BRYAN ADAMS『CLASSIC』(2022)
2022年4月1日にデジタルリリースされたブライアン・アダムスのリレコーディング・アルバム。
2022年に入ってからのブライアン・アダムスの精力的なリリース活動には、目を見張るものがあります。まず、3月4日にミュージカル『PRETTY WOMAN - THE MUSICAL』に提供した楽曲をセルフカバーした新録アルバム『PRETTY WOMAN - THE MUSICAL』をデジタルリリースし、翌週11日には3年ぶりのオリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』をフィジカル&デジタルで発表。そこから1ヶ月経たずして今回のリリースですからね。1ヶ月にアルバム3枚って、サブスク全盛のこの時代じゃなかったらレコード会社に嫌がられるだけですからね(ちなみに、オリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』以外の2枚はレーベルを通さず、自身の音楽出版会社Badams Music経由で発表)。
さて、今回の再録アルバムについて。当初、ブライアンはUniversal在籍時のカタログのマスターテープをすべて返却することを求めたそうですが、これをレーベルが拒否。「だったら、新たに録り直すよ」ということで、この企画に至ったんだとか。おそらく、膨大な数のマスターテープが焼失した2008年6月の米・Universal Studios火災の中には、ブライアンの名作アルバムのマスターも含まれていたのではないでしょうか(あくまで勝手な想像ですが)。また、ブライアンは数年前のライブでテイラー・スウィフトと「Summer Of '69」をコラボしたことにも触れ、彼女が最近取り掛かっている過去のアルバムのリレコーディング企画も今回の参考になったと述べています。
ということで実現したこの企画ですが、今回は全8曲/約34分という非常に現代的なコンパクトさでまとまっています。選曲的には先の「Summer Of '69」や「Heaven」「Run To You」といった大ヒット作『RECKLESS』(1984年)収録曲に加え、90年代のメガヒットナンバー「Everything I Do (I Do It For You)」、初のベストアルバム『SO FAR SO GOOD』(1993年)から名バラード「Please Forgive Me」、初の全米TOP10入りを果たした「Straight From The Heart」、デビューアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)の冒頭を飾る「Hidin' From Love」、そして38 SPECIALに提供した映画『TEACHERS』(邦題は『りんご白書』)サウンドトラック収録曲「Teacher, Teacher」のセルフカバーというレアトラックを含む、非常にバランスの取れた内容。
事前になんの情報もなくこのアルバムに初めて触れたとき、「Summer Of '69」を聴いたときは原曲に忠実なアレンジ/演奏なだったこともあり、リテイクだとまったく気付きませんでした。なので、「既存曲ばかりだし、またあとで聴くか」くらいな気持ちで放っておいたのですが、よくよく聴けばちょっとしたボーカルの節回しやトーンの違い(原曲制作時から35年以上加齢しているので、そりゃ違いますよね)も見つけられる。けど、この曲に関してはエンディングがフェードアウトではないことで初めて「あ、やっぱり違うバージョンなんだ」と気付くくらい、違和感のない仕上がりだったのです。
それこそ、M-2「Everything I Do (I Do It For You)」やM-3「Heaven」のボーカリゼーションや演奏のタッチの違い、新たに加えられたフェイクなどを耳にして「ああ、完全新録音だ!」と納得するぐらい、本作の演奏/アレンジは原曲に忠実なのです。それこそ、シンセの音色やドラムの質感も忠実にこだわっており、「Everything I Do (I Do It For You)」のみ異質なドラムサウンド(ジョン・“マット”・ラングらしいDEF LEPPARD的ビッグサウンド)が際立つぐらい。逆に、ほかの楽曲は『RECKLESS』的な質感で統一されていることにより、単なる寄せ集めとは異なるまとまりが伝わります。それこそ「Hidin' From Love」なんてアレンジ自体は原曲に近いのに、その演奏と音質の違いによって新しい魅力が伝わるほどの良セルフカバーに仕上がったのではないでしょうか。
と同時に、38 SPECIALの原曲を知らない人には新曲感覚で触れることができる「Teacher, Teacher」は、時期的にも1984年の楽曲という、3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)〜4thアルバム『RECKLESS』期の、脂が乗り切ったブライアン(とジム・バランス)による良曲。最新作『SO HAPPY IT HURTS』とはまた違った、青臭さの残ったロックンロールを堪能できるはずです。
ブライアンによると、この『CLASSIC』は第2弾も年内リリース予定とのことで、今後も定期的にデジタル経由で発表されることになりそうです。あまり日の目を見る機会のない初期2作の楽曲含め、今の音で蘇る名曲たちを楽しむことができる、絶好の機会になりそうですね。
▼BRYAN ADAMS『CLASSIC』
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