WINGER『IV』(2006)
2006年10月20日にリリースされたWINGERの4thアルバム。日本盤は同年10月25日発売。
前作『PULL』(1993年)での活動を経て、1994年にバンド活動を停止させたWINGER。その後、キップ・ウィンガー(Vo, B)はソロ活動に専念し、レブ・ビーチ(G)はアリス・クーパーのツアーサポートやDOKKENに参加するなど精力的な活動を続けます。そんな中、2001年にキップ、レブ、ロッド・モーゲンスタイン(Dr)、ポール・テイラー(G, Key)のオリジナルラインナップに後期メンバーのジョン・ロス(G)を加えた5人編成で復活。ベストアルバムのために新曲「On The Inside」をレコーディングしたほか、ツアーも実施しました。
その後ポールが再びバンドを離れ、『PULL』期の4人にセンク・エログル(G, Key)が加わった新編成で13年ぶりの新作を制作。キップ自身がプロデュース、エンジニアリング、ミックスを担当したWINGERの新章開始を告げる1枚を完成させます。
リリース当時、このアルバムを初めて聴いたときの印象は「地味。そしてムズイ!」。『PULL』のダークな世界観を継承しつつ、『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)などに見られたプログメタル的側面も随所に散りばめられたテイストなのですが、いかんせん楽曲に華がない。初期2作とは完全に別モノという気がしてしまいます。
おそらくキップ自身も、本来はこのアルバムはソロ作品の延長で手がけたものだったんじゃないでしょうか。そこにWINGERとしての新作制作が重なり、WINGERとして当時のキップのモードを表現しようとした。じゃなければ、もうちょっとわかりやすい内容になっていたと思いますし。
キーボーディストはフィーチャーしているものの、ギターバンド的なアレンジを全面に打ち出していること、録音も80年代〜90年代初頭的なファットなものではなく生々しさを重視したことが影響し、『PULL』をさらにオルタナメタル化させたような印象も強い。かつ、「Blue Suede Shoes」などを筆頭にフレージングやアレンジからTOOL以降のモダンメタルの影響も感じ取ることができる。もし『PULL』を“グランジ以降”と評するのならば、今作は“ニューメタル以降”といったところでしょうか。
個人的には「Your Great Escape」〜「Disappear」の組曲的構成や、後者におけるプログメタル的側面に初期のWINGERの香りも見つけられ、決して嫌いにはなれない1枚。ここに1曲くらい、わかりやすくキャッチーなメロディの楽曲(別にシングル向けのポップチューンという意味ではなく)が含まれていたら、もうちょっと入りやすかったんじゃないかな。まあ、これがあったからこそ続く『KARMA』(2009年)がああいう作品になったと思えば、経験しておいてよかった作品なのかもしれません。
▼WINGER『IV』
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