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2021年11月24日 (水)

KISS『MUSIC FROM "THE ELDER"』(1981)

1981年11月10日にリリースされたKISSの9thアルバム。

ディスコやソウルに傾倒した異色作『DYNASTY』(1979年)、『UNMASKED』(1980年)を経て届けられたのは、KISS初のコンセプトアルバム。当初、ジーン・シモンズ(Vo, B)原案の『THE ELDER』という映画が計画され、その映画のために楽曲制作を行なっていたのですが、映画が頓挫してしまい音楽だけが残った。そこでジーン(とバンドのマネージャー)は残った曲をどうにか生かそうということで、ほかのメンバーの反対を押し切ってアルバムを制作/発表することになった。これがKISS史上もっとも異色なアルバムの成り立ちです。

出世作『DESTROYER』(1976年)を手がけたボブ・エズリン(ALICE COOPERPINK FLOYDHANOI ROCKSなど)を再度プロデューサーに迎えたは、アルバムの冒頭&エンディングや曲間にインストゥルメンタル曲を挟むなどして、ストーリー性を重視したシームレスな作風に仕上げられています。ジーンが再度ボブ・エズリンを起用した理由は、『DESTROYER』でボブが施したファンタジー色の強いドラマチックなアレンジを求めたから。実際、このアルバムではそういったドラマ性が随所から感じられ、バンド本来がもつハードロックテイストと見事にマッチしているように映ります。

ただ、そのハードロックテイストは我々がイメージする“豪快なアメリカンロック”からはほど遠く、繊細さが色濃く表れた、どちらかというとヨーロピアンなテイストかなと。そういう意味では初期のロックンロールとも、『DESTROYER』以降のハードロック路線とも、そして直近のソウル/ポップ路線とも大きくことなる。そりゃあファンは「こんなのKISSじゃない!」と騒ぐわけです。

ただ、完全後追いの我々世代は前情報でイメージが出来上がってしまい、聴くのを躊躇していたものの、こうやって改めて耳を傾けると……意外に良いんです。こういうKISSも悪くない、と素直に思えます。ただ、ジーンがノリノリな一方で、ポール・スタンレー(Vo, G)は影が薄い気がします。

初出時のアナログ盤と現行のCDや配信版とでは、曲順や(短尺のインストを続く歌モノとくっつけてカウントするなどして)曲数が少し異なります。現行版は全11曲でインスト2曲、ジーン歌唱曲が3曲、ポール歌唱曲3曲、エース・フレーリー(G, Vo)歌唱曲1曲、ジーン&ポール歌唱曲2曲という内訳。こうやって数字で見ると均等なんですけど、不思議とジーンの印象が強いのはなぜでしょうね(ポールが声を張り上げず、抑え気味のトーンで歌っている曲が序盤に続くも大きいのかな)。

また、前作制作にほとんど参加していなかったピーター・クリス(Dr, Vo)に代わり加入したエリック・カー(Dr)にとっては、本作が初めてのレコーディング作品。せっかく花形と言えるようなバンドに加入したのに、最初がこれっていうのも可哀想というか……。

シングルカットされた「A World Without Heroes」は『UNMASKED』からの流れを引き継いだテイストも感じられるし、ポールがらしさを発揮するハードロック路線「The Oath」は次作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)への伏線にも受け取れる。エースが歌う「Dark Light」のヘロヘロぶりも相変わらずだし、インストながらもKISSらしいスリリングな演奏が楽しめる「Escape From The Island」、アルバムを豪快に締め括るラストナンバー「I」など、曲単位でピックアップすれば印象的なものも多い。KISSの名の下で楽しもうとすると変な意識が働いてしまうかもしれないけど、これはこれでよくできたアルバムではないでしょうか。

チャート的には「A World Without Heroes」が最高56位という成績を残してはいますが、アルバム自体は全米75位と惨敗。しかし、そういった記録とは関係なしに、リリースから40年を経た今こそ正当に評価されるべき隠れた良作だと思います

 


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