MACHINE GUN KELLY『MAINSTREAM SELLOUT』(2022)
2022年3月25日にリリースされたマシン・ガン・ケリーの6thアルバム。
ラップミュージックからポップパンク路線へとシフトし、ヒップホップ界隈/ロック界隈の双方で賛否両論巻き起こした前作『TICKETS TO MY DOWNFALL』(2020年)は初の全米1位を獲得。同年に初めて全米1位を獲得したロックジャンルのアルバムとのことで(いわゆるロックアーティストの同年1位獲得はAC/DCの『POWER UP』のみ)、もともとロックスター感の強いアーティストであり、また同タイミング(2019年春)にMOTLEY CRUEの自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』でトミー・リー(Dr)役を熱演したり、そのMOTLEY CRUEの新曲「The Dirt」にフィーチャリング参加したりとロック方面での関係値も高まっていた中での方向転換だっただけに、お膳立てはできていたということなんでしょう。
かくいう僕も、この『TICKETS TO MY DOWNFALL』はよくリピートしましたし、それ以前から彼のアルバムは耳にしてきていたのですが、こと前作においては複雑な気持ちで接していました。「どこまでマジなのか? それともギャグなのか?」……ギャグにしてはクオリティが高すぎるし、徹底しすぎている。ってことはやっぱりマジなのか……歌うのか……もちろん、中身が良ければすべて丸く収まるはずなんですが、なんとも煮え切らない気持ちのまま、このポップパンク路線第2弾のリリースを迎えたわけです。
アルバムタイトルは、当初アナウンスされていた『BORN WITH HORNS』から『MAINSTREAM SELLOUT』という、非常に象徴的なものへと急遽変更に。最初はロック的メインストリームシーンに身売り=セルアウトしたと解釈したのですが、よくよく考えると“俺が転落へのチケット(=Ticket To My Downfall)”が売り切れて“商業的に大成功(=Mainstream Sellout)”という前作から続く物語のようにも受け取れる。実際、前作は全米1位&プラチナディスク獲得という大成功を収めているわけで、見方次第でいろんな捉え方ができるわけです。このタイトルひとつで、個人的にはちょっと許せたというか、「それなら、こっちもそのつもりで受け入れます」という気持ちにようやくシフトできたわけです。気難しいな、自分。
プロデューサーに前々作『HOTEL DIABLO』(2019年)収録の「I Think I'm Okay」でのコラボを機に、前作で全体のプロデュースとドラムを担当したトラヴィス・バーカー(BLINK-182)を再び迎えて制作。フィーチャリングゲストとしてBRING ME THE HORIZON、リル・ウェイン、ブラックベアー、ウィロー、イアン・ディオール、ガンナ、ヤング・サグ、ランドン・バーカー(トラヴィス・バーカーの息子)、ピート・デヴィッドソンという、メタル、ヒップホップ、シンガーソングライター、コメディアンなど多岐にわたるジャンルの人間が参加して、多彩な楽曲群に華を添えています。
基本的にやろうとしていることは一緒。バンド編成によるパンクサウンドを軸にしつつ、ヒップホップらしいトラックもいくつか用意。しかし、それらが別ジャンルとして乖離することなく、互いに歩み寄ることで統一感を生み出している。例えば「Die In California」のような打ち込みビートのヒップホップナンバーのあとにハードロック寄りの「Sid & Nancy」が並んでもまったく違和感を覚えないし、ヒップホップとグランジが融合した「Ay!」のような楽曲まで存在する(リル・ウェインが良い味出してます)。MGKがラップをするよりも歌うことに注力し、がっつりラップすることはゲスト陣に任せるという割り切り方もあってか、1枚のアルバムの中に色の異なるジャンルが複数存在するという感覚はゼロで、むしろ複数のジャンルが自然な形で手を取り合っている印象が強いんです。
また、冒頭を飾る「Born With Horns」や「God Save Me」を筆頭としたパンクロック/オルタナティヴロックサウンドが全体的に軸を作っているからこそ、上記のようなテイストはアクセントとして見事な効果を発揮しているようにも受け取れる。このナチュラルさは前作以上ではないでしょうか。
「Maybe」の楽曲制作と演奏で参加したBMTHもアルバムのほかのバンドチューンと違和感なく馴染んでおり、かつオリヴァーのボーカルも自身のバンドのときとは異なる響き方をしているように感じる。面白い効果です。むしろこの曲は絵付き(=MV)で楽しんでもらいた1曲で、MGK、オリヴァー、トラヴィス・バーカーの三つ巴による“近代ロック界3大怪獣”夢の共演を視覚的に堪能していただきたい。
「Emo Gril」のキラーチューンぶりも文句なしだし、リル・ウェインが参加したもうひとつの「Drug Dealer」も良き仕上がり。タイトルトラック「Mainstream Sellout」やブラックベアー参加の「Make Up Sex」、さらには「5150]「Papercuts」「WW4」「Twin Flame」など、どれも曲単位でも優れている。また、本作にはパンク/オルタナの加えてグランジ的な側面も見え隠れする。そこも含めて好みのど真ん中にある1枚だなと思うわけです。
きっと僕みたいに偏見を持ってMGKと距離を取っていたロックリスナーも少なくないのでは。けど、フラットな気持ちで本作と触れてみて、改めて評価してもらえたらと願っております。
▼MACHINE GUN KELLY『MAINSTREAM SELLOUT』
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