« BOSTON MANOR『DESPERATE TIMES DESPERATE PLEASURES』(2021) | トップページ | SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(2021) »

2021年12月26日 (日)

CARCASS『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』(1991)

1991年10月30日にリリースされたCARCASSの3rdアルバム。日本盤は『屍体愛好癖』というクセの強い邦題で、1992年4月21日発売。

ジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)、ケン・ウォーエン(Dr)というデビュー時からのトリオ編成に、現ARCH ENEMYのマイケル・アモット(G)が加入(1990年)し、ツインギター編成になったCARCASS最初のアルバム。このアルバムで彼らのことを知ったというリスナーも少なくないかもしれません(筆者も本作の日本盤リリースを機に、初めてCARCASSに触れたクチです)。

サウンド的には初期のグラインドコア〜ゴアグラインドから、次作『HEARTWORK』(1993年)で本格的開花するメロディックデスメタル路線への過渡期にある内容。その独特の雰囲気・曲構成は最初こそ好き嫌いが分かれそうですが、一度ハマってしまうとクセになる不思議な魅力が備わっています。

1曲の中で何度も繰り返される強引なテンポチェンジには、やや唐突さを感じずにはいられませんが、実はその突拍子のなさこそがこの時期のCARCASSの魅力。ある意味ではプログレッシヴとも受け取ることができ、このへんの複雑なアレンジはNWOBHM期のUKメタルバンドと共通するテイストを感じずにはいられません。

しかも、バンドの土台となるケン・ウォーエンのドラミングのクセが強すぎて、リズムの独特な“揺れ”や“スウィング感”が唯一無二のグルーヴを作り上げている。もちろんこれは前向きに捉えた表現ですが、ネガティブな表現をすれば……いや、やめておきましょう(苦笑)。結果として、ケンのドラミングを見事に生かしたからこそ、こうした独自性の強いアンサンブルが生まれたわけで、それこそが90年代前半のCARCASSにとって大きな武器になったわけですから。

この時期はまだビルも要所要所でボーカルを披露していましたが、次作以降はギタリストに専念。音楽性のみならず、バンドスタイルとしても本作は過渡期にある1枚でした。だけど、マイケルが加入したことで迎えた転換期は、のちの彼らにとって非常に大きなチャンスになるわけですから。世の中何が起こるかわかりません。

「Corporal Jigsore Quandary」や「Incarnated Solvent Abuse」など現在まで演奏され続けている名曲を多く含む本作ですが、曲間にナレーションを挟むことで若干テンションが落ちるという声もあります。確かに、あのSEなしで曲が次々に続いていく構成のほうが緊張感が途切れることなく楽しめるかもしれません。だけど、個人的にはあのSEあってこそ、彼らならではの不穏な空気を終始纏うことができているのではないか、とポジティブに解釈しています。特に、本作の収録曲はそれまでの彼らから考えると1曲の尺が非常に長くなっており、6〜7分台の楽曲が過半数を占めます。そういった楽曲を飽きさせずにリスナーを惹きつけるという点でも、あのナレーション/SEは必要だったと信じています。

聴きやすさ/入門編としては次作『HEARTWORK』が最適だと思いますが、CARCASSの真髄を知るという点においてはまず今作を聴くべきではないでしょうか。そこから『HEARTWORK』以降の作品に進むもよし、逆に勇気を持って初期のグロ路線に一歩踏み出してみるもよし(笑)。

 


▼CARCASS『NECROTICISM - DESCANTING THE INSALUBRIOUS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« BOSTON MANOR『DESPERATE TIMES DESPERATE PLEASURES』(2021) | トップページ | SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(2021) »

1991年の作品」カテゴリの記事

Arch Enemy」カテゴリの記事

Carcass」カテゴリの記事

カテゴリー