BLACK SABBATH『BORN AGAIN』(1983)
1983年9月12日にリリースされたBLACK SABBATHの11thアルバム。邦題は『悪魔の落とし子』。
ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)とヴィニー・アピス(Dr)の脱退を受け、体勢を立て直そうとしたBLACK SABBATH。当初はロバート・プラント(ex. LED ZEPPELIN)やデヴィッド・カヴァーデイル(WHITESNAKE、ex. DEEP PURPLE)といった有名どころから、当時はまだ無名だったマイケル・ボルトンまでもが候補に上がったものの、新たに契約したマネジメントから当時GILLANとして活動中だったイアン・ギラン(ex. DEEP PURPLE)をプッシュされ、この豪華なコラボレーションが実現することとなりました。
そもそもトニー・アイオミ(G)やギーザー・バトラー(B)はこのセッションから生まれた楽曲を、BLACK SABBATH名義として発表するつもりはなかったようで、最終的にはマネジメント側からの猛烈なプッシュでBLACK SABBATH名義でリリースされてしまったとのこと。それもあってか、楽曲の数々はオジー・オズボーン時代ともディオ時代とも異なる、不思議な浮遊感を醸しさすハードロックが展開されています。もちろん、随所からオジー時代はディオ時代の香りは多少するものの、最終的にギランの特徴的なボーカル&シャウトによって打ち消されてしまうのです。
アイオミのギターワークや、ベースとのユニゾンを基調としたリフ作りはどこかモダンさを感じさせ、のちのグルーヴメタル的でもあるような……そう、「Zero The Hero」を筆頭に、意外にもここで展開されている手法って90年代以降のグランジやオルタナメタル的なものに近いんですよね。僕自身がそれに気づいたのも、実はつい最近のことなんですが。だって、それ以前はどうしても“失敗作”や“SABBATH PURPLE”みたいな揶揄がお似合いの1枚だと思い込んでいましたから。
とはいえ、アートワークの酷さは苦笑ものですし、ぼんやりしたミックスや安っぽいギターの音作りは減点対象以外の何ものでもありませんが。あと、「Digital Bitch」はどう聴いても“SABBATH PURPLE”と呼ぶにぴったりな仕上がり。「Disturbing The Priest」や「Born Again」などいいところいってる曲もなくはないんですが、もうちょっと頑張れたんじゃないかなという気も。まあ、歌うのがギランじゃねえ……と言っては失礼かもしれませんが、キャラクターのオジー、表現力のディオの後釜としては荷が重すぎますよ。
母国イギリスでは最高4位と好記録を残すものの、本作完成後にはビル・ワードが再脱退(その後、1998年まで復帰せず)。ギランも再結成DEEP PURPLEに参加するため、短期間でバンドを離れることとなります。その後、BLACK SABBATHはやむを得ず活動休止に突入するのでした。
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