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2022年2月

2022年2月28日 (月)

2022年1月のアクセスランキング

2021年総括はこちらから

ここでは2022年1月1日から1月31日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日公開/↑●位)」の表記は、「更新日/2021年12月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:2021年総括(※2022年1月1日公開/NEW!)

2位:CORROSION OF CONFORMITY『WISEBLOOD』(1996)(※2020年6月19日公開/Re)

3位:LOUDNESS『SUNBURST〜我武者羅』(2021)(※2022年1月14日公開/NEW!)

4位:1991 in HR/HM & Alternative Rock(※2021年12月21日公開/↓1位)

5位:祝ご成人(2001年4月〜2002年3月発売の洋楽アルバム20選)(※2022年1月10日公開/NEW!)

6位:ARCH ENEMY『WAGES OF SIN』(2001)(※2022年1月7日公開/NEW!)

7位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日公開/Re)

8位:SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(2021)(※2021年12月27日公開/↑28位)

9位:DAVID BOWIE『ALADDIN SANE』(1973)(※2022年1月8日公開/NEW!)

10位:ビートルズの初期作品を振り返る②(1964年編)(※2022年1月15日公開/NEW!)

 

11位:2021年総括:HR/HM、ラウド編(※2021年12月31日公開/↑19位)

12位:TMQ-WEB: 2021年の年間アクセスランキングTOP50(※2022年1月2日公開/NEW!)

13位:TONY MARTIN『THORNS』(2022)(※2022年1月21日公開/NEW!)

14位:SCORPIONS『BLACKOUT』(1982)(※2022年1月13日公開/NEW!)

15位:RUSH『CLOCKWORK ANGELS』(2012)(※2022年1月23日公開/NEW!)

16位:MEAT LOAF『BAT OUT OF HELL』(1977)(※2022年1月22日公開/NEW!)

17位:EUROPE『BAG OF BONES』(2012)(※2022年1月24日公開/NEW!)

18位:BUDGIE『BUDGIE』(1971)(※2022年1月12日公開/NEW!)

19位:TIN MACHINE『TIN MACHINE II』(1991)(※2022年1月9日公開/NEW!)

20位:MUSE『THE 2ND LAW』(2012)(※2022年1月22日公開/NEW!)

 

21位:MY CHEMICAL ROMANCE『I BROUGHT YOU MY BULLETS, YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』(2002)(※2022年1月20日公開/NEW!)

22位:UNDERØATH『VOYEURIST』(2022)(※2022年1月25日公開/NEW!)

23位:GOJIRA『L'ENFANT SAUVAGE』(2012)(※2022年1月27日公開/NEW!)

24位:涙がこぼれそう(追悼、アベフトシ)(※2009年7月23日公開/Re)

25位:FINCH『WHAT IT IS TO BURN』(2002)(※2022年1月18日公開/NEW!)

26位:NINE INCH NAILS『BROKEN』(1992)(※2018年10月5日公開/Re)

27位:FASTER PUSSYCAT『WHIPPED!』(1992)(※2022年1月16日公開/NEW!)

28位:THE USED『THE USED』(2002)(※2022年1月19日公開/NEW!)

29位:GHOSTEMANE『ANTI-ICON』(2020)(※2022年1月26日公開/NEW!)

30位:STEELHEART『TANGLED IN REINS』(1992)(※2022年1月17日公開/NEW!)

2022年2月のお仕事

2022年2月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※2月25日更新)

 

[WEB] 2月25日、「リアルサウンド」にてコラムRAISE A SUILENとFear, and Loathing in Las Vegasの邂逅は必然? 『バンドリ!』外アーティストとの化学反応が開く新たな扉が公開されました。

[WEB] 2月24日、「リアルサウンド」にてライブレポート乃木坂46、『乃木坂46時間TV』で早くも発揮された5期生の強い個性 中西アルノがセンターの新曲「Actually…」も初披露が公開されました。

[紙] 2月24日発売「スカパー!TVガイドプレミアム」3月号、および「スカパー!TVガイドBS+CS」3月号にて、昨年11月開催の「ANIMAX MUSIX 2021」レポート、 南條愛乃インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月17日、「ホミニス」にてライブレポート愛美が6年10ヶ月ぶりのソロライブで見せた歌い手としての成長が公開されました。

[紙] 2月17日発売「Ani-PASS #17」にて、斉藤壮馬、高野麻里佳の各インタビューを担当しました。(Amazon

[WEB] 2月13日、「リアルサウンド」にてライブレポート乃木坂46 星野みなみはグループらしさの一端を担ったメンバーだったーー有終の美を飾った“アイドル”ラストステージを観てーが公開されました。

[WEB] 2月11日、「リアルサウンド」にてライブレポート新内眞衣が切り拓いてきた乃木坂46の新たな王道 ラジオパーソナリティとしての軌跡も存分に詰め込んだ卒業セレモニーが公開されました。

[WEB] 2月4日、「音楽ナタリー」にてコラム&インタビュー沖縄発プログレ×ラウドロック・バンド・ulma sound junctionがメジャーデビュー、キャリア17年の歩みを振り返るが公開されました。

[WEB] 2月4日、「ホミニス」にてライブレポート三月のパンタシア・みあが素顔で語った思い「自分自身の物語をありのままの姿で」が公開されました。

[紙] 2月4日発売「日経エンタテインメント!」2022年3月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」および日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 2月3日、「リアルサウンド テック」にてインタビュー西川貴教が語る「ライブ配信」の可能性 ~アーティスト、経営者の目線から紐解く新しいエンタメの形~が公開されました。

[WEB] 2月2日、「リアルサウンド」にてインタビュー@onefive、“一期一会”で気づいた発信の大切さとグループの武器 1stアルバム『1518』インタビューが公開されました。

[紙] 2月2日発売「ヘドバン」Vol.33にて、「X JAPAN PERFECT DISCOGRAPHY」後期シングル+サントラ解説、「ガールズ・ロック・バンド」アルバム44選(LOVEBITES、Mary's Blood、NEMOPHILA、おとぼけビ〜バ〜、THE GO-GO'S、THE BANGLES、SHOW-YA、PRINCESS PRINCESS、チャットモンチー、Aldious、Gacharic Spin、Poppin'Party、RAISE A SUILEN、HAGANE)、KORN&VENOM STRIKE新作クロスレビュー、2021年年間ベストアルバム企画に参加・執筆しました。(Amazon

[WEB] 2月1日、「リアルサウンド」にてコラムa crowd of rebellionが結成15周年に開拓する新境地 星熊南巫コラボやゲーム主題歌から広がるリスナーの輪が公開されました。

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2022年1月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップしたプレイリストをSpotifyにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2201号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

RADIOHEAD『HAIL TO THE THIEF』(2003)

2003年6月9日にリリースされたRADIOHEADの6thアルバム。日本盤はコピーコントロールCD仕様で、海外に先駆け同年6月2日発売。

エレクトロニカやジャズなど、ロックのフォーマットから離れた異色的内容の連作『KID A』(2000年)『AMNESIAC』(2001年)でアメリカでも大成功を収めることとなったRADIOHEAD。『AMNESIAC』から2年ぶりに届けられた今作は、基本的には同2作の延長線上にある、非常に実験性の強い仕上がりとなっています。

この『HAIL TO THE THIEF』制作に向けて、まずトム・ヨークが3つのデモ作品を制作し、その中から厳選された楽曲をメンバー全員で仕上げていったとのこと。対外的には「次のアルバムはメタル」「いんなでPOISONを聴いて勉強してる」とメディアに発し、2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)以来のロックアルバムになると見せかけておいて、その中身は『KID A』や『AMNESIAC』のスタイルにより磨きをかけた先鋭性の強い作品でした。

アルバム冒頭こそ「2 + 2 = 5」と題したロック色の強いナンバーですが、続く「Sit Down. Stand Up」以降はエレクトロ色の強い楽曲と、「Sail To The Moon」のようにムーディな楽曲が交互に訪れる。とっつきにくさや難解さを伴うスタイルのように映りますが、どの曲も不思議と過去2作以上の聴きやすさが伝わる仕上がり。それは3〜4分台という適度な尺以上にメロディが洗練されていることも大きいのではないでしょうか。

「Where I End And You Begin」はロックのフォーマットとは若干異なるものの、そのグルーヴ感からはロック的なテイストも伝わる。非常にスローなテンポからスタートする「We Suck Young Blood」も曲後半でうねるようにテンポアップしていく。リードシングル「There, There」もその流れにある1曲ですよね。この曲はリズム面に特化した印象があり、ライブでも複数のメンバーがフロアタムを叩いてビートを強調している。このカッコよさは過去の楽曲にはなかったものも見受けられ、個人的にも大好物です。

その後も「The Gloaming」みたいな直接的エレクトロニカや「A Punch Up At A Wedding」といったダウナーチューン、極太ファンク調の「Myxomatosis」、ベートーヴェンの「月光ソナタ」がモチーフの「A Wolf At The Door」など個性豊かな楽曲が並ぶ。統一性が薄いにもかかわらず、最後までスルスル聴き進められてしまうのは、ジャンルこそ雑多なものの質感として一本芯が通っているからではないえしょうか。

実は本作、RADIOHEADのアルバムとしては全14曲/約57分と最長なんですよね。それでも(内容は難解さを伴うのに!)ここまで聴きやすいアルバムに仕上げてしまう、その手腕に改めて感服します。そりゃ全英1位/全米3位(セールス100万枚超え)という成績も納得です。

ただ、本作に対してはリリース当時、僕はあまり良い印象がありませんでした。というのも、先にも書いたように日本盤と一部輸入盤がコピーコントロールCD仕様で発売されたため。確かUS盤がCDDA(通常のCD)仕様だったため、ちょとt時間が経ってから内容を確認してAmazonで取り寄せた記憶があります。現在はリリース元も変わり、廉価盤CDや配信で手軽に聴くことができますが、当時はそういった事実があったことを忘れてはなりません。なので、本作に対してポジティブな印象を持てるようになったのは、意外とここ数年のことかも知れません(マジで)。

 


▼RADIOHEAD『HAIL TO THE THIEF』
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2022年2月27日 (日)

PAUL DRAPER『CULT LEADER TACTICS』(2022)

2022年1月28日にリリースされたポール・ドレイパーの2ndアルバム。

MANSUNのフロントマンによる、ソロデビューアルバム『SPOOKY ACTION』(2017年)に続く4年半ぶり新作。前作がバンド解散後から2017年までに書き溜めた楽曲で構成されていたのに対し、今作はそれ以降に書き下ろされた楽曲にて構成されており、また前作がTHE ANCHORESSことキャサリン・アン・デイヴィスとの共同プロデュース作(一部楽曲では共作も)に対し、今作は長年のコラボレーターであり前作のミックスを手がけたポール・“P-Dub”・ウォルトン(ビョークTHE CUREMASSIVE ATTACKなど)の共同プロデュース作となっています。

架空の自助マニュアル「カルトリーダー戦術(Cult Leader Tactics)」をテーマ(もちろんこれは彼ならではのジョークであり、そういった自助マニュアルに対するパロディ)に制作された本作は、ほぼ大半の楽器をポール自身がプレイ。前作が全英19位という成功を収めたことや久しぶりのツアーを経験したことで、楽曲自体はもちろんのこと、ボーカルワークも前作以上に“戻ってきた”感が強く伝わる仕上がりとなっています。ぶっちゃけ、本作のほうが前作以上にMANSUNと“地続き”に感じられる仕上がりではないでしょうか。特に、MANSUNのアイ名刺的作品である1stアルバム『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(1997年)でのストレンジなギターロック感、そして2ndアルバム『SIX』(1998年)で完成させたモダンなプログロック的手法が良い形で反映されており、MANSUN=ポール・ドレイパーという印象を持つリスナーには納得の仕上がりだと断言できます。

アルバム冒頭を飾るタイトルトラック「Cult Leader Tactics」の時点ですでに“MANSUNのポール”印はたっぷり感じ取ることができますが、特に短尺のイントロダクション「Cult Leader Tactics In E-Flat Minor」から「You've Got No Life Skills, Baby!」への流れおよび後者の作風は完全に往年の輝きを取り戻した作風/完成度を誇るもので、タイトルトラック同様に本作におけるハイライトのひとつと言えるものです。

「U Killed My Fish」での浮遊感の強いサウンドメイキング、「Everyone Becomes A Problem Eventually」で展開されるニューウェイヴ流れのテクノポップ風アレンジ、「Annie」での王道ブリットポップ感、「Talkin' Behind My Back」でのストレンジなギターロックサウンド、そしてかのスティーヴン・ウィルソンをフィーチャーした「Omega Man」でのモダンなテクノロック、総勢288人によるクワイアをフィーチャーした「Lyin' 'Bout Who U Sleep With」の壮大さなど、特筆すべきポイントが豊富なのも本作の特徴。『SPOOKY ACTION』がソロ活動における習作だとしたら、同作とその後のツアーで学んだ経験で焦点を絞ることができ、満を辞してこの2ndアルバムと向き合うことができたのでしょう。すべてにおいて文句なし、ブッチぎりの傑作です。

日本盤はポールの近影を採用した別アートワークが仕様され、ボーナストラックとして「Annie」「Cult Leader Tactics」「Lyin' 'Bout Who U Sleep With」の各アコースティックバージョンを追加収録。また、海外ではアルバム本編にアウトテイクやライブ音源、アコースティックバージョンなどを収めたCD3枚とアルバム本編の5.1サラウンドミックスDVDを同梱したブック仕様限定盤も用意されています。ストリーミングではアルバム本編しか聴くことができないので、より深く本作のことを知りたい方はフィジカルの各仕様をチェックしてみることをオススメします。

 


▼PAUL DRAPER『CULT LEADER TACTICS』
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2022年2月26日 (土)

ANDY BELL『FLICKER』(2022)

2022年2月11日にリリースされたアンディ・ベルの2ndアルバム。日本盤は同年3月16日発売予定。

再結成後のRIDEでの活動が順調な中、デヴィッド・ボウイの死に触発されて2016年1月から初のソロアルバム制作が始まり、2020年10月に『THE VIEW FROM HALFWAY DOWN』というタイトルの処女作をリリースしたアンディ。そこから1年4ヶ月という短いスパンで届けられた本作は、2021年初頭から盟友ゲム・アーチャー(ex. HEAVY STEREO、ex. OASIS、ex BEADY EYE)とともにノースロンドンのスタジオで行ったレコーディングセッションが基盤になっているそうです。

アンディは昨年、EP3部作(4月に『THE INDICA GALLERY EP』、5月に『SEE MY FRIENDS EP』、6月に『ALL ON YOU EP』)をデジタルリリースしたほか、それらを1枚にまとめた『ANOTHER VIEW』もフィジカルリリース。さらにはアンビエント/エレクトロユニットGLOKでの1stアルバム『PATTERN RECOGNITION』も同年10月に発表しています。このコロナ禍(およびロックダウン下での生活)は彼からかつてないほどの創作意欲を導き出しているようです。

なにせこの2ndソロアルバム、全18曲/76分という大ボリューム。前作で展開されたフォーキー&サイケデリックなスタイルをさらに拡張させた、多岐にわたる楽曲群を楽しむことができます。その中には『NOWHERE』(1990年)などRIDEの初期を思わせるポップネス(サウンドはシューゲイザーというよりもドリームポップ的かな)が再燃している「Something Like You」も含まれており、RIDEの3作目『CARNIVAL OF LIGHT』(1994年)で見せたアーシーなスタイルの延長上にあるもの、4作目『TARANTULA』(1996年)で実践したブリットポップ的手法、 さらには近年のRIDEにも通ずるスタイルのものなど、“ソングライター/表現者 アンディ・ベル”のキャリアを総括するような仕上がり。また、「The Looking Glass」のように後期ビートルズのサイケデリアを再現したような、遊び心に満ちた楽曲も用意されており、我々がアンディ・ベルというアーティストに求めるすべてが揃った豪華な1枚と言えるのではないでしょうか。

正直、アルバムとしてのまとまりには欠ける雑多な仕上がりですが、その方向性含めどこかビートルズの『ホワイトアルバム』にも通ずるものがある。あのアルバムがバンド4人がそれぞれやりたい放題やった結果だったのに対し、今作は“初期RIDEのアンディ・ベル”“後期RIDEのアンディ・ベル”“再結成RIDEのアンディ・ベル”、そして“GLOKなどソロキャリアを積み重ねるアンディ・ベル”と4つの顔がめちゃくちゃなバランス感で混在する、トゥー・マッチな内容なのです。まあ、これも単なるこじつけですが(笑)、それくらいアンディが今やりたいことを制限なくやり遂げた結果ということは、このボリュームと内容で一目(耳)瞭然でしょう。

ここまで吐き出したからには、再びバンドに戻っていったときにまっさらな状態でセッションに臨むことができるのではないでしょうか。そういった意味でも、次のRIDEの第一歩が楽しみになる“通過点”のひとつです(とかいって、またすぐにソロ3作目に取り掛かっていそうな気もしますけどね。苦笑)。

 


▼ANDY BELL『FLICKER』
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2022年2月25日 (金)

THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』(1987)

1987年9月28日にリリースされた、THE SMITHSの4作目にして最後のオリジナルアルバム。日本盤は同年9月21日に先行発売。

前作『THE QUEEN IS DEAD』(1986年)は全英2位まで上昇し、本国イギリスでは(オリジナルアルバムとしては)最大のヒット作に。また、アルバム未収録のシングルを連発していたことで、翌1987年に入ると2作目のコンピレーションアルバム『THE WORLD WON'T LISTEN』をヨーロッパで発表し、一方アメリカでは同年3月に『LOUDER THAN BOMBS』と題した内容の異なるコンピ盤を続発します。

一方、モリッシー(Vo)とジョニー・マー(G)の関係性はどんどん悪化。そんな中でも1987年春には本作のレコーディングに突入します。スティーヴン・ストリート(BLUR、THE CRANBERRIES、KAISER CHIESなど)を共同プロデューサーに向か入れ、4月には一度完成するものの、翌月にシングル用にレコーディングを追加で実施。しかし、そのあとでジョニー・マーが渡米してしまい、夏には彼のバンド脱退がアナウンスされます。公認ギタリストを迎えて一度はセッションを試みるものの満足いかず、結局9月に入ってバンド解散を発表。アルバム発売を前にして、THE SMITHSは約5年にわたる短い歴史に幕を下ろすのでした。

ここ日本にもアルバム発売前後に「どうやらTHE SMITHSが解散したらしい」という情報は伝わってきており、僕も本作を聴く際にはすでにその事実を認識していました。変な話、そういったネガティブな要素のせいで本作をまともに聴くことができませんでした。シングルとして先行リリースされていた「Stop Me If You Think You've Heard This One Before」や「Girlfriend In A Coma」は解散前には耳にしていたものの、アルバムの流れで聴いたときは不思議とネガティブに響いてしまったのです。

緩急に富んだ内容ながらもタイトル曲のささくれ立った感が個人的に響いた前作『THE QUEEN IS DEAD』と比べると、本作は全体的に穏やかな空気に包まれている。それを成熟したと受け取るか日和ったと切り離すかで評価は分かれると思いますが、リリースから約35年経った今の耳で聴くと間違いなく前者。「I Started Something I Couldn't Finish」の音像やスタイルなんて完全にモリッシーのグラムロック趣味が反映されたものだし、「Stop Me If You Think You've Heard This One Before」終盤のギターワークは“これぞジョニー・マー!”と太鼓判を押したくなるほどで、このへんは個人的にも大好物です。

かと思えば、後半はダークさを極めた「Last Night I Dreamt That Somebody Loved Me」や“これぞ成熟の極み”な「Unhappy Birthday」、遊び心に満ちた「Death At One's Elbow」、アルバムの締め括りに相応しい「I Won't Share You」など佳曲揃い。アルバムとしてのまとまりも過去イチだと思うし、結果論ですがこれが最終作になってしまったのも納得がいく内容です。

若い頃はTHE SMITHSのアルバム中もっとも聴く頻度の低かった1枚でしたが、歳を重ねるごとにその現象が逆転。今では『THE QUEEN IS DEAD』や『MEAT IS MURDER』(1985年)と同じくらいリピートする機会の多いアルバムです(一番再生しているのは、コンピ盤『THE WORLD WON'T LISTEN』ですが。苦笑)。あと、このアルバムを聴いたあとにモリッシーのソロ第1弾アルバム『VIVA HATE』(1988年)に触れると、いろんな意味で納得できるのではないでしょうか。

 


▼THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』
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2022年2月24日 (木)

BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND『LIVE/1975-85』(1986)

1986年11月10日にリリースされたブルース・スプリングスティーンのライブアルバム。日本盤は同年11月9日発売。

本作はメガヒット作『BORN IN THE U.S.A.』(1984年)に続いて制作されたアナログ5枚組/CD 3枚組という破格のボリュームのボックスセット形式のライブ・コンピレーション作品。そんな高額商品にも関わらず全米1位を獲得し、アメリカのみで現在までに400万セットを売り上げるという記録を樹立しています。また、本作からは「War」(全米8位、全英18位)、「Fire」(全米46位、全英54位)、「Born To Run」(全英16位)という、ライブ音源ながらヒットシングルも複数生まれました。

そのタイトルからも想像できるように、本作には1975年から1985年までに実施された、スプリングスティーンと彼のバンド・THE E STREET BANDとのライブ/ツアーから厳選された40曲をコンパイル。その中でも中心となっているのが1978年7月のRoxy Theater公演(8曲)と、『BORN IN THE U.S.A.』を携えた1984〜85年のアリーナ/スタジアムツアー(9曲)でしょうか。逆に、タイトルに銘打った1975年の音源はオープニングの「Thunder Road」1曲にとどまっています。

リリース当時のスプリングスティーンのライブは3時間超えは当たり前という時期。これは単に曲数を多く披露するのではなく、ライブならではのアレンジで1曲が10分前後にも及ぶことが多いという、ライブバンドならではの醍醐味を体現した結果でした。なので、本作からもそういった要素の片鱗は随所から感じ取ることができます。

基本的には年代順に音源が並んでいるのですが、最初はクラブ/ホールクラスから始まるので歓声もその程度のもの。しかし、アナログ盤のディスク2 B面(CDだとディスク1の12曲目)「Hungry Heart」からその感性の大きさが急変する。クレジットを見ると、ちょうどアルバム『THE RIVER』(1980年)で初の全米1位を獲得し、ツアーもアリーナクラスに移行したタイミングと重なります。そういったスプリングスティーンの成功の過程を、ライブパフォーマンスの充実度だけではなく、その周辺の環境からも感じ取れるのが本作の興味深いポイントではないでしょうか。

スプリングスティーン入門編としてはちょっと敷居が高い作品かもしれませんが、ベストアルバムや代表作をひととおり聴いたあとに彼のライブの凄みに触れてみたい方にはうってつけの作品集です。極上のロックンロールはもちろん、メッセージ性の強いシリアスなナンバー、意外なカバー曲などバラエティに富んだ選曲を、全盛期のライブを追体験する感覚でお楽しみください。

さて、ここからは余談。

DVD/Blu-rayがCDとほぼ変わらぬ価格帯で入手できること、またYouTubeなど動画サイトの普及や、スマホでライブ映像を手軽に撮影した映像をSNSなどで公開することが増えた結果、今ではライブ作品=映像作品が当たり前。しかし、1986年当時はVHSなどのビデオソフトは軽く1万円を超える高額商品で、まだまだライブアルバムの需要は高かった。しかし、アナログ盤からCDへと移行するタイミングということもあり、ライブアルバム自体も40〜50分程度のシングルディスクものか100分前後の2枚組がメイン。ライブの全貌を音源で公開するというよりは、ひとつのライブ/ツアーから厳選された10曲前後でひとつの作品を制作したのがライブアルバム、という認識だったと思います。

そんな中、ライブアルバムの概念をぶち壊してくれたのがこのアナログ5枚組作品。ボックスセットという概念すらなかった時代ですから、「アナログ5枚組なんてアリなんだ!」と中学生の自分は非常に驚きました。もちろん、中学生の小遣いでは手が出ない作品だったので、せいぜいレンタル店で借りるのが関の山。しかし、レンタル代も通常のアナログ盤/CDの数倍かかり、かつそれをダビングするカセットテープ代も5倍ですからね(苦笑)。

なもんですから、本作に初めて触れたのはもっと大人になってから。20代後半にCD 3枚組を中古で購入したのが最初だったかな。でもね、アナログ5枚分を無理矢理CD 3枚に詰め込んだもんだから、意図しないところで曲が切れたりしているんですよね。そういった意味では、アナログ5枚組(のちに日本のみで、CD 5枚組も限定発売されましたが)で楽しむべき内容かもしれません。

もうひとつ余談。

今日このタイミングに本作を取り上げたのは、ご時世柄「War」というカバーを聴きたくなったから。さまざまなアーティストによって取り上げられてきたこの曲、日本では「黒い戦争」の邦題で知られ、特にエドウィン・スターのバージョン(1970年)が有名ではないでしょうか(ほかにもFRANKIE GOES TO HOLLYWOODもカバーしていたので、スプリンスティーンの前に彼らのカバーで知っていたという方も、当時は少なくなかったのでは)。

スプリングスティーンがこの曲をシングルカットした際、ライブ映像をもとにしたMVも制作されているのですが、ここではCD音源同様に曲に入るまえのMCも含めた形となっており、実はこのMCが非常に重要だったりします。もし英語に堪能な方でしたら、ここまで含めじっくり理解していただきたいですし、MVも冒頭とエンディングに重い意味が込められているので、そちらにも注目してみてください。

 


▼BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND『LIVE/1975-85』
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R.E.M.『DOCUMENT』(1987)

1987年8月31日にリリースされたR.E.M.の5thアルバム。日本盤は同年10月21日発売。

1983年に『MURMUR』でデビューして以来、インディーズのI.R.S. Records所属ながらも常にアルバムを全米TOP40に送り込んできたR.E.M.。この5作目のアルバムからは「The One I Love」という初の全米TOP10入りシングル(最高9位)や「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」(全米69位)というスマッシュヒットが生まれ、アルバム自体も最高10位まで上昇。最終的にプラチナムアルバムに認定されました。

本作のプロデュースを手がけたのは、以降10年近くにわたりタッグを組むことになるスコット・リット(NIRVANAINCUBUSHOLEなど)。バンドサウンドや音楽性自体は前作からも延長線上にあるものの、より洗練された印象を受けます。実際、MTVなどで「The One I Love」が流れてきても、インディーバンドとは思えないほどのメジャー感が伝わるサウンドプロダクションだった、と当時を振り返り記憶しています。

作詞面でもそれまで歌詞が若干難解だったり、歌詞カードを見ながらじゃないと聞き取れないと、そういった面が取り沙汰される機会が多かった彼らですが、やはり「The One I Love」で聴けるシンプルな歌詞、わかりやすい言葉選びなどに変化を見出すことができます。同じくヒットした「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」にしても、言葉をギュッと詰め込んだ節回しながらもサビなどではシンプルさが際立つ。このへん、実は前作『LIFES RICH PAGEANT』(1986年)あたりから謙虚になり始めていたんですよね。その実験がここで開花し、続くメジャー第1弾アルバム『GREEN』(1988年)で爆発するといったところでしょうか。

アルバム序盤はオープニングを飾る「Finest Worksong」こそヘヴィな音像で強いインパクトを与えるものの、「Welcome To The Occupation」から「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」までは比較的明るめで軽やかかつ穏やかなロックチューンで構成。中にはWIREのカバー「Strange」も含まれており、原曲のヘヴィ&スローな雰囲気からテンポアップ&軽快さを強調したことで、完全に自分たちのモノにしてしまっています。正直、指摘されなければR.E.M.のオリジナル曲だと信じていしまうほどです。

アルバムB面(後半)は、ヒットシングル「The One I Love」からスタート。哀愁味の強いメロディとともに、ここからアルバムの雰囲気が少しずつ変化してきます。若干のダークさをはらんだ「Fireplace」やグルーヴィなリズムとヘヴィな音像の「Lightnin' Hopkins」はアルバムに程よいアクセントを加え、若干のサイケデリックさを漂わせた「King Of Birds」を経て、最後はダーク&ヘヴィな音像の「Oddfellows Local 151」で締め括り。アルバム中盤で「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」と陽気に歌っていたけど、気づいたらどんよりした空気に変化しているという、この構成含めてお見事としか言いようがない1枚です。

このアルバムリリースからしばらくして、バンドはメジャーのWarner Bro.への移籍を発表。同作から1年強で6thアルバム『GREEN』を届け、ダブルミリオンの大ヒットを成し遂げます。そう、R.E.M.の快進撃はこの『DOCUMENT』(とシングル「The One I Love」)のヒットから始まったのです。そうった意味でも、彼らの音源に触れる上ではマストな1枚です。

 


▼R.E.M.『DOCUMENT』
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2022年2月23日 (水)

FRANK TURNER『FTHC』(2022)

2022年2月11日にリリースされたフランク・ターナーの9thアルバム。日本盤未発売。

フランク・ターナーはイギリス出身のパンク/フォークSSW。2001年にポストハードコアバンドMILLION DEADのフロントマンとしてデビューし、2枚のアルバムを発表したのちに2005年解散。以降はTHE SLEEPING SOULSと名付けたバックバンドを携え、ソロ名義で音楽活動を続けています。5thアルバム『TAPE DECK HEART』(2013年)以降は全英チャートTOP3入りの常連で、この最新アルバムではついにチャート1位を獲得しました。

リッチ・コスティ(SIGUR ROS、BIFFY CLYROMUSEなど)をプロデューサーに迎えた本作は、そのタイトル(“Frank Turner Hard Core”)どおりパンク色を強めた作風の1枚。オープニングを飾る「Non Serviam」はまさにその象徴的な1曲と言えるでしょう。しかし、本作は単にハードコアに攻めるだけではなく、彼が元来持ち合わせているフォーキーな資質も随所から感じ取ることができます。

ハードコア/ポストハードコアというよりは、パンキッシュなガレージロック/ビートロック、あるいは適度にハード&キャッチーなパブロックといった印象の本作。メロディラインもしっかりしており、ハード&ヘヴィすぎないバンドアンサンブルやビート感は非常に大衆性ものと言えるのではないでしょうか。「My Bad」のようなツービートの楽曲や「Punches」みたいなアップチューンも用意されてはいるものの、むしろ本作は「Fatherless」あたりで感じられるビート感とメロディが最大の魅力だと思っています。

かつ、そこに「Miranda」のようなミディアムバラード、「A Wave Across A Bay」や「The Resurrectionists」みたいなフォーキーなナンバーが含まれることで、全体的にも非常にバランス感に優れたロックアルバムに仕上がっている。そういったトータル性の高さが、フランク・ターナーなりのリアルな“ハードコア”なのかもしれませんね。アルバム本編を締め括る「Farewell To My City」のドラマチックな構成と吟遊詩人的なボーカルワークを耳にすると、よりそう実感できるのではないでしょうか。

そして、こんなに筋の通った正真正銘のロックアルバムがナショナルチャートで1位を獲得できるイギリス。まだまだ捨てたもんじゃないなと思いました。

全14曲とボリューミーに感じられるものの、尺的には42分少々と適度な長さなのであっという間に最後まで聴けてしまう。かつ、本作は新曲2曲+アコースティックアレンジ4曲を加えた全20曲入りデラックスエディションも用意されているのですが、こちらはトータルで約65分。本編の曲数が多いだけにボートラは蛇足という気がしないでもないですが、アルバム本編を存分に楽しんだあとに別モノとして接すればそこまで重くないかな。

 


▼FRANK TURNER『FTHC』
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2022年2月22日 (火)

BLOODYWOOD『RAKSHAK』(2022)

2022年2月18日にリリースされたBLOODYWOODの1stアルバム。日本盤未発売。

BLOODYWOODはインド・ニューデリー出身のニューメタルバンド。メンバーはジャヤント・バドゥーラ(Vo)、ラウル・カー(Rap)、カラン・カティヤール(G, Flute)の3人で、ツアーではリズム隊+ドーラク奏者を加えた6人でライブを行っているそうです。自らを“インディアン・フォーク・メタル”と称する彼らは2016年から活動を開始し、ネット上を中心に話題を集めてきました。

そんな彼らの全世界デビュー作となる初のフルアルバム。西洋のモダンメタルにインドの土着的サウンドが散りばめられたスタイルは、かつてSEPULTURAが名盤『ROOTS』(1996年)で確立させた独特の方向性をさらに進化させたもののように映ります。もちろん、ブラジルとインドという違いがあるので一概に比較できない点もあるにはあるのですが、それでもこうした土着的メタルサウンドが2022年にインドから登場したという事実が非常に興味深いのです。

おそらく民族楽器のひとつであるドーラクを多用したパーカッシヴなリズムと、フルートなどのフォーキーな音色がこのバンド最大の武器だと思うんです。現代的なメタル特有の硬いリズムと、民族音楽チックな肉感的なリズムが融合することで生み出されるグルーヴはひたすら気持ち良く、ラップボーカルのパーカッシヴさもそのリズミカルさをさらに強調する手助けになっている。

もちろん、ただリズムに特化したバンドというだけではなく、“フォーク・メタル”を掲げるだけあってメロディラインも非常にキャッチー。フルートなどの繊細な生楽器が乗ることで耳障りの良さも増し、「Dana-Dan」あたりには民謡チックな節回しも見つけることもできる。「Jee Veerey」や「Endurant」あたりのアレンジはこのバンドならではと言えるのではないでしょうか。

使用される楽器や独特な節回しにインドという国ならではの個性を見つけることができるものの、もはやメタルは世界共通言語なんだと再確認できる1枚。このコロナ禍でライブを体験できないという難点はあるものの、当初からSNSを通じて知名度を高めてきたバンドだけに、このアルバムもサブスクを通じて広く浸透するのではないでしょうか。難しいことは考えずに、無心でその音に身を委ねたい極上のグルーヴメタルアルバムです。

 


▼BLOODYWOOD『RAKSHAK』
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2022年2月21日 (月)

RED HOT CHILI PEPPERS『STADIUM ARCADIUM』(2006)

2006年5月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの9thアルバム。日本盤は同年5月10日発売。

全米2位、全英1位という好記録を残した前作『BY THE WAY』(2002年)のあと、Warner移籍後の楽曲を中心とした初の本格的なベストアルバム『GREATEST HITS』(2003年)、バンド初のライブアルバム『LIVE IN HYDE PARK』(2004年)を立て続けに発表したレッチリ。長期にわたるワールドツアーを経て、バンドは2004年秋から1年以上かけて新作制作に臨みます。

ジョン・フルシアンテ(G)を中心に楽曲制作が進められ、最終的に38曲もの新曲をレコーディング。当初はCD3枚組アルバムも計画していたそうですが、そこからさらに厳選された28曲を2枚のCDにまとめ、DISC 1を“JUPITER(木星)”、DISC 2を“MARS(火星)”とそれぞれ命名した大作アルバムが完成しました。

通常、ロックバンドが2枚組アルバムを制作すると、その内容はカラフルでバラエティ豊かなものになることが多いと思います。THE BEATLESなら『ホワイト・アルバム』(1968年)LED ZEPPELINなら『PHYSICAL GRAFFITI』(1975年)GUNS N' ROSESなら『USE YOUR ILLUSION I』および『同II』(1991年)SMASHING PUMPKINSなら『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)あたりがその代表的な例でしょう。ところが、レッチリの本作の場合は必ずしも上記のような過去の名盤とリンクするわけではありません。

本作は前々作『CALIFORNICATION』(1999年)、そして前作『BY THE WAY』の流れを汲む、同路線の決定版的内容。要するに、地味なのです。オープニングを飾る「Dani California」からして地味。派手なギミックで惹きつけるようなタイプではなく、じっくり聴かせる“作り込まれた”楽曲からスタートし、そのトーンを一定に保ちながらグラデーションを付けていく、そういう作風なのです。なもんですから、全28曲/約2時間を通して大きな波もなく、ユラユラと流れていくような印象を受ける。それに対して「退屈」や「オッサン趣味」と片付けることは簡単です。でもね、聴けば聴くほど奥が深い作品集なのです。

僕も正直、最初に聴いたときは「これは長く愛聴できるような内容ではないな」と若干肩をすくめた記憶があります。実際、本作を携えたライブ(同年夏のフジロック)の寒々しさといったら……野外、しかも苗場の夜に聴くにはちょっと地味だったのは否めません。それ以降、本作を聴く頻度はレッチリの全カタログ中、もっとも低かったのもまた事実です。

ところが、フルシアンテ再復帰&ニューアルバム『UNLIMITE LOVE』(2022年)を前に過去のアルバムを聴き返してみたところ……この2枚組アルバムはバンドのキャリアにおいて、もっとも濃厚で奥が深い作品であることに気付かされたのです。

1曲1曲の完成度は非常に高い。それは間違いない事実です。かつ、派手なアレンジで惹きつけるような細工は皆無で、むしろ職人による玄人好みのプレイが随所に散りばめられており、それらが過不足なく絶妙なバランス感でまとめ上げられている。特にフリー(B)&チャド・スミス(Dr)のリズム隊にフルシアンテが加わった鉄壁のアンサンブルに関しては、過去2作でのトライがひとつの頂点に達したが本作だと断言できます。

アンソニー・キーディス(Vo)のボーカルもエモーショナルなメロディを歌い上げるに十分な表現力が加わり、各楽曲の完成度をさらに高めている。また、フルシアンテもすべての楽曲でしっかりギターソロをフィーチャーし、地味な中にもロックバンドのシンプルなカッコよさを最良の形で体現している。ぶっちゃけ、ここまですべてがカチッと噛み合っているロックアルバム、そうはないと思いますよ。

個人的にはDISC 1の後半、「Torture Me」以降から高まる熱量と、同じくDISC 2の後半、「Make You Feel Better」以降の流れがロックバンドの理想形だと思うのですが、如何でしょう?(それと比べると、各DISCの前半はちょっと地味すぎかな?という印象も) 曲順次第ではさらに聴きやすいような気がして、そこだけが残念でなりません。

なんにせよ、『CALIFORNICATION』から始まった第2期フルシアンテ政権(苦笑)の究極の形が本作なのは、間違いなく、事実本国アメリカではついに初の1位を獲得するのですから。このほか、イギリスなど世界24ヶ国でアルバムチャート1位を記録。ここ日本でもオリコン総合チャート1位という快挙を成し遂げ、『FUJI ROCK FESTIVAL '06』でのヘッドライナーと、2007年6月の東京ドーム&京セラドーム大阪公演と二度の来日が実現し、「Dani California」と「Snow ((Hey Oh))」は映画『デスノート』および『デスノート the Last name』の主題歌にそれぞれ採用されるなど、ここ日本でも人気がピークに達しましたしね。しかし、ここですべてを出し切ったフルシアンテは2009年に再びバンドを脱退することになります。そういった意味でも、本作は究極であり臨界点でもあったわけですね。罪作りな大作アルバムです。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『STADIUM ARCADIUM』
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2022年2月20日 (日)

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002)

2002年7月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの8thアルバム。日本盤は同年7月10日発売。

ジョン・フルシアンテ(G)が復帰して制作された前作『CALIFORNICATION』(1999年)が全米3位まで上昇し、アメリカのみの売り上げ700万枚超えと5thアルバム『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)に並ぶメガヒット作となったレッチリ。「Scar Tissue」(全米9位)、「Otherside」(同14位)、「Californication」(同69位)、「Around The World」などのヒットシングルも多数生まれ、第二の黄金期突入をさらに後押しする今作が3年のスパンを経て届けられました。

引き続きリック・ルービン(SLAYERSYSTEM OF A DOWNMETALLICAなど)をプロデューサーに迎えた本作は、メンバーが“Very John”と例えるように、前作以上にジョン・フルシアンテ色濃厚な仕上がり。ファンク色は徐々に抑え気味になり、ポップな色彩やサイケデリック感が強調された、前作以上に聴きやすい/親しみやすい内容に仕上げられています。その結果、チャート的も前作を上回る全米2位まで到達し、イギリスでは初の1位も獲得。「By The Way」(全米34位/全英2位)、「The Zephyr Song」(全米49位/全英11位)、「Can't Stop」(全英57位/22位)、「Universally Speaking」(全英27位)といったスマッシュヒットシングルも多数生まれました。アルバム自体セールス的には前作には及ばず、アメリカでは200万枚止まりでしたが、全世界では1000万枚近い売り上げに到達。『CALIFORNICATION』同様レッチリ入門に適した1枚とも言えるでしょう。

オープニングを飾るタイトルトラック「By The Way」はドライブ感がたまらない1曲で、特にフリー(B)とチャド・スミス(Dr)の織りなすグルーヴィーなリズムと、その上に小気味良いカッティングを響かせるジョンのギター、パーカッシヴさとメロウさが適度に織り交ぜられたアンソニー・キーディス(Vo)が乗ることで絶妙なハーモニーを作り上げています。もうこの1曲で勝ったも同然です。

かと思えば、続く「Universally Speaking」はかつてないほどにポップさが強調された1曲で、レッチリの新たな扉を開いたと言える仕上がり。ダークなサイケロック「This Is The Place」や「Don't Forget Me」、哀愁味の強い「Dosed」は前作までの流れを汲むもので、『CALIFORNICATION』で得た手応えがさらにブラッシュアップされた形で踏襲されています。ヒットシングル「The Zephyr Song」も同様ですね。

ギター初心者がフルシアンテのフレーズをコピーするのに最適なサイケデリックファンクロック「Can't Stop」、穏やかなバラード「I Could Die For You」や「Midnight」、リズム隊の生み出すグルーヴ感がたまらない「Throw Away Your Television」などが並ぶアルバム中盤の流れも非常に味わい深いものがあります。なにせこのアルバム、全16曲/約69分という超大作。前作も全15曲と比較的曲数が多かったものの、トータルランニングは56分と10数分短い。そういった意味では『CALIFORNICATION』以上にプレイヤー/表現者としての側面がより濃厚に遭われたのが『BY THE WAY』という作品かもしれません。メンバーの言う“Very John”という表現には、そういった強い拘りも含まれているんでしょうね。

アコースティック色の強いポップな「Cabron」、ミディアムスローの「Tear」、ラテン色が散りばめられた新境地のアップチューン「On Mercury」、うねるようなグルーウが気持ち良い「Minor Thing」、不思議な浮遊感が味わえる「Warm Tape」と後半も構成的な楽曲が続き、最後は当時のレッチリらしさが凝縮されたドラマチックなマイナーチューン「Venice Queen」で締め括り。ここから2〜3曲間引いたらより聴きやすかったのかな?なんて思いつつも、じゃあどれを削るかと言われると答えが難しい。結局、ジョン・フルシアンテの才能が沸点に達したという点を考慮するとこのセットリスト、構成で正解なのかもしれません。

この才能はさらに爆発をし続け、ここから4年後に届けられる9thアルバム『STADIUM ARCADIUM』(2006年)はCD2枚組/全28曲入りと臨界点に突破。いろいろな意味でピークを迎えることになります。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』
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2022年2月19日 (土)

VOIVOD『SYNCHRO ANARCHY』(2022)

2022年2月11日にリリースされたVOIVODの15thアルバム。日本盤は同年2月23日発売予定。

音楽専門誌で高く評価された前作『THE WAKE』(2018年)から約3年半ぶりの新作。その間にはキャリア初となる単独来日公演(2019年1月。過去2回はフェスでの来日)が実現したほか、2019年のQuebec City Summer Festivalでの公演を収録したライブアルバム『LOST MACHINE - LIVE』(2020年)リリースと話題も豊富だったこともあり、今まで以上に新作への注目度を高める結果となったのではないでしょうか。

そんなVOIVODにとって、今年2022年は結成40周年という大きな節目のタイミング。これを記念するかのように届けられたニューアルバムは、前作『THE WAKE』を軽く超える集大成的な最高傑作に仕上がっています。正直、この短期間で前作を超えるのは難しいんじゃないかと思っていましたが、そんな心配が無駄に終わりホッとしております。

スネイク(Vo)、アウェイ(Dr)のオリジナルメンバーに2008年加入のチューウィー(G)、2014年のロッキー(B)という現編成で2作目のフルアルバムとなる本作は、パンデミック下の2021年を目一杯制作に充てて完成させたこともあり、非常によく“練り込まれた”楽曲群が並んでいます。全9曲収録と、曲数でいえば前作より1曲多いものの、そのトータルランニングは前作の56分よりも8分短い約48分というコンパクトなもの。大半の楽曲が4〜5分台にまとめられており、最長でもM-4「Mind Clock」の6分45秒。前作は大半が6〜7分台で最長12分半(「ラストナンバー「Sonic Mycelium」)だったことを考えると、非常に聴きやすいボリュームと言えるのではないでしょうか。

実際、作風や方向性は前作の延長線上にあるものの、その複雑怪奇な変態性はより強まっているように聴こえるし、その起伏に富んだプログレッシヴなアレンジも自然な流れのもと施されていることが伝わります。なのに、このバンド特有の焦燥感や前のめり感もしっかり備わっており、40年選手のベテランながらも安定感より初期衝動性を重要視していることがその音からも感じられる。ぶっちゃけ、メジャー移籍作にして傑作の呼び声も高い5thアルバム『NOTHINGFACE』(1989年)から地続きであることが理解できるんだけど、約30年前の同作とは弦楽器隊が入れ替わっているのにこのバンド特有のストレンジさが保たれながら進化していることにも気づかされる。これって、そう簡単にできることではないですよね。

アルバム冒頭を飾る「Paranormalium」はもちろんのこと、本作から最初にシングルカットされたリード曲「Planet Eaters」、アルバム発売と同時にリカットされた最新リード曲「Sleeves Off」、さらには「Holographic Thinking」や「The World Today」「Quest For Nothing」など、どの曲も一聴して「あのVOIVODだ!」と納得できる仕上がり。同時に、決してマンネリ化していないことにも気づかされる。そりゃあスネイクの歌声からはさすがに年齢を感じるけど、それも直近の数作を聴いていれば特段驚きに値するものではない。スラッシュメタル、パンク、ハードコア、プログロック、サイケデリックロックなどさまざまな要素がどれかひとつに振り切れることなく、すべてが程よいバランス感でブレンドされることで、唯一無二のVOIVOD節を構築しており、金太郎飴のように感じつつも実はすべてが少しずつ違っているという事実。改めて、40年の積み重ねは伊達じゃない。お見事としか言いようのない完成度であり、すでに前作以上のリピート率を誇る傑作中の傑作です。

なお、前作同様に今作もライブCD付き2枚組仕様が用意されています。こちらの音源は2018年の結成35周年ライブから全11曲を収録。ライブ作品が立て続けにリリースされているVOIVODなので食傷気味な方もいるかもしれませんが、これはこれでアリな選曲ではないでしょうか。まあ、まずは新作本編をじっくりお楽しみいただきたいところです。

 


▼VOIVOD『SYNCHRO ANARCHY』
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2022年2月18日 (金)

AMORPHIS『HALO』(2022)

2022年2月11日にリリースされたAMORPHISの14thアルバム。

本国フィンランドで通算5作目のチャート1位を獲得した前作『QUEEN OF TIME』から約4年ぶり、15年以上在籍したNuclear Blast Recordsから新たにAtomic Fire Recordsへと移籍しての第1弾アルバム。このAtomic Fire はNuclear Blast創始者マルクス・シュタイガーが2021年秋に発足させた振興レーベルで、すでにHELLOWEENOPETHMESHUGGAHMICHAEL SCHENKER GROUPなどがNuclear Blastから移籍を発表しているそうです。

レーベル移籍とはいえ、そういった事情は新作制作には特に大きな影響を及ぼしていない模様。むしろ大変だったのは、このコロナ禍でのレコーディング自体だったようで、ベーシックトラックの大半はバンドの拠点であるヘルシンキとお馴染みのプロデューサーであるイェンス・ボグレン(AT THE GATESTHE OCEANKREATORANGRAなど)が住むハルムスタットとの間でリモート収録されています。

オープニングを飾る「Northwards」からメロディアスかつドラマチックなデスメタルサウンドは健在で、グロウルとメロウなクリーントーンを交互に繰り出すトミ・ヨーツセン(Vo)の歌唱力/表現力もより深みを増している。グロウルパートに関しては前作『QUEEN OF TIME』以上に比率が高いように感じられ、プログレッシヴな曲展開と相まって独特の存在感が際立つ結果に。個人的にはダイナミックさは前作以上の手応えを感じています。

プログメタルの要素、シンフォニックメタルの要素、そしてメロディックデスメタルの要素が程よいバランスで混在しているのも過去作同様なのですが、特に今作はヘヴィさとメランコリックさにより拍車がかかったことで、前作以上の充実感、満足感を得られるのではないでしょうか。その象徴的な1曲が、タイトルトラックでもある「Halo」。このバンドの魅力が最良の形で凝縮された1曲だと断言しておきます。

また、このバンドならではの民謡の要素も適度なバランスで散りばめられており、特に今回はエキゾチックなオリエンタル要素が「On The Dark Waters」などから伝わります。この曲でのシタール風ギターサウンド/プレイはまさにその特徴的なポイントです。と同時に、サンテリ・カリオ(Key)のオルガンも随所で良い味を出しており、同系統のメロディックデスメタル、シンフォニックデスメタルとも一線を画する個性を発揮しているのではないでしょうか。かと思えば、「War」や「The Wolf」などではより攻撃的なデスメタル要素も用意されており、こういったアグレッシヴさが全体を通して心地よい作風の本作においてフックになっている。特にこの2曲は終盤に配置されていることもあり、気持ちが揺さぶられます。

前作では6〜7分台の長尺曲も複数存在しましたが、今作の楽曲は概ね4〜5分台とこの手のバンドにしてはコンパクトにまとめられているのも良点かな。それは前作よりも1曲多い全11曲(日本盤ボーナストラック除く)収録なのに、トータルランニングは前作とほぼ一緒の約58分という点にも表れており、1曲1曲の構成/メロディが非常に練られていることもあって、最後までスルスルと聴き進められる。個人的にはメロディックデスメタルと捉えるよりも、デスメタルを通過したドラマチックな王道メロディアスヘヴィメタルと呼ぶほうがしっくりくる1枚です。

なお、日本盤はボーナストラック「The River Song」を追加した全12曲を収録。さらに、2018〜19年にヨーロッパで行ったライブからのベストテイクを集めた10曲入りライブアルバム『LIVE IN EUROPE 2018-2019』同梱のデラックスエディションも用意されています。こちらは過去15年の間に発表されたアルバムからのベスト選曲的内容(とはいえ、時期的に『QUEEN OF TIME』から多め)となっており、新作とあわせて聴くことで最近のAMORPHISの傾向を押さえることができるはずです。このライブ盤付き仕様は日本限定発売となっているので(当然サブスクでも未配信)、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼AMORPHIS『HALO』
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2022年2月17日 (木)

SICK OF IT ALL『XXV NONSTOP』(2011)

2011年11月1日にリリースされたSICK OF IT ALLの10thスタジオアルバム。日本盤未発売。

本作はバンドが結成され、1stリリースとなったデモカセット『SICK OF IT ALL』をリリースした1986年から数えて25周年という節目に制作された、1986年〜2000年代初頭の楽曲を再レコーディングした1枚。ヒット曲と呼べる楽曲こそ含まれていませんが、バンドにとってライブの鉄板となる代表曲を最新の演奏&テンションで表現した、彼らならではの“グレイテストヒッツ”アルバムに仕上がっています。

全21曲中、原曲の収録作は下記のとおり。

1st EP『SICK OF IT ALL』(1987年)M-1、6、10、17、21
1stアルバム『BLOOD, SWEAT AND NO TEARS』(1989年):M-1、2、8、9、10、11、16、17、19、21
2ndアルバム『JUST LOOK AROUND』(1992年):M-7、12、15
3rdアルバム『SCRATCH THE SURFACE』(1994年):M-4
4thアルバム『BUILT TO LAST』(1997年):M-5、13、14、20
5thアルバム『CALL TO ARMS』(1999年):M-3
7thアルバム『LIFE ON THE ROPES』(2003年):M-18

1stアルバム『BLOOD, SWEAT AND NO TEARS』には1st EP『SICK OF IT ALL』収録曲の再録バージョンが複数(M-1、10、17、21)が含まれているので、これらの楽曲は再々録音ということになるのでしょうか(カセットのデモ音源を含めたら4度目の録音ですけどね)。1stアルバム『BLOOD, SWEAT AND NO TEARS』から10曲(M-21はM-1の別バージョンなので正確には9曲)と本作の大半を占めますが、それだけ同作がバンドにとって今も変わらぬ原点であり重要な1枚ということなのでしょう。実際、こうやって再録されたバージョンを聴いてもまったく色褪せていませんし、非常に納得できるものがあります。

一方で、僕が初めて彼らに触れるきっかけとなった2ndアルバム『JUST LOOK AROUND』からは3曲、メジャー移籍一発目となった3rdアルバム『SCRATCH THE SURFACE』からは表題曲1曲のみと、その少なさに驚かされたり、一方でメジャー最終作となった4thアルバム『BUILT TO LAST』からは4曲も選ばれているのは少々意外でした。あと、5thアルバム『CALL TO ARMS』と7thアルバム『LIFE ON THE ROPES』からはそれぞれ1曲ずつ選出されているのに、その間に挟まれた6thアルバム『YOURS TRULY』(2000年)からは選曲ゼロなのも興味深いところです。

メンバー自体は1992年から不動の4人であり、かつベースのクレイグ・セタリ(ex. AGNOSTIC FRONT、ex. STRAIGHT AHEADなど)を除けば3人はすべての原曲に参加しているメンツ。それもあり、アレンジなどはさほど大きな変化は感じられず、むしろライブ感の強いパフォーマンスにバージョンアップされている。音の厚みや重さ、ノリの良さはリレコーディングされた本作のほうが数段上ですし、かつ曲間をほぼ空けずに矢継ぎ早に繰り出される構成もあって原曲以上にスピード感を味わえます。

80年代後半から90年代初頭の、あの時代ならではのサウンドメイク、質感、プロダクションの良さも確かにあり、一概にどっちが上とは言い難いですが、現在の彼らのライブサウンドに近い形でまとめられた本作は時代を超越した統一感を追体験できます。このへんはプロデューサーのチュー・マドセン(MESHUGGAHSUICIDE SILENCEDIR EN GREYなど)の手腕によるものが大きそうですね。

2011年時点の老舗NYHCバンドの生き様がダイレクトに伝わる良作。1st EPのジャケットを再現したアートワークも最高ですし、このバンドに初めて触れる上での入門編としてもオススメの1枚です。

 


▼SICK OF IT ALL『XXV NONSTOP』
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2022年2月16日 (水)

CONVERGE『JANE DOE』(2001)

2001年9月4日にリリースされたCONVERGEの4thアルバム。日本盤は同年12月28日発売。

前作『WHEN FOREVER COMES CRASHING』(1998年)を経て、ジェイコブ・バノン(Vo)、カート・バルー(G)、アーロン・ダルベック(G)にネイト・ニュートン(B)、ベン・コラー(Dr)が加わり、現在まで続く布陣の4人がここで揃うことになるCONVERGE。本作は5人編成では最後のアルバムであると同時に、Equal Vision Recordsから最後の作品にもなりました。

前作からカートがエンジリアリング、ジェイコブがミキシングにまで携わるようになりましたが、今作もその布陣での制作が継続され、かつ関わる密度がより高くなったことからか、そのサウンド/音質もより生に近いダイナミックなものが収められることに。このクオリティの向上に伴い、バンドアンサンブルもより緻密で計算され尽くされたものへと進化。現在まで続くCONVERGEの歴史を語る上で、真の意味での原点と言える歴史的名盤を完成させることとなったわけです。なお、レコーディングにはメンバー5人のほか、CAVE INのケイラブ・スコフィールド(B, G, Vo)やTHE HOPE CONSPIRACYのケヴィン・ベイカー(Vo)が「The Broken Vow」のコーラスに参加しています。

アルバム冒頭の「Concubine」や「Phoenix In Flames」など1分前後のショートチューンから、ラストを盛大に飾る11分強の「Jane Doe」まで1曲の尺は幅広く感じられるものの、その大半が2〜3分台のコンパクトなもの。かつ曲間がほとんどないシームレスな状態であることから、ショートチューン数曲からなる組曲のようにも映り、息をつく間をまったく与えてくれません。無呼吸で全力疾走を始めたかと思うと、徐々にそのテンポを落としていき、ミディアム/スロー&カオティックでヘヴィな音像が自分の周りに壁となって立ちはだかり、気づくと全12曲/45分があっという間に終了している。聴いているだけで思考が停止する、いや、考えることを放棄させられる強烈な1枚なのです。

ジェイコブのボーカルは歌というよりも、ほぼ叫び(しかも何を叫んでいるか聴き取れない)。メタルバンド的な低音グロウルとは異なるハードコア特有の高音スクリームは、リフでぐいぐい引っ張るタイプではない、変幻自在でプログレッシヴな思考を持つアンサンブルとの相性も抜群で、ヘヴィメタルからはあまり感じられない狂気性が伝わってきます。ですが、ある種前衛的にすら思えてくる音の組み合わせも、聴けば聴くほどにどこかドラマチックにすら思えてくるから不思議。随所から溢れてくるエモさは、ほかの何にも例えようがないものであり、この感情はCONVERGE以外からは感じとることができないもののような気がします(これに近い感情は、ほかのカオティックハードコア、マスコアバンドからも体感することができるのですが、ちょっと別モノ感がありますしね)。

攻撃性やエモさ、カオティックさというさまざまな側面に特化した作品は、以降も数々制作されていますが、すべてのバランスが均等に揃ったという点ではこのアルバムがベストではないでしょうか。リスナーによっては「以降のアルバムは『JANE DOE』を超えられていない」と感じているかもしれませんが、ここを起点にアルバムごとに実験を重ねていると受け取れば、「すべて別の視点で制作された別モノであり、『JANE DOE』はその始まりにすぎない」と理解することができるはずです。じゃなきゃ、ここから20年後に『BLOODMOON: I』(2021年)のような深みのあるアルバムにまで到達できませんって。

 


▼CONVERGE『JANE DOE』
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2022年2月15日 (火)

ZEAL & ARDOR『ZEAL & ARDOR』(2022)

2022年2月11日にリリースされたZEAL & ARDORの3rdアルバム。日本盤未発売。

ZEAL & ARDORはスイス系アメリカ人のマニュエル・ギャノー(Vo, G, Synth)を中心としたアヴァンギャルドメタル・プロジェクト。ブラックメタルにソウルなどのブラックミュージックを掛け合わせた独特の音楽性で注目を集め、1stアルバム『DEVIL IS FINE』(2016年)や続く2ndアルバム『STRANGER FRUITS』(2018年)はトム・モレロRAGE AGAINST THE MACHINE)やスラッシュGUNS N' ROSES)などから高い支持を得ました。

このセルフタイトルの3rdアルバム到着に至るまでは、昨年5月から6曲ものデジタルシングルが小出しにされ、過剰な期待が高まった中で約4年ぶりの新作が到着。本当にここまで長かった……。定期的に届けられる新曲群の出来が非常に高いだけに、アルバムへの飢餓感が最高潮に達したタイミングでのリリースだったのではないでしょうか。本当、プロモーション上手ですね。

前作『STRANGER FRUITS』同様、レコーディングは生ドラム以外のインストゥルメンタルをマニュエルが担当。ミックスは前作でのカート・バルー(CONVERGE)からウィル・パットニー(KNOCKED LOOSEEVERY TIME I DIESeeYouSpaceCowboyなど)に交代しており、昨今のモダンメタル的な質感の、非常に聴きやすいバランスにまとめ上げられています。

聴き手の期待を煽るイントロダクション「Zeal & Ardor」を経てスタートする、インダストリアルメタルなどのエクストリームメタルにアフロビートを掛け合わせたような「Run」を筆頭に、ゴスペルチックな質感のモダンメタル「Death To The Holy」、浮遊感の強いブラックゲイズナンバー「Emersion」など、アルバム冒頭からバラエティ豊かな楽曲が並びますが、その曲ごとに実験色の強いミクスチャー感に相反し、不思議と統一性の強さが伝わる仕上がり。個人的には「Emersion」で示された世界観がドツボすぎて、4曲目にして早くもピークを迎えます。

その後もダークなソウルメタル「Golden Liar」、強弱のコントラストがハンパない「Erase」、シンプルなアレンジがクセになるブルースナンバー「Bow」、冒頭のソウルフルさから突如エクストリーム感が増す「Feed The Machine」(この曲や「Erase」のギターワークにはNINE INCH NAILSあたりからの影響も見え隠れします)、目眩く展開と絶叫に次ぐ絶叫がたまらない「I Caught You」、“エクストリームゴスペル”なんて例えが似合いそうな「Church Burns」、グルーヴメタルの進化系「Götterdämmerung」、ドラマチックなメタルブルース「Hold Your Head Low」、“ジャズ、メタル、ブルース”を意味するタイトルとキャッチーな曲調とのアンバランスさにニヤリとさせられる「J-M-B」、“すべての希望は消え失せた(All Hope Is Lost)”という強烈なタイトルでアルバムを締め括る不穏なアウトロ「A-H-I-L」……ここまで1曲ごとにいろんなことにトライしながらも、1枚のアルバムとして起伏に富んだドラマを展開することができるなんて、お見事としか言いようがありません。いやはや、とんでもないアルバムを生み出したものです。

アルバム到着までデジタルシングルを小出しにし続けたことで、正直アルバムというまとまった形で今作を楽しむことができるのか。ぶっちゃけ、アルバム発売までに飽きがくるんじゃないか、興味を保てないんじゃないかと不安でしたが、まったくそんなことはなく、アルバムはアルバムとして新鮮な気持ちで接することができました。結局、完成度が高ければそんな心配無用ってことですね。

どの曲も2〜4分程度とコンパクトにまとめられ、かつ全14曲で44分というトータルランニングも古き良き時代のロックアルバムを踏襲している。スタンダードな形を踏襲しながらも最新のスタイルという、2022年を代表する傑作のひとつだと断言します。ホント、何度聴いても飽きないし、聴くたびに新たな発見のある恐るべき1枚です。

 


▼ZEAL & ARDOR『ZEAL & ARDOR』
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2022年2月14日 (月)

THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)

2022年2月12日に配信リリースされた、THE WiLDHEARTSの2ndフルアルバムのリパッケージ盤。現時点ではリリース元のRound Recordsのみで購入/ダウンロード可能。CDやアナログなどのフィジカルリリースは2022年6月を予定。

本作は1995年5月に発表された名盤『P.H.U.Q.』の、当初予定していた形に再構成&最新リマスタリングを施した最新エディション。1994年の制作開始時点ではジンジャー(Vo, G)は2枚組を想定しており、その中には7〜8分台の長尺ナンバーも多数含まれていました。ここではまず、『P.H.U.Q.』完成までの流れを解説していきます。

当初、バンド側は1994年初夏に「Inglorious」(約8分)と「Sky Babies」(10分超え)の2曲入りシングルを計画。しかし、長い曲を嫌った当時のレーベルがこの計画を拒否し、当時制作が進んでいた6曲で構成された『FISHING FOR LUCKIES』というミニアルバムをファンクラブ限定でリリースしました。この『FISHING FOR LUCKIES』からは「If Life Is A Love Bank I Want An Overdraft」と「Geordie In Wonderland」をリードトラックに、そしてアルバム未収録の「Hate The World Day」「Fire Up」を追加した4曲入りシングルが1995年1月にリリースされています(全英31位)。続いて、バンドは「I Wanna Go Where The People Go」を同年4月に発表し(全英16位)、翌5月に新たな形で構成された13曲入りの『P.H.U.Q.』が発売されました(全英6位)。

今回リパッケージされた『PHUQ (DELUXE)』は全19曲で構成されており、その内訳は『FISHING FOR LUCKIES』収録の6曲と1995年版『P.H.U.Q.』収録の13曲をまるまる収録したもの。曲順こそ新たな形で構成し直されていますが、使用されている音源自体に大きく手を加えた様子は見受けられません。唯一、1995年版『P.H.U.Q.』最終曲「Getting It」終了後にシークレットトラックとして収められていた「Don't Worry 'bout Me」が、今回のリパッケージ版にはラストナンバー「Sky Babies」のあとに移されているくらいでしょうか。

この19曲の流れで聴く『PHUQ (DELUXE)』はなかなか聴き応えのあるもので、それは『FISHING FOR LUCKIES』や『FISHING FOR LUCKIES (East West Version)』(1996年)よりも滑らかで、1995年版『P.H.U.Q.』以上にダイナミックさが伝わる構成で、「なるほど、こういうつなぎ方があったか!」とニヤリとさせられます。

ただ、ひとつ気になったのはシングルとして先行発売された「Hate The World Day」「Fire Up」が今回のリパッケージ版には含まれていないこと。特に「Fire Up」はそのエンディングに「In Lilly's Garden」のイントロが含まれており、当初は「Fire Up」〜「In Lilly's Garden」という流れでアルバムに収められる予定だったのかなと思っていたのですが、違ったのかな? 単に「Hate The World Day」「Fire Up」はシングルカップリング用に書き下ろされたもので、「Fire Up」のエンディングはシングル用にアレンジされたものだったのか、そもそもジンジャーが当初イメージしていた構成案にこの2曲は入っていなかっただけなのか。もともとどういう構成案だったのかがあの当時に示されていなかっただけに、今となっては謎のままですが(仮に今、ジンジャーが「もともとこうだったんだよ」と発言しても、それは2022年2月時点のものでしかないですしね)。

おそらく、当時はもともとの案で構成したアルバムは形になっておらず、今回既存の音源を並べ替えただけなので、別ミックスなど貴重な音源は残っていないのでしょう。「単に既発曲を並べ替えただけ」で終えることもできますが、こういう“if”の世界が27年後に楽しめるだけでもロマンがあって面白いんじゃないでしょうか。ビギナーはサブスクなどで配信中のオリジナルバージョン(1995年版)で十分でしょうが、古くからのファンはコレクターズアイテムというよりもジンジャーへの課金(笑)のつもりで購入してみてはいかがでしょう。

 


▼THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』
(Round Records:海外盤CD / 海外デラックス盤CD / 海外盤アナログ / 海外デラックス盤アナログ / MP3

 

2022年2月13日 (日)

EDDIE VEDDER『EARTHLING』(2022)

2022年2月11日にリリースされたエディ・ヴェダーPEARL JAM)の3rdソロアルバム。

昨年8月にはキャット・パワーやアイルランドの詩人グレン・ハンサードとのコラボレーションによる映画『FLAG DAY』のオリジナル・サウンドトラックも制作していますが、純粋なソロアルバムは意外にも『UKULELE SONGS』(2011年)以来10年ぶりの新作。特にここ数年はPEARL JAMの新作『GIGATON』(2020年)もあったので、コロナ禍ながらも精力的なリリースが続いている印象です。

本作のプロデュースを手がけたのは、オジー・オズボーンの最新作『ORDINARY MAN』(2020年)でのタッグも話題になったアンドリュー・ワット(そのほかにポスト・マローンやマイリー・サイラス、ジャスティン・ビーバーなど)。レコーディングにはそのアンドリューのほか、チャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)やジョシュ・クリングホッファー(G, Key, Vo/ex. RED HOT CHILI PEPPERS)、スティーヴィー・ワンダー、リンゴ・スター、エルトン・ジョンなど豪華な布陣が参加しています。もはやメインストリームのロック/ポップスターらしいメンツと言えるのではないでしょうか。

サウンド的には非常にメジャー感の強いアメリカンロックが中心。アルバム冒頭を飾る「Invincible」や「Power Of Right」などからはニューウェイヴの流れを汲むアリーナロック的な香りも伝わり、その質感はグランジ以前の80's MTVライクなメインストリームロックと重なるものがあります。極端な話ですが、それこそブルース・スプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ、ヒューイ・ルイスなどのMTV世代には懐かしいアーティストたちとリンクするものがあるんじゃないかなと。そのへんはPEARL JAMの最新作『GIGATON』にも含まれていた要素のひとつでもあるので、あの色合いはエディによるものだったのかな?と今さらながらに感じています。

良くも悪くも、開き直りが伝わるこのスタイル。昨年12月に57歳になったばかりのエディにとってはもはや「最新のスタイルを作り上げるより、自分の成長期に慣れ親しんだロックを再構築する」ことが活動の主軸なのかもしれません。もちろん、活動のメインにPEARL JAMがあるぶんソロではこういったスタイルを追求することができるわけで、それ自体は否定しません。実際、僕自身も中高生の頃に慣れ親しんだアメリカンロックやMTVで流れていたヒット曲を聴いている感覚で楽しめましたし。

ただ、前作『UKULELE SONGS』はもうちょっと遊び心に満ち溢れていた印象もあっただけに、真の意味で“老いて”しまった感が伝わり、そこだけが残念だったかなと。アルバム自体の完成度が非常に高いだけに……。とはいいつつ、実はエディってもともと“そっち側”の人で、こういったスタイルに回帰するのは実は自然な流れなのかもしれません。

個人的には日中延々とリピートするよりも、たまに聴くぶんには申し分なしな1枚。「あのPEARL JAMのフロントマンによるソロアルバム」という視点ではなく、「純粋に良曲揃いのアメリカンロック&ポップス集」として接するのがベストかな。

 


▼EDDIE VEDDER『EARTHLING』
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2022年2月12日 (土)

SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『4』(2022)

2022年2月11日にリリースされたSLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSの4thアルバム。日本盤未発売。日本盤は同年6月22日に、ボーナストラックを追加した形態で発売予定。

GUNS N' ROSESスラッシュ(G)がALTER BRIDGEマイルズ・ケネディ(Vo)とタッグを組み、THE CONSPIRATORSと命名したメンバーとのバンド形態で制作した、前作『LIVING THE DREAM』(2018年)から3年5ヶ月ぶりの新作。90年代に活動したSLASH'S SNAKEPITや2010年に制作された純粋なソロアルバム『SLASH』(2010年)、映画のサウンドトラックなどを含めると、通算8作目のソロワーク/リーダーアルバムとなります。

今作は新興レーベルGibson Recordsと契約して最初の作品で、プロデューサーには新たにデイヴ・コッブ(RIVAL SONSEUROPEレディ・ガガなど)を迎えて制作。ナッシュビルにあるRCA Studio Aにて、たった10日間のライブレコーディングを通じて完成させた10曲が収録されたバランス感に優れたハードロックアルバムに仕上がっています。

現在のバンドメンバーはスラッシュ、マイルズ・ケネディ、トッド・カーンズ(B, Vo)、ブレント・フィッツ(Dr)という結成時からのメンバーに加え、2ndアルバム『WORLD ON FIRE』(2014年)リリース後のツアーから参加しているフランク・シドリス(G, Vo)の5人。この布陣では前作『LIVING THE DREAM』に続く2作目、リズム隊に関しては10年来の仲間ということもあり、アルバムのオープニングを飾る「The River Is Rising」を筆頭に気心知れたメンツによる安定感の強いハードロックが展開されています。

基本的にはいかにもスラッシュらしいミディアムテンポの豪快アメリカンハードロックが中心。この人に何を求めるのかといったら間違いなくそこなわけで、従来のファンにとって期待どおりの内容と言えるでしょう。そこにマイルズ・ケネディという素晴らしいシンガーが加わることで、終始安定した楽曲を楽しむことができる。また、バンドアレンジもGN'R以降スラッシュが参加してきた楽曲群を踏まえたものばかりで、過去のTHE CONSPIRATORSとの作品はもちろん、VELVET REVOLVERやSNAKEPITなどのカラーも随所に感じられます。思えば初期のツアーでは、このへんの楽曲も随時披露されていたわけで、そういった意味ではこの新作って“ミュージシャン/アーティスト:スラッシュ”の総決算的内容と言えなくもない。要するに、最高のアメリカンハードロックを楽しめる1枚というわけですよ。

オープニングトラックにふさわしい「The River Is Rising」のカッコよさはもちろんのこと、トーキングモジュレーターを用いた冒頭のギターフレーズが印象的な「C'est la vie」、キャッチーなメロディが耳に残る「The Path Less Followed」、どことなくグラマラスさが漂う「Actions Speak Louder Than Words」、不穏なギターフレーズがたまらない妖艶な「Spirit Love」、GN'Rの「Sweet Child O' Mine」を彷彿とさせるギターフレーズに思わずニヤリな「Fill My World」、いかにもスラッシュらしいリフワーク(でもマンネリ化してない)の「April Fool」、終盤の盛り上げに最適なアップチューン「Call Off The Dogs」、スラッシュのエモーショナルなギタープレイが存分に味わえるエモーショナルなパワーバラード「Fall Back To Earth」など、意外にもバラエティ豊かな内容は過去イチと言えるものかもしれません。全10曲/約44分という尺も程よく、似たり寄ったりの楽曲が少ないコンパクトな仕上がりという事実も、このアルバムを良作たらしめる要因ではないでしょうか。

ぶっちゃけ、スラッシュ自身は良質なメロディメイカーというわけではないと思うんです。ギタリストとしては優れているけど、気がつくとすぐに手癖に走ってしまうタイプのプレイヤーですし。もちろんこのアルバムにもそういった手癖の数々を確認することはできるのですが、それを補って余るほど良質なメロディとアレンジが存在することで、過去のマンネリ的な部分が解消されている。もしかしたら今のスラッシュは過去最高の充実期に突入しているのか、あるいは最良のパートナーたちに恵まれているのか。GN'SもTHE CONSPIRATORSも活動が順調だからこその結果がこのアルバムなんでしょうね。

正直、ここまでハートを鷲掴みにされるアルバムだと思っていなかっただけに、その手応えは期待以上でした。胸を張ってオススメできる1枚です。だからこそ、こんな傑作が日本盤リリースされないという事実には落胆させられます……。

※2022年4月26日追記:日本盤のリリースが正式決定しました。ボーナストラックを追加した通常盤に加え、アルバム発売時に配信されたライブの模様を収めたライブDVD同梱の2形態を予定。4ヶ月遅れはどうかと思いますが、出るだけでもありがたいですね。

 


▼SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『4』
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2022年2月11日 (金)

BLACK SABBATH『LIVE EVIL』(1982)

1982年12月14日にアメリカでリリースされたBLACK SABBATH初のライブアルバム。本国イギリスでは翌1983年1月18日発売。

オジー・オズボーン(Vo)在籍時はライブアルバムを1枚も制作することもなく、オジー脱退後に1973年の音源がバンドの許諾なしに『LIVE AT LAST』(1980年)と題して発表されたのみ。バンド公認のライブアルバムはこのロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)在籍時の音源が最初の正式リリースとなるわけです。

本作はディオ加入後2作目のスタジオアルバム『MOB RULES』(1981年)を携えて、1982年4〜5月に実施されたUSツアーからセレクトされたもの。当時のメンバーはトニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)のオリジナルメンバーにディオ、『MOB RULES』から参加のヴィニー・アピス(Dr)、そしてツアーメンバーのジェフ・ニコルス(Key)という布陣。『HEAVEN AND HELL』(1980年)や『MOB RULES』からの楽曲をライブで再現するにはキーボードは欠かせませんものね。

アルバムのキモとなるのは、もちろんディオ加入後の楽曲……「Neon Knights」や「Children Of The 」シー「Heave And Hell」といった『HEAVEN AND HELL』収録曲や、「Voodoo」「The Mob Rules」「The Sign Of The Southern Cross」をはじめとする『MOB RULES』収録曲。スタジオ音源以上に生々しくワイルドなディオのボーカルと、ライブならではのフリーキーさも織り交ぜたアイオミのギタープレイは聴き応え満点で、個人的にはスタジオテイク以上にお気に入りです。特に長尺ギターソロをフィーチャーした12分にもおよぶ「Heave And Hell」と、続く「The Sign Of The Southern Cross」からメドレー形式で「Heave And Hell」へと戻っていく構成では、ライブならではの醍醐味を堪能できるはずです。

一方で、ディオが歌うオジー時代のサバス曲も味わい深くて、これはこれでアリと思わされるものばかり。「N.I.B.」なんて完全に自分のモノにしてしまっていますし、暑苦しいまでに歌い上げる「Black Sabbath」なんてオジーバージョンとは異なる黒魔術感が伝わる、別モノとして楽しめるのではないでしょうか。それもこれも、アイオミとギーザーがプレイしている点、そしてヴィニーのハードヒットなドラミングがマッチしているからこそ。「War Pigs」のドラマチックさも全然アリですよね。

ですが、「Iron Man」や「Paranoid」といったシンプルな楽曲に関しては、どうしてもオジーの印象が強すぎて「ちょっとこれは……」と思ってしまうかも。演奏自体は非常に素晴らしいのですが、気合入れて力みすぎなディオの「Iron Man」は最初なかなか馴染めなかったものです。しかし、90年代に制作された『DEHUMANIZER』(1992年)を通過したあとに振り返ると、「まあ、これはこれで……」と寛大な気持ちで接することができるように。あのアルバム、今となっては非常に重要な役割を果たしていたんですね……。

ちなみにサバスが初めて日本に訪れるのは、1980年のこと。つまり、『HEAVEN AND HELL』リリース後のディオサバスだったわけです。そう考えると、当時のリスナーにとってはこの『LIVE EVIL』という作品は初来日公演を追体験するに最適なアルバムだったのかな。

なお、本作はアナログ盤(2枚組)やデジタル版(ストリーミング含む)では全14トラック/約84分の収録内容ですが、CDに関しては複数のバージョンが存在するのでご注意を。特に初期のCDは「War Pigs」がカットされた全13トラック/1枚もので流通しており、のちに「War Pigs」を追加した全14トラック/CD1枚ものが再発。しかし、こちらは収録容量の関係でMCなどがカットされた不完全版で、デラックス・エディションと題したCD2枚組バージョンこそが当初のアナログ盤(と現行のデジタル版)と同内容となっています。紛らわしいったらありゃしない(苦笑)。

 


▼BLACK SABBATH『LIVE EVIL』
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OZZY OSBOURNE『SPEAK OF THE DEVIL』(1982)

1982年11月27日にリリースされたオジー・オズボーン初のライブアルバム。日本盤は同年12月に、『悪魔の囁き』の邦題で発売。

1982年3月19日、バンドメンバーのランディ・ローズ(G)が飛行機事故で急逝し、失意のどん底に叩き落とされたオジー。ランディが亡くなる前からBLACK SABBATH時代の楽曲のみで構成されたライブアルバム制作は予定されていたそうですが、その後ランディの後任としてバーニー・トーメが一時的にライブでサポートしたのちに、当時NIGHT RANGERでのデビューを控えたブラッド・ギルスがバンドに加わり、1982年9月26、27日に本作の音源が収録されたニューヨークのThe Ritzでの公演が行われました。

バンドメンバーはオジー(Vo)、ブラッド(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)という布陣。実際のライブではオジーのソロ曲も披露されていますが、アルバムには当初の計画どおりサバスナンバーのみが収められています。ランディ在籍時からオジーのライブではすでに「Iron Man」「Children Of The Grave」「Paranoid」といったサバス曲は披露済みで、その様子はのちに発表されたライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)などでも確認できます。

プロデュースおよびミックスは直近のスタジオアルバム『DIARY OF A MADMAN』(1981年)を手がけたマックス・ノーマンが担当。質感的にはかなり近いものがありますが、オジーのソロ曲には合っているこのプロダクションもサバス曲にはちょっと軽すぎる印象も。というよりも、ルディ&トミーのリズム隊が軽すぎるのと、ブラッドのギターワークがメタリックではないことが、アルバム全体の軽さに影響を与えているような気がしてなりません。

ブラッドのギタープレイは原曲に忠実ながらも、随所にアーミングを多用した彼らしい“遊び”が取り入れられており、これはこれで面白いのですが、もうちょっと深く歪ませてもよかったんじゃないかなと(まあ、それじゃあブラッドらしくないという話もありますが)。この時点でNIGHT RANGERへ戻ることは間違いなかったので、彼は彼なりに仕事に徹しただけなんでしょう。そういった意味では及第点かなと思います。

ルディのベースも頑張ってはいるものの、はやり原曲を弾くギーザー・バトラーのプレイと比較してしまうと物足りなさを感じてしまう。そして、問題なのはトミーの軽やかなドラミング。これまでさまざまなバンドで彼らのパフォーマンスを観てきましたが、手数の多さで派手さを演出するタイプなのでサバスのようにシンプルなプレイで重さを表現する楽曲にはそもそも合っていないのかもしれません(オジーソロはヘヴィさもあるものの、楽曲自体がポップかつキャッチーなのでかろうじて適していたようですが)。

とはいえ、選曲自体はサバスの1stアルバム『BLACK SABBATH』(1970年)と2ndアルバム『PARANOID』(1970年)という代表作からの楽曲中心(メドレー含む全13曲中7曲)で、そこに「Sympton O The Universe」や「Snowblind」「Sweet Leaf」「Never Say Die」などオジーらしいセレクトが含まれており、これがオジーがイメージするBLACK SABBATH像なのかなと興味深いものがあります。本作発売から半月後にはロニー・ジェイムズ・ディオを加えた本家サバスも『LIVE EVIL』(1982年)というライブ作品を発表しており、そちらに含まれるオジー在籍時の楽曲がすべて『SPEAK OF THE DEVIL』にも含まれていることを考えると、オジー側とトニー・アイオミ(G)側の初期サバス像はほぼ一緒なのかもしれませんね。

なお、本作は1995年にリマスタリングされ、アートワークを一新した形で再発(下記ジャケ写がそちら)。しかし、2002年に新たなリマスター処理が施されたリイシュー企画の際には廃盤扱いとなり、以降もオフィシャルカタログ外扱いとなっています。日本盤もすでに廃盤状態で、1995年リマスターCDを輸入盤で購入することができるものの、デジタルリリースおよびストリーミング配信は国内では未実施。海外のストリーミングサービスを調べてみても、Spotifyでは引っかかるものの、Apple Musicでは未配信のようです。オジーが歌うサバス曲はサバス本家を聴けばいいわけですが、ブラッド・ギルスが弾くサバス曲はここでしか聴けないので、NIGHT RANGERファンと一部の奇特なリスナーの皆さんはぜひ輸入盤購入でチェックしてみてはどうでしょう。

 


▼OZZY OSBOURNE『SPEAK OF THE DEVIL』
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2022年2月10日 (木)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: THE MAJESTY DEMOS (1985-1986)』(2022)

2022年1月21日にリリースされたDREAM THEATERのデモ音源集。日本盤は同年1月26日発売。

昨年6月からスタートした、バンドと所属レーベルInsideOutMusic Recordsとの共同企画によるオフィシャル・ブートレッグシリーズ『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』の第6弾。今回はDREAM THEATERの前身バンド・MAJESTY時代のでも音源をコンパイルしたもので、かつて自身のプライベートレーベルYtsejam Recordsから生産限定リリースしていた内容に最新リマスタリングが施されています。

全23曲/78分という長尺な内容のうち、M-1〜M-17はジョン・ペトルーシ(G)、ジョン・マイアング(B)、マイク・ポートノイ(Dr)によるセッション音源が中心。録音は1985年とのことで、カセットテープ音源ということで音質はやや難あり。RUSHのカバー「YYZ」やS.O.D.のカバー「Anti-Procrastination Song」なども含まれていますが、大半(特にM-11〜M-17)は曲の断片/アイデアレベルのものといった印象。「Cry For Freedom」や「The School Song」などにはのちの1stアルバム『WHEN DREAM AND DAY UNITE』(1989年)へと続いていく布石を見出すこともできますが、トリオ編成でのスタジオセッションの域は超えていないかな。それでも、資料としては非常に希少価値は高いと思います。

バンドはその後、ケヴィン・ムーア(Key)と初代ボーカリストのクリス・コリンズ(Vo)を迎え、1986年に1000本限定のデモテープを制作。全6曲入りのその音源も、本作のM-18〜M-23に収められています。ここには1985年のセッション音源ではインストバージョンだった「Another Won」「Your Majesty」「Two Far」にボーカルが加わり、現在のスタイルにもっとも近い形が完成されつつあります。

興味深いのは、この1986年の時点で「A Vision」のような11分超えの大作制作にも果敢に挑んでいること。残念ながらカセットテープの音質ということで、今の耳で聴いてしまうとどうしてもクオリティが劣っているように映りますが、個人的にクリスの歌声は後任のチャーリー・ドミニシ(Vo)よりも好きな声質なので、できることなら可能な限り最良の音質/ミックスで聴きたかったです。かといって、この処女作を現在のジェェイムズ・ラブリエ(Vo)で再録するというのも現実的ではないですし、これはこれとして楽しむしかないのかな(ただ、「Another Won」はライブアルバムなどでも披露されているので、ラブリエ版を楽しむことができますけどね)。

にしても、本作を1stアルバム『WHEN DREAM AND DAY UNITE』完全ライブの模様を収めたDREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: WHEN DREAM AND DAY REUNITE (LIVE)』(2021年)のあとに、続けてリリースするのはズルいですね。『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(2021年)という最良の最新作のあとだけに、否が応でもバンドの原点を再認識させられますし。まあ、それが彼らの意図だったんでしょけど。約35年という時間をかけて、DREAM THEATERはここまで成長/進化したんだということを強く実感できる、好企画だと思いますよ。

2022年2月下旬には、早くも『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』シリーズ第7弾として、3rdアルバム『AWAKE』(1994年)のデモ音源集をリリース予定。またしばらく、過去の遺産で我々を楽しませてくれそうです。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: THE MAJESTY DEMOS (1985-1986)』
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2022年2月 9日 (水)

ACCEPT『STALINGRAD』(2012)

2012年4月6日にリリースされたACCEPTの13thアルバム。日本盤は同年5月2日発売。

前作『BLOOD OF THE NATIONS』(2010年)から1年8ヶ月ぶり、アメリカン人シンガーのマーク・トーニロ(ex. T.T. QUICK)を迎えた新編成での第2弾アルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という前作と同じメンバー、プロデューサーもアンディ・スニープ(ARCH ENEMYJUDAS PRIESTMEGADETHTESTAMENTなど)と前作から引き続きと、ほぼ成功が約束されたような布陣で制作。本国ドイツで最高6位、アメリカでは名作『METAL HEART』(1985年。最高94位)以来27年ぶりとなるTOP100入り(81位)を果たしました。

前作の時点で80年代のACCEPTを踏襲しつつもマークらしさをふんだんに取り入れた作風でしたが、今作ではそのスタイルにより磨きがかかり、バンドとしても非常に脂が乗った状態に。かつメロディアスさも前作以上の仕上がりで、メロディアスなパワーメタルとしては最高峰と言える完成度ではないでしょうか。アルバム冒頭を飾るドラマチックなファストチューン「Hung, Drawn An Quartered」からミドルヘヴィ「Stalingrad」への流れも完璧で、以降も緩急に富んだ構成で聴き手を惹きつけ続けます。

個人的ピークは、アルバムのおへそ部分(M-5)に配置されたメロウなミドルチューン「Shadow Soldiers」。この曲で聴くことができるウルフ・ホフマン(G)の流麗なギターソロは圧巻の一言で、これを聴くためだけに本作を手に取っても間違いじゃないくらい。もちろん、そのほかの楽曲も出色の仕上がりで、同曲の余韻を引きずりながら始まる「Revolution」や、これまでありそうでなかったタイプの「Against The World」の「Twiste Of Fate」、ボーナストラック(DVD付きデラックス盤と配信のみ)にしておくには勿体ない仕上がりの「Never Forget」、約7分半におよぶグルーヴィーなミドルナンバー「The Galley」と聴きどころ満載です。

前作には「Kill The Pain」のようなスローバラードが収録されていましたが、今回はバラードタイプの楽曲は皆無。しかし、そこに対して不満を一切感じさせないほど、本作の内容は非常に充実しているのです。アップチューンひとつとっても、どれもタイプが異なりますし、ミディアムテンポの楽曲もBPMやリズム、メロディラインやコーラスワークでひと工夫もふた工夫も施されており、どれひとつとして同じような楽曲が存在しない。マークの歌唱スタイルも基本的には前任のウド・ダークシュナイダー(現U.D.O.)を倣ったもので、ある意味では単調な歌唱法なのですが、そんな歌い方でもまったく飽きさせない内容になっているのだから、本当に楽曲が充実しているという表れなのでしょう。

この充実作を携えたワールドツアーを経て、バンドは次作『BLIND RAGE』(2014年)でついに初の本国チャートで1位を獲得。アメリカでも過去最高の35位を記録したほか、UKチャートでも『RUSSIAN ROULETTE』(1986年)以来となるTOP100入り(85位)という快挙を成し遂げるのでした。

 


▼ACCEPT『STALINGRAD』
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2022年2月 8日 (火)

NIGHT RANGER『MIDNIGHT MADNESS』(1983)

1983年10月26日にリリースされたNIGHT RANGERの2ndアルバム。

シングルカットされた「Don't Tell Me You Love Me」(全米40位)、「Sing Me Away」(同54位)のスマッシュヒットも手伝い、デビューアルバム『DAWN PATROL』(1982年)が全米38位まで上昇。これを受け、ちょうど1年という短いスパンで届けられたのがこの2ndアルバムでした。

プロデューサーには前作から引き続きパット・グラッサー(GIUFFRIAなど)を迎えて制作された本作。基本的な作風は前作の延長線上にあるのですが、楽曲の洗練度がより増したこと、かつ各プレイヤー陣の個性がより際立ったことにより、その完成度の高さは前作以上のものに。さらに洗練された3rdアルバム『7 WISHES』(1985年)とバンドの原点である1stアルバムの中間に位置する、非常にバランス感に優れた力作に仕上がっています。

アルバム冒頭を飾る代表曲「(You Can Still) Rock In America」を聴けば、ソングライティング面やメッセージ性、そして各プレイヤーの力量含めNIGHT RANGERのすべてが伝わるはず。とにかく聴きどころ豊富な1曲で、ブラッド・ギリス(G)とジェフ・ワトソン(G)というスター性豊かで個性のまったく異なるギタリストの魅力がしっかり理解できることでしょう。もちろん、ジャック・ブレイズ(B, Vo)という類い稀なるフロントマンの才能も同様で、サビ前の〈They Gonna Rock it! Rock it! Rock it!〉で聴けるシャウトなんて最高の一言ですよね。

そんな爽快感の強い1曲を経て、浮遊感の強いギタープレイをフィーチャーしたミディアムナンバー「Rumours In The Air」(これも名曲)、VAN HALENチックなギターリフが特徴的な攻めの「Why Does Love Have To Change」、ケリー・ケイギー(Dr, Vo)のボーカルを存分に活かしたセンチメンタルなバラード「Sister Christian」、ライブのオープニングを飾ることの多いダイナミックなハードロック「Touch Of Madness」、AOR調の空気感が絶妙なバランスを誇る「Passion Play」、このバンドのポップサイドが最良の形で表現された「When You Close Your Eyes」、オープニングのツインリードギターがひたすらカッコいい「Chippin' Away」、アコースティックギターとシンセの絡み、そして2人のシンガーのハーモニーが非常に心地よい「Let Him Run」……と、全9曲/39分があっという間に感じられるほどの充足感を味わえる。問答無用の1枚です。

本作からは「(You Can Still) Rock In America」(全米51位)、「Sister Christian」(同5位)、「When You Close Your Eyes」(同14位)というヒットシングルを生み出し、アルバム自体も最高15位まで上昇。売り上げ100万枚を超えるヒット作になり、バンドの知名度を一気に引き上げることに成功します。しかし、バラードやポップサイドの楽曲がシングルヒットしたことが、次作以降バンドを大いに悩ませることになるのでした。

個人的な思い入れの強さはリリース時にリアルタイムで触れた『7 WISHES』に譲りますが、このバンドの入門編としては本作が最良。ヘヴィ側にもポップス側にもギリギリ振り切らない、バランスに優れた産業ハードロックの傑作だと断言しておきます。

 


▼NIGHT RANGER『MIDNIGHT MADNESS』
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2022年2月 7日 (月)

KISSIN' DYNAMITE『NOT THE END OF THE ROAD』(2022)

2022年1月21日にリリースされたKISSIN' DYNAMITEの7thアルバム。日本盤は同年1月19日に先行発売。

今年で活動開始から15年という、中堅を超えてベテランバンドに仲間入りしそうなキャリアを持つドイツのヘアメタルバンド。Napalm Records移籍第1弾となった前作『ECSTASY』(2018年)から3年5ヶ月ぶりの新作は、オリジナルメンバーのアンディ・シュニッツァー(Dr)からセバスチャン・バーグ(Dr)へとメンバーチェンジして初のアルバムとなります。すでに本国ドイツでは2位と、過去最高の数字を打ち出しています。

このバンドに対してそこまで詳しいわけでもなく、アルバムもすべて聴いているという熱心なリスナーではないのですが、そういったライト層的視点から述べさせてもらうと、今作は過去のアルバムほど“ドギツさ”が強くないかなと。良く解釈すれば「大人になった」、悪く解釈すれば「大人しくなった」という、聴き手の立ち位置によって評価の分かれる1枚ではないでしょうか。

MVは相変わらずいかがわしさ満載ですが、音楽面ではいわゆるヘアメタル/グラムメタル的な要素は薄れ、タフなハードロックバンドとしての側面が強調された作風にシフト。単純にバンドとして成長したということなのか、あるいは現在のようにロックバントにとってタフさが求められる状況に対しての宣戦布告なのか。どちらにせよ、2020年代という新たなディケイドとどう戦っていくかが問われる中で産み落とされた、勝負作であることには間違いありません。

アルバム冒頭を飾るタイトルトラック「Not The End Of The Road」におけるメッセージ性の強さ、硬質さが強調されたサウンドメイクなどは素直にカッコいいですし、複数のゲストボーカルを迎えたゴスペルチックなミディアムバラード「Good Life」も極上の仕上がりだと思います。この変化、POISONが3作目『FLESH &BLOOD』(1990年)や続く4作目『NATIVE TONGUE』(1993年)で彼らが迎えたものと似た印象を受けました。

かと思えば「Yoko Ono」という皮肉に満ちた楽曲も用意されていたり、歌詞の面では従来の彼ららしい「No One Dies A Virgin」みたいなアップチューンも存在する。かつての“らしさ”を完全に捨て切ったわけでもなく、そのへんもPOISONと共通するものがあるような気がします。

12曲/約49分という尺に対してバラードタイプのミディアムナンバーが4曲(「Good Life」「Coming Home」「Gone For Good」「Scars」)は比較的多めに映りますが、全体的に楽曲のバラエティに富んでいることもあり、最後まで飽きずに楽しむことができる。かつ、日本盤によくありがちなボーナストラックを含まない構成なので、そこも個人的には好印象です。個人的には上で挙げたような楽曲に加えてラスト2曲、グルーヴィながらも情熱的なメロディが印象的なハードロックチューン「Voodoo Spell」とアーシーなバラード「Scars」がお気に入り。このバンドの本流とはちょっと異なるタイプかもしれませんが、曲が良ければすべてよし。そこまで熱心なリスナーではないので、これはこれでアリだと思っています。

この変化が吉と出るか凶と出るのか。チャート的には成功を収めたようですが、もしかしたら次のアルバムでまたいかがわしい路線に回帰していたら、それはそれかな(笑)。とにかく、これはこれで良質なメロディアスハードロックアルバムとしてプッシュしておきます。

 


▼KISSIN' DYNAMITE『NOT THE END OF THE ROAD』
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2022年2月 6日 (日)

VENOM PRISON『EREBOS』(2022)

2022年2月4日にリリースされたVENOM PRISONの3rdアルバム。日本盤は同年2月2日に先行発売。

新録作品としては企画アルバム『PRIMEVAL』(2020年)以来1年4ヶ月ぶり、オリジナルアルバムとしては『SAMSARA』(2019年)から約3年ぶりとなる待望の新作。デビューから一貫して所属してきたProsthetic Recordsを離れ、今作からCentury Media Recordsへと移籍。これにより、日本でもようやく国内盤が流通することになりました。

新たなプロデューサーとしてスコット・アトキンス(CRADLE OF FILTH、GAMA BOMB、SAVAGE MESSIAHなど)を迎えた本作は、バンドにとって真の勝負作になるであろう注目の1枚。かつて『SAMSARA』のレビューにおいて、僕は「この2ndアルバムを起点にして、続く3rdアルバムで間違いなく“化ける”はずです」と記しており、続く企画盤『PRIMEVAL』のレビューにおいても新曲に対して「この2曲だけでも、VENOM PRISONがさらに進化を遂げていることが伺えるし、ますます純然たる3rdアルバムの発表が楽しみになってきました」と書き残しています。そんな期待感高めで接した今作、想像以上に“化けて”いました。

2ndアルバムではデスメタルやハードコア、グラインドコアからの影響が強い残虐なサウンドが軸になっていましたが、続く企画盤に収められた新曲(「Defiant To The Will Of God」「Slayer Of Holofernes」)からはプログレッシヴな展開を持つアレンジが強まり、かつメロディアスな側面もちらほらと見受けられましが。今作はそういった「Defiant To The Will Of God」「Slayer Of Holofernes」の流れを汲みながらも、さらにソングライティング力、バンドのアレンジ力がブラッシュアップされた、ある意味正統派ヘヴィメタルにも接近した、親しみやすさの増した作風に仕上げられています。

アルバムの冒頭を飾るイントロダクション「Born From Chaos」の時点で、抒情的な要素が強まっていることが伝わりますが、続く「Judges Of The Underworld」ではそのテイストが全開に。ギターフレーズが織りなすメロウ&ドラマチックな要素、ラリッサ・ストゥーパー(Vo)の強烈な咆哮とその後ろに重ねられたクリーンボーカルの織りなすハーモニーは、過去の作品とはタイプの異なる美しさを楽しむことができる。各楽器とボーカルのミックスバランスも非常に良好で、この手のジャンルとしては異常に聴きやすい作りになっています。なので、全10曲/約49分をフルで何度もリピートしてもまったく耳が疲れないんです。

どの曲も楽曲構成やアレンジ面が非常に練り込まれており、1曲の中に複数の要素が感じられるものも多い。メロウで複雑な展開をするデスメタルというとメロディックデスメタルをイメージするかもしれませんが、VENOM PRISONの場合はそれらとは少々異なるものであり、また新たなスタイルが確立されつつあるのかなという印象もあります。これ、極めたらさらにすごいことになるんだろうなと、最初に聴き終えたときはドキドキしたことをよく覚えています。

そんな良質な楽曲群の中で、特に賛否を呼びそうなのが5曲目の「Pain Of Oizys」。ここではラリッサが思いっきりクリーントーンで歌うパートの比重が高く、そのゴシック色の強い曲調と相まった、悲しさと美しさが同居する強烈な名曲に仕上げられています。過去のアルバムや初期のEPにこそこのバンドの個性を見出していたリスナーには問題作かもしれませんが、VENOM PRISONをさらに一段高い場所へと導くためには必要な変化だと個人的には感じています。

『SAMSARA』でこのバンドに夢中になったという方々が本作で離れてしまう可能性も少なからず存在しますが、それ以上に今作で初めてVENOM PRISONに触れてファンになった、という新たなファンもそれ以上に獲得できるはず。本作はこの先のデスメタルシーンおよびエクストリームメタルシーンにおける新たなスタンダードになる……そう確信しています。いやはや、年始からとんでもない傑作を届けてくれたもんだ。

 


▼VENOM PRISON『EREBOS』
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2022年2月 5日 (土)

KORN『REQUIEM』(2022)

2022年2月4日にリリースされたKORNの14thアルバム。

90年代半ばに登場したニューメタルバンドの中でも、もっともコンスタントに新作を届け続けているKORN。今作は『THE NOTHIG』(2019年)から2年5ヶ月と、比較的短いスパンで届けられたLoma Vista移籍第1弾作品となります。昨年11月にリードトラック「Start The Healing」が公開された際、バンドの最新アー写にはフィールディ(B)の姿はなく、MVにもフィールディは登場せず、彼の愛用するベースが映されるのみでした。レコーディングには参加しているものの、その後「自分の内面と向き合う時間が必要」とのことで本作完成後の活動には不参加。ツアーにはSUICIDAL TENDENCIESのラ・ディアスが参加するそうです。うん、この組み合わせも面白いし、しっくり来るものがありますね。

さて、内容について。長きにわたりKORNの作品に携わってきたクリス・コリアーをプロデューサーに迎えた本作は、一聴してわかるように非常にKORNらしい内容に仕上がっていると思います。全体的にミディアムテンポの楽曲中心の、メロディアスな側面が強調された作風は近年の彼ら、特に11thアルバム『THE PARADIGM SHIFT』(2013年)以降の流れを汲むものがあります。しかし、本作の楽曲群が過去数作とちょっと異なるのは、そのメロディやバンドアンサンブルの作り込みが尋常じゃないこと。コロナ禍でツアーに出られなかったこともあり、制作にじっくり時間をかけられたことで楽曲の完成度、充実度がいつも以上に高いことは聴いてすぐにご理解いただけると思います。

もちろん、ただメロディアスなだけではなく、このバンドの武器であるヘヴィな側面、サイケデリックな側面も随所に散りばめられている。それはジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱スタイルにも言えることで、時に繊細に表現し、時に豪快に歌い上げ、あるときにはグロウルでヘヴィさを表現し、あるときには幾重にもボーカルを重ねてハーモニーの壁を作るなど、歌唱面だけでもかなり特筆/注目すべきポイントがたくさん見受けられます。

一方、バンドアレンジに関しても“いかにもKORNらしい”フレーズや味付けが満載。1stアルバム『KORN』(1994年)から現在に至るまで、過去13作の要素が絶妙なバランスで散りばめられており、その組み合わせの妙がいつも以上に冴えわたっている。その創意工夫は「これまで聴いたことあるような」ものから「ありそうでなかった要素」まで多岐にわたり、改めてこのバンドの懐の深さを実感させられました。なもんで、初めてこのアルバムに触れてから(仕事上、リリースより前に耳にすることができたのですが)何度も何度もリピートしています。KORNの新作をここまでヘビロテしたの、いつ以来だろう……ってくらいに夢中になれる要素が本当に豊富なんですよ。

その要因としてひとつ大きいのは、全9曲で32分強というトータルランニングも大きいでしょう。これまでのKORNの作品中もっとも曲数が少なく、かつもっとも短尺な本作は、ある意味ではサブスク全盛の現代的な尺でもあり、ある意味では1970年代から80年代前半のアナログ時代のロックへと回帰した作風とも言える。そうそう、本作のレコーディングはアナログ録音とのことで、アナログ録音のベーシックトラックにPro-Toolsを使ったデジタルエフェクトを加えたあと、再度アナログに落とし込むくらい音にこだわったそう。生々しさが伝わる質感もあって、本当に飽きずに楽しめる1枚です。

日本盤はボーナストラックとして「I Can't Feel」を追加した全10曲/36分。これでも昨今のメタル系作品と比べて短いですよね(苦笑)。個人的には名曲と呼ぶに相応しい仕上がりの「Worst Is On Its Way」で締め括る形がベストですが、この「I Can't Feel」も悪くない出来(むしろアルバム本編にしれっと混じっていても違和感ない仕上がり)なので、ここはアルバム本編に対するエピローグ、カーテンコール(映画だったらエンドロール)的なポジションで楽しむのが一番ではないでしょうか。リリースまでは9曲バージョンに親しんできたのですが、この1曲が加わったことでさらに新鮮味が増し、散々リピートしてきた本作をさらに何度も再生しているところです。

まもなくバンド結成30周年という事実に驚かされ、あと2年もすれば名デビュー作『KORN』発売からも30年。そう考えたら、この14作目のアルバムは“KORNという集合体”の総決算的内容なのかなと思いました。ジョナサン曰く、アルバムラストナンバー「Worst Is On Its Way」は映画でいうところの「次回へ続く」的なポジションとのことなので、続く15thアルバムは30周年のタイミングに……何度目かの新章に突入したKORNの姿を目にすることができるかもしれませんね。いやあ、本当に素晴らしい傑作です。

 


▼KORN『REQUIEM』
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2022年2月 4日 (金)

SURVIVOR『EYE OF THE TIGER』(1982)

1982年6月8日にリリースされたSURVIVORの3rdアルバム。

アルバムからのリード曲にして、映画『ロッキー3』のテーマソングとしてシングル化されたタイトルトラック「Eye Of The Tiger」が6週連続全米1位(同年間チャート2位)を記録し、シングルのみで800万枚を超えるヒット曲に。さらに「American Heartbeat」(同17位)や「The One That Really Matters」(同74位)といったスマッシュヒットも生まれ、アルバム自体も全米2位まで上昇するミリオンヒット作となりました。

当時のメンバーはデイヴ・ビックラー(Vo)、フランキー・サリヴァン(G)、ジム・ピートリック(Key, G)、ステアン・エリス(B)、マーク・ドラウベイ(Dr)。プロデュースはメンバーのフランキーが担当し、レコーディングエンジニアにはフィル・ボナーノ(STYXCHEAP TRICKENUFF Z'NUFFなど)と、のちにGUNS N' ROSESのデビュー作『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)で名を上げるマイク・クリンクが参加という、実はロック史的には特筆しておくべきポイントを含む1枚でもあります。

どうしても「Eye Of The Tiger」の印象が強い1枚ですが(だって、アルバムの1曲目)、実は本作が本領発揮するのは続く2曲目「Feels Like Love」以降。この軽やかで疾走感の強いアメリカンロックを筆頭に、AC/DCを彷彿とさせるミディアムナンバー「Hesitation Dance」、ノリの良いハードロックチューン「The One That Really Matters」、ピアノやシンセの音色が心地よいマイナーキーの「I'm Not That Man Anymore」と佳曲が続きます。この4曲だけでもだいぶバンドの印象が変わるのではないでしょうか。

アナログB面の冒頭を飾る6曲目「Children Of The Night」でのアコギを活用したダイナミックなアレンジ、バンドの繊細な部分を前面に打ち出したメロウなバラード「Ever Since The World Began」、個人的には「Eye Of The Tiger」以上の完成度を誇ると確信する名曲「American Heartbeat」と聴き応えのある楽曲が連発され、最後はパワーバラード調のミディアムナンバー「Silver Girl」で締め括り。非常によく練り込まれた、完成度の高いハードロック/産業ロックアルバムだと思います。

映画『ロッキー』関連の主題歌のイメージが付きまとい、ハードロックバンドとして正当な評価を受けにくい彼らですが、本作や2代目シンガーのジミ・ジェイミソン初参加の5thアルバム『VITAL SIGNS』(1984年)はアメリカンハードロック/産業ロック/AOR好きなら抑えておくべき名盤だと断言しておきます。

 


▼SURVIVOR『EYE OF THE TIGER』
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2022年2月 3日 (木)

JOURNEY『ESCAPE』(1981)

1981年7月17日にリリースされたJOURNEYの7thアルバム。

前作『DEPARTURE』(1980年)が初の全米TOP10入り(最高8位)を記録し、「Any Way You Want It」(全米23位)、「Walks Like a Lady」(同32位)、「Good Morning Girl / Stay Awhile」(同55位/両A面)といったヒットシングルを輩出。1980年12月には日本映画『夢・夢のあと』のために制作されたサウンドトラックアルバム『DREAM, AFTER DREAM』、1981年1月には初のライブアルバム『CAPTURED』も連発し、こちらも全米9位まで上昇、さらに同作からは「The Party's Over (Hopelessly in Love)」(同34位)というスマッシュヒットシングルも生まれました。

この勢いを途絶えさせないようにと、スタジオ作としては1年5ヶ月という短いスパンで届けられた今作。「Who's Crying Now」(全米4位)、「Don't Stop Believin'」(同9位)、「Open Arms」(同2位)、「Still They Ride」(同19位)とシングルヒットを連発させ、アルバム自体も初の全米1位を獲得。現在までに1000万枚以上を売り上げる、オリジナルアルバムとしてはキャリア最大のヒット作となりました(バンド最大のヒット作は1988年に発表したベスト盤『GREATEST HITS』で、アメリカのみで1500万枚超)。

ハードロックバンドとしての魅力は次作『FRONTIERS』(1983年)に譲るものの、アメリカンロックの大らかさとポップスとして通用するソフト感のバランスにもっとも優れているのが本作の特徴でしょうか。今作はグレッグ・ローリー(Key)から元THE BABYSのジョナサン・ケインへとメンバーチェンジして初のアルバムで、ジョナサンは早くもソングライティング面で大貢献しており、全10曲すべてに携わっています。

「Who's Crying Now」や「Don't Stop Believin'」といったバラードヒットの印象が強い本作(およびJOURNEYというバンドのパブリックイメージ)ですが、「Stone In Love」や「Keep On Runnin'」「Escape」をはじめとする楽曲では70年代から引き継ぐアメリカンハードロックバンドとしての矜持が伝わる、随所にテクニカルな演奏/アレンジがフィーチャーされています。特に、「Keep On Runnin'」や「Dead Or Alive」で味わえる疾走感や「Escape」で楽しめるプレイヤー陣の奇才ぶりは、本作における真の意味での醍醐味ではないでしょうか。ニール・ショーン(G)のギタリストとしての才能は本作の随所から伝わってきますし、「Mother, Father」でのリフワークのカッコ良さに関しては特筆しておくべきポイントだと断言しておきます。

その一方で、スティーヴ・ペリー(Vo)の声の存在感もさすがの一言で、ぶっちゃけシンガーとしての絶直期は今作や続く『FRONTIERS』、そしてソロアルバム『STREET TALK』(1984年)あたりではないかと思うほど。先に触れた「Mother, Father」はニールのギターのみならず、スティーヴのボーカルワークも絶品で、数々のシングルヒットを差し置いて真っ先にオススメしたい1曲でもあります。このドラマチックなハードロックチューンがあるからこそ、続くラストナンバー「Open Arms」がより輝くわけです。

音の質感的には70年代の延長線上にあるため、今聴くと若干の古臭さを感じずにはいられませんが(特に、80年代的な質感の『FRONTIERS』のあとに聴くと余計に感じるかも)、内容の充実度はキャリア最高峰。個人的にはベストアルバムよりも真っ先に聴くべき1枚だと思っています。

にしても、1981年7月というタイミングに本作とFOREIGNERの4thアルバム『4』がリリースされているという事実、非常に興味深いです。ハードロック界隈的には新興勢力が現れ始めた時期ですが、70年代からシーンを牽引してきたバンドたちによる奮起がもっとも伝わる2枚かもしれませんね。

 


▼JOURNEY『ESCAPE』
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2022年2月 2日 (水)

FOREIGNER『4』(1981)

1981年7月2日にリリースされたFOREIGNERの4thアルバム。

1977年にアルバム『FOREIGNER』でデビューして以降、リリースした3作のアルバムすべてがアメリカでマルチプラチナム(1stと3rdアルバム『HEAD GAMES』は現在までともに500万枚、2ndアルバム『DOUBLE VISION』は700万枚)という快挙を成し遂げたFOREIGNER。80年代に突入して最初のアルバムとなる本作では、チャート的にも初の全米1位を獲得したほか、「Urgent」(全米4位)、「Waiting For A Girl Like You」(同2位)、「Juke Box Hero」(同26位)、「Break It Up」(同26位)、「Luanne」(同75位)とヒットシングルを連発します。

このうち「Waiting For A Girl Like You」は10週連続2位という快挙なのか不名誉なのかわからない記録を樹立し、1982年の全米年間チャートで19位にランクインしました(ちなみに、このタイミングの1位はオリヴィア・ニュートン・ジョン「Physical」とHALL & OATESの「I Can't Go For That (No Can Do)」でした)。こういったヒットもあり、アルバム自体も全米で600万枚以上を売り上げる、キャリア2番目のセールスを誇る代表作となりました。

前作でのロイ・トーマス・ベイカーから、新たにプロデューサーにロバート・ジョン・マット・ラングを迎えて制作された本作。すでにマット・ラングはAC/DC『HIGHWAY TO HELL』(1979年)『BACK IN BLACK』(1980年)で名声を得ており、このFOREIGNERのアルバムと同タイミングにはDEF LEPPARDの2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)も発売されています。要は、プロデューサーとしてノリにノッた時期の1枚ということです。それもあってなのか、本作のサウンド面はバンドとして非常に脂の乗った演奏/アレンジを楽しむことができるのです。

しかし、バンドとしては初期メンバーのイアン・マクドナルド(G, Sax)とアル・グリーンウッド(Key)が脱退し、ルー・グラム(Vo)、ミック・ジョーンズ(G, Key)、リック・ウィルス(B)、デニス・エリオット(Dr)の4人編成になってしまったタイミング。そんなタイミングにトーマス・ドルビー(Synth)をはじめとするゲストプレイヤーを多数迎えることで、核となる4人で作り上げる“ロックバンドFOREIGNER”の真骨頂と、トーマス・ドルビーのシンセプレイ/アレンジを全面に打ち出した当時の最新テクノロジーを駆使することで、“(1981年当時の)ロックの未来”が味わえる1枚が完成したわけです。

前作までの流れを汲む豪快なハードロック「Night Life」から始まる本作。同曲や「Juke Box Hero」「Luanne」「I'm Gonna Win」など陽気なアメリカンロック的側面を強調した楽曲がある一方で、欧州風の湿り気が感じられる憂いのハードロック「Break It Up」「Girl On The Moon」、シンセを前面に打ち出したバラード「Waiting For A Girl Like You」、ニューウェイヴの延長線上にありながらもハードロック的色合いを維持した良曲「Urgent」など、とにかくヒットチャートに優しい耳馴染みの良い“産業ハードロック”がズラリと並びます。どれも完成度の高い楽曲ばかりなので、そりゃ当時ラジオでかかりまくるわけで、それがセールスにもつながるのも納得。

2022年の耳で接すると、トーマス・ドルビーの奏でるシンセの音色は時代を感じずにはいられませんが、少なくとも80年代前半の耳にはこれこそが最新かつ未来の音であり、ハードロックバンドがこうしたテクノロジーを率先して取り入れたことは衝撃だったのではないでしょうか。この数年後にVAN HALEN「Jump」という名曲でチープなシンセサウンドを導入したことで、また時代は変化するのですが(あれはあれで大発明なんですけどね)、この時代にリアルタイムでこのアルバムに触れていたら間違いなく僕も「……未来見えた!」と興奮していたことでしょう。残念ながら、僕が本作に触れずのは80年代半ばのこと。3、4年でテクノロジーが次々と進化するタイミングだったので、この時期に聴いてもすでに若干の古さがありましたが。

ちなみに、現在流通しているCDおよびストリーミング版の本作にはボーナストラックとして、「Juke Box Hero」「Waiting For A Girl Like You」の“Nearly unplugged version”と称したアコースティックバージョンを追加収録。こちらは1999年に録音されたものなので、ルー・グラムの声の老いを感じずにはいられません(涙)。

 


▼FOREIGNER『4』
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2022年2月 1日 (火)

GLASS TIGER『THE THIN RED LINE』(1986)

1986年6月11日にリリースされたGLASS TIGERの1stアルバム。日本では『傷だらけの勲章』の邦題で、同年11月21日発売。

GLASS TIGERは1983年にカナダ・オンタリオ州ニューマーケットで結成された5人組ロックバンド。Captol Recordsと契約後、ブライアン・アダムスのソングライティングパートナーとして知られるジム・ヴァランスをプロデューサーに迎え、このデビューアルバムを完成させます。アルバムにはブライアン・アダムス(と彼のバンドメンバーでもあるキース・スコット)もゲスト参加していることもあって、シングル「Don't Forget Me (When I'm Gone)」は本国チャート1位、USチャートでも最高2位というデビューヒットを果たします。以降も「Thin Red Line」(カナダ19位)、「Someday」(カナダ14位、米7位)、「You're What I Look For」(カナダ14位)、「I Will Be There」(カナダ11位、米34位)スマッシュヒットを連発。アルバム自体もカナダ3位、米27位と好記録を残し、アメリカでは50万枚を超えるヒットさくとなりました。

サウンド的にはニューウェイヴを通過したポップロック/産業ロックといった印象ですが、「Thin Red Line」や「Don't Forget Me (When I'm Gone)」といった楽曲からはハードロック的なテイストも伝わります。特に後者や「Someday」といったヒット曲にはジム・ヴァランスもソングライターとして参加していることもあり、楽曲としての完成度の高さも印象的です。

ブライアン・アダムスがフックアップしたことがヒットにつながったことは大きな要因のひとつですが、ブライアンのような開放感の強いストレートなロックンロールをイメージすると、ちょっと肩透かしを喰らうかも。そのブライアンが印象的なコーラスで参加した「Don't Forget Me (When I'm Gone)」や「I Will Be There」あたりはブライアンの楽曲との共通点も見つけることができますし、「Ancient Evenings」のようにハードロック的アプローチを備えた楽曲も存在するにはしますが、このバンドはギターを前面に打ち出すよりも「Close To You」や「Vinishing Tribe」のようにシンセを軸にしたニューウェイヴタッチのナンバーが大半を占めるので、そのへんは覚悟してから触れたほうがよいかと思います。

そういったシンセメインのアレンジやドラムの音色などに時代を感じずにはいられませんが、個人的にはこの「ハードロックの色を含むニューウェイヴ」感は意外と心地よいものがあり、単なる一発屋ポップロックバンドと切り捨てるには勿体ない存在/アルバムだと思っています。ちょっと視点を変えたら、DURAN DURAN以降の英国ニューロマンティック勢に対するカナダからの答え、と受け取ることもできるのかなと。そこにソングライティング面でブライアン・アダムス一門がフォローアップすることで、何かに似ているようで実はオリジナリティに満ち溢れた不思議な1枚が完成した。それがこの奇跡のバランスで成立する隠れた名盤なのかもしれません。

ちなみに僕、本作は日本盤リリース直後にCDを購入しています。確か、BOØWY『BEAT EMOTION』(1986年)の次に買ったのがこのアルバムだったんじゃないかな。つまり、人生で2番目に購入したCDがこれだった、と。そりゃ思い入れもありますよ。中学3年生の自分、意外と見る目あったのかな(苦笑)。

なお、本作はユニバーサルミュージックが企画する『初CD化&入手困難盤復活!! HR/HM VOL.5:世界15カ国編』の一環で、3月23日に廉価盤として再発予定。本作をHR/HMの範疇に含んでしまって本当に大丈夫? 「カナダから登場した正統派ハード・ロック・バンドのデビュー・アルバム」と言い切っても本当に平気?とこちらが勝手に不安を覚えていますが、これを機に当時スルーしていたHR/HMリスナーの琴線にも触れることがあったら、いちファンとしてはこの上なく幸せでございます。

 


▼GLASS TIGER『THE THIN RED LINE』
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BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』(1983)

1983年1月18日にリリースされたブライアン・アダムスの3rdアルバム。

1stアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)、2ndアルバム『YOU WANT IT YOU GOT IT』(1981年)と大きなヒットを飛ばすことができなかったブライアン・アダムス。起死回生とばかりに制作されたこの3作目からは、リードシングル「Let Him Know」こそ不発に終わりましたが、続くリカットシングル「Straight From The Heart」が本国カナダで初のTOP20入り、アメリカでも最高10位という高記録を残すことに。これを受けてアルバムもカナダで9位、アメリカで8位まで上昇し、「Cuts Like A Knife」(カナダ12位、米15位)、「This Time」(カナダ32位、米24位)と続々シングルヒットを飛ばし、続く4thアルバム『RECKLESS』(1984年)メガヒットへの下地を作ることになります。

プロデュースは前作から引き続きボブ・クリアマウンテン(THE ROLLING STONESデヴィッド・ボウイブルース・スプリングスティーンなど)とブライアン本人。音の解像度の良さは次作ほどではありませんが、あの時代のアルバムにしては非常にクリアで、ギターの音の粒もよく聞き取れるミキシングではないでしょうか。ゲートリバーブのかかったドラムサウンドも特徴的で、80年代らしさ満載です。

また、このアルバムのレコーディングから以降長きにわたり活動をともにするキース・スコット(G)が初参加。キース、デイヴ・テイラー(B)、ミッキー・カリー(Dr)、トミー・マンデル(Key)という90年代後半まで続く鉄壁の布陣が完成します。さらに、レコーディングにはルー・グラム(Vo/当時FOREIGNER)がコーラスでゲスト参加しています。

楽曲は『RECKLESS』期よりもラフさが目立つ、よい意味で“野暮ったさ”が感じられる内容。『RECKLESS』も十分ハードロック的側面を持つ作品ですが、本作のほうが80年代初頭的ハードロックさが伝わる楽曲が多く、「Take Me Back」や「Don't Leave Me Lonely」あたりは当時のKISSにも通ずるものがあるのではないでしょうか。それもそのはず、後者はソングライティングにKISSのエリック・カー(Dr, Vo)が参加しているのですから。これはKISSの当時の最新作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)にブライアンと彼の相棒ジム・ヴァランスが「Rock And Roll Hell」「War Machine」にコライトで加わったことへのお返しだったのかもしれませんね。この「Don't Leave Me Lonely」、聴けば聴くほどKISSっぽく思えてくるから不思議です(笑)。

「This Time」「Straight From The Heart」「Cuts Like A Knife」と代表曲が並ぶアナログA面の充実度の高さは、改めて目を見張るものがあります。これらのヒットが続く『RECKLESS』のベースになっていることは間違いないでしょう。「Straight From The Heart」は同じバラードでも、のちの大ヒット曲「Heaven」ほどのダイナミズムはないものの、このシンプルさが良いというファンも少なくないはず。僕自身も「Heaven」や「(Everything I Do) I Do It For You」のようなドラマチックさに磨きがかかったパワーバラードより、素朴さの伝わる「Straight From The Heart」のほうがお気に入り。特にこの曲、ライブバージョンが素晴らしいんですよね。1983年当時、MTVなどでオンエアされていたライブ映像を観て僕は一目惚れ(一耳惚れか)したんですが、この映像は今でもYouTubeで視聴可能なので、ぜひチェックしてみてください(↓)。

同じバラードでも、アルバムラストを飾る「The Best Was Yet To Come」も味わい深くて最高。アナログB面は前半と比べて若干地味さが気になりますが、「Don't Leave Me Lonely」やポップな「Let Him Know」、そしてこの「The Best Was Yet To Come」で帳消しにしてくれるはず。全曲ベストとは言い難いものの、そのアンバランスさ含めて当時23歳のブライアン・アダムスを追体験できる1枚です。

 


▼BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』
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