OZZY OSBOURNE『SPEAK OF THE DEVIL』(1982)
1982年11月27日にリリースされたオジー・オズボーン初のライブアルバム。日本盤は同年12月に、『悪魔の囁き』の邦題で発売。
1982年3月19日、バンドメンバーのランディ・ローズ(G)が飛行機事故で急逝し、失意のどん底に叩き落とされたオジー。ランディが亡くなる前からBLACK SABBATH時代の楽曲のみで構成されたライブアルバム制作は予定されていたそうですが、その後ランディの後任としてバーニー・トーメが一時的にライブでサポートしたのちに、当時NIGHT RANGERでのデビューを控えたブラッド・ギルスがバンドに加わり、1982年9月26、27日に本作の音源が収録されたニューヨークのThe Ritzでの公演が行われました。
バンドメンバーはオジー(Vo)、ブラッド(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)という布陣。実際のライブではオジーのソロ曲も披露されていますが、アルバムには当初の計画どおりサバスナンバーのみが収められています。ランディ在籍時からオジーのライブではすでに「Iron Man」「Children Of The Grave」「Paranoid」といったサバス曲は披露済みで、その様子はのちに発表されたライブアルバム『TRIBUTE』(1987年)などでも確認できます。
プロデュースおよびミックスは直近のスタジオアルバム『DIARY OF A MADMAN』(1981年)を手がけたマックス・ノーマンが担当。質感的にはかなり近いものがありますが、オジーのソロ曲には合っているこのプロダクションもサバス曲にはちょっと軽すぎる印象も。というよりも、ルディ&トミーのリズム隊が軽すぎるのと、ブラッドのギターワークがメタリックではないことが、アルバム全体の軽さに影響を与えているような気がしてなりません。
ブラッドのギタープレイは原曲に忠実ながらも、随所にアーミングを多用した彼らしい“遊び”が取り入れられており、これはこれで面白いのですが、もうちょっと深く歪ませてもよかったんじゃないかなと(まあ、それじゃあブラッドらしくないという話もありますが)。この時点でNIGHT RANGERへ戻ることは間違いなかったので、彼は彼なりに仕事に徹しただけなんでしょう。そういった意味では及第点かなと思います。
ルディのベースも頑張ってはいるものの、はやり原曲を弾くギーザー・バトラーのプレイと比較してしまうと物足りなさを感じてしまう。そして、問題なのはトミーの軽やかなドラミング。これまでさまざまなバンドで彼らのパフォーマンスを観てきましたが、手数の多さで派手さを演出するタイプなのでサバスのようにシンプルなプレイで重さを表現する楽曲にはそもそも合っていないのかもしれません(オジーソロはヘヴィさもあるものの、楽曲自体がポップかつキャッチーなのでかろうじて適していたようですが)。
とはいえ、選曲自体はサバスの1stアルバム『BLACK SABBATH』(1970年)と2ndアルバム『PARANOID』(1970年)という代表作からの楽曲中心(メドレー含む全13曲中7曲)で、そこに「Sympton O The Universe」や「Snowblind」「Sweet Leaf」「Never Say Die」などオジーらしいセレクトが含まれており、これがオジーがイメージするBLACK SABBATH像なのかなと興味深いものがあります。本作発売から半月後にはロニー・ジェイムズ・ディオを加えた本家サバスも『LIVE EVIL』(1982年)というライブ作品を発表しており、そちらに含まれるオジー在籍時の楽曲がすべて『SPEAK OF THE DEVIL』にも含まれていることを考えると、オジー側とトニー・アイオミ(G)側の初期サバス像はほぼ一緒なのかもしれませんね。
なお、本作は1995年にリマスタリングされ、アートワークを一新した形で再発(下記ジャケ写がそちら)。しかし、2002年に新たなリマスター処理が施されたリイシュー企画の際には廃盤扱いとなり、以降もオフィシャルカタログ外扱いとなっています。日本盤もすでに廃盤状態で、1995年リマスターCDを輸入盤で購入することができるものの、デジタルリリースおよびストリーミング配信は国内では未実施。海外のストリーミングサービスを調べてみても、Spotifyでは引っかかるものの、Apple Musicでは未配信のようです。オジーが歌うサバス曲はサバス本家を聴けばいいわけですが、ブラッド・ギルスが弾くサバス曲はここでしか聴けないので、NIGHT RANGERファンと一部の奇特なリスナーの皆さんはぜひ輸入盤購入でチェックしてみてはどうでしょう。
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