SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『4』(2022)
2022年2月11日にリリースされたSLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSの4thアルバム。日本盤未発売。日本盤は同年6月22日に、ボーナストラックを追加した形態で発売予定。
GUNS N' ROSESのスラッシュ(G)がALTER BRIDGEのマイルズ・ケネディ(Vo)とタッグを組み、THE CONSPIRATORSと命名したメンバーとのバンド形態で制作した、前作『LIVING THE DREAM』(2018年)から3年5ヶ月ぶりの新作。90年代に活動したSLASH'S SNAKEPITや2010年に制作された純粋なソロアルバム『SLASH』(2010年)、映画のサウンドトラックなどを含めると、通算8作目のソロワーク/リーダーアルバムとなります。
今作は新興レーベルGibson Recordsと契約して最初の作品で、プロデューサーには新たにデイヴ・コッブ(RIVAL SONS、EUROPE、レディ・ガガなど)を迎えて制作。ナッシュビルにあるRCA Studio Aにて、たった10日間のライブレコーディングを通じて完成させた10曲が収録されたバランス感に優れたハードロックアルバムに仕上がっています。
現在のバンドメンバーはスラッシュ、マイルズ・ケネディ、トッド・カーンズ(B, Vo)、ブレント・フィッツ(Dr)という結成時からのメンバーに加え、2ndアルバム『WORLD ON FIRE』(2014年)リリース後のツアーから参加しているフランク・シドリス(G, Vo)の5人。この布陣では前作『LIVING THE DREAM』に続く2作目、リズム隊に関しては10年来の仲間ということもあり、アルバムのオープニングを飾る「The River Is Rising」を筆頭に気心知れたメンツによる安定感の強いハードロックが展開されています。
基本的にはいかにもスラッシュらしいミディアムテンポの豪快アメリカンハードロックが中心。この人に何を求めるのかといったら間違いなくそこなわけで、従来のファンにとって期待どおりの内容と言えるでしょう。そこにマイルズ・ケネディという素晴らしいシンガーが加わることで、終始安定した楽曲を楽しむことができる。また、バンドアレンジもGN'R以降スラッシュが参加してきた楽曲群を踏まえたものばかりで、過去のTHE CONSPIRATORSとの作品はもちろん、VELVET REVOLVERやSNAKEPITなどのカラーも随所に感じられます。思えば初期のツアーでは、このへんの楽曲も随時披露されていたわけで、そういった意味ではこの新作って“ミュージシャン/アーティスト:スラッシュ”の総決算的内容と言えなくもない。要するに、最高のアメリカンハードロックを楽しめる1枚というわけですよ。
オープニングトラックにふさわしい「The River Is Rising」のカッコよさはもちろんのこと、トーキングモジュレーターを用いた冒頭のギターフレーズが印象的な「C'est la vie」、キャッチーなメロディが耳に残る「The Path Less Followed」、どことなくグラマラスさが漂う「Actions Speak Louder Than Words」、不穏なギターフレーズがたまらない妖艶な「Spirit Love」、GN'Rの「Sweet Child O' Mine」を彷彿とさせるギターフレーズに思わずニヤリな「Fill My World」、いかにもスラッシュらしいリフワーク(でもマンネリ化してない)の「April Fool」、終盤の盛り上げに最適なアップチューン「Call Off The Dogs」、スラッシュのエモーショナルなギタープレイが存分に味わえるエモーショナルなパワーバラード「Fall Back To Earth」など、意外にもバラエティ豊かな内容は過去イチと言えるものかもしれません。全10曲/約44分という尺も程よく、似たり寄ったりの楽曲が少ないコンパクトな仕上がりという事実も、このアルバムを良作たらしめる要因ではないでしょうか。
ぶっちゃけ、スラッシュ自身は良質なメロディメイカーというわけではないと思うんです。ギタリストとしては優れているけど、気がつくとすぐに手癖に走ってしまうタイプのプレイヤーですし。もちろんこのアルバムにもそういった手癖の数々を確認することはできるのですが、それを補って余るほど良質なメロディとアレンジが存在することで、過去のマンネリ的な部分が解消されている。もしかしたら今のスラッシュは過去最高の充実期に突入しているのか、あるいは最良のパートナーたちに恵まれているのか。GN'SもTHE CONSPIRATORSも活動が順調だからこその結果がこのアルバムなんでしょうね。
正直、ここまでハートを鷲掴みにされるアルバムだと思っていなかっただけに、その手応えは期待以上でした。胸を張ってオススメできる1枚です。だからこそ、こんな傑作が日本盤リリースされないという事実には落胆させられます……。
※2022年4月26日追記:日本盤のリリースが正式決定しました。ボーナストラックを追加した通常盤に加え、アルバム発売時に配信されたライブの模様を収めたライブDVD同梱の2形態を予定。4ヶ月遅れはどうかと思いますが、出るだけでもありがたいですね。
▼SLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS『4』
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