STENFORS『FAMILY ALBUM』(2022)
2022年6月10日にリリースされたSTENFORSの1stアルバム。日本盤は同年6月8日先行発売。
STENFORSとは元HANOI ROCKS、元CHEAP AND NASTY、元DEMOLITION 23.のギタリストであるナスティ・スーサイドことヤン・ステンフォースのソロプロジェクトで、ソロ作品はヤン・ステンフォース名義のアルバム『VINEGAR BLOOD』(1996年)以来実に26年ぶり。そのバンド名/アルバムタイトルからもわかるように本作はヤンの親族が中心となりレコーディングに参加した、文字通りの“ファミリーアルバム”です。
このアルバムに関する今年2月のインタビューで、ヤンは現在前立腺がんの闘病中であることをカミングアウト。化学療法を受けていたとのことで、その影響は本作のレコーディングにも遅延を及ぼしたとのこと。しかし、病状は比較的安定しており、無事このアルバムリリースまで漕ぎ着けることができたようです。
内容は彼の音楽ルーツを追求した、ブルースロックをベースにしたもので、ストレートなロックアルバムというよりはその原点的な、非常に渋みの強い作風。オープニングを飾る「XStopia」からして肩の力が抜けており、非常にレイドバックしたユルめのロックが展開されています。その一方で「Friends」や「Folsom Prison Blues」ではタイトなリズムセクションをバックに、ルーズでソウルフルなロックが鳴らされており、なんとなくですがキース・リチャーズのソロアルバムにも近い印象を受けます。
また、本作には「Sweet Sue」や「Then It's Gone」みたいなカントリーテイストのアコースティックナンバーも含まれていますし、「Boiling My Eggs」のようなストレートなブルースナンバーも用意されている。「Chemo Brain」のジャイブ感も非常に心地よいですし、アルバムを締めくくるギターインスト「Syrenen」も渋くてたまらない。ロックンロールのルーツを追求しつつも、非常にヤン……いや、ここはもうナスティと呼ばせてもらいます(笑)。パンクロック以前のルーツに立ち返った、いかにもナスティらしい地味な1枚に仕上がっています。どんなに渋いことをやっても、芯から放たれる華やかさと毒々しさのせいで比較的派手に仕上がるアンディ・マッコイと比較すると、非常に対照的な仕上がりです。
そして、ナスティのボーカル。これがまた渋いんですよ。すべての曲で彼が歌っているわけではないんですが(彼が歌っているのは「XStopia」「Folsom Prison Blues」「Chemo Brain」「Then It's Gone」の4曲)、「Then It's Gone」あたりで聴ける彼のボーカルはこの手のシンプルなルーツミュージックにピッタリハマっている。CHEAP AND NASTYでも聴くことができたヘタウマボイスが、30年モノのウィスキーのごとく深みを増しているわけです。若い頃のヘロヘロ気味の歌声も好きでしたが、今の好みとしては本作での歌声がドンズバ。いろんな困難を乗り越えてここにたどり着いたんだなと思うと泣けてきます……。
今年はマイケル・モンローの新作があり、来月にはアンディ・マッコイのカバーアルバム『JUKEBOX JUNKIE』も控えている(リリース元がCleopatra Recordsというのが若干不安ですが……)。昨年はサミ・ヤッファも初のソロアルバムを発表しましたし、こうやって元HANOI ROCKS勢がマイペースに音楽活動を続けてくれるのは80年代からのファンにとってはうれしい限りです。予定どおりならアンディは10月に来日するし、おそらくマイケル&サミも近い将来やってきてくれるでしょうから……ナスティも無事寛解してまた日本に来てくれたら、それだけでハッピーですよ。
▼STENFORS『FAMILY ALBUM』
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