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2023年1月 8日 (日)

DAVID BOWIE『"HEROES"』(1977)

1977年10月14日にリリースされたデヴィッド・ボウイの12thアルバム。当時の邦題は『英雄夢語り(ヒーローズ)』。

前作『LOW』(1977年)からそれほど間を置かずに制作/リリースされたこともあり、テイストや作風は『LOW』を踏襲したもの。プロデュースもトニー・ヴィスコンティが携わり、レコーディングもブライアン・イーノ(Synth)やカルロス・アロマー(G)、ジョージ・マーレイ(B)、デニス・デイヴィス(Dr)と前作と同じ布陣で臨んでいますが、ここに元KING CRIMSON(当時)のロバート・フリップ(G)が加わることで、より個性的なサウンドを生み出すことに成功しています。

歌モノ中心の前半(アナログA面)、実験的なインスト中心の後半(アナログB面)という構成は前作同様ですが、前作よりもロック色が強まっているのが今作の特徴か。また、前作の楽曲が『STATION TO STATION』(1976年)から引き継ぐヒンヤリ感でまとめられていたのに対し、今作は70年代前半のボウイが持っていたエモーショナルさが復調しており、実験性やアバンギャルドさを上回る王道感を高めることに成功しています。

特に前半パートはタイトルトラック「"Heroes"」をハイライトに、「Beauty And The Beast」「Joe The Lion」など、近作で会得したスタイルをより良い形に昇華。「"Heroes"」に関しては、ロバート・フリップのギターがいい味を出しており、楽曲自体がもつアンセム感をより強調させています。

一方で、アルバム後半は前作における「Speed Of Life」にあたる「V-2 Schneider」を導入に、続く「Sense Of Doubt」でより深みのあるダークなサウンドを展開。ジャーマンプログレ/テクノの影響下にあるダウナーなアレンジは、前半のエモさと対極にあり、この対比/緩急含め聴き応えのある構成を作り上げています。

そして、アルバムラストを歌モノ「The Secret Life Of Arabia」で締めくくるのもなお良し。実験性の強いインストのみで固めるのではなく、最後に再びセクシーなボーカルなナンバーを置くからこそ、単に「前半/後半と色の違うアルバム」だけでは終わらなかった。そこを含め、トータルバランスに優れた1枚ではないでしょうか。『LOW』と甲乙つけ難い完成度の傑作です。

 


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