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2021年11月22日 (月)

ENUFF Z'NUFF『HARDROCK NITE』(2021)

2021年11月12日にリリースされたENUFF Z'NUFFの最新カバーアルバム。日本盤未発売。

スタジオアルバムとしては昨年7月発売のオリジナル作品『BRAINWASHED GENERATION』(2020年)に続く新作。カバーアルバムは過去にも『COVERED IN GOLD』(2014年)と題したカバーコンピが存在しましたが、今回はビートルズナンバー、およびポール・マッカートニー(WINGS含む)とジョン・レノンのソロ楽曲から厳選された10曲を録り下ろし。すべの楽曲においてチップ・ズナフ(Vo, B)がリードボーカルを担当しています。

ザーッと聴いた印象では、パワーポップのルーツとしてビートルズをカバーするのではなく、ビートルズ周辺楽曲を題材にハードロックアルバムを作るという方向性かしら。ミックスの硬質感であったりアレンジに詰め方でったりが、以前の彼らと比べたら雑なんですよね。安直にハードロック風に焼き直しました、という感じとでもいいましょうか。

オープニング曲「Magical Mystery Tour」のイントロでちょっとしたコラージュ的遊びが飛び出すものの、その後の楽曲自体はストレートにハードロック色強めにカバーした印象。続く「Cold Turkey」も原曲自体がブルースロック的なのもあって、完全にハードロックのそれですし。かと思えば、味付けのしようが如何様にもあるであろう「Eleanor Rigby」までもがド直球のハードロックアレンジ。もっとほかにあっただろうに……。

以降もGUNS N' ROSESで手垢が付きまくりの「Live And Let Die」を、イントロで無駄にドラマチックにしようとするも失敗していたり、原曲よりもヘヴィではない「Helter Skelter」、唯一パワーポップ寄りな「Jet」、なんのひねりもない「Revolution」や「Back In The U.S.S.R」などが続きます……これまで無数ものビートルズHRカバー集が世に放たれましたが、それらと比べても工夫がなさすぎて評価に困るといいますか。

そんな中で、サイケデリックロック色を強めることでらしさが垣間見える「Dear Prudence」、ジョー・コッカー版アレンジでカバーした「Witha A Little Help From My Friends」あたりは特筆しておいてもいいかな、という仕上がり。前者はまあそうなるか……感が否めなくもないけど、このアルバムの中ではハイライトっぽい仕上がり。そして、アルバムの最後を締め括る後者は、このアレンジ自体BON JOVIやらTHUNDERも取り上げているのでHR/HMリスナーには新鮮味ゼロだけど、この流れの中ではフックになっているのではないでしょうか。

というわけで、なぜこんな作品をこのタイミングに制作して世に出そうと思ったのかは謎。彼らの名前くらいしか知らない人は無理して聴く必要もない、完全なファンアイテム。ビートルズのカバーを収集しているコアファンからどんなリアクションがあるのか、正直怖いくらいに平凡な“お遊び”盤。完全オリジナルの新作にボーナスディスクとしてくっ付けるでちょうどよかったんじゃないでしょうか。残念です。

 


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