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2022年8月

2022年8月31日 (水)

2022年8月のお仕事

2022年8月に公開されたお仕事の、ほんの一例をご紹介します。(※8月26日更新)

 

[WEB] 8月26日、「音楽ナタリー」にてインタビューbrainchild's「coordinate SIX」菊地英昭、渡會将士インタビュー|“第7期。”の座標となるニューアルバム、多彩な楽曲を通じて提示したロックの可能性が公開されました。

[WEB] 8月24日、「音楽ナタリー」にてインタビュー9mm Parabellum Bullet「TIGHTROPE」完成記念特集|菅原卓郎(Vo, G)インタビューで紐解く9thアルバムの世界が公開されました。

[WEB] 8月24日、「リアルサウンドTECH」にてインタビュー松村沙友理が語る“乃木坂46卒業からの1年” 「改めてメンバーの偉大さを感じた」が公開されました。

[WEB] 8月24日、「リアルサウンド」にてライブレポート櫻坂46、日向坂46からバトン受け取り『W-KEYAKI FES. 2022』完結 尾関梨香&原田葵が卒業、グループの現在地伝えた公演にが公開されました。

[WEB] 8月21日、「W-KEYAKI FES. 2022」オフィシャルレポートを担当。「ニッポン放送NEWS ONLINE」尾関梨香・原田葵の卒業セレモニー実施 リベンジは富士急の地で! 櫻坂46振替公演にて日向坂46との合同イベント『W-KEYAKI FES.2022』終幕 など、さまざまな情報サイトにて掲載中です。

[WEB] 8月19日、「音楽ナタリー」にてインタビューANCHOR×りりあ。インタビュー|映画「サバカン SABAKAN」主題歌が誰かの青春に重なる1曲になればが公開されました。

[WEB] 8月18日、「SPICE」にてインタビュー原点回帰、8周年という特別なタイミングで『ボカロ三昧2』をリリースの和楽器バンドにその想いを訊くが公開されました。

[WEB] 8月11日、乃木坂46公式サイトにて掲載の30thシングル「好きというのはロックだぜ!」Type-D特典Blu-ray収録「真夏の全国ツアー2021」LIVE厳選集~全体楽曲編~について、収録曲のレポートを執筆しました。

[WEB] 8月10日、乃木坂46公式サイトにて掲載の30thシングル「好きというのはロックだぜ!」Type-C特典Blu-ray収録「真夏の全国ツアー2021」LIVE厳選集~アンダー楽曲編~について、収録曲のレポートを執筆しました。

[WEB] 8月9日、乃木坂46公式サイトにて掲載の30thシングル「好きというのはロックだぜ!」Type-B特典Blu-ray収録「真夏の全国ツアー2021」LIVE厳選集~ユニット楽曲編~について、収録曲のレポートを執筆しました。

[WEB] 8月8日、乃木坂46公式サイトにて掲載の30thシングル「好きというのはロックだぜ!」Type-A特典Blu-ray収録「真夏の全国ツアー2021」LIVE厳選集~夏楽曲編~について、収録曲のレポートを執筆しました。

[WEB] 8月5日、「音楽ナタリー」にてインタビュー「TIMELESS SESSIONS in 山形 2022」特集 武部聡志×岸谷香インタビュー|一夜限りの共演に向けて旧知の仲の2人が語り合うが公開されました。

[WEB] 8月4日、「リアルサウンド」にてインタビュー櫻坂46 小林由依&尾関梨香&大園玲が語る、改名後初アルバム 掴みはじめたパフォーマンスにおけるグループらしさが公開されました。

[紙] 8月4日発売「日経エンタテインメント!」2022年9月号にて、櫻坂46菅井友香の連載「いつも凛々しく力強く」および日向坂46上村ひなのの連載「ピュアで真っすぐな変化球」の各構成を担当しました。(Amazon

[WEB] 8月3日、「音楽ナタリー」にてインタビューWONインタビュー|最新曲「ギャンラブ」や「家庭教師のトライ」CMで注目の女性シンガーが語るメジャーの活動が公開されました。

[WEB] 8月3日、「リアルサウンド」にてコラムマネスキン、まもなく初来日! 単独公演&サマソニ前にチェックしておきたいライブアンセム10選が公開されました。

[WEB] 8月3日、「リアルサウンド」にてコラムBLUE BLUE BLUE、2ndシングル「Favor」で見せる新たな表情 緩急に富んだ表現が際立つR&B作品にが公開されました。

2022年8月13日 (土)

ITHACA『THEY FEAR US』(2022)

2022年7月29日にリリースされたITHACAの2ndアルバム。日本盤未発売。

紅一点のジャミラ・ボーデン・アゾウズ(Vo)を擁するITHACAは英・ロンドン出身の5人組バンド。2012年の結成以降、『NARROW THE WAY』(2014年)、『TRESPASSERS』(2015年)といったEPを発表してきましたが、2019年2月発売の1stアルバム『THE LANGUAGE OF INJURY』でその知名度は少しずつ高まっていき、3年半ぶりのフルアルバムはその人気を確かなものへと導く決定打になりそうです。

新たにHassle Recordsと契約して1作目となるこのアルバムは、ルイス・ジョーンズ(ROLO TOMASSIEMPLOYED TO SERVEFUNERAL FOR A FRIENDなど)をプロデュース&ミックスに迎えて制作。ぶっちゃけ、前作の比にならないほどの急成長を果たしており、2022年後半における最注目アルバムだと断言できるほどの傑作と言えるのではないでしょうか。

2020年代らしいメタルコアを下地に、要所要所にゴシック要素が散りばめられた楽曲群はどれも非常に優れたもの。タイトルトラック「They Fear Us」を筆頭に、ジャミラの豪快さと繊細さを共存させたボーカル、ラウドさはもちろんのこと、テクニカルもしっかり併せ持つリズミカルなバンドアンサンブル、適度にスペーシーなミキシングなど、聴いていて飽きない作り込みが随所に施されています。

タイプは異なるかもしれませんが、DEFTONESが女性ボーカルで今デビューしていたらこんな音になるんじゃないか……そんなことを想像してしまうくらい、個人的には衝撃度の高い内容。もちろん、ただトリッキーなだけでなく歌メロ、演奏、アレンジもしっかり計算され尽くしているから最初から最後まで飽きることもダレることなく、なんなら何度もリピートしてしまう。全9曲/35分というトータルランニングも的確で、この手のアルバムにしては疲れることなく楽しめてしまうのです。

不穏さとヘヴィさが生み出す独特のアンサンブルがクライマックスに達するのが、ラスト2曲……「You Should Have Gone Back」と「Hold, Be Held」でしょう。「You Should Have Gone Back」でのエモーショナルなギターソロと血涙が溢れてきそうなアグレッションの対比、その流れを引き継ぎつつニューウェイヴ的浮遊感を高めていく「Hold, Be Held」での圧巻の表現力、そしてジャミラの美しい歌声といったら……2022年最高のアルバムクロージングだと断言させていただきます。

映像で観るジャミラの迫力、音だけでも十分に伝わるバンドの多彩な表現力。そのすべてが規格外と言いたくなる、アルバムとしても本年度最高クラスの仕上がり。数ある女性ボーカルバンドの諸作品の中でも、頭5つくらい飛び抜けた本作は、ラウドな音楽を愛するすべてのリスナーに届いてほしい大傑作です。

 


▼ITHACA『THEY FEAR US』
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2022年8月12日 (金)

ARCH ENEMY『DECEIVERS』(2022)

2022年8月12日にリリースされたARCH ENEMYの11thアルバム。

新録曲などを含むカバー曲をまとめたコンピ盤『COVERED IN BLOOD』(2019年)を間に挟んでいたとはいえ、オリジナルアルバムとしては前作『WILL TO POWER』(2017年)からほぼ5年ぶり。メンバーがそれぞれ異なる国に住んでいることから、コロナ禍によるロックダウンが大きく影響し長らくレコーディング作業を行えなかったことも大きいのでしょう(本当はメンバー5人、顔を合わせてレコーディングを行うつもりも、最終的には一部ギタートラックはリモートで録音)。

昨年秋から「Deceiver, Deceiver」を筆頭に、約10ヶ月をかけて本作からの楽曲が小出しにデジタルリリースされてきましたが、満を辞してといいますか、5年も待たされた甲斐があったと言いたくなるくらい、非常に良質なメロディックデスメタルアルバムだと思います。大半の楽曲をマイケル・アモット(G)とダニエル・アーランドソン(Dr)が手がけているというのも、本作の大きな特徴でしょう。ジェフ・ルーミス(G)がアメリカで生活していることから今作でもソングライティング面で手腕を発揮することができず、もっとも身近にいる2人が膝を突き合わせて曲作りを進めた結果なのか、多くのリスナーがこのバンドに求める要素がすべて揃った「痒いところに手が届く」1枚に仕上がっています。

アルバムはアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)によるメロウなクリーンボーカルを随所にフィーチャーするという、前作からの流れをよい形で進化させた「Handshake With Hell」からスタート。ARCH ENEMYらしい王道感とドラマチックさが凝縮されたこの曲は、本作を象徴する1曲と言っても過言ではないでしょう。そこから「Deceiver, Deceive」や「In The Eye Of The Storm」といったタフなナンバー、「The Watcher」「Poisoned Arrow」というメランコリックな楽曲がずらりと並ぶ構成は圧倒的の一言。特に後者は、作曲クレジットに元メンバーにしてマイケルの実弟クリストファー・アモットの名前を見つけることができる。このへんもバンドが本作で何を狙ったのかが透けて見えてくる気がします。

この流れは「Sunset Over The Empire」から始まるアルバム後半にも引き継がれ、マイケル&クリストファー作曲によるキラーチューン「House Of Mirrors」、悲痛の叫びにも似た鳴きメロを感じることができる「Spreading Black Wings」で本作何度目かのクライマックスを迎えます。そこから100秒程度の短尺インスト「Mourning Star」を経て「One Last Time」へと突入すると、バンドが放つ熱量にもラストスパートがかかり始める。そこから叙情的なラストナンバー「Exiled From Earth」でエモーショナルさが最高潮に達し、最高のエンディングを迎えるわけです。

全11曲/約45分という程よいボリューム感の中にぎっしりと詰め込まれた“ARCH ENEMY節”の数々といい、一切の隙を与えない構成といい、結成25周年を経てもなお守りに入らず自分たちらしさを追求し続ける姿勢といい、本作は文句なしの傑作ではないでしょうか。少なくとも、アリッサ加入後の作品においては頂点と言える1枚です。

なお、日本盤にはお約束のカバーソングを追加収録。今回は80年代に活躍したオランダのメタルバンドPICTUREの「Diamond Dreamer」と、ロブ・ハルフォードが90年代に結成したFIGHTの「Into The Pit」の2曲で、前者ではアリッサがオールクリーンボーカルで歌うという暴挙(笑)に及んでいます。これ、完全に普通の正統派ヘヴィメタルで最高です。もちろん、フルデスボイスで表現された「Into The Pit」のアグレッションも文句なし。どちらもボーナストラックにしておくには勿体ないレベルなので、ここはサブスクで満足することなくぜひ日本盤CDを購入してもらいたいところです。

 


▼ARCH ENEMY『DECEIVERS』
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2022年8月11日 (木)

ANDY McCOY『JUKEBOX JUNKIE』(2022)

2022年8月5日にリリースされたアンディ・マッコイの4hアルバム。日本盤未発売。

実に24年ぶりのソロアルバムとなった前作『21ST CENTURY ROCKS』(2019年)から約3年ぶりに届けられた新作は、すべてカバー曲で構成された1枚。アンディのルーツとなるアーティストに加え、「Miss Tennessee」のような比較的最近のヒット曲も含まれており、表現者としてのこだわりが伝わる内容に仕上がっています。

収録曲の内訳は以下のとおり。

M-1. I'm Gonna Roll [デイヴ・リンドホルム]
M-2. 54-46 That's My Number [TOOTS AND THE MAYTALS]
M-3. Take Me I'm Yours [SQUEEZE]
M-4. Miss Tennessee [ケイティ・ノエル&オータム・ブルック]
M-5. Hot Night In Texas [ムーン・マーティン]
M-6. I Can Feel The Fire [ロニー・ウッド]
M-7. Shot Full Of Love [ドン・ウィリアムズ]
M-8. Solo In Soho [フィル・ライノット]
M-9. Back To The Wall [DIVINYLS]
M-10. Motorbiking [クリス・スペディング]
M-11. I Couldn't Get It Right [CLIMAX BLUES BAND]
M-12. China Girl [イギー・ポップデヴィッド・ボウイ]
M-13. Funnel Of Love [ワンダ・ジャクソン]
M-14. Countdown [U.K. SUBS]

ロックやパンク、ニューウェイヴのみならず、ロカビリーやレゲエ、カントリーなど幅広いセレクトですね。それらがアンディらしアレンジでカバーされているのですが、すべての曲がアンディ中心で構成されているわけではなく、現在のバンドメンバーやゲスト女性シンガーを前面に押し出すなど、あくまでバンドとしての表現がなされているのが印象的です。

例えば、ケイティ・ノエル&オータム・ブルックによる2020年のカントリーヒット「Miss Tennessee」では、アンディとジェイミー・ハンブリーのデュエットを楽しむことができるし、SQUEEZEのカバー「Take Me I'm Yours」ではアンディに加え元CKYのデロン・ミラーが一緒に歌唱して歌に厚みを加えている。それこそワンダ・ジャクソンの名曲「Funnel Of Love」に関してはソフィア・ジダがソロ歌唱しアンディは裏方に徹してますしね。

ギターに関してはアンディがすべてプレイしているものの、ボーカルに関しては全部自身で歌うことにこだわらず、ゲストを適材適所に配置するというプロデューサー資質も発揮されている。そういった意味では、聴き手側も「アンディの新作!」と肩肘張らず、リラックスしながら楽しむべき1枚かもしれません。

リリース元のCleopatra Recordsに対してあまり良いイメージがなかったこと、そのレーベルからカバーアルバムを出すということで、正直その仕上がりに対して不安を抱えていたのですが、すべて思い過ごしだったようで安心しました。HANOI ROCKSにおけるアンディの役割を理解しているファンはもちろん、前作『21ST CENTURY ROCKS』を聴いて彼の魅力にハマったリスナーなら問題なく楽しめる1枚だと思います。原曲自体が優れたものばかりなので、ここではアンディの演出力/表現力に注目しながら極上のナンバーたちを満喫していただきたいところです。

 


▼ANDY McCOY『JUKEBOX JUNKIE』
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2022年8月10日 (水)

DANCE GAVIN DANCE『JACKPOT JUICER』(2022)

2022年7月29日にリリースされたDANCE GAVIN DANCEの10thアルバム。日本盤未発売。

全米14位を記録した前作『AFTERBURNER』(2020年)から2年3ヶ月ぶりの新作。さまざまな変化/トラブルを経て届けられた今作は、過去最高の全米8位という高順位を獲得しています。

その変化/トラブルについて……まずは変化から。前作リリース後に2015年からツアーにサポート参加していたアンドリュー・ウェルズ(G, Vo/EIDOLA)が正式加入。アンドリューは過去数作にもゲストプレイヤーとして参加していましたが、今作では大半の楽曲でギターをプレイしているほか、リードボーカルとしても5曲でその個性を発揮しています。

そして、トラブルについて。今作完成後の2022年4月14日、ティム・フィーリック(B)が急逝。ティムは2009〜2010年にバンドに初参加し、2012年からはパーマネントメンバーとして長きにわたり在籍してきました。そして、6月にはフロントマンのティリアン・ピアソン(Vo)が性的不正行為の申し立てにより「専門家の助けを求めるため」にバンドを離脱。現在、バンドはアンドリューを中心に、ゲストボーカリストとして初期メンバーのカート・トラヴィスを迎えてツアーを行っています。

そんなこんなで、いろいろ不幸な出来事が続いているDGDですが、新作にはティム、ティリアンの参加したトラックはそのまま残されております。全18曲/63分という非常に長尺な内容ですが、とにかく最初から最後まで気持ちよく楽しめる1枚なので、そこはご心配なく。

基本路線は過去数作の延長線上にある“ポストハードコア+ポストロック+プログロック”なミクスチャースタイル。オープニングに30秒程度のSE「Untitled 2」が配置されていますが、続く「Cream Of The Crop」から問答無用のDGD節が炸裂します。ティリアンのクリーンボーカルとジョン・メス(Vo)のスクリームのバランスも抜群で、スクリームパートではアグレッシヴさが強調され、クリーンボーカルパートになると浮遊感が一気に増す。特に今作ではティリアン&アンドリューの声質が異なる2人のクリーンボーカリストが良い味を出しており、曲によっては3人のシンガーが各々の個性を見事に発揮させながら、複雑に絡み合うバンドアンサンブルの上で絶妙なハーモニーを響かせています。

前のめりで突進するアップチューンも捨てがたいのですが、特に今作においては「Feels Bad Man」や「Die Another Day」みたいなミディアムナンバーがお気に入り。これらの曲で耳にすることができるアンサンブルはとにかく絶品で、前者におけるギターのフレージングや後者での強弱の付け方などは個人的にど真ん中すぎて、気付くと何度もリピートしているほどです。

今作ではDON BROCOのロブ・ダミアーニ(Vo)を「Synergy」にてフィーチャー。そのほかにも複数のギタリストやストリングス隊がゲスト参加しており、豊富な楽曲群に彩りを与えています。これは過去数作と同じ手法ですが、特に今回の場合はオープニングの「Untitled 2」や続く「Cream Of The Crop」などで耳にできるストリングスによる味付けが良いアクセントになっております。

ただ、やはり曲数が多いこともありアルバムの芯を捉えるまでに時間がかかりそうな印象も。リリースされてから10日近くリピートしていますが、前作のコンパクトさ(それでも全13曲/48分でしたが)と比べたらどうしても全体像がぼやけてしまう。新メンバーを迎え創作意欲が爆発したのは理解できるのですが、せめて前作程度のボリュームに抑えてくれたら引き続き傑作と呼べる1枚になったのではという気がします。もちろん、現在の内容でも十分に良質なのですが、傑作とは言い切れないので……。

 


▼DANCE GAVIN DANCE『JACKPOT JUICER』
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2022年8月 9日 (火)

MÅNESKIN『IL BALLO DELLA VITA』(2018)

2018年10月26日にリリースされたMÅNESKINの1stフルアルバム。日本盤は2022年8月3日発売。

本国イタリアで最高3位を記録した1st EP『CHOSEN』(2017年)から10ヶ月後に発表された、バンド初の完全オリジナル作品(前作は全7曲中5曲がカバー)。本作からは「Morirò da re」(イタリア2位)、「Torna a casa」(同1位)など計5曲のシングルヒットが生まれ、アルバム自体も最高1位を記録しています。

本作制作時はメンバー全員10代後半でしたが、ここに詰め込まれた12曲のオリジナル曲からは大きな可能性が伝わってきます。前作では「Chosen」「Recovery」の2曲だけでバンドの未来を占うのは難しかったものの、ルールが垣間見えるカバー5曲のおかげでバンドの方向性はなんとなく透けて見えたのではないでしょうか。

事実、本作には「Chosen」の延長線上にあるファンクロック「New Song」を筆頭に、メロディアスなバラード「Torna a casa」、ラテン色の強いダンサブルな「L'altra dimensione」とかなりバラエティに富んだ内容であることが伺えます。続く2ndアルバム『TEATRO D'IRA: VOL.1』(2021年)で確固たる個性を掴み取ったとするならば、この1stアルバムは次作への予行練習、あるいは習作と捉えることもできるのではないでしょうか。

アルバムはこのほかにも、アダルトな雰囲気を醸し出すミドルテンポのダンスチューン「Shit Blvd」、グルーヴィーな「Fear For Nobody」、切なげなメロディラインとイタリア語で歌われるボーカルが独特の世界観を構築する「Le parole lontane」など、前半だけでもかなり変化に満ちた構成。後半も同郷のラッパーのヴェガス・ジョーンズをゲストに迎えたグルーヴチューン「Immortale」をはじめ、RED HOT CHILI PEPPERS の影響下にあるファンクロック「Lasciami stare」、ラガメタル調でリズミカルな「Are You Ready?」、グイグイ引っ張るベースラインが耳にこびりつくストレートなハードロック「Close To The Top」、ヒップホップの香りが強い「Niente da dire」、このバンドの得意技が凝縮されたファンキーな「Morirò da re」と色彩豊かな楽曲がズラリと並びます。

どの曲も2〜3分と非常にコンパクトで、4分を超える楽曲がひとつもないのは非常に興味深いところ。結果、12曲とボリューミーに感じられるものの、尺的には34分と古き良き時代のロックとリンクする作り。このへんも非常にイマドキ感が強く、なぜ彼らがロック低迷な海外で受け入れられているのかわかるような気がしました。

レッチリをはじめとする1990年代のオルタナティヴロック、2000年代のロックンロールリバイバルやニューウェイヴリバイバル、2010年代のモダンポップからの影響を適度に受けつつ、それらを忠実に再現するわけではなく完全に「今」のものとしてオリジナルなものを作り上げる。その才能開花の“前夜”が本作なのかな。もちろん、アルバムとしても平均点を軽く超える力作なので、最新作『TEATRO D'IRA: VOL.1』やそれ以降に発表されたシングルで彼らにハマったというリスナーなら一発で気に入ることでしょう。

 


▼MÅNESKIN『IL BALLO DELLA VITA』
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2022年8月 8日 (月)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: THE NUMBER OF THE BEAST (2002)』(2022)

2022年6月10日にリリースされたDREAM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年6月8日先行発売。

2021年6月からスタートした、バンドと所属レーベルInsideOutMusic Recordsとの共同企画によるオフィシャル・ブートレッグシリーズ『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』の第11弾。本作は同シリーズ第4弾『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』(2021年)に続く、メタル界のレジェンドアルバムを丸々再現する企画第2弾で、IRON MAIDENの3rdアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)を完全再現したライブアルバムとなります。なお、本作は過去にYsejam Recordsを通じて発表されていましたが、今回新たにリマスタリングが施され、アートワークも『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』シリーズに沿った形に刷新されています。

レコーディングされたのは2002年10月24日のパリ公演のもの。バンドはこれまでに3回にわたり『THE NUMBER OF THE BEAST』の完全再現を行なっており、1回目は同年10月4日のギリシャ・アテネ公演、2回目がこのパリ公演で、3回目は2004年4月24日の大阪公演なんだそうです。

さて、METALLICA同様シングルギター(+キーボード)編成のDTがツインギター編成のメイデンをカバーするとなると、いろいろ変更が生じますよね。リフワークの厚みが減退したり、アルペジオが重なり合うパートがギター+ピアノに変更されたり、など。そういった違和感は多少残るものの、これはこれとして全然アリだと思わされる内容ではないでしょうか。

DTのライブでは冒頭に「The Number Of The Beast」のオープニングに挿入されたSE(セリフ)が移動されたことで、ここから何が始まるのかという期待をより高めることに成功していますし、そこから「Invaders」へなだれ込むとギターとシンセが絡み合う独特のハーモニーが新鮮さを生み出している。ブルース・ディッキンソン(Vo)よりも線が細いジェイムズ・ラブリエ(Vo)ではありますが、続く「Children Of The Damned」「The Prisoner」と曲が続くに連れてどんどん慣れてくるので、普通にDTのライブ作品として納得しながら楽しめるはずです。

完全カバーはオリジナルに忠実ながらも、先に述べたように編成の違いでアレンジせざるを得ないパートも生じています。例えば「The Prisoner」のソロパート前半はジョーダン・ルーデス(Key)がシンセで代用しているのですが、なるべくオリジナルに忠実にあろうと、随所で音色を変えながらダイナミックなソロプレイを披露。これはこれで全然カッコいいし、普通にこういうカバーってありだよね?と思えるのではないでしょうか。

かと思えば、終盤の「Gangland」は唯一大幅なアレンジが施され、原曲の持つスウィング感をよりジャズ側に寄せたアコースティックバージョンへと生まれ変わっています。これもDTだからこそなせる技。むしろ、『THE NUMBER OF THE BEAST』というアルバムは後半になると「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」、そして「Hallowed Be Thy Name」と“強い”楽曲がズラリと並ぶので、ここで変化球を挿入するのは大正解。アルバムどおりの曲順で演奏しているものの、“完全再現”にこだわりすぎないところにも好感が持てます。

DTはこれまで、複数の名盤完全再現を音源化していますが、個人的にもっとも好きなのが本作。音源集としてコンパクトなのも大きいですし、DTならではのこだわりがもっとも感じられるというのも重要なのかな。メイデンの『THE NUMBER OF THE BEAST』リリース40周年、この再現ライブ実施20周年という節目にもぴったりな1枚ではないでしょうか。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: THE NUMBER OF THE BEAST (2002)』
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2022年8月 7日 (日)

SOULFLY『TOTEM』(2022)

2022年8月5日にリリースされたSOULFLYの12thアルバム。

前作『RITUAL』(2018年)から約3年10ヶ月ぶりの新作。間隔が空いたように感じますが、その間もマックス・カヴァレラ(Vo, G)はKILLER BE KILLEDの2ndアルバム『RELUCTANT HERO』(2020年)や、息子のイゴールと立ち上げたGO AHEAD AND DIEのアルバム『GO AHEAD AND DIE』(2021年)と、意外と精力的な創作活動を続けていました。

そんな中、2021年には4thアルバム『PROPHECY』(2004年)から在籍してきたマーク・リッゾ(G)が脱退。レコーディングはマックス、息子のザイオン(Dr)、そしてマイク・レオン(B)というトリオ編成で開始し、今作のプロデューサーであるアーサー・リズク(POWER TRIPCAVALERA CONSPIRACYXIBALBAなど)がリードギターを担当しています(なお、ツアーではFEAR FACTORYのディーノ・カザレスがサポート参加)。

本作はザイオンの「初期SEPULTURAの名曲たちはどうやって書かれたのか?」という一言がきっかけとなり、『ARISE』(1991年)でのブレイク前夜を思わせるシンプル&ストレートなスラッシュ&デスメタルをベースにしたグルーヴメタルを展開。ラストナンバー「Spirit Animal」こそ9分半におよぶ大作ですが、それ以外の楽曲は基本的に2〜3分台のショートチューン中心で、全10曲で約40分というかなりコンパクトな内容に仕上がっています。「Spirit Animal」がなかったら30分強であることを考えると、その潔さがご理解いただけるかと思います。

従来のSOULFLY的グルーヴ感やトライバルな要素は随所に残しつつも、黎明期のSEPULTURAにも通ずる初期衝動感や焦燥感、さらにゴシックロック的な味付けも感じられる。単なる過去の焼き直しで終わらないような工夫はさすがだと思いました。

ただ、上記のような「らしさ」は伝わるものの、肝心の楽曲自体の完成度やインパクトは及第点止まりのような印象も。これぞ!と呼べるキラーチューンが見当たらないのが残念でならず、なんとなく勢いで押されて進行し、気づいたらラストの「Spirit Animal」でダラダラしたエンディングを迎えるという……ラストナンバーでのやりたいことは非常に理解できるものの、このタイミングではなかったんじゃないか? このアルバムでやることではなかったのでは?という印象も受け、最終的にはかなり薄味という感想を残してアルバムは幕を下ろすのでした。

クリス・ウルシュ(B/POWER TRIP)やジョン・ターディ(Vo/OBITUARY)のゲスト参加もそこまで大きな効果を残すことなく、なんとも言えない中途半端な印象を残す本作。当初のコンセプトとバンドとしてやりたいこと、プロデューサーが作品として残したいものの間に大きなズレが生じ、結果としてこの内容になったのではないでしょうか。決して悪くはないんだけど、もしマーク・リッゾが残っていたらさらに締まったのでは……なんてたられば話はしたくないですが、どうしてもそう考えてしまいたくなる、なんとも勿体ない1枚です。

 


▼SOULFLY『TOTEM』
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2022年8月 6日 (土)

DUB WAR『WESTGATE UNDER FIRE』(2022)

2022年8月5日にリリースされたDUB WARの3rdアルバム。日本盤未発売。

1999年に一度解散し、2014年にドラマーを除くオリジナルメンバー3名で復活。フロントマンのベンジー・ウェッブ(Vo)がSKINDREDと並行して活動を続けていることもあり、以前ほど精力的な活動は期待していませんでしたが、まさかオリジナルアルバムが届けられる日が来るとは……驚きです。

オリジナルアルバムとしては前作『WRONG SIDE OF BEAUTIFUL』(1996年)から約26年ぶりの新作。2016年にリリースされた新曲「Fun Done」「Making A Monster」(後者は「Mary Sheley」に改名)、今年発表されたリード曲「Blackkk Man」を含む全13曲で構成されており、うち2曲「War Inna Babylon」「Stay Together」はカバー(前者はMAX ROMEO AND THE UPSETTERS、後者はアル・グリーン)となっています。

また、久しぶりの新作ということもあり、各曲に多彩なゲストが参加しており、「War Inna Babylon」には元THE BEATのランキング・ロジャー(Vo/2019年3月に逝去)、「Art Of War」にはスパイク・T.スミス(Dr/MEMORIAM)、「Reveal It」にはロイ・マイヨルガ(Dr/STONE SOURHELLYEAHMINISTRY)、「Bite Back」にはデイヴ・チャヴァッリ(Dr/ILL NINO、TERROR UNIVERSAL)、「Crying Clowns」にはジェイミー・ミラー(Dr/BAD RELIGION)&マイキー・ドリング(G/SNOT)、「Get Back Up」にはマイク・ボーディン(Dr/FAITH NO MORE)、「Celtic Cross」にはタナー・ウェイン(Dr/IN FLAMES)がそれぞれ客演。再結成時に初参加となったマイキー・グレゴリー(Dr)は13曲中約半数の7曲のみに参加で、本作ではゲストミュージシャン扱いなので現在はバンドから離れているようです。

彼ららしいラガメタルの要素は随所に散りばめられていますが、本作はそれ以上にハードコアパンクとメタルの色を強めたミクスチャーロック然としたスタイルが印象に残ります。過去の彼らのイメージはしっかり残されているものの、SKINDREDなどでの経験もしっかり活かされており、単に懐かしいミクスチャーというよりは現代的にレベルアップしたものに仕上がっているのではないでしょうか。

とにかく、どの曲も非常にキャッチーでダンサブルでアグレッシヴ。26年前には先鋭的に感じられたこのスタイルも現在までに何周もしたことで「ごく当たり前のもの」として成立している。そういった意味での革新性は皆無ですが、時代が彼らに追いついたと同時に、この混迷の時代に彼らが復活し新作を制作した意味がしっかりと理解できる1枚だと感じました。

個人的には中盤から後半にかけての「Bite Back」や「Coffin Lid」「Crying Clowns」「Get Back Up」あたりのタフでグルーヴィーなスタイルが好み。あと、「Stay Together」のカバーもDUB WARらしい味付けが感じられて好印象でした。ジャンルの壁がなくなった今だからこそ、より幅広い層に届いてほしい1枚。この新作を機に、過去の2枚にまで到達することができたら、この新作は大きな意味を持つのではないでしょうか。

 


▼DUB WAR『WESTGATE UNDER FIRE』
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2022年8月 4日 (木)

RAMONES『MONDO BIZARRO』(1992)

1992年9月1日にリリースされたRAMONESの12thアルバム。日本盤は『モンド・ビザーロ(狂った世界)』の邦題で、同年10月7日発売。

ディー・ディー・ラモーン(B)が1989年に脱退し、他メンバーよりひとまわり以上若いC.J.ラモーン(B, Vo)を新たに加えた編成で制作。また、デビュー以来在籍してきたSire Recordsを離れ、Radioactive Recordsに移籍して最初のオリジナルアルバムでもあります。

映画『ペットセメタリー』のテーマソング「Pet Sematary」を生み出した前作『BRAIN DRAIN』(1989年)から約3年半ぶりという、それまでの彼らのキャリアでもっとも長いスパンを経て届けられた本作。プロデューサーにエド・スタシアム(MOTÖRHEADLIVING COLOUR、BIOHAZARDなど)を迎えており、その関係もあってかヴァーノン・リード(G/LIVING COLOUR)が「Cabbies On Crack」にゲスト参加しています。

80年代的なサウンドから脱却し、非常に硬質でタイトなサウンドプロダクションが施された本作は、さながら“RAMONES流ハードロック”といったところでしょうか。楽曲自体はどれもキャッチーで、従来の彼ららしさも随所から感じ取ることができるものの、C.J.の加入も手伝ってかフレッシュに生まれ変わった印象も強い。また、全13曲中C.J.がリードボーカルをとる曲も2つ(「Strength To Endure」「Main Man」)も存在し、活動後期に突入し大きな変革期を迎えたことも伺えます。

「Pet Sematary」の流れを汲む「Poison Heart」や、当時のアメリカでの検閲文化に対するアンチテーゼと言える「Censorshit」、BEACH BOYS風コーラスにセンスを感じるポップパンク「Touring」というキャッチーな楽曲があるかと思えば、「Anxiety」を筆頭としたハードコア路線の楽曲もしっかり用意されている。さらに、本作にはTHE DOORSのカバー「Take It As It Comes」なんていう異色曲もあり、ここでの経験が続くカバーアルバム『ACID EATERS』(1993年)へとつながっていきます。

長く続くパンクロックバンドが方向転換することなく、ひとつのスタイルを貫きながらどう“老いて”いくか。このアルバムにはその答えがあるような気がしてなりません。のちにジョーイ・ラモーン(Vo)やジョニー・ラモーン(G)は本作に対して否定的な意見を残していますが、僕は初めて聴いた30年前も今も本作のことが大好きで、常に楽しい気持ちにさせてくれる良作だと信じてやみません。というのも、初めて生で観たRAMONESが本作を携えたツアーだったから、当時の楽しい思い出がそうさせているのかもしれませんね。

なお、RAMONESはその活動を終了させるまでに14枚のスタジオアルバム(うち1枚はカバーアルバム)を残していますが、なぜか本作のみ日本でのストリーミング配信が実現していません。それだけが本当に残念でならないのですが……どうにかならないもんですかね?

 


▼RAMONES『MONDO BIZARRO』
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2022年8月 3日 (水)

KISS『UNMASKED』(1980)

さて、KISS何度目かの「最後の来日(笑)」が決まったので、本日は当サイトでまだ取り上げていなかったスタジオアルバムを紹介したいと思います。オリジナルアルバムに関しては、これでコンプリートかしら?

本作は1980年5月にリリースされたKISSの8thアルバム。日本では『仮面の正体』の邦題で知られる1枚です(あれ、『地獄の〜』じゃないのか)。

ディスコビートを大胆に取り入れた「I Was Made For Lovin' You」(全米11位)やソウルフルなミディアムナンバー「Sure Know Something」(同47位)のヒットも手伝い、前作『DYNASTY』(1979年)は全米11位、100万枚を超えるセールスを残しました。そこから1年3ヶ月という短いスパンで届けられた次作は、プロデューサーに引き続きヴィニー・ポンシアを起用。前作での成功に気を良くしての続投だと思いますが、これが今回ばかりは悪い方向に導くことになってしまいます。

本作の特徴は、外部の職業作家が手がける楽曲を多数採用していること。80年代半ば以降のHR/HMシーンではもはや当たり前のコライト/楽曲提供という手法ですが、今作においてはそれがあまり良い作用を生み出しておらず、やたらとポップで日和った楽曲で構成されることになってしまいます。

オープニングの「Is That You?」はソングライティングにメンバーが一切関わっていない1曲ですが、この曲はKISSらしいポップロック感を表現することに成功。続くシングル曲「Shandi」(全米47位)も前作の流れを汲んだ作風ですが、少々“甘すぎる”かな?という印象も。ここまでの2曲はポール・スタンレー(Vo, G)が歌唱しています。そこからエース・フレーリー(G, Vo)が歌うストーンズテイストの「Talk To Me」、ジーン・シモンズ(Vo, B)が歌うソウルタッチのミディアムナンバー「Naked City」、再びポール主導のポップロック「What Makes The World Go 'Round」で前半を締めくくります。

後半(アナログB面)はシングルカットされながらもチャートインすらしなかったポール歌唱の「Tomorrow」からスタート。若き日のブライアン・アダムスあたりが歌ったらハマりそうなポップロックですね。続いてエース歌唱の「Two Sides Of The Coin」ですが、この曲はどことなく“ストーンズ meets ニューウェイヴ”みたいな雰囲気もあり、変な浮遊感がところどころから伝わります。その流れでジーン歌唱の「She's So European」、ポール歌唱の「Easy As It Seems」とあまりKISSらしくないヘンテコ(苦笑)な曲が続きます。前者はピコピコしたシンセの音色/アレンジに時代を感じるし、後者はディスコ路線の延長にあるのにアレンジが中途半端。さらに続くエース歌唱の「Torpedo Girl」もその延長線上にあるテイストだけど、エースのヘロヘロボーカルと不思議な調和を生み出しており、嫌いになれない仕上がりに。最後はジーンらしい重厚さも含まれたハードロックチューン「You're All That I Want」でエンディング。

いい曲もあるし、リリースから40年以上経った今聴けばKISSらしいアルバムと受け入れることはできるけど、彼らのキャリアを総括するならば、そこまで重要度の高い1枚ではない。完全に過渡期丸出しで、そりゃあピーター・クリス(Dr, Vo)も脱退するわな、と。

そうそう。ピーターは本作のクレジットに名前を連ねてはいるけど、曲作りやレコーディングには不参加。「Shandi」のMV撮影で久しぶりに姿を見せるも、その直後に正式脱退が発表されます(レコーディングには、『DYNASTY』でも大半のトラックでプレイしたアントン・フィグが参加)。

このテキストを書くために、それこそ10数年ぶりに聴いた1枚ですが、KISS史的には中途半端ながらもひとつのポップロックとして触れると非常に充実した作品ではないでしょうか。もちろん、率先して聴くような重要作ではないですが、これはこれでアリだなと思いました。

 


▼KISS『UNMASKED』
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2022年8月 2日 (火)

ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』(2003)

2003年7月23日にリリースされたARCH ENEMYの5thアルバム。日本盤は同年7月30日発売。

前作『WAGES OF SIN』(2001年)から加入したアンジェラ・ゴソウ(Vo)を含む布陣での2作目。当時のメンバーはアンジェラのほか、マイケル(G)&クリストファー(G)のアモット兄弟、シャーリー・ダンジェロ(B)、ダニエル・アーランドソン(Dr)という黄金期の布陣。

「Silent Wars」を筆頭に、前作で築き上げたドラマチックなメロディックデスメタルスタイルはそのままに、スピードよりも重さを重視することでミドルテンポの楽曲に力が入り始めたのはこの頃からでしょうか。リードシングル「We Will Rise」や「Dead Eyes See No Future」あたりはまさにその真骨頂で、どちらも歌う/泣くギターが耳に残る良曲です。特に後者は、そのドラマチックな構成/アレンジ含め第2期ARCH ENEMYのひとつの型が完成に近づきあることを感じさせてくれます。

そうした変化も影響し、初期からの武器であったスピード感を求めるリスナーには当時あまり好意的に受け入れられなかった印象があります。1曲1曲を取り上げると(多少の実験的要素こそあれど)その完成度は非常に高いものばかりなのですが、いざアルバムとして10数曲並べられると、前編通して聴くにはちょっと厳しい……そういう声が多かったような。

確かに、それ以前/それ以降の作品と比べると全体的にミドルテンポの楽曲がベースになっていることもあり、若干の違和感を覚えるかもしれません。「We Will Rise」「Dead Eyes See No Future」ときて、その次が「Instinct」ですもんね。悪くないんだけど、今聴くと「もうちょっと工夫できかもしれないよな?」とも思ったり(だからこそ、「Instinct」のあとに「Leader Of The Rats」が来ると、ちょっとだけホッとするんですよね)。

後半の幕開けを飾る美しいメロディのアコギインスト「Marching On A Dead End Read」から、2分少々のファストチューン「Despicable Heroes」へと続く構成には“らしさ”を覚えるものの、その後も再びミドルテンポ中心。不思議なメロディを持つ「Dehumanization」あたりはフックとしては面白いけど、「Anthem」「Saints And Sinners」というドラマチックな組曲もなぜか効果的に作用していない印象を受ける。なんででしょうね?

これ、もう1曲くらいアップテンポの楽曲を入れて、ミドル曲を1曲削ったらまた印象が違ったんじゃないかな。ドラマチックな要素は十分なほど含まれているんだから、あとはアルバムをいかにスムーズに聴かせるか。そこに勝負を賭けてほしかったなあ。ミドルヘヴィ曲自体は悪くないんだけど、ここまで続くと差別化や印象に残すことが難しくなると思うんですよ。

だからなのかこのアルバムって、極端な話シングル2曲の印象しかないんですよ。数歩譲っても、冒頭の「Tear Down The Walls」「Silent Wars」とラストの「Anthem」「Saints And Sinners」が増える程度。やりたいことは理解できるんだけど、それがうまく機能し切れていない/完全には消化できていない感が否めない、そんな「あと一歩」なアルバムです。

 


▼ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』
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2022年8月 1日 (月)

MÅNESKIN『CHOSEN』(2017)

2017年12月8日にリリースされたMÅNESKINの1st EP。日本盤は2022年8月3日発売予定。

2021年3月にイタリアの音楽祭『サンレモ音楽祭(Festival della canzone italiana)』で優勝したほか、同年5月にはヨーロッパ最大の音楽の祭典『Eurovision Song Contest 2021』でも優勝したのを機に、世界中で注目を集めることとなったMÅNESKIN。本作にはそんな彼らのルーツが凝縮された、原点的な1枚となっています。

本国最高2位を記録したデビュー曲「Chosen」のほか、「Recovery」という2曲の英詞オリジナル曲以外は、すべてカバー曲という内容ですが、そういった意味でもバンドの軸にあるものが見え隠れするのではないでしょうか。とにかく、「Chosen」というはじまりの1曲の時点で、その後の彼らにも通ずる“跳ねた”リズムのファンキーなハードロックが展開されていることは非常に興味深いですし、「Recovery」含めどちらも曲冒頭で自己紹介的なラップ(セリフ)が入っているのも初々しい(笑)。そうそう、名前を知ってもらうことから始めないとですしね。

カバー曲はイタリアのラッパー:カパレッツァの2003年のヒット「Vengo dalla Luna」、フランキー・ヴァリ率いるTHE FOUR SEASONSの名曲「Beggin'」に加え、BLACK EYED PEAS「Let's Get It Started」、THE KILLERS「Somebody Told Me」、エド・シーラン「You Need Me, I Don't Need You」といった2000年代以降のヒット曲が取り上げられています。イタリア語のラップボーカルをフィーチャーしたファンクチューン「Vengo dalla Luna」は、その後の彼らの個性確立に多いな影響を与えた1曲と言えるのでは。最新作『TEATRO D'IRA: VOL.1』(2021年)からさかのぼっていくと、ここが原点なのかと気付かされるはずです。

また、「Beggin'」はもともとの良メロぶりも大きく影響し、ブレイク後に再注目される結果に。それにより、全英6位/全米13位という好記録を樹立。ロック不毛のアメリカでもしっかりシングルヒットにつながっています。YouTubeに上がっているライブ映像を観ると、この曲のアンセム感を再認識することでしょう。

BLACK EYED PEASをピックアップするのも非常に興味深いですし、そこにニューウェイヴ感強めのTHE KILLERSを絡めるのも面白い。本作リリース当時、メンバーはみなティーンエイジャーだったとのことで、このへん(2000年代前半)のヒット曲は幼少期に耳にしていたものなんでしょうかね。このへんの曲、筆者にとってはつい昨日流行った印象ですが(苦笑)。さらに、現役感の強いエド・シーランを選ぶセンスも、イマドキって感じなんでしょうか。メインストリームのど真ん中にいる彼のヒット曲を何の衒いもなく選ぶあたりに、10代ならではの素直さも伝わります。

オリジナル曲がたった2つという点ではその才能は未知数といったところかもしれませんが、今となっては非常に資料価値の高い内容。初来日にあわせてようやく日本盤もリリースされるので、この機会にしっかり聴き込んでみてはいかがでしょう。

 


▼MÅNESKIN『CHOSEN』
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