SCORPIONS『BLACKOUT』(1982)
1982年3月29日にリリースされたSCORPIONSの8thアルバム。日本盤は当時、『蠍魔宮〜ブラックアウト』という邦題で発売されました(蠍魔宮て)。
前作『ANIMAL MAGNETISM』(1980年)発売がちょうどイギリスでのNWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)ムーブメント拡散期と重なったことで、RAINBOWやJUDAS PRIESTらとともに人気を集め、その勢いのまま彼らは本格的にアメリカ進出。今作リリースがUSメタルブーム勃発期だったこともあり、同作は全米10位という大成功を収めます。本作のヒットが、続く『LOVE AT FIRST STING』(1984年)の爆発的ヒットにつながるわけですね。
バンドの代表作のひとつとして知られる本作ですが、ヘアメタルなどのキャッチーさが強まった『LOVE AT FIRST STING』路線のベースが今作の時点ですで完成していることに気付かされるかと思います。アグレッシヴさを強めた疾走チューン「Blackout」や「Now!」「Dynamite」あたりはNWOBHMムーブメントから受けた影響が表れた仕上がりですが、続く「Can't Live Without You」や「Arizona」でのポップさは以降の彼らの作品にも反映されていくことになるし、70年代から備えてきた憂いを満ちたマイナーキーの「No One Like You」や「You Give Me All I Need」もバンドの大きな武器として作用している。次作以降は後者のポップサイドが強調されていくことになるので、今作はSCORPIONSのヘヴィメタルサイドが強めに表出した初期〜中期最後の1枚と言えるかもしれません。
ギタリスト2人のコンビネーション/チームワークはメタルバンドとして最高潮を迎えており、ルドルフ・シェンカー(G)のリフワークが冴えまくっている点や、ウリ・ジョン・ロート(G)の後任として加入したマティアス・ヤプス(G)のソロワークにおける存在感の強さがより増していることは本作の聴きどころのひとつではないでしょうか。もちろん、クラウス・マイネ(Vo)のボーカルも絶頂期と呼ぶにふさわしいものですし、ゲンザイはバンドを離れているフランシス・ブッホルツ(B)&ハーマン・ラレベル(Dr)のリズム隊から生まれる躍動感も次作以降にはあまり感じられないものが含まれているわけですからね。
かつ、先に触れたポップサイド/メロウサイドの充実や、終盤に置かれたミドルヘヴィの「China White」や泣きのバラード「When The Smoke Is Going Down」含め、続く次作での“完璧な作品至上主義”へと到達する前の“ライブバンド然とした存在感”は80年代初頭というタイミングならではのもの。“80年代のSCORPIONS”のパブリックイメージが完成の域に達しつつあるという点でも、実は本作は『LOVE AT FIRST STING』以上に(バンドにとっても、HR/HMシーンにとっても)重要な1枚ではないでしょうか。
国内サブスクリプションでは、つい最近まで5thアルバム『TAKEN BY FORCE』(1977年)から10thアルバム『SAVAGE AMUSEMENT』(1988年)までのバンド充実期の名作たちが未配信でしたが、2021年12月に突然カタログに加わったことを確認。これも2022年2月22日にリリース予定の7年ぶり新作『ROCK FOREVER』へ向けての施策なんでしょうか。だとしたら、こうして代表作の数々が手軽に楽しめるようになった今回の配慮は非常にうれしい限りです。
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