BRYAN ADAMS『PRETTY WOMAN: THE MUSICAL』(2022)
2022年3月4日にデジタルリリースされたブライアン・アダムスの新録音源集。
本日3月11日には約3年ぶりのオリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)をリリースしたばかりのブライアンですが、その1週間前にデジタル配信されたのがこの全曲新録音源による“もうひとつのニューアルバム”。とはいえ、楽曲自体は数年前に発表済みなんです。
というのも、本作はそのタイトルからもわかるように、2018年初演の同名ミュージカル『PRETTY WOMAN: THE MUSICAL』で使用された楽曲で構成されたもの。同ミュージカルの楽曲はすべてブライアンと盟友ジム・ヴァランスによって書き下ろされたもので、劇中ではすべてキャストが歌っていました(ブライアンも2019年の300講演目にゲスト出演し、一緒にパフォーマンス)。つまり、このアルバムには以前書き下ろした楽曲をすべてブライアン自身がセルフカバーした内容なのです。そういった意味で、“もうひとつのニューアルバム”なのです。
ブライアン&ジム・ヴァランスという『RECKLESS』(1984年)などを生み出した黄金コンビの書き下ろし曲だけあって、その楽曲群はどこからどう聴いてもブライアンのオリジナル曲そのもの。多少ミュージカル向けに派手&ポップさを強めた作風ではあるものの、自身のアルバム用にバンドアレンジが新たに施されたことで随所に彼らしいロック感が散りばめられており、ミュージカル作品ということを知らずに聴いても十分にブライアンの新作として通用する仕上がりではないでしょうか。
さすがに劇中で歌われることもあって、どの曲も非常にキャッチー。オープニングを飾る「Welcome To Hollywood」のドラマチックなアレンジはさすがミュージカルといった印象ですが、以降に並ぶロックロックチューン/ポップナンバー/スローバラードの数々はすべてシングルレベルのクオリティで、親しみやすさでは『RECKLESS』や『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)といったメガヒット作に並ぶ高品質な内容です。
現時点では『SO HAPPY IT HURTS』のすべてを聴けていないので、一概に比較は難しいですが、『SO HAPPY IT HURTS』がコロナ禍以降のマインドで向き合った等身大の“大人のロックンロール”だとしたら、本作で表現されているのはミュージカルをモチーフに大衆性に特化した“エヴァーグリーンな名曲集”。ある意味では対局であり、またある意味では対になる2枚と言えるのではないでしょうか。
ビートルズを通過したポップチューン「On A Night Like Tonight」もあれば、いかついロックンロール「Rodeo Drive」もあるし、爽快感の強いポップロック「Anywhere But Here」や流麗なピアノバラード「Luckiest Girl In The World」、ジャジーなテイストの「Don't Forget To Dance」、ブライアン・アダムス流王道ロック「You're Beautiful」、グルーヴィなミディアムナンバー「Never Give Up On A Dream」など、とにかくカラフルな楽曲が全16曲とボリューミーですが、ミュージカル向けということもあってか1曲1曲が2〜4分程度と非常にコンパクト。なもんで、トータルでは約51分とそこまで長く感じないのも、本作の良い点かな。バラードタイプの曲が多めなのはミュージカルという作品ありきなので目をつぶるとして、彼のポップマエストロ的側面を思う存分に楽しめる良質な内容なのは間違いない事実。そういった意味でも、『SO HAPPY IT HURTS』とあわせて楽しむべき“裏ベスト”的な1枚かもしれません。
現時点ではストリーミングとデジタルダウンロードでしか聴くことができない本作、この夏にはフィジカルでのリリースも予定されているとのこと。あえて『SO HAPPY IT HURTS』と時期をずらすことで、同作のフィジカルセールスを落とさないようにしているのかな。なんにせよ、1年を通じて話題が途切れないのは良いことです。
▼BRYAN ADAMS『PRETTY WOMAN: THE MUSICAL』
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