カテゴリー

無料ブログはココログ

« 2022年4月 | トップページ | 2022年6月 »

2022年5月

2022年5月31日 (火)

2022年4月のアクセスランキング

2021年総括はこちらから

ここでは2022年4月1日から4月30日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日公開/↑●位)」の表記は、「更新日/2022年3月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:THE HELLACOPTERS『EYES OF OBLIVION』(2022)(※2022年4月2日公開/NEW!)

2位:AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2022年版)(※2022年4月12日公開/NEW!)

3位:RED HOT CHILI PEPPERS『UNLIMITED LOVE』(2022)(※2022年4月3日公開/NEW!)

4位:AEROSMITH『1971: THE ROAD STARTS HEAR』(2022)(※2022年4月11日公開/NEW!)

5位:✝✝✝ (CROSSES)『INITIATION / PROTECTION』(2022)(※2022年4月17日公開/NEW!)

6位:DREAM WIDOW『DREAM WIDOW』(2022)(※2022年4月4日公開/NEW!)

7位:LAMB OF GOD『WAKE UP DEAD (feat. DAVE MUSTAINE)』(2022)(※2022年4月5日公開/NEW!)

8位:KIRK HAMMETT『PORTALS』(2022)(※2022年4月23日公開/NEW!)

9位:MACHINE GUN KELLY『MAINSTREAM SELLOUT』(2022)(※2022年4月3日公開/NEW!)

10位:PLACEBO『NEVER LET ME GO』(2022)(※2022年4月1日公開/NEW!)

 

11位:REEF『IN MOTION: LIVE FROM HAMMERSMITH』(2019)(※2022年4月6日公開/NEW!)

12位:MESHUGGAH『IMMUTABLE』(2022)(※2022年4月15日公開/NEW!)

13位:REEF『REPLENISH』(1995)(※2022年4月6日公開/NEW!)

14位:BRYAN ADAMS『CLASSIC』(2022)(※2022年4月10日公開/NEW!)

15位:LAMB OF GOD『VII: STURM UND DRANG』(2015)(※2022年4月5日公開/NEW!)

16位:ANIMALS AS LEADERS『PARRHESIA』(2022)(※2022年4月14日公開/NEW!)

17位:Cocco@日本武道館(2000年10月6日)(※2000年10月8日公開/↓10位)

18位:WEEZER『SZNZ: SPRING』(2022)(※2022年4月7日公開/NEW!)

19位:GINGER (GINGER WILDHEART)『A BREAK IN THE WEATHER』(2005)(※2022年4月20日公開/NEW!)

20位:BEACH HOUSE『ONCE TWICE MELODY』(2022)(※2022年4月8日公開/NEW!)

 

21位:ブライアン・アダムスのベストアルバムを総括する(2022年版)(※2022年3月12日公開/↓2位)

22位:RINA SAWAYAMA『SAWAYAMA』(2020)(※2022年4月25日公開/NEW!)

23位:JACK WHITE『FEAR OF THE DAWN』(2022)(※2022年4月13日公開/NEW!)

24位:WET LEG『WET LEG』(2022)(※2022年4月19日公開/NEW!)

25位:3RD SECRET『3RD SECRET』(2022)(※2022年4月16日公開/NEW!)

26位:ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST AT ABBEY ROAD』(2022)(※2022年4月9日公開/NEW!)

27位:THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(※2022年2月14日公開/Re)

28位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日公開/↓7位)

29位:GHOST『IMPERA』(2022)(※2022年3月13日公開/↓3位)

30位:HEALTH『DISCO4::PART II』(2022)(※2022年4月24日公開/NEW!)

2022年5月のお仕事

2022年5月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※5月28日更新)

 

[WEB] 5月28日、Little Glee Monsterオフィシャルライブレポートを担当。「THE FIRST TIMES」リトグリ、新曲「magic!」をライブ初披露! 開催中の全国ツアーより神奈川公演のオフィシャルレポ到着など、さまざまな音楽サイトにて掲載中です。

[紙] 5月26日発売「CONTINUE」Vol.77にて、「劇場版 輪るピングドラム」特集内トリプルH(荒川美穂、渡部優衣、三宅麻理恵)座談会、橋本由香利(劇中音楽担当)インタビュー、音楽コラム「ボーダレスな音楽の奏でる運命に至るメロディ」、上坂すみれライブレポートを担当しました。(Amazon

[WEB] 5月25日、「リアルサウンド」にてインタビューMAN WITH A MISSIONが連作アルバムで伝える、“壁を乗り越える”という希望 時代の空気を反映したメッセージもが公開されました。

[WEB] 5月24日、「リアルサウンド」にてライブレポート櫻坂46、渡邉理佐卒業コンサートはグループのターニングポイントに ライブの“見せ方”から感じた変化が公開されました。

[WEB] 5月23日、櫻坂46オフィシャルライブレポートを担当。「BARKS」渡邉理佐、櫻坂46を卒業「こんな自慢したくなるグループにいられたことが誇り」など、さまざまな音楽サイトにて掲載中です。

[WEB] 5月22日、「ひかりTV」公式サイトにインタビュードラマ「ラブシェアリング」弓木奈緒×向井葉月 独占撮りおろしカット& Special Interviewが公開されました。

[WEB] 5月19日、「リアルサウンド」にコラムRoselia、攻めの姿勢を崩さない“王者”の風格 最新作『ROZEN HORIZON』で告げる第二章の幕開けが公開されました。

[WEB] 5月19日、「リアルサウンド」にコラム沖縄からアジアへ発信 3人組ダンスボーカルグループ BLUE BLUE BLUEが秘めた、新たな伝説を築き上げる可能性が公開されました。

[WEB] 5月17日、「リアルサウンド」にてライブレポート乃木坂46、次世代メンバーに対する期待値高まった10回目の“バスラ” 生駒里奈、西野七瀬ら卒業生も登場した2日間の祝宴を観てが公開されました。

[紙] 5月17日発売櫻坂46渡邉理佐 卒業メモリアルブック「抱きしめたくなる瞬間」にて、渡邉理佐卒業ロングインタビュー、および菅井友香、原田葵、尾関梨香、藤吉夏鈴&山﨑天(以上、櫻坂46)、佐々木久美(日向坂46)、長濱ねるとの各対談、「渡邉理佐から櫻坂46メンバーへのラストメッセージ」の各取材・構成・執筆を担当しました。(Amazon

[WEB] 5月16日、「週プレNEWS」にてインタビュー卒業目前の櫻坂46・渡邉理佐が卒業メモリアルブックを発売!「恥ずかしいなと思いながら、気持ちを知ることができてうれしかったです」が公開されました。

[WEB] 5月6日、「音楽ナタリー」にて公開中のSACRA MUSIC 5周年特集|世界に羽ばたくアーティストを擁する気鋭レーベルの魅力とは?Aimer、澤野弘之、ASCA、ReoNaのメッセージも掲載にて、テキストを執筆しました。

[WEB] 5月6日、「リアルサウンド」にてライブレポート第2期fripSide、南條愛乃が駆け抜けた13年間の集大成と託したバトン 涙と笑顔の入り混じったPhase2ラスト公演レポが公開されました。

[紙] 5月2日発売「日経エンタテインメント!」2022年6月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」および日向坂46渡邉美穂の連載「今日も笑顔で全力疾走」の各構成を担当しました。(Amazon

=====

2022年4月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップしたプレイリストをSpotifyにて制作・公開しました。題して『TMQ-WEB Radio 2204号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

DEPECHE MODE『101』(1989)

1989年3月13日にリリースされたDEPECHE MODE初のライブアルバム。日本盤は同年3月10日先行発売。

本作は1987年秋に発表された6thアルバム『MUSIC FOR THE MASSES』を携え、1987〜88年に開催されたワールドツアーから、101本目にして最終公演に当たる1988年6月18日の米・カリフォルニア州パサディナRose Bowlでのスタジアムライブの模様を収めたもの。アナログ盤は2枚組/全17曲、CDは2枚組/全20曲と収録容量の違いで差ができてしまっています(アナログ盤でカットされたのは「Sacred」「Nothing」「A Question of Lust」)。

当時、このライブ盤を聴いて驚いたのは、その歓声の凄まじさとデイヴ・ガーン(Vo)のアッパーさ。SE的な「Pimpf」を経てスタートする「Behind The Wheel」での熱狂的な歓迎されっぷりは、当時日本でMTVを通じてでしかDEPECHE MODEを知らなかった自分にとってかなり衝撃なものでした。実際、スタジアムでライブをできるほどの人気をアメリカで獲得していたことを考えると、この大歓声が仕込みでもなんでもないことに気付かされるわけですが。

当時はアラン・ワイルダーを含む4人編成で、ライブも1990年代以降のサポートメンバーを迎えた大編成とは異なるもの。だからこその(良くも悪くも80年代的な)音数の少ないエレクトロニックサウンドが、スタジアムという大会場でどんな音量で鳴らされていたのか、非常に気になります。「Something To Do」みたいな80年代前半の楽曲は特にね。

ちなみに本作、同名の映像作品を制作されており、音源よりも尺は長いものの、披露されている楽曲数はかなり少ないです。ライブ映像を含むドキュメンタリー作品的なテイストなので、あくまで1988年当時の熱狂ぶりを補足するためのアイテムとして捉えていただけると。2021年12月にはリマスタリングされた映像版と、CDも同梱したボックスセットもリリースされたので、そのクリアな映像と合わせてお楽しみいただくのも一興かと。

選曲的にはもちろん『MUSIC FOR THE MASSES』からの楽曲が中心で、そこに『BLACK CELEBRATION』(1986年)や『SOME GREAT REWARD』(1984年)といったアメリカでのブレイク作を交えた内容といったところでしょうか。さすがに「Leave In Silence」や「See You」は選出されていませんが、ラストに「Just Can't Get Enough」「Everything Counts」という初期楽曲が用意されているあたりは微笑ましかったりします。

ここのツアーで得た経験が次作『VIOLATOR』(1990年)や次々作『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』(1993年)でのアメリカナイズにつながったことは、間違いでしょう。それくらい、このツアーでの成功はバンドに良くも悪くも影響を与えたはずですから。

このライブアルバムと当時の最新作『VIOLATOR』をじっくり聴き込んで、浪人中にもかかわらず日本武道館公演(1990年9月)に足を運んだんだよなあ。思えば、あれが最初で最後の“生”DEPECHE MODEだったし、以降32年も来日していないんですよね。そして、アンディ・フレッチャーを生で観た最初で最後のライブでもあったわけですが……。

近作ではツアーごとにライブアルバム/映像作品を毎回リリースしてくれている彼らですが、できることなら『VIOLATOR』〜『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』期のライブフル映像(音源でも可)を体験したいものです。

最後になりましたが、アンディ・フレッチャーのご冥福をお祈りいたします。

 


▼DEPECHE MODE『101』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤ボックス / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月30日 (月)

GENESIS『INVISIBLE TOUCH』(1986)

1986年6月6日にリリースされたGENESISの13thアルバム。日本盤アナログは同年6月9日、CDは7月23日発売。

フィル・コリンズのソロアルバム『NO JACKET REQUIRED』(1985年)のメガヒットや、マイク・ラザフォードによるプロジェクト・MIKE + THE MECHANICSのアルバム『MIKE + THE MECHANICS』(1985年)のスマッシュヒットなどソロ活動が順調な中、バンドとしては全英1位/全米9位の大ヒット作となった前作『GENESIS』(1983年)から2年8ヶ月ぶりの新作。プロデュースは前作から引き続き、バンドとヒュー・パジャム(THE POLICE、XTC、THE HUMAN LEAGUEなど)が手がけています。

オープニングを飾るタイトルトラック(全米1位/全英15位)のよう、全体を通じてフィルのソロ作にも通ずるポップさが強調された仕上がりで、プログロック的な要素は9分近い大作「Tonight, Tonight, Tonight」や約11分におよぶ組曲「Domino」、インストゥルメンタルナンバー「The Brazilian」程度にとどまっています。まあそれだけあれば十分かな。それ以外はほぼ全曲がシングルカット可能なポップロックばかり。事実、先の「Invisible Touch」以外にも「Throwing It All Away」(全米4位/全英22位)、「In Too Deep」(全米3位/全英19位)、「Land Of Confusion」(全米4位/全英14位)、そしてシングル向けに短く編集された「Tonight, Tonight, Tonight」(全米3位/全英18位)と、アメリカでは発表した5枚のシングルすべてがTOP5入を果たす快挙を成し遂げ、アルバム自体も全米3位/全英1位と記録。アメリカでは600万枚を超えるキャリア最大のヒット作となりました。

大ヒットの要因は、もちろんフィルのソロ活動やMIKE + THE MECHANICSの成功も大きく影響していると思いますし、なにより各ソロ活動から矢継ぎ早にバンドのリリースへと移行したのもプロモーション的に素晴らしい判断だったと言えるでしょう。そして何より、収録されたどの楽曲もポップソングとしての完成度/強度が異常に高い。プログロックとして捉えれば、もはや範疇外と言わざるを得ない方向性ではあるものの、ひとつのポップアルバムとして向き合うとこれ以上はないほど極上の内容ではないでしょうか。

大半の楽曲でシンセドラムを使用することで、いかにも80年代的で軽薄なサウンドになっているのは否めませんが、当時は子供心にこの音に対して“未来”を感じたのもまた事実。「Land Of Confusion」での生音とデジタルのミックスは、素直にカッコいいと思ったものです。また、当時は退屈に感じる瞬間もあった「Tonight, Tonight, Tonight」も、今の耳で聴くと実は非常に練り込まれたアレンジであり、このサウンドメイクだからこそ小難しくならずに済んだことも理解できます。

加えて、MTVという媒体を効果的に活用したMV制作も大当たりに一役買ったと言えるでしょう。シングルカットされた全5曲すべてにMVがあてがわれたわけではないものの、バンドの健在ぶりを示すような作風の「Invisible Touch」や、メンバーや当時の著名人そっくりのパペットが登場する皮肉たっぷりな「Land Of Confusion」などは、当時ヘヴィローテーションされていた印象があります。

フィルのソロアルバムよりはロック色が強く、かといってかつてのGENESISほどロック度/プログロック度は高くない。だけど、ヒットチャートを賑わすポップスとしてもロックとしても十分に通用する、高い完成度を誇る。もちろん、いろいろ考えれば難癖も付けられますが、もはやそれすら虚しくなってくるほど良質な内容。これぞ“ザ・ミドル80's”なロック/ポップスではないでしょうか。つい数日前に映画『トップガン』のサントラを“80年代的”と紹介しましたが、このアルバムもその象徴的な1枚。

 


▼GENESIS『INVISIBLE TOUCH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月29日 (日)

DEF LEPPARD『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011)

2011年6月3日にリリースされたDEF LEPPARD初のライブアルバム。日本盤は同年7月20日発売。

本作リリース当時、すでにバンドとしてのキャリアは30年を超えていたDEF LEPPARD。ライブ映像作品は過去に『LIVE: IN THE ROUND, IN YOUR FACE』(1989年)を発表していたものの、1本のライブをまるまる収めた作品はこれが初となります(先の映像作品は実際のライブから4曲ほどカットされているので)。かつ、『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』(2008年)以来となる新曲3曲(「Undefeated」「Kings Of The World」「It's All About Believin'」も追加収録された、非常にお得な内容となっています。

メインとなるライブ音源は、当時の最新アルバム『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』を携えた2008〜9年のワールドツアーから厳選されたもの。オープニングを飾る曲が「Rock! Rock! (Till You Drop)」と踏まえると、ベースになっているのは2009年のツアーのようで(2008年は「Rocket」から始まることが多かったので)、そこに2008年のみ披露された楽曲などを組み込んだ、実際のセトリとは異なる選曲となっています。

最新作『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』からの楽曲は「C'mon C'mon」「Nine Lives」「Bad Actress」の3曲のみ。そのほかは3rdアルバム『PYROMANIA』(1983年)、4thアルバム『HYSTERIA』(1987年)からのヒットナンバーが大半を占め、前21曲のライブトラック中11曲がこの2作からの選曲となります。そりゃそうなるわな。そのほか、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)から2曲、5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)から2曲、コンピレーションアルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)から2曲、カバーアルバム『YEAH!』(2006年)から1曲。1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)、6thアルバム『SLANG』(1996年)、7thアルバム『EUPHORIA』(1999年)、8thアルバム『X』(2002年)からは1曲も選ばれておりません。仕方ない。でも、「Promises」くらいは選んでほしかったな。

なもんで、セトリの若干の偏りは生じてしまっています。ですが、大方のファン(主にライト層)が求める“DEF LEPPARD像”はしっかり表現できているのではないでしょうか。だって、多くのそういったリスナーが求めるイメージって、『PYROMANIA』と『HYSTERIA』、そこに「Let's Get Rocked」とか「Two Steps Behind」でしょ? だったら問題ないと思います。それに、真の意味でのベスト選曲ライブアルバムを聴きたかったら『LONDON TO VEGAS』(2020年)を聴けばいいわけだしね。そういった点を加味しても、初のライブアルバムとしては上出来な内容ではないでしょうか?

個人的ハイライトはオープニングからの3曲(「Rock! Rock! (Till You Drop)」「Rocket」」「Animal」)と、「Two Steps Behind」から始まるアコースティックパート。続く「Bringin' ON The Heartbreak」はギターソロ前までがアコースティック、ジョー・エリオット(Vo)の〈No, No, No〜〉からバンド演奏でそのままインスト「Switch 625」へと続くアレンジはアルバムのまんま。やっぱりこの2曲は続けて演奏しないとね。もちろん、「Armageddon It」から「Let's Get Rocked」まで続くヒット曲のオンパレードなクライマックスも聴きどころ。オマケとして付け加えられた「Action」と「Bad Actress」も悪くないです。

続いて、オリジナル新曲について。「Undefeated」は「Pour Some Sugar On Me」タイプの、ギターリフとヘヴィなリズムを軸にしたミドルナンバー。音の質感的には『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』の延長線上にあるように感じますが、ヘヴィさが復調しているかな。「Kings Of The World」はQUEEN的ハーモニー/コーラスワークが多用されたスローバラード。もちろん多重コーラスはDEF LEPPARDの武器でもあるんだけど、この曲に関してはQUEEN的と表現したほうが正しい気がします。コードの使い方含めて、そういったルーツが強く打ち出された良曲のひとつです。そして、「It's All About Believin'」はグルーヴィーなギターリフを用いたポップロック。タイプ的には『X』と『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』の間っぽいような。そう考えると、3曲とも同じバンドだけどアレンジの軸にしている時期が異なるような。それだけ歴史の長いバンドだという事実が、この3曲からもしっかり伝わってくるのではないでしょうか。

このアルバムから、それまで30年にわたり所属してきたMercury Recordsを離れて独立した彼ら。となるとオリジナルアルバムもすぐに聴けるのでは?なんて淡い期待を寄せたものの、そこはやはりDEF LEPPARD(笑)。結局『SONGS FROM THE SPARKLING LOUNGE』から7年、この『MIRROR BALL: LIVE & MORE』からも4年という歳月を経てセルフタイトルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)が届けられることになるのでした。

 


▼DEF LEPPARD『MIRROR BALL: LIVE & MORE』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤2CD+DVD / 海外盤2CD+DVD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月28日 (土)

DEF LEPPARD『DIAMOND STAR HALOS』(2022)

2022年5月27日にリリースされたDEF LEPPARDの12thアルバム。

earMUSIC Recordsを通じて発表されたセルフタイトル作『DEF LEPPARD』(2015年)から6年7ヶ月ぶりのオリジナルアルバム。この約7年の間に過去作のサブスク解禁があったり(国内では最新作『DEF LEPPARD』のみ聴けなくなってますが……)、新録曲を含む最新ベストアルバム『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』(2018年)、『AND THERE WILL BE A NEXT TIME... LIVE FROM DETROIT』(2017年)や『LONDON TO VEGAS』(2020年)といった数々のライブ作品、名盤『HYSTERIA』(1987年)の30周年企画盤(2017年)、未発表音源を豊富に含む3つの『THE COLLECTION』ボックスセット企画(2018〜21年)などがあったほか、2020年夏にはMOTLEY CRUEPOISONジョーン・ジェットとのスタジアムツアーも計画(コロナの影響で2022年初夏にようやく実現)するなど、常に話題に事欠かなかった気がします。

なんなら、もう新作を作らなくてもいいんじゃないか……とすら思えていた近年の活動(特に、前作がセルフタイトルというのも意味深)でしたが、彼らはこの2年にわたりアイルランド(ジョー・エリオット)、ロンドン(リック・サヴェージ)、アメリカ(フィル・コリン、ヴィヴィアン・キャンベル、リック・アレン)と3ヶ国にまたがり、秘密裏に制作を続けてきたとのこと。コロナの影響で先行きがまったく見えない中、時間の制約もなく進められたレコーディングを通じて、原点回帰的な前作からよりルーツに根ざした、だけどモダンさも伝わる意欲的な1枚を仕上げました。

前作も14曲入りで約53分とかなり長尺な内容でしたが(それでも『HYSTERIA』の全12曲/約63分には敵いませんが)、今作は全15曲で約62分と過去最多の楽曲数で『HYSTERIA』にも及ぶ長尺さ。やりたいことを全部詰め込んだように感じられるほど、近年稀に見るバラエティ豊かな内容です。

リード曲として最初に配信された「Kick」からも伝わるように、またT. REX「Get It On」の一節から引用したアルバムタイトルからもわかるように、本作は全体を通じてグラムロック色が強めに打ち出された作風。とはいえそこはDEF LEPPARDのこと、名盤『PYROMANIA』(1983年)や『HYSTERIA』のテイストも随所に用意されており、従来のファンも不安なく楽しめる1枚かと思います。

でも、個人的にはそれ以上に……名盤(というよりは迷盤か?)だと個人的に思っている6thアルバム『SLANG』(1999年)あたりの質感(サウンドメイクやアレンジなど)も見つけることができ、さらに前々作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)での試みも活かされていることにも気づく。そういった意味では、ルーツを見つめ直しつつこれまでのキャリアを総決算した1枚でもあるのかなと(アルバムのアートワークもそういった方向性ですしね)。ただ、単なる総決算で終わっておらず、しっかり新しいさ/新鮮さも散りばめられており、マンネリ化から見事に脱却している。ロックダウンなどの影響で離れ離れに作業を進め、多少心にも余裕を持てたことも作品に良い作用をもたらしたことが、アルバム全体からも伝わってきます。

アリソン・クラウスをフィーチャーした楽曲があったり、デヴィッド・ボウイとの共演で知られるマイク・ガーソンがピアノでゲスト参加していたりと、特筆すべきトピックも少なくないですが、本作はそれ以上に楽曲の強度、演奏の熱量(「Take What You Want」や「From Tere To Eternity」で聴けるギターソロのエモーショナルさといったら!)、さらに大人の品格などいろんな側面からDEF LEPPARDというバンドの魅力を楽しめる、良質で濃厚な傑作だと断言しておきます。

アメリカ出身のBON JOVIが“枯れる”方向でルーツや円熟味を表現している昨今、かたやイギリス出身のDEF LEPPARDはそれとは異なる方法でベテラン感を提示している。この違いが本当に面白くてたまりません。と同時に、自分のルーツはやっぱりこっちなんだなということも再確認することもできました。この夏のスタジアムツアー、実はチケットを押さえているのですが、まだ渡米する勇気を持てないので残念ながら断念するつもりです。だからこそ、今秋から来年にかけての来日公演にぜひとも期待したいところです。

 


▼DEF LEPPARD『DIAMOND STAR HALOS』
(amazon:国内盤CD / 国内デラックス盤CD / 海外盤CD / 海外デラックス盤CD / 海外盤アナログ / 海外盤カセット / MP3

 

2022年5月27日 (金)

DISTURBED『TEN THOUSAND FISTS』(2005)

2005年9月20日にリリースされたDISTURBEDの3rdアルバム。日本盤は同年9月28日発売。

初の全米1位を獲得した前作『BELIEVE』(2002年)から3年ぶりの新作。前作発表後にスティーヴ・クマック(B)が脱退。本作のレコーディングにはその後正式メンバーとなり、現在まで活動をともにするジョン・モイヤー(B/STEREO SATELLITE、ART OF ANARCHY、OPERATION: MINDCRIME)が参加しています。

プロデューサーには過去2作同様ジョニー・K(ENUFF Z'NUFFMACHINE HEAD3 DOORS DOWNなど)を起用。また、バンド自身も共同プロデューサーとして初めて名を連ね、ミキサーには初のタッグとなるベン・グロッセ(DREAM THEATERMARILYN MANSONSEVENDUSTなど)が新たに起用されています。

基本的な路線、方向性は過去2作の延長線上にある、大きな変化はあまり感じられません。ただ、ヘヴィメタルバンドとしてのオーソドックスさはより増しているようにも聞こえ、良しとするか否かで評価もまた変わるのでしょうか。デビュー時こそ、デヴィッド・ドレイマン(Vo)のパーカッシヴなボーカルスタイルと90年代のニューメタルバンドを踏襲しつつもネクストレベルへとステップアップさせたサウンドが新鮮に映りましたが、それも3作目となるともはや当たり前の存在として定着し、ここから作品ごとに変化を繰り広げるのか、あるいは現在のスタイルを維持すつつ深化するのかが迫られると思います。

しかし、彼らは後者の道を選び、金太郎飴のようなアルバム作りの道を突き進むことになる。前作の時点でその片鱗はすでにあったものの、この3作目で彼らはついに「俺たちはこの道から逸れずに突っ走る」と宣言するわけです。ある意味、男らしいと言えますが。

なもんで、ふいに1曲選んで聴かされても、果たしてこれが何作目の収録曲なのか?とはっきり断言できないんですよ、僕(苦笑)。まあ、1stアルバム『THE SICKNESS』(2000年)は散々聴いたので、ある程度は理解していますが……。それくらい、良くも悪くも通常運転。なので、彼らのこのスタイルが好きという方なら、大きな冒険もない本作も気に入ってもらえると思います。

と同時に、初めてDISTURBEDに触れる人は、それが何作目であっても大きな問題はなんじゃないかという気もしていて(苦笑)。あ、嘘です。最初に聴くなら1stアルバムから本作までの3枚がオススメです。以降は良くも悪くも、楽曲がよりワンパターン化していくので。そういった意味でも、楽曲の完成度やトータルバランス含め完成し尽くされているのは、この3作目までといっても過言ではないのかな。

ヘヴィさ、重さという点では前2作よりも若干強まっている気がしますが、それも誤差範囲内。アメリカのバンドらしい豪快なアンサンブルと、どこかヨーロッパのバンドのようにも感じられる抒情的なメロディのバランスも絶妙。ニューメタルというジャンルの究極形と言ってしまっては大袈裟でしょうか。

なお、1stアルバムにおけるTEARS FOR FEARSのカバー「Shout」に続き、本作にはGENESISのヒット曲「Land Of Confusion」のカバーも収録。基本的なアレンジは原曲を踏襲しつつ、もちろんDISTURBEDらしいヘヴィさも強調されたアレンジに生まれ変わっており、原曲をよく知る世代も楽しめる仕上がりです。ただ、「Shout」のときほど驚きや刺激はないかな。これも、彼らのスタイルに慣れててしまったが故なんでしょうか。

 


▼DISTURBED『TEN THOUSAND FISTS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月26日 (木)

KORN『THE SERENITY OF SUFFERING』(2016)

2016年10月21日にリリースされたKORNの12thアルバム。

ブライアン・“ヘッド”・ウェルチ(G)が復帰した前作『THE PARADIGM SHIFT』(2013年)から3年ぶりの新作。キャッチーな歌メロ重視ニューメタル路線から、よりエッジの効いたスタイルが復調しつつある良質なメタルアルバムに仕上がっています。

プロデューサーを前作でのドン・ギルモア(BULLET FOR MY VALENTINELINKN PARKアヴリル・ラヴィーンなど)からニック・ラスクリネクツ(HALESTORMALICE IN CHAINSMASTODONなど)に交代したことも大きいのでしょうか。「Rotting In Vain」や「The Hating」などヘヴィな音の塊の中に心地よいメロウなテイストがにじんでいるテイストは、前作『THE PARADIGM SHIFT』での経験をベースにしつつも4thアルバム『ISSUES』(1999年)以降の路線を踏襲したもののようにも受け取れます。

また、モダンでプログロック的な側面を追求した5thアルバム『UNTOUCHABLES』(2002年)や、コンパクトでキャッチーなスタイルにこだわった7thアルバム『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)からの影響も見え隠れし、変に初期のヘヴィさにこだわった結果中途半端に終わった9thアルバム『KORN III: REMEMBER WHO YOU ARE』(2010年)よりもバンドとして自然体に映るのも印象的。そういった意味では、バンドの基礎を構築した伝説の1stアルバム『KORN』(1994年)と2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)、最大のヒット作となった3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)を変に意識しすぎることなく臨んだ結果、過去10数年の中でも一番トータルバランスの整った内容になったのではないでしょうか。

そんな良作に華を添えるように、「A Different World」にはSLIPKNOTSTONE SOURコリィ・テイラー(Vo)がゲスト参加。ジョナサン・デイヴィス(Vo)との相性も抜群ですが、90年代のニューメタルヒーローとゼロ年代のニューメタルの王者のコラボレーションは、ちょっとタイミングが遅すぎるくらい。ただ、前作がヘッド復帰という大きなトピックがあったので、これくらいはあってもいいのかな。

思えば、KORNもこの時点で20年選手に突入しているわけで、この手のバンドとしては多作の12枚目。かつ、ここまでの枚数を制作しながらも同じようなアルバムは1枚もなく、毎回何かしらの変化を遂げている。ソングライター/プレイヤーとしての質の向上はもちろん、表現したいこともデビュー前後と比べたら多少は変わっているはず。そういった点でも、本作はバンドとしての集大成を示すと同時に、キャリア何度目かの“デビュー”アルバムのようでもあるのかなと。まあ、デビュー作にしては出来過ぎなくらいに完璧な内容ですが(笑)。

3分台の楽曲中心の全11曲(デラックス盤の2曲除く)/トータル40分というコンパクトさは、間違いなくその後の『THE NOTHING』(2019年)『REQUIEM』(2022年)にも大きな影響を及ぼしているし、そういった点でも本作は何度目かのリスタートの幕開けにふさわしい1枚だったのかもしれません。

そんなアルバムが、全米チャートで近年では最高となる4位を獲得したというのも、なんだか納得といいますか。以降、完全にサブスク中心のシーンに転換していくことを考えると、(チャート的にもセールス的にも)ここまでがギリギリ“CD主流時代”だったのかな?という気がしています。

 


▼KORN『THE SERENITY OF SUFFERING』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月25日 (水)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: LIVE IN NYC - 1993』(2022)

2022年3月18日にリリースされたDRAEM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年3月23日発売。

2021年6月からスタートした、バンドと所属レーベルInsideOutMusic Recordsとの共同企画によるオフィシャル・ブートレッグシリーズ『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』の第8弾。今回は出世作である2ndアルバム『IMAGES AND WORDS』(1992年)を携えて行われたワールドツアーより、1993年3月4日のニューヨーク公演を完全収録したもの。同音源はかつて、バンド自身のレーベルYtsejam Recordsより生産限定販売されていましたが、今回の再リリースにあたり新たにリマスタリングが施され、アートワークも『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』共通のテイストで新規制作されています。

『IMAGES AND WORDS』期のライブ音源というと、1993年4月のロンドン・The Marquee Clubでの音源を収めた『LIVE AT THE MARQUEE』(1993年)が存在しますが、同作は完全収録盤には程遠い、全6曲/45分程度の(彼らにしては)短尺作品集でした。ぶっちゃけ、これで満足できたファンはそう多くなかったのではないでしょうか(CD主流時代にアナログ盤並みの尺って、企画盤かよ?って当時嘆いたものです)。そういった意味でも、あの登り調子の時期のフルライブ音源を楽しめる本作は、非常に大きな意味/価値を持つのです。

当日は2部構成、トータルで2時間超えのステージが展開されました。アルバムを2枚しか発表していないバンドですが、そこは1曲1曲が長尺なプログメタルバンド。オープニングからいきなり9分超えの「Metropolis Part I」からスタートするという挑戦的なステージで、聴き手を圧倒させます。

演奏は非常に素晴らしく、各パートも非常に聴きやすい形で収録されています。ただ、ジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルは若干不安定で、特に『IMAGES AND WORDS』の楽曲では高音域にいけばいくほど雑になる。これは当時彼らのライブを観た際にも感じたことですが、出しにくい高音をがなりで誤魔化そうとするクセがあるんですよね、この方。なもんで、「あ、ライブは下手な人なんだ」とガッカリした記憶があるな。

収録曲には全15トラック中、『IMAGES AND WORDS』の全8曲に加え、ラブリエ加入前の1stアルバム『WHEN DREAM AND DAY UNITE』(1989年)から「A Fortune In Lies」「The Ytse Jam」「The Killing Hand」の3曲、当時未発表だった「To Live Forever」「Eve」「Another Hand」「A Change Of Seasons」という内訳。「Another Hand」は「Another Day」と「The Killing Hand」をつなぐ役割のインストナンバーで、「To Live Forever」はのちにシングル「Lie」、「Eve」はシングル「The Silent Man」の各カップリングでスタジオバージョンを発表。「A Change Of Seasons」はご存じ同タイトルのミニアルバム(1995年)でレコーディングされています。「A Change Of Seasons」はのちのスタジオバージョンとの比較含め、いろんな楽しみ方ができるのではないでしょうか。

その後のライブ音源と比べるとインプロビゼーション含め、まだまだ“タガが外れる”感は少ないような気がしますが、それでも予定調和ではないスリリングな演奏の数々は非常に魅力的に映るはず。個人的にはラブリエ加入前の「The Killing Hand」で見せる、彼の鬼気迫るボーカルにノックアウトされました。なんだ、やればできるじゃん!と(笑)。『IMAGES AND WORDS』至上主義の皆さんにおいては、絶対に押さえておくべき作品集ですよね(「そんなもん、Ytsejam Records盤で持ってるわ!」って速攻で反論されそうですが。笑)。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: LIVE IN NYC - 1993』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月24日 (火)

JAMES LABRIE『BEAUTIFUL SHADE OF GREY』(2022)

2022年5月20日にリリースされたジェイムズ・ラブリエの4thアルバム。日本盤は同年5月25日発売予定。

昨年秋にDRAEM THEATERとしてオリジナルアルバム『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(2022年)を発表したばかりですが、そこから約7ヶ月という短いスパンで届けられた、同バンドのフロントマンによるソロ新作。ソロアルバムは前作『IMPERMANENT RESONANCE』(2013年)から実に9年ぶりになるとのことで、意外にも期間が空いていることにびっくりしました。

DTのオリジナルアルバムはパンデミックの影響でライブ活動ができなくなった結果の副産物でしたが、このソロアルバムも同様の理由で制作が実現したもの。まず、本作制作のキーパーソンとなるのが、スコットランド出身のポール・ローグというアーティスト。彼はもともとEDEN'S CURSEというバンドのベーシストで、ラブリエとは以前から互いにコラボレーションを切望していたんだとか。それが、2020年以降のパンデミック下で時間に余裕が生じたことにより、物事が前向きに進んでいったんだそうです。

メロディアスなHR/HM色の強かった前作から時間を空けたこと、タッグを組むパートナーが変わったことも影響し、本作は良い意味で前作の延長線にある作品にはなりませんでした。ここで展開されるのは、アコースティックギターを効果的に多用したムーディーなソフトロック。随所にエレクトリックギター(過去3作にも参加したマルコ・スフォーリが担当)も散りばめられていますが、楽曲/アレンジの主軸になるようなことはなく、あくまで味付けとして適度な歪みのエレキサウンドが用いられる程度で収められています。

そういうアレンジ/作風もあってか、本作はDTのソフトサイド(例えば「Surrounded」や「Hollow Years」など)に特化したような内容に。もちろんDTではなく、あくまでラブリエのソロプロジェクトということで、プログメタル度は非常に低く、かつ今回はメタリックなテイストも封印されている。と同時に、変拍子などのないストレートな作風ということで、プログロック色もかなり希薄です。が、そこはラブリエのこと。彼が若い頃に聴いてきたであろうYES(というか、ジョン・アンダーソン)やKANSAS、JOURNEYといった先人たちからの影響も伺え、無理にDTと切り離すこともないかなという内容。そりゃあラブリエが歌っていれば、それっぽく聞こえますしね。

とにかく、楽曲が良い。かつ、今のラブリエの声域を非常に理解したメロディ作りがなされており、一定の落ち着いたトーンで進行していく楽曲群がいろんな形で差別化が図られている。これは完全にポール・ローグというパートナーの手腕によるものが大きく、かつDT最新作との対比という点においても良い相乗効果を生み出している(だからこそ、こんな短期間でのリリースが実現できたんでしょうしね)。先日59歳の誕生日を迎えたラブリエ、まだまだいけます!という前向きさが伝わる、良質なソフトロックアルバムだと断言しておきます。

なお、本作のラスト(日本盤ボーナストラックを除く)にはLED ZEPPELINのカバー「Rumble On」を収録。原曲のイメージをそのままに、アルバムのテイストにも沿ったアレンジも付け加えられており、アルバムを通して聴いても違和感なく楽しめる1曲です。

本当にいいアルバム。刺激や毒は一切ないけど、安心して楽しめる。疲れているときに聴くと、本当に沁みてくる良盤です。

 


▼JAMES LABRIE『BEAUTIFUL SHADE OF GREY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月23日 (月)

V.A.『TOP GUN: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1986)

1986年5月13日にリリースされた、映画『トップガン』のオリジナル・サウンドトラックアルバム。

本作はアメリカで1986年5月16日、日本では同年12月6日に公開された同名映画の主題歌や劇中挿入歌を集めた作品集。映画『フットルース』での大ヒットに引き続き起用されたケニー・ロギンス、再ブレイク前のCHEAP TRICK、久しくアメリカでのヒットを失っていたBERLIN、グロリア・エステファン率いるMIAMI SOUND MACHINE、『フットルース』でのマイク・レノ(Vo)に続いてバンドでの参加となったLOVERBOYビリー・アイドルとのコラボレーションで知名度を上げていたスティーヴ・スティーヴンスなどバラエティに富んだ面々が参加しています。

本作からはケニー・ロギンス「Danger Zone」(全米2位)および「Playing With The Boys」(同60位)、BERLIN「Take My Breath Away」(同1位)、LOVERBOY「Heaven In Your Eyes」(同12位)といったヒットシングルも多数誕生(CHEAP TRICK「Mighty Wings」もシングルカットされたものの、チャートインせず)。これらのシングルヒットや映画のバカ売れを受け、アルバム自体も全米1位/全英4位を記録。今日までにアメリカのみで900万枚を売り上げるメガヒット作となっています。

大半の楽曲を職業ライター(ジョルジオ・モロダーやハロルド・フォルターメイヤーなど)が手がけたことで、楽曲自体からは各アーティストの“色”はほぼ伝わりません。そこはもう、映画のさまざまな場面を盛り上げるために用意された楽曲ですから、最終的にそれを誰が歌うかってだけですよね(これが原因で、参加を断ったアーティストも多いとのこと)。ヒット曲コンピの側面もある程度ありながらも、あくまで映画ありきの1枚。時代的にもMTVを意識した、映像ありきのコンピレーションアルバムと言えるのではないでしょうか。

実際、本作からシングルカットされた楽曲のMVにはすべて映画の名シーンが効果的に使われており、もはや映画がアルバムを売るための壮大なロングMVなんじゃないかと錯覚するほど。時代ですね。

映画産業的にも音楽産業的にもイケイケだった80年代半ば、本作の大成功は良くも悪くも、その後に続く“メガヒット/豪華アーティスト参加サントラ”の雛形になったことは間違いありません(もちろん、それ以前の『フットルース』サントラのヒットがあってこそですが)。

今聴くと、いろんな意味で時代を感じさせる内容ですが、名実ともにここから唯一ブレイクしたスティーヴ・スティーヴンスにとっては、いろいろ忘れられない1枚なのではないでしょうか。これがなかったら、翌年のマイケル・ジャクソン『BAD』(1987年)参加もなかったでしょうから。

なお、本作は1999年、2006年にそれぞれスペシャルエディション、デラックスエディションとして再発。映画で使用されながらもサントラ未収録だったオーティス・レディング「(Sittin' On) The Dock Of The Bay」、THE RIGHTEOUS BROTHERS「You've Lost That Lovin' Feelin'」といった印象的な楽曲が追加された“完全版”となっており、サブスクではこちらのバージョンを聴くことができるようです。なお、2006年版にはさらにREO SPEEDWAGON「Can't Fight This Feeling」、MR. MISTER「Broken Wings」、EUROPE「The Final Countdown」、STARSHIP「Nothing's Gonna Stop Us Now」、ジェニファー・ラッシュ「The Power Of Love」と映画には一切関係ないものの、同時期にヒットした楽曲5曲が追加されています。

いよいよ映画『トップガン マーヴェリック』が公開間近。今度のサントラは本作のような形ではなく、レディー・ガガやハンス・ジマー、ハロルド・フォルターメイヤーによる楽曲が中心のようですが、懐かしのケニー・ロギンス「Danger Zone」なども再収録されるようなので、若干は「あの頃」を追体験できるかもしれませんね。

 


▼V.A.『TOP GUN: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月22日 (日)

RECKLESS LOVE『TURBORIDER』(2022)

2022年3月25日にリリースされたRECKLESS LOVEの5thアルバム。日本盤は同年2月23日先行発売。

AFM Records移籍第1弾となった前作『INVADER』(2016年)から実に6年ぶりの新作。その間にはイベント『TOKYO INVASION』(2017年6月)で二度目の来日が実現し、2020年には三度目となる再来日公演も計画されていましたが、ご存じのとおりコロナの影響で中止に。そんな彼らが満を辞して届けてくれたのが、徹底的に1980年代にこだわった内容の“ニュー・レトロ”な1枚でした。

ドラムサウンドをシンセドラム的なサウンドで統一することで、重さよりも軽さを重視。ギターサウンドもどこか80年代的AORを思わせるもので、そこにシンセベース、キラキラしたシンセサイザーサウンドを被せることで“あの時代”を完全再現。いいですね、この間違った方向に突き進んだ80年代愛(笑)。こんな軽いドラムとキラキラシンセに閉口してしまいそうになる恥しサウンド、2022年の新譜ではそうお目にかかれませんって。

もちろん、これは全面的に褒め言葉。彼らは80年代のヘアメタル/グラムメタルから影響を受けたバンドなわけで、当然80年代への憧れは人一倍強いものがあるはず。しかし、多くのこの手のバンドはいわゆる“LAメタル”的なサウンドを再現するばかりで、頭ひとつ飛び抜けるのが難しい。そんな中、RECKLESS LOVEはいろんな意味で振り切り、“あの時代”を2022年によみがえらせることに成功したわけです。

ここで表現されている80年代って、たとえば『フットルース』とか『トップガン』みたいな80'sハリウッド映画のサウンドトラックなどで表現されていたサウンドなんですよ。あの軽薄なまでの軽さとドライブ感って、今の音では絶対に真似できないんじゃないかな。それを、ここまで忠実に(しかも2022年の質感で!)再現し、異色/異物感を見事に提示。こういうサウンドのせいもあってか、不思議と楽曲自体も80年代のそれに聞こえてくるんだから、不思議なものです。

かつ、本作にはオジー・オズボーン「Bark At The Moon」のカバーも収録。こちらも上記のような軽薄サウンドで表現されているもんですから、ヘヴィさがあのギターリフのみという体たらく(笑)。シンセドラムのフィル回しに腰抜けそうになるくらいユルユルなんですが、これが気持ち良いったらありゃしない。

この方向性、どこかザ・リーサルウェポンズにも近いものがあり。だから、個人的にポジティブに受け入れられるのかな。もし、中学生の自分が1985年くらいにこのアルバムを聴いたら、絶対に「ダセエ!」と拒絶していたことでしょう(笑)。しかし、そこから数十年と歳を重ねて大人になった今の自分なら、わかる。「ダセエ! けど、カッケー!」と。冗談みたいな話ですが、個人的に年間ベスト級の1枚です。

 


▼RECKLESS LOVE『TURBORIDER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月21日 (土)

CRASHDÏET『AUTOMATON』(2022)

2022年4月29日にリリースされたCRASHDÏETの6thアルバム。日本盤は同年7月6日発売予定。

スウェーデンのグラムメタルバンドによる、前作『RUST』(2019年)から約2年7ヶ月ぶりの新作。2017年に加入した4代目フロントマン、ガブリエル・キーズ(Vo)参加2作目となり、その毒々しいビジュアルと相反し、北欧バンドらしい哀愁味の強い泣きメロを全面に打ち出した、親しみやすい1枚に仕上がっています。

いわゆるアリーナロック/スタジアムロック的手法を軸にしながら、豪快な80's USハードロックと北欧パワーメタル的なテイストを織り交ぜることで正統派ハードロックに近いスタンスで楽曲を構築。グラマラスなのは見た目だけで、その音楽性からはグラムロックのグの字も感じられません。だけど、そこが良い(個人的には)。これこそが2000'sグラムメタル。

そつなく作り込まれた楽曲の数々はどれもキャッチーで、1曲に必ず1ヶ所はシンガロングできそうなパートが用意されている。なもんで1、2度繰り返して聴いているうちに、自然と口ずさめている自分がいる。リズムのファットさ(およびドラムの手数の多さ)とギターの鋭角さはこの手のバンドにしては硬派な部類かもしれませんが、楽曲のポップさとの相性含めちょうどいいさじ加減ではないでしょうか。

ガブリエル・キーズの歌声もこの手のバンドらしさを強く打ち出したもので、そのパワフルなサウンドにも一切負けていない。が、このバンドの場合、過去にフロントを務めたデイヴ・レパード(R.I.P.)やサイモン・クルーズと曲者ばかりだっただけに、そこまで個性が強いというわけでもなガブリエルに関しては、そこだけが若干物足りないかもしれません。

そんな彼をフォローするかのように、「Powerline」にはSTEEL PANTHERのマイケル・スター(Vo)がゲスト参加。いや、音源を聴く限りではそこまででもなかったな(苦笑)。リモート参加で制作されたMVのクセはホント強すぎですけどね。

このアルバムで特に印象に残ったのが、マーティン・スウィート(G)の良質なギターソロ/フレーズ。リフワークはそこまで強烈ではないんだけど、ソロになった途端に独自の味を漂わせる。そう、「味」なんです。言い方を変えれば、痒い所に手が届く感じといいますか。派手すぎず地味すぎず、丁度良い。これって実はなかなか真似できるものではないんですよ。鉄壁のリズムワークとギターの存在感はさすが20年選手といったところでしょうか。

ビジュアル良し、楽曲良し、演奏良し。あとはボーカルがもうひと皮剥けてくれたら完璧かな。

 


▼CRASHDÏET『AUTOMATON』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年5月20日 (金)

SKILLS『DIFFERENT WORLDS』(2022)

2022年5月13日にリリースされたSKILLSの1stアルバム。

このバンドはブラッド・ギルス(G/NIGHT RANGER)、ビリー・シーン(B/MR. BIGSONS OF APOLLOなど)、デヴィッド・ハフ(Dr/GIANT)、レナン・ゾンタ(Vo/ELECTRIC MOB)によって結成されたスーパーバンド。テクニック的に文句なしのブラッド、ビリーに安定したサポート力を誇るデヴィッド、そしてブラジルの気鋭シンガーという4人が揃ったことで、この「名は体を表す」ストレートなバンド名が用いられたのでしょうか(だとしたら、いろんな意味で嫌味にも取れますが)。

技巧派のストリングス隊が揃ったことで、テクニック至上主義かプログメタル的なスタイルを重視するのかと思いきや、意外にもその楽曲重視の姿勢に、まずアルバムを聴いて驚かされることでしょう。それもそのはず、ソングライターとしてアレッサンドロ・デル・ヴェッキオやピート・アルペンボルグといった強力な布陣が楽曲提供しており、Frontiers Records総出で「よし、メタルファンから小金ぶんどってやるぞ」という前向きな姿勢(笑)が伝わってきます。

まあ、冗談はさておき。いわゆる産業ロック/産業メタル的な作り込まれた楽曲(比較的哀愁味の強いナンバーばかり)を中心に、アレンジとして適度にテクニカルなギター(いかにもブラッドらしいフレーズやプレイ)を散りばめ、リズムは比較的地味めに曲を支える側に回り(その中でもビリーのベースは、その音色を聴けば彼とわかるほど個性的ですが)、その演奏の上を1970年代的なソウルフルシンガーが歌い上げる。なんなら、味付けとして心地よく響くオルガンも重ねちゃおう……ってなもんで、寸分の隙も感じられないほど、しっかり計算し尽くされた楽曲群がずらりと並びます。ヘヴィメタルというよりはハードロック、しかも70年代の香りをさせた1980年代の王道メロディアスハードロック。好きな人にはたまらない1枚ではないでしょうか。

どの曲も3〜4分台と、この手のバンドにしてはコンパクトで聴きやすいし、そこも含めて計算が伝わる。あまり「計算、計算」と言うとネガティブに捉えられるかもしれませんが、もちろん良い意味で使ってます。要するに、文句の付けどころがないんです。マイナーキーの楽曲続きのところ、中盤に用意されたメジャーキーのハードポップ「Show Me The Way」も良いアクセントになっていますし、王道のパワーバラード「Just When I Needed You」も非常に良曲。まったく破綻が感じられない優等生的な1枚だと断言しておきます。

でも、だからこそ物足りなさも感じるというのが正直な気持ち。良いことには違いないんだけど、このメンツだからこその“プラスアルファ”が欲しかったかな。そこがいわゆるメンバー主導のバンドと作られたバンドの違いなのかな(いや、作られたバンドかどうかは知らんですが)。せっかく随所に派手なプレイを用意しているのに、それが地味に聞こえてしまうぐらい全体のまとまり/バランスが良すぎて、あまり耳に残らない。なぜなんでしょうね、これ。

安定を求めるリスナーには100点満点な内容なんでしょうけど、今の自分には無難すぎてあまり強く響かなかった。その完成度の高さから万人を満足させそうですが、実は聴く人を選ぶ1枚かもしれません。

 


▼SKILLS『DIFFERENT WORLDS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月15日 (日)

WHITESNAKE『GREATEST HITS 2022 - REVISITED - REMIXED - REMASTERED -』(2022)

2022年5月6日にデジタルリリースされたWHITESNAKEのグレイテストヒッツアルバム。フィジカル(CDおよびアナログ盤)の海外でのリリースは6月17日、日本でのCD発売は6月21日を予定。

本作は5月10日からスタートしたWHITESNAKEの“フェアウェル・ツアー”に先駆け発表された、いわゆる“黄金期”(=Geffen Records所属期)の楽曲をまとめたコンピレーションアルバム。もともと1994年に同タイトルおよび同企画のベスト盤が発表済みですが、今回はその収録内容を見直したほか、全曲リミックス/リマスタリングを施したほか、いわゆるシングル表題曲に関しては一部楽器パートの変更&新規録音が追加されるという、いわば「過去の楽曲を今風に作り直しましたよ」的編集盤なわけです。昨今のデラックスエディションや“Red, White & Blues Trilogy”コンピ盤と同じ方向性ですね。なので、ここでは1994年盤とは完全に別モノとして考えて、話を進めたいと思います。

デヴィッド・カヴァデール(Vo)によると、本作は「オリジナルの『GREATEST HITS』をさらに発展させた作品だ。80年代や90年代のサウンドのタイムカプセルを掘り起こし、すべての曲をサウンド面で最新なものにアップデートしたんだ。オリジナルの音源を聖なる遺物として考えてくれているファンのために、オリジナルアルバムはいつも通りそのままに残しておいたよ」とのこと。いやいや、オリジナルアルバムも曲順とかいじってますやん(苦笑)。

そのほか、プレスリリースによると「“Red, White & Blues Trilogy”でも新たなサウンドを付け加えてくれたキーボーディストのデレク・シェレニアンが今回も参加しており、ここに収録されている半数以上の楽曲に新たなハモンドオルガンの音色を付け加えてくれている。彼の熱いパフォーマンスは、No.1スマッシュヒット曲「Here I Go Again」や「Fool For Your Loving」「You're Gonna Break My Heart Again」といった楽曲で聴くことができる。1989年のアルバム『SLIP OF THE TONGUE』に収録されている「The Deeper The love」や「Judgement Day」といった楽曲では、エイドリアン・ヴァンデンバーグによる新たなギターパフォーマンスも収録されている」そうで、確かにシンセやオルガンがかなり新鮮に響くアレンジですし、『SLIP OF THE TONGUE』の楽曲におけるギターリフやバッキングプレイの“スティーヴ・ヴァイが弾くオリジナルテイクとの質感の違い”はこうした差し替えによる効果だったのだと気づかされます。エイドリアン、オリジナル音源収録時は腱鞘炎でレコーディングに参加できなかった無念をこういう形で果たすことになるとは、30数年前は考えもしなかったでしょうね。

また、「これらの新たに付け加えられた要素に加え、デイヴィッド・カヴァデールは貴重品保管室を掘り起こし、オリジナルレコーディング音源には入っていなかった、ギタリスト:ジョン・サイクスによるヴィンテージなパフォーマンスを初めて今回公開している。彼のその貴重なパフォーマンスは、「Slide it In」のソロパートや「Give Me All Your Love」のリズムギターパートで聴くことができる」そう。『SLIDE IT IN』(1984年)『WHITESNAKE』(1987年)の楽曲に関しては、ギターソロにもちょっとしたニュアンスの違い、もっと言ってしまえば“オリジナルのギターソロを別の人間がコピーした”ような違和感を覚えるんですよね……このへん、リミックスの影響なのかなという気もしますが、どうなんでしょう。

あ、もうひとつ。Rhino Records企画の編集盤とはいえ、最初はこの時代のベスト盤に『FOREVERMORE』(2011年)から1曲(タイトルトラック)を追加するのはいかがなものかと思いました。しかし、「Crying In The Rain」から続き、アルバムのエンディングというポジションにこの「Forevermore」が置かれるという構成自体は、聴いてみると意外と悪くないなとも感じ、結果オーライかな。とはいえ、取ってつけた感は否めませんが。

全体を通してドライなミックスが施されたことで、オリジナルテイクにあったアリーナロック級のダイナイックさが激減しており、それを“現代的”と前向きに捉えるか、あるいは“年齢とともにショボくなった”とネガティブに受け取るか……そのへんは聴き手に委ねます。僕自身は一長一短の仕上がりで、なんとも言えないかな。ただ、アルバムごとにプロデューサーやプレイヤーの異なるあの時期=80年代の楽曲(ついでに「Forevermore」も)を、統一感を求めて再構築したという点では、非常に聴きやすい1枚だとは思いました。

今後実現するのかどうか微妙な“フェアウェル・ツアー”日本公演を前に、たまに思い出したように再生することもあるのかな……そんな1枚です。

 


▼WHITESNAKE『GREATEST HITS 2022 - REVISITED - REMIXED - REMASTERED -』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+Blu-ray / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月14日 (土)

THE ROLLING STONES『LOVE YOU LIVE』(1977)

1977年9月23日にリリースされたTHE ROLLING STONES通算2作目のライブアルバム(アメリカ限定の擬似ライブ盤『GET LIFE IF YOU WANT IT!』を含めると3作目)。

Decca Records / London Records時代に発表した『GET YER YA-YA'S OUT!』(1970年)に続くライブ作品は、アナログ/(のちの)CDともに2枚組とボリューミーな内容。ロニー・ウッド(G)が参加して初のツアーとなった1975年の全米ツアー、および翌1976年の欧州ツアー、そして1977年3月にカナダ・トロントのクラブEl Mocamboで実施された限定公演からの音源を含む全18トラック(オープニングSEを除けば全17トラック)を楽しむことができます。

タイミング的には『BLACK AND BLUE』(1976年)リリースを挟む時期のツアー音源となり、同作からは「Hot Stuff」がセレクトされたのみ。むしろ、その前作にあたる『IT'S ONLY ROCK 'N ROLL』(1974年)から3曲(「If You Can't Rock Me」「Fingerprint File」「It's Only Rock 'N' Roll (But I Like It)」)選ばれているあたり、同作のツアーが実現しなかった鬱憤が晴らされているような気がしてなりません(実際のツアーでは「Fool To Cry」や「Crazy Mama」あたりもセレクトされていますが)。

『GET YER YA-YA'S OUT!』でのダークな危うさこそ感じられませんが、全体を通して伝わる躍動感はこの時期ならでは。ミック・ジャガー(Vo)もキース・リチャーズ(G, Vo)も脂の乗ったパフォーマンスを展開しています。特にキースに関してはドーピングの結果とは言いませんが(苦笑)、そのテンションの高さはダウナーだった1970年前後と比較すると完全に別モノ。一概に比較はできませんが、どっちもストーンズらしいと思いますし、少なくとも80年代からストーンズに入っていった僕にとっては『LOVE YOU LIVE』でのストーンズがもっともパブリックイメージに近かったような記憶があります。事実、1990年2月の初来日時は『GET YER YA-YA'S OUT!』よりも『LOVE YOU LIVE』ばかりリピートしていましたしね(選曲的にもこちらのほうが近いですし)。

「Hot Stuff」や「Tumbling Dice」からじわじわ伝わる熱量、「Star Star」や『IT'S ONLY ROCK 'N ROLL』収録曲から伝わる爆発力、そして「Brown Sugar」から「Jumpin' Jack Flash」へと続きラストの「Sympathy For The Devil」へと到達するクライマックス感は、本作でしか味わえないものではないでしょうか。もちろん、「Fingerprint File」や「You Gotta Move」みたいに地味めな曲から伝わるファンキーさもたまりません。

そして、本作でもっとも注目すべきなのがDISC 2冒頭から4曲目まで(アナログC面)の、El Mocamboでの音源。すでにアリーナクラスのバンドだったストーンズが、300名収容のクラブで演奏するという貴重な機会というだけでなく、「Mannish Boy」「Crackin' Up」「Little Red Rooster」「Around and Around」と、ある種原点回帰と言える規模感でルーツとなるブルース/R&Rをカバー/選曲するあたりに、バンドのこだわりが見え隠れします。

ストーンズが次にライブアルバムをリリースするのは、1982年になってから。その『STILL LIFE』ではスタジアムでライブをするようになったストーンズの様子がコンパクトにまとめられています。続く『FLASHPOINT』(1991年)もスタジアムツアーの模様を収めたものですが、約10年の間にどれだけテクノロジーが進化したのかも確認でき、資料価値としても非常に高いものがあるので、そのへんも意識して楽しんでみてください

 


▼THE ROLLING STONES『LOVE YOU LIVE』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月13日 (金)

THREE DAYS GRACE『EXPLOSIONS』(2022)

2022年5月6日にリリースされたTHREE DAYS GRACEの7thアルバム。

前作『OUTSIDER』(2018年)から4年2ヶ月ぶりの新作。ブラッド・ウォルスト(B)の実弟である元MY DARKEST DAYSのマット・ウォルスト(Vo)を迎えた編成では3作目のアルバムとなり、リードトラック「So Called Life」はすでにBillboard Mainstream Rockチャート1位を獲得し、自身通算16曲目の1位獲得であると同時に同チャートの1位最多獲得というVAN HALENを超える記録を樹立したばかりです。

過去作で何度も共演しているハワード・ベンソン(MY CHEMICAL ROMANCEDAUGHTRYHOOBASTANKなど)を共同プロデューサーに迎え、ミキサーにはダン・ランカスター(BRING ME THE HORIZONMUSEONE OK ROCKなど)を初起用。フィーチャリングゲストとして「Neurotic」にルーカス・ロッシ、「Someone To Talk To」にAPOCALYPTICAが参加し華を添えています。

ロックダウン下の2020年よりZoomでミーティングを重ね、状況が少しずつ緩和されたのを見計らってニール・サンダーソン(Dr)の自宅スタジオなどでレコーディングを開始。アルバムラストを飾るタイトルトラック「Explosions」を中心に、この困難な状況下を乗り越えていくポジティブな爆発力や、内なる苦しみを解放させるための衝動が表現されたヘヴィ&キャッチーな楽曲群がズラリと並ぶ、非常に聴き応えのある1枚に仕上がっています。

ポスト・グランジ出身のバンドたちにとって、このような状況を(ポジティブさをはらみつつ)いかにダーク&ヘヴィなサウンドで表現していくのかはひとつの挑戦だと思います。もちろん、これまでのアルバムでもそういった前向きさは常に封じ込めていたももの、実際に人々がここまで負の感情にとらわれてしまっている環境下でそれを効果的に表現するのは至難の業。ですが、すでに20年選手の彼らは時代に即したタフなバンドアンサンブルと、どこかネガティブさを漂わせながらも最終的にはポジティブな方向へと導くメッセージで聴き手に活力を与えてくれる。それが、何かアクションを起こす際の起爆剤につながれば……そんな思いが全面から伝わる、非常に心地よく楽しめる良作ではないでしょうか。

アルバムで表現されているサウンドは決して2022年的とは言い難いものですが(もちろん、味付けは多少現代的ではあるものの、総じて全時代的な表現方法なのは否めません)、視点を変えれば「一周回って新しくもあるのでは?」と思えなくもない。そのへんは聴き手の感じ方次第ではあるものの、僕自身はこういったポスト・グランジの流れを汲む王道バンドサウンドと新鮮な気持ちで向き合うことができました。実際、どの曲も非常に練り込まれているし、オルタナロックファンやハードロックリスナーにもアピールする要素は豊富に含まれている。かつ、すべての楽曲が2〜3分とコンパクトなのもあってスルスル聴き進めることができ、全12曲で約38分というトータルランニングもちょうどいい塩梅。日本盤ボーナストラックの「Somebody That I Used To Know」(2020年に配信された、ゴティエの2011年大ヒット曲カバー)を含めても約41分ですからね。

奇を衒うことなく、自分たちに求められていること、自分たちがやるべきことが100点満点の形で具現化。愚直なまでに真っ直ぐな本作は、こんな時代だからこそしっかり届いてほしい1枚です。

 


▼THREE DAYS GRACE『EXPLOSIONS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月12日 (木)

PAPA ROACH『EGO TRIP』(2022)

2022年4月8日にリリースされたPAPA ROACHの11thアルバム。日本盤未発売。

前作『WHO DO YOU TRUST?』(2019年)から3年3ヶ月ぶりの新作。近年の彼らにしては比較的長めのスパンですが、とはいえその間にメジャーデビュー作『INFEST』(2000年)収録曲をスタジオライブで再現したアルバム『20/20』(2020年)やベストアルバム第2弾『GREATEST HITS VOL. 2: THE BETTER NOISE YEARS 2010-2020』(2021年)といったアイテムもあったので、実は毎年何かしら作品を発表しているんですよね。

さて、オリジナル作品として久しぶりとなった今作はNew Noize Records移籍第1弾アルバム。ミクスチャーロック/ニューメタル路線へと回帰した過去2作の延長線上にありながらもミクスチャー色をより強めた、躍動感に満ちた1枚に仕上がっています。ロックバンドというスタイルにこだわることなく、曲によっては打ち込みやループを使用。FEVER 333のジェイソン・エイロン・バトラー(Vo)やラッパーのスエコをフィーチャーした「Swerve」や続く「Bloodline」、「Stand Up」あたりは完全にニューメタルの枠から飛び越え、モダンなラップコア、あるいはモダンポップ寄りのテイストを強めており、そのフットワークの軽さは相変わらずだなと感心させられます。

その一方で、タイトルトラック「Ego Trip」や「Unglued」、アルバム冒頭を飾る「Kill The Noise」などではロックバンド然としたアンサンブルを提供しますが、その質感や音像はかなり現代的なもので、往年のニューメタルとは一線を画するものと言えるでしょう。しかし、それこそが常に“時代と添い寝”してきた彼ららしくも映り、ラップパートが近作よりも多く感じられるあたりも「この時代にどんな音が求められているか?」と読み取った結果なのかもしれません。

しかし、「この時代にどんな音が求められているか?」と「この時代にPAPA ROACHにどんな音が求められているか?」は似て非なるもので、今の彼らにここまで“行き切った”音をリスナーは求めているのかどうかは少々疑問です。作品自体の完成度は非常に高く、最初から最後まで安心して楽しめるものの、そこに関しての乖離が少々気になってしまうんですよね。特にロックが求められていないアメリカにおいて、本作はチャート的にも惨敗しましたし(Billboard 200では過去最低の115位)。

すべての楽曲が2〜3分程度というコンパクトさは前作同様、楽曲のバラエティ豊かさも相変わらず幅広いものがあり、彼らならではのミクスチャー感が思う存分味わえる本作は、日本のロックリスナーにこそ伝わってほしい1枚かもしれません。そんな作品が日本リリースされていないという不幸もありますが、まずはサブスクを通じて少しでも広まってほしいと願っています。

 


▼PAPA ROACH『EGO TRIP』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2022年5月11日 (水)

IBARAKI『RASHOMON』(2022)

2022年5月6日にリリースされたIBARAKIの1stアルバム。

IBARAKIはTRIVIUMのフロントマン、マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)によるブラックメタル主体のソロプロジェクト。このブラックメタルプロジェクト自体は10年ほど前から構想があったそうで、当時はMRITYUというプロジェクト名でノルウェースタイルのブラックメタルを表現しようとしていたんだとか。ところが、ノルウェーブラックメタルの当事者であったイーサーンEMPEROR)に助言を求めたところ、「ノルウェー人でない君が、ノルウェーのスタイルをやる必要はない」というアドバイスを受けたことで、マシュー自身のルーツでもある日本にスポットを当てた形での創作活動に着手することを決意したんだそうです。

プロジェクト名のIBARAKIは「茨城」や「茨木」ではなく、「茨鬼」を表します。これは平安時代に京都を荒らし回ったとされる鬼の中にいた茨木童子(いばらきどうじ)を指し示し、アルバムタイトルの『RASHOMON』はそのものズバリ「羅生門」を意味するワード。全10曲におよぶ収録曲は、インストの1曲目を除くすべてが英詞で歌われていますが、タイトル自体は「儚き必然」「迦具土」「茨木童子」「地獄太夫」「魂の崩壊」「悪夢」「木漏れ日」「浪人」「須佐之男命」「海賊」とすべて日本語。かつてTRIVIUMとして『SHOGUN(将軍)』(2008年)というアルバムを発表し、その中に「Kirisute Gomen(斬り捨て御免)」という楽曲も含まれていましたが、今回は奇を衒った日本語詞も含まれていないようです。

プロデュースを手がけたのは、先に登場したイーサーン。彼は「Tamashii No Houkai」「Akumu」でコライトを務めたほか、「Tamashii No Houkai」「Rōnin」でリードギター、「Susanoo No Mikoto」ではボーカルも披露しています。また、レコーディングにはコリィ・ビューリュー(G)、パオロ・グレゴリート(B)、アレックス・ベント(Dr)といったTRIVIUMの面々のほか、「Akumu」にはネルガル(Vo/BEHEMOTH)、「Rōnin」にはジェラルド・ウェイ(Vo/MY CHEMICHAL ROMANCE)といった豪華ゲストも参加しています。

アルバム自体は完全なるブラックメタルというよりは、マシューなりにブラックメタルを解釈したダークサイド強調のヘヴィメタルといった印象。随所にブラックメタル的アプローチやブルータルなテイストを楽しむことができますが、それと同じくらいメランコリックなクリーンパートも用意されており、そのバランス感含めさすがTRIVIUMのフロントマンといったところでしょうか。ぶっちゃけ、ブラックメタル度の高さを求めて触れると面食らうかもしれませんが、TRIVIUMのリスナーや幅広くヘヴィメタルを愛聴する方なら安心して楽しめる1枚だと思います。

壮大かつドラマチックなオーケストレーションやプログロック的な曲構成は間違いなくイーサーンによる功績が大きいでしょうし、そこにスリリングな王道メタルの要素と日本的情緒に満ちたメロディが備わっているのは確実にマシューならでは。つまり、どちらか一方だけではダメな、奇跡的なバランスのもとに生まれた1枚と言えるでしょう。そこにネルガルやジェラルド・ウェイといったバラエティ豊かなフィーチャリングゲストが加わることで、ブラックメタル中心に活動しているアーティストには真似できないカラーが生まれている。まさにオリジナティに満ちた傑作メタルアルバムではないでしょうか。

個人的にはこれをブラックメタルと呼ぶのはちょっと違う気もしますし、むしろブラックメタルを下地に新たなエクストリームメタルを完成させたと言ったほうが正しいと思うのですが、いかがでしょう。まあ最終的には、聴いた人が判断すればいいだけの話ですよね。内容自体は完璧すぎるくらいによく出来た1枚なので、メタルやラウドな音楽を愛聴する方々には真っ先に触れていただきたいです。

 


▼IBARAKI『RASHOMON』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月10日 (火)

GAUPA『FEBERDRÖM』(2020)

2020年4月3日にリリースされたGAUPAの1stフルアルバム。日本盤未発売。

GAUPAは2017年に結成された、スウェーデン・ファールン出身の男女5人組バンド。スウェーデン語で「山猫(=lynx)」を意味するバンド名の彼らは、ドゥーミーでサイケデリックなプログロックサウンドと紅一点のエマ・ネスランド(Vo)の妖艶かつ呪術的なボーカルスタイルを武器に活動を展開。2018年にセルフタイトルの1st EP『GAUPA』を発表したのを機に、北欧のメタルフェスで知名度を上げていきます。

この1stフルアルバムは先のEPの延長線上にある作風で、ズルズルと引きずるようなストーナーロックサウンドを軸に、随所にサイケでフォーキーなテイストを散りばめることで怪しげな世界観を構築。かつ、ビョークを彷彿とさせるエマのメタル離れしたボーカルスタイルと相まって、時代錯誤のサイケデリック・ワールドが目の前で繰り広げられていくことになります。

強弱のメリハリがしっかりしたアレンジが非常に効果的に響き、囁くようであり念仏を唱えるようにも聞こえる歌唱スタイルとの相性も抜群。タイトルの多くはスウェーデン語ですが、歌詞自体は英語で表現されているので耳馴染みも良い。BLACK SABBATHよりも情念の強さを感じさせる音作りと、ヒステリックになることなく浮遊感の強さを提示し続ける女性ボーカルが織りなす独特の空気感は、一度体験してしまうとクセになることでしょう。

大半の楽曲が3〜5分台と、聴きやすい尺なのもありがたい。ストーナー/ドゥームロックやプログロックと聞くと、どうしてもスローで長尺な楽曲を思い浮かべてしまいますが、そういった点でも本作に収録された楽曲群は非常に敷居が低く、メタルやヘヴィ系があまり得意ではないリスナーにもとっつきやすい印象。「Mjölksyra」の冒頭などはかなりノイジーですが、歌が入るとまた空気が一変するから不思議です。

奏でる音に関してはは2020年代からかなりかけ離れた方向性ですが、ボーカルの存在感によってまた違った印象を与えてくれるGAUPAというバンド。スリリングなバンドアンサンブルと浮遊感の強いボーカルという水と油のような組み合わせが生み出す独創性を、ぜひお楽しみください。

なお、彼らは新たにNuclear Blast Recordsと契約し、今年11月18日には2ndアルバム『MYRIAD』のリリースも決定しています。先行配信が始まったリード曲「RA」もMVともども最高の仕上がりなので、こちらの到着も今から楽しみです(日本リリース元が若干心配ですが……)

 


▼GAUPA『FEBERDRÖM』
(amazon:MP3

 

2022年5月 9日 (月)

HALESTORM『BACK FROM THE DEAD』(2022)

2022年5月6日にリリースされたHALESTORMの5thアルバム。日本盤は同年5月11日発売予定。

オリジナルアルバムとしては全米8位を記録した前作『VICIOUS』(2018年)から約3年9ヶ月ぶり。新録曲からなるデジタルEP『REIMAGINED』(2020年)をその期間に挟んではいるものの、コロナ禍の影響もありスパンとしては過去最長となってしまいました。

プロデュースを務めたのはカバーEP『REANIMATE 3.0: THE COVERS EP』(2017年)、前作『VICIOUS』から引き続きニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSMASTODONKORNなど)。かつ、今回はコ・プロデューサーとしてスコット・スティーヴンズ(SHINEDOWNDAUGHTRYNEW YEARS DAYなど)も名を連ねており、ストリングス・アレンジメントのほかアコースティックギター(「Terrible Things」)でも制作に参加しています。

基本的な作風は、ダイナミックでミドルテンポのハードロックサウンドを軸にリジー・ヘイル(Vo, G)のボーカルを効果的に届けるアレンジという前作の延長線上にあるもの。前々作『INTO THE WILD LIFE』(2015年)でのスタイルをよりヘヴィなものへと昇華させたのが前作だったとすると、今作はその『VICIOUS』でのスタイルをよりブラッシュアップさせたものと受け取ることができます。

と同時に、歌を効果的に聴かせつつも各楽器パートの主張もより強くなっているように感じれ、バンド感が今まで以上に伝わる作品でもあるのかなと。中でもリジー&ジョー・ホッティンジャー(G)のギタリストとしての存在感は過去イチと言えるもので、リフワークはもちろんのこと、ちょっとしたソロプレイに至るまで耳に残るフレーズが今まで以上ではないでしょうか。今まではリジーの歌に引っ張られているところも多分にあったのでしょうが、先にも述べた“バンド感”の向上により一人ひとりの役割により重みが増した。それもこれも、コロナ禍の影響でツアーができなかったり、面と合わせて曲作りやレコーディングが難しかったりする状況に陥ったことも大きいのかな。

リジーは本作の制作に関して、「新型コロナウイルス(が問題となる)約3ヶ月前にアルバムの制作をスタートしたの。ロックダウンが実施されたあとは、ライブもツアーもできなくなってしまって、とても憂鬱な気持ちになり、自己喪失に陥ってしまった。このアルバムは、私がその深い底から抜け出すストーリーを描いています。メンタルヘルス、放蕩、サバイバル、救済、再発見、そして人間への希望、という旅を体験できると思うわ」とコメントを残していますが、そうしたリジーの思いをメンバーが汲み取ったのか、あるいは同じタイミングに同様のことを感じていたのか、なんにせよロックダウンなどを経てじっくり時間をかけて完成させただけある、充実度の高い1枚と言えるでしょう。

「Back From The Dead」や「The Steeple」といったリード曲はもちろんのこと、パワフルな歌と演奏でグイグイ引っ張るドラマチックなアレンジの「Wicked Ways」、豪華なストリングス隊をバックにリジーが繊細かつ力強く歌い上げる「Terrible Things」あたりは本作のハイライト。特に後者は直近のEP『REIMAGINED』での試みがうまく反映されている印象を受けます。

ただし、全体を通して同じようなテンポ感(ミドルテンポ、もしくはミディアムスロー)が続くことがあり、若干の平坦さを覚えるのも確か。「Terrible Things」や「Raise Your Horns」のようなスローバラードは良いアクセントになっているものの、1曲くらいアップテンポの楽曲があったらアルバムとしてもう少し変化がつけられたんじゃないかな(あるいは「Wicked Ways」タイプの楽曲をもうひとつ、中盤以降に置くとか)。とはいえ、このダークさや閉塞感も“2020年以降”の世の中を反映させたものと言えるので、先のリジーのテーマを考えると致し方ないのかな。

このバンドの場合、楽曲のバリエーションがある程度パターン化してしまっているので、もしこのスタイルを維持していくのであれば、今後はいかにアレンジで勝負できるかが鍵になりそうです。

 


▼HALESTORM『BACK FROM THE DEAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月 8日 (日)

FRANZ FERDINAND『HITS TO THE HEAD』(2022)

2022年3月11日にリリースされたFRANZ FERDINANDのコンピレーションアルバム。日本盤は同年3月8日に先行発売。

 

2003年9月にシングル「Darts Of Pleasure」でDomino RecordingsからデビューしたFRANZ FERDINANDにとって、今年はデビュー20年目。これまでに発表した5枚のアルバムはすべてUKチャートTOP10入り(本国スコットランドでは前作TOP3入)を記録したほか、アメリカでも5作品中4作がTOP40入り、かつ2作はTOP10入りを果たすなど、20年近くにわたり成功を収め続けているバンドの、最初の20年を総括する“グレイテスト・ヒッツ”がこの20曲入りアルバムなわけです。

収録曲の内訳は1stアルバム『FRANZ FERDINAND』(2004年)から5曲、2ndアルバム『YOU COULD HAVE IT SO MUCH BETTER』(2005年)から4曲、3rdアルバム『TONIGHT: FRANZ FERDINAND』(2009年)から3曲、4thアルバム『RIGHT THOUGHTS, RIGHT WORDS, RIGHT ACTION』(2013年)から4曲、5thアルバム『ALWAYS ASCENDING』(2018年)から2曲、今作のために制作された新曲2曲という妥当な配分。ほぼすべてがシングルカットされた楽曲ですが、中には「Outsiders」(『YOU COULD HAVE IT SO MUCH BETTER』収録曲)のようにシングル化していない楽曲も含まれており、バンドのこだわりが伝わってきます。

「日本ではソニーから流通していた初期3作の楽曲はなんとなく耳馴染みがあるけど、最新作はそこまで聴いていない」というリスナーも、もしかしたら少なくないかもしれません。そんな方にとっては現時点での最新作『ALWAYS ASCENDING』から2曲、そして前々作『RIGHT THOUGHTS, RIGHT WORDS, RIGHT ACTION』から4曲も含まれていることで、「最近の曲も意外と良いじゃん」と気づいてもらえることでしょう。そう、『TONIGHT: FRANZ FERDINAND』を境にイギリスや本国スコットランドでは大きなヒットは生まれていないんですが、アルバム自体は毎回チャート上位に記録していることもあり、海外ではまだまだ根強い人気を保っているんです(もちろん、ここ日本でもアルバムリリースのたびに必ず1〜2度はフェスや単独公演で来日していますしね)。

どうしても「Take Me Out」や「Do You Want To」のようなキャッチーなヒット曲に耳がいってしまいがちですが、このバンドの魅力はむしろそれ以外の楽曲でにじませるストレンジなポップセンス。かつてSPARKSのメンバーとFFSなるスーパーバンドを結成したこともあるくらい、同バンドからの影響も随所に感じられる存在で、それは最新作に至るまで常に維持されている。いや、むしろ作品を追うごとにそのマニアックな作風は濃くなっていき、それと同時に初期から備わっているポップさにもより磨きがかかっている。そういった意味では、本作のために用意された新曲「Curious」「Billy Goodbye」から現在進行形で深化し続けているFRANZ FERDINANDの“今”が伝わるはずです。

初期からのファン、初期しか知らないリスナー、近作で彼らのファンになったライト層、そしてこのベスト盤で初めてFRANZ FERDINANDに触れるビギナー。本作はそういったさまざまな層の最大公約数を満足させてくれる1枚になるはずです。全20曲で70分というボリュームも、バンドの歴史をおさらいする上では適度なものですし、恭順もバンドの歴史に沿ってリリース順に並べられているので、気構えることなく楽しむことができるはずです。

 


▼FRANZ FERDINAND『HITS TO THE HEAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月 7日 (土)

BLOC PARTY『A WEEKEND IN THE CITY』(2007)

2007年2月5日にリリースされたBLOC PARTYの2ndアルバム。日本盤は同年1月24日に先行発売。

全英3位まで上昇し、その年の『NME』誌年間アルバムランキング1位を獲得したデビューアルバム『SILENT ALARM』(2005年)から約2年ぶりの新作。1stアルバムは初期衝動性がそのまま形になったかのような焦燥感の強いポストパンクサウンドで好評を博しましたが、一部からは「ライブでは下手くそ」「一過性の流行りもの」などと揶揄されましたが、続くこの2作目では短期間で急成長したバンドの姿が最良の形で表現され、過去の下馬評を跳ね除け全英2位/全米12位というヒットにつなげます。

「Banquet」や「Helicopter」のようにストレートで疾走感の強いスタイルを極力抑え、手数の多いリズムパターンでダンサブルな要素を軸にすることで、ギターのフレージングなど細かな表現力が求められるようになった楽曲群は、このバンドの新たな可能性を導き出すことに成功。「Song For Clay (Disappear Here)」や「Hunting For Witches」、あるいは「I Still Remember」などといったナンバーではその要素がより強まることでデビュー作を敬遠していたリスナーにも広くアピールすることができました。

また、変幻自在なアレンジで惹きつける「Uniform」や、エレクトロ要素を全面に打ち出した「Flux」(当初はアルバム未収録でしたが、2007年11月のシングル発売を機にアルバムに追加収録)、浮遊感の強いスローナンバー「Srxt」など変化球も多数用意されており、聴き手をまったく飽きさせることのない表現の幅を見せつけてくれます。ぶっちゃけ、『SILENT ALARM』時代にライブを観て「単調だなあ」と感じた筆者のようなリスナーは、この色彩豊かな2作目を初めて聴いたときに「え、君らもうポストRADIOHEADの座に君臨しちゃうわけ?」とひっくり返ったこともよく覚えています。ちょっと進化のスピードが早すぎだよ。

アルバム同様、本作からは「The Prayer」(全英4位)、「I Still Remember」(同20位)、「Hunting For Witches」(同22位)、「Flux」(同8位)というヒットシングルも多数誕生。この好調ぶりは、早くも届けられることになる次作『INTIMACY』(2008年)でさらにピークを迎えることになります。

 


▼BLOC PARTY『A WEEKEND IN THE CITY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

BLOC PARTY『ALPHA GAMES』(2022)

2022年4月29日にリリースされたBLOC PARTYの6thアルバム。日本盤未発売。

前作『HYMNS』(2016年)から6年3ヶ月という、過去最長スパンを経て届けられた新作。と同時に、ケリー・オケレケ(Vo, G)&ラッセル・リサック(G)のオリジナルメンバーにジャスティン・ハリス(B)&ルイーズ・バートル(Dr)という新メンバーを迎えて制作した2作目のアルバムでもあります。

バンドはこの6年の間に、1stアルバム『SILENT ALARM』(2005年)全曲披露を含むツアーを2018〜19年にかけて実施。少なくともこの期間に得た経験と手応えは、この新作に大きく反映されているのではないかと、アルバムで表現されているポストパンク路線に触れて実感しました。

ダンサブルな要素を軸にしつつも、近作ではギターロック的要素がどんどん薄くなっていたBLOC PARTY。しかし、このアルバムではデビューアルバムほどとは言わないまでも、初期の躍動感を随所ににじませたポストパンク/ギターロックが展開されています。BPMこそだいぶ落ち着いているものの、アルバム冒頭の「Day Drinker」や「Traps」、中盤以降の「In Situ」などは初期の彼らとイメージが重なり、この方向性をずっと待っていたというリスナーも少なくなかったのではないでしょうか。

しかも、ただ単にダンサブルなポストロックに特化するだけではなく、ラッセルの緻密なギタープレイ/フレーズがこれでもかというほどに詰め込まれており、かつ過去5作での経験が良い形で昇華された大人びた空気(気品のようなもの)もしっかり伝わる。そこがケリーの落ち着きを見せたボーカルワークと相まって、より強靭になった表現を楽しむことができる……これこそが、本作最大の魅力のように感じます。

あと、紅一点のルイーズのボーカルワークが良い味を出しており、時にユニゾンで、時にコーラスで存在感を示し、ケリーの落ち着き払った歌声に華を添えている。これは初期の彼らにはできなかった表現方法であり、新生BLOC PARTYの武器がひとつ増えたと実感させられます。終盤のハイライトである「If We Get Caught」はまさにその代表例であり、新たなキラーチューンになることは間違いないでしょう。

「Callum Is A Snake」のような人力ドラムンベース曲もあれば、「Rough Justice」みたいにミニマムなダンスチューンも存在する。その一方で「If We Get Caught」同様に親しみやすいポップチューン「Of Things Yet To Come」もあれば、「The Peace Offering」といったダークでムーディーなスローナンバーもある。ダンサブル/ポストパンクという主軸をキープしながらも、楽曲の幅を広げることで自身の表現力の高さを提示した今作は、真の意味で第二のデビューアルバムと言えるのではないでしょうか。ここから彼らのさらなる快進撃が始まることに期待しています。

 


▼BLOC PARTY『ALPHA GAMES』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月 6日 (金)

GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』(2019)

2019年8月19日にリリースされたジンジャー・ワイルドハートの8thアルバム。日本盤未発売。

最初に上記の日程でRound Recordsを通して10曲入りアルバムとしてデジタルリリースされ、翌2020年初頭にCDおよびアナログ盤が限定販売。同年5月21日には「Good Times Are In The Mail」「lil ol Wine Drinker Me」の2曲を追加した全12曲入りアルバムとして、サブスクなどで一般流通しています。

2019年というと、ジンジャー(Vo, G)、CJ(G, Vo)、ダニー(B, Vo)、リッチ(Dr)の“クラシックラインナップ”THE WiLDHEARTSが10年ぶりのアルバム『RENAISSANCE MEN』(2019年)で本格復帰したタイミング。それもあってなのか、ソロ作として直近の2枚……『GHOST IN THE TANGLEWOOD』(2017年)、『THE PESSIMIST'S COMPANION』(2018年)がアメリカーナ風レイドバックした落ち着いた作風だったのに対し、ここでは再び本来の彼らしいエネルギッシュでハード&ヘヴィ、だけどメロウでキャッチーな作品集にまとめられています。

ヘヴィな音像でエフェクティヴ、ミドルテンポ中心の作風は、シンプルなバンドサウンドで疾走感の強いパンク/パワーポップな『RENAISSANCE MEN』からの反動なのでしょうか。ソングライターとしての充実度はもちろん『GHOST IN THE TANGLEWOOD』や『THE PESSIMIST'S COMPANION』からの流れを汲みつつ、多重録音を用いたハーモニーなどの効果もあって、同じような質感のメロディ(「Pound Coins & Kitchen Roll」あたりは前作に入っていても不思議じゃない)でもまったく違って聴こえるから不思議です。

ここで展開されているヘヴィだけどキャッチー、ときどきサイケデリックなテイストも、ジンジャーが元来から持ち合わせている要素のひとつで、バンド時代でいったら名作『P.H.U.Q.』(1995年)、あるいは迷作『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)あたりと通ずるものがあるのかな。特に厚みのあるコーラスワークや「Love Is」から「Saturday Matinee」で試みた曲間なしの組曲風アレンジからは、『P.H.U.Q.』での経験が大いに反映されているように感じます。

もっと言えば、初期のソロ作(2000年代初頭から同年代後半にかけて)でイメージしていた青写真(やりたかったこと)が今は完璧に形にできるようになった。長年の試行錯誤を経て到達した、ソロ・ロックアーティスト=ジンジャー・ワイルドハートのひとつの“ゴール”がこれなのかな。

残念ながら、本作を最後にジンジャーの完全オリジナル新作アルバムは世に出ておりません。しばらくバンド活動が充実していたこと、あるいはコロナ禍に突入したことなどが理由かもしれませんが、アーシーな路線を経て再び“ジンジャーらしさ”に徹した本作の次に、彼がどんな“道”を選ぶのかが非常に気になります。

 


▼GINGER WILDHEART『HEADZAPOPPIN』
(amazon:MP3

 

GINGER WILDHEART『THE PESSIMIST’S COMPANION』(2018/2022)

2022年4月22日にリリースされた、ジンジャー・ワイルドハートの7thアルバムのリパッケージ盤。日本盤未発売。

本作は2018年11月末からRound Recordsを通じてネット(当初はデジタルのみ、翌2019年にフィジカルも)販売され、2020年9月からはデジタルリリース&サブスク配信が実施されていた同名の10曲入りアルバムに、新たに5曲を追加して曲順を変更、Wicked Cool Records経由で一般流通させた全15曲入りの新作。プロデュースはTHE WiLDHEARTSの最新作(にして何度目かの解散に際してのラスト作となってしまった)『21ST CENTURY LOVE SONGS』(2021年)やライブアルバム『30 YEAR ITCH』(2020年)、THE PROFESSIONALSの『WHAT IN THE WORLD』(2017年)などのほか、ジンジャーの前作『GHOST IN THE TANGLEWOOD』(2017年/2018年)でミックスを手掛けたデイヴ・ドレイパーが担当しています。

カントリーやフォークなどアメリカーナからの影響を強く受けた前作『GHOST IN THE TANGLEWOOD』から間髪入れずに発表された作品ということもあり、同作の延長線上にある内容。それもあってジンジャー(Vo, Dr,B, G,Per)のほかジョン・ケトル(G, Mandolin, Bouzouki)、マシュー・コリー(Piano, Hammond, Keys)、マーカス・ヒプキス(Pedal Steel)、エミリー・アーウィング(Cho)といったメンツは前作から引き続き参加しており、新たにデイヴ・ドレイパーもギターやプログラミングでも制作に加わっています。

そういった意味では、『GHOST IN THE TANGLEWOOD』とこの『THE PESSIMIST'S COMPANION』は姉妹作と言えるかもしれません。事実、『GHOST IN THE TANGLEWOOD』日本盤にボーナストラックとして追加された3曲のうち、「In Reverse」とは『THE PESSIMIST'S COMPANION』オリジナル盤、「I Don't Wanna Work On This Song No More」は同リパッケージ盤に改めて収録されていますし。録音時期もさほど変わらず、単にデイヴ・ドレイパーがプロデュース&プレイヤーとしてタッチしているか、していないかの違いくらいのものなのかなと。

曲順がだいぶ変わっていることもあり(オリジナル盤では2曲目だった「Why Aye (Oh You)」が1曲目、そしてオリジナル盤オープニングの「May The Restless Find Peace」がラストナンバーに)、全体を通して聴いたときの印象も少々異なりますが、全体を覆うリラックスした空気自体はまったく一緒。ロック/パンク/メタルなTHE WiLDHEARTSの中にもこうした“枯れた”要素はもともと含まれていたものですし、その一要素を抜き取って拡大させただけと受け取ることもできますし、パワーポップのルーツにはこうしたアメリカーナ的側面も多く含まれていることを考えると、ジンジャーが年老いていく中でこちらの方面に特化した作品づくりに移行していくのも納得がいきます。

実際、どの曲も非常にクオリティが高く、一時期の「あと一歩!」「もう一声!」的な時代を考えると終始安心して楽しむことができるはず。特にこのアルバムを制作していた頃は、まだバンドとしての新作に取り掛かっていない時期だったこともあり、ソングライターとしてはこちらの活動に集中しており、そこでここまでの才能を発揮できていたのは改めて素晴らしいことだなと再認識させられます。

また、本作にはARCTIC MONKEYS「I Wanna Be Yours」とTHE WALKER BROTHERS「No Regrets」というカバー曲も収録。この2曲は2019年春の「Record Store Day 2019」のために提供されたもので、当時はアナログ・変形ピクチャー盤(犬の写真が可愛い)で限定販売もされました。原曲はダウナーかつソウルフルなアレンジの「I Wanna Be Yours」も、ジンジャーの手にかかると軽快なカントリーロックへと生まれ変わるあたり、さすがです。

「Sweet Wonderlust」や「Stalemate」あたりはTHE WiLDHEARTSでプレイしても違和感なさそうな名曲ですし、バンドの(何度目かの)解散に凹んでいるファン(「またいつものことさ」と落ち込んでいないかと思いますが。苦笑)にこそ改めて触れていただきたいと同時に、いまだにジンジャー=THE WiLDHEARTSという固定観念を持っている人にこそ聴いていただきたい1枚です。

 


▼GINGER WILDHEART『THE PESSIMIST'S COMPANION』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

2022年5月 5日 (木)

HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998)

1998年10月にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの1stアルバム。日本盤未発売。

本作は本国スウェーデンのみで発表されたデビュー作で、現在はサブスク配信なども行われていない貴重な1枚。バンドのセルフプロデュースで制作された10曲(ラストナンバー「So Deep Inside」のあとにシークレットトラック「Fly Away」が含まれているので、正式には全11曲)が収録されており、チープで生々しい音像が初期衝動の塊のようなラフでアグレッシヴな演奏にマッチしています。

本作収録曲のうち6曲(「Hello/Goodbye」「Bubblecum Ride」「Rock 'N' Roll Star」「Someone Special」「Punk Rock Song」「So Deep Inside」)がワールドワイドデビュー作にあたる次作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)で再録されているのですが、さすがに一度録音した楽曲(およびライブで幾度にわたり披露してきた)だけあって、再録バージョンは実に“整理された”形に整えられています。大手レーベルのMusic For Nationsと契約したこともあり、レコーディングにかける費用もデビュー作の比ではなかったんでしょうね。うん、わかります。

僕はこちらの1stアルバムは完全後追いで、なんならちゃんと聴いたのはここ数年の話。そこそこ手頃な値段で中古盤を手に入れたのですが、買って後悔のない1枚だと今でも思っています。「Hello/Goodbye」や「Rock 'N' Roll Star」の完成度は次作に譲るものの、無軌道なラフさが際立つ今作のバージョンも決して嫌いになれない。それは名曲「Someone Special」も同様で、同系統で2ndアルバム未収録の「Right Here, Right Now」などには3rdアルバム『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)以降の片鱗を感じ取ることができ、改めて原石以上の可能性が伝わることも確認できます。

にしても、ありきたりのフレーズである「たかがロックンロール」を デビュー作のタイトルに用いた彼らが、そこから20年後に『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018年)で「俺のロックンロールを殺せやしねえよ」と再宣言するカッコよさといったら。そういう意味では、ぜひどこかのタイミングで万人が聴けるような環境を整えてもらいたいものです。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』
(amazon:海外盤CD

HARDCORE SUPERSTAR『DREAMIN' IN A CASKET』(2007)

2007年11月12日にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの6thアルバム。日本盤は同年11月21日発売。

起死回生のセルフタイトル作『HARDCORE SUPERSTAR』(2005年)からちょうど2年というスパンで届けられた新作。その成功をなぞるかのように、今作でもアッデ・ムーン(Dr)&マーティン・サンドヴィック(B)がプロデュースを手がけており、ハード&タフな前作を一歩推し進めたような硬質さの際立つ作風に仕上げられています。

本作に向けたリードシングル「Bastards」(アルバム未収録。ただし日本盤にはボーナストラックとして追加収録)で聴くことができた、『HARDCORE SUPERSTAR』でのバッドボーイズ・ロック路線をさらにメタリックに仕立てた作風はアルバム全編を通して貫かれており、タイトルトラックでのリフの刻み方含めシルヴァー(G)のギタリストとしての個性がこれまで以上に色濃く表れる結果に。結果、前作や初期のスリージーなハードロックを求める層には「あれ、ちょっと違う?」と不安を与えてしまうことになります。

しかし、このタフさも時間が経ってみれば改めてカッコいいと思えるもの。ここまでの6枚のアルバム、デビュー作『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998年)は次作での焼き直しも多いから除外するとして、特に2ndアルバム『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)以降はどれひとつとして同じようなアルバムがないのも初期のHCSSの特徴ではないでしょうか。そこに関しては僕自身もポジティブに受け入れています。

ただ、そんな今作ですが「これ!」と誰もが認めるキメ曲やキラーチューンが存在しないのが唯一の欠点。どれも平均点は超えているものの、全体をと通してトーンが似通ってしまっていること、楽曲のテイストも統一感が強すぎて変化に乏しいことは次作への課題といったところかな。ただ、残念ながら本作を最後にシルヴァーが脱退。以降のツアーサポートを務めたヴィック・ジーノ(G/当時CRAZY LIXX)が正式加入することで、バンドとして第2期に突入することになります。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『DREAMIN' IN A CASKET』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

HARDCORE SUPERSTAR『HARDCORE SUPERSTAR』(2005)

2005年11月2日にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの5thアルバム。日本盤は同年11月23日発売。

ポップで軽やかなパンク路線へと振り切った前作『NO REGRETS』(2003年)から2年2ヶ月ぶりの新作。過去2作ではキャッチーさにこだわることでハードロック色をどんどん希釈させていましたが、ここにきて代表作にしてワールドワイドデビュー作となった2ndアルバム『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)当時のスタイルへと回帰し、以降続くこのバンドの“らしさ”やオリジナリティを完全な形で開花させます。

当時流行っていたジャングル(シャッフル)ビートを用いたリード曲「Wild Boys」が、まさに往年のMOTLEY CRUEのイメージと重なる仕上がりで、多くのHR/HMファンが「これこれ!」と膝を叩いたことでしょう。アルバムは同曲を筆頭に、「Kick On the Upper Class」や「Bag On Your Head」といった疾走感を伴うハードナンバー、「Last Foreve」や「She's Offbeat」などグルーヴィーなリズム感を強調したノリのよいミディアムチューン、「We Don't Celebrate Sundays」を筆頭とするアンセム感の強いキラーチューン、そして「Standin' On The Verge」に代表される哀愁味漂うバラードタイプの楽曲と、とにかく全体のバランス感に優れたハードロックアルバムに仕上がっている。過去4枚のアルバムが数々ある要素のひとつに特化した作風だったとしたら、ここではHCSSが持つすべての特徴が均等に保ちつつ、そのすべてを100まで振り切ろうとする気概が伝わる。そんな起死回生の1枚ではないでしょうか。

ここで築いたひとつの形を軸に、以降バンドはさまざまな変遷をたどっていきますが、2022年現在の最新作『ABRAKADABRA』で彼らが再びこのセルフタイトル作を踏襲した作品を完成させることになるとは。そういった意味でも、本作はバンドにとって“第2のデビュー作”と言えるのかもしれませんね。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『HARDCORE SUPERSTAR』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年5月 4日 (水)

HARDCORE SUPERSTAR『NO REGRETS』(2003)

2003年8月27日にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの4thアルバム。日本盤は同年8月21日に先行発売。

ポップ&キャッチー度を強めた前作『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)から1年10ヶ月ぶりの新作。初めてプロデューサーを立てて制作した前作を経て、今作ではバンドとロベルト・ラギー(IN FLAMESCYHRAなど)の共同プロデュースで制作に臨んでいます。

バブルガムポップ度を強めた前作のカラーをさらに強め、ポップパンク調の味付けでまとめ上げたことで日本デビュー作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)での質感は相当希釈されたものに。同じ北欧の大先輩HANOI ROCKSや、そのルーツでもあるRAMONESあたりと共通する軽やかさと軽快さは、もはやグラムメタルやスリージーハードロックというよりはガレージパンク、バブルガムパンクと呼んだほうが正しいものかもしれません。

しかし、楽曲自体はどれも非常によく作り込まれたキャッチーさを保っており、オープニングを飾る「Wall Of Complaint」やリードシングル「Honey Tongue」などからは50'sや60'sのポップチューンとの共通点も見つけることができるほど。思えばHANOI ROCKSやRAMONESのようなバンドもそういったルーツを持つ存在だけに、HCSSにとっては新たな武器を求めて試行錯誤した結果がこの4作目だったのかもしれません。

残念ながら、初期のイメージ(サウンド/ヴィジュアル含め)を求める層にはこの大胆な変化は賛否両論でした。全体を通して、ドラムやギターのミックスが軽いのも原因なのでしょうか。ハードロックバンドとして接するとネガティブな評価になってしまいがちですが、これも今となっては良質なパンクロック/ガレージロックアルバムの1枚。極端なことを言ってしまえば、音だけなら当時のOASISTHE LIBERTINESあたりと並べて語っても面白いんじゃないでしょうか(ホント極論ですが)。あと、日本盤限定ジャケット(下。海外オリジナルジャケはサブスクなど参照)が非常にカッコよく、このへんも往年のHANOI ROCKSを彷彿とさせて好印象です。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『NO REGRETS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

HARDCORE SUPERSTAR『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001)

2001年10月22日にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの3rdアルバム。日本盤は同年9月29日に先行発売。

日本およびワールドワイドデビュー作となった前作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)から約1年半という短期間で届けられた新作は、セルフプロデュースだった過去2作から離れ、新たにプロデューサーを立てて制作された意欲作。方向性としては前作での時代錯誤なスリージーハードロックをベースに、よりグラマラスでバブルガムポップ的テイストを強めたことが伝わる内容です。

オープニングトラック「That's My Life」やリードシングル「Shame」を筆頭に、キャッチーさ/わかりやすさは前作以上。楽曲もより練り込まれた印象が伝わり、前作が自主制作で発表した1stアルバム『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998年)収録曲のリメイク中心だったことを考えると、改めてソングライターとしての真価が問われる1枚と言えるでしょう。

実際、リスナーの期待値以上の内容に仕上がっていると思いますが、ここ日本においてファンが彼らに求めたのは前作での「Hello/Goodbye」や「Rock 'N' Roll Star」のような疾走感の強いパンキッシュなハードロックと、「Someone Special」に代表される北欧バンドらしい哀愁味の強いメロウ&メランコリックなナンバー。この新作は前者の要素は排除されつつあり、後者の要素は「Summer Season's Gone」や「Significant Other」などに引き継がれている。しかし、後者もハードロックというよりはポップス色が濃くなっていることで、聴き手側が若干の違和感を覚えたのも確か。軽快で能天気(とは言い過ぎか)なメジャーキー楽曲中心の全体像が、思った以上に「コレジャナイ」感を与えてしまったという意味では、ちょっと早すぎた変化/進化だったのかな。

ただし、その後のバンドの成長を考えると、この一歩は非常に大きかったのもまた事実。リリース当時は僕自身も「あれっ?」と思ったものの、今では『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』以上に好きな1枚かもしれません。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

HARDCORE SUPERSTAR『ABRAKADABRA』(2022)

2022年3月25日にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの12thアルバム。日本盤は同年3月23日先行発売。

ストレートなアリーナロック路線へと回帰した前作『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018年)から3年半ぶりの新作。スパンとしては前々作『HCSS』(2015年)以降と同じで、アルバムに向けたリリース戦略(アルバム発売の半年前から随時デジタルシングルを先行発表していく形)も『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』とまったく同じ。2021年8月の「Catch Me If You Can」を筆頭に、同年中に「Dreams In Red」「Weep When You Die」、翌2022年に「Forever And A Day」「Fighter」「Abrakadabra」と6曲ものシングルカットが実現しています。

アルバムには全10曲を収録。つまり、半数以上をアルバム発売前にシングルとして切ってしまっているわけですが、要するに1曲単位でも十分に戦えるクオリティの楽曲が揃っているという自信の表れなのでしょう。事実、発表されたアルバムは前作の延長線上にあると同時に、バンドが2000年代半ばに起死回生を果たした5thアルバム『HARDCORE SUPERSTAR』(2005年)の続編的な立ち位置の作品に仕上がっているのですから(アートワークも『HARDCORE SUPERSTAR』からの連続性が感じられますしね)。

オープニングを飾るタイトルトラック「Abrakadabra」からして、『HARDCORE SUPERSTAR』からのリードシングル「Wild Boys」を彷彿とさせるものがあり、掴みは完璧。以降は北欧バンドらしく適度な湿り気を保ったメロディと、そこと相反するようなカラッとしたスタジアムロックやグラマラスなスリージーハードロックサウンドを武器にした良曲がズラリとならび、シングルカットされていない「Influencer」や「Give Me A Smile」「One For All」なども他のリード曲に負けず劣らずの魅力を発揮している。そんな中、モダンな味付けがされた「Weep When You Die」のようなミディアムナンバーは一際キラリと輝くものがあり、個人的には前半のハイライトだと思っています。

アルバム後半は疾走感の強い「Catch Me If You Can」やヘヴィなミディアムチューン「Dreams In Red」など耳馴染みのある楽曲が並ぶ中、スラッシュメタルにも匹敵するスピードナンバー「Throw A Brick」でクライマックスを迎え、アコースティック色の強いエモーショナルなバラード「Fighter」で締めくくり。40分にも満たないコンパクトで潔い作風は非常に現代的でもあり、新たな代表作になるのではという予感めいたものも伝わります。

日本盤はここに、前作からの「You Can't Kill My Rock 'N Roll」のライブトラックを追加。こちらは2021年11月の『Sweden Rock Festival』からの無観客ライブ音源で、おまけとしても十分すぎる1曲かな。アルバムとしての完成度はこのボートラなしのほうが勝るけど、これはこれでアリかもと思わせてくれる。要は曲がよければすべてよしなわけですね。

前作リリース後に実施された久しぶりの来日公演(2018年11月開催)はスケジュールが微妙に合わず断念したのですが、こんなことなら無理してでも行けばよかった……「You Can't Kill My Rock 'N Roll」のライブトラックを聴いてしまうと、余計にそう感じてしまうんです。この力作を携えた再来日公演、何がなんでも実現させてもらいたいところです。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『ABRAKADABRA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月 3日 (火)

StringerBessant『YARD』(2010)

2010年7月12日にリリースされたStringerBessantの1stアルバム。日本盤未発売。

StringerBessantはREEF解散後にメンバーのゲイリー・ストリンガー(Vo)とジャック・ベッサント(B)がスタートさせたプロジェクト。もともとはこの2人にギター&ドラムを加えた4人でTHEM IS MEというバンドを始めたのですが、StringerBessantはその延長で生まれたアコースティックユニットで、いくつかのデモを制作しているうちにXtra Mile Recordingsと契約し、アルバムを発表することになったのでした。

レコーディングは基本的にゲイリーとジャックがアコギを弾きながら歌い、そこに曲によってストリングスやリズム隊などが加わる形。オープニング「Hey Girl」からしばらくはアコギのみをバックに、低いキーで淡々と歌うゲイリーの歌に驚かされることでしょう。あのハイテンションで暑苦しい歌声が皆無ですからね。

もともとこうした質感はREEF時代からチラホラ見せてきていましたし、3rdアルバム『RIDES』(1999年)にはそのカラーがかなり濃く表れていました。なので、その流れで触れれば特に違和感はないかと思います。にしても、ここまでそういったトーンの楽曲が続くと、バンドの面影を求めて本作に触れたリスナーにはちょっとキツいかもしれませんが(そういう方にはTHEM IS ME唯一のアルバムがオススメです。国内サブスクでは見当たりませんが……)。

「Give Me The Key」ではリズム隊やエレキギター(歪みなし)が加わり、ようやくハイトーンボーカルも楽しむことができますが、その次の「Shutting Down」では再びダウナー&スローな曲調と囁くようなボーカルに戻ってしまう。曲によってはジャックとのツインボーカルだったりするので、あくまで「REEFのボーカルがソロで落ち着いたフォークロックをやってる」くらいのテンションで接することが一番かなと。

先の「Give Me The Key」や「Wild Day」「Lord Please Come」あたりは『RIDES』路線の一環として楽しめる良曲だけど、全部が全部水準以上とは言い難いかな。全12曲/42分をリラックスして楽しめるかどうかは、聴き手の向き合い方次第かもしれません。悪くはないけど、たまに息抜きとして聴くくらいがちょうどいい1枚ではないでしょうか。

なお、このプロジェクトはのちにREEFのドミニク・グリーンスミス(Dr)と、ソロアーティストとしても活躍するエイミー・ニュートン(G, Vo)が加わりTHE SB BANDへと進化。2013年には同名義によるアルバム『THE SB BAND』も発表しています。

 


▼StringerBessant『YARD』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

REEF『SHOOT ME YOUR ACE』(2022)

2022年4月29日にリリースされたREEFの6thアルバム。日本盤は同年4月27日先行発売。

再結成後初のオリジナルアルバムにあたる前作『REVELATION』(2018年)から約4年ぶりの新作。この期間にライブアルバム+映像作品『IN MOTION: LIVE FROM HAMMERSMITH』(2019年)や、ゲイリー・ストリンガー(Vo)がアンディ・テイラー(ex. DURAN DURANTHE POWER STATION)久々の新曲「Love Or Liberation」に参加したりなどのトピックがありましたが、バンドとしてはドミニク・グリーンスミス(Dr)が脱退・引退を表明し、ルーク・ブレン(Dr)が新たに加入するなど大きな転換期を迎えています。

久しぶりの新作でプロデューサーを務めたのは、先のゲイリーとのコラボがきっかけでREEFのサポートギタリストも担当しているアンディ・テイラーその人。アンディはプロデュースのみならず、曲作りやギタリストとしてレコーディングにも加わっており、本作では“第5のメンバー”として手腕を発揮しています(タイトルトラック「Shoot Me Your Ace」のMVでは、そのアンディがプレイする姿も確認できます)。

過去のスタイリッシュなテイストから大きく異なるアートワークのダサさに一歩退いてしまいましたが(苦笑)、実際に鳴らされている音/楽曲もこのアートワークに比例して(良い意味で)ダサいハードロックが展開されています。オープニングのタイトルトラックを聴いた瞬間、きっと誰もが「あれ、REEFってこんなバンドだっけ?」と疑問に思うことでしょう。これ、完全にアンディの色が濃く出ちゃってますよね。あちゃあ。

でも、それ以降は良くも悪くも従来のREEF節全開。古めかしい土着的ハードロックとソウルフル&メロウなミディアム/スローナンバーがバランスよく並べられたアルバムは、シンプルなギターリフでぐいぐい引っ張りながらゲイリーが暑苦しい歌声を響かせていくスタイル含め、前作以上に90年代の彼らに回帰したもの。若干レイドバック気味で大人しくまとめられた前作に物足りなさを覚えた方なら、この脳天直下型のウザさ(笑)に「そうそう、これこれ!」と膝を叩くことでしょう。

ギターに関してはジェシー・ウッド(G/ご存じロニー・ウッドの息子)とアンディ、どちらが主導権を握っていたのか正直疑問すら覚えますが(絶対にアンディが必要以上に首突っ込んでる気がするし)、アルバムを聴く限りではそこまで悪い方向に進んでいないと思いますし、「I See Your Face」みたいにツインリードが楽しめるのもこの編成ならではなので、ポジティブに受け取ることにしておきます。

唯一、ネガティブ要素に触れておくとすれば……ミックス含めたエンジニアリングにもうちょっと頑張ってほしかったかな(特にリズムトラック)。これが前作や名作『GLOW』(1997年)あたりの質感でまとめ上げられていたら、意外と2022年のUKロック裏名盤になったんじゃないかという気がしてなりません(別に裏じゃなくてもいいんだけど)。そういった残念さも含めて、実にアンディ・テイラーらしいなと思いました。

 


▼REEF『SHOOT ME YOUR ACE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月 2日 (月)

THUNDER『DOPAMINE』(2022)

2022年4月29日にリリースされたTHUNDERの13thアルバム。

前々作『RIP IT UP』(2017年)から引き続き全英3位という高記録を残した前作『ALL THE RIGHT NOISES』(2021年)から、わずか1年1ヶ月という過去最短スパンで届けられた新作は、バンドにとって初の2枚組アルバム。全18曲/71分という長尺かつボリューミーな内容ですが、なにげに前作のデラックス盤もCD2枚組で、ライブテイクを除くスタジオ音源だけで15曲もあったので、実は2作続けて盛りだくさんな内容なんですよね。ただ、公式上は今作が初の2枚組。CDだと1枚でも収まる内容ですが、そこは気にしない。

実は前作も2020年1月には完成していたものの、コロナ禍の影響でリリースが1年後になってしまったんですよね。で、2021年春にこの『ALL THE RIGHT NOISES』をリリースしたものの、依然コロナが猛威をふるい続け、バンドは再びレコーディングに突入。何度かのセッションを経て20曲前後の楽曲が完成したこと、そして2022年5月から延期になっていたツアーを再開させることが決まり、急遽次のアルバムのリリース日程を設定。そこに向けて正式なレコーディングを重ねた結果、最終的に16曲が完成して2枚組として届けられることになったわけです。

内容に関しては、特に目新しいことに挑戦するでもなく、いつもどおりのTHUNDER節全開。ただ、前作がクラシックロック/ルーツロックに忠実な楽曲が複数含まれていた(=元ネタがわかりやすい曲が多かった)のに対し、今作収録曲はルーツをにじませつつも元ネタがわからない程度にブラッシュアップされた楽曲ばかり。前作での経験が見事な形で昇華され、かつ従来のTHUNDERらしさにも磨きがかかった、文句なしの“良質なブリティッシュハードロックアルバム”に仕上がっています。と同時に、年齢的なこともあってか、溌剌としたロックチューン以外にも芳醇さに満ちたディープな楽曲も見受けられ、自然な形で“深化”していることも伺えます。

リードトラックとして先行配信された「The Western Sky」や「Dancing In The Sunshine」のような心地よいロックンロールあり、前作で試みたグラマラスな路線の延長線上にある「Black」、ルーク・モーリー(G, Vo)とダニー・ボウズ(Vo)の異なる声質のボーカルが見事に活かされた「Last Ordes」、デビュー30周年を経てもなお変わらない魅力に満ちた「All The Way」や「Across The Nation」、メロディラインは実にTHUNDERらしいのにアレンジがジャジーなスウィング感に満ちた「Big Pink Supermoon」、フィドルをフィーチャーしたトラッド色の強い「Just A Grifter」、ゴスペルタッチのドラマチックなピアノバラード「Is Anybody Out There?」、クライマックスにふさわしいミドルヘヴィの「No Smoke Without Fire」など、バラエティ豊かさは前作以上。無理に新しいことに挑戦しなくても、これまでの持ち札に磨きをかけ続け、どんどんソリッドにしていけばそれで充分だということが伝わる、実に王道のロックアルバムではないでしょうか。

僕自身の現在のモード的にはど真ん中な音ではないものの、久しぶりに戻ってくると心地よく響く。常にリピートするというよりは、たまに聴くとホッとする実家のような存在。それがこのアルバムかな。とにかくよく出来た良作です。

 


▼THUNDER『DOPAMINE』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年5月 1日 (日)

RAMMSTEIN『ZEIT』(2022)

2022年4月29日にリリースされたRAMMSTEINの8thアルバム。

前作にあたる無題アルバム(2019年)から3年ぶりの新作。前作が約10年ぶりだったことを考えると、この短期間でニューアルバムが届けられたことは奇跡に思えてくるから不思議です。その前作が比較的聴きやすい楽曲で固められ、バンドとしては新境地を伝える内容だったことを考えると、本作はその延長線上にある、さらに“極めた”1枚といえるでしょう。

リードシングル「Zick Zack」あたりはまさにその前作の流れを汲むテイストで、衝撃的(笑)なMVとともにかなりのインパクトを与えてくれました。ほかにもオープニングトラック「Armee der Tristen」や「OK」あたりも、シンプル路線にある好例といえるでしょう。かと思えば、「Dicke Titten」のように陽気なファンファーレをフィーチャーした楽曲も用意。この曲タイトルが「大きいおっぱい」という意味なのも実に彼ららしくて最高です。

もちろん、最初に配信されたシングル「Zeit」や続く「Schwarz」、「Meine Tränen」のようにムーディさに磨きがかかった楽曲群もしっかり収録されています。前作では後半に多く配置された楽曲と同ラインで、90年代から2000年代の彼ららしい独特の世界観を構築しながらも、以前と比べるとシンプルさが際立つ作風は前作譲り。このタイミングにオートチューンを用いた異色作「Lügen」も良い味を出していますし、さらに「Angst」のような従来の王道曲もあり、新たな側面を広げつつもRAMMSTEINというバンドに対する広義のパブリックイメージもしっかり保たれています。

前作同様、過去の彼らならではの猟奇性や変態性はさらに薄まりつつあり、その結果が前作の大成功(本国ドイツ1位はもちろんのこと、全英3位&全米9位と英米で初のTOP10入り)につながったことは間違いない事実。濃厚さという点でも、今作は無題アルバム以上に薄まりつつあり、もはや過去にこだわるよりも変化を重ねることに喜びを得ているようにも映る。だからこそ、この短期間での新作完成に至ったのだと考えると、僕は彼らの創作意欲と前進しようとする意志をポジティブに受け取りたいです。

……とカッコいいこと書いてみたんですが、やっぱり「Zick Zack」や「Dicke Titten」みたいなおバカソングは外せないなと思うと同時に、実は「OK」が「Ohne Kondom」の略で、「Without A Condom(=コンドームなしで)」の意味だと知ると、本当は何も変わっていない/成長していないんじゃないかと思えてくるから不思議(笑)。いいぞもっとやれ!

 


▼RAMMSTEIN『ZEIT』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« 2022年4月 | トップページ | 2022年6月 »