BLOC PARTY『ALPHA GAMES』(2022)
2022年4月29日にリリースされたBLOC PARTYの6thアルバム。日本盤未発売。
前作『HYMNS』(2016年)から6年3ヶ月という、過去最長スパンを経て届けられた新作。と同時に、ケリー・オケレケ(Vo, G)&ラッセル・リサック(G)のオリジナルメンバーにジャスティン・ハリス(B)&ルイーズ・バートル(Dr)という新メンバーを迎えて制作した2作目のアルバムでもあります。
バンドはこの6年の間に、1stアルバム『SILENT ALARM』(2005年)全曲披露を含むツアーを2018〜19年にかけて実施。少なくともこの期間に得た経験と手応えは、この新作に大きく反映されているのではないかと、アルバムで表現されているポストパンク路線に触れて実感しました。
ダンサブルな要素を軸にしつつも、近作ではギターロック的要素がどんどん薄くなっていたBLOC PARTY。しかし、このアルバムではデビューアルバムほどとは言わないまでも、初期の躍動感を随所ににじませたポストパンク/ギターロックが展開されています。BPMこそだいぶ落ち着いているものの、アルバム冒頭の「Day Drinker」や「Traps」、中盤以降の「In Situ」などは初期の彼らとイメージが重なり、この方向性をずっと待っていたというリスナーも少なくなかったのではないでしょうか。
しかも、ただ単にダンサブルなポストロックに特化するだけではなく、ラッセルの緻密なギタープレイ/フレーズがこれでもかというほどに詰め込まれており、かつ過去5作での経験が良い形で昇華された大人びた空気(気品のようなもの)もしっかり伝わる。そこがケリーの落ち着きを見せたボーカルワークと相まって、より強靭になった表現を楽しむことができる……これこそが、本作最大の魅力のように感じます。
あと、紅一点のルイーズのボーカルワークが良い味を出しており、時にユニゾンで、時にコーラスで存在感を示し、ケリーの落ち着き払った歌声に華を添えている。これは初期の彼らにはできなかった表現方法であり、新生BLOC PARTYの武器がひとつ増えたと実感させられます。終盤のハイライトである「If We Get Caught」はまさにその代表例であり、新たなキラーチューンになることは間違いないでしょう。
「Callum Is A Snake」のような人力ドラムンベース曲もあれば、「Rough Justice」みたいにミニマムなダンスチューンも存在する。その一方で「If We Get Caught」同様に親しみやすいポップチューン「Of Things Yet To Come」もあれば、「The Peace Offering」といったダークでムーディーなスローナンバーもある。ダンサブル/ポストパンクという主軸をキープしながらも、楽曲の幅を広げることで自身の表現力の高さを提示した今作は、真の意味で第二のデビューアルバムと言えるのではないでしょうか。ここから彼らのさらなる快進撃が始まることに期待しています。
▼BLOC PARTY『ALPHA GAMES』
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