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2022年6月21日 (火)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: FALLING INTO INFINITY DEMOS, 1996-1997』(2022)

2022年5月13日にリリースされたDREAM THEATERのデモ音源集。日本盤は同年5月11日先行発売。

2021年6月からスタートした、バンドと所属レーベルInsideOutMusic Recordsとの共同企画によるオフィシャル・ブートレッグシリーズ『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』の第10弾。節目となる本作は、通算4作目のスタジオアルバム『FALLING INTO INFINITY』(1997年)制作過程で生み出された貴重なデモ音源を、2枚のCDにまとめたもの。もともとは2007年にバンドのプライベートレーベル・YtseJam Recordsから限定販売されていたものに、新たにリマスタリングが施され、アートワークも一新した形でのリリースとなります。

1996〜97年にかけて実施された『FALLING INTO INFINITY』にまつわるセッションは、複数メンバーが両親の不幸に見舞われたり、あるいは新たな生命(実子)の誕生など私生活の環境に大きな変化が訪れたタイミングでした。また、レーベル担当者の交代など、新たな関係性を築く必要なども生じ、バンドにとって公私ともにターニングポイントであったことは間違いありません。

そんな時期に、レーベルからは「もっと売れる曲、ラジオで流れる曲を作れ」という指示が下されます。正式リリースされたアルバムは前作『AWAKE』(1994年)のヘヴィ路線を引き継ぎながらも、コンパクトなバラードやメロディアスなミディアムナンバーが多数用意されるなど、バンドの方向性としては若干の迷いが感じられる内容に仕上げられていました。このデモ音源集には正規リリースされた11曲のうち「Hell's Kitchen」を除く10曲のデモ音源に加え、アルバム未収録となった6曲を加えた16曲が収められており、バンドが迷いながらも『FALLING INTO INFINITY』を完成へと近づけていく過程を感じることができます。

既存曲に関しても、歌詞が異なったりアレンジやソロパートなどがブラッシュアップされる前の状態だったりと、いろいろと新鮮味の強いものが多い。例えば、正規版では5分半程度にまとめられた「Burning My Soul」が、デモでは約9分におよぶ大作(というかまとまる前の状態)だったり、「You Not Me」が「You Or Me」というタイトルで完成版よりも1分半ほど尺が長かったりと、いろいろ違いを見つけられることでしょう。

また、未発表テイク6曲の多くはのちにさまざまな形で発表されたものも多く、「Raise The Knife」「Where Are You Now?」「The Way It Used To Be」「Cover My Eyes」「Speak To Me」の5曲は1999年にファンクラブ会員限定で販売されたデモ音源集『CLEANING OUT THE CLOSET』に収録。また、「Speak To Me」は「Take Away My Pain」のデモとともに『FALLING INTO INFINITY』日本盤の初回限定特典8cm CDにボーナストラックとして収録されたほか、「The Way It Used To Be」はシングル「Hollow Years」にも収録されています。さらに「Raise The Knife」は2006年4月1日のニューヨーク公演でも披露されており、この音源はのちにライブアルバム『SCORE - 20TH ANNIVERSARY WORLD TOUR』(2006年)にも収められています。もっと言えば、20分以上におよぶ「Metropolis Pt.2」(インスト)はその後拡大アレンジされ、続く5thアルバム『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)として正式発売。過渡期ともいえるようなタイミングのデモが、その後のバンドの活路へとつながっていくことを考えると、ここでの苦労は決して無駄ではなかったのです。

アルバムから漏れたいくつかの楽曲を聴くと、『AWAKE』での路線を踏襲しながらもキャッチーさが強まっていることに気付かされ、制作当初から「ラジオ・フレンドリーな曲を」というテーマが存在していたことが窺えます。と同時に、アルバムの中で正式リリースされる「New Millennium」や「Peruvian Skies」「Burning My Soul」のような楽曲ではより洗練されたヘヴィメタルを追求し、「Trial Of Tears」や「Lines In The Sand」ではプログメタルバンドとしての矜持をしっかり伝えようとしていたことも理解できる。さらには、のちのコンセプトアルバムにつながる20分強の「Metropolis Pt.2」まで存在していたわけですから、レーベルからのリクエストに応えながらもバンドの軸は忘れていなかったことも理解でき、外部の声に惑わされながらもバンドは真っ直ぐ進もうとしていたのではないか……個人的にはそう捉えました。

本作はもちろん、『FALLING INTO INFINITY』という完成されたアルバムありきの内容であり、まずは『FALLING INTO INFINITY』本編をひととおり楽しんでから触れていただきたい内容。変化/進化の片鱗に触れるという点でも、同作を味わい尽くしてから手に取ってみてください。

 


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