CHEAP TRICK『ONE ON ONE』(1982)
1982年4月30日にリリースされたCHEAP TRICKの6thアルバム。
プロデューサーにジョージ・マーティン、レコーディングエンジニアにはジェフ・エメリックというビートルズでお馴染みの布陣を迎えて制作された前作『ALL SHOOK UP』(1980年)から1年半ぶりの新作。アルバム完成後にオリジナルメンバーのトム・ピーターソン(B)が脱退してしまい、ピート・コミタを新メンバーに迎えツアーを続けるものの、彼も1年少々でバンドを離れてしまいます。
その後、トムが復帰するまでバンドをサポートすることになるジョン・ブラントが正式加入。QUEENの初期作やJOURNEY、THE CARSなどで知られるロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに迎え完成させたのが本作です。
自身の影響やファン心がそのまま作品につながった『ALL SHOOK UP』が大きな成功を収めることができなかった事実に対して、続く今作では時代の流れを捉えてニューウェイヴ的な側面も積極的に取り入れられています(それがTHE CARSでヒットを飛ばしていたロイを迎えた理由のひとつでしょう)。
基本的な楽曲作りは名作『DREAM POLICE』(1979年)や『ALL SHOOK UP』の流れを汲むものですが、味付けや質感はニューウェイヴ直下にあるもの。オープニングトラック「I Want You」や「Oo La La La」「Saturday At Midnight」「I Want Be Man」あたりは完全にその延長線上の楽曲と言えるでしょう。
その一方で、ポップでキャッチーなミディアムバラード「If You Want My Love」、ハードロックとグラムロックをミックスしたような「Lookin' Out For Number One」、シングルカットもされた「She's Tight」など従来の彼らのイメージを踏襲した楽曲も存在。とはいえ、「She's Tight」あたりはちょっとした味付けにニューウェイヴ風味も加わっており、時代を感じさせます。
ハードロックやパワーポップ直径のストレートなロックサウンドを前面に打ち出した初期3作を好むリスナーからは、この変化は真正面から受け止めることができなかったかもしれません。ただ、結果論としてはこの音楽的冒険や日和見主義もCHEAP TRICKというバンドの歴史上では切っても切り離せないものであり、このへんの作品が後続たちに与えた影響も少なくないと思うんです。
彼らのカタログの中では、そこまで上位にくるような1枚ではないかもしれませんが、前作『ALL SHOOK UP』同様に聴けば聴くほどに深みが感じられる隠れた良作ではないでよすか。意外と今の自分のモードにも合っていて、ここ最近はかなりの頻度でリピートしています。
▼CHEAP TRICK『ONE ON ONE』
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