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2022年3月 2日 (水)

SCORPIONS『EYE II EYE』(1999)

1999年3月9日にリリースされたSCORPIONSの14thアルバム。日本盤は同年4月21日発売。

前作『PURE INSTINCT』(1996年)完成後に新ドラマーとしてジェイムズ・コタック(Dr)が加入し、新たな体制でレコーディングに臨んだ約3年ぶりの新作。ヨーロッパや日本では引き続きEast West RecordsなどWarner系からのリリースでしたが、アメリカのみインディーズのKoch Recordsからの発売となりました。

新たなプロデューサーにオーストリア出身のピーター・ウルフ(CHICAGO、STARSHIP、HEARTなど)を迎えた本作は、ポップサイドに振り切った前作以上の異色作/問題作。オープニングを飾る「Mysterious」の、コンピューターによる同期(シーケンサーサウンド)を多用したアレンジに度肝を抜かれ、続く「To Be No. 1」もブラックコンテンポラリーからの影響が強いテクノポップ風アレンジに、多くのファンが“コレジャナイ”感を覚えたことでしょう。

もちろん、従来の彼ららしいバラード「Obsession」なども用意されているのですが、それすらも同期サウンドが用いられており、さらにはQUEEN風の多重録音コーラスなども付け加えられている。バンド結成から25年以上を経て、さらにはロックバンドとして次のフェーズへと向かおうとする貪欲さは素晴らしいと思うのですが、バンドが目指すものとファンが求めるものの乖離が大きすぎ、最初は面食らうのではないでしょうか。

しかし、楽曲自体のクオリティは非常に高く(これも前作同様)、超一流のロック/ポップスとして通用するものばかり。先に挙げたアルバム冒頭の3曲(「Mysterious」「To Be No. 1」「Obsession」)は過去のSCORPIONSと比較さえしなければ、この時代にリリースされた楽曲群の中でもトップクラスの仕上がりだと断言できます。

それに、「Mind Like A Tree」や「Yellow Butterfly」みたいなヘヴィなナンバーもしっかり用意されているし、レゲエタッチの「Eye To Eye」もHR/HMではないものの悪くない。とはいえ、ドイツ語で歌われる「Du bist so schmutzig」のグルーヴィーさは当時流行したニューメタルやラップメタルへ迎合したみたいな仕上がりで、悪くはないんだけどどうかと思いますよ(ちなみにこの曲、ジェイムズ・コタックもボーカルで参加しています)。

彼ら自身がクラブミュージック愛好家であったり普段からクラブに出入りしているならまだしも、このアレンジは確実にプロデューサー自身のテイストなわけで、そこに取って付けた感を覚えてしまう。そういった意味では非常に勿体ない1枚なんですよね。これも前作同様、BGMとして流しっぱなしにしておけば楽しめる良作ではありますが、いざ「SCORPIONSを聴くぞ!」というマインドで接するにはちょっと酷な迷作かも。90年代初頭の「Wind Of Change」での世界的成功を経て、バンドが“らしさ”をもう一度掴み取るまでの迷走期ならではの1枚ではないでしょうか。

なお、本作は一時期Spotifyで国内配信もされていましたが、現在は日本のストリーミングサービスでは聴くことができません。50年のキャリア中もっとも問題となったWarner時代の2作品も、7年ぶり新作『ROCK BELIEVER』(2022年)リリースのこのタイミングにしっかり聴けるようにしてもらいたいものです。だって、楽曲自体は良い出来なんですから。

 


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