MASTODON『HUSHED AND GRIM』(2021)
2021年10月29日にリリースされたMASTODONの8thアルバム。日本盤未発売。
レアトラック集『MEDIUM RARITIES』(2020年)を間に挟んでいるとはいえ、オリジナルアルバムとしては『EMPEROR OF SAND』(2017年)からおよそ4年半ぶりの新作。しかも、バンド史上初のCD2枚組、トータル86分という非常にボリューミーな作品を届けてくれました。
プロデューサーには前作でのブレンダン・オブライエン(AC/DC、PEARL JAM、RAGE AGAINST THE MACHINEなど)から、新たにデヴィッド・ボトリル(KING CRIMSON、MUSE、TOOLなど)を起用。2ndアルバム『LEVIATHAN』(2004年)以降すべての作品にゲスト参加してきたスコット・ケリー(Vo/NEUROSIS)をフィーチャーしておらず、代わりにTHE CLAYPOOL LENNON DELIRIUM(PRIMUSのレス・クレイプール、ショーン・レノンなどによるサイケデリックロックバンド)のジョアン・ノゲイラ(Key)、THE MARCUS KING BANDのマーカス・キング(G)、DENY THE CROSSのデイヴ・ウィット(Per)、SOUNDGARDENのキム・セイル(G)など多数のプレイヤーをゲストに迎えています。
ちょうどコロナ禍ということもあり、じっくり腰を据えて1年以上を制作に費やしたという本作。それ以前に、長年のマネージャーでありメンバーの親友でもあるニック・ジョンが2018年9月に亡くなったこともあり、バンドにとってはかなりつらい時期だったことも楽曲制作に少なからず反映されているようです。ダークさや悲哀に満ちたサウンドやメロディ、ダイナミックなアレンジや泣きメロが強調されたギターソロなどからはそういった喪失感も伝わってきます。
思えば、彼らのアルバムにはそういった喪失感が反映されたものが複数存在しています。ブラン・デイラー(Dr, Vo)が妹の死と直面した『CRACK THE SKYE』(2009年)、ブレント・ハインズ(Vo, G)の亡き兄に捧げた『THE HUNTER』(2011年)、そしてトロイ・サンダース(Vo, B)の妻が癌と闘うことで「生と死」と向き合うことになった前作『EMPEROR OF SAND』……MASTODONの作品にとって「生きること」そして「死と実直に向き合うこと」は非常に重要なファクターと言えるでしょう。
「静まり返る」という意味を持つアルバムタイトルと、死んだ人間の魂を吸い込む木が描かれたアートワーク。全編ヘヴィ&サイケデリック一辺倒というわけではなく、時にメランコリック&メロディアスなスタイルで聴き手を惹きつけ(「Skeleton Of Splendor」「Eyes Of Serpents」など)、時にパンキッシュに疾走する(「Peace And Tranquility」「Savage Lands」)。またある時にはサーランギーをフィーチャーして(「Dagger」)、より神秘的な世界観を作り上げる(「Had It All」)。大半の楽曲が5〜6分台と比較的長尺で、歌のみならず演奏で起伏を付けるスタイルはこれまで同様。曲によってはプログメタルとの共通点も見受けられるでしょう。しかし、そういった限定的な枠に収まることなく、不思議な心地よさと躍動感、そして胸を締め付けるようなエモさなど、曲によってさまざまな表情を見せてくれる。特に今作においては、「Gobblers Of Dregs」でポジティブさが伝わる世界観を描いて、ドラマチックにアルバムを締め括るところがこれまでの作品とは一線を画するところ。複数の悲しい出来事を経て、前を向いて進もうとするバンドの強い意志が伝わる、感動的なエンディングではないでしょうか。
90分近い大作なので、完全に聴き込み反芻し終えるまでに相当な時間を要する作品ですが(思えばこれまでのMASTODONの諸作品も、そういった類のアルバムでしたが)、聴けば聴くほど深みにハマっていく、そんな無限の魅力を秘めた作品集。個人的には前作がバンドにおけるピークだと思っていましたが、ここにきて彼らは次のステップに進み、新たな高みを目指そうとしていることが伝わってくる、そんな意欲的な力作です。
▼MASTODON『HUSHED AND GRIM』
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