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2022年11月 4日 (金)

ARCADE『ARCADE』(1993)

1993年4月8日にリリースされたARCADEの1stアルバム。日本盤は同年4月1日先行発売。

ARCADEは1991年、RATT解散後にスティーヴン・パーシー(Vo)が結成したハードロックバンド。メンバーは元CINDERELLA(当時)のフレッド・コウリー(Dr)、フランキー・ウィルセックス(G/ex. SEA HAGS)、ドニー・シラキュース(G/ex. GYPSY ROSE)、マイケル・アンドリュース(B/ex. 9.0)という布陣で、当時は「元RATTと元CINDERELLAのメンバーによる新バンド」という側面が強く打ち出されていたい印象が強いかな。

グランジ全盛の時代にメジャーのEpic Recordsと無事契約し、プロデューサーにデヴィッド・プラッター(DREAM THEATERFIREHOUSENIGHT RANGERなど)を迎えて制作。1993年という時代をまったく無視した(笑)、良くも悪くも開き直りの感じられるハードロックアルバムに仕上がっています。

オープニングの「Dancin' With The Angels」はアップテンポで攻めの姿勢が感じられる1曲。スライドギターのフレーズがどことなくAEROSMITH「Let The Music Do The Talking」に似ていますが(楽曲のテンポもね)、気にしないことにします。続くリード曲「Nothin' To Lose」はRATTの延長線上にあるミディアムテンポの地味なハードロック。このダークさは当時の時代を反映していると言えなくもないけど、根本にある方向性は80年代のヘアメタルそのもの。うん、何も変わってない(笑)。

いかにもなパワーバラード「Cry No More」、モロにRATTな「Screamin' S.O.S.」やブルージーな「Messed Up World」など、全体を通して似たようなテンポ感で攻める姿勢はRATTそのものですが、どの曲も似たり寄ったりで平均的な仕上がり。元CINDERELLAのメンバーが在籍するもののドラマーということもあり、ソングライティングや演奏面でそこまでCINDERELLAのカラーも見えないですし、そもそもギタリスト2人の色が薄味ということで、突出した個性が見受けられない。完全にスティーヴンの独り相撲といったところでしょうか。

アルバム後半に進むと、アグレッシヴなアップチューン「All Shook Up」、ピアノとアコギを用いたメロウなバラード「So Good... So Bad...」、初期RATTナンバーの焼き直し「Mother Blues」(のちにRATTのリメイクアルバム『COLLAGE』(1997年)で再録)など耳に残る曲もなくはないですが、前半の煮え切らなさが災いし、そこまで大きなインパクトを残すことなくアルバムは終了。リリース当時、数回聴いてCDラックの奥のほうにしまってしまったこと、今でも忘れません。

そういった印象は、リリースから30年近く経った今もそう大きく変わることはなく、やはり耳に残る曲はここに上げたようなものばかり。あとは「Calm Before The Storm」やラストの「Reckless」あたりかな。まあ全13曲の半分くらいは悪くないと思えるのですから、決して駄作ではないのでしょう。ただ、これがデビュー作と言われると……先が思いやられますよね?(苦笑)

RATTやらCINDERELLAでの功績があるからこそ、かろうじてここにつながったのでしょうけど、どうにも成功してやろうという野心が伝わってこないし、むしろ開き直って趣味全開にも受け取れる。HR/HM瀕死の1993年という時代において、まったく危機感のない本作はある意味では奇跡の1枚なのかもしれません。

 


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