ARCH ENEMY『DECEIVERS』(2022)
2022年8月12日にリリースされたARCH ENEMYの11thアルバム。
新録曲などを含むカバー曲をまとめたコンピ盤『COVERED IN BLOOD』(2019年)を間に挟んでいたとはいえ、オリジナルアルバムとしては前作『WILL TO POWER』(2017年)からほぼ5年ぶり。メンバーがそれぞれ異なる国に住んでいることから、コロナ禍によるロックダウンが大きく影響し長らくレコーディング作業を行えなかったことも大きいのでしょう(本当はメンバー5人、顔を合わせてレコーディングを行うつもりも、最終的には一部ギタートラックはリモートで録音)。
昨年秋から「Deceiver, Deceiver」を筆頭に、約10ヶ月をかけて本作からの楽曲が小出しにデジタルリリースされてきましたが、満を辞してといいますか、5年も待たされた甲斐があったと言いたくなるくらい、非常に良質なメロディックデスメタルアルバムだと思います。大半の楽曲をマイケル・アモット(G)とダニエル・アーランドソン(Dr)が手がけているというのも、本作の大きな特徴でしょう。ジェフ・ルーミス(G)がアメリカで生活していることから今作でもソングライティング面で手腕を発揮することができず、もっとも身近にいる2人が膝を突き合わせて曲作りを進めた結果なのか、多くのリスナーがこのバンドに求める要素がすべて揃った「痒いところに手が届く」1枚に仕上がっています。
アルバムはアリッサ・ホワイト=グラズ(Vo)によるメロウなクリーンボーカルを随所にフィーチャーするという、前作からの流れをよい形で進化させた「Handshake With Hell」からスタート。ARCH ENEMYらしい王道感とドラマチックさが凝縮されたこの曲は、本作を象徴する1曲と言っても過言ではないでしょう。そこから「Deceiver, Deceive」や「In The Eye Of The Storm」といったタフなナンバー、「The Watcher」「Poisoned Arrow」というメランコリックな楽曲がずらりと並ぶ構成は圧倒的の一言。特に後者は、作曲クレジットに元メンバーにしてマイケルの実弟クリストファー・アモットの名前を見つけることができる。このへんもバンドが本作で何を狙ったのかが透けて見えてくる気がします。
この流れは「Sunset Over The Empire」から始まるアルバム後半にも引き継がれ、マイケル&クリストファー作曲によるキラーチューン「House Of Mirrors」、悲痛の叫びにも似た鳴きメロを感じることができる「Spreading Black Wings」で本作何度目かのクライマックスを迎えます。そこから100秒程度の短尺インスト「Mourning Star」を経て「One Last Time」へと突入すると、バンドが放つ熱量にもラストスパートがかかり始める。そこから叙情的なラストナンバー「Exiled From Earth」でエモーショナルさが最高潮に達し、最高のエンディングを迎えるわけです。
全11曲/約45分という程よいボリューム感の中にぎっしりと詰め込まれた“ARCH ENEMY節”の数々といい、一切の隙を与えない構成といい、結成25周年を経てもなお守りに入らず自分たちらしさを追求し続ける姿勢といい、本作は文句なしの傑作ではないでしょうか。少なくとも、アリッサ加入後の作品においては頂点と言える1枚です。
なお、日本盤にはお約束のカバーソングを追加収録。今回は80年代に活躍したオランダのメタルバンドPICTUREの「Diamond Dreamer」と、ロブ・ハルフォードが90年代に結成したFIGHTの「Into The Pit」の2曲で、前者ではアリッサがオールクリーンボーカルで歌うという暴挙(笑)に及んでいます。これ、完全に普通の正統派ヘヴィメタルで最高です。もちろん、フルデスボイスで表現された「Into The Pit」のアグレッションも文句なし。どちらもボーナストラックにしておくには勿体ないレベルなので、ここはサブスクで満足することなくぜひ日本盤CDを購入してもらいたいところです。
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