DAVID BOWIE『TOY (TOY:BOX)』(2022)
2022年1月7日にリリースされたデヴィッド・ボウイの3枚組未発表音源集。日本盤は同年1月12日発売。
本作は当初、『TOY』というタイトルで2001年3月にリリースを予定していたものの、当時のレーベル(Virgin Records)から発売を拒否されたことからお蔵入りに。その後Virginを離れ、本作に収録されたトラックのいくつかを元にしながら、新たなアルバムとして完成されたのがトニー・ヴィスコンティをプロデューサーに迎えた『HEATHEN』(2002年)でした。
『'hours…'』(1999年)で原点回帰とも言えるスタイルに立ち返り、同作を携えて2000年初夏の『Glastonberry Festival』でヘッドライナーを務めたボウイは、その手応えを抱えたままツアーメンバーと同年夏〜秋にスタジオ入り。活動初期の楽曲(主に「Space Oddity」でのブレイク前中心)を今のボウイの技術とこのバンドメンバーの演奏/アレンジ力で表現したらどうなるか……それが『TOY』と題されたアルバムのテーマでした。
アルバムのプロデュースを手がけたのは、『'hours…'』から引き続きマーク・プラティとボウイ自身。レコーディングにはアール・スリック(G)、ゲイル・アン・ドロシー(B)、マイク・ガーソン(Key)、スターリング・キャンベル(Dr)とお馴染みの面々が参加し、ストリングスアレンジではトニー・ヴィスコンティの名前も見つけることができます。作品のテイスト的には『'hours…'』と『HEATHEN』の中間と言えるもので、まさにこの2作の間に制作されることがわかる、両作の橋渡し的内容と言えるもの。シンプルなバンドアンサンブルで表現された良曲の数々は、確かにボウイらしい革新的な要素や派手さこそ皆無ですが、制作から20年以上経った今聴いてもまったく色褪せることのないものばかり。もっと言えば、楽曲自体は50年以上前に制作されたものなわけで、そこを差し引いても正真正銘のエヴァーグリーンな名曲集と言えるでしょう。
ボウイは本作を“サプライズリリース”したかったようですが、当時の体制では今みたいにノンプロモーションで突然市場にアルバムを出荷することは不可能に近かった。さらに、当時のレーベルは枯れに枯れまくった本作をどう売っていいかわからなかった。いろんな意味で“早すぎた”アルバムだったのかもしれませんね。しかし、当時53歳のボウイにとって音楽人生および一人の人間として折り返しに入ったタイミングに、ある種懐古的な作品に着手したというのも興味深い話であり、真の意味での次のステップを踏み出す前に絶対的に必要な作業だったのかもしれません。
収録された12曲の大半は、すでに『HEATHEN』のデラックス盤やシングルのカップリング、ベストアルバム『NOTHING HAS CHANGED』(2014年)などで公開されてましたし、2011年にリークされたバージョンとは内容が少々異なります。ですが、(ボウイ死後の編集されたとはいえ)今回の12曲入りバージョンこそが真の意味での『TOY』として受け取ることにしておきます。
なお、本作は3枚組ボックスに先駆けて、アルバム本編(12曲)が2021年11月26日にボックスセット『BRILLIANT ADVENTURE (1992-2001)』の一部として先行リリース。今回発売されたのはアルバム本編を収めたDISC 1、本編から漏れた「Liza Jane」「In The Heat Of The Morning」のほか『TOY』収録曲の別バーションを収めたDISC 2、アコースティック楽器と歌のみでシンプルに表現された『TOY』収録曲にエレクトリック楽器を新たオーバーダブした“Unplugged & Somewhat Slightly Electric”バージョンで構成されたDISC 3の3枚組となっています。DISC 2の“Alternatives & Extras”はマニア向けかもしれませんが、アルバム本編(DISC 1)とあわせてDISC 3はぜひとも聴いてもらいたいところ。同じ曲でも味付け次第でまったく別モノになるんだということがわかるし、どちらもボウイらしさに満ち溢れた内容なので……ゆっくり、じっくりと味わってほしいです。
ボウイのキャリアを総括したボックスセットシリーズも、残すところ『HEATHEN』、『REALITY』(2003年)、『THE NEXT DAY』(2013年)、『★ (BLACKSTAR)』(2016年)までをまとめた最終章のみ。今のところ2023年発売を予定しているそうですが、『★』完成後に着手したデモ音源が日の目を見るのかを含め、その内容が気になるところです。
▼DAVID BOWIE『TOY (TOY:BOX)』
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