FONTAINES D.C.『A HERO'S DEATH』(2020)
2020年7月31日にリリースされたFONTAINES D.C.の2ndアルバム。
前年4月に発売されたデビューアルバム『DOGREL』(2019年)が本国アイルランドで最高4位を記録したほか、全英9位、米・Billboard Heatseekers Albums最高14位という好記録を樹立。ツアーも軒並みソールドアウトを記録し、その勢いのまま2020年夏には『Glastonbury Festival』へ出演する予定でしたが、コロナ禍の影響で白紙に。しかし、バンドはそんなことお構いなしにデビュー作の勢いのまま、2019年夏から2ndアルバム制作に突入するのでした。
成功を収めた前作から引き続き、プロデュース&ミックスにダン・キャリー(BLACK MIDI、WET LEG、ケイ・テンペストなど)を迎えて制作された今作。若さゆえの焦燥感が伝わる性急なビートが印象に残ったデビュー作と比較すると、この2作目のアルバムではより重心が低くなった印象を受けます。それはアルバム冒頭を飾る「I Don't Belong」を聴けばおわかりいただけるはずです。続く「Love Is The Main Thing」はドラムこそアップビートを刻んでいますが、そこに乗るベースやギター、ボーカルの浮遊感の強さと相待って、不思議なディレイ感覚を味わうことができます。
そう、このアルバムでは貫禄のみならず、上記2曲からもしっかり伝わるサイケデリック感もより増しており、そのバランス加減にこのバンドならではのオリジナリティが芽生え始めているのです。ボーカルは歌うというより、まるで念仏を唱えているかのよう……ではなく、ある種ポエトリーリーディングの延長線上にあるような歌唱スタイルで、このへんは好き嫌い分かれるかもしれません。が、前作で述べたような1970年代末以降のポストパンクや80年代後半の抒情的UKロックを愛聴してきたリスナーには、すんなりと受け入れられるものがあると思います。
楽曲の幅も徐々に広がり始めており、前作にありそうでなかった「Televised Mind」や「A Hero's Death」あたりは今後のキラーチューンになりそうな予感すら伝わりますし、「A Lucid Dream」や「You Said」のように前作の延長線上にある楽曲もしっかり用意されているほか、「Oh Such A Spring」みたいにじっくり聴かせるスローナンバーも備わっている。「Living In America」のサイケデリック感なんて聴けば聴くほどに味わい深いですし、「I Was Not Born」のストレートなノリも王道感が強まっており好印象。「Sunny」で聴けるボーカルアンサンブルもクセになるし、ラストナンバー「No」の抒情的にしようと思えばできるのに、あえてそうさせないメロディラインなど、とにかくいろんな点で個性が突出し始めており、前作で満足したリスナーをさらにおなかいっぱいにさせてくれる1枚ではないでしょうか。
あと、今作の興味深い点といえば、どの曲も前作以上に長くなっていること。平均4分以上ある楽曲が増えたことで、前作と同じ曲数(11曲)なのにトータルランニングが約7分も増えている(前作は約40分で、今作は約47分)。アレンジにいろいろこだわるようになった結果が、こういったところに表れたということでしょうか。ある意味では前作以上に聴く人を選ぶ作品かもしれませんが、新人バンドが短期間で成長する様を楽しめるという点ではUKロック必聴の1枚です。
▼FONTAINES D.C.『A HERO'S DEATH』
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