ただ一言、本当にいい曲。それがすべてです。

続く「よりみち」はどこかヒップホップ調のトラックが印象的な、楠木にとって新境地といえる1曲。アレンジ&トラックメイクを手掛けたのは、自身もアーティスト活動を行う声優の武内駿輔。この組み合わせは驚きの一言でした。前作『Forced Shutdown』同様、今作も4曲すべてのアレンジャーが異なる作風なのですが、前作での試みがひとつ花開いたことで、今作ではこれがすでに大きな武器となっています。武内によるアーバンなトラックと、楠木のリラックスした歌声の相性は抜群で、そのハーモニーから生まれる浮遊感は過去の楽曲とはひと味違った個性が感じられます。そんな楽曲のタイトルが「よりみち」なのも絶妙の一言。小気味良く言葉の並んだ歌詞は、歌としても、そして朗読としても通用する魅力が伝わるもので、今年7月に行われた『Tomori Kusunoki Story Live「LOOM-ROOM #725 -ignore-」』のようなスタイルで披露されたらどうなるのか、なんてことを想像してしまいます。

温かみを感じる2曲を経て、起承転結の「転」にあたる3曲目「熾火(おきび)」へ。どこか閉鎖感が伝わる歌詞と荒幡亮平がアレンジを担当したスリリングさを伴うロックサウンドは、このEPにおいて大きなフックとなる1曲ではないでしょうか。過去2作の表題曲でのスタイルを踏襲した、「ぬくもり」を超える「熱」が伝わってくる仕上がり。歌唱面からは楠木の表現者としての成長を受け取ることができるはずです。そして最後は、シューゲイザー/ドリームポップ的な側面が強い「タルヒ」。本EPから最初に公開されたこの曲のアレンジは元「カラスは真っ白」のやぎぬまかなが担当しており、「熾火」で高まった熱を緩やかに人肌の温もりにまで導いてくれる、締め括りにふさわしい1曲です。

今回のEPは「冬」というテーマを設けて制作されたそうですが、全体を通して温かみの強い作風や歌詞の要所要所から伝わる冬っぽさ含めて、よりコンセプチュアルな作品に仕上がったのではないでしょうか。前作『Forced Shutdown』以上に4曲の個性の違い、楽曲の幅広さを強く感じるものの不思議と統一感が伝わる、非常に充実した作品が完成したのではないでしょうか。ここまでの3作品、どれも個性の異なる仕上がりで、かつ作品ごとに進化がしっかり伝わる内容になっている。随所に異物感を孕みつつも、全体を通して強いスタンダード感も表現できている。アーティスト楠木ともり、末恐ろしい存在です。

残念ながら、今回のリリースに際して楠木ともりとのインタビューが実現しなかったので、彼女が歌詞で描こうとしたこと、込めた思いについて直接聞く機会は得られなかったが、それを抜きにしても彼女の作家性がより強まっている点には目を見張るものがあります。このテキストを書いている時点では世に出ている今作のインタビューをあえて目にしていないのですが、いずれ機会ができた際には本作に関して突っ込んだ話を聞けたらと思っています。

Blu-ray/DVD付き仕様には、「narrow」のMVや他3曲のリリックビデオ、そして7月の『Tomori Kusunoki Story Live「LOOM-ROOM #725 -ignore-」』の模様を凝縮。特に『Tomori Kusunoki Story Live「LOOM-ROOM #725 -ignore-」』では声優でありアーティストである楠木の非凡な個性をたっぷり味わうことができるので、配信を見逃した人にこそぜひ観ていただきたい内容です。そして、見終えたあとには『TOMOROOM』内特設ページに掲載された、筆者によるライブレポート&インタビューをご確認いただけると、このライブをより深く理解することができるはずです(手前味噌ですみません。笑)。

 


▼楠木ともり『narrow』
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BULLET FOR MY VALENTINE『VENOM』(2015)

2015年8月14日にリリースされたBULLET FOR MY VALENTINEの5thアルバム。日本盤は同年8月19日発売。

3作目『FEVER』(2010年)で手に入れたモダンメタル路線でしたが、続く前作『TEMPER TEMPER』(2013年)ではヘヴィさ/アグレッシヴさが若干復調したことで中途半端な内容となってしまった。そこでバンドは、このアグレッションを再び初期〜2ndアルバム『SCREAM AIM FIRE』(2008年)頃までのそれに引き戻すことにトライします。

プロデューサーには初期作を手がけたコリン・リチャードソン(CARCASSFUNERAL FOR A FRIENDMACHINE HEADなど)と、以降バンドと長きにわたりタッグを組むことになるカール・ボウン(WHILE SHE SLEEPS、FIGHTSTAR、BUSTEDなど)を迎えた本作は、モダンメタル的な側面よりも『SCREAM AIM FIRE』やその前の1stアルバム『THE POISON』(2006年)で繰り広げられた攻撃的なスタイルへと回帰。オープニングを飾る「No Way Out」や「Army Of Noise」のようなスピードチューンはまさにその2作を彷彿とさせるものがあり、前2作ななんだったんだ?と言いたくなるくらいの開き直りが感じられます。

とはいえ、『FEVER』以降に手に入れたスタジアムロック路線も完全に捨てたのではなく、「You Want A Battle? (Here's A War)」や「Venom」あたりにその片鱗を残している。とはいえ、本作では統一感を出すために初期スタイルの味付けが施されており、結果として『SCREAM AIM FIRE』をより広く伝わるような形に進化させたスタイルのようにも受け取れる。全体的な舵切りも前2作がスタジアムロック寄りだとしたら、今作はエッジの効いたヘヴィメタル路線。ただ、単なる焼き直しというわけではなく、過去2作での経験が活きた原点回帰なので、退行というわけでもなく進化した姿を見せている。ある意味で、このバンドにおける(2015年当時の)集大成といえる1枚ではないでしょうか。

本作の海外デラックス盤および日本盤にはボーナストラックとして、アルバムから漏れた新曲群のほか、今作への布石となった2013年のシングル「Raising Hell」などを追加収録。海外盤と日本盤とでは収録内容が若干異なり、日本盤には「4 Words (To Choke Upon)」などのライブ音源、海外盤にはMOTÖRHEAD「Ace Of Spades」のカバーがそれぞれ収められています。前作がAC/DCで今作がMOTÖRHEADというのも、なんだか象徴的ですよね。

数字的には全米8位/全英3位という好記録を残しますが、今作のレコーディング終了後にバンドの要であったジェイソン・ジェイ・ジェイムズ(B, Vo)が脱退。本作を携えたツアー終了後にはマイケル・ムース・トーマス(Dr)も脱退と、本作がデビュー時からの黄金期メンバーが参加した最後のアルバムとなってしまいました。

 


▼BULLET FOR MY VALENTINE『VENOM』
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BULLET FOR MY VALENTINE『TEMPER TEMPER』(2013)

2013年2月8日にリリースされたBULLET FOR MY VALENTINEの4thアルバム。日本盤は同年2月6日に先行発売。

全米3位/全英5位というキャリア最高順位を獲得した前作『FEVER』(2010年)から約3年ぶりの新作。その成功を引き継ぐかのように、プロデューサーには前作を手がけたドン・ギルモア(LINKIN PARKKORNアヴリル・ラヴィーンなど)、ミキシングエンジニアには名手クリス・ロード-アルジを再度迎えて完成させました。

本作の前にマット・タック(Vo, G)はCANCER BATSやGLAMOUR OF THE KILL、RISE TO REMAIN、PITCHSHIFTERのメンバーとともにスーパープロジェクト・AXEWOUNDを結成し、アルバム『VULTURES』(2012年)を制作。ここでアグレッシヴ指向を取り戻したのは、この『TEMPER TEMPER』というアルバムでは『FEVER』でのスタジアムロック路線に初期のアグレッションを加えた、バランス感の良い作品作りに取り掛かります。タイトルトラックの「Tempter Tempter」やリード曲「Riot」、「Leech」あたりはまさにその流れを汲むアップチューンではないでしょうか。

もちろん、前作で得たミドルテンポのメロディアス路線も好調で、キャッチーな「P.O.W.」やバラード調の「Dead To The World」といった楽曲群はまさに前作での経験が見事に活かされている。さらに、1stアルバム『THE POISON』(2005年)収録のメタルバラード「Tears Don't Fall (Part 2)」のように初期のスタイルを現代的に昇華させた楽曲も用意されています。この曲あたりは、METALLICAにおける「The Unforgiven」シリーズを狙ったのかしら。ただ、続編がオリジナルを超えることはまずなく、BFMVのこの「Tears Don't Fall (Part 2)」も原曲は超えられず。

そのほか、大半を占めるグルーヴィな楽曲群は『FEVER』を通過したからこそ生まれたと言えるものばかり。個人的には前作以上に好みの仕上がりなのですが、世の中的にはそうではなかったようで。全米13位/全英11位と前作や前々作『SCREAM AIM FIRE』(2008年)を超える数字を残すことはできませんでした。まあ、ヘヴィ路線なのかグルーヴ/キャッチー路線なのか、どっちつかずなところも見受けられますしね。

なお、本作のデラックス盤および日本盤にはボーナストラックとしてAC/DC「Whole Lotta Rosie」と、名曲「Scream Aim Fire」のBBC Radio 1でのスタジオライブ音源などを追加収録。このタイミングに「Whole Lotta Rosie」を選ぶあたり、バンドがこの時期どこを目指していたのかがなんとなく伺えます。

 


▼BULLET FOR MY VALENTINE『TEMPER TEMPER』
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2021年11月12日 (金)

BULLET FOR MY VALENTINE『BULLET FOR MY VALENTINE』(2021)

2021年11月5日にリリースされたBULLET FOR MY VALENTINEの7thアルバム。

Universal傘下のSpinefarm Records移籍第1弾となった前作『GRAVITY』(2018年)から3年4ヶ月ぶりの新作。本来は10月22日発売予定でしたが、新型コロナウイルスの影響による製造の遅れで発売を2週間延ばしたとのことです。

先鋭的なヘヴィメタルから後退し、モダンなメタルコアや日本でいうところのラウドロック的なアプローチを採ったことで賛否を呼んだ前作『GRAVITY』でしたが、続く今作のプロデューサーも前作や前々作『VENOM』(2015年)を手がけたカール・ボウン(WHILE SHE SLEEPS、FIGHTSTAR、BUSTEDなど)が続投。それもあってか、音(サウンドメイキングやミックス)の質感的には過去2作との共通点も見つけられます。

一方、楽曲自体は再びアグレッシヴなメタル度が復調。冒頭を飾る「Parasite」の攻撃性は初期を思わせるものであると同時に、以降繰り返してきた変化があったからこそのモダンな質感もしっかり備わっており、それは続く「Knives」も同様。スクリームを多めに用いているものの、サビではしっかりメロウに歌い上げる曲作りはこれまでの流れにある。若干落ち着いたというかまとまりが良くなった作風は3作目『FEVER』(2010年)以降の彼らそのものであり、やはり代表作となった2作目『SCREAM AIM FIRE』(2008年)までとは違うものだと再認識させられます。

とはいえ、これはこれで非常に収まりの良い仕上がりで、“BFMVらしさ”がしっかり伝わる内容にまとめられている。マット・タック(Vo, G)は本作を指して「これはBullet 2.0の始まりだ」と述べていますが、コロナ禍で思うように身動きが取れなかった時期にしっかりと曲作りと向き合ったことで、前作での経験をしっかり消化した“次”を見定めることができたんだろうなと感じました。これがツアーに次ぐツアーを経て作られた作品だったら、同じアグレッシヴさでもまた違った形になったでしょうし。

初期の彼らとはまったく異なるアグレッションではありますが、『FEVER』で確立させた“モダンメタルバンドとしてのBFMV”を追求しつつ、しっかり時代に則したメタル感を反映させ続ける。と同時に、スタジアムバンドとしての矜持が伝わる楽曲(「Bastards」など)も用意し、ストリートからスタジアムまで通用する緩急に富んだ楽曲を並べる。そういうアーティストとしての進化と流行との対峙、そしてこれまでのスタイルを維持することなどのバランスが今作はもっとも優れているように映ります。2021年を生きる現在進行形のバンドとしてはこれが正解なんだと実感させられる、問答無用の1枚。間違いなく、彼らが目指すべく方向性においては本作が最高傑作だと思います。セルフタイトルを用いるくらいですから、彼らの覚悟も伝わってきますしね。

あとは、BFMVのファンが今の彼らに何を求めるのか。バンドの姿勢とそこが乖離していないことを願うばかりです(しっかり受け入れられるといいな)。

 


▼BULLET FOR MY VALENTINE『BULLET FOR MY VALENTINE』
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2021年11月11日 (木)

SLIPKNOT『THE CHAPELTOWN RAG』(2021)

2021年11月5日に配信リリースされたSLIPKNOTの新曲。

2019年8月に発売された6作目のアルバム『WE ARE NOT YOUR KIND』以来となる、実に2年3ヶ月ぶりの新曲。今年前半からメンバーが新曲制作のためにスタジオ入りしていると発言していましたが、リリース同日にロサンゼルスのBanc Of California Stadiumで開催される『KNOTFEST LOS ANGELES』にあわせて、先行公開されたということなんでしょうね。

楽曲自体はSLIPKNOTらしさ全開で、従来のスタイルの延長線上にある前のめりなメタルチューン。ボーカルにメロディアスさは皆無で、コリィ・テイラー(Vo)は終始アグレッシヴに叫びまっています。サウンドやアレンジ面では特段目新しさは見つけられませんが、聴き手がSLIPKNOTに求める要素はすべて凝縮されているように映ります。

それもそのはず。この曲に対してコリィは「これは処罰人のことなんだ。クラシックなSLIPKNOT(の楽曲)だよ。狂乱しているが、リリック的にはソーシャル・メディアがメディアそのものになった時に起こりうる様々な作用についての視点から来ている。その作用は我々を異なる方向に向かわせようとし、実際に我々はその虜となっている、それって恐ろしく危険なことだ」とコメントを残しており、サウンドやメッセージ含めて怒りに満ちた、王道のSLIPKNOTらしい1曲と言えるでしょう。ショーン・クラハン(Per)もこの発言に対して、「この曲は君が過激なものの考え方をするように促すんだよ」と付け加えているので、そう考えるのは間違いではないでしょう。

アルバムの予定が見えない中で、1曲だけ新曲を先行配信するというやり方は、前作『WE ARE NOT YOUR KIND』の前に10ヶ月前に配信された「All Out Life」(2018年)のときに似ていますよね。ただ、あのときはハロウィーン当日に配信されたこと、当の「All Out Life」はアルバムには未収録になったこと(日本盤はボーナストラックとして追加収録)などのトピックがありましたが、この流れだと来年夏までには7thアルバムのリリースも大いに期待できそうですね。ここ数作はリリース間隔が5年単位で空くことが当たり前だったので、これはうれしい誤算です(もっとも、これも『WE ARE NOT YOUR KIND』発売から半年後にはコロナ禍に突入してしまったことが大きいのですが)。

「The Chapeltown Rag」が次のアルバムに収録されるかどうかは別として、次のステップに向けた肩慣らしとしては十分すぎるほどの1曲。2020年春に予定されていながらも中止になってしまった『KNOTFEST JAPAN』含め、新たなアクションを楽しみに待ちたいと思います。

 


▼SLIPKNOT『THE CHAPELTOWN RAG』
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2021年11月10日 (水)

RADIOHEAD『KID A MNESIA』(2021)

2021年11月5日にリリースされたRADIOHEADのリイシュー/コンピレーション作品。

本作は『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』(2017年)に続くリイシュー企画第2弾で、『KID A』(2000年)『AMNESIAC』(2001年)というほぼ同時期に制作された2枚の重要作と、この2作の制作期間に生み落とされたアウトテイクの数々をひとまとめにしたCD 3枚組作品集。ギターロックという雛形を排除して、音楽ジャンル的にもカテゴライズ不能な多彩さが溢れ出した転換期に制作されたこの2枚は、その内容の難解さにも関わらずリリースから20年経った現在も高く評価されることが多く、“RADIOHEADといえば「Creep」”といった初期のイメージを完全に払拭させることに成功した記念碑的2作品です。

そんな『KID A』と『AMNESIAC』本編に関しては、前者はリリース当時の2000年9月に、後者はだいぶ時間の空いた2017年8月に、それぞれレビューを執筆しているので、内容についてはそちらに譲ります。20年経った今聴いても、時代がこの2枚に追いついたのかどうか正直疑問ですが、2021年に聴いてもしっかり新鮮な気持ちで楽しめるということは、そういうことなんでしょう。

今回特筆すべきは、DISC 3に収められたアウトテイクの数々ではないでしょうか。海外盤/ストリーミングでは12曲、日本盤のみボーナストラックとして本編未収録のカップリング5曲を追加した17曲を収めたこの『KID AMNESIAE』と題されたディスク。インタールード的な楽曲の断片も含まれていることから34分と比較的短尺ですが(日本盤は5曲追加で53分まで拡張)、リードトラックとして先行配信された「If You Say The Word」「Follow Me Around」などアルバム本編に収められていても何ら違和感のない、非常に完成度の高い未発表曲も含まれています。ただ、これら2曲はどちらかというとまだ『OK COMPUTER』(1997年)の延長線上にある作風でもあり、それもあってアルバムから外されたのかなという気もします(後者は1998年のライブリハーサルで演奏されている映像も残っていますし)。

そのほか、アルバム収録曲の別テイクも完全に別モノといった仕上がりですし、12曲通して聴くとひとつのアルバムとしての統一感も伝わる。『KID A』や『AMNESIAC』での世界観を踏襲しつつ、その延長線上に生まれたスピンアウト的新作としては十分な内容ではないでしょうか。

だからこそ、日本盤ボーナストラックとして追加された5曲は蛇足かな?という印象も。どれも「Pyramid Song」「Knives Out」のシングルに収められていた楽曲群ですが、お尻に追加されることでアルバムとしての流れを削ぐものになってしまっているので、ひと呼吸置いてから聴くのがベストかも。もちろん、これら5曲も同じセッションから生まれた兄弟なので、まったく別世界ということはないのですが、流れを大切にして聴くのなら……ということで(そう言いながらも、すべてのシングルを所持しているにも関わらず「ボーナストラック」の一言に弱い僕は日本盤CDを購入してしまったわけですが。苦笑)。

RADIOHEADがこの手のリイシュー企画を、1stアルバム『PABLO HONEY』(1993年)や次作『THE BENDS』(1995年)を飛ばして、『OK COMPUTER』から始めた事実。今のバンドの成り立ちを考えると、非常に納得できるものがあります。でも、この初期2作を振り返る企画盤にも(できることなら世に出ていないアウトテイク含めて)期待してしまっている自分がいます。まあ考えられない未来だとは思いますが……。あと、同様に6作目『HAIL TO THE THIEF』(2003年)以降の作品でのこうしたリイシュー企画もちょっと考えられないかな、と。それだけ『OK COMPUTER』や『KID A』『AMNESIAC』の3枚がRADIOHEADのみならず、音楽シーンに与えた影響が想像を絶するものだったからこその、こうした企画だと思いますしね。

 


▼RADIOHEAD『KID A MNESIA』
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2021年11月 9日 (火)

ABBA『VOYAGE』(2021)

自分が生きているうちにABBAの完全新作を聴く日が訪れるとは、思いもしなかった。新曲ですら聴けるなんて想像もしていなかったのに。

ABBAは物心ついた頃からすでにポップスの王様のような存在で、小学生ながらに「Dancing Queen」をはじめとするヒット曲のいくつかは耳にしていた。自ら率先して聴こうと思わなくても、ラジオやテレビを通じて彼らの楽曲には触れていたので、初めてアルバムに手を伸ばしたのはメガヒットを記録した『ABBA GOLD』(1992年)が最初だったと記憶している。リアルタイムで初めて接した、ABBAの最新ベストアルバムでしたし、イギリスではアホほど売れた1枚ですからね(当時『BEAT UK』のアルバムチャートで常に1位だった記憶が)。

そこから数えても29年。通算9作目にあたる完全新作の誕生です。2021年11月5日、サブスク配信を我慢して我が家にCDが届くのを待って、同日夜にようやくCDを再生しました。

……うん、どこからどこまでも、完璧なまでにABBAそのもの。40年という歳月を無視して、人工的に寄せるわけでもなく、非常にナチュラルな形でABBAが“再生”されているのです。お見事。

何十年ぶりの再結成とか、再結成後のアルバムというのは黄金期を人工的に再現しようとする意思が働いたり、あるいは解散前とは違った形で今を表現しようとするなど、作り手側の意思が大きく作用した作品が届けられることが少なくありません。そして、その意思がときに悪い方向に影響し、結果的に「っぽいもの」で終わってしまう。この匙加減が非常に難しく、再結成後に記憶に残る作品を作り上げたバンドは非常に少ないような気がします。

ところが、ABBAの場合はどうでしょう。どこまでもナチュラルであり、むしろ「これしか書けない/作れないし」という開き直りに似た、「どこまでいってもABBA」という事実を受け入れた楽曲とアレンジ、歌唱が凝縮されている。そりゃあ40年という月日の流れによる加齢は要所要所から感じられますが、それすら真正面から受け入れているように感じられる(アバターを使ったライブはまた別の話ですが。笑)。ABBAがABBAであることを引き受けた、というよりは「この4人が揃って音楽をやったら、自然とこうなっちゃう」が正解なのかもしれません。

先行シングルの「I Still Have Faith In You」や「Don't Shut Me Down」を初めて聴いたときのトキメキは、ほかのアルバム曲からも同様に伝わってきます。「Just A Notion」のように解散前のアウトテイクを形にしたものもありますが、それ以外も時代を超越したスタンダードとなり得るものばかり。アルバムを通して聴くと、「Little Things」から「Don't Shut Me Down」への流れがまるで組曲のようにも感じられ、アルバムであることに拘った作りにも感銘を受けます。

変に曲を作りすぎず、10曲で40分以内という古き良き時代のフォーマットでまとまっていることにも好感を受けますし、そういった事実がサブスク全盛の2021年にどう伝わるのかも気になるところ。流行に左右されることなく首尾一貫スタンダードなポップスを追求する本作が、今年の音楽シーンにおいてどれだけ重要視されるのか、そしてこの先どういう扱いを受けるのか。ぜひ注目し続けたいと思います。

 


▼ABBA『VOYAGE』
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2021年11月 8日 (月)

ビートルズの初期作品を振り返る①(1963年編)

これまでもTHE BEATLESのオリジナルアルバムを当サイトで紹介してきてはいますが、それは大半が後期作品に関して。初期の作品に関してはあまり積極的に扱ってはきませんでした。そこに対して特に大きな理由があるわけではないのですが、なんとなく避けてしまっている自分もいまして(これ、ストーンズに関しても同様なんですよね)。

というわけで、今回から数回に分け不定期にてビートルズの初期作品、『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』(1967年)前後までで扱ってこなかった作品をリリース年ごとに、ひとつのエントリー内で紹介できればと思います。特に最初の3年はオリジナルアルバムを年2枚発表しているので、文字量的にもちょうどいいかなと思いまして。

記念すべき第1回はデビュー翌年の1963年リリースの2作品についてです。

 

 

THE BEATLES『PLEASE PLEASE ME』(1963)

 

記念すべきビートルズ1stアルバム。本国イギリスで1963年3月22日発売。

1962年に「Love Me Do」でメジャーデビュー、その翌年初頭に「Please Please Me」が全英2位まで上昇した結果、初のアルバムは全英1位を見事獲得します。

「Love Me Do」や「Please Please Me」「P.S. I Love You」といったオリジナルのヒットシングルは含まれているものの、全14曲中6曲がカバー曲。パブやライブハウスでどさ回りしていた時期に披露していたカバー曲も多く、中でも「Twist And Shout」はオリジナル超えの1曲と言えるのではないでしょうか。

「I Saw Her Standing There」から勢いよく始まるものの、その後はソウルやR&Bを下地にしたミディアムナンバーを軸に展開。オリジナルの「Misery」からカバー曲「Anna (Go To Him)」への流れも自然だし、そこから数曲のカバーと「Ask Me Why」を経て「Please Please Me」へと到達するアナログA面の流れは圧巻の一言。まさにベスト級の中盤締めくくりだと思います。

後半は「Love Me Do」で若干ソウルフルさを見せ、「P.S. I Love You」「Baby It's You」と穏やかな空気を作って、歌や演奏をじっくり聴かせる形に。だからこそ、終盤の「There's A Place」からラスト「Twist And Shout」への構成がより映えることに。14曲と聞くとボリューミーに感じられるものの、1曲1曲が2分前後とコンパクトなので、トータル32分が一瞬に感じられるほどです。イマドキのアルバムで考えたら半分程度の尺ですものね。

自分の中で好きなビートルズの時期はコロコロ変わるんですが、それでもこの1stアルバムは常にお気に入り。ロックの教科書レベルの、まさしくお手本といったところでしょうか。

 


▼THE BEATLES『PLEASE PLEASE ME』
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THE BEATLES『WITH THE BEATLES』(1963)

 

イギリスで1963年11月22日にリリースされたビートルズの2ndアルバム。

1stアルバム『PLEASE PLEASE ME』以降、「From Me To You」や「She Loves You」とNo.1ヒットシングルを連発。その勢いを受けて発表された2作目のアルバムにはこれらのヒット曲は一切収録されず、全14曲中オリジナル8曲s、カバー6曲という前作と同じ構成。ちなみに、このアルバム発売の翌週には「I Want To Hold Your Hand」がシングル発売されており、こちらも当然全英1位を獲得しています。

前作ではオリジナルとカバーがバランスよく並べられていましたが、本作では冒頭5曲がオリジナル曲。しかも4曲目にはジョージ・ハリスン初のオリジナル曲「Don't Bother Me」まで収録されています。また、頭2曲がジョン・レノン歌唱曲というのも、本作のロックンロール度を高める結果につながり、さらにポール・マッカートニーによる「All My Loving」まで怒涛の構成と言えるのではないでしょうか。

中盤に「Please Mr. Postman」「Roll Over Beethoven」といった定番カバーが良い味を出しており、さらに後半には「You Really Got A Hold On Me」というスタンダードも用意されている。そこからミック・ジャガーキース・リチャーズTHE ROLLING STONES)が提供したリンゴ・スター歌唱曲「I Wanna Be Your Man」へと続く構成といい、ゾクゾクする流れが構築されています。そして、ラストナンバーは定番カバー「Money (That's What I Want)」。完璧な1枚ですし、そりゃシングル曲がなくてもNo.1は獲得しますよね。

完成度的には前作以上なのですが、シングル曲がひとつも含まれていないこともあってか、セールスは前作より若干劣る結果に。それでもバンドとしての勢いは尋常じゃないものがあるし、ここからどう化けていくのかが楽しみになる1枚ではないでしょうか。

 


▼THE BEATLES『WITH THE BEATLES』
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2021年11月 7日 (日)

MELVINS『FIVE LEGGED DOG』(2021)

2021年10月15日にリリースされたMELVINSの25thアルバム。日本盤は同年10月20日発売。

バズ・オズボーン(G, Vo)、デイル・クローヴァー(Dr, B)、マイク・ディラード(Dr)からなる“MELVINS 1983”で制作された今年2月リリースの『WORKING WITH GOD』に続く、2021年2枚目のアルバムはアコースティックアレンジで再録された過去の楽曲群+カバー曲からなる2枚組作品。1987年の1stアルバム『GLUEY PORCH TREATMENTS』から2017年の22作目『A WALK WITH LOVE & DEATH』までを総括しつつ、それらをダウナーなアレンジで再構築するという、単なるベストアルバムでは収まらない内容となっています。

30年にもおよぶ歴史を普通に総括しようとしたら、録音時期や状態によって音源のクオリテイはまちまちかと思います。かつ、時期によってはメンバーも異なりますし。でも、ここでは現在の編成……バズ(G, Vo)、デイル(Dr)、スティーヴン・マクドナルド(B/REDD KROSS、OFF!)ですべての録音を行なっていることで統一感が生じている。その効果か、クレジットを見ないとどの曲がどの年代に作られたものかわからないほどに、すべての楽曲が見事に“馴染んでいる”んです。

こうやってシンプルな編成で演奏することで、改めてMELVINSの楽曲がどれだけ後続のグランジ勢に影響を与えたのかが明白にもなります。NIRVANAをはもちろんのこと、曲によってはSOUNDGARDENALICE IN CHAINSとの共通点も見つけられる。どれだけオリジナリティに満ち溢れた存在だったかが、ご理解いただけると思います。

と同時に、どの曲も2021年の耳で聴いても古臭く感じられず、むしろ普遍性の強さを再発見できる。それはメンバーの演奏力、表現力の賜物でもあるわけですが、それ以上に楽曲自体が持つパワーがいかに尋常じゃなかったかという証明でもあると思うのです。個人的には90年代前半、そこまで熱心に接してきたバンドではありませんでしたが、その影響力のすごさをこういう形で実感することになるとは、思いもしませんでした。

カバー曲も多彩で、REDD KROSS「Charlie」やFREE「Woman」、THE TURTLES「Outside Chance」、アリス・クーパー「Halo Of Flies」、THE ROLLING STONES「Sway」、BRAINIAC「Flypaper」、フレッド・ニール「Everybody’s Talking」と取り扱うジャンルも多岐にわたります。が、そのどれもが自身のオリジナル曲のごとく消化されており、中でもストーンズ「Sway」なんて90年代前半のアルバムに収録されていたと言われても信じてしまうくらい。ほかのオリジナル曲と間に挟まれても違和感なく、見事に馴染んでいます。

このアルバムを聴いて、改めて初期の諸作品に触れてみるのも良し。直近のオリジナルアルバムからさかのぼるもよし。もちろん、ここでのサウンドは企画色の強いものではありますが、その片鱗はその作品からも感じ取ることができますし、そもそも楽曲の素晴らしさ自体に変わりはないはずなので、いろんな時代の、いろんな編成のMELVINSを発見していただきたいと思います。

 


▼MELVINS『FIVE LEGGED DOG』
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2021年11月 6日 (土)

ICE NINE KILLS『WELCOME TO HORRORWOOD: THE SILVER SCREAM 2』(2021)

2021年10月15日にリリースされたICE NINE KILLSの6thアルバム。日本盤未発売。

ICE NINE KILLSは米・マサチューセッツ州ボストン出身の5人組メタルコア/デスコアバンド。2000年結成当初はICE NINE名義で活動を開始し、2006年の1stアルバム『LAST CHANCE TO MAKE AMENDS』から現在のバンド名に改名。3作目『THE PREDATOR BECOMES THE PREY』(2014年)から現在のFearless Recordsに所属し、ここ数作は著名小説やホラー映画をモチーフにした楽曲を制作して、注目を集めています。

本作はそのタイトル側からもわかるように、全米29位のスマッシュヒットを記録した前作『THE SILVER SCREAM』(2018年)の続編にあたる1枚。オープニングSE「Opening Night...」およびタイトルトラック「Welcome To Horrorwood」以外の12曲にはすべてモチーフとなるホラー映画が用意されており、そのタイトルも『キャビン・フィーバー』(2002年)、『チャイルド・プレイ』(1988年)、『サイコ』(1960年)、『ペット・セメタリー“(1989年)、『バイオハザード』(2002年)、『アメリカン・サイコ』(2000年)、『血のバレンタイン』(1981年。2009年にリメイク)、『ヘル・レイザー』(1987年)、『ザ・フライ』(1986年)、『ホステル』(2005年)、『死霊のはらわた』(1981年)、『キャンディマン』(1992年)と非常に幅広くピックアップされています。リメイク/リブートされた作品も複数含まれており、ホラー映画ファンなら誰もが知っているタイトルばかりですね。

各映画はあくまで歌詞や曲作りのベースとなっているだけで、その映画とリンクするサウンドかどうかはまた別の話。中には「Assault & Batteries」(元ネタ『チャイルド・プレイ』)や『Wurst Vacation』(元ネタ『ホステル』)のように映画の世界観とリンクした音作りやアレンジが施されたものもあり、そのへんはニヤリとさせられるものがあるかなと。まあ、基本的に映画のことを知らなくても楽曲自体は存分に楽しめる内容になっていると思います(かつ、MVではモチーフとなった映画のパロディもしっかり用意されているので、元ネタを知っているとさらに楽しめるのではないでしょうか)。

キャッチーを重視した芯が極太のメタルコアを軸に、随所にデスコア的フレイバーが散りばめられている。また、曲によっては(映画モチーフ曲が多いということもあってか)シンフォニックな要素も随所から感じられ、それらがこのバンドが本来持ち合わせたスケール感の大きさをより強調。結果、とてもわかりやすくて聴きやすい1枚に仕上がっているように感じます。テーマのキャッチーさや音楽的わかりやすさも相まって、本作は全米18位という近年のメタルコアバンドとしてはかなり好成績を残しているのも、頷ける話です(リリースタイミングがハロウィーン前というのもよかったですよね)。

また、アルバムには豪華ゲストも多数参加しており、「Hip To Be Scared」にはPAPA ROACHのジャコビー・シャディックス(Vo)が(この曲、途中で耳馴染みのあるフレーズが登場するのですが、タイトルを観て納得。HUEY LEWIS & THE NEWSのヒット曲「Hip To Be Square」のリフをパロっているんですね。笑)、「Take Your Pick」ではCANNIBAL CORPSEのコープスグラインダー(Vo)、「The Box」にはATREYUのブランドン・サーラー(Vo)とFIT FOR A KINGのライアン・カービー(Vo)、「F.L.Y.」にはSENSES FAILのバディ・ニールセン(Vo)がそれぞれの曲で華を添えています。それぞれのカラーに合った曲がしっかり用意されているので、どれも納得のコラボではないでしょうか。

アグレッシヴさやヘヴィさも抜群だし、同時にわかりやすさや親しみやすさも同じだけ備わっている。久しぶりにヒットするのも納得の1枚に出会えた気がします。USモダンメタルシーンもまだまだ捨てたもんじゃないですね。

 


▼ICE NINE KILLS『WELCOME TO HORRORWOOD: THE SILVER SCREAM 2』
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2021年11月 5日 (金)

STARSET『HORIZONS』(2021)

2021年10月22日にリリースされたSTARSETの4thアルバム。日本盤未発売。

前作『DIVISIONS』(2019年)から約2年ぶりの新作。バンドの代表作となった2ndアルバム『VESSELS』(2017年)に匹敵する、全16曲/71分という長尺な1枚に仕上がりました。

“シネマティック・ロックバンド”というコンセプトをそのまま具現化した、EDMなどエレクトロニックサウンドを全面にフィーチャーしたアレンジ/アンサンブルと、伸びやかでキャッチーなメロディが武器の本作。もはやメタルコアだとかDjent(ジェント)だとかハードロックだとか、それこそエレクトロニックミュージックだとかいった細かいジャンル分けが不必要なほど、独自のスタイルが確立されています。

ギターサウンドはある程度強く打ち出されているものの、それ以上耳に残るのはシンセや歌メロのほう。壮大さを伴うアンサンブルは過去イチの作り込みで、リズムトラック(時にそれは生ドラムであり、ある時には打ち込みでもある)のEDMにも通ずる強力な重低音で地盤を固めているから、どの曲も安定感が強い。かつ、曲と曲をシームレスにつなぐ工夫(ナレーションだったり、シンセなどによるインタールードだったり)が非常に凝っており、コンセプトアルバムというよりはひとつのロックオペラを聴いているような錯覚に陥る。このへんも過去作同様ではあるものの、作り込みの度合いが過去イチ。どれだけ気合い入れたんだって話ですよ。

前作『DIVISIONS』は大きな変化を伴う1枚ということで、一部のファンからは不評だったと耳にします。しかし、その延長線上にありながらネクストレベルへと到達した今作は、問答無用の内容ではないでしょうか。

個人的には序盤の「Icarus」〜「Earthrise」への流れが圧巻だと感じています。中でも後者の完成度は非常に高いものがあり、この手のバンドの楽曲ではスリリングさとキャッチーさのバランスが非常に絶妙。あとあと調べたらやはりというか、アルバムリリース直近のリードシングルとして先行配信されています。

この手のサウンドはBRING ME THE HORIZON以降、いたる場面で耳にしますが、ひとつのコンセプトに基づきメタリックな側面とエレクトロニックな側面を両立させ、かつ分断することなく自然な形でミックスできるという点において、STARSETのこの新作はひとつの極みと言えるのではないでしょうか。モダンなサウンドに抵抗がなく、かつ歌ものラウドロックを愛聴するリスナーにはうってつけの1枚。実に2021年らしい良作だと思います。

 


▼STARSET『HORIZONS』
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2021年11月 4日 (木)

BLACK VEIL BRIDES『THE PHANTOM TOMORROW』(2021)

2021年10月29日にリリースされたBLACK VEIL BRIDESの6thアルバム。日本盤未発売。

1stアルバム『WE STITCH THESE WOUNDS』(2010年)のリメイク作『RE-STITCH THESE WOUNDS』(2020年)やアンディ・ブラック(アンディ・ビアサック/Vo)のソロアルバム『THE GHOST OF OHIO』(2019年)はあったものの、バンドのオリジナル新作としては『VALE』(2018年)以来3年9ヶ月ぶり。『RE-STITCH THESE WOUNDS』からメジャーのLava / Universal Republicを離れ名門インディーズレーベルSumerian Recordsへと移籍しており、今作がSumerianから初のオリジナル新作となります。

今作は『WRECHED AND DIVINE: THE STORY OF THE WILD ONES』(2013年)や前作『VALE』に続くコンセプトアルバム。1分少々のイントロダクションやインタールードを挟みつつ、3〜4分台の楽曲を中心に全12曲41分というコンパクトな形で「空想上の世界における、追放者とその世界を収めるミステリアスなヒーロー」の物語が進行していきます。

サウンドや楽曲スタイル自体はこれまでの延長線上にある、ゴシック感を散りばめたメロディアスな王道ハードロック。適度なヘヴィさを伴いつつも、全編を通じてメランコリックな要素が強く、過去作以上にスルスル聴き進められる1枚ではないでしょうか。

ただ、そのぶん刺激的要素は少なく、極度なダークさやアグレッシヴさを求めると肩透かしを喰らうかもしません。また、「これ!」といったキラーチューンが見当たらないのも気になるところ。どの曲も平均点は軽く超えているものの、アルバム1枚通して聴いたときに「これが特別だった」と記憶に残るものがあまりない(「Crimson Skies」は相当いい線いってますけどね)。特にこのバンドの場合、ここ数作はそういった課題が常につきまとっており、今作でもその課題をクリアすることはできていないようです。残念。

そのルックスやビジュアルから破天荒な印象を受けるものの、思いのほか品行方正な正統派ハードロック。モダンヘヴィネス以降のテイストも味付けとして取り入れられているので、正統派といってもそこまで古臭くは感じられない。そのへんを意識して接すると、そこそこ楽しめるのではないでしょうか(そういった意味ではSIXX:A.M.あたりと同じ匂いを感じますよね)。

デビュー時は新たなダークヒーロー登場といった形で、若年層から強い支持を獲得した彼らも、今や10年選手。あの頃バンドを応援していたティーンエイジャーもすでに20代後半なのかな。となったときに、今のこのバンドを支持する層がどのあたりになるのかが気になります。デビュー以来、アルバムは常に全米TOP40入り(2ndアルバム『SET THE WORLD ON FIRE』(2011年)以降はすべてTOP20入り)してきた彼らですが、ロック低迷期のアメリカで本作がどこまで検討するのか、注目しておきたいと思います。

 


▼BLACK VEIL BRIDES『THE PHANTOM TOMORROW』
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2021年11月 3日 (水)

MASTODON『HUSHED AND GRIM』(2021)

2021年10月29日にリリースされたMASTODONの8thアルバム。日本盤未発売。

レアトラック集『MEDIUM RARITIES』(2020年)を間に挟んでいるとはいえ、オリジナルアルバムとしては『EMPEROR OF SAND』(2017年)からおよそ4年半ぶりの新作。しかも、バンド史上初のCD2枚組、トータル86分という非常にボリューミーな作品を届けてくれました。

プロデューサーには前作でのブレンダン・オブライエン(AC/DCPEARL JAMRAGE AGAINST THE MACHINEなど)から、新たにデヴィッド・ボトリル(KING CRIMSONMUSE、TOOLなど)を起用。2ndアルバム『LEVIATHAN』(2004年)以降すべての作品にゲスト参加してきたスコット・ケリー(Vo/NEUROSIS)をフィーチャーしておらず、代わりにTHE CLAYPOOL LENNON DELIRIUM(PRIMUSのレス・クレイプール、ショーン・レノンなどによるサイケデリックロックバンド)のジョアン・ノゲイラ(Key)、THE MARCUS KING BANDのマーカス・キング(G)、DENY THE CROSSのデイヴ・ウィット(Per)、SOUNDGARDENのキム・セイル(G)など多数のプレイヤーをゲストに迎えています。

ちょうどコロナ禍ということもあり、じっくり腰を据えて1年以上を制作に費やしたという本作。それ以前に、長年のマネージャーでありメンバーの親友でもあるニック・ジョンが2018年9月に亡くなったこともあり、バンドにとってはかなりつらい時期だったことも楽曲制作に少なからず反映されているようです。ダークさや悲哀に満ちたサウンドやメロディ、ダイナミックなアレンジや泣きメロが強調されたギターソロなどからはそういった喪失感も伝わってきます。

思えば、彼らのアルバムにはそういった喪失感が反映されたものが複数存在しています。ブラン・デイラー(Dr, Vo)が妹の死と直面した『CRACK THE SKYE』(2009年)、ブレント・ハインズ(Vo, G)の亡き兄に捧げた『THE HUNTER』(2011年)、そしてトロイ・サンダース(Vo, B)の妻が癌と闘うことで「生と死」と向き合うことになった前作『EMPEROR OF SAND』……MASTODONの作品にとって「生きること」そして「死と実直に向き合うこと」は非常に重要なファクターと言えるでしょう。

「静まり返る」という意味を持つアルバムタイトルと、死んだ人間の魂を吸い込む木が描かれたアートワーク。全編ヘヴィ&サイケデリック一辺倒というわけではなく、時にメランコリック&メロディアスなスタイルで聴き手を惹きつけ(「Skeleton Of Splendor」「Eyes Of Serpents」など)、時にパンキッシュに疾走する(「Peace And Tranquility」「Savage Lands」)。またある時にはサーランギーをフィーチャーして(「Dagger」)、より神秘的な世界観を作り上げる(「Had It All」)。大半の楽曲が5〜6分台と比較的長尺で、歌のみならず演奏で起伏を付けるスタイルはこれまで同様。曲によってはプログメタルとの共通点も見受けられるでしょう。しかし、そういった限定的な枠に収まることなく、不思議な心地よさと躍動感、そして胸を締め付けるようなエモさなど、曲によってさまざまな表情を見せてくれる。特に今作においては、「Gobblers Of Dregs」でポジティブさが伝わる世界観を描いて、ドラマチックにアルバムを締め括るところがこれまでの作品とは一線を画するところ。複数の悲しい出来事を経て、前を向いて進もうとするバンドの強い意志が伝わる、感動的なエンディングではないでしょうか。

90分近い大作なので、完全に聴き込み反芻し終えるまでに相当な時間を要する作品ですが(思えばこれまでのMASTODONの諸作品も、そういった類のアルバムでしたが)、聴けば聴くほど深みにハマっていく、そんな無限の魅力を秘めた作品集。個人的には前作がバンドにおけるピークだと思っていましたが、ここにきて彼らは次のステップに進み、新たな高みを目指そうとしていることが伝わってくる、そんな意欲的な力作です。

 


▼MASTODON『HUSHED AND GRIM』
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2021年11月 2日 (火)

JERRY CANTRELL『BRIGHTEN』(2021)

2021年10月29日にリリースされたジェリー・カントレルの3rdアルバム。日本盤未発売。

ALICE IN CHAINSのギタリスト兼ボーカリストのジェリーですが、バンド活動が休止していた1998年に初のソロアルバム『BOGGY DEPOT』、2002年に『DEGRADATION TRIP』(同作発売から半年後に未発表のディスク2をつけた『DEGRADATION TRIP VOLUME 1&2』も発表)の2作品を発表。その後は新編成でのALICE IN CHAINSが始動したこともあり、ソロとは無縁でした。

このたび19年ぶりに制作されたソロ3作目は、バンドの状態が良好なこともあり、気心知れた仲間と息抜きのつもりで作った1枚といったところでしょうか。共同プロデューサーにホラー映画のサウンドトラック制作やMARILYN MANSONとの共作でも知られるタイラー・ベイツを迎え、レコーディングはダフ・マッケイガン(B/GUNS N' ROSES)、ギル・シャロン(Dr/STOLEN BABIES、TEAM SLEEP、ex. THE DILLINGER ESCAPE PLANなど)、エイブ・ラボリエルJR.(Dr/ポール・マッカートニーエリック・クラプトンなど)、グレッグ・プチアート(Cho/KILLER BE KILLED、THE BLACK QUEEN、ex. THE DILLINGER ESCAPE PLANなど)といったメンツで実施されました。

ALICE IN CHAINSが現存していることから、本作ではそちら側のダークなサウンドや不協和音ハーモニーを無理に全面に押し出すこともなく、もっと肩の力の抜けたアーシーなロックが中心。といっても、そこはグランジ畑出身のジェリーらしく、随所にオルタナティヴなテイストが散りばめられており、それによってごく一般的なアメリカンロックに収まることのない、独自性の強い“グランジ以降のUSロック”が展開されています。

例えば、ALICE IN CHAINSでいうところの『SAP』(1992年)『JAR OF FLIES』(1994年)で試みた、アコースティック色の強い楽曲群。それらをもとにした、3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)の一部側面。そして、『MTV UNPLUGGED』(1996年)……振り返れば本作への布石は、活動初期から用意されていました。そして、こういったテイストはソロ活動にも引き継がれ、過去2作でもその一部で取り入れられていました。だから、こういったライトな作風になったからといって彼が日和ったわけではないのです。

もちろん、「Siren Song」「Had To Know」のようなALICE IN CHAINSのダークサイドの流れにある楽曲も、あるにはあります。が、バンドではこのテイストがメインなところを、ソロ3作目ではアクセントとして使用している。しかもそこまで重苦しくないから、このアルバムの流れで聴いても違和感なく楽しめる。

アルバムのラストには、2分にも満たないエルトン・ジョンのカバー「Goodbye」を用意。この穏やかさこそ、彼がソロで表現したかったことそのものではないでしょうか。バンドでの先鋭的な刺激や緊張感の強いプレイこそないものの、再結成以降のALICE IN CHAINSを好意的に捉えているリスナーなら問題なく楽しめるはずだし、グランジが本格的に勃発した1991年から30年を経て表現される、“大人になったグランジ”と言えなくもない。そういった意味では、実に2021年らしい1枚かもしれませんね。

 


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2021年11月 1日 (月)

LIMP BIZKIT『STILL SUCKS』(2021)

2021年10月31日にリリースされたLIMP BIZKITの6thアルバム。現時点ではデジタルリリースのみで、日本盤未発売。

9月30日に突如配信された7年ぶりの新曲「Dad Vibes」を経て早くも登場した本作は、リリース数日前に「ハロウィーンに配信」されることがアナウンス。前作『GOLD COBRA』(2011年)から10年ぶりのフルアルバムが、思いもよらないタイミングに我々の手元に届けられることとなりました。

全12曲で32分という比較的短い尺の本作には、リード曲「Dad Vibes」は含むものの、それ以前に発表された「Lightz (City Of Angels)」「Ready To Go」「Endless Slaughter」、そしてMINISTRYのカバー「Thieves」は未収録。つまり、「Dad Vibes」以外の11曲はここで初めて耳にする完全新曲であり、噂されていた『STAMPEDE OF THE DISCO ELEPHANTS』とは別モノのようです。そりゃ前作から10年も要したんだから、曲はいくらでもあるだろうしね。

プロデューサーは初期3作などを手がけたロス・ロビンソン。「Out Of Style」「Dirty Rotten Bizkit」と冒頭2曲は黄金期のLIMP BIZKIT(2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)や3rdアルバム『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』(2000年))の流れを汲むニューメタルサウンドで、期待通りの仕上がり。そこから「Dad Vibes」で流れを変え、ジャジーなヒップホップ調「Turn It Up, Bitch」、アコースティックの歌モノバラード「Don't Change」、サイケデリックメタル「You Bring Out The Worst In Me」とバラエティ豊かな楽曲が続きます。

1stアルバム『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(1997年)でみせた狂気性は薄らいでいるし、なんなら『SIGNIFICANT OTHER』や『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』での無敵感からも遠のき始めている。でも、どの曲も聴けばLIMP BIZKITそのもの。そりゃあブレイクしていた頃から20年も歳月を重ねているんだから、誰しも歳は取ります。フレッド・ダースト(Vo)だってあの風貌ですし。だけど、ウェス・ボーランド(G)の鋭角的なギタープレイは変わらずクールだし、ダム・リヴァース(B)&ジョン・オットー(Dr)が繰り出すヘヴィ&グルーヴィーなリズムも最高で、DJリーサル(Turntables)も随所で“らしさ”をアピールしている。フレッドはラップよりも歌うことに比重を置いているものの、聴けば彼だとわかるボーカルを楽しむことができる。つまり、どこからどう切り取ってもLIMP BIZKITにほかならないのです。

『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』のあとにこのアルバムが届けられていたらちょっと動揺するけど、ウェス不在の『RESULTS MAY VARY』(2003年)や、ウェス復帰後のEP『THE UNQUESTIONABLE TRUTH (PART 1)』(2005年)などを経たからこそ、今作を素直に受け入れることができる。軸となるスタイルは変えることなく、少しずつ幅を広げた結果、「ニューメタルの20年後」みたいなこのアルバムが完成したわけですから、至極真っ当な「進化の続き」なんだと思います。

うん、個人的には全然アリな1枚。今作から『RESULTS MAY VARY』や『GOLD COBRA』に戻っていったら、実は素直に受け入れられることができるんじゃないか。そんなきっかけを作ってくれそうな良作です。

 


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