« ビートルズの初期作品を振り返る①(1963年編) | トップページ | RADIOHEAD『KID A MNESIA』(2021) »

2021年11月 9日 (火)

ABBA『VOYAGE』(2021)

自分が生きているうちにABBAの完全新作を聴く日が訪れるとは、思いもしなかった。新曲ですら聴けるなんて想像もしていなかったのに。

ABBAは物心ついた頃からすでにポップスの王様のような存在で、小学生ながらに「Dancing Queen」をはじめとするヒット曲のいくつかは耳にしていた。自ら率先して聴こうと思わなくても、ラジオやテレビを通じて彼らの楽曲には触れていたので、初めてアルバムに手を伸ばしたのはメガヒットを記録した『ABBA GOLD』(1992年)が最初だったと記憶している。リアルタイムで初めて接した、ABBAの最新ベストアルバムでしたし、イギリスではアホほど売れた1枚ですからね(当時『BEAT UK』のアルバムチャートで常に1位だった記憶が)。

そこから数えても29年。通算9作目にあたる完全新作の誕生です。2021年11月5日、サブスク配信を我慢して我が家にCDが届くのを待って、同日夜にようやくCDを再生しました。

……うん、どこからどこまでも、完璧なまでにABBAそのもの。40年という歳月を無視して、人工的に寄せるわけでもなく、非常にナチュラルな形でABBAが“再生”されているのです。お見事。

何十年ぶりの再結成とか、再結成後のアルバムというのは黄金期を人工的に再現しようとする意思が働いたり、あるいは解散前とは違った形で今を表現しようとするなど、作り手側の意思が大きく作用した作品が届けられることが少なくありません。そして、その意思がときに悪い方向に影響し、結果的に「っぽいもの」で終わってしまう。この匙加減が非常に難しく、再結成後に記憶に残る作品を作り上げたバンドは非常に少ないような気がします。

ところが、ABBAの場合はどうでしょう。どこまでもナチュラルであり、むしろ「これしか書けない/作れないし」という開き直りに似た、「どこまでいってもABBA」という事実を受け入れた楽曲とアレンジ、歌唱が凝縮されている。そりゃあ40年という月日の流れによる加齢は要所要所から感じられますが、それすら真正面から受け入れているように感じられる(アバターを使ったライブはまた別の話ですが。笑)。ABBAがABBAであることを引き受けた、というよりは「この4人が揃って音楽をやったら、自然とこうなっちゃう」が正解なのかもしれません。

先行シングルの「I Still Have Faith In You」や「Don't Shut Me Down」を初めて聴いたときのトキメキは、ほかのアルバム曲からも同様に伝わってきます。「Just A Notion」のように解散前のアウトテイクを形にしたものもありますが、それ以外も時代を超越したスタンダードとなり得るものばかり。アルバムを通して聴くと、「Little Things」から「Don't Shut Me Down」への流れがまるで組曲のようにも感じられ、アルバムであることに拘った作りにも感銘を受けます。

変に曲を作りすぎず、10曲で40分以内という古き良き時代のフォーマットでまとまっていることにも好感を受けますし、そういった事実がサブスク全盛の2021年にどう伝わるのかも気になるところ。流行に左右されることなく首尾一貫スタンダードなポップスを追求する本作が、今年の音楽シーンにおいてどれだけ重要視されるのか、そしてこの先どういう扱いを受けるのか。ぜひ注目し続けたいと思います。

 


▼ABBA『VOYAGE』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 国内盤CD+2DVD / 海外盤CD / 海外デラックス盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« ビートルズの初期作品を振り返る①(1963年編) | トップページ | RADIOHEAD『KID A MNESIA』(2021) »

2021年の作品」カテゴリの記事

ABBA」カテゴリの記事

カテゴリー