カテゴリー

無料ブログはココログ

« 2022年6月 | トップページ | 2022年8月 »

2022年7月

2022年7月31日 (日)

2022年6月のアクセスランキング

2022年上半期総括はこちらから

ここでは2022年6月1日から6月30日までの各エントリーへのアクセスから、TOP30エントリーを紹介します。内訳は、トップページやアーティスト別カテゴリーへのアクセスなどを省いた上位30記事。まだ読んでいない記事などありましたら、この機会に読んでいただけたらと。

ちなみに記事タイトルの後ろにある「(※XXXX年XX月XX日公開/↑●位)」の表記は、「更新日/2022年5月のアクセスランキング順位」を表しています。

 

1位:R.I.P. Alec John Such(※2022年6月6日公開/NEW!)

2位:MICHAEL MONROE『I LIVE TOO FAST TO DIE YOUNG!』(2022)(※2022年6月11日公開/NEW!)

3位:THE BLACK CROWES『1972』(2022)(※2022年6月13日公開/NEW!)

4位:THE WiLDHEARTS『PHUQ (DELUXE)』(2022)(※2022年2月14日公開/↑29位)

5位:EXTREME『EXTREME II: PORNOGRAFFITTI』Deluxe Edition(1990 / 2015)(※2015年2月5日公開/Re)

6位:DEF LEPPARD『DIAMOND STAR HALOS』(2022)(※2022年5月28日公開/↑7位)

7位:MR.CHILDREN TOUR '99 "DISCOVERY" @国立代々木競技場第一体育館(1999年5月5日)(※1999年5月9日公開/↑16位)

8位:NOVA TWINS『SUPERNOVA』(2022)(※2022年6月19日公開/NEW!)

9位:PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』(1994)(※2017年5月10日公開/Re)

10位:THE ROLLING STONES『LIVE AT THE EL MOCAMBO』(2022)(※2022年6月14日公開/NEW!)

 

11位:KISS『OFF THE SOUNDBOARD: LIVE IN DONINGTON 1996』(2022)(※2022年6月17日公開/NEW!)

12位:THE ROLLING STONES『LICKED LIVE IN NYC』(2022)(※2022年6月15日公開/NEW!)

13位:IBARAKI『RASHOMON』(2022)(※2022年5月11日公開/↓1位)

14位:THE MARS VOLTA『AMPUTECHTURE』(2006)(※2022年6月26日公開/NEW!)

15位:GREY DAZE『THE PHOENIX』(2022)(※2022年6月20日公開/NEW!)

16位:WHILE SHE SLEEPS『SLEEPS SOCIETY (SPECIAL EDITION)』(2022)(※2022年6月6日公開/NEW!)

17位:SILVERSTEIN『MISERY MADE ME』(2022)(※2022年6月8日公開/NEW!)

18位:COMEBACK KID『HEAVY STEPS』(2022)(※2022年6月9日公開/NEW!)

19位:VAI『SEX & RELIGION』(1993)(※2020年4月22日公開/Re)

20位:NAILBOMB『POINT BLANK』(1994)(※2018年5月12日公開/↓12位)

 

21位:WEEZER『SZNZ: SUMMER』(2022)(※2022年6月25日公開/NEW!)

22位:BODY COUNT『BODY COUNT』(1992)(※2022年6月23日公開/NEW!)

23位:SHERYL CROW『SHERYL: MUSIC FROM THE FEATURE DOCUMENTARY』(2022)(※2022年6月16日公開/NEW!)

24位:GREYHAVEN『THIS BRIGHT AND BEAUTIFUL WORLD』(2022)(※2022年6月4日公開/NEW!)

25位:DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: ...AND BEYOND - LIVE IN JAPAN, 2017』(2022)(※2022年6月18日公開/NEW!)

26位:BLEED FROM WITHIN『SHRINE』(2022)(※2022年6月5日公開/NEW!)

27位:DEMOLITION 23.『DEMOLITION 23.』(1994)(※2017年4月11日公開/NEW!)

28位:DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: FALLING INTO INFINITY DEMOS, 1996-1997』(2022)(※2022年6月21日公開/NEW!)

29位:BODY COUNT『BLOODLUST』(2017)(※2022年6月24日公開/NEW!)

30位:COHEED AND CAMBRIA『VAXIS II: A WINDOW OF THE WAKING MIND』(2022)(※2022年6月28日公開/NEW!)

2022年7月のお仕事

2022年7月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※7月27日更新)

 

[紙] 7月27日発売「Ani-PASS Plus #07」にて、愛美インタビュー、22/7新メンバー座談会を担当しました。(Amazon

[紙] 7月26日発売「CONTINUE」Vol.78にて、ラブライブ!サンシャイン!! Aqours東京ドーム公演DAY2(6月26日)、THE PRIMALS幕張メッセ公演DAY1(6月4日)の各ライブレポートを担当しました。(Amazon

[WEB] 7月25日、Little Glee Monsterオフィシャルレポートを担当。「THE FIRST TIMES」リトグリ、感動の第一章ラストライブ! 芹奈&manakaの歌声と映像を交えた“5人”を感じさせる演出もなど、さまざまな音楽サイトにて掲載中です。

[WEB] 7月24日、「リアルサウンド」にてライブレポート日向坂46、『W-KEYAKI FES.』で示した櫻坂46愛と欅坂46への敬意 想像を超えるエモーショナルな公演にが公開されました。

[WEB] 7月24日、「W-KEYAKI FES. 2022」オフィシャルレポートを担当。「Pop'n'Roll」日向坂46[ライブレポート]櫻坂46の想いも背負って作り上げた多幸感あふれるステージなど、さまざまな音楽サイトにて掲載中です。

[WEB] 7月20日、「リアルサウンド」にてインタビューMachico、冨田明宏と振り返る10年の音楽活動 諦めずに努力し続けたからこそ掴んだものが公開されました。

[WEB] 7月20日、「リアルサウンド」にてライブレポートcoldrain、ライブハウスから届ける充実作『Nonnegative』の魅力 横浜アリーナ公演に向かい育まれていく新曲群が公開されました。

[WEB] 7月20日、「音楽ナタリー」にてインタビュー Suspended 4th「TRAVEL THE GALAXY」インタビュー|とことん聴かせる痛快&テクニカルな1stフルアルバム完成が公開されました。

[WEB] 7月15日、「リアルサウンド」にてインタビュー上白石萌音、アルバム『name』から漂うリラックスした空気感 好きなものをたくさん取り入れた幸せな1枚が公開されました。

[WEB] 7月13日、「リアルサウンド」にてインタビュー上白石萌音が明かす、葛藤を繰り返しながら向き合う“歌うこと” 「いつでも音楽を楽しめる自分でありたい」が公開されました。

[WEB] 7月10日、「Bezzy」にてインタビューNGT48が語る、歴史をつなぎ未来を結んでいくための7年目の1stアルバムが公開されました。

[WEB] 7月8日、「音楽ナタリー」にてインタビューasmi「earth meal」インタビュー|TikTokで「ヨワネハキ」が総再生数26億回超え、Z世代の共感を呼ぶシンガーソングライター・asmiの素顔に迫るが公開されました。

[紙] 7月5日発売「My Girl vol.35」にて、山根綺インタビューを担当しました。(Amazon

[紙] 7月4日発売「日経エンタテインメント!」2022年8月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」および日向坂46上村ひなのの連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 7月2日、「リアルサウンド」にてライブレポートRAISE A SUILEN、熱気溢れるパフォーマンスが生んだ感動 史上最大ボリュームで臨んだ単独ライブ『OVERKILL』レポが公開されました。

=====

2022年6月に当サイトで紹介したアルバムから各1〜2曲程度ピックアップしたプレイリストをApple Music、Spotifyにて制作・公開しました(Apple Music復活させました)。題して『TMQ-WEB Radio 2206号』。レビューを読む際のBGMにするもよし、何も考えずにダダ流しするもよし。おヒマなときに聴いていただけると嬉しいです。

BRYAN ADAMS『CLASSIC PT.II』(2022)

2022年7月29日にデジタルリリースされたブライアン・アダムスのリレコーディング・アルバム。

本作は今年4月に発売された『CLASSIC』(2022年)に続く、80〜90年代の代表曲/隠れた名曲をオリジナルに沿ってセルフカバーしつつ現代的に仕上げた再録ベストアルバム第2弾。本作の制作理由については前回のレビューで事実/憶測含めて触れていますが、オリジナルのマスターテープが返却されない以上、だったら再録して自由に扱うしかないわなという10年くらい前のDEF LEPPARDと同じ状況なわけですね。

前作は代表曲に意外なレア曲(デビューアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)収録曲「Hidin' From Love」や、38 SPECIALに提供した「Teacher, Teacher」セルフカバー)を含めた興味深い内容でしたが、今作は90年代の楽曲が中心。前作は8曲/約35分という尺でしたが、今作は7曲/30分というミニアルバムにも近いボリューム。けど、サブスク全盛の今となってはこれくらいがちょうどいいのかもしれません。

80年代の楽曲は3rdアルバム『CUTS LIKE A KNIFE』(1983年)からタイトルトラック「Cuts Like A Knife」のみ、ほかは6thアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)から大ヒット曲「Can't Stop This Thing We Started」、7thアルバム『18 'TIL I DIE』(1996年)から「Have You Ever Really Loved A Woman?」、ライブアルバム『MTV Unplugged』(1997年)のみ収録のオリジナル曲「Back To You」「When You Love Someone」のスタジオテイク、8thアルバム『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)からは原曲どおり再びメラニー・Cをゲストに迎えた「When You're Gone」、そして9thアルバム『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002年)から「Here I Am」という内訳。目玉はアンプラグドライブ初出でスタジオ音源化にまで至らなかった「Back To You」と「When You Love Someone」が、ここで初めてスタジオ録音されたということでしょうか(「When You Love Someone」はかつて、YouTubeの再録企画で披露されていましたが)。

どの曲もオリジナルテイクを忠実に再現しているものの、要所要所に数々のライブを経て培われたアレンジ/フレーズも付け加えられており、そこが新鮮に響いたりもします。また、「Can't Stop This Thing We Started」のように原曲がフェードアウトで終わっていたところを、このリレコーディング版では完奏するカットアウト方式が採られています。すべての曲がカットアウトで終わるので、そこも含めて今っぽいなと思ったり思わなかったり。

普通のベスト盤だったら1983年と2002年の録音が並列されるわけですから、音質やテクノロジーの差が気になってしまいますが、今作でのリメイクは当時の空気感(バンドサウンドの質感など)を絶妙に再現しつつも、時代の異なる楽曲が並んでも違和感を覚えないような工夫が施されており、7曲入りのいち作品としてスムーズに楽しむことができます。例えば、いかにもマット・ラング的なサウンドメイクを再現した「Can't Stop This Thing We Started」の次にシンプルなバンドサウンドの「Cuts Like A Knite」、アンプラグドライブでの生感を重視した録音の「Back To You」が並んでも、不思議とバラバラな印象は受けない。そこは録音やミックスよりも、マスタリングによる効果が大きいのかな。

原曲原理主義という一部の方には再録って不評かもしれませんが、ライブでは過去の楽曲を今の技術/表現で演奏しているわけですから、本作は感覚的にはそれと一緒なんですよね。ということで、最新オリジナルアルバム『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)のモードで演奏された過去の名曲と捉えれば、今作はスッと受け入れられるのではないでしょうか。主な大ヒット曲をこの2枚で押さえられている気もしますが、きっと今後も続く企画だと思うので、ここからは意外なセレクト(個人的には『INTO THE FIRE』(1987年)あたりの隠れた名曲カバー)にも期待したいところです。

 


▼BRYAN ADAMS『CLASSIC PT.II』
(amazon:MP3

 

2022年7月30日 (土)

STICK TO YOUR GUNS『SPECTRE』(2022)

2022年7月29日にリリースされたSTICK TO YOUR GUNSの7thアルバム。日本盤未発売。

Pure Noise Records移籍第1弾アルバムとなった前作『TRUE VIEW』(2017年)から約5年ぶりのフルアルバム。新作音源としてはA-HA「Take On Me」のカバーなどを収録した、昨年2月のアコースティックEP『THE MEANING REMAINS』(2021年)から1年半ぶりとなります。

昨年9月に本作からのリードトラック「More Of Us Than Them」がデジタルリリースされましたが、そこから考えるとアルバムが届けられるまでに随分時間がかかったなと。かなり待たされた感が強かったですが、その分内容は非常に充実度の高い、従来のファンならば納得の1枚ではないでしょうか。

40秒程度のイントロダクション「(My Heart Is A...)」からリードトラック「Weapon」へと続くドラマチックな構成、その「Weapon」の破壊力が強い疾走メタルコアサウンドと、一緒にシンガロングしたくなるアンセム感の強さたるや。この時点で掴みはOKといったところでしょうか。

その後も2〜3分台と、コンパクトでパワフルなナンバーが目白押し。ヘヴィなビートが気持ち良い「Who Dares Wins」や「Hush」、冒頭のキャッチーなメロディ含め王道感の強いハードコアチューン「A World To Win」、アコギを効果的に用いた“ヘヴィだけどユルめ”な「Open Up My Head」と、前半6曲はあっという間に過ぎ去っていきます。

後半はヘヴィ&グルーヴィーな「Liberate」を筆頭に、同じテンポ感で空気を引き継ぎつつ徐々に熱量を高めていく「The Shine」、メタリックさとパンキッシュさのバランスが絶妙な「Instruments Of The End」、深めのリバーブをかけることでシリアスさの強まった「Father」、前曲からのエモーショナルな流れを汲む先行シングル「More Of Us Than Them」(この流れでここに置くのか!と最初にアルバムを聴いたときは驚きました)、そして穏やかさを漂わせたアコースティックナンバー「No Way To Live」で締めくくり。

全12曲/34分とかなりコンパクトな内容なのですが、その中身は非常に濃厚で聴き応えは非常に強烈です。短くて濃厚だからこそ、何度も繰り返し聴くことで、その情報をしっかり理解していく必要もありますが、その一方で何も考えずに音と向き合うこともできる。聴き手によって受け取り方が大きく変わりそうな、そんな1枚でもあるのかなと思いました。

こんな季節だからこそ、今は無心で暴れられる音が欲しい。けど、ちょっと落ち着いたときにそのメッセージや詰め込まれた情報を紐解いてほしい。本作は、そんな「一粒で二度美味しい」アルバムかもしれません。

 


▼STICK TO YOUR GUNS『SPECTRE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月29日 (金)

STENFORS『FAMILY ALBUM』(2022)

2022年6月10日にリリースされたSTENFORSの1stアルバム。日本盤は同年6月8日先行発売。

STENFORSとは元HANOI ROCKS、元CHEAP AND NASTY、元DEMOLITION 23.のギタリストであるナスティ・スーサイドことヤン・ステンフォースのソロプロジェクトで、ソロ作品はヤン・ステンフォース名義のアルバム『VINEGAR BLOOD』(1996年)以来実に26年ぶり。そのバンド名/アルバムタイトルからもわかるように本作はヤンの親族が中心となりレコーディングに参加した、文字通りの“ファミリーアルバム”です。

このアルバムに関する今年2月のインタビューで、ヤンは現在前立腺がんの闘病中であることをカミングアウト。化学療法を受けていたとのことで、その影響は本作のレコーディングにも遅延を及ぼしたとのこと。しかし、病状は比較的安定しており、無事このアルバムリリースまで漕ぎ着けることができたようです。

内容は彼の音楽ルーツを追求した、ブルースロックをベースにしたもので、ストレートなロックアルバムというよりはその原点的な、非常に渋みの強い作風。オープニングを飾る「XStopia」からして肩の力が抜けており、非常にレイドバックしたユルめのロックが展開されています。その一方で「Friends」や「Folsom Prison Blues」ではタイトなリズムセクションをバックに、ルーズでソウルフルなロックが鳴らされており、なんとなくですがキース・リチャーズのソロアルバムにも近い印象を受けます。

また、本作には「Sweet Sue」や「Then It's Gone」みたいなカントリーテイストのアコースティックナンバーも含まれていますし、「Boiling My Eggs」のようなストレートなブルースナンバーも用意されている。「Chemo Brain」のジャイブ感も非常に心地よいですし、アルバムを締めくくるギターインスト「Syrenen」も渋くてたまらない。ロックンロールのルーツを追求しつつも、非常にヤン……いや、ここはもうナスティと呼ばせてもらいます(笑)。パンクロック以前のルーツに立ち返った、いかにもナスティらしい地味な1枚に仕上がっています。どんなに渋いことをやっても、芯から放たれる華やかさと毒々しさのせいで比較的派手に仕上がるアンディ・マッコイと比較すると、非常に対照的な仕上がりです。

そして、ナスティのボーカル。これがまた渋いんですよ。すべての曲で彼が歌っているわけではないんですが(彼が歌っているのは「XStopia」「Folsom Prison Blues」「Chemo Brain」「Then It's Gone」の4曲)、「Then It's Gone」あたりで聴ける彼のボーカルはこの手のシンプルなルーツミュージックにピッタリハマっている。CHEAP AND NASTYでも聴くことができたヘタウマボイスが、30年モノのウィスキーのごとく深みを増しているわけです。若い頃のヘロヘロ気味の歌声も好きでしたが、今の好みとしては本作での歌声がドンズバ。いろんな困難を乗り越えてここにたどり着いたんだなと思うと泣けてきます……。

今年はマイケル・モンロー新作があり、来月にはアンディ・マッコイのカバーアルバム『JUKEBOX JUNKIE』も控えている(リリース元がCleopatra Recordsというのが若干不安ですが……)。昨年はサミ・ヤッファ初のソロアルバムを発表しましたし、こうやって元HANOI ROCKS勢がマイペースに音楽活動を続けてくれるのは80年代からのファンにとってはうれしい限りです。予定どおりならアンディは10月に来日するし、おそらくマイケル&サミも近い将来やってきてくれるでしょうから……ナスティも無事寛解してまた日本に来てくれたら、それだけでハッピーですよ。

 


▼STENFORS『FAMILY ALBUM』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月28日 (木)

BLACK SWAN『GENERATION MIND』(2022)

2022年4月8日にリリースされたBLACK SWANの2ndアルバム。

ロビン・マッコーリー(Vo/MICHAEL SCHENKER FEST、ex. McAULEY SCHENKER GROUP、ex. GRAND PRIXなど)、レブ・ビーチ(G/WINGERWHITESNAKEなど)、ジェフ・ピルソン(B/FOREIGNER、ex. DOKKENなど)、マット・スター(Dr/MR. BIGエース・フレーリーなど)というクラシックメタル界のスーパープレイヤーたちが一堂に会し、2020年に1stアルバム『SHAKE THE WORLD』を発表したBLACK SWAN。デビュー作はロビン、レブ、ジェフの3人を軸にしたもので、レコーディング直前にマットが参加するという形でしたが、今作は初めて4人が膝を突き合わせて制作したものになります。

前作リリース後の早い段階から続く2ndアルバムの制作準備に取り掛かっていたそうで、今作も再びジェフ・ピルソンのプロデュースのもと彼のプライベートスタジオでじっくりレコーディングに取り掛かったそうです。

楽曲やサウンド自体は前作の延長線上にあるもので、その完成度はより高いものへと昇華。この4人が過去に参加したバンドのサウンド……80年代のスタジアムロック/ハードロックを、2020年代のクオリティでまとめ上げたのがこのアルバムではないでしょうか。

ロビンもまもなく70歳とは思えないほどのパワフルさを見せており、「これぞハードロックシンガー!」という代表例のような歌唱を楽しむことができます。マット&ジェフのリズム隊もヘヴィ&タイトで、非常に躍動感の強いものとなっており、その上で縦横無尽に弾き倒すレブのギタープレイも圧巻の一言。4人に求める要素がバランス良く、ひとつの漏れなく凝縮された奇跡の1枚だと思います。

豪快なアメリカンハードロックを軸に、要所要所で適度な湿り気を感じさせる楽曲群も2作目とあってか、より焦点が絞れたような印象も。個人的には「Eagles Fly」みたいなシャッフルビートの楽曲、WINGERを彷彿とさせるイントロのギタープレイとカラッとしていながらも色彩豊かなリフワークが耳に残る「See You Cry」あたりは、次作への可能性を感じさせる良曲ではと思っています。

とにかくこのバンド、レブのギターリフが素晴らしい。もちろん、よくありがちなフレーズの組み合わせではあるんだけど、それでも耳に残るってことはセンスが抜群なんじゃないかな。ちょっとした工夫でここまでのものが作れるのは、これぞ職人技といったところでしょうか。さらに、メロディラインもなかなかのもので、このへんはロビン、あるいはジェフの手腕によるものが大きいのかな。

すべて80点台の高クオリティなので、あとは90点超えのキラーチューンの誕生を待つだけ。これが意外と大変なんですよね……でも、このバンドなら次のアルバムあたりで「BLACK SWANの代表曲」と誰もが納得する1曲を作ってくれるはず。その期待も込めて、(もし点数を付けるとしたら)本作には総合で90点を与えたいな。

 


▼BLACK SWAN『GENERATION MIND』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月27日 (水)

McAULEY SCHENKER GROUP『SAVE YOURSELF』(1989)

1989年10月10日にリリースされたMcAULEY SCHENKER GROUPの2ndアルバム。日本盤は同年11月1日発売。

元GRAND PRIX、FAR CORPORATIONのロビン・マッコーリー(Vo)というそこそこ知名度のあるシンガーを迎え、MICHAEL SCHENKER GROUPというワンマングループ名からマイケル&ロビンの名前を冠したMcAULEY SCHENKER GROUPとして80年代後半に再始動したマイケル・シェンカー。1作目『PERFECT TIMING』(1987年)は前年から大きくなり始めたHR/HMブームの波に片足だけ乗り(笑)、全米95位という小ヒットを記録。リードシングル「Gimme Your Love」も初めて全米TOP40入り(Billboard Mainstream Rockチャート)を果たし、それなりの成功を収めたと言えるでしょう。

そこから2年のインターバルを経て届けられた2作目では、ロビン&マイケルとロッキー・ニュートン(B)、ボド・ショプフ(Dr)に加え、前作にゲスト参加していたスティーヴ・マン(G, Key)が正式加入する形で制作。プロデューサーには新たにフランク・フィリペッティ(FOREIGNERSURVIVOR、ジョン・ウェイトなど)を迎え、アメリカナイズされながらも前作以上に“尖った”1枚に仕上がっています。

このアルバムはまず、オープニングを飾る6分強のタイトルトラック「Save Yourself」がすべてでしょう。若干ドンシャリ感が強く、産業ハードロック的なテイストでまとめられた前作から一変し、エネルギッシュなギターソロとタフで疾走感の強いバンドサウンド、ロビンのパワフルなボーカルとすべてのピースが合致した、「マイケル・シェンカー復活!」を宣言するような名曲なのです。冒頭のみならず、中盤もかなり長尺でフィーチャーされたギターソロも聴きどころで、前作で若干肩を落とした感のあったオールド層をも引き込む1曲ではないでyそうか。

しかし、そういったテイストの楽曲はこれのみで(笑)、あとは『PERFECT TIMING』を良き形でバージョンアップさせたアメリカンHRが中心。「Bad Boys」や「Get Down To Bizness」あたりで聴ける豪快なロックンロールは、ある意味では初期MSGとの共通点も見つけられるけど、それよりもWHITESNAKEの全米制覇に影響を受けているんじゃないかという気も。悪くないですけどね。

もちろん、「Anytime」のようなエモいパワーバラードも用意されていますし、マイケル&スティーヴのツインリードがカッコいい「Destiny」といったマイナーキーの疾走ナンバー、「Take Me Back」みたいな哀愁味の強いミディアムナンバーも含まれているので、ご心配なく。なんだかんだで、どの曲も80年代後半という時代性が反映された高クオリティなものばかりで、今聴いても意外とアリなものが多いのではないでしょうか。

旧MSGのイメージで本作に触れると、すべては受け入れられないかもしれませんが、それでも要所要所に“らしさ”も見つけられるので、偏見を捨てて一度触れてみることをオススメします。

なお、本作は前作を超える全米92位を記録。「Anytime」に関してはBillboard Mainstream Rockチャートで最高5位、Hot 100(総合シングルチャート)で69位という過去最高記録を残しています。数字的なことを除外しても、本作はMcAULEY SCHENKER GROUP名義での最高傑作であり、マイケル・シェンカーのキャリアにおいても記憶に残る1枚だと断言しておきます。

 


▼McAULEY SCHENKER GROUP『SAVE YOURSELF』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月26日 (火)

MICHAEL SCHENKER GROUP『UNIVERSAL』(2022)

2022年5月27日にリリースされた、MICHAEL SCHENKER GROUP名義での12thアルバム。

MSG名義では約13年ぶりだった前作『IMMORTAL』(2021年)から1年4ヶ月という、とても2020年代とは思えないほど短いスパンで届けられた新作は、MICHAEL SCHENKER FESTからの流れを考えると「おいおいレコード会社さんよ、老体に鞭打ちすぎじゃねえか?」とマイケル・シェンカーが再び心を壊さないかと心配になるほど。だって、MICHAEL SCHENKER FESTの1stアルバム『RESURRECTION』(2018年)から4作連続で1年半に満たないスパンで新作出し続けてますからね。

さて。MSG名義に戻ったからといって、やっていること自体はMICHAEL SCHENKER FESTと一緒。曲ごとにボーカルやリズム隊を変えながら、オムニバス感の強いテイストでアルバムは進行します。前作から引き続き、ロニー・ロメロ(Vo)が大半の曲で歌唱しているものの、例えばM-4「A King Has Gone」ではマイケル・キスク(HELLOWEEN)、M-5「The Universe」ではロニー&初代シンガーのゲイリー・バーデンのデュエット、M-7「Wrecking Ball」には前作にもゲスト参加したラルフ・シーパース(PRIMAL FEAR、ex. GAMMA RAY)、日本盤ボーナストラックのM-15「London Calling (Alternative Vocal Mix)」にはオリジナルバージョンのロニーに代わりマイケル・フォス(マイケル・シェンカーの別バンド・TEMPLE OF ROCKのシンガー)も名を連ねるなど、相変わらず節操なし(マイケル本人なのかレーベル側なのか)。

バリー・スパークス(B, Key)、ボブ・デイズリー(B/ex. RAINBOW、ex. GARY MOORE、ex. OZZY OSBOURNEなど)、バレンド・クルボワ(B/BLIND GUARDIAN)、サイモン・フィリップス(Dr)、ボド・ショプフ(Dr)、ボビー・ロンディネリ(Dr/ex. RAINBOW、ex. BLACK SABBATHなど)、ブライアン・ティッシー(Dr/THE DEAD DAISIES、ex. WHITESNAKE、ex. FOREIGNERなど)、スティーヴ・マン(Key)、トニー・カーレイ(Key/ex. RAINBOWなど)と、演奏陣もクラシックロックファンには豪華な布陣。特に今回は元RAINBOW組が多い印象を受けますが、実際曲/音を聴くとそれも納得といいますか。マイケル・シェンカーらしさが薄まっており、逆にRAINBOW的なカラーが強まっているんですよね。

思えば、ロニー・ロメロも現在RAINBOWのフロントマンですし……かつ、キスクやラルフが歌う曲までもがRAINBOWっぽいという。え、それでいいの? しかも2022年にこれやるの?っていうさ。

いやね、シェンカー自身がリッチー・ブラックモアへ敬意を表してこのアルバムを作ったというのならわかるよ。だとしても、タイミング的になぜ今?というのがまず引っかかるし。もはや、レコード会社の思惑が否が応でも見え隠れするわけです。

まあ、だとしてもこれが世界的に売れるのか?という話ですけどね(日本という特殊なマーケットのみをターゲットにしているのなら、なおさらバカにするな!と思いますが)。

楽曲に関しては、数回聴いて「もういいかな」と思えるものばかり。可もなく不可もなくという仕上がりで、突出した名曲は皆無。すべてが70点台の「よくあるRAINBOWフォロワー」的楽曲ばかりで、そこに申し訳程度にシェンカー節のギターソロが乗る。けど、そのソロ(やリフ)も近作の中ではもっとも精彩さを欠き、まじで印象に残らないものばかり。これだったらMcAULEY SCHENKER GROUPの諸作品を聴いているほうがマシだと思えるほどです。

本サイトでは、基本的に気に入ったものだけを紹介する方針なんですが、好きなアーティストがあまりにもな作品を作ったとあっては、やはり声として記録を残しておかなければと思い執筆しました。これで満足する一定層がここ日本に存在していることは重々承知していますが、今やサブスクで簡単にフル試聴できてしまう時代。昔みたいなハッタリはかませません。

こんな時代だからこそ「短いスパンで新作を」と思いがちですが、本来は逆では? こんな時代だからこそ、時間を気にせずに良作作りに励んでもらいたいところです。シェンカーよ、まだ行けるでしょ?

 


▼MICHAEL SCHENKER GROUP『UNIVERSAL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月25日 (月)

DEEP PURPLE『TURNING TO CRIME』(2021)

2021年11月26日にリリースされたDEEP PURPLE通算22作目のスタジオアルバム。日本盤は同年12月24日発売。

前作『WHOOSH!』(2020年)から1年3ヶ月という、高齢の彼らにしては非常に短い期間で届けられた新作は、すべてカバー曲で構成された内容。過去3作から引き続き、ボブ・エズリン(アリス・クーパーKISSPINK FLOYDなど)がプロデュースを担当した、非常に肩の力が抜けた“お遊び感”満載の1枚に仕上がっています。

カバーの内訳は下記のとおり。

01. 7 And 7 Is [LOVE]
02. Rockin' Pneumonia And The Boogie Woogie Flu [ヒューイ・"ピアノ"・スミス]
03. Oh Well [FLEETWOOD MAC]
04. Jenny Take A Ride! [MICH RYDER & THE DETROIT WHEELS]
05. Watching The River Flow [ボブ・ディラン]
06. Let The Good Times Roll [LOUIS JORDAN & THE TYPANY FIVE]
07. Dixie Chicken [LITTLE FEAT]
08. Shapes Of Things [YARDBIRDS / JEFF BECK GROUP]
09. The Battle Of New Orleans [ジョニー・ホートン]
10. Lucifer [THE BOB SEGER SYSTEM]
11. White Room [CREAM]
12. Caught In The Act (Going Down / Green Onions / Hot 'Lanta / Dazed And Cofused / Gimme Some Lovin')
 [フレディ・キング / BOOKER T & THE MG'S / THE ALLMAN BROTHERS BAND / LED ZEPPELIN / SPENCER DAVIS GROUP]

バンドとしては前作とそのツアーで活動に幕を下ろす予定だったのもの、コロナ禍に突入しツアーは延期。だったらと制作されたのが、メンバーお気に入りの曲を集めたカバー集だったわけです。初期にも「Hush」など数々のカバー曲をアルバムに収録してきた彼らですが、まるまるカバーでアルバムを作るのは今回が初めて。しかも、単なるルーツ回帰にとどまらず、同世代のバンドの楽曲も含む内容に。これらを成熟し切ったアダルトなサウンドで味付けすることで、“今のパープル”らしい1枚に仕上げています(もちろん、「White Room」みたいな完コピに近いものも含まれていますが)。

良くも悪くも“ユルさ”が際立つ昨今のパープルですが、それは今作も同様。過去数作ではそれが時に悪い方向に作用していたものの、今作ではすべてが良い方向に進んでいるのではという印象も。それこそ、出来の良い原曲をパープルらしく味付けすることで統一感も生まれるし、それがイアン・ギラン(Vo)の今のスタイルにもフィットしている。さらにイアン・ペイス(Dr)のスウィングするドラミングやドン・エイリー(Key)の流麗なピアノプレイ、そして先頃脱退を発表したスティーヴ・モーズ(G)の変幻自在なギタースタイルなど、各プレイヤーの技術や表現にも注目したくなるという、カバーだからこそ成し得た奇跡の内容ではないでしょうか。

バンドのエピローグとしては、これくらい肩の力が抜けていてもいいのかもしれませんね(どうやらイアン・ギランはもう1枚アルバムを作るつもりでいるようですが)。とはいえ、まさか先にスティーヴがバンドを離れることになるとは思いませんでしたが(理由が理由なので仕方ありませんけどね)。すべてのアルバムを真剣に聴いてきたバンドというわけではないので、今後しばらく彼らのアルバムにじっくり耳を傾けてみようかと思っています。

 


▼DEEP PURPLE『TURNING TO CRIME』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+Blu-ray / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月24日 (日)

THE KOOKS『10 TRACKS TO ECHO IN THE DARK』(2022)

2022年7月22日にリリースされたTHE KOOKSの6thアルバム。

前作『LET'S GO SUNSHINE』(2018年)から約4年ぶりのスタジオアルバム。この間に2008年から参加していたピーター・デントン(B)がバンドを脱退し、以降ルーク・プリチャード(Vo, G)、ヒュー・ハリス(G)、アレクシス・ヌニェス(Dr)の3人にサポートメンバーを加えた形で活動を続けています。

今作は今年に入ってからデジタルリリースされた2枚のEP(『CONNECTION - ECHO IN THE DARK, PT.I』『BEAUTIFUL WORLD - ECHO IN THE DARK, PT.II』)に続く、三部作の完結編的立ち位置のアルバム。前述のEPに収められた計6曲(「Connection」「Jesse James」「Modern Days」と「Closer」「Beautiful World」「25」)に新曲4曲(「Cold Heart」「Sailing On A Dream」「Oasis」「Without A Doubt」)を加えて再構築した、文字通り10トラックで構成された1枚に仕上がっています。

僕自身はこのバンドに対して、初期2枚(2006年の1stアルバム『INSIDE IN / INSIDE OUT』と、2008年の2ndアルバム『KONK』)の印象しかなかったのですが、10数年ぶりに彼らの新作に触れてみるとまずその質感の変化に驚きを隠せませんでした。こんなにデジタル/エレクトロビートを積極的に取り入れたバンドだったけ?

どうやらこのアルバム・プロジェクトから取り入れた新機軸とのことで、軸にあるメロディやギタープレイ/フレージングは彼ららしい本来の個性が発揮されているよう。テイストこそモダンですが、やっていること自体はマッドチェスター以降のUKロックらしい“ダンサブルなギターロック”を下地にしたもので、そこに10年選手らしい落ち着いた空気感を纏わせて安定感を示すという頼もしさも見せています。

レコーディングをベルリンとウィーン、ロンドンで実施したことあってか、どことなくデヴィッド・ボウイの“ベルリン三部作”を彷彿とさせるものもありますよね。そもそもバンド名自体がボウイの「Kooks」からヒントを得たものですし。ボウイ“ベルリン三部作”からの影響、マッドチェスター以降のアシッドテイストとダンサブルな要素、そしてブリットポップ以降のUKロックなど先人たちの偉業を独自に解釈し、コロナ禍を通過する形で自分たちならではの形へとまとめ上げた。初期の作品にあったロックバンドならではの初期衝動性は皆無ながらも、大人になった彼らの余裕と意欲/向上心が絶妙なバランスで散りばめられた、“2022年ならではのUKロック”らしい1枚に仕上がったのではないでしょうか。

彼ら然りARCTIC MONKEYS然り、2000年代半ばに登場したUKギターロックが10数年の活動を経て、どんどん独自の道を開拓していく様は、どこか歴史の繰り返しを見せられているようにも感じますが、そういった点も含めて非常にUKらしいなと実感できる、そんな1枚です。

 


▼THE KOOKS『10 TRACKS TO ECHO IN THE DARK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月23日 (土)

JACK WHITE『ENTERING HEAVEN ALIVE』(2022)

2022年7月22日にリリースされたジャック・ホワイトの5thアルバム。

今年4月に発売された『FEAR OF THE DAWN』(2022年)から約3ヶ月のスパンで届けられた、今年2作目のスタジオアルバム。ここ数年、長きにわたり作曲とレコーディングに時間を費やしてきたジャックですが、影響かテーマやムードの異なる2枚のアルバムを完成させるに至りました。

『FEAR OF THE DAWN』が実験性を孕んだファンキーなガレージロックに徹底した内容だったのに対し、今作は冒頭の「A Tip From You To Me」から内省的な雰囲気を漂わせています。それは続くアコースティックナンバー「All Along The Way」然り、ピアノとストリングスが織りなすピースフルな「Help Me Along」然り。ジャックらしい豪快さこそ感じられませんが、ジャックらしい抒情性が大々的にフィーチャーされた聴き応えのある1枚に仕上がっています。

中盤には『FEAR OF THE DAWN』の流れを汲みながらも本作のテイストでまとめ上げたファンキーな「I've Got You Surrounded (With My Love)」、ブルージー&ソウルフルな「Queen Of The Bees」も存在しますが、後半に差し掛かると再びサイケデリックなピアノバラード「A Tree On Fire From Within」、アーシーでソウルフルなミディアムチューン「If I Die Tomorrow」、ダークで落ち着いた雰囲気の「A Madman From Manhattan」、バイオリンをフィーチャーした軽快な「Taking Me Back (Gently)」など、じっくり腰を据えて向き合うべき楽曲が並びます。

なるほど、2枚のアルバムは地続きのようで両極端な方向を目指した、タイプの異なるアルバムなわけですね。ともにTHE WHITE STRIPESから続く、自身のルーツに忠実なガレージロックを奏でていたことに対し(これが大きな軸)、『FEAR OF THE DAWN』ではそこから“ロックが到達できる未来”を見据えた革新性が追求され、今回の『ENTERING HEAVEN ALIVE』ではエヴァーグリーンなスタンダードを可能な限り突き詰めた。この振り切り方、2枚の対極加減には本当に驚かされたと同時に、圧倒させれました。

まもなく『FUJI ROCK FESTIVAL '22』の中日ヘッドライナーとして来日しますが、ライブで戦う上での派手な武器となるのは、間違いなく『FEAR OF THE DAWN』収録曲。大音量で聴けば聴くほど味が広がる、即効性の強いナンバーばかりと言える。しかし、今作収録曲はフェスなどで披露されることはあっても、本当に意味で力を発揮するのはベッドルームやリビングにてひとりで向き合う瞬間。大きめの音で鳴らすのもいいですが、できるならばヘッドフォン、イヤフォンで没入するのがベストでしょう。

改めて、2枚組としてまとめるのではなく個別の2作品として分けたことは、商業的に正しかったのか否かはわかりませんが、こうして時間を置いて個々に触れたことで両作の芯の部分にじっくり触れることができた。そういう意味では、3ヶ月を空けての連続リリースは正解だったのではないでしょうか。個人的には『FEAR OF THE DAWN』でフェスに向けて気持ちを昂らせ、フェス後に『ENTERING HEAVEN ALIVE』でチルアウトする。この流れで楽しんでもらいたいと思っています。

 


▼JACK WHITE『ENTERING HEAVEN ALIVE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月22日 (金)

MANIC STREET PREACHERS『SLEEP NEXT TO PLASTIC』(2022)

2022年7月5日にデジタルリリースされたMANIC STREET PREACHERSのカバーアルバム。現時点でフィジカルおよび日本盤未発売。

マニックスはデビュー以来、自身のシングル/EPや外部コンピレーションアルバムに数々のカバー曲を提供しており、2003年には2枚組コンピレーションアルバム『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』のディスク2では初音源化音源も含むカバー曲たちをひとまとめにしておりました。それ以降もリアーナ「Umbrella」やTHE THE「This Is The Day」、ジョン・レノン「Working Class Hero」など定期的に印象的なカバー曲を発表しています。

前作から約20年ぶりとなるカバー集第2弾(カバーアルバム単品としては初)は、新録音源やBBCセッションズなどの未発表音源を中心に構成されたもの。曲目と原曲者名は下記のとおり。

01. Borderline [マドンナ]
02. Jean's Not Happening [THE PALE FOUNTAINS]
03. (Feels Like) Heaven [FICTION FACTORY]
04. Pennyroyal Tea [NIRVANA]
05. Let's Stay Together [アル・グリーン]
06. Vision Blurred [THE HORRORS]
07. Wake Up Alone [エイミー・ワインハウス]
08. Bright Eyes [アート・ガーファンクル]
09. In Between Days [THE CURE]
10. Sweet Child O' Mine [GUNS N' ROSES]
11. All Or Nothing [THE SMALL FACES]
12. Bring On The Dancing Horses [ECHO & THE BUNNYMEN]
13. Under My Wheels [アリス・クーパー]
14. The Instrumental [THE JUNE BRIDES]
15. Summer Wind [フランク・シナトラ]
16. The Endless Plain of Fortune [ジョン・ケイル]
17. Primitive Painters [FELT]

アート・ガーファンクル「Bright Eyes」とアリス・クーパー「Under My Wheels」は過去のシングルでも取り上げられていますが、相変わらずのとっ散らかりぶり、さすがマニックスといったところでしょうか。NIRVANAとGUNS N' ROESSを同時にカバーするセンスといい、そこにマドンナやフランク・シナトラ、さらにはFICTION FACTORYやTHE JUNE BRIDESなど比較的マニアックなバンドまで含めるとなると、これをやれるのは現状マニックスくらいじゃないかと思います。

「Borderline」のように新たにスタジオ録音されたテイクもありますが、その多くはこれまで録音されていたものの未発表だったもの(中には一時期紛失していたマスターテープに含まれていた音源)、BBCセッションズにて録音されたものなど、レコーディング状況はまちまち。なので、アルバムとしての統一性は求めるべくもないですが、『LIPSTICK TRACES』ディスク2を素直に楽しめた方なら文句なしで気に入るはずです。

最新オリジナルアルバム『THE ULTRA VIVID LAMENT』(2021年)の徹底された作り込みと比べると、非常に粗が目立つ録音/作風ですが、逆にそこが初期の彼らっぽくて良いと感じる方も少なくないはず。特に冒頭の「Borderline」には初期のマニックスらしさを見出すこともできるでしょうから。

ちなみに、ガンズ「Sweet Child O' Mine」は“Live at Cardiff Castle”と記載されているので、おそらく2019年6月29日の同会場でのライブから(最後にちょっとだけ残されている「La tristesse durera (Scream To A Sigh)」へと続く流れ的にも、同日のライブで間違いないでしょう)。イントロのリフだけは初期から何度も披露されていますが、ここ最近のカーディフでのライブでは常にフルコーラス、しかもストレートなアレンジでカバー(というかコピー。笑)しており、サビで大合唱するオーディエンスがいい感じのアリーナロック感を引き出しています。やっぱり嫌いになれないよな、この純粋さ。

こういった作品は彼らのオリジナルアルバムを聴いたことがないビギナーには敷居を高く感じるかもしれませんが、逆に「自分が知っている曲」をいくつか取り上げていて、それがどういう味付けでカバーされているかに興味を見出せるなら、触れて見る価値は高いと思います。個人的には新作『THE ULTRA VIVID LAMENT』へとつながるヒントも多数見つけられる、同作の副読本的な重要アルバムだと考えています。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『SLEEP NEXT TO PLASTIC』
(amazon:MP3

 

 

 

なお、Spotifyでは同作に過去のカバー曲を加えた全37曲からなる同名プレイリストも公開中。マニックスのカバー曲に初めて触れる方は、こちらから入ってもいいかもしれませんね。

 

2022年7月21日 (木)

KREATOR『HATE ÜBER ALLES』(2022)

2022年6月10日にリリースされたKREATORの15thアルバム。

約4年7ヶ月のインターバルを経て届けられた前作『GODS OF VIOLENCE』(2017年)が、初のドイツ総合チャート1位を獲得するなどキャリア最高峰と言えるほどの1枚だったけに、それに続く新作が待ち望まれていましたが、20年以上にわたり活動をともにしてきたクリスチャン・ギースラー(B)が2019年に脱退。これに代わる形で元DRAGONFORCEのフレデリク・ルクレール(B)が加入するというビッグニュースでメタルファンを驚かせ、翌2020年に新曲「666 - World Divided」(今作未収録)を配信リリースするなどニューアルバムの到着が今か今かと待ち望まれていました。

過去最長の5年5ヶ月というスパンを開けて到着した15作目のスタジオアルバムは、結成40周年という節目にふさわしい集大成的な内容に仕上がっています。前作の延長線上にあるブルータル路線の楽曲もあれば、80年代的な正統派スラッシュメタルもある。“KREATORらしさ”にこだわる旧来のリスナーは前作に惹かれたファンには、問答無用の1枚ではないでしょうか。

だけど、本作で特筆すべきな点はそこではなく、メロディアスなツインリードやシンガロングパートの仕上がりが際立つ「Strongest Of The Strong」や「Conquer And Destroy」といったパワーメタル寄りの楽曲。同郷ドイツの大先輩でもあるACCEPTにも通ずる男臭さと哀愁味は、ルーツに立ち返ったかのようなテイストで、非常に新鮮に響きました。

これを90年代のゴシック路線の延長と、無理やりこじつけることもできますが、それよりもバンドが節目のタイミングに自身のルーツを顧みたと解釈することはできないでしょうか。「Crush The Tyrants」やドイツの女性ポップシンガー:ソフィア・ポルタネットをフィーチャーした「Midnight Sun」のようなミドルヘヴィチューン(特に後者)もゴシック路線の“その先”と言えなくもないけど、それ以上にクラシカルなピュアメタルに回帰したと言ったほうが正しいのかも。「Demonic Future」然り「Pride Comes Before The Fall」然り。

だからこそ、ラストに置かれた約7分におよぶ不穏なヘヴィチューン「Dying Planet」がより映えるわけですよ。正直、KREATORにドラマチックなんて表現を使う日が来るとは思ってもみなかったけど、本作は緩急に富んだ楽曲の並びと、その中に含まれたドラマチック成分の高さが聴き手の爽快感につながり、全11曲/約46分を最後までするする聴き進めることができるんですよ。非常にクラシカルでオーソドックスなメタルアルバムではあるけれど、自分たちに求められているものと自分たちが追求したいもののバランスがギリギリの均等で成り立つ、良質なアルバムではないでしょうか。

本作は2021年の『Bloodstock Outdoor Heavy Metal Festival』で中日ヘッドライナーを務めた際のライブ音源を収めたボーナスディスク付き仕様も用意。フレデリクを含む編成での貴重なライブ音源なので、コアなファンはこちらもチェックしてみてはいかがでしょう。

なお、前作で初の本国チャート1位を獲得したKREATORですが、今作は惜しくも2位止まり。とはいえ、それ以前を考えたら上出来すぎる数字ではないでしょうか。

 


▼KREATOR『HATE ÜBER ALLES』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月20日 (水)

ANTHRAX『XL』(2022)

2022年7月15日にリリースされたANTHRAXのライブアルバム&ライブ映像作品の同梱パッケージ。日本盤は同年8月12日発売予定。

この作品は2021年に結成40周年を迎えたANTHRAXが、7月16日に行ったアニバーサリー・ストリーミングライブイベント『XL』の模様を音源&映像で完全収録したもの。全22曲が2時間以上にわたり披露されており、ライブならではの生々しさと同時に無観客ライブということもあり、スタジオライブ的な質感で「2020年代のANTHRAXによるグレイテストヒッツ」を存分に味わうことができます。

なお、現時点でパッケージ版(輸入盤)が未着のため、ここでは音源に関して話を進めていきます。

2代目シンガーのジョーイ・ベラドナ(Vo)を据え、スコット・イアン(G, Vo)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)、そしてジョナサン・ドネイズ(G/SHADOWS FALL)という編成で行われたこのグレイテストヒッツ・ライブ。ボーナストラックを含む全25曲の内訳は下記のとおりとなります。

1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年):1曲
2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年):5曲
3rdアルバム『AMONG THE LIVING』(1987年):6曲
4thアルバム『STATE OF EUPHORIA』(1988年):3曲
5thアルバム『PERSISTENCE OF TIME』(1990年):2曲(「Time」イントロを含めれば3曲)
コンピレーションアルバム『ATTACK OF THE KILLER B'S』(1991年):2曲
6thアルバム『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年):0
7thアルバム『STOMP 442』(1995年):0
8thアルバム『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』(1998年):0
9thアルバム『WE'VE COME FOR YOU ALL』(2003年):0
10thアルバム『WORSHIP MUSIC』(2011年):3曲
11thアルバム『FOR ALL KINGS』(2016年):3曲

ああ、やっぱりジョン・ブッシュ(Vo)時代の4作は完全無視か(笑)。ジョーイ復帰直後は『SOUND OF WHITE NOISE』から「Only」あたりが申し訳程度に披露されていたけど、オリジナルアルバム2作を経た今となっては必要ないということですか、40年の歴史を振り返るというのに。

というわけで、このライブ作品はあくまで「ジョーイ・ベラドナ在籍時のグレイテストヒッツ」でしかありませんのでご注意を(ジョン在籍時を大肯定する筆者にとってこれはつらい)。『FISTFUL OF METAL』からレアな「Metal Thrashing Mad」とか、ジョーイ参加第1弾の『SPREADING THE DISEASE』から「Lone Justice」や「Medusa」「Aftershock」とレア曲も選ばれているものの、それでもジョーイ時代完全無視はないわ。

選曲的に『SPREADING THE DISEASE』から5曲、『AMONG THE LIVING』から最多の6曲というのは納得せざるを得ない。『AMONG THE LIVING』に関してはファンおよびバンド自身が最高傑作と思っていますし、同作完全ライブをするくらいですから。ただ、『STATE OF EUPHORIA』から「Now It's Dark」がセレクトされたのはちょっと意外かな。「Be All End All」はたまにやってたけど、MVが制作されたとはいえこれはレアなのかな。それ以外は普通っちゃあ普通かな(オープニングの「Time」のイントロから「Fight 'Em 'Til You Can't」へと流れる構成は驚いたけど)。

演奏自体は無観客で冷静に向き合っているからか、かなりスタジオ音源に近いアレンジ/プレイかな。なので、特に文句もなく楽しく聴くことができます(ジョーイ時代の楽曲がゼロなこと以外は)。あ、あと「Bring The Noise」にはPUBLIC ENEMYのチャック・Dがゲスト参加しています。

あ、それで思い出したわ。「Bring The Noise」はやるのになぜ「I'm The Man」はないの? ANTHRAXの40年を振り返る上でもっとも重要な1曲なのに。そういう“遊び”が少なくてストイックな部分が目立つ本作は、古くからのファンには少々物足りないかもしれません。これも映像付き(Blu-ray)で楽しんだら印象が変わるのかしら。

“BIG 4(=METALLICASLAYER、ANTHRAX、MEGADETH)”の中でもっともレーベルを転々としているためか、オールキャリア・グレイテストヒッツの見込みが薄いANTHRAXだけに、せめてライブ作品だけでは本気で40年を総括する選曲に期待したかったな。まあ、そうなると最低2日は必要になるから厳しいか。なんにせよ、僕自身はちょっとだけ消化不良な内容でした。

 


▼ANTHRAX『XL』
(amazon:国内盤2CD+Blu-ray / 国内盤2CD+DVD / 海外盤2CD+Blu-ray / MP3

 

2022年7月19日 (火)

DAMN YANKEES『DON'T TREAD』(1992)

1992年8月11日にリリースされたDAMN YANKEESの2ndアルバム。日本盤は同年9月25日発売。

DAMN YANKEESはジャック・ブレイズ(Vo, B/当時ex. NIGHT RANGER)、トミー・ショウ(Vo, G/ex. STYX)、テッド・ニュージェント(Vo, G)、マイケル・カーテロン(Dr/LYNYRD SKYNYRDなど)という70〜80年代に一世を風靡したバンドのメンバーで構成された“スーパーグループ”。デビューアルバム『DAMN YANKEES』(1990年)は「Coming Of Age」(全米60位)、「High Enough」(同3位)、「Come Again」(同50位)のヒットも手伝い、最高13位/ダブルプラチナム(200万枚)の大ヒットを記録しました。

前作から2年半ぶりに届けられた2作目は、基本的にデビューアルバムの延長線上にある作風。引き続きロン・ネヴィソン(HEARTSURVIVOREUROPEなど)がプロデュースを手がけた、非常に高品質なアメリカンハードロックアルバムに仕上がっています。ただ、前作が80年代の空気を孕んだ質感だったのに対し、今作は若干ヘヴィネスさが強調された90年代らしい方向性と言えなくもありません。

例えば、オープニングを飾るグルーヴチューン「Don't Tread」や続く「Fifteen Minutes Of Fame」のように、同系統のミドルチューンを冒頭に並べるあたりも、時代と言えなくもないのかなと。また、どちらの曲も5分前後と比較的長めで、演奏面に特化したアレンジが施されている(テッド・ニュージェントによるギターソロも大々的にフィーチャーされていますしね)。

また、前作でパワーバラード「High Enough」が大成功を収めたこともあり、全11曲中2曲(「Where You Goin' Now」「Silence Is Broken」)、もっと言えば「Someone To Believe」もバラード寄りなので3曲とカウントできなくもない(まあ「Someone To Believe」は「Come Again」タイプですけどね)。当時のレコード会社の意向なのか、なんだかNIGHT RANGERと同じ道を進みそうな気がして、当時はヒヤヒヤしたことを覚えています。

「Firefly」や「Uprising」のようなアップチューンも含まれているものの、やはり全体的には上記の「Don't Tread」を筆頭としたミドルチューンとバラード調楽曲の印象が強く、もうちょっとバランス感が良かったデビューアルバムと比べてしまうと若干のマンネリ感も否めない。個々のエゴが強まったぶん、バンドとしての調和が以前ほど取れなくなってきた結果が、このアンバランスさにつながったのかもしれません。

1曲1曲を取り出せば良い曲も多く、NIGHT RANGERを筆頭とするAORや産業ロック寄りの音が好みのリスナーならスッと入っていける作品ではないでしょうか。あと、前作以上にクリアでダイナミックなサウンド/音質は特筆しておきたいなと。このへんはミックスを手がけたクリス・ロード-アルジ(マドンナプリンスMY CHEMICAL ROMANCEMUSEなど)の手腕によるものが大きいのでしょう。良い意味で時代を感じさせない質感なので、今の耳にも合っている気がします。

残念ながら、このアルバムを最後にバンドは活動休止。その後何度かスポット的に復活していますが、継続的な活動は望めず、今のところ本作がラストアルバムとなっています。

 


▼DAMN YANKEES『DON'T TREAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年7月18日 (月)

WARRANT『DOG EAT DOG』(1992)

1992年8月25日にリリースされたWARRANTの3rdアルバム。

デビューアルバム『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICK』(1989年)から引き続き、前作『CHERRY PIE』(1990年)も全米7位/ダブルプラチナム(200万枚)という好成績を残し、「Cherry Pie」(全米10位)や「I Saw Red」(同10位)、「Uncle Tom's Cabin」(同78位)、「Blind Faith」(同88位)とヒットシングルを連発させたWARRANT。1992年に入ると映画『ファイティング・キッズ(原題:GLADIATOR)』の主題歌としてQUEENの名曲「We Will Rock You」(同83位)と、グランジ全盛の中も健闘を続けました。

『CHERRY PIE』から約2年ぶりに届けられた本作では、プロデューサーを過去2作を手がけたボー・ヒル(RATTWINGERKIXなど)からマイケル・ワグナー(SKID ROWDOKKENMETALLICAなど)に交代。音を聴けばその理由も納得のいく、非常にストイックなHR/HMアルバムに仕上がっています。

良くも悪くも「Cherry Pie」というパーティロックのイメージが強かったWARRANTだけに、本作を前にしたときは「え、WARRANTがダークでメタリックなアルバム?」と動揺したものです。グランジやグルーヴメタルが持て囃された時代だけに、彼らも流行りに乗ったか……そう思ったリスナーも少なくなかったはず。ですが、本作への布石はすでに前作『CHERRY PIE』で確認することもできました。それが「Uncle Tom's Cabin」の存在なのです。

「Uncle Tom's Cabin」は当時の彼らにしてはメタリックすぎて、特にオープニング曲「Cherry Pie」から空気が一変させる役割も強くて違和感を覚えた方もいらしたのではないでしょうか。彼らはすでにこの頃からパーティロックと正統派ハードロックの2軸を備えており、続く3作目では時代の空気も多少読みながら正統派ハードロック寄りへと全振りしたのではないか……今となってはそう感じています。だから、別に意味もなく時流に乗ったのではなく、自然なシフトだったんですよね。

オープニングを飾る「Machine Gun」のヘヴィ&タフさには、もはや過去2作のWARRANTの姿は見当たりません。続くミドルヘヴィの「The Hole In My Wall」や「April 2031」、そこからシームレスに続くマイナー調バラード「Andy Warhol Was Right」という流れは、今聴くと非常に練り込まれているなと感じるものの、1992年当時は若干早かったのかなという気も。特に「Andy Warhol Was Right」は前作での「Blind Faith」をよりハードにしたらこうなるのかな、という気がしないでもない。そは言い過ぎか(笑)。

全体を通して聴くと、同じマイケル・ワグナーが手がけたSKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)との共通点もゼロではないことに気づく。そうか、タフ路線の参考としてWARRANTは『SLAVE TO THE GRIND』を意識して、マイケルを起用したのか……そう気づいたのは、つい最近のこと(苦笑)。それまでは、ただひたすら「俺の思うWARRANTじゃない」という気持ちが強かったかな、完成度の高さのわりに。

ヘヴィバラード「The Bitter Pill」やストレートなハードロック「All My Bridges Are Burning」「Quicksand」、アーシーなピアノバラード「Let It Rain」、豪速球のスピードメタル「Inside Out」、肩の力が抜けた軽快なロックチューン「Sad Theresa」など、実は個性的で良曲揃いの本作。一度「Cherry Pie」のイメージを取っ払ってから接してみると、グランジ影響下のHR/HMとは一味違った魅力が見えてくるはずです。リリースから30年を経た今、ぜひ再評価してみてください。

なお、参考までに本作は全米25位/50万枚と過去2作に及ばない数字ながらも、それなりの成績を残しています。

 


▼WARRANT『DOG EAT DOG』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年7月17日 (日)

FIREHOUSE『HOLD YOUR FIRE』(1992)

1992年6月16日にリリースされたFIREHOUSEの2ndアルバム。日本盤は同年6月13日に先行発売。

「Don't Treat Me Bad」(全米19位)、「Love Of A Lifetime」(同5位)、「All She Wrote」(同58位)といったヒットシングルを複数生み出し、アルバム自体も最高21位/ダブルプラチナム(200万枚)を記録したデビューアルバム『FIREHOUSE』(1990年)から1年10ヶ月ぶりの新作。世の中が湾岸戦争を機に不景気に突入し、それ以前はメインストリームにいたHR/HMからグランジなどのオルタナティヴロックへと注目が移る中、新人ハードロックバンドとしては大健闘したのではないでしょうか。

そんなヒット作の恩恵を受け、まさに“二匹目のドジョウ”を狙い同じプロダクションで制作された2作目。プロデューサーも引き続きデヴィッド・プラッター(DREAM THEATERNIGHT RANGER、ARCADEなど)が担当し、このバンドらしい良質なUSハードロック感が追求されています。

例えば、「Don't Treat Me Bad」でのポップさは「Sleeping With You」(全米78位)に、「Love Of A Lifetime」での王道バラードは「When I Look Into Your Eyes」(同8位)、「All She Wrote」でのマイナー感が強い正統派ハードロック感は「Reach For The Sky」(同83位)へとアップデートされている。グランジ全盛期ということもあり、シングル的には前作ほどのヒットは叶いませんでしたが、それでも楽曲の良質さもあってこの時代のわりには好成績を残したのではないでしょうか。

アンセム感の強いアリーナロック「Rock You Tonight」、グルーヴィーなハードロック「You're Too Bad」や「Get In Touch」、パーティ感の強い「The Meaning Of Love」や「Mama Didn't Raise No Fool」、1992年という時代を考えると若干古臭さが否めない80's USハードロックな「Talk Of The Town」など、正統派で王道感の強いハードロックは、リリースがあと5年早かったらバカ売れしていたんだろうなと思わせるものばかり。ですが、これを1992年という“HR/HM暗黒時代”に発表したことに意味があったわけで、当時はNIRVANAPEARL JAMALICE IN CHAINSと並行して聴いていた記憶があります。グランジの「グ」の字も感じられないほどに清々しいサウンドは、気分転換にはちょうど良かったのかな。

そして、アルバムラストを飾るのが前作にはなかったタイプのマイナーバラード「Hold The Dream」。楽曲のタイプ的には「Reach For The Sky」や「Hold Your Fire」の流れを汲むものですが、その手の作風を泣きのバラードに置き換えることで、非常に新鮮な印象を受けたことをよく覚えています。この曲のおかげで、ちょっとだけダークでしっとり終えられたのは1992年という時代ならだったんでしょうかね。前作の延長線上にありながらも、ここで一捻りしてくれたおかげで単なる焼き直しで終わらずに済んだと思います。

DREAM THEATER『IMAGES AND WORDS』(1992年)同様、ここでもデヴィッド・プラッター特有のペタペタしたドラムサウンドが(よくも悪くも)クセの強さを発揮。若干好き嫌いが分かれてしまいそうな気もしますが、大きい音で聴くと意外としっくり来るものがあるので、スマホなどイヤホンで聴くよりもスピーカーを通じて爆音で聴いてみることをオススメします。

 


▼FIREHOUSE『HOLD YOUR FIRE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年7月16日 (土)

STRYPER『TO HELL WITH THE DEVIL』(1986)

1986年10月24日にリリースされたSTRYPERの2ndフルアルバム。日本盤は同年11月21日発売。

全米84位を記録&50万枚以上を売り上げ、彼らの人気を決定づけた前作『SOLDIERS UNDER COMMAND』(1985年)から1年5ヶ月で届けられたスタジオアルバム。名バラード「Honestly」が全米23位という好記録を樹立したこともあり、本作は最高32位まで上昇し、100万枚を超えるキャリア最大のヒット作となりました。

スピードチューン「Soldiers Under Command」から始まった前作から一変、今作は仰々しいイントロダクション「Abyss (To Hell With The Devil)」に続いてミドルヘヴィのタイトルトラック「To Hell With The Devil」で幕開け。続くキャッチーな「Calling On You」、哀愁味の強いキラーチューン「Free」とミディアムテンポの楽曲で序盤が固められています。さらにそこからバラード「Honestly」へと流れる構成含め、アルバム前半の聴きやすさでリスナーを一気に引き込むことに成功。そりゃ売れるわと納得させられます。

かと思えば、中盤にはオズ・フォックス(G)が書き下ろした前のめりなアップチューン「The Way」でヘヴィメタルバンドらしさを追求し、打ち込みベースを同期させたミドルヘヴィ「Sing-Along Song」、爽快感の強いハードロックナンバー「Holding On」で緩急を付ける。そこから再びヘヴィなスピードナンバー「Rockin' The World」で勢いを付けたかと思えば、讃美歌のようなスローバラード「All Of Me」で空気を一変させ、最後はストレートなメタルチューン「More Than A Man」で締めくくり。全11曲/41分があっという間に感じられるほど夢中になれる、非常に完成度の高い1枚です。そりゃ売れるわと納得させられます(二度目)。

いわゆるグラムメタル/ヘアメタルに分類されるバンドの中でも、比較的ヘヴィメタル度の高いサウンド/楽曲が多い彼らですが、本作では元来持ち合わせていたポップ感が一気に開花。それが「Calling On You」や「Honestly」のようなメジャーチューン、「Free」や「To Hell With The Devil」みたいなマイナーキーの楽曲に集約されているのではないでしょうか。それをマイケル・スウィート(Vo, G)の伸びやかなボーカルで表現することにより、嫌味なく楽しめることができるのは改めてすごい才能です。そりゃ売れるわと納得(三度目)。

加えて、彼らは敬虔なクリスチャンということで、歌詞などでキリスト教への信仰の強さが示されている。いわゆるクリスチャンメタルと呼ばれるジャンルの先駆者なわけですが、宗教観にそこまで意識的ではない日本人にとっては純粋に楽曲そのものが評価された……と、筆者は当時を振り返り、そう記憶しています。うん、単純に曲が良くて聴きやすかったんですよ。

今聴くとサウンド的に多少の古臭さも否めませんが、楽曲の良さは決して色褪せない。そんな80年代後半を代表する“マスト”な1枚です。

 


▼STRYPER『TO HELL WITH THE DEVIL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月15日 (金)

CLEANBREAK『COMING HOME』(2022)

2022年7月8日にリリースされたCLEANBREAKの1stアルバム。

CLEANBREAKはジェームズ・ダービン(Vo/DURBIN、ex. QUIET RIOT)、マイク・フリンツ(G/RIOT)、ペリー・リチャードソン(B/STRYPER、ex. FIREHOUSE)、ロバート・スウィート(Dr/STRYPER)という面々で結成されたスーパーバンドのひとつ。「RIOTやFIFTH ANGELのような伝統的アメリカン・ヘヴィメタルへのオマージュ」をテーマに、時代錯誤な80'sヘヴィメタルを現代に昇華させた(というよりも蘇らせた)ようなピュアメタルが、アルバム全編にわたり展開されています。

ジェームズ・ダービンは短期間QUIET RIOTに在籍したものの、もともとはオーディション番組『アメリカン・アイドル』でJUDAS PRIESTを歌うような生粋のメタル野郎。昨年リリースされたDURBINでのアルバム『THE BEAST AWAKENS』(2021年)でも骨の髄までピュアなメタルを追求していました。このCLEANBREAKはその延長線上にあるもので、個人の名前を打ち出すよりも“バンドのひとり”に徹してDURBINでの世界観を追求した、というのが正しいかもしれません。

楽曲自体は良くも悪くも「ああ、なるほどね(笑)」とニヤニヤしてしまう、王道感の強いUSヘヴィメタル。スピードよりもヘヴィさにこだわったミドルチューン中心で、ダービンのパワフルで伸びやかなボーカルを活かしつつ、熟練メンバーたちが安定感の強い演奏を聴かせています。個々が参加するバンド(RIOT、STRYPERなど)との共通点も見られますが、アレンジにはよい意味で“2000年代以降”の質感も散りばめられています。

ですが、そのへんは本当に味付け程度といったところで、やっぱり軸になる楽曲が往年のUSメタルを彷彿とさせるものなので、新しさ以上に懐かしさが伝わる内容かな。「We Are The Warriors」なんていかにもなタイトル(笑)の楽曲は、80年代前半〜半ばに耳にしたらきっと夢中になったであろう名曲。「The Pain Of Goodbye」も同系統の良曲ですね。

スピードチューン「Still Fighting」もそのクサさに思わず苦笑してしまいますが、モダンメタルなんてもってのほか!と思っている一部の層にはキラーチューンとして響くのではないでしょうか。ホント、35〜40年前の中学生時代にこれ聴いたら一発でハマッたと思います。ですが、今は2022年。こういったスタイルをこの時代に追求するこだわりも理解できますが、個人的にはどうしてもノスタルジックになってしまいます。そこだけは、どうしても譲れないかな。

どの曲も非常によく出来ていますし、驚きや刺激は皆無ですが安心して楽しめる1枚。腐した言い方になってしまいますが、「大人のヘヴィメタル」と呼んでしまいたくなる、ある一定層には安定の良作ではないでしょうか。僕も進んで毎日聴くような内容ではないものの、たまにふとしたときに聴いて「こういう時代も良かったな」と過去を懐かしんでみたいと思います。

 


▼CLEANBREAK『COMING HOME』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年7月14日 (木)

SHINEDOWN『PLANET ZERO』(2022)

2022年7月1日にリリースされたSHINEDOWNの7thアルバム。

全米5位/ゴールドディスク(50万枚以上)を記録した前作『ATTENTION ATTENTION』(2018年)から4年2ヶ月ぶりの新作。彼らにしてはずいぶんと間隔が空いた印象がありますが、それもこれもコロナ禍の影響なのでしょう。しかし、そんな困難をものともせず今作も全米5位の好記録を残し、3rdアルバム『THE SOUND OF MADNESS』(2008年)から5作連続全米TOP10入りを果たしました。

前作同様にメンバーのエリック・ベース(B)をプロデューサーに迎えた本作は、モダンなエレクトロサウンドを随所に導入した前作とは異なり、良い意味でポストグランジからモダンメタル側に“振り切った”作風だなと。また、歌モノ自体は13曲ですが随所にインタールードを用いることでストーリー性を強めた作風に仕上がっていおり、全20トラック/約49分をスルスルと聴き進めることができます。

前作はブレント・スミス(Vo)を襲った精神的トラブルや心の葛藤がそのまま反映されたダークなテイストでしたが、今作はオープニングSE後に勢いよくなだれ込むアップテンポのメタルチューン「No Sleep Tonight」でいきなりハートを鷲掴みにされます。ちょっと往年のSCORPIONSを彷彿とさせるこの曲に驚きを隠せないまま、良い形でタイトルトラック「Planet Zero」へと続き、その後も陰湿で不穏なロボットキャラクター“Cyren(シレン)”の機械的なナレーション=インタールードを挿入することで、全体を通して没入感が強まっている。下地には確かにポストグランジの香りが感じられるものの、良い意味でモダンメタルサイドにアップデートされており、ナレーションが生み出す(少々古い例えですが)近未来感にも見事マッチしているのです。

今作は新たに設立されたプライベートスタジオにて、時間をじっくりかけて制作されたこともあってか、1曲1曲の作り込み具合も際立つものがあります。先にSCORPIONSからの影響について触れましたが、メロディラインにおいては「America Burning」あたりからもその匂いが感じられます。本人たちは意識していないのかもしれませんが、良い意味でオールドスクールのHR/HMからの影響をにじませ、かつ骨格となるポストグランジ以降の音と、2010年代以降のモダンメタル的味付けを随所に散りばめる。そういった個性的な楽曲群をインタールードでつなぐことで、違和感なくアルバムを通して楽しめるわけです。例えば、先の「America Burning」みたいにダイナミズムの効いたハードロックとアコースティック色強めのアーシーなバラード「A Sympton Of Being Human」をごく自然に続けて楽しめるのも、そうしたインタールードによる効果が大きいのではないでしょうか。

HR/HMファンを納得させる楽曲を随所に用意しつつラジオフレンドリーな楽曲もしっかり存在し、昨今のサブスクを通じて受け入れられそうな作りの楽曲まで含まれている。単曲で聴いたときに感じる充実度はもちろんですが、コンセプチュアルな作品としてのアルバムの完成度も段違い。前作も非常に優れた1枚でしたが、今作はSHINEDOWNが新たな領域に到達しつつ、そこで大きな結果を打ち出すという偉業を成し遂げた傑作ではないでしょうか。ロックファンのみならず幅広い層に届いてほしいですし、これを聴いて「ロック、まだまだ面白いじゃん」と感じてもらいたい。そんな可能性を秘めた2022年における重要作です。

 


▼SHINEDOWN『PLANET ZERO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月13日 (水)

NIGHT RANGER『HIGH ROAD』(2014)

2014年6月10日にリリースされたNIGHT RANGERの10thアルバム(“MOON RANGER”と呼ばれる特殊編成で1995年にリリースした『FEEDING OFF THE MOJO』を含めると11枚目)。日本盤は同年5月21日先行発売。

ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)、ジョエル・ホークストラ(G)、エリック・レヴィー(Key)という布陣による、『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』(2011年)に続く2作目のスタジオアルバム。原点回帰ともいえる王道アメリカンハードロックが展開された前作の流れを汲む作風で、前作の79位には及ばなかったものの全米で最高105位という数字を残しています。

タイトルトラック「High Road」に見られるように、全体を通してミディアムテンポ中心で若干落ち着いた感が強いテイストですが、1曲1曲の作り込みは前作以上。どの曲も基本的にジャック/ブラッド/ケリーのオリメン3人によるもので、ジョエルは「I'm Coming Home」「L.A. No Name」の2曲のみ、エリックは「Don't Live Here Anymore」「Only For You Only」「Brothers」の3曲に名を連ねています。

王道感の強いポップロック調のタイトルトラック、ミドルテンポのハードロック「Knock Knock Never Stop」と序盤はアゲるテイストではないものの、3曲目「Rollin' On」での起伏に富んだアレンジで一気に熱量が高まる。バラードとまではいかないムーディーな「Don't Live Here Anymore」、比較的アップテンポ寄りのポップロック「I'm Coming Home」と、前半はかなりバラエティに富んだ楽曲が並びます。なんとなくですが、印象的には3作目『7 WISHES』(1985年)に似ているような。ただ、バラードで勝負している感があまり前面に出ていないところは今作の良いところかな。

後半は豪快なロックチューン「X Generation」で勢いを付けたかと思うと、彼ららしいピアノバラード「Only For You Only」でワンクッション起き、ミドルヘヴィの「Hang On」、流麗なギターフレーズが耳に残るハードチューン「St. Bartholomew」、ビートルズチックなサイケさをはらんだポップバラード「Brothers」とジョエルのアコギプレイを全面にフィーチャーしたインスト「L.A. No Name」でしっとりと締めくくります。

全体を通して「あれ、このフレーズ聴いたことあるぞ?」と思う瞬間が多々あるものの、どれも単なる焼き直しでは済まない良質な仕上がりで、前作で再び手に入れた“NIGHT RANGERらしさ”を見事に更新できているのではないでしょうか。今聴くと、実は何気に完成度の高い良盤であることに気付かされます。

ただ、リリースから間もなくしてジョエルが突如バンドを脱退し、WHITESNAKEに移籍するというひと波乱が起こり、このアルバムやジョエルに対してネガティブな感情が付いて回るようになりました。それもあって、しばらく本作に対して正当な評価を下せていなかった気がします。これは再結成後のアルバムで3本指に入る良作。ごめんよジャック、ケリー、ブラッド、エリック(ジョエルには謝らないスタイル)。

 


▼NIGHT RANGER『HIGH ROAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月12日 (火)

DEREK SHERINIAN『VORTEX』(2022)

2022年7月1日にリリースされたデレク・シェリニアンの9thソロアルバム。日本盤は同年6月29日先行発売。

前作『THE PHOENIX』(2020年)から約1年10ヶ月という比較的短いスパンで届けられた今作。その前が『OCEANA』(2011年)から9年と考えると、これもコロナ禍がもたらしたひとつの良い点と言えるかもしれません。

今作では盟友サイモン・フィリップス(Dr)が共同プロデューサー/ソングライターとして全面参加。ベースはトニー・フランクリンやアーネスト・ティブス、ジミー・ジョンソン、リック・フィエラブラッチ、ジェフ・バーリンといったHR/HM、ジャズ、フュージョン界では名の知れた名手たちが担当しています。

恒例となった多彩なゲストギタリストは今回も豪華の一言で、タイトルトラック「The Vortex」にはスティーヴ・スティーヴンスBILLY IDOL)が“いかにも”なハイパーアクティブプレイを披露。続く「Fire Horse」ではヌーノ・ベッテンコート(EXTREME)が、彼ならではのファンキーなプレイで耳を惹きつけます。3曲目「Scorpion」はリズム隊+ピアノが織りなすジャジーな世界観で空気を一変するも、シームレスに続く「Seven Seas」では再びスティーヴ・スティーヴンスがプログレッシヴかつスペーシーな演奏&フレーズで、聴く者を圧倒させます。随所にジャジーなフレーズも用意されていますが、そんな中でも自分らしさを一切崩さないスティーヴのギターパフォーマンスはただただ圧巻です。

アルバム折り返し一発目は、スティーヴ・ルカサー(TOTO)&ジョー・ボナマッサ(BLACK COUNTRY COMMUNION)をフィーチャーした「Key Lime Blues」から。2人のギタリストによるユニゾンプレイと、その間を埋めるように弾き倒される個々の“らしい”プレイは、さすがの一言です。そこから、シタールやストリングスを導入したオリエンタルテイストの「Die Kobra」ではマイケル・シェンカーMICHAEL SCHENKER GROUPなど)&ザック・ワイルドBLACK LABEL SOCIETYOZZY OSBOURNEZAKK SABBATH)という、個性派の2人を投入。スリリングさとドラマチックさが同居したこの曲は、派手さという点でも「The Vortex」や「Seven Seas」に次ぐものがあり、アルバム後半のハイライトと言える1曲ではないでしょうか。その2人のプレイを支えるリズム隊がトニー・フランクリン&サイモン・フィリップスというのも、またメタルファンには堪らないものがありますね。

ジャズ/フュージョン界の巨匠マイク・スターンを迎えた「Nomad's Land」で空気が一変すると、アルバムもいよいよ佳境へ突入したことを窺わせます。この曲の味わい深さは本作随一ではないでしょうか。そして、ラストは11分強におよぶ大作「Aurora Australis」。この曲ではSONS OF APOLLOでの盟友ロン“バンブルフット”サールをフィーチャーしており、プログ・ジャズと言わんばかりの独創性の強い仕上がり。ゲストのロン以上にデレクのピアノ/シンセが主軸となっており、まさに彼の主張がもっとも発揮された1曲ではないでしょうか。この曲でアルバムを締めくくるというのも、納得の一言です。

前作『THE PHOENIX』も非常にバラエティに富んだメンツが集まりましたが、今作もそれに匹敵、あるいはそれ以上と言える人選。前作に存在した歌モノは一切ありませんが、それでも十分満足できるのは、インストながらもソングライティングに相当力が入っているからではないでしょうか。プログメタルファンはもちろんのこと、上記のゲストプレイヤーたちに少しでも興味を持っているリスナーなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。

 


▼DEREK SHERINIAN『VORTEX』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月11日 (月)

JOURNEY『FREEDOM』(2022)

2022年7月8日にリリースされたJOURNEYの15thアルバム。

前作『ECLIPSE』(2011年)から約11年2ヶ月ぶりと、JOURNEYとしては過去最長のスパンを経て届けられたスタジオアルバム。その間にディーン・カストロノヴォ(Dr)の離脱&スティーヴ・スミス(Dr)の再々加入、さらにはロス・ヴァロリー(B)&スティーヴの造反による脱退など数々のトラブルがありましたが、今作のレコーディングにはアーネル・ピネダ(Vo)、ニール・ショーン(G)、ジョナサン・ケイン(Key)にランディ・ジャクソン(B)&ナラダ・マイケル・ウォルデン(Dr)という異色のリズム隊が加わった形で制作。さらにはディーンもバンドに復帰し(ナラダは本作完成後に脱退)、ドラムこそ叩いていないものの「After Glow」ではリードボーカルも披露しています。

ニールとジョナサン、そしてナラダという3人がプロデュースを手掛け、ミックスにボブ・クリアマウンテンという名手が参加した本作。全15曲/約73分と非常に長尺な大作ですが、なるほど、長年待たされた甲斐があったと言わざるを得ない力作に仕上がっています。

アルバムタイトルの『FREEDOM』は、本来9thアルバム『RAISED ON RADIO』(1986年)に付けるはずだったタイトルとのことで、そういった点からも今作が名盤『ESCAPE』(1981年)、『FRONTIERS』(1983年)を踏襲した内容であることが想像に難しくありません。実際、どの曲も「Don't Stop Believin'」や「Separate Ways」を筆頭とした『ESCAPE』〜『FRONTIERS』の延長線上にある作風で、多くのファンが求める“JOURNEYらしさ”が凝縮された1枚と言えるでしょう。

最初の数曲、それこそ本当ならタイトであるべき「Together We Run」や「Don't Give Up On Us」には若干の緩さを感じずにはいられませんが、中盤以降……「Come Away With Me」あたりからでしょうか、演奏やバンドアンサンブル含め、序盤以上に緊張感の強いプレイを楽しむことができます。個人的には「Let It Rain」や「Holdin' On」は大好物。モダンな質感が加わった「All Day, All Night」も捨て難いですね。そこから王道の「Don't Go」へとつづく流れは、本作のハイライトではないでしょうか。

ただ、問題点もいくつかあります。ひとつは、曲数が多いため全体像がぼやけてしまうこと。特に彼らのようなバンドの場合、ただ良い曲だけを並べればいいわけではなく、その並び方(起承転結)も重要になってくると思うんです。そういった点でも、本作は12曲程度にまとめられていたら、もっと聴きやすくてギュッと締まった内容になったのではないでしょうか。

もうひとつは、メロディラインの単調さ。これはアーネルの加齢も大きい気がします(近年は『ESCAPE』『FRONTIERS』からの楽曲もキーを下げて歌っていましたし)。音域が狭まったことで、以前ほどメロディの起伏が付けにくくなったことが、この単調さにつながったのなら、やはり曲数はできるだけ絞ったほうがよかったのではないでしょうか。

加えて、日本盤はボーナストラックが蛇足すぎ。曲が多ければいいわけじゃないのに(ただでさえ多いアルバムなのに)、よりによってバラードを追加しますか。その点もちょっとどうかと思いました。輸入盤が店頭に並ぶまでに時間がかかりそうなので、割高(いよいよ3,000円超えですか)な日本盤を購入してしまいましたが、もし店頭に両方並んでいたら僕は迷わず輸入盤を選ぶと思います。

ということで、本来なら高得点を付けたいくらいに良質な内容なのですが、あと3歩くらい足りたいものがあるいということで、点数を付けるとしたら78点くらいかな。だいぶ厳しめですが、待たされたわりにこれじゃあ……という気もするので。

そうはいっても、彼らに懐かしさを求めて本作に手を伸ばした層にはそれなりに満足してもらえるんじゃないかな。

 


▼JOURNEY『FREEDOM』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月10日 (日)

GREG PUCIATO『MIRRORCELL』(2022)

2022年7月1日にリリースされたグレッグ・プチアートの2ndソロアルバム。日本盤未発売。

『CHILD SOLDIER: CREATOR OF GOD』(2020年)から1年9ヶ月ぶりに届けられたスタジオアルバム。エクスペリメンタルメタルをベースに、ニューウェイヴやオルタナティヴロック、インダストリアルロックなどの色合いを散りばめた、衝撃的な前作を経て、この2作目ではそことも異なるサウンドを聴かせてくれます。

レコーディングは前作から引き続き、ドラムのみPOISON THE WELLのメンバーで初期のTHE BLACK QUEENに携わった経験を持つクリス・ホーンブルックが担当。それ以外の楽器はすべてグレッグが担当しています。本当に多彩ね。

前作の時点でひとつのジャンルに固執することを放棄し、ひたすらやりたいことにトライしていたグレッグですが、その指向は今作も同様。今回はオルタナやグランジなど90年代前半のUSロックをベースにしながら、時には耽美な世界観が強調された楽曲を構築しています。冒頭の1分半程度のインスト「In This Hell You Find Yourself」こそエクスペリメンタルメタル的な嗜好ですが(どこかNINE INCH NAILS的ですよね)、続くミドルヘヴィの「Reality Spiral」はグルーヴメタル meets グランジ的なヘヴィさ&メロディアスさを提示。「Never Wanted That」での耽美な陰鬱さはALICE IN CHAINSにも通ずる世界観と言えるでしょう。グレッグのボーカルスタイルもジェリー・カントレル的ですし……ってそういえば、グレッグはジェリーとも仲良しだし、2021年発売のジェリーのソロアルバム『BRIGHTEN』にもコーラスで全面参加してしましたね。なるほど、納得です。

かと思えば、「Lowered」ではレバ・マイヤーズ(Vo/CODE ORANGE)をフィーチャー。パーカッシヴなドラうフレーズと、グランジとは異なる耽美なメロディとレバのスージー・スー(SIOUXSIE AND THE BANSHEES)的な情念系ボーカルの相性は抜群で、先の「Never Wanted That」とあわせて前半のハイライトと言える1曲です。ホント、この曲でのレバのボーカルが素晴らしすぎます。

チープなニューウェイヴ的打ち込みビートを用いた「We」から始まるアルバム後半は、グランジライクな前半とは空気が一変。囁くようなグレッグのボーカルと相まって、緩やかな空気がダダ流しされていきます。ところが、この手のユルい楽曲はこれ1曲で終わり、続く「I, Eclipse」では再び暗黒世界に引き戻されます。とはいっても、グランジ的暗黒ではなく、ニューウェイヴ的な暗黒さなんですけどね。「Rainbows Underground」はグランジとニューウェイヴを良いさじ加減でミックスした良曲で、ラストはタイト&ヘヴィなドラムと呪文のような呟きから絶叫へと変化するボーカルが聴き手を魔界へと引き摺り込む9分近い大作「All Waves To Nothing」で終了。エクスペリメンタル寄りのこの曲で終わり、再びオープニングのインスト「In This Hell You Find Yourself」へと戻っていくというループ感は、どこか無限地獄のようにも感じられます。

前作から味変したものの、出汁に使っている食材は一緒。その出汁の魅力に気付きさえすれば、『CHILD SOLDIER: CREATOR OF GOD』と今作『MIRRORCELL』がかけ離れたものではなく、実は地続きであることもご理解いただけるはず。個人的には下半期開始早々いきなりの年間ベスト候補に、思わずガッツポーズです。

なお、本作をbandcampでダウンロード購入すると、ボーナストラックとしてインストのM-1以外の8曲の「ボーカルトラックのみバージョン」と「インストバージョン」の全16トラックが付属。メロディがしっかりしていてボーカルだけ抜き出しても楽しめると同時に、改めてインストへの力の入れ具合にも圧倒されるので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。

 


▼GREG PUCIATO『MIRRORCELL』
(amazon:海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月 9日 (土)

BRING ME THE HORIZON『sTraNgeRs』(2022)

2022年7月6日にデジタルリリースされたBRING ME THE HORIZONの新曲。

バンドの単独新曲としては昨年9月配信の「DiE4u」(2021年)以来、約10ヶ月ぶりの新曲。前作「DiE4u」は『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』(2020年)に続く“POST HUMAN”4部作の第2章の1曲目にあたるナンバーで、今回の「sTraNgeRs」はそれに続く2曲目になるとのことです。

楽曲自体は特段新しさを感じさせるものはなく、『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)以降の流れを汲むメロディアスなミディアムナンバーに仕上がっています。もちろん、そこはBMTHのこと。単なる焼き直しで終わることなく、アンセミックなサビ/シンガロングパートを用意することで楽曲の強さを誇示。さらに、デジタル色よりもバンドサウンドの強みを活かしたアンサンブルも一周回って新鮮に響き、改めてロックバンドとしてひとまわりもふたまわりも大きく成長したことを窺わせます。

楽曲配信にあわせてMVも公開されましたが、「sTraNgeRs」=見知らぬ人、つまり自分とは異なる個性、様相の者/モノにスポットを当てた作風になっており、これはファンから匿名で集められた、それぞれのメンタルヘルスとの向き合い方のストーリーからインスピレーションを受けて作られたものなんだとか。そもそも楽曲のテーマ自体がメンバー自身の経験にも基づき、人が持つそれぞれの孤独感やトラウマを歌う、救いの手を差し伸べるような内容であることから、奇怪な映像ながらもネガティブさだけではない“光”や“救い”が伝わるのも確か。その、聴き手に訴えかけるようなポジティブさが楽曲の持つアンセム感とリンクすることで、より強く響くのではないでしょうか。

映像の中に登場する奇形/奇怪な生物やオリー・サイクス(Vo)の様相が、どこかDIR EN GREYとリンクする……と感じたのは、きっと筆者だけではなかったのでは。特に「DiE4u」以降のBMTHが表現しようとしている映像テーマは、DIRからヒントを得たものが少なくような気がするのですが……ぜひ一度、共演などを通じてそのへんの世界観について話してもらいたいものです。

このリリースペース的には、夏フェスシーズンが終わる頃に第3弾楽曲が配信され、秋以降にEPがリリースされるのでは……と読んでいるのですが、果たしてどうなるのやら。まとまった作品集が届けられるまでには、そこまで時間を要さないはずなので、年内リリースに期待したいと思います。

 

▼BRING ME THE HORIZON『sTraNgeRs』
(amazon:MP3

 

2022年7月 8日 (金)

V.A.『ELVIS (ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK)』(2022)

2022年6月24日にデジタルリリースされた、映画『エルヴィス』のサウンドトラックアルバム。フィジカル(CD)は同年7月29日発売予定。

本作はアルバムリリースと同日に全米で、7月1日に日本で劇場公開された、エルヴィス・プレスリー生涯を描いた伝記映画内で使用されたプレスリーの楽曲、およびカバー曲をまとめたもの。CD版は全22曲がディスク1枚にまとめられていますが、デジタル版は全37曲(36曲バージョンもあるのでご注意を)/トータル約120分におよぶ大ボリュームの内容となっています。

僕も数日前に劇場で同映画を観てきたばかりですが、それまでヒット曲しか知らないし、アルバムを聴くとしてもベスト盤程度でそこまで熱心に知ろうとしなかったプレスリーのことを、その時代背景含めて非常にわかりやすく学ぶことができる良質な内容で、2時間40分という長尺さをまったく感じさせないほど夢中になれました。あと、50〜60年代の音質で無理して学ぼうとせず、主演のオースティン・バトラーが歌う(あるいは、今の音で伴奏/録音された)テイクを通してプレスリーの楽曲に触れることで、軸にあるブルースやカントリー、ゴスペルの要素の魅力に気づくことができたのは非常に大きかったと思います。また、プレスリーとB.B.キングとの関係性や、若き日のリトル・リチャードの美しさ(そりゃあモデル出身のアルトン・メイソンが演じているんだから美しいわけだ)、かのゲイリー・クラークJr.が「That's All Right」の原曲者であるアーサー・“ビッグ・ボーイ”・クルーダップを熱演している点なども見どころで、こちらもいろいろ勉強になりました。

そういった意味でも、このサントラに収録されたリメイク/カバー曲の数々は2022年の耳で楽しむには十分な内容で、映画に触れたあとに聴くことでより深く楽しめるはず。僕自身、サブスクでリピートするだけでは飽き足らず、Amazonでデジタル版(もちろん37曲バージョン)をダウンロード購入してしまうほどでしたから。

アルバムにはドージャ・キャット、エミネム&シーロー・グリーン、スウェイ・リー&ディプロ、ケイシー・マスグレイヴス、MÅNESKIN、スティーヴィ・ニックス&クリス・アイザック、ションカ・デュクレ(劇中でビッグ・ママ・ソーントン役担当)、レス・グリーニー、ヨラ(劇中ではシスター・ロセッタ・サープ役担当)、デンゼル・カリー、レネーシャ・ランドルフ、ジャズミン・サリヴァン、パラヴィなどがプレスリーの楽曲をカバーしたほか、プレスリーのボーカルテイクを用いた形でのコラボナンバー/リミックス/リメイクにはスチュアート・プライス、プナウ、ナルド・ウィック、マーク・ロンソン、TAME IMPALA、ジャック・ホワイトといった錚々たる面々も名を連ねており、モダンなR&B/ソウル方面だけでなく現代的なロック/ダンスミュージックへの拡散含めて、プレスリーが与えた影響の強さを再認識できる内容と言えるのではないでしょうか。

もちろんプレスリー本家の諸作品に手を出すのは当たり前の話なのかもしれませんが、1971年生まれの僕が聴いても初期の音源は戦前ブルースやチャック・ベリーなど初期のロックンロールに触れるのと同じくらい、気軽に聴けるという感覚が薄くて。曲によってはストーンズの初期作品もつらいですからね。そういった意味では、本作に収録されたプレスリー歌唱曲は一部リミックスやバックトラックをリテイクするなどしているため、現代的な感覚で原曲の良さを味わえる。かつ、カバーやコラボテイクからは曲の良さやその根底にあるルーツなども再認識することができる。そういった意味では、「プレスリー入門」ではなく「プレスリー入門への副読本」と言ったほうが正しいのかもしれません。

ここで地盤を作ってから改めてプレスリーのオリジナル音源に触れると、また以前とは違った印象を受けるんじゃないかな……僕自身はまだそこまで踏み込んではいませんが、いずれはプレスリーの諸作品もしっかりおさらいしてみたいと思いました。そう感じさせてくれただけでも、映画『エルヴィス』とこのサントラが果たした役割は非常に大きかったんじゃないでしょうか。

まあとにかく。劇中でオースティン・バトラーが演じる若き日のプレスリーが本当に美しいので、晩年との差含めぜひ劇場で(できれば一番デカいスクリーン&音響施設がしっかりした劇場で)観てもらいたいです。

 


▼V.A.『ELVIS (ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

 

2022年7月 7日 (木)

DERAPS『DERAPS』(2022)

2022年6月17日にリリースされたDERAPSの1stアルバム。

ジェイコブ・デラプス(Vo, G)、ウィリアム・ラチャンス(B)、ジョシュ・ギャラガー(Dr)からなる、カナダを拠点とする3人組ハードロックバンド。プレスリリースによると、リーダーのジェイコブは2016年に“ドゥイージル・アンド・フランク・ザッパ・フェローシップ・アワード”を勝ち取ったほどの猛者なんだとか。その頃のジェイコブのギター動画もいくつかYouTube上で確認することができますが、若き日のエディ・ヴァン・ヘイレン直系の派手なプレイは現在にもそのまま引き継がれており、とことん“これ”がやりたかったんだなと実感させられます。

今から2年前に「Sex, Drugs & Rock N' Roll」がYouTubeやストリーミングサービスで公開されており、ちょうど2020年春くらいから自分内でのVAN HALEN再評価が高まっていたこともあり、僕もその当時「これは良い!」と唸ったことをよく覚えています。ボーカルのアクの弱さは気になったものの、初期VAN HALENをベースにしたわかりやすい楽曲など「すべてにおいて80年代的だなあ。いいじゃないですか」と早くもアルバムを心待ちにしていたのですが、その後特に注目することなく(苦笑)、気づけば2年も経ってしまっていました。

その間には、当のエディが亡くなるという悲しい出来事もありましたが、あれから2年近く経ちようやく届けられたフルアルバムは、アルバム全体を通して70年代末から80年代初頭のVAN HALENやUSハードロックを彷彿とさせる、軽やかでご機嫌なパーティソングで構成されています。2022年にもかかわらず(笑)。

ジェイコブの豪快なギタープレイを10数秒にわたりフィーチャーしたオープニングSE「Invasion」から始まる本作は、まさにVAN HALENのデビュー作『VAN HALEN』(1978年)をオマージュしたものと言えるでしょう。そこから時代錯誤なタイトルの「Sex, Drugs & Rock N' Roll」へと突入する流れ、「Live Fast Die Slow」なんていういかにもなタイトルで、往年のVAN HALENを思わせるコーラスをフィーチャーしたミドルテンポのロックンロール、「Veins Of My Heart」で聴かせるドラマチックな構成のギターソロ、アコギをフィーチャーしたインストトラック「Èlizabeth」など、とにかくどの楽曲も粒揃い。「Sex, Drugs & Rock N' Roll」で初めて耳にしたときはアクの弱さが足を引っ張っていたジェイコブのボーカルも、この2年を経て貫禄が増し始めていて、アルバムとして聴いたときはそこまで弱いと感じませんでした。そりゃ本家には敵いませんが、これはこれで全然アリ。むしろ、2作目以降でどう“化ける”のかも気掛かり。いつまでもVAN HALENをなぞってばかりではいられないと思うのですが、そこでひとつ鍵となるのが7曲目「Make Ya Groove」でトライしたスタイルなんじゃないかな?と、個人的には感じています。

意外とバラエティ豊かなんだけど統一感の強さが伝わる作風は、好きな人にはたまらないでしょう。もちろん、「いやいや、エディのほうが……」と苦言を呈すオーバー40、オーバー50世代もいるでしょうが、そういう人はずっとVAN HALENだけ聴いていればいい。僕は好き、ってだけの話。心を広く、視野を広くしてリアルバムの音を楽しみたいだけなんですから。

むしろロック不毛だと言われる今の時代、若い世代がこれを聴いてどう感じるかのほうがずっと大切じゃないかな。こういうバンドを普通の感覚で「え、カッコいいじゃん、これ」と捉えてもらえて、そこからルーツのVAN HALENや、アルバムラストでカバーされた「Ballroom Blitz」の原曲者・SWEETに触れてみたりと、そういう“掘り起こし”作業につながっていったら、最高じゃないですか。

 


▼DERAPS『DERAPS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2022年7月 5日 (火)

2022年上半期総括

恒例となった上半期ベスト。ここ1〜2ヶ月は激務に伴い連続更新をストップさせるタイミングが何度かあり、6月末からも不定期更新が続いておりますが、これだけはやっておかないとと思い、記録として残すことにしました。

今年は例年の「洋楽5枚、邦楽5枚」を崩して、このサイトで紹介した作品の中から10作品をピックアップする形を取りました。最後に、次点5作品も紹介しております。年末の年間ベストに関しては例年どおりの形で行うと思いますが、時間がない今はこういう形で進めさせてください。

 

DEF LEPPARD『DIAMOND STAR HALOS』(amazon)(レビュー

 

FONTAINES D.C.『SKINTY FIA』(amazon)(レビュー

 

THE HELLACOPTERS『EYES OF OBLIVION』(amazon)(レビュー

 

HO99O9『SKIN』(amazon)(レビュー

 

IBARAKI『RASHOMON』(amazon)(レビュー

 

NOVA TWINS『SUPERNOVA』(amazon)(レビュー

 

PAUL DRAPER『CULT LEADER TACTICS』(amazon)(レビュー

 

RECKLESS LOVE『TURBORIDER』(amazon)(レビュー

 

VENOM PRISON『EREBOS』(amazon)(レビュー

 

ZEAL & ARDOR『ZEAL & ARDOR』(amazon)(レビュー

 

そして、以下5作品が次点となります。

 

BLOODYWOOD『RAKSHAK』(レビュー
GREYHAVEN『THIS BRIGHT AND BEAUTIFUL WORLD』(レビュー
MICHAEL MONROE『I LIVE TOO FAST TO DIE YOUNG!』(レビュー
PORCUPINE TREE『CLOSURE / CONTINUATION』(レビュー
SOUL GLO『DIASPORA PROBLEMS』(レビュー

2022年7月 2日 (土)

PORCUPINE TREE『CLOSURE / CONTINUATION』(2022)

2022年6月24日にリリースされたPORCUPINE TREEの11thアルバム。

10thアルバム『THE INCIDENT』(2009年)に伴うツアーを経て、2010年以降は活動停止状態だった彼ら。以降、スティーヴン・ウィルソン(Vo, G)はソロ活動を活発化させ、2011年の2ndソロ『GRACE FOR DROWING』から昨年の6作目『THE FUTURE BITES』(2021年)まで5枚ものアルバムを発表。かつ、同作は全英4位、5作目『TO THE BONE』(2017年)は同3位とチャート的にも好成績を残しています。

そんなPORCUPITE TREEが2021年秋に突如活動再開を発表。ベーシストのコリン・エドウィンは未参加ながらも、スティーヴンとリチャード・バルビエリ(Key/ex. JAPAN)、ギャヴィン・ハリソン(Dr/KING CRIMSON、THE PINEAPPLE THIEF)の3人でこの11作目にあたるオリジナルアルバムを完成させます(レコーディングではスティーヴンがベースパートを兼務)。

バンドのセルフプロデュースで制作された本作は、7〜9分台の長尺曲が中心の全7曲/約48分といういかにも彼ららしいボリューム/バランス感。また、デラックスエディションにはさらに3曲が追加され、全10曲/約66分という2枚組アルバム級の大ボリュームに。日本盤やサブスクなどではこの10曲仕様がマストのようです。

実は、オープニング曲「Harridan」や一部の楽曲は、前作『THE INCIDENT』が完成してすぐに取り組んでいたものなんだとか。何度かバンドとしての新作に取り組もうというタイミングがあったようですが、最終的にこのタイミングになってしまったと。それもあってなのか、「Harridan」は良い意味で“あのPORCUPINE TREEが帰ってきた!”というスリリングでダーク(そしてムーディ)なサウンドを思う存分に楽しむことができる。ちょっと比較するのは違うかもしれませんが、僕の感覚的にはTOOL久々の新作『FEAR INOCULUM』(2019年)に初めて触れたときと同じ感覚に陥りました。

もちろん、ただ同じことの繰り返しをしているわけではなく、メロディや奏でられるサウンド、バンドのアンサンブルや随所に散りばめられたフレーズなどに以前との違い(というか成長)を感じ取ることもできる。ダークな「Rats Return」があるかと思えば、穏やかな雰囲気の「Of The New Day」や「Dignity」では独特の浮遊感や解放感が味わえるし、「Walk The Plank」ではエレクトロ色の強い不思議な空気を味わうこともできる。そして、アルバムラストには10分近くにもおよぶエピカルな「Chimera's Wreck」が配置されている。僕は決して熱心なこのバンドのファンとは言えませんが、ここで展開されている楽曲、サウンドにはファンが望むものすべてが詰まっていると同時に、この10数年にスティーヴンやリチャード、ギャヴィンが経験したことすべてが凝縮されているような気がしてなりません。

往年のYESGENESISとの共通点が見つけられると同時に、90年代以降のオルタナティヴな感覚も添えられており、これらが2022年版にアップデートされたのが本作『CLOSURE / CONTINUATION』と考えると、全英チャート2位という過去最高ランキングを獲得したことも頷けるものがあります(途中まで1位獲得か?と期待されていただけに、ちょっとだけ残念)。ドイツなどでは初の1位も獲得しており、アメリカ以外では大健闘といったところでしょうか。サブスクよりもフィジカルが格段に数字を稼いでいるあたりにも、どういった層が彼らの音楽のメインターゲットなのかもなんとなく想像できますしね。

「Harridan」や「Chimera's Wreck」みたいな曲を聴いてしまうと、断然ライブが観たくなるわけでして。僕が彼らを生で観たのは2006年11月の昭和女子大学人見記念講堂でのライブが最初で最後なわけですが、次にチャンスが訪れたときは必ず会場に足を運ぼう……そう強く思わせてくれた良質な1枚です。

 


▼PORCUPINE TREE『CLOSURE / CONTINUATION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

« 2022年6月 | トップページ | 2022年8月 »