KORN『REQUIEM』(2022)
2022年2月4日にリリースされたKORNの14thアルバム。
90年代半ばに登場したニューメタルバンドの中でも、もっともコンスタントに新作を届け続けているKORN。今作は『THE NOTHIG』(2019年)から2年5ヶ月と、比較的短いスパンで届けられたLoma Vista移籍第1弾作品となります。昨年11月にリードトラック「Start The Healing」が公開された際、バンドの最新アー写にはフィールディ(B)の姿はなく、MVにもフィールディは登場せず、彼の愛用するベースが映されるのみでした。レコーディングには参加しているものの、その後「自分の内面と向き合う時間が必要」とのことで本作完成後の活動には不参加。ツアーにはSUICIDAL TENDENCIESのラ・ディアスが参加するそうです。うん、この組み合わせも面白いし、しっくり来るものがありますね。
さて、内容について。長きにわたりKORNの作品に携わってきたクリス・コリアーをプロデューサーに迎えた本作は、一聴してわかるように非常にKORNらしい内容に仕上がっていると思います。全体的にミディアムテンポの楽曲中心の、メロディアスな側面が強調された作風は近年の彼ら、特に11thアルバム『THE PARADIGM SHIFT』(2013年)以降の流れを汲むものがあります。しかし、本作の楽曲群が過去数作とちょっと異なるのは、そのメロディやバンドアンサンブルの作り込みが尋常じゃないこと。コロナ禍でツアーに出られなかったこともあり、制作にじっくり時間をかけられたことで楽曲の完成度、充実度がいつも以上に高いことは聴いてすぐにご理解いただけると思います。
もちろん、ただメロディアスなだけではなく、このバンドの武器であるヘヴィな側面、サイケデリックな側面も随所に散りばめられている。それはジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱スタイルにも言えることで、時に繊細に表現し、時に豪快に歌い上げ、あるときにはグロウルでヘヴィさを表現し、あるときには幾重にもボーカルを重ねてハーモニーの壁を作るなど、歌唱面だけでもかなり特筆/注目すべきポイントがたくさん見受けられます。
一方、バンドアレンジに関しても“いかにもKORNらしい”フレーズや味付けが満載。1stアルバム『KORN』(1994年)から現在に至るまで、過去13作の要素が絶妙なバランスで散りばめられており、その組み合わせの妙がいつも以上に冴えわたっている。その創意工夫は「これまで聴いたことあるような」ものから「ありそうでなかった要素」まで多岐にわたり、改めてこのバンドの懐の深さを実感させられました。なもんで、初めてこのアルバムに触れてから(仕事上、リリースより前に耳にすることができたのですが)何度も何度もリピートしています。KORNの新作をここまでヘビロテしたの、いつ以来だろう……ってくらいに夢中になれる要素が本当に豊富なんですよ。
その要因としてひとつ大きいのは、全9曲で32分強というトータルランニングも大きいでしょう。これまでのKORNの作品中もっとも曲数が少なく、かつもっとも短尺な本作は、ある意味ではサブスク全盛の現代的な尺でもあり、ある意味では1970年代から80年代前半のアナログ時代のロックへと回帰した作風とも言える。そうそう、本作のレコーディングはアナログ録音とのことで、アナログ録音のベーシックトラックにPro-Toolsを使ったデジタルエフェクトを加えたあと、再度アナログに落とし込むくらい音にこだわったそう。生々しさが伝わる質感もあって、本当に飽きずに楽しめる1枚です。
日本盤はボーナストラックとして「I Can't Feel」を追加した全10曲/36分。これでも昨今のメタル系作品と比べて短いですよね(苦笑)。個人的には名曲と呼ぶに相応しい仕上がりの「Worst Is On Its Way」で締め括る形がベストですが、この「I Can't Feel」も悪くない出来(むしろアルバム本編にしれっと混じっていても違和感ない仕上がり)なので、ここはアルバム本編に対するエピローグ、カーテンコール(映画だったらエンドロール)的なポジションで楽しむのが一番ではないでしょうか。リリースまでは9曲バージョンに親しんできたのですが、この1曲が加わったことでさらに新鮮味が増し、散々リピートしてきた本作をさらに何度も再生しているところです。
まもなくバンド結成30周年という事実に驚かされ、あと2年もすれば名デビュー作『KORN』発売からも30年。そう考えたら、この14作目のアルバムは“KORNという集合体”の総決算的内容なのかなと思いました。ジョナサン曰く、アルバムラストナンバー「Worst Is On Its Way」は映画でいうところの「次回へ続く」的なポジションとのことなので、続く15thアルバムは30周年のタイミングに……何度目かの新章に突入したKORNの姿を目にすることができるかもしれませんね。いやあ、本当に素晴らしい傑作です。
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