ALTER BRIDGE『PAWNS & KINGS』(2022)
2022年10月14日にリリースされたALTER BRIDGEの7thアルバム。
全米16位という成績を残した前作『WALK THE SKY』(2019年)から3年ぶりの新作。とはいえ、その間にマイルズ・ケネディ(Vo, G)はソロアルバム『THE IDES OF MARCH』(2021年)やスラッシュ(GUNS N' ROSES)とのSLASH FEATURING MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORS名義によるアルバム『4』(2022年)、マーク・トレモンティ(G)もTREMONTI名義のソロ作『MARCHING IN TIME』(2021年)を残しており、コロナ禍を挟む3年間が(結果的に)充実した期間だったころが伺えます。あ、バンドとしても新曲+ライブ音源で構成された7曲入りEP『WALK THE SKY 2.0』(2020年)を発表していましたしね。動けないなりに、創作活動には積極的に取り組んでいたことが伺えます。
そんな中届けられた本作ですが、プロデューサーにはALTER BRIDGEの諸作品でタッグを組んできたマイケル・“エルヴィス”・バスケット(SLASH、coldrain、MAMMOTH WVHなど)を迎え制作。ポスト・グランジ的手法を通過したモダンなHR/HMを下地にしつつも、今作ではクラシカルなヘヴィメタルや複雑な展開を含むプログメタル的手法も積極的に取り入れたれた、挑戦的な1枚に仕上がっています。
オープニングを飾る「This Is War」で聴けるシンフォニックメタル調アレンジには、ちょっと度肝を抜かれました。これはいい意味で予想を裏切る幕開けで、特にソロやスラッシュとのコラボではアーシーなロック/ハードロックに特化していたマイルズの歌声が、ロニー・ジェイムズ・ディオにも匹敵するドロドロしたメタルボーカルへと進化/深化。実際にはそこまで歌い方を変えていないのかもしれませんが、彼の声を包み込むメタリックな音像との相性もあるんでしょうね。これぞモダンメタル!と断言できるような彼の歌唱は、もっと高く評価されるべきではないでしょうか。
かと思えば、「Stay」のように軽やかなポップチューン(本作の中では、という意味ね)もあれば、8分半にもおよぶエピカルな大作「Fable Of The Silent Son」も用意されている。アルバムのラストを飾るドラマチックなメタルチューン「Pawns & Kings」も非常にスリリングでアンセミック。どの曲もバラエティ豊かながらもアルバムの枠から破綻することがない。スピードよりも重さにこだわった曲作り/サウンドメイクは、もはやアリーナ/スタジアムロックの域を脱して、どの規模の会場で鳴らされても何ら違和感なく通用する普遍性すら伝わってくる。まもなくデビュー20周年に達する中堅〜ベテランバンドが、ここにきてさらに進化しているという事実には、ただただ驚かされるばかりです。
個人的には2000年代のオルタナメタル的イメージが強いバンドでしたが、正直ここまで真正面からヘヴィメタルと向き合った作品を世に送り込んでくるとは、想像もしてなかったなあ。アメリカではチャート的には最高35位と、過去作と比べてもっとも結果が振るわなかった本作ですが、実は新たな正統派USメタルの良作を求める層にこそ届いてほしい、響いてほしい1枚ではないでしょうか。
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